(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酸素を主成分とする酸化剤ガスと水素を主成分とする燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを発生させる単位セル(10)が複数積層された燃料電池(1)を備え、前記燃料電池(1)に対して前記燃料ガスを供給するための燃料ガス供給流路(20)に前記燃料電池(1)から排出された燃料オフガスを戻すための燃料オフガス循環流路(22)が接続された燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池(1)の内部に設けられて前記複数の単位セル(10)それぞれに前記燃料ガスを分配する燃料ガス供給マニホールド(16)と、
前記燃料電池(1)の内部に設けられて前記複数の単位セル(10)それぞれから排出された前記燃料オフガスを集合させる燃料ガス排出マニホールド(17)と、
前記燃料ガス排出マニホールド(17)の内部、または、前記単位セル(10)における燃料ガス流路(15a)の出口部に配置されて前記燃料オフガスにおける水素濃度を検知する複数の水素濃度センサ(181)を有し、前記複数の水素濃度センサ(181)の検出値の変化を前記水素濃度の分布として検出する水素濃度検出手段(18)と、
前記複数の水素濃度センサ(181)の検出値に対応する前記燃料ガス排出マニホールド(17)における水素濃度の分布に基づいて、前記燃料電池(1)の内部における水素欠乏状態が、前記複数の単位セル(10)の全てで前記水素が欠乏した全体欠乏、および前記複数の単位セル(10)の一部で前記水素が欠乏した部分欠乏を診断する水素欠乏状態診断手段(100a)と、を備え、
前記水素欠乏状態診断手段(100a)は、
前記複数の水素濃度センサ(181)の検出値の平均値(Savg)が予め定められた平均基準濃度(Y1)以下である場合に、前記複数の単位セル(10)の全てで前記水素が欠乏した全体欠乏であると判定し、
前記複数の水素濃度センサ(181)の検出値の平均値(Savg)が前記平均基準濃度(Y1)より高く、かつ、前記複数の水素濃度センサ(181)の検出値の少なくとも1つが所定の部分基準濃度(Y2)以下である場合に、前記複数の単位セル(10)の一部で前記水素が欠乏した部分欠乏であると判定することを特徴とする燃料電池システム。
酸素を主成分とする酸化剤ガスと水素を主成分とする燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを発生させる単位セル(10)が複数積層された燃料電池(1)を備え、前記燃料電池(1)に対して前記燃料ガスを供給するための燃料ガス供給流路(20)に前記燃料電池(1)から排出された燃料オフガスを戻すための燃料オフガス循環流路(22)が接続された燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池(1)の内部に設けられて前記複数の単位セル(10)それぞれに前記燃料ガスを分配する燃料ガス供給マニホールド(16)と、
前記燃料電池(1)の内部に設けられて前記複数の単位セル(10)それぞれから排出された前記燃料オフガスを集合させる燃料ガス排出マニホールド(17)と、
前記燃料ガス排出マニホールド(17)の内部、または、前記単位セル(10)における燃料ガス流路(15a)の出口部に配置されて前記燃料オフガスにおける水素濃度の低下に伴って電気抵抗が増加する複数の濃度反応素子(182)を有する水素濃度検出手段(18)と、
前記複数の濃度反応素子(182)の抵抗値に対応する前記燃料ガス排出マニホールド(17)における水素濃度の分布に基づいて、前記燃料電池(1)の内部における水素欠乏状態が、前記複数の単位セル(10)の全てで前記水素が欠乏した全体欠乏、および前記複数の単位セル(10)の一部で前記水素が欠乏した部分欠乏を診断する水素欠乏状態診断手段(100a)と、を備え、
前記複数の濃度反応素子(182)は、電気的に直列接続された直列接続体を構成し、
前記水素濃度検出手段(18)は、前記直列接続体における抵抗値の変化を前記水素濃度の分布として検出することを特徴とする燃料電池システム。
酸素を主成分とする酸化剤ガスと水素を主成分とする燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを発生させる単位セル(10)が複数積層された燃料電池(1)を備え、前記燃料電池(1)に対して前記燃料ガスを供給するための燃料ガス供給流路(20)に前記燃料電池(1)から排出された燃料オフガスを戻すための燃料オフガス循環流路(22)が接続された燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池(1)の内部に設けられて前記複数の単位セル(10)それぞれに前記燃料ガスを分配する燃料ガス供給マニホールド(16)と、
前記燃料電池(1)の内部に設けられて前記複数の単位セル(10)それぞれから排出された前記燃料オフガスを集合させる燃料ガス排出マニホールド(17)と、
前記燃料ガス排出マニホールド(17)の内部、または、前記単位セル(10)における燃料ガス流路(15a)の出口部に配置されて前記燃料オフガスにおける水素濃度の低下に伴って電気抵抗が増加する複数の濃度反応素子(182)を有し、前記複数の濃度反応素子(182)の抵抗値の変化を水素濃度の分布として検出する水素濃度検出手段(18)と、
前記複数の濃度反応素子(182)の抵抗値に対応する前記燃料ガス排出マニホールド(17)における水素濃度の分布に基づいて、前記燃料電池(1)の内部における水素欠乏状態が、前記複数の単位セル(10)の全てで前記水素が欠乏した全体欠乏、および前記複数の単位セル(10)の一部で前記水素が欠乏した部分欠乏を診断する水素欠乏状態診断手段(100a)と、を備え、
前記水素欠乏状態診断手段(100a)は、
前記複数の濃度反応素子(182)の抵抗値の合算値(R)が予め定められた第1基準閾値(Rref1)より大きく、かつ、前記第1基準閾値(Rref1)よりも大きい値に設定された第2基準閾値(Rref2)より大きい場合に、前記複数の単位セル(10)の全てで前記水素が欠乏した全体欠乏であると判定し、
前記複数の濃度反応素子(182)の抵抗値の合算値(R)が前記第1基準閾値(Rref1)より大きく、かつ、前記第2基準閾値(Rref2)以下である場合に、前記複数の単位セル(10)の一部で前記水素が欠乏した部分欠乏であると判定することを特徴とする燃料電池システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、燃料電池から排出される燃料オフガスには、未反応水素が含まれるため、燃料オフガスを、循環流路を介して再び供給マニホールドに戻して各単位セルに分配させることで、燃料オフガスを有効利用する燃料循環方式の燃料電池システムがある。
【0010】
この燃料循環方式の燃料電池システムでは、燃料オフガスの循環を継続すると、カソード側から透過した窒素等の不純物が増加するため、燃料オフガス中の水素濃度が低下して水素欠乏が生じ易いといった特徴がある。
【0011】
そして、燃料循環方式の燃料電池システムにおける水素欠乏には、燃料ガスの供給不足により燃料電池全体に生ずる全体欠乏、および各単位セル内部の圧力損失等に起因する燃料ガスの分配不良によって燃料電池の一部の単位セルに生ずる部分欠乏が存在する。
【0012】
これら全体欠乏および部分欠乏は、それぞれ発生要因が異なるため、水素欠乏が全体欠乏なのか、部分欠乏なのかを判別し、当該判別結果に応じて水素濃度を調整することが必要となる。
【0013】
ここで、特許文献1の燃料電池システムを燃料循環方式に適用することが考えられるが、以下の理由から採用することができない。すなわち、燃料循環方式の燃料電池システムでは、燃料オフガスにカソード側から透過した窒素等が含まれ、燃料循環方式を採用しない場合に比べて、燃料ガス流路を流れる燃料ガスの流量が多いといった特徴がある。
【0014】
このため、燃料ガス流路の一部に燃料ガスが淀み易い部位が存したとしても、燃料ガスが燃料ガス流路を流れるので、排出マニホールド側からの燃料ガスの逆流等が生じ難く、燃料ガス流路の上流側部位にて水素濃度が低下する可能性が低い。
【0015】
従って、特許文献1の燃料電池システムを燃料循環方式に適用しても、水素欠乏状態を判別することができず、燃料電池内部の水素濃度を適切に調整することができない。
【0016】
本発明は上記点に鑑みて、燃料循環方式に適用した場合において、水素欠乏状態が全体欠乏なのか、部分欠乏なのかを判別可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、酸素を主成分とする酸化剤ガスと水素を主成分とする燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを発生させる単位セル(10)が複数積層された燃料電池(1)を備え、燃料電池(1)に対して燃料ガスを供給するための燃料ガス供給流路(20)に燃料電池(1)から排出された燃料オフガスを戻すための燃料オフガス循環流路(22)が接続された燃料電池システムを対象としている。
【0018】
そして、
請求項1に記載の発明では、燃料電池(1)の内部に設けられて複数の単位セル(10)それぞれに燃料ガスを分配する燃料ガス供給マニホールド(16)と、燃料電池(1)の内部に設けられて複数の単位セル(10)それぞれから排出された燃料オフガスを集合させる燃料ガス排出マニホールド(17)と、燃料ガス排出マニホールド(17)の内部、または、単位セル(10)における燃料ガス流路(15a)の出口部に配置されて燃料オフガスにおける水素濃度
を検知する複数の
水素濃度センサ(181)を有
し、複数の水素濃度センサ(181)の検出値の変化を水素濃度の分布として検出する水素濃度検出手段(18)と、複数の
水素濃度センサ(181)の検出値に対応する燃料ガス排出マニホールド(17)における水素濃度の分布に基づいて、燃料電池(1)の内部における水素欠乏状態が、複数の単位セル(10)の全てで水素が欠乏した全体欠乏、および複数の単位セル(10)の一部で水素が欠乏した部分欠乏を診断する水素欠乏状態診断手段(100a)と、を備え
、
水素欠乏状態診断手段(100a)は、
複数の水素濃度センサ(181)の検出値の平均値(Savg)が予め定められた平均基準濃度(Y1)以下である場合に、複数の単位セル(10)の全てで水素が欠乏した全体欠乏であると判定し、
複数の水素濃度センサ(181)の検出値の平均値(Savg)が平均基準濃度(Y1)より高く、かつ、複数の水素濃度センサ(181)の検出値の少なくとも1つが所定の部分基準濃度(Y2)以下である場合に、複数の単位セル(10)の一部で水素が欠乏した部分欠乏であると判定することを特徴とす
る。
【0019】
このように、燃料ガス排出マニホールド(17)、または、単位セル(10)における燃料ガス流路(15a)の出口部に、水素濃度検出手段(18)を構成する複数の
水素濃度センサ(181)を配置し、各
水素濃度センサ(181)の検出値から燃料ガス排出マニホールド(17)における水素濃度の分布を検出することで、水素欠乏が全体欠乏なのか、部分欠乏なのかを判別することができる。この結果、水素欠乏状態に応じて燃料電池内部の水素濃度を適切に調整することが可能となる。
【0022】
ところで、燃料ガス排出マニホールド(17)における燃料オフガス流れの下流側には、燃料オフガス流れの下流側に対応する単位セル(10)から排出された燃料オフガスに加えて、上流側に対応する単位セル(10)から排出された燃料オフガスも流れる。このため、燃料ガス排出マニホールド(17)を流れる水素濃度が燃料ガス流れの上流側から下流側に向かって高くなる傾向がある。
【0023】
そこで、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、部分基準濃度(Y
2)は、燃料ガス排出マニホールド(17)における燃料オフガス流れの上流側から下流側に向かって高くなるように設定されていることを特徴とする。これによれば、水素欠乏の部分欠乏を適切に判別することができる。
【0024】
また、請求項
3に記載の発明
では、請求項1に記載の発明と同様に、酸素を主成分とする酸化剤ガスと水素を主成分とする燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを発生させる単位セル(10)が複数積層された燃料電池(1)を備え、燃料電池(1)に対して燃料ガスを供給するための燃料ガス供給流路(20)に燃料電池(1)から排出された燃料オフガスを戻すための燃料オフガス循環流路(22)が接続された燃料電池システムを対象としている。
そして、請求項3に記載の発明では、燃料電池(1)の内部に設けられて複数の単位セル(10)それぞれに燃料ガスを分配する燃料ガス供給マニホールド(16)と、燃料電池(1)の内部に設けられて複数の単位セル(10)それぞれから排出された燃料オフガスを集合させる燃料ガス排出マニホールド(17)と、燃料ガス排出マニホールド(17)の内部、または、単位セル(10)における燃料ガス流路(15a)の出口部に配置されて燃料オフガスにおける水素濃度の低下に伴って電気抵抗が増加する
複数の濃度反応素子(182)を有
する水素濃度検出手段(18)と、
複数の濃度反応素子(182)の抵抗値に対応する燃料ガス排出マニホールド(17)における水素濃度の分布に基づいて、燃料電池(1)の内部における水素欠乏状態が、複数の単位セル(10)の全てで水素が欠乏した全体欠乏、および複数の単位セル(10)の一部で水素が欠乏した部分欠乏を診断する水素欠乏状態診断手段(100a)と、を備え
、
複数の濃度反応素子(182)は、電気的に直列接続された直列接続体を構成し、水素濃度検出手段(18)は、直列接続体における抵抗値の変化を前記水素濃度の分布として検出することを特徴とする。
これによれば、
燃料ガス排出マニホールド(17)、または、単位セル(10)における燃料ガス流路(15a)の出口部に、水素濃度検出手段(18)を構成する複数の濃度反応素子(182)を配置し、各濃度反応素子(182)の抵抗値から燃料ガス排出マニホールド(17)における水素濃度の分布を検出することで、水素欠乏が全体欠乏なのか、部分欠乏なのかを判別することができる。この結果、水素欠乏状態に応じて燃料電池内部の水素濃度を適切に調整することが可能となる。
【0025】
さらに、請求項
3に記載の発明
では、水素濃度の低下に伴って電気抵抗が増加する複数
の濃度反応素子(182)は、電気的に直列接続された直列接続体を構成し、水素濃度検出手段(18)は、直列接続体における抵抗値の変化を水素濃度の分布として検出する
から、簡易な構成の水素濃度検出手段にて、燃料ガス排出マニホールド(17)における水素濃度の分布を検出することが可能となる。
【0026】
この場合、請求項
4に記載の発明の如く、
請求項3に記載の燃料電池システムにおいて、水素欠乏状態診断手段(100a)
は、複数
の濃度反応素子(182)の抵抗値の合算値(R)が予め定められた第1基準閾値(Rref1)より大きく、かつ、第1基準閾値(Rref1)よりも大きい値に設定された第2基準閾値(Rref2)より大きい場合に、複数の単位セル(10)の全てで水素が欠乏した全体欠乏であると判定し、複数
の濃度反応素子(182)の抵抗値の合算値(R)が第1基準閾値(Rref1)より大きく、かつ、第2基準閾値(Rref2)以下である場合に、複数の単位セル(10)の一部で水素が欠乏した部分欠乏であると判定するようにしてもよい。
また、請求項5に記載の発明では、請求項1、3に記載の発明と同様に、酸素を主成分とする酸化剤ガスと水素を主成分とする燃料ガスとを電気化学反応させて電気エネルギを発生させる単位セル(10)が複数積層された燃料電池(1)を備え、燃料電池(1)に対して燃料ガスを供給するための燃料ガス供給流路(20)に燃料電池(1)から排出された燃料オフガスを戻すための燃料オフガス循環流路(22)が接続された燃料電池システムを対象としている。
そして、請求項5に記載の発明では、燃料電池(1)の内部に設けられて複数の単位セル(10)それぞれに燃料ガスを分配する燃料ガス供給マニホールド(16)と、燃料電池(1)の内部に設けられて複数の単位セル(10)それぞれから排出された燃料オフガスを集合させる燃料ガス排出マニホールド(17)と、燃料ガス排出マニホールド(17)の内部、または、単位セル(10)における燃料ガス流路(15a)の出口部に配置されて燃料オフガスにおける水素濃度の低下に伴って電気抵抗が増加する濃度反応素子(182)を有し、複数の濃度反応素子(182)の抵抗値の変化を水素濃度の分布として検出する水素濃度検出手段(18)と、
複数の濃度反応素子(182)の抵抗値に対応する燃料ガス排出マニホールド(17)における水素濃度の分布に基づいて、燃料電池(1)の内部における水素欠乏状態が、複数の単位セル(10)の全てで水素が欠乏した全体欠乏、および複数の単位セル(10)の一部で水素が欠乏した部分欠乏を診断する水素欠乏状態診断手段(100a)と、を備え
、
水素欠乏状態診断手段(100a)は、複数の濃度反応素子(182)の抵抗値の合算値(R)が予め定められた第1基準閾値(Rref1)より大きく、かつ、第1基準閾値(Rref1)よりも大きい値に設定された第2基準閾値(Rref2)より大きい場合に、複数の単位セル(10)の全てで水素が欠乏した全体欠乏であると判定し、複数の濃度反応素子(182)の抵抗値の合算値(R)が第1基準閾値(Rref1)より大きく、かつ、第2基準閾値(Rref2)以下である場合に、複数の単位セル(10)の一部で水素が欠乏した部分欠乏であると判定することを特徴とする。
これによれば、燃料ガス排出マニホールド(17)、または、単位セル(10)における燃料ガス流路(15a)の出口部に、水素濃度検出手段(18)を構成する複数の濃度反応素子(182)を配置し、各濃度反応素子(182)の抵抗値変化から燃料ガス排出マニホールド(17)における水素濃度の分布を検出し、各濃度反応素子(182)の抵抗値の合算値(R)を第1基準閾値(Rref1)および第2基準閾値(Rref2)と比較することで、水素欠乏が全体欠乏なのか、部分欠乏なのかを判別することができる。この結果、水素欠乏状態に応じて燃料電池内部の水素濃度を適切に調整することが可能となる。
しかも、請求項5に記載の発明によれば、水素濃度の低下に伴って電気抵抗が増加する濃度反応素子(182)を用いて、水素濃度検出手段(18)の構成を簡素化することができる。
【0027】
また、請求項
6に記載の発明では、請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の燃料電池システムにおいて、燃料オフガス循環流路(22)から分岐されて燃料オフガスを外部に排出するための燃料オフガス排出流路(21)と、燃料オフガス排出流路(21)に設けられ、燃料オフガスを外部に排出する燃料オフガス排出手段(26)と、燃料オフガス排出手段(26)の作動を制御する燃料オフガス排出制御手段(100b)と、を備え、燃料オフガス排出制御手段(100b)は、水素欠乏状態診断手段(100a)にて全体欠乏と判定された場合に、燃料オフガス排出流路(21)を介して燃料オフガスを外部に排出するように燃料オフガス排出手段(26)を制御することを特徴とする。
【0028】
このように、水素欠乏状態が全体欠乏と診断された場合、システム外部へ燃料オフガスを排出することで、燃料オフガスに含まれる多量の不純物を適切に排出し、水素欠乏を解消することができる。この結果、燃料電池(1)における耐久性の悪化を抑制することができる。これに加え、燃料オフガス排出流路(22)に存する燃料オフガスは、水素濃度が低いので、燃費の悪化を抑制しつつ安全にシステム外部に排出することができる。
【0029】
また、請求項
7に記載の発明では、請求項1ないし
6のいずれか1つに記載の燃料電池システムにおいて、燃料オフガス循環流路(22)に設けられ、燃料ガス供給流路(20)に燃料オフガスを戻す燃料オフガス循環手段(27)と、燃料オフガス循環手段(27)の作動を制御する燃料オフガス循環制御手段(100c)と、を備え、燃料オフガス循環制御手段(100c)は、水素欠乏状態診断手段(100a)にて部分欠乏と判定された場合に、燃料ガス供給流路(20)に戻す燃料オフガスの循環量が増大するように燃料オフガス循環手段(27)を制御することを特徴とする。
【0030】
このように、水素欠乏状態が部分欠乏と診断された場合、燃料オフガスの循環量を増大させることで、各単位セル(10)への燃料ガスの供給量を増加させることができ、燃料ガスの分配不良による水素欠乏を解消することができる。この際、燃料オフガスを有効利用するので、燃費の悪化を抑制しつつ、水素欠乏を解消することができる。
【0031】
また、請求項
8に記載の発明では、請求項1ないし
6のいずれか1つに記載の燃料電池システムにおいて、燃料ガス供給流路(20)に設けられ、燃料ガス供給マニホールド(16)への燃料ガスの供給圧力を調整する燃料ガス供給圧力調整手段(25)と、燃料ガス供給圧力調整手段(25)の作動を制御する燃料ガス供給圧力制御手段(100d)と、を備え、燃料ガス供給圧力制御手段(100d)は、水素欠乏状態診断手段(100a)にて部分欠乏と判定された場合に、燃料ガス供給マニホールド(16)に供給する燃料ガスの供給圧力が増大するように燃料ガス供給圧力調整手段(25)を制御することを特徴とする。
【0032】
このように、水素欠乏状態が部分欠乏と診断された場合、燃料ガスの供給圧力を増大させることで、各単位セル(10)への燃料ガスの供給量を増加させることができ、燃料ガスの分配不良による水素欠乏を解消することができる。
【0033】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0036】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について
図1〜
図10に基づいて説明する。
図1は本実施形態に係る燃料電池システムの全体構成図であり、
図2は、単位セル10の要部の断面図(積層方向の断面図)を示している。この燃料電池システムは、電気自動車の一種である、所謂燃料電池車両に適用されており、車両走行用電動モータ(図示略)等の電気負荷に電力を供給するものである。
【0037】
燃料電池システムは、
図1に示すように、水素と酸素との電気化学反応を利用して電力を発生する燃料電池1を備えている。燃料電池1は、車両走行用電動モータや二次電池といった電気負荷に供給される電気エネルギを出力するもので、本実施形態では、固体高分子電解質型燃料電池を採用している。より具体的には、燃料電池1は、基本単位となる単位セル10が複数積層されて、各単位セル10が電気的に直列に接続されて構成されたものである。
【0038】
図2に示すように、各単位セル10は、プロトン伝導性のイオン交換膜(固体高分子)からなる電解質膜11の両側面に一対の電極12、13が配置された膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)14と、この膜電極接合体14を狭持する一対のセパレータ15で構成されている。
【0039】
一対の電極12、13のうち、一方の電極が水素を主成分とする燃料ガスが供給される水素極12(アノード)として構成され、他方の電極が、酸素を主成分とする酸化剤ガス(空気)が供給される空気極13(カソード)として構成されている。なお、各電極12、13は、触媒層およびガス拡散層にて構成されている。
【0040】
また、一対のセパレータ15それぞれは、カーボン材や導電性金属よりなる板状プレートからなり、水素極12と対向する面に水素極12に水素を供給するための水素流路(燃料ガス流路)15aが形成され、空気極13と対向する面に空気極13に空気を供給するための空気流路15bが形成されている。
【0041】
図1に戻り、燃料電池1の内部には、各単位セル10の水素流路15aに水素を分配する水素供給用マニホールド16、および各単位セル10の水素流路15aの出口部から流出した水素を集合させる水素排出用マニホールド17が、各単位セル10の積層方向に延びるように配置されている。なお、本実施形態では、水素供給用マニホールド16が燃料ガス供給マニホールドを構成し、水素排出用マニホールド17が燃料ガス排出マニホールドを構成している。
【0042】
同様に、燃料電池1の内部には、各単位セル10の空気流路15bに空気を分配する空気供給用マニホールド(図示略)、および各単位セル10の空気流路15bから流出した空気を集合させる空気排出用マニホールド(図示略)が、各単位セル10の積層方向に延びるように配置されている。
【0043】
水素供給用マニホールド16および空気供給用マニホールドから水素および空気といった反応ガスが供給されると、各単位セル10では、以下に示すように、水素と酸素とを電気化学反応して、電気エネルギを出力する。
【0044】
(水素極側:アノード側)H
2→2H
++2e
−
(空気極側:カソード側)2H
++1/2O
2+2e
−→H
2O
なお、燃料電池1から出力される電気エネルギは、燃料電池1全体として出力される電圧を検出する電圧センサ(図示略)、および、燃料電池1全体として出力される電流を検出する電流センサ(図示略)によって計測される。なお、電圧センサおよび電流センサは、後述する制御装置100に接続されており、各センサの検出値が制御装置100に入力される。
【0045】
また、本実施形態の水素排出用マニホールド17には、複数の水素濃度センサ181を有する水素濃度検出装置18が配置されている。本実施形態の水素濃度検出装置18は、水素排出用マニホールド17における水素濃度の分布を検出する水素濃度検出手段を構成し、複数の水素濃度センサ181が、各単位セル10の水素流路15aから排出された水素の濃度を検出する検知部を構成している。なお、水素濃度検出装置18は、後述する制御装置100に接続されており、制御装置100には、水素濃度検出装置18の各水素濃度センサ181の検出値(水素濃度)が入力される。
【0046】
水素濃度検出装置18の各水素濃度センサ181は、
図3に示すように、水素の水素流れ上流側から下流側に渡って各単位セル10の水素流路15aそれぞれに対応して設けられている。本実施形態では、水素濃度センサ181として熱伝導式のガス濃度センサを採用している。
【0047】
本実施形態の水素濃度検出装置18は、
図4の分解斜視図、および
図5の断面図に示すように、複数の水素濃度センサ181、基板18aを水素排出用マニホールド17に固定する第1、第2ステー18b、18cを有する。第1、第2ステー18b、18cは、基板18aを挟持した状態で組み付けることで、各単位セル10の水素流路15aの出口部に対応する部位と水素排出用マニホールド17とを連通する連通路18dが形成されるように構成されている。そして、水素濃度センサ181は、連通路18d内に位置するように基板18aに実装されている。
【0048】
図1に戻り、燃料電池1には、水素供給用マニホールド16を介して各単位セル10に水素を供給するための水素供給配管20、および水素排出用マニホールド17を介して各単位セル10の内部に存する生成水や窒素を未反応水素と共に燃料電池1の外部に排出する水素排出配管21が接続されている。なお、本実施形態の水素供給配管20が燃料ガス供給流路を構成し、水素排出配管21が燃料オフガス排出流路を構成している。
【0049】
これら水素供給配管20および水素排出配管21は、水素循環配管22を介して接続されている。なお、本実施形態では、水素循環配管22が燃料オフガス循環流路を構成している。
【0050】
水素供給配管20には、その最上流部に、高圧水素が充填された高圧水素タンク23が設けられている。また、水素供給配管20における高圧水素タンク23と燃料電池1との間には、シャット弁24、および燃料電池1に供給される水素の圧力を所定の圧力に調整する水素調圧弁25が設けられている。
【0051】
燃料電池1に水素を供給する際に、シャット弁24が開放され、水素調圧弁25によって所望の水素圧力に調整された水素が燃料電池1に供給される。本実施形態では、水素調圧弁25が燃料ガス供給圧力調整手段を構成している。なお、車両停止時には、安全の為にシャット弁24は閉鎖される。
【0052】
水素排出配管21には、水素を燃料電池1の外部に排出するための排出弁26が設けられている。この排出弁26は、開放された際に、燃料電池1の水素極12側から水素排出配管21を介して、水素、蒸気(あるいは水)および空気極13側から電解質膜11を通過して水素極12側に混入した窒素、酸素などの不純物が排出される。本実施形態では、排出弁26が燃料オフガス排出手段を構成している。
【0053】
水素循環配管22は、水素排出配管21の排出弁26上流側から分岐して水素供給配管20の水素調圧弁25下流側に接続されている。これにより、燃料電池1から流出した未反応水素を含む燃料オフガスを、燃料電池1に循環させて再供給している。さらに、水素循環配管22には、燃料オフガスを水素供給配管20に循環させる水素循環ポンプ27が配置されている。なお、本実施形態では、水素循環ポンプ27が燃料オフガス循環手段を構成している。
【0054】
また、燃料電池1には、空気供給用マニホールドを介して各単位セル10に空気を供給するための空気供給配管30、および空気排出用マニホールドを介して各単位セル10の内部に存する生成水や窒素を空気と共に燃料電池1の外部に排出する空気排出配管31が接続されている。
【0055】
空気供給配管30には、空気を圧縮して吐出する空気供給装置32が設けられている。本実施形態では、空気供給装置32として圧送ポンプを用いている。なお、空気供給装置32は、後述する制御装置100に接続されて、制御装置100からの制御信号に応じて作動が制御される。
【0056】
制御装置100は、各種入力信号に基づいて各種演算処理を実行するもので、CPU、およびROM、RAMといった記憶手段等からなる周知のマイクロコンピュータとその周辺回路により構成されている。
【0057】
制御装置100の入力側には、上述のように水素濃度検出装置18に接続されており、水素濃度検出装置18の各水素濃度センサ181から検出値(水素濃度)が入力される。また、制御装置100の出力側には、水素調圧弁25、排出弁26、水素循環ポンプ27、空気供給装置32等の構成機器が接続されており、水素濃度検出装置18等の各種入力機器からの入力信号に基づいて、各種構成機器25、26、27、32が制御される。
【0058】
ここで、燃料オフガスには、未反応水素以外にも空気極13側から水素極12側へと透過した窒素等の不純物が含まれており、燃料オフガスを、水素循環配管22を介して水素供給配管20に循環する循環運転を継続すると、単位セル10の水素極12側への水素の供給不足(水素欠乏)が生じ易くなる。この水素欠乏には、燃料ガスの供給不足により燃料電池全体に生ずる全体欠乏、および各単位セル内部の圧力損失等に起因する燃料ガスの分配不良によって燃料電池1の一部の単位セル10に生ずる部分欠乏が存在する。
【0059】
これら全体欠乏および部分欠乏は、それぞれ発生要因が異なるため、水素欠乏が全体欠乏なのか、部分欠乏なのかを判別し、当該判別結果に応じて水素濃度を調整することが必要となる。
【0060】
このため、本実施形態の制御装置100では、水素濃度検出装置18の各水素濃度センサ181での検出値に基づいて燃料電池1の内部における水素欠乏状態を診断する水素欠乏状態診断処理を行うことで、水素欠乏が全体欠乏なのか、部分欠乏なのかを判別するようにしている。
【0061】
さらに、本実施形態の制御装置100では、水素欠乏状態診断処理の結果に応じて燃料オフガスを排出する排出処理、および水素循環ポンプ27の回転数を制御して燃料ガスの循環量を調整する循環量調整処理等を行う。なお、本実施形態では、制御装置100における水素欠乏状態を診断する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)を水素欠乏状態診断手段100aとする。また、燃料オフガス排出手段である排出弁26の作動を制御する構成を燃料オフガス排出制御手段100bとし、燃料オフガス循環手段である水素循環ポンプ27の作動を制御する構成を燃料オフガス循環制御手段100cとし、燃料ガス供給圧力調整手段である水素調圧弁25の作動を制御する構成を燃料ガス供給圧力制御手段100dとする。
【0062】
次に、本実施形態の制御装置100が実行する水素欠乏状態診断処理を含む水素濃度調整処理について
図6〜
図10に基づいて説明する。
図6は、本実施形態の制御装置100が実行する水素濃度調整処理の流れを示すフローチャートである。
図6に示す制御フローは、燃料電池1を起動させ、燃料電池1に対して燃料オフガスを循環させる循環運転が開始されるとスタートする。なお、説明の便宜のため、本実施形態における制御装置100の制御処理の説明では、水素排出用マニホールド17に5つの水素濃度センサ181が配置されているものとする。
【0063】
まず、水素排出用マニホールド17に配置された各水素濃度センサ181にて検出された水素濃度S(n)(n=1〜5)を読み込み(S10)、読み込んだ各水素濃度S(n)の平均値Savgを算出する(S20)。
【0064】
そして、水素濃度S(n)の平均値Savgが、予め定められた平均基準濃度以下であるか否かを判定する(S30)。なお、平均基準濃度Y1は、実験やシミュレーション等によって水素欠乏が燃料電池1全体に生ずる際の水素濃度分布に基づいて算出しており、予め制御装置100の記憶手段に記憶されている。
【0065】
ここで、
図7は、燃料電池1全体で水素欠乏が生じた場合における水素排出用マニホールド17内の水素濃度分布の一例を示している。なお、
図7における横軸は、右側が水素排出用マニホールド17における出口部に近い位置(出口側)を示し、左側が水素排出用マニホールド17の出口部に対して遠い位置(奥側)を示している。このことは、以降の水素濃度分布を示す図面においても同様である。
【0066】
水素供給用マニホールド16から各単位セル10に充分な水素濃度を有する燃料ガスが供給されている場合(燃料オフガスの循環運転の初期段階等)、水素排出用マニホールド17内の水素濃度分布は、
図7の「異常なし」で示すように、一様に水素濃度が高い分布となる。
【0067】
これに対して、燃料オフガスの循環運転が継続されると、各単位セル10内の分圧差により空気極13に含まれる窒素等が水素極12側へと透過し、水素極12側における不純物の量が徐々に増大して水素排出用マニホールド17内の水素濃度が低下する。水素濃度の低下が燃料ガスの供給不足に起因して生じている場合、
図7に示すように、水素排出用マニホールド17内の水素濃度の分布が一様に低下する傾向がある。
【0068】
このため、ステップS30の判定処理の結果、水素濃度S(n)の平均値Savgが、平均基準濃度Y1以下であると判定された場合(S30:YES)には、水素欠乏が燃料電池1全体に生ずる全体欠乏であると診断する(S40)。
【0069】
水素欠乏が燃料電池1全体に生ずる全体欠乏である場合、燃料電池1の出力が著しく低下すると共に、燃料電池1の劣化が進行して耐久性の悪化を招くことがあり、燃料電池1内部の燃料ガスを入れ替える必要がある。
【0070】
このため、S40にて、水素欠乏が燃料電池1全体に生ずる全体欠乏であると診断した後、排出弁26を開放して、燃料電池1内部の水素および不純物のシステム外部への排出量を増大させる(S50)。なお、排出弁26を開放すると燃料電池1内部の圧力が低下するため、水素調圧弁25の開度が開放側に調整されて、燃料電池1内部に高圧水素タンク23から水素が供給される。これにより、水素欠乏が燃料電池1全体に生ずる全体欠乏を解消することができる。
【0071】
一方、上述したステップS30の判定処理の結果、水素濃度S(n)の平均値Savgが、平均基準濃度Y1より高いと判定された場合(S30:NO)には、各水素濃度センサ181を特定するためのカウンタnを初期化(n=1)して、水素排出用マニホールド17における最上流側の水素濃度S(1)が予め定められた部分基準濃度以下であるか否かを判定する(S70)。
【0072】
ここで、水素排出用マニホールド17における水素濃度は、上述の部分欠乏が生じた場合には、水素流れ上流側(燃料オフガス流れ上流側)から下流側に向かって高くなる傾向がある。このため、本実施形態では、部分基準濃度Y2を一定値ではなく、水素排出用マニホールド17における水素流れ上流側から下流側に向かって高くなるように設定している。なお、部分基準濃度Y2は、実験やシミュレーション等によって水素欠乏が燃料電池1の一部の単位セル10に生ずる際の水素濃度分布に基づいて算出しており、予め制御装置100の記憶手段に記憶されている。
【0073】
図8は、燃料電池1の単位セル10の一部で水素欠乏が生じた場合における水素排出用マニホールド17内の水素濃度分布の一例を示し、
図9および
図10は、燃料電池1の単位セル10の一部で水素欠乏が生じた場合における水素排出用マニホールド17内の水素濃度分布の他の例を示している。
【0074】
水素濃度の低下が燃料ガスの分配不良に起因して生じている場合、
図8〜
図10に示すように、水素排出用マニホールド17内の水素濃度が部分的に低下した分布となる。このため、ステップS70の判定処理の結果、水素濃度S(1)が、部分基準濃度Y2以下であると判定された場合(S70:YES)には、水素欠乏が燃料電池1の単位セル10の一部で生ずる部分欠乏であると診断する(S80)。
【0075】
水素欠乏が燃料電池1の単位セル10の一部に生ずる部分欠乏である場合、各単位セル10への分配不良が生じていると考えられるので、水素循環ポンプ27の回転数を増大させる(S90)。これにより、各単位セル10への燃料オフガスの循環量が増大し、各単位セル10への水素の供給量が増加するので、燃料電池1の単位セル10への分配不良による水素欠乏を解消することができる。
【0076】
また、上述したステップS70にて水素濃度S(1)が部分基準濃度Y2より高いと判定された場合(S70:NO)には、下流側に配置された水素濃度センサ181にて検出した水素濃度S(2)を用いて部分欠乏であるか否かの診断を行うために、カウンタnをインクリメント(n=n+1)して更新する(S100)。
【0077】
そして、カウンタnが水素濃度センサ181の個数N以下であるか否かを判定し(S110)、カウンタnが水素濃度センサ181の個数N以下であれば、ステップS70に戻り、水素排出用マニホールド17における下流側の水素濃度S(n)と部分基準濃度Y2との比較判定を行う。
【0078】
ステップS110の判定処理の結果、カウンタnが水素濃度センサ181の個数Nよりも多いと判定された場合、全体欠乏および部分欠乏のいずれもが発生していない状態であるため、燃料電池1の状態を水素欠乏なし(正常)と診断する(S120)。
【0079】
以上説明した本実施形態の構成によれば、水素排出用マニホールド17の内部に配置された複数の水素濃度センサ181により水素排出用マニホールド17における水素濃度の分布を検出することで、水素欠乏が全体欠乏なのか、部分欠乏なのかを判別することができる。
【0080】
そして、水素欠乏状態が全体欠乏と診断された場合、システム外部への燃料オフガスの排出量を増大させることで、燃料オフガスに含まれる多量の不純物を適切に排出し、水素欠乏を解消することができる。
【0081】
この結果、燃料電池1における耐久性の悪化を抑制することができる。これに加え、水素排出配管21に存する燃料オフガスは、水素濃度が低いので、燃費の悪化を抑制しつつ安全にシステム外部に排出することができる。
【0082】
一方、水素欠乏状態が部分欠乏と診断された場合、燃料オフガスの循環量を増大させることで、各単位セル10への水素の供給量を増加させることができ、燃料ガスの分配不良による水素欠乏を解消することができる。この際、燃料オフガスを有効利用するので、燃費の悪化を抑制しつつ、水素欠乏を解消することができる。
【0083】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図11に基づいて説明する。
図11は、本実施形態に係る制御装置100が実行する水素濃度調整処理の流れを示すフローチャートである。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0084】
本実施形態では、ステップS80にて水素欠乏が部分欠乏と診断された場合、ステップS130に進み、水素調圧弁25の開度を開放側に制御して、水素の供給圧力を増大させるようにしている。
【0085】
このように、水素欠乏が部分欠乏である場合には、水素の供給圧力を増大させることで、各単位セル10への水素の供給量を増加させることができ、水素の分配不良による水素欠乏を解消することができる。
【0086】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、水素濃度検出装置18の検知部として、水素濃度に相関して抵抗値(物理量)が変化する濃度反応素子182を用いている。濃度反応素子182は、水素濃度の低下に伴って抵抗値が増大する素子を用いている。
【0087】
濃度反応素子182としては、プロトン(H
+)の受容により電気抵抗が低下する特性を有する周知の素子(例えば、特許第3868989号公報参照)を用いることができる。なお、濃度反応素子182としては、濃度反応素子182の周囲の水素濃度が充分に高い場合の抵抗値が、水素濃度が低下した場合に10倍以上となるものを採用することが望ましい。
【0088】
水素濃度検出装置18の各濃度反応素子182は、
図12に示すように、各単位セル10の水素流路15aそれぞれに対応して設けられている。
【0089】
本実施形態の各濃度反応素子182は、電気的に直列に接続された直列接続体を構成しており、水素濃度検出装置18では、各濃度反応素子182の抵抗値が合算された総抵抗(合算値)の変化を水素濃度の分布として検出するようになっている。なお、制御装置100には、各濃度反応素子182の抵抗値を合算した合算値が入力される。
【0090】
本実施形態の水素濃度検出装置18は、
図13の分解斜視図に示すように、複数の濃度反応素子182、基板18aを水素排出用マニホールド17に固定する第1、第2ステー18b、18cを有する。各濃度反応素子182は、各ステー18b、18cを組み付けた際に形成される連通路18d内に位置するように基板18aに実装されている。
【0091】
ここで、燃料電池1で水素欠乏が生じた場合における各濃度反応素子182の抵抗値の変化について、
図14、および
図15を用いて説明する。この説明では、水素排出用マニホールド17に10個の濃度反応素子182を直列接続した直列接続体が配置され、濃度反応素子182の周囲の水素濃度が充分に高い場合の濃度反応素子182の抵抗値を「Ra(Ω)」としたとき、水素濃度が低下した際に濃度反応素子182の抵抗値が「10Ra(Ω)」(抵抗が10倍)となるものとする。なお、
図14および
図15における横軸は、前述の
図7と同様であり、説明を省略する。
【0092】
まず、水素供給用マニホールド16から各単位セル10に充分な水素濃度を有する燃料ガスが供給されている場合、
図14(a)の「異常なし」で示すように、各濃度反応素子182の抵抗値が、一様に低い分布となる(抵抗値の合算値R=10Ra)。
【0093】
これに対して、燃料ガスの供給不足に起因して、水素欠乏が燃料電池1全体に生ずる場合(全体欠乏)、水素排出用マニホールド17内の全域で水素濃度が低下して、
図14(a)の全体欠乏に示すように、各濃度反応素子182の抵抗値が、一様に高い分布となる(抵抗値の合算値R=100Ra)。また、水素排出用マニホールド17内の水素流れ下流側の全域で水素濃度が低下して、
図15(a)に示すように、各濃度反応素子182の抵抗値が、水素流れ下流側の全域で高い分布となる(抵抗値の合算値R=55Ra)。
【0094】
一方、各単位セル10への燃料ガスの分配不良に起因して、水素欠乏が燃料電池1の単位セル10の一部に生ずる場合(部分欠乏)、水素排出用マニホールド17内の一部で水素濃度が低下して、
図14(b)および
図15(b)に示すように、各濃度反応素子182の抵抗値の一部が高い分布となる(抵抗値の合算値R=19Ra、29Ra)。
【0095】
このように、燃料電池1で水素欠乏が生じた場合、各濃度反応素子182の抵抗値の合算値Rが顕著に変化するため、各濃度反応素子182の抵抗値の合算値Rに基づいて、水素欠乏状態を把握することができる。
【0096】
次に、本実施形態の制御装置100が実行する水素欠乏状態診断処理を含む水素濃度調整処理について
図16に基づいて説明する。
図16は、本実施形態の制御装置100が実行する水素濃度調整処理の流れを示すフローチャートである。
図16に示す制御フローは、燃料電池1を起動させ、燃料電池1に対して燃料オフガスを循環させる循環運転が開始されるとスタートする。
【0097】
まず、水素排出用マニホールド17に配置された各濃度反応素子182の抵抗値の合算値Rを検出し(S200)、検出した合算値Rが、予め定められた第1基準閾値Rref1より小さいか否かを判定する(S210)。なお、第1基準閾値Rref1は、実験等によって、水素欠乏が燃料電池1の一部に生ずる際の水素濃度分布に対応する各濃度反応素子182の抵抗値の合算値Rに基づいて算出しており、予め制御装置100の記憶手段に記憶されている。
【0098】
ステップS210の判定処理の結果、各濃度反応素子182の抵抗値の合算値Rが、第1基準閾値Rref1以下である場合(S210:YES)には、燃料電池1の状態を水素欠乏なし(正常)と診断する(S220)。
【0099】
一方、ステップS210の判定処理の結果、各濃度反応素子182の抵抗値の合算値Rが第1基準閾値Rref1より大きい場合(S210:NO)には、各濃度反応素子182の抵抗値の合算値Rが、予め第1基準閾値Rref1より大きい値に設定された第2基準閾値Rref2より小さいか否かを判定する(S230)。
【0100】
この結果、各濃度反応素子182の抵抗値の合算値Rが第2基準閾値Rref2より大きい場合(S230:NO)には、水素欠乏が燃料電池1全体に生ずる全体欠乏であると診断する(S240)。そして、排出弁26を開放して、燃料電池1内部の水素および不純物のシステム外部への排出量を増大させて(S250)、水素欠乏が燃料電池1全体に生ずる全体欠乏を解消する。
【0101】
一方、各濃度反応素子182の抵抗値の合算値Rが第2基準閾値以下である場合(S230:YES)には、水素欠乏が燃料電池1の単位セル10の一部で生ずる部分欠乏であると診断する(S260)。そして、水素循環ポンプ27の回転数を増大させて(S90)、燃料電池1の単位セル10への分配不良による水素欠乏を解消する。なお、第2実施形態のように、水素調圧弁25の開度を開放側に制御して、水素の供給圧力を増大させることで、水素の分配不良による水素欠乏を解消してもよい。
【0102】
以上説明した本実施形態の構成によれば、水素排出用マニホールド17の内部に配置された複数の濃度反応素子182の抵抗値の変化に基づいて水素排出用マニホールド17における水素濃度の分布を検出することで、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0103】
特に、本実施形態では、水素濃度検出装置18の検知部を濃度反応素子182で構成すると共に、各濃度反応素子182を電気的に直列接続した直列接続体の抵抗値(各濃度反応素子182の抵抗値の合算値)を制御装置100に入力する構成としており、第1実施形態に比べて、水素濃度検出装置18の簡素化を図ることができる。
【0104】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0105】
(1)上述の各実施形態では、水素濃度検出装置18の各水素濃度センサ181、および各濃度反応素子182を、水素排出用マニホールド17内に位置する連通路18dに配置する例を説明したが、これに限定されない。
【0106】
例えば、
図17の断面図、および
図18の斜視図に示すように、基板18aの一部が水素流路15aの出口部まで延びる形状とし、基板18aにおける水素流路15aの出口部内に位置する部位に検知部(水素濃度センサ181、濃度反応素子182)を配置するようにしてもよい。
【0107】
(2)上述の第1実施形態では、各単位セル10の水素流路15aの出口部に対応して複数の水素濃度センサ181を配置する例を説明したが、これに限定されない。例えば、水素濃度検出装置18の各ステー18b、18cにて形成される連通路18dを、隣接する複数の単位セル10の水素流路15aの出口部を横断する形状し、当該連通路18d内に水素濃度センサ181を配置するようにしてもよい。同様に、第3実施形態において、
図19に示すように、隣接する複数の単位セル10の水素流路15aの出口部に対応して濃度反応素子182を配置してもよい。
【0108】
(3)上述の第1実施形態のように、水素排出用マニホールド17の水素流れ上流側と下流側とで異なる部分基準濃度Y2を設定することが好ましいが、これに限定されず、例えば、部分基準濃度Y2を一定値としてもよい。
【0109】
(4)上述の第3実施形態では、各濃度反応素子182の全てを電気的に直列に接続する例について説明したが、これに限定されず、各濃度反応素子182のうち、一部の濃度反応素子182を電気的に直列に接続してもよい。例えば、均等な数の濃度反応素子182を直列接続してもよいし、
図20に示すように、不均等な数の濃度反応素子182を直列接続してもよい。この場合、制御装置100において、各濃度反応素子182の抵抗値の合算値を算出し、当該合算値に応じて水素欠乏状態の診断処理を行えばよい。
【0110】
(5)上述の各実施形態では、水素欠乏を全体欠乏および部分欠乏のいずれに該当するかを診断し、当該診断結果に応じて水素濃度を調整する構成としているが、これに限定されない。例えば、水素欠乏を全体欠乏および部分欠乏のいずれに該当するかを診断し、当該診断結果をユーザに報知するようにしてもよい。
【0111】
(6)上述の各実施形態では、本発明の燃料電池システムを燃料電池車両に適用した例を説明したが、これに限定されず、船舶及びポータブル発電器等の移動体に適用してもよい。