特許第5811070号(P5811070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5811070
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/14 20060101AFI20151022BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20151022BHJP
   H01G 9/02 20060101ALI20151022BHJP
【FI】
   H01M2/14
   H01M10/04 Z
   H01G9/02 301
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-226315(P2012-226315)
(22)【出願日】2012年10月11日
(65)【公開番号】特開2014-78447(P2014-78447A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】小田切 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】秋山 泰有
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−059363(JP,A)
【文献】 特開2012−079466(JP,A)
【文献】 特開平07−220753(JP,A)
【文献】 特開2012−043564(JP,A)
【文献】 特開2010−287456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/00 − 2/08
H01M 2/14 − 2/18
H01M 10/00 − 10/04
H01M 10/06 − 10/34
H01M 10/05 − 10/0587
H01M 10/36 − 10/39
H01G 9/00
H01G 11/00 − 11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質層を有する正極電極と、負極活物質層を有する負極電極とがセパレータを間に挟んだ状態で積層されて構成された電極組立体と、
前記電極組立体を収容するケースと、
前記電極組立体と前記ケースとの間に介在して前記電極組立体と前記ケースとを絶縁する絶縁部材と
を備えた蓄電装置において、
前記電極組立体の積層方向に交差する端面は、積層方向において前記正極活物質層及び前記負極活物質層が対向する対向領域が投影される対向部を備え、
前記対向部上には、前記正極電極、前記負極電極及び前記セパレータを固定するための固定テープが配置され、
前記絶縁部材の積層方向の内面のうち、前記対向部と対向し、かつ前記固定テープと対向する面部位に凹部が形成されていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記凹部の深さは、前記固定テープの厚みの2倍未満である請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記絶縁部材は、前記固定テープと同一の材料によって構成されている請求項1又は請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記絶縁部材は、2枚の絶縁シートを重ね合わせることにより構成され、
前記2枚の絶縁シートのうち一方の絶縁シートには、該一方の絶縁シートの厚み方向に貫通した貫通孔、もしくは切り欠きが形成され、
前記2枚の絶縁シートが重ね合わされた場合に、前記貫通孔、もしくは前記切り欠きにおける片側の開口が他方の絶縁シートによって覆われることにより前記凹部が構成されている請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記蓄電装置は二次電池である請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug in Hybrid Vehicle)などの車両には、走行用モータへの供給電力を蓄える蓄電装置としての二次電池が搭載されている。二次電池は、例えば両面に正極活物質層が形成された正極シート及び両面に負極活物質層が形成された負極シートがセパレータを間に挟んだ状態で積層された電極組立体と、当該電極組立体を収容するケースとを備えている。また、特許文献1には、電極組立体を構成する各電極シート及びセパレータを固定するべく固定テープを貼り付け、さらにその電極組立体とケースとの短絡を抑制するべく、電極組立体を固定テープごと絶縁シートで覆う構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−220753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、各電極シートの密着性向上及び位置ずれ抑制の観点から、各活物質層が対向している対向領域に対して各電極シートの積層方向から荷重(押圧力)を付与する場合がある。また、電極組立体が充放電に伴って膨張する場合、ケースから対向領域に対して荷重が付与される場合がある。さらに、複数の蓄電装置を積層方向に重ねて、それぞれを直列に接続することで組電池を形成した場合には、当該各蓄電装置には、積層方向から拘束荷重が付与される場合がある。これらの場合、電極組立体とケースの内面との間に介在している固定テープに荷重が集中し、電気伝導に係るイオンの析出物が発生する場合がある。特に、上記のように固定テープと絶縁シートとが重なっていると、固定テープの厚さの分だけ絶縁シートが突出し、そこに荷重が集中し易くなるため、上記析出物が発生し易い。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、各活物質層が対向している対向領域に局所的な荷重が付与されることを抑制することができる蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、正極活物質層を有する正極電極と、負極活物質層を有する負極電極とがセパレータを間に挟んだ状態で積層されて構成された電極組立体と、前記電極組立体を収容するケースと、前記電極組立体と前記ケースとの間に介在して前記電極組立体と前記ケースとを絶縁する絶縁部材とを備えた蓄電装置において、前記電極組立体の積層方向に交差する端面は、積層方向において前記正極活物質層及び前記負極活物質層が対向する対向領域が投影される対向部を備え、前記対向部上には、前記正極電極、前記負極電極及び前記セパレータを固定するための固定テープが配置され、 前記絶縁部材の積層方向の内面のうち、前記対向部と対向し、かつ前記固定テープと対向する面部位に凹部が形成されていることを要旨とする。
【0007】
これによれば、固定テープにおいて対向部上に配置される部分は、対向部から電極組立体の積層方向に突出して絶縁部材の凹部の内側に配置されている。そのため、電極組立体がケースに収容されることにより電極組立体の対向部に絶縁部材が密着する際に、固定テープにおいて対向部上に配置される部分と絶縁部材とが互いに押し潰されて変形する変形量が低減される。その結果、電極組立体の対向部に対して絶縁部材から固定テープを通じて局所的に荷重が付与されることが抑制される。したがって、対向部に対して電極組立体の積層方向に作用する荷重の偏りに起因して、両電極における活物質層が対向している対向領域に対して局所的に荷重が付与されることを抑制できる。また、固定テープは、絶縁部材の凹部の内面によって電極組立体の外側から押し付けられるとともに、絶縁部材によって電極組立体の外側から覆われて保護されている。そのため、固定テープが電極組立体から剥離することを抑制できる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の蓄電装置において、前記凹部の深さは、前記固定テープの厚みの2倍未満であることを要旨とする。
これによれば、凹部の深さが固定テープの厚みよりも浅い場合には、固定テープにおいて対向部上に配置される部分は、一部が押し潰されて変形しつつも絶縁部材の凹部の内側に配置されて凹部の底面に密着する。そのため、絶縁部材に凹部を設けない場合と比較して、絶縁部材が対向部及び固定テープの双方に密着するまでの間に、固定テープ及び絶縁部材が互いに押し潰されて変形する変形量が低減される。
【0009】
また、凹部の深さが固定テープの厚みと同一である場合には、固定テープにおいて対向部上に配置される部分は、絶縁部材によってほとんど押し潰されることなく絶縁部材の凹部の内側に配置されて凹部の底面に密着する。そのため、絶縁部材に凹部を設けない場合と比較して、絶縁部材が対向部及び固定テープの双方に密着するまでの間に、固定テープ及び絶縁部材が互いに押し潰されて変形する変形量が低減される。
【0010】
また、凹部の深さが固定テープの厚みよりも深い場合には、対向部が絶縁部材に接触する時点では、固定テープにおいて対向部上に配置される部分は、絶縁部材の凹部の底面に対して隙間を介在させて対向している。そして、絶縁部材における凹部が形成されていない部分がこの隙間の分だけ対向部によって押し潰されつつ、固定テープにおいて対向部上に配置される部分が凹部の底面に密着する。
【0011】
この場合、請求項2に記載の発明では、凹部の深さは、固定テープの厚みの2倍未満であるため、対向部が絶縁部材に接触する時点では、固定テープにおいて対向部上に配置される部分は、絶縁部材の凹部の底面に対して固定テープの厚みよりも小さい隙間を介在させて対向している。そのため、絶縁部材が対向部及び固定テープの双方に密着するまでの間に、絶縁部材における凹部が形成されていない部分が固定テープの厚みよりも小さい寸法だけ対向部によって押し潰される。
【0012】
これに対し、絶縁部材に凹部を設けない場合には、絶縁部材が対向部及び固定テープの双方に密着するまでの間に、固定テープの厚みの分だけ固定テープ及び絶縁部材が互いに押し潰される。そのため、請求項2に記載の発明では、絶縁部材に凹部を設けない場合と比較して、絶縁部材が対向部及び固定テープの双方に密着するまでの間に、固定テープ及び絶縁部材が互いに押し潰されて変形する変形量が低減される。
【0013】
したがって、請求項2に記載の発明によれば、電極組立体の対向部に対して絶縁部材から固定テープを通じて局所的に荷重が付与されることが抑制される。そして、対向部に対して電極組立体の積層方向に作用する荷重の偏りに起因して、両電極における活物質層が対向している対向領域に対して局所的に荷重が付与されることを抑制できる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の蓄電装置において、前記絶縁部材は、前記固定テープと同一の材料によって構成されていることを要旨とする。
これによれば、絶縁部材と固定テープとが同一の材料であるため、両部材の硬さが同一となっている。そのため、対向部に対して荷重が付与された場合に、固定テープ及び絶縁部材の双方に荷重を好適に分散させることができる。したがって、対向部に対して電極組立体の積層方向に作用する荷重の偏りに起因して、対向領域に対して荷重が集中することを抑制できる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の蓄電装置において、前記絶縁部材は、2枚の絶縁シートを重ね合わせることにより構成され、前記2枚の絶縁シートのうち一方の絶縁シートには、該一方の絶縁シートの厚み方向に貫通した貫通孔、もしくは切り欠きが形成され、前記2枚の絶縁シートが重ね合わされた場合に、前記貫通孔、もしくは前記切り欠きにおける片側の開口が他方の絶縁シートによって覆われることにより前記凹部が構成されていることを要旨とする。
【0016】
これによれば、絶縁部材に対して凹部を容易に形成することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の蓄電装置において、前記蓄電装置は二次電池であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、各活物質層が対向している対向領域に局所的な荷重が付与されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態における二次電池の分解斜視図。
図2】電極組立体の分解斜視図。
図3】電極組立体及び絶縁部材の分解斜視図。
図4】絶縁部材が電極組立体に密着した状態を示す要部拡大断面図。
図5】(a)は別例の絶縁部材が電極組立体に密着する前の状態を示す要部拡大断面図、(b)は別例の絶縁部材が電極組立体に密着した後の状態を示す要部拡大断面図。
図6】(a)は別例の絶縁部材が電極組立体に密着する前の状態を示す要部拡大断面図、(b)は別例の絶縁部材が電極組立体に密着した後の状態を示す要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1図4にしたがって説明する。
図1に示すように、二次電池10には、アルミニウム製のケース11に電極組立体12が収容されている。ケース11は、矩形箱状をなすケース本体13と、ケース本体13の開口部を閉塞する矩形平板状をなす蓋部材14とからなる。なお、本実施形態の二次電池10は、その外形状が角型をなす角型電池である。また、本実施形態の二次電池10は、リチウムイオン電池である。
【0020】
電極組立体12には、当該電極組立体12との間で電気を授受する正極端子15と負極端子16が電気的に接続されている。正極端子15及び負極端子16は、蓋部材14からケース11の外部に向けて露出されている。また、両電極端子15,16と蓋部材14との間には、蓋部材14から両電極端子15,16を絶縁するための絶縁リング17,18がそれぞれ介設されている。そして、電極組立体12は、矩形板状の正極導電部材19を介して正極端子15に対して電気的に接続されると共に、矩形板状の負極導電部材20を介して負極端子16に対して電気的に接続されている。
【0021】
図2に示すように、電極組立体12は、金属箔21aの両面に正極活物質が塗布された正極活物質層21bを有する矩形シート状の正極電極21と、金属箔22aの両面に負極活物質が塗布された負極活物質層22bを有する矩形シート状の負極電極22とが、電気伝導に係るリチウムイオンが通過可能に構成された矩形シート状のセパレータ23を両電極21,22の間に介在させた状態で積層されている。
【0022】
正極電極21は、正極活物質層21bが形成された部分が矩形状に形成されると共に、正極活物質が塗布されていない未塗工部21cが金属箔21aの一方の長辺部21dに沿って形成されている。また、正極電極21は、未塗工部21cの一部である正極タブ21eが金属箔21aの長辺部21dから突出している。負極電極22も同様に、負極活物質層22bが形成された部分が矩形状に形成されると共に、負極活物質が塗布されていない未塗工部22cが金属箔22aの一方の長辺部22dに沿って形成されている。また、負極電極22は、未塗工部22cの一部である負極タブ22eが金属箔22aの長辺部22dから突出している。なお、正極電極21の正極活物質層21bは、負極電極22の負極活物質層22bよりも一回り小さく構成されている。そして、正極電極21は正極タブ21eが重なるようにして一定方向に積層されると共に、負極電極22は負極タブ22eが重なるようにして一定方向に積層されている。
【0023】
また、図3に示すように、電極組立体12は、両電極21,22の活物質層21b,22bがセパレータ23を介して互いに対向する対向領域24を有している。また、電極組立体12の積層方向に交差する両端面12a,12bは、矩形状をなす平坦面であり、電極組立体12の積層方向において対向領域24が投影される対向部25を有している。そして、対向部25の面積は、正極電極21の正極活物質層21bの面積と一致している。
【0024】
また、電極組立体12の積層方向に交差する両端面12a,12bには、6つの固定テープ51が電極組立体12の積層方向に沿う各側面12c,12d,12e,12fをそれぞれ跨るように貼り付けられている。具体的には、6つの固定テープ51のうち、2つの固定テープ51A,51Bは、電極組立体12において両電極タブ21e,22eが設けられた側面12fとは反対側の側面12cを跨るようにして電極組立体12の両端面12a,12bにおいて側面12cと隣り合う長辺部L1の両端に貼り付けられている。また、6つの固定テープ51のうち、1つの固定テープ51Cは、電極組立体12の側面12dを跨るようにして電極組立体12の両端面12a,12bにおいて側面12dと隣り合う短辺部L2の中央に貼り付けられている。また、6つの固定テープ51のうち、1つの固定テープ51Dは、電極組立体12の側面12eを跨るようにして電極組立体12の両端面12a,12bにおいて側面12eと隣り合う短辺部L3の中央に貼り付けられている。また、6つの固定テープ51のうち、2つの固定テープ51E,51Fは、電極組立体12の側面12fを跨るようにして電極組立体12の両端面12a,12bにおいて側面12fと隣り合う長辺部L4の両端に貼り付けられている。なお、各固定テープ51A〜51Fにおいて電極組立体12の両端面12a,12bに貼り付けられる部位は貼付部51Sとされている。そして、固定テープ51A〜51Fの貼付部51Sは、互いに重なり合うことなく、電極組立体12の両端面12a,12bにおける互いに異なる面部位にそれぞれ貼り付けられている。
【0025】
そして、各固定テープ51A〜51Fが電極組立体12の両端面12a,12bに貼り付けられることにより、正極電極21、負極電極22、及びセパレータ23が固定されている。この場合、固定テープ51A〜51Fの貼付部51Sの一部は、電極組立体12の積層方向において対向部25と重畳している。そのため、固定テープ51の貼付部51Sの一部は、対向部25とケース11の内面との間に介在している。
【0026】
また、図1及び図3に示すように、電極組立体12とケース11の内面との間には、電極組立体12とケース11とが電気的に短絡することを規制する絶縁部材61が設けられている。絶縁部材61は、固定テープ51の基材と同じ材料(例えばポリプロピレン)によって構成された2枚の絶縁シート61A,61Bを重ね合わせたものを接着剤によって互いに接着した構成とされている。
【0027】
具体的には、絶縁部材61を構成する2枚の絶縁シート61A,61Bのうち、電極組立体12を絶縁部材61によって覆った場合に電極組立体12に面する内側の絶縁シート61Aには、各固定テープ51A〜51Fと対応する位置に貫通孔72が形成されている。なお、図3に示すように、絶縁シート61Aの端部には貫通孔ではなく、切り欠きが形成されている。この貫通孔72は、絶縁シート61Aの厚み方向に貫通形成されている。その一方で、絶縁部材61を構成する2枚の絶縁シート61A,61Bのうち、電極組立体12を絶縁部材61によって覆った場合に内側の絶縁シート61Aを外側から覆う絶縁シート61Bには、絶縁シート61Aにおける貫通孔72の形成部位に対応する面部位に貫通孔が形成されていない。そのため、絶縁シート61Aに形成された貫通孔72の片側の開口が絶縁シート61Bによって覆われることにより、絶縁部材61において各固定テープ51A〜51Fに対応する位置に凹部73が形成されている。また、凹部73の大きさは、固定テープ51よりも一回り大きい面積とされている。そのため、電極組立体12を絶縁部材61によって覆った場合に、絶縁部材61の凹部73の内側に各固定テープ51A〜51Fが配置されている。また、絶縁シート61Bの外縁形状は、貫通孔72の形成部位を除く絶縁シート61Aの外縁形状と同一の形状となっている。
【0028】
そして、絶縁部材61は、2枚の絶縁シート61A,61Bを重ね合わせたものが折り曲げられることにより、電極組立体12の各面12a,12b,12c,12d,12e,12fのうち、両電極タブ21e,22eが設けられた側面12f以外の面12a,12b,12c,12d,12eを覆う箱形状となっている。
【0029】
具体的には、両絶縁シート61A,61Bは、電極組立体12の積層方向に交差する両端面12a,12bを覆う第1面61a及び第2面61bを有している。また、両絶縁シート61A,61Bは、第1面61a及び第2面61bに連なって構成され、電極組立体12の側面12cを覆う第3面61cを有している。さらに、両絶縁シート61A,61Bは、第1面61a及び第3面61cに連なって構成され、電極組立体12における端面12a,12b及び側面12c,12fと直交する側面12d,12eを覆う第4面61d及び第5面61eを有している。
【0030】
また、両絶縁シート61A,61Bにおける第1面61a及び第2面61bには、第3面61cと連なる辺部61aa,61baに対する対辺である辺部61ab,61bbに、絶縁部材61を電極組立体12に取り付けるための取付部62がそれぞれ設けられている。各取付部62は、上記の辺部61ab,61bbから突出しており、その突出寸法は電極組立体12の積層方向の長さと同程度に設定されている。また、辺部61ab,61bbから突出した両取付部62は、両電極タブ21e,22eと干渉しない位置にて互いに重なり合うようにして接着剤によって貼り付けられている。
【0031】
また、両絶縁シート61A,61Bにおける第4面61d及び第5面61eには、第1面61aと第3面61cとが連なる辺部61aaの延長線上に切り込み71が形成されている。そのため、両絶縁シート61A,61Bは、第4面61d及び第5面61eのうち、第1面61aに連なる部位61da,61eaと第3面61cと連なる部位61dc,61ecとが個別に折り曲げ可能に構成されている。そして、両絶縁シート61A,61Bは、第4面61d及び第5面61eにおいて第1面61aと連なる部位61da,61eaが折り曲げられた後に、第4面61d及び第5面61eにおいて第3面61cに連なる部位61dc,61ecが重なるように折り曲げられている。
【0032】
また、本実施形態では、図4に示すように、絶縁シート61Aの厚みA1は、固定テープ51の厚みA2と同一に設定されている。そのため、絶縁部材61に形成される凹部73の深さA3は、固定テープ51の厚みA2と同一になっている。その結果、電極組立体12の対向部25に対して固定テープ51の貼付部51Sが貼り付けられた場合に、固定テープ51の貼付部51Sが電極組立体12の対向部25から突出する突出量は絶縁部材61の凹部73の深さA3と同一となっている。したがって、固定テープ51の貼付部51Sは、絶縁部材61の凹部73のうち、電極組立体12の積層方向において対向部25と対向し、かつ固定テープ51と対向する面部位となる第1面61a及び第2面61bに形成された凹部位73Aの内底面73aに対して面接触している。
【0033】
次に、上記のように構成された二次電池10の作用について説明する。
本実施形態の電極組立体12は、絶縁部材61によって覆われると、絶縁部材61の凹部73の内側に固定テープ51が配置される。ここで、電極組立体12は、絶縁部材61によって覆われた状態での積層方向の長さが、電極組立体12の積層方向において対向部25に対向するケース11の内面同士の距離よりも若干大きく設定されている。そのため、電極組立体12がケース11に収容されると、電極組立体12の対向部25にはケース11の内面から電極組立体12の積層方向に荷重が作用する。
【0034】
この場合、絶縁部材61には固定テープ51の厚みA2と同一の深さA3を有する凹部73が形成されている。そして、絶縁部材61は、凹部73を構成する凹部位73Aの内底面73aを電極組立体12の対向部25から突出した固定テープ51の貼付部51Sに対して接触させると共に、絶縁部材61における第1面61a及び第2面61bのうち、凹部位73Aが形成されていない面部位61fを電極組立体12の対向部25に対して接触させる。その結果、ケース11の内面から電極組立体12の対向部25に対して荷重が付与されたとしても、その荷重は固定テープ51の貼付部51S及び絶縁部材61に分散されつつ電極組立体12の対向部25に作用する。
【0035】
したがって、上記実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)固定テープ51において電極組立体12の対向部25上に配置される貼付部51Sは、絶縁部材61の凹部73のうち、電極組立体12の積層方向において対向部25と対向する第1面61a及び第2面61bに形成された凹部位73Aの内側に配置されている。そのため、電極組立体12がケース11に収容されることにより電極組立体12の対向部25に絶縁部材61が密着する際に、固定テープ51の貼付部51Sと絶縁部材61とが互いに押し潰されて変形する変形量が低減される。その結果、電極組立体12の対向部25に対して絶縁部材61から固定テープ51を通じて局所的に荷重が付与されることが抑制される。したがって、電極組立体12の対向部25に対して電極組立体12の積層方向に作用する荷重の偏りに起因して、両電極21,22における活物質層21b,22bが対向している対向領域24に対して局所的に荷重が付与されることを抑制できる。
【0036】
(2)固定テープ51は、絶縁部材61の凹部73を構成する凹部位73Aの内底面73aによって電極組立体12の外側から電極組立体12の対向部25に押し付けられるとともに、絶縁部材61によって電極組立体12の外側から覆われて保護されている。そのため、充放電が繰り返し行われることに起因して電極組立体12が発熱し、電極組立体12の端面12a,12bに対する固定テープ51の接着性能が低下したとしても、固定テープ51が電極組立体12から剥離することを抑制できる。また、もし仮に、固定テープ51が電極組立体12の対向部25から剥離したとしても、剥離した固定テープ51がケース11内を遊動することを抑制できる。
【0037】
(3)凹部73の深さA3が固定テープ51の厚みA2と同一となっている。そのため、固定テープ51の貼付部51Sは、絶縁部材61によってほとんど押し潰されることなく絶縁部材61の凹部73を構成する凹部位73Aの内側に配置されて凹部位73Aの内底面73aに密着する。そのため、絶縁部材61に凹部73を設けない場合と比較して、絶縁部材61が電極組立体12の対向部25及び固定テープ51の双方に密着するまでの間に、固定テープ51及び絶縁部材61が互いに押し潰されて変形する変形量が低減される。したがって、電極組立体12の対向部25に対して電極組立体12の積層方向に作用する荷重の偏りに起因して、両電極21,22における活物質層21b,22bが対向している対向領域24に対して局所的に荷重が付与されることを抑制できる。
【0038】
(4)絶縁部材61と固定テープ51とが同一の材料であるため、両部材の硬さが同一となっている。そのため、電極組立体12の対向部25に荷重が付与された場合に、その荷重が絶縁部材61及び固定テープ51のうち一方の部材に偏って作用しにくい。その結果、絶縁部材61と固定テープ51の硬さの違いに起因して、ケース11の内面から電極組立体12の対向部25に対して固定テープ51を通じて局所的に荷重が作用することが更に抑制される。したがって、電極組立体12の対向部25に対して電極組立体12の積層方向に作用する荷重の偏りに起因して、電極組立体12の対向領域24に対して荷重が集中することを更に抑制できる。
【0039】
(5)絶縁部材61は、2枚の絶縁シート61A,61Bを重ね合わせることにより構成されている。そして、2枚の絶縁シート61A,61Bのうち、一方側の絶縁シート61Aに形成された貫通孔72の片側の開口を他方側の絶縁シート61Bによって覆うことにより凹部73が構成されている。したがって、絶縁部材61に対して凹部73を簡易な構成で形成することができる。
【0040】
なお、実施形態は、以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、絶縁部材61と固定テープ51とが異なる材料によって構成されてもよい。この場合、絶縁部材61の硬さと固定テープ51の硬さの差が小さくなるように、両部材の材質を選択することが好ましい。特に、絶縁部材61の硬さが固定テープ51の硬さよりも硬くなるように、両部材の材質を選択することが好ましい。
【0041】
○ 実施形態において、図5(a)に示すように、絶縁部材61は、絶縁シート61Aの厚みA1’を固定テープ51の厚みA2よりも小さく設定し、凹部73の深さA3’を固定テープ51の厚みA2よりも浅くした構成としてもよい。
【0042】
これによれば、図5(b)に示すように、固定テープ51において電極組立体12の対向部25上に配置される貼付部51Sは、固定テープ51の厚みA2と凹部73の深さA3’の差分だけ一部が押し潰されることにより、固定テープ51の厚みA2’が凹部73の深さA3’と等しくなるまで変形しつつ、凹部73を構成する凹部位73Aの内底面73aに密着する。そのため、絶縁部材61に凹部73を設けない場合と比較して、絶縁部材61が電極組立体12の対向部25及び固定テープ51の双方に密着するまでの間に、固定テープ51及び絶縁部材61が互いに押し潰されて変形する変形量が低減される。したがって、電極組立体12の対向部25に対して電極組立体12の積層方向に作用する荷重の偏りに起因して、両電極21,22における活物質層21b,22bが対向している対向領域24に対して局所的に荷重が付与されることを抑制できる。
【0043】
○ 実施形態において、図6(a)に示すように、絶縁部材61は、絶縁シート61Aの厚みA1’’を固定テープ51の厚みA2よりも大きく設定し、凹部73の深さA3’’を固定テープ51の厚みA2よりも深くした構成としてもよい。この場合、絶縁部材61は、凹部73の深さA3’’を固定テープ51の厚みA2の2倍未満に設定することが好ましい。
【0044】
これによれば、電極組立体12の対向部25が絶縁部材61に接触する時点では、固定テープ51において電極組立体12の対向部25上に配置される貼付部51Sは、絶縁部材61の凹部73を構成する凹部位73Aの内底面73aに対して固定テープ51の厚みA2よりも小さい隙間Sを介在させて対向している。
【0045】
そして、図6(b)に示すように、絶縁部材61における第1面61a及び第2面61bのうち、凹部位73Aが形成されていない面部位61fは、固定テープ51の厚みA2と凹部73の深さA3’’の差分だけ押し潰されることにより、絶縁シート61Aの厚みA1’’’が絶縁シート61Aの厚みA2と等しくなるまで変形して凹部73の深さが深さA3’’’となりつつ、凹部位73Aの内底面73aが固定テープ51の貼付部51Sに対して密着する。したがって、絶縁部材61が電極組立体12の対向部25及び固定テープ51の双方に密着するまでの間に、絶縁部材61における第1面61a及び第2面61bのうち、凹部位73Aが形成されていない面部位61fが固定テープ51の厚みA2よりも小さい寸法だけ電極組立体12の対向部25によって押し潰される。
【0046】
これに対し、絶縁部材61に凹部73を設けない場合には、絶縁部材61が電極組立体12の対向部25及び固定テープ51の双方に密着するまでの間に、固定テープ51の厚みA2の分だけ固定テープ51及び絶縁部材61が互いに押し潰される。
【0047】
そのため、これによれば、絶縁部材61に凹部73を設けない場合と比較して、絶縁部材61が電極組立体12の対向部25及び固定テープ51の双方に密着するまでの間に、固定テープ51及び絶縁部材61が互いに押し潰されて変形する変形量が低減される。したがって、電極組立体12の対向部25に対して電極組立体12の積層方向に作用する荷重の偏りに起因して、両電極21,22における活物質層21b,22bが対向している対向領域24に対して局所的に荷重が付与されることを抑制できる。
【0048】
○ 実施形態において、必ずしも、絶縁部材61を構成する双方のシートが絶縁性の高い絶縁シート61A,61Bによって構成される必要はない。例えば、電極組立体12に絶縁部材61を取り付けた場合に電極組立体12に対向して配置される内側のシート61Aは、電極組立体12からの放熱効率を向上するために熱伝導性を重視して絶縁性が低く熱伝導性の高い材料によって構成されるとともに、絶縁シート61Aを電極組立体12の外側から覆う絶縁シート61Bは、電極組立体12とケース11との絶縁を確保するために絶縁性を重視して絶縁性の高い材料によって構成されてもよい。
【0049】
○ 実施形態において、絶縁部材61は、必ずしも、2枚の絶縁シート61A,61Bを重ね合わせることにより凹部73を形成しなくてもよい。例えば、絶縁部材61の表面を溶剤で部分的に溶解させることにより凹部を形成してもよい。また、絶縁部材61の表面に熱プレス加工を施すことにより凹部を形成してもよい。また、凹部が型取られた型材に対して熱溶融させた絶縁部材61を流し込むことにより、凹部73を有する絶縁部材61を成型してもよい。
【0050】
○ 実施形態において、絶縁部材61は、電極組立体12における積層方向に沿う側面12d、12eを覆わない構成としてもよい。この場合、例えば、絶縁部材61は、第3面61cを省略し、第1面61aを含む絶縁部材と、第2面61bを含む絶縁部材とを個別に設ける構成としてもよい。
【0051】
○ 実施形態において、絶縁部材61に凹部73を形成するのは、電極組立体12の積層方向に交差する両端面としたが、片側の端面でもよい。片側に設ける場合であっても、凹部73を形成しない場合と比較すると、両電極21,22における活物質層21b,22bが対向している対向領域24に対して荷重が付与されることを抑制する効果を奏する。
【0052】
○ 実施形態では、本発明を積層型の二次電池10に適用したが、帯状の正極と帯状の負極を巻回して層状に積層した巻回型の二次電池に適用してもよい。
○ 実施形態において、二次電池10はリチウムイオン二次電池であったが、これに限らず、ニッケル水素等の他の二次電池であってもよい。すなわち、正極活物質層21bと負極活物質層22bとの間をイオンが移動して電荷の授受を行う構成であれば、任意の二次電池10を採用することができる。
【0053】
○ 蓄電装置は、二次電池10に限らず、例えば、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等のようなキャパシタであってもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
【0054】
(イ)前記絶縁部材を構成する2つの絶縁シートのうち、前記一方の絶縁シートは、熱伝導性の高い材料によって構成されており、前記他方の絶縁シートは、絶縁性の高い材料によって構成されていることを特徴とする請求項4に記載の蓄電装置。
【符号の説明】
【0055】
10…蓄電装置としての二次電池、11…ケース、12…電極組立体、12a,12b…端面、21…正極電極、21b…正極活物質層、22…負極電極、22b…負極活物質層、23…セパレータ、24…対向領域、25…対向部、51,51A,51B,51C,51D,51E,51F…固定テープ、61…絶縁部材、61A,61B…絶縁シート、72…貫通孔、73…凹部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6