(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シートの下方に荷物を収納可能な収納ボックスが設置され、この収納ボックスの下方の車両下部に、エンジンと動力伝達装置とを一体に備えたユニットスイング式のエンジンユニットが搭載されると共に、このエンジンユニットの前方の車両下部に燃料タンクが設置され、前記燃料タンク内で発生した燃料蒸発ガスを一時的に捕集しシリンダアッセンブリ側へ供給可能なキャニスタを配置して燃料発生ガスを制御可能とした、スクータ型自動二輪車であって、
前記キャニスタは、前記エンジンの一部を構成する前記シリンダアッセンブリよりも前方で且つ前記燃料タンクの後部上方で、且つシート前縁部に設けたシートヒンジの真下に近接させて配置されると共に、前記キャニスタの長手方向が車幅方向に対して傾斜して配置され、
更に前記キャニスタは、車幅方向に離間して設けられた一対のフレームパイプに掛け渡されたブリッジに設置され、このブリッジが、前記シートの前端部を支持するシート支持部材を支持するブリッジであることを特徴とするスクータ型自動二輪車。
前記エンジンのシリンダアッセンブリは、エンジンケースから略水平に前方へ向かって延び、このシリンダアッセンブリへ混合気を供給する混合気供給装置が前記シリンダアッセンブリの上方に配置され、キャニスタが前記混合気供給装置と燃料タンクに共に接続されたことを特徴とする請求項1に記載のスクータ型自動二輪車。
前記エンジンユニットは、エンジンケースの上部に設けられたピボット軸を中心に上下方向に揺動自在に懸架され、混合気供給装置が車両側面視において前記ピボット軸の前側に接近して配置されると共に、この混合気供給装置と略同一高さにキャニスタが配置されたことを特徴とする請求項4に記載のスクータ型自動二輪車。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。但し、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明の一実施例に係るスクータ型自動二輪車の左側面図である。
図2は、
図1のスクータ型自動二輪車の車体フレームと、この車体フレームに搭載されたエンジン及びキャニスタなどを示す左側面図である。尚、この一実施形態において、前後、左右、上下の表現は、車両乗車時の運転者を基準にしたものである。
【0012】
本実施形態のスクータ型自動二輪車10は2人乗り用の大型スクータである。このスクータ型自動二輪車10の車体前部11には、左右に突出するレッグシールド12とスクリーン13とハンドルバー14とを備える。
【0013】
ハンドルバー14は、
図2に示す車体フレーム15のヘッドパイプ16に枢支されるステアリングシャフト17に回転一体に連結される。このステアリングシャフト17に、左右一対のフロントフォーク18を介して前輪19が懸架される。ステアリングシャフト17がヘッドパイプ16に左右に回動自在に枢支され、ハンドルバー14の操作によって前輪19が左右に回動される。
【0014】
図1に示すように、スクータ型自動二輪車10では、車体前部11よりも後方に2人乗り用のダブルシート20が配置される。そして、これらの車体前部11からダブルシート20に至る範囲に、ダブルシート20に着座した乗員(運転者、同乗者)が両足を載置可能な左右一対の板状のフットボード21が延設されると共に、これらのフットボード21間に、上方へ膨出するセンタートンネル22が形成されている。
【0015】
また、ダブルシート20の下方に車体の後部を覆う後部カバー23が設けられる。この後部カバー23の下方に、後輪24を駆動するユニットスイング式のエンジンユニット25が、
図2に示す車体フレーム15に上下方向に揺動可能に搭載される。
【0016】
車体フレーム15は、前端部に前記ヘッドパイプ16を備え、このヘッドパイプ16の下部、上部から、それぞれ左右一対のダウンチューブ26、27が下方へ延出されている。手前側(
図2)のダウンチューブ26は、下部が後方へ屈曲して形成され、下端部に左右一対のロアチューブ29が接続される。更に、前側のダウンチューブ26における上下方向の略中央位置から、左右一対のメインチューブ28が後方へ延設される。このメインチューブ28に後側のダウンチューブ27の下端部が接続されると共に、ロアチューブ29の後端部も接続される。更に、このメインチューブ28の後端にシートレール30が接続されている。
【0017】
また、車幅方向に離間して設けられた左右一対の上記メインチューブ28には、複数本のブリッジが架け渡され、このうち、前側に支持用ブリッジ31が、後側に懸架用ブリッジ32がそれぞれ設置されている。
【0018】
前記エンジンユニット25は、図示しないクランクシャフトを収容するエンジンケース(クランクケース)33と、このクランクケース33から略水平に前方へ向かって延設されたシリンダアセンブリ34とを有してエンジン35が構成され、このエンジン35に動力伝達装置36が一体化されて構成される。シリンダアセンブリ34は、図示しないシリンダ、シリンダヘッド及びヘッドカバーが、エンジンケース33の側から順次積み重ねされて構成される。
【0019】
また、動力伝達装置36は、エンジン35のエンジンケース33における左側に併設されて後方へ延びる伝動ケース37に、図示しない動力伝達機構が内蔵されたものである。エンジン35におけるクランクシャフトの回転力は、動力伝達装置36により変速されて後輪24へ伝達される。
【0020】
エンジンケース33の上部に、
図4にも示されるように、左右一対の軸受ボス部38が、上方へ向かって突設されている。車体フレーム15の懸架用ブリッジ32は、
図3に示すように下方に開口する箱形状である。この懸架用ブリッジ32には、
図2、
図3及び
図4に示すように、エンジン懸架ボルト39を用いて懸架用ブリッジ32の内側に、エンジン懸架ブラケット40が枢支される。そして、このエンジン懸架ブラケット42にピボット軸41を用いて、エンジンユニット25の軸受ボス部38が回転自在に連結されている。このように、エンジンユニット25の上部に設けられたピボット軸41を中心にして、エンジンユニット25が車体フレーム15に対して上下方向に揺動自在に軸支される。
【0021】
また、
図2に示すように、エンジンユニット25の後端とシートレール30との間に、リアクションユニット42が上下に架け渡されている。このリアクションユニット42によって、エンジンユニット25及び後輪24は、上下方向の揺動が緩衝されて懸架される。
【0022】
車体フレーム15のメインチューブ28には、エンジン35におけるシリンダアセンブリ34の前方に支持用ブリッジ31が設置され、エンジン35におけるエンジンケース33の直上に懸架用ブリッジ32が設置されるが、これらの支持用ブリッジ31及び懸架用ブリッジ32の上面に、ヘルメットなどの荷物を収納可能な収納ボックス43が取り付けられる。そして、この収納ボックス43の上方に、
図1に示すダブルシート20が配置される。このダブルシート20の先端は、支持用ブリッジ31(
図2)に設置されたシート支持部材としてのシートヒンジ44によって開閉自在に支持される。従って、ダブルシート20の閉時に、このダブルシート20の底板が、ダブルシート20の下方に配置された収納ボックス43の上部開口を閉塞する。
【0023】
収納ボックス43の下方の車体下部に前述のエンジンユニット25が配置されるが、このエンジンユニット25の前方の車両下部であって、車体フレーム15のメインチューブ28とロアチューブ29との間に、燃料を貯留する燃料タンク45が配置される。この燃料タンク45は、
図1に示すセンタートンネル22内に収容されている。
【0024】
図2に示すように、エンジンユニット25の上方で且つ収納ボックス43の下方に、エアクリーナ46、アウトレットパイプ47、混合気供給装置48及び吸気管49を有するエンジン吸気系50が配設される。このうちエアクリーナ46は、エンジンユニット25におけるエンジンケース33及び伝動ケース37に取り付けられ、外気を導入してこの外気中の塵埃などを除去し、清浄な空気にする。
【0025】
また、混合気供給装置48は、エンジンユニット25におけるシリンダアセンブリ34の上方で、且つ車両側面視においてエンジンユニット25のピボット軸41の前側に接近して配置される。この混合気供給装置48は、アウトレットパイプ47を用いてエアクリーナ46に接続されると共に、吸気管49を介してシリンダアセンブリ34のシリンダヘッドの吸気ポートに接続される。
【0026】
混合気供給装置48は例えばスロットルボディであり、
図4及び
図5に示すフューエルインジェクタ51を備える。このフューエルインジェクタ51は、燃料ホース52を用いて燃料タンク45に接続される。混合気供給装置48は、エアクリーナ46から導入された清浄な空気中にフューエルインジェクタ51から燃料を噴霧して混合気とし、この混合気を吸気管49を経てシリンダヘッドの吸気ポートへ供給する。
【0027】
図2に示すように、エンジンユニット25におけるシリンダアセンブリ34の下方には、このシリンダアセンブリ34のシリンダヘッドの排気ポートに排気管(共に図示せず)が接続される。この排気管は後方へ延出されて図示しないマフラーに接続される。これらの排気管及びマフラーを用いてエンジン排気系が構成される。このエンジン排気系と前記エンジン吸気系50は、エンジンユニット25と共に、ピボット軸41を中心として上下方向に揺動可能に設けられる。
【0028】
燃料タンク45内では燃料が気化し、特にエンジン35の停止中に燃料蒸発ガスが燃料タンク45内の上部に滞留することがある。
【0029】
この事象に対し、本実施形態では、燃料タンク45内の燃料蒸発ガスは、燃料蒸発ガス制御装置55を構成するキャニスタ56によって一時的に捕集され、エンジン35の作動時にシリンダアセンブリ34側(つまりこのシリンダアセンブリ34のシリンダヘッドの吸気ポート)へ混合気供給装置48を経て供給される構成としている。
【0030】
つまり、本実施態様の自動二輪車におけるキャニスタ50は、
図2〜
図4に示すように、エンジン35のシリンダアセンブリ34よりも前方で、且つ燃料タンク45の後部上方に、混合気供給装置48と略同一高さで配置される。具体的には、キャニスタ56は、下方に開口する箱形状の支持用ブリッジ31の下面に、取付ブラケット57及び弾性体58を用いて、支持用ブリッジ31内に収納された状態で取り付けられる。
【0031】
弾性体58は、キャニスタ56を浮動状態で支持用ブリッジ31に支持させるものである。キャニスタ56は、支持用ブリッジ31への取り付け状態では、
図1に示す後部カバー23またはセンタートンネル22内に配置され、
図3及び
図4に示すように、前部が車両外側に、後部が車両内側に向けられて車幅方向に対し斜めに設置される。
【0032】
キャニスタ56の前部に、大気導入ホース59(
図6)を接続する大気ポート60が設けられ、この大気ポート60は、大気導入ホース59を経て大気に開放されて、キャニスタ56内に大気を導入する。また、キャニスタ56の後部には、燃料タンク45からの燃料蒸発ガスを取り込むためのタンクポート61と、混合気供給装置48へ燃料蒸発ガスを放出するためのパージポート62が設けられている。タンクポート61が、接続配管としての捕集ホース63を経て燃料タンク45に接続され、パージポート62が、接続配管としての供給ホース64を経て混合気供給装置48に接続される。
【0033】
即ち、燃料タンク45の上面には、気液を分離するベーパセパレータ65が設置され、燃料タンク45内の燃料蒸発ガスが捕集ホース63に導入される。この捕集ホース63は2つに分岐され、一方の分岐ホースがロールオーバーバルブ66を備えると共にキャニスタ56のタンクポート61に接続され、他方の分岐ホースにチェックバルブ67が配設される。このチェックバルブ67は、出口側が大気に開放されており、所定圧以上で開弁されて、燃料タンク45内の圧力が過大になることを防止する。また、ロールオーバーバルブ66は、例えば車両転倒時に閉弁して、燃料タンク45内の燃料(液体)がキャニスタ56内へ流入することを防止する。
【0034】
供給ホース64は、
図5及び
図6に示すように、キャニスタ56のパージポート62とパージバルブ68とを接続する第1供給ホース64Aと、パージバルブ68と混合気供給装置48とを接続する第2供給ホース64Bとを備える。パージバルブ68は、エンジン35の作動状況に応じて開度が調整され、キャニスタ56から放出されて混合気供給装置48へ供給される燃料蒸発ガスの流量を制御する。
【0035】
燃料タンク45内で発生した燃料蒸発ガスは、捕集ホース63によってキャニスタ56内へ導かれ、このキャニスタ56内に収容された活性炭などの吸着材に吸着されて一時的に捕集される。その後、エンジン35の作動状況(例えばエンジン35の始動)に応じてパージバルブ68の開度が調整されると、キャニスタ56内の吸着材に吸着された燃料蒸発ガスが、吸気管49(
図2)に生ずる負圧によって、パージバルブ68及び供給ホース64(第1供給ホース64A、第2供給ホース64B)を経て混合気供給装置48へ吸引されて供給され、エンジン35内での燃焼に供される。混合気供給装置48への燃料蒸発ガスの吸引は、キャニスタ56の大気ポート60に大気が導入されることで促進される。
【0036】
以上のように構成されたことから、本実施の形態によれば、次の効果(1)〜(4)を奏する。
【0037】
(1)エンジン35のシリンダアセンブリ34よりも前方で且つ燃料タンク45の後部上方にキャニスタ56が配置されたので、このキャニスタ56が燃料タンク45と、エンジン35のシリンダアセンブリ34近傍に配置される混合気供給装置48との間に配置されることになる。このため、燃料タンク45とキャニスタ56とを接続する捕集ホース63、キャニスタ56と混合気供給装置48とを接続する供給ホース64を、共に短縮できる。この結果、配管スペースを縮小でき、スクータ型自動二輪車10の軽量化及び低コスト化を実現できる。
【0038】
(2)車幅方向に離間して設けられた一対のメインチューブ28に架け渡された支持用ブリッジ31の下面に、この支持用ブリッジ31内に収納された状態でキャニスタ56が設置されたので、支持用ブリッジ31内のスペースを、キャニスタ56を設置するためのスペースに有効利用できる。従って、スクータ型自動二輪車10の大きさを変更することなく、キャニスタ56を設置することができる。
【0039】
(3)キャニスタ56が、車幅方向に離間して設けられた一対のメインチューブ28に架け渡さされた支持用ブリッジ31の下面に取り付けられ、しかも、この支持用ブリッジ31がスクータ型自動二輪車10の前後方向の略中央位置に設置されている。これらの結果、キャニスタ56等の重量物をスクータ型自動二輪車10の重心近くに設置できるので、キャニスタ56の追加によっても車両の運動性能への影響を低減できる。
【0040】
(4)キャニスタ56に供給ホース64を介して接続される混合気供給装置48が、車両側面視においてエンジンユニット25のピボット軸41の前側に接近して配置されたので、混合気供給装置48の振動量(揺動量)を低減できる。更に、キャニスタ56が混合気供給装置48と略同一高さに配設されたので、供給ホース64の配管長さを短縮できる。これらの結果、供給ホース64の弛みを最小化でき、この供給ホース64の配管スペースをより一層低減できる。
【0041】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、キャニスタ56は、支持用ブリッジ31の下面に設置されるものを述べたが、支持用ブリッジ31の上面、外側面または内側面に設置されてもよい。また、混合気供給装置48は、エンジン35のシリンダアセンブリ34の上方に設置されるものを述べたが、シリンダアセンブリ34の側方または下方に設置されてもよい。