特許第5811098号(P5811098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5811098畜肉加工食品の製造方法及び畜肉加工食品改質用酵素製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5811098
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】畜肉加工食品の製造方法及び畜肉加工食品改質用酵素製剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 1/31 20060101AFI20151022BHJP
   A23L 1/314 20060101ALI20151022BHJP
   A23L 1/317 20060101ALN20151022BHJP
【FI】
   A23L1/31 A
   A23L1/314
   !A23L1/317 A
【請求項の数】14
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2012-541921(P2012-541921)
(86)(22)【出願日】2011年11月2日
(86)【国際出願番号】JP2011075888
(87)【国際公開番号】WO2012060470
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2014年10月24日
(31)【優先権主張番号】特願2010-248100(P2010-248100)
(32)【優先日】2010年11月5日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-248099(P2010-248099)
(32)【優先日】2010年11月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 律彰
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 文之
【審査官】 松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−10949(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/074338(WO,A1)
【文献】 特公昭57−21969(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/31
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギニン又はその塩とトランスグルタミナーゼを用いることを特徴とする畜肉加工食品の製造方法。
【請求項2】
アルギニン又はその塩の添加量が、アルギニン換算で畜肉原料1gあたり0.000001g〜0.1gであり、トランスグルタミナーゼの添加量が畜肉原料1gあたり0.0001U〜100Uである請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項3】
アルギニン又はその塩の添加量が、アルギニン換算で畜肉原料1gあたり0.00001g〜0.05gであり、トランスグルタミナーゼの添加量が畜肉原料1gあたり0.001U〜10Uである請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項4】
さらに、カルシウム塩又はマグネシウム塩を用いる請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項5】
アルギニン又はその塩の添加量が、アルギニン換算で畜肉原料1gあたり0.000001g〜0.1g、トランスグルタミナーゼの添加量が畜肉原料1gあたり0.0001U〜100Uであり、カルシウム塩の添加量がカルシウム換算で畜肉原料1gあたり0.000001g〜0.05g、又は、マグネシウム塩の添加量がマグネシウム換算で畜肉原料1gあたり0.000001g〜0.05gである請求の範囲第4項記載の方法。
【請求項6】
アルギニン又はその塩の添加量が、アルギニン換算で畜肉原料1gあたり0.00001g〜0.05g、トランスグルタミナーゼの添加量が畜肉原料1gあたり0.001U〜10Uであり、カルシウム塩の添加量がカルシウム換算で畜肉原料1gあたり0.00001g〜0.02g、又は、マグネシウム塩の添加量がマグネシウム換算で畜肉原料1gあたり0.00001g〜0.02gである請求の範囲第4項記載の方法。
【請求項7】
カルシウム塩が塩化カルシウム、又は、マグネシウム塩が塩化マグネシウムである請求の範囲第4項記載の方法。
【請求項8】
アルギニン又はその塩とトランスグルタミナーゼを含有する畜肉加工食品改質用の酵素製剤。
【請求項9】
トランスグルタミナーゼの含有量が、アルギニン換算でのアルギニン又はその塩1gあたり、0.1U〜1000000Uである請求の範囲第8項記載の酵素製剤。
【請求項10】
トランスグルタミナーゼの含有量が、アルギニン換算でのアルギニン又はその塩1gあたり、1U〜100000Uである請求の範囲第8項記載の酵素製剤。
【請求項11】
さらに、カルシウム塩又はマグネシウム塩を含有する請求の範囲第8項記載の酵素製剤。
【請求項12】
トランスグルタミナーゼの含有量が、アルギニン換算でのアルギニン又はその塩1gあたり、0.1U〜1000000Uであり、カルシウム塩又はマグネシウム塩の添加量がそれぞれアルギニン換算でのアルギニン又はその塩1gあたり、カルシウム換算で0.0001g〜1000g、マグネシウム換算で0.0001g〜1000gである請求の範囲第11項記載の酵素製剤。
【請求項13】
トランスグルタミナーゼの含有量が、アルギニン換算でのアルギニン又はその塩1gあたり、1U〜100000Uであり、カルシウム塩又はマグネシウム塩の添加量がそれぞれアルギニン換算でのアルギニン又はその塩1gあたり、カルシウム換算で0.001g〜500g、マグネシウム換算で0.001g〜500gである請求の範囲第11項記載の酵素製剤。
【請求項14】
カルシウム塩が塩化カルシウム、又はマグネシウム塩が塩化マグネシウムである請求の範囲第11項記載の畜肉加工食品改質用の酵素製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルギニン又はその塩とトランスグルタミナーゼ、必要に応じ、さらにカルシウム塩又はマグネシウム塩を用いることを特徴とする畜肉加工食品の製造方法、及び畜肉加工食品改質用の酵素製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
畜肉加工食品分野においては、様々なニーズが存在する。例えば、絹挽きソーセージのような絹挽き肉を用いた加工品においてはしっかりとした歯ごたえや弾力が求められ、ハンバーグのような粗挽き肉を用いた加工品においては肉粒感が求められ、から揚げや豚カツのような一枚肉を用いた加工品においては柔らかさや自然な繊維感が求められる。また、全てに共通して、歩留まりやジューシー感の向上が求められている。これらの課題を解決するために、多くの改質技術が既に用いられており、特に重合リン酸塩の使用は非常に効果的であるため畜肉加工食品の製造過程においてごく一般的に使用されている。しかし、多くのニーズを実現できる一方で、肉粒感や繊維感が低下してしまうという欠点もある。また、リン酸塩は生体内のカルシウムとリンのバランスを崩すこと、特に重合リン酸塩はその強力な金属封鎖能によりカルシウムを不溶化させその吸収を阻害するということが明らかになりつつあり、リン酸塩を多用する加工食品の消費量が高まる中で、栄養学的にリン酸塩の過剰摂取が問題と考えられるようになってきている。
そのため近年は重合リン酸塩を使用しない改質技術に注目が集まっており、トランスグルタミナーゼを用いた畜肉加工食品の改質方法(特許2705024号公報)が開示されているが、食感における一部のニーズは満たすものの、歩留まりが低下するなどの課題が残されている。更には、トランスグルタミナーゼと酸化カルシウム及びクエン酸三ナトリウムを用いた畜肉加工食品の改質方法(特許4385632号公報)なども開示されている。しかし、この方法は食感改質効果は非常に高いものの、強アルカリ原料を使用しているため、酸性静菌剤の使用が困難である。ハムに対してトランスグルタミナーゼと塩化マグネシウムを併用するという方法(WO2010−074338)も開示されており、ハムの硬さや結着性において非常に高い効果を発揮するものの、歩留まりにおいては更なる向上が期待されている。酵素と塩類の組み合わせとしては、接着成形食品の製造においてトランスグルタミナーゼと塩化カルシウム又は塩化マグネシウムを使用する方法(WO2010−035856)が開示されているが、接着強度や外観に特化した知見であり、食感改質効果については言及されていない。
酵素以外の食肉改質方法としては多くの知見が報告されており、例えば塩化ナトリウムと共に塩化カルシウムと塩化マグネシウムを併用する方法(特開2004−242674号公報)が開示されているが、弾力や結着性における改質効果が不十分であった。また、アルギニンなどの塩基性アミノ酸を用いる方法(特公昭57−021969号公報)は非常に効果的であり、アルギニンとタンパク加水分解物などを併用する方法(特開平7−155138号公報)、アルギニンなどの塩基性アミノ酸と油脂および乳化剤からなる乳化液を用いる方法(特開2002−199859号公報)なども開示されている。いずれにおいても高い改質効果は得られるものの、リン酸塩の利点を代替し、かつリン酸塩の欠点を克服するには至っていない。アルギニンと焼き塩、グルタチオン、糖アルコール、加工澱粉などを併用する方法(WO2005−032279)も開示されており、非常に高い効果を発揮するものの、加工澱粉を用いており沈殿が生じるため、更なるハンドリング適性の向上が期待されている。
このように畜肉加工食品の改質方法に関しては非常に多くの知見が報告されているが、トランスグルタミナーゼとアルギニンを併用した例はなく、これらの組み合わせによる効果が単純な相加効果ではないことは容易に想像し得るものではなかった。アルギニン高含有タンパク質であるプロタミンとトランスグルタミナーゼを併用することによる食品の保存性向上方法(特許3940816号公報)は知られているが、抗菌性に関する評価が中心であり食感や歩留まりに関する詳細な評価はなされておらず、アルギニンとの比較もされていない。
また、トランスグルタミナーゼとアルギニン及びカルシウム塩又はマグネシウム塩を併用した例はなく、これらの組み合わせによる効果が単純な相加効果ではないことは容易に想像し得るものではなかった。
【発明の開示】
【0003】
本発明の目的は、物性や歩留まり及び食味の改善された畜肉加工食品の製造方法、及び畜肉加工食品改質用の酵素製剤を提供することである。
本発明者等は、鋭意研究を行った結果、アルギニン又はその塩とトランスグルタミナーゼ、及びカルシウム塩又はマグネシウム塩を用いて畜肉加工食品を製造することにより上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の通りである。
(1)アルギニン又はその塩とトランスグルタミナーゼを用いることを特徴とする畜肉加工食品の製造方法。
(2)アルギニン又はその塩の添加量が、アルギニン換算で畜肉原料1gあたり0.000001g〜0.1gであり、トランスグルタミナーゼの添加量が畜肉原料1gあたり0.0001U〜100Uである(1)記載の方法。
(3)アルギニン又はその塩の添加量が、アルギニン換算で畜肉原料1gあたり0.00001g〜0.05gであり、トランスグルタミナーゼの添加量が畜肉原料1gあたり0.001U〜10Uである(1)記載の方法。
(4)さらに、カルシウム塩又はマグネシウム塩を用いる(1)記載の方法。
(5)アルギニン又はその塩の添加量が、アルギニン換算で畜肉原料1gあたり0.000001g〜0.1g、トランスグルタミナーゼの添加量が畜肉原料1gあたり0.0001U〜100Uであり、カルシウム塩の添加量がカルシウム換算で畜肉原料1gあたり0.000001g〜0.05g、又は、マグネシウム塩の添加量がマグネシウム換算で畜肉原料1gあたり0.000001g〜0.05gである(4)記載の方法。
(6)アルギニン又はその塩の添加量が、アルギニン換算で畜肉原料1gあたり0.00001g〜0.05g、トランスグルタミナーゼの添加量が畜肉原料1gあたり0.001U〜10Uであり、カルシウム塩の添加量がカルシウム換算で畜肉原料1gあたり0.00001g〜0.02g、又は、マグネシウム塩の添加量がマグネシウム換算で畜肉原料1gあたり0.00001g〜0.02gである(4)記載の方法。
(7)カルシウム塩が塩化カルシウム、又は、マグネシウム塩が塩化マグネシウムである(4)記載の方法。
(8)アルギニン又はその塩とトランスグルタミナーゼを含有する畜肉加工食品改質用の酵素製剤。
(9)トランスグルタミナーゼの含有量が、アルギニン換算でのアルギニン又はその塩1gあたり、0.1U〜1000000Uである(8)記載の酵素製剤。
(10)トランスグルタミナーゼの含有量が、アルギニン換算でのアルギニン又はその塩1gあたり、1U〜100000Uである(8)記載の酵素製剤。
(11)さらに、カルシウム塩又はマグネシウム塩を含有する(8)記載の酵素製剤。
(12)トランスグルタミナーゼの含有量が、アルギニン換算でのアルギニン又はその塩1gあたり、0.1U〜1000000Uであり、カルシウム塩又はマグネシウム塩の添加量がそれぞれアルギニン換算でのアルギニン又はその塩1gあたり、カルシウム換算で0.0001g〜1000g、マグネシウム換算で0.0001g〜1000gである(11)記載の酵素製剤。
(13)トランスグルタミナーゼの含有量が、アルギニン換算でのアルギニン又はその塩1gあたり、1U〜100000Uであり、カルシウム塩又はマグネシウム塩の添加量がそれぞれアルギニン換算でのアルギニン又はその塩1gあたり、カルシウム換算で0.001g〜500g、マグネシウム換算で0.001g〜500gである(11)記載の酵素製剤。
(14)カルシウム塩が塩化カルシウム、又はマグネシウム塩が塩化マグネシウムである(11)記載の畜肉加工食品改質用の酵素製剤。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明による畜肉加工食品の製造方法には、アルギニン又はその塩とトランスグルタミナーゼ、あるいは、アルギニン又はその塩とトランスグルタミナーゼ及びカルシウム塩又はマグネシウム塩を用いる。アルギニン又はその塩の例としては、アルギニン、アルギニングルタミン酸塩、アルギニン塩酸塩、アルギニン酢酸塩、アルギニン酪酸塩、アルギニン硫酸塩などが挙げられ、その他いかなる塩でもよく、それらの組み合わせでも構わない。L体、D体、それらの混合物でもよい。また、本発明で用いるアルギニンもしくはその塩は、醗酵法、抽出法などいかなる方法で製造されたものでも構わない。尚、味の素(株)より市販されているアルギニンがその一例である。
トランスグルタミナーゼはタンパク質やペプチド中のグルタミン残基を供与体、リジン残基を受容体とするアシル転移反応を触媒する活性を有する酵素のことを指し、哺乳動物由来のもの、魚類由来のもの、微生物由来のものなど、種々の起源のものが知られている。本発明で用いる酵素は、この活性を有している酵素であれば、いかなる起源のものでも構わない。また、組み換え酵素であっても構わない。味の素(株)より「アクティバ」TGという商品名で市販されている微生物由来のトランスグルタミナーゼがその一例である。
本発明に利用できるカルシウム塩の例としては、食品に使用可能なグレードのものであれば、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸カルシウムなど、いかなるカルシウム塩でもよく、これらの無水物でも水和物でもよい。また、これらの混合物でもよい。本発明に利用できるマグネシウム塩の例としては、食品に使用可能なグレードのものであれば、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウムなど、いかなるマグネシウム塩でもよく、これらの無水物でも水和物でもよい。また、これらの混合物でもよい。更に、カルシウム塩とマグネシウム塩を併用しても構わない。本発明に用いるカルシウム塩及びマグネシウム塩は、いかなる方法で製造されたものでもよく、他素材との混合物や、他素材と共にスプレードライされたものでも構わない。尚、食品添加物として市販されている、塩化カルシウム2水和物及び塩化マグネシウム6水和物がその一例である。
本発明の畜肉加工食品としては、から揚げ、豚カツ、ハム、焼き肉、トンポーロー、チャーシュー等の単身品や、ソーセージ、ハンバーグ、ミートボール等の畜肉練り製品が挙げられる。また、これらの冷凍品も含まれる。
畜肉加工食品にアルギニン又はその塩とトランスグルタミナーゼ、あるいは、アルギニン又はその塩とトランスグルタミナーゼ及び塩化カルシウム又は塩化マグネシウムを用いる場合は、製造時のどの段階で添加し、作用させても構わない。原料の一部に作用させてもよく、例えばから揚げの漬け込み用或いはタンブリング用のピックル液に添加して原料肉に作用させても構わない。更に、アルギニン又はその塩、トランスグルタミナーゼ、カルシウム塩又はマグネシウム塩を食塩、糖類、香辛料、酵素等他の食品原料、食品添加物と併用しても構わない。畜肉原料としては、豚、牛、鶏、羊、山羊、馬、らくだ、鳩、鴨、アヒル、鶉、アルパカなどいかなる動物由来の原料でもよく、生、乾燥、加熱品などいかなる状態、品質でも構わない。
畜肉加工食品の製造において、アルギニン又はその塩及びトランスグルタミナーゼを添加し、畜肉原料に作用させる場合、アルギニン又はその塩の添加量は、アルギニン換算で畜肉原料1gに対して0.000001g〜0.1g、好ましくは0.00001g〜0.05gの範囲が適正である。尚、アルギニン換算とは、アルギニン塩の重量にアルギニンの分子量を乗じ、アルギニン塩の分子量で除した値を意味する。例えば、アルギニン塩酸塩(分子量210.66)の場合、アルギニン塩酸塩1gのアルギニン換算は、1g×174.20÷210.66=0.83gとなる。
畜肉加工食品の製造において、アルギニン又はその塩とトランスグルタミナーゼを添加し、畜肉原料に作用させる場合、トランスグルタミナーゼの添加量は、畜肉原料1gに対して酵素活性が0.0001U〜100U、好ましくは0.001U〜10Uの範囲が適正である。
畜肉加工食品の製造において、アルギニン又はその塩とトランスグルタミナーゼ、及びカルシウム塩又はマグネシウム塩を添加し、畜肉原料に作用させる場合、アルギニン又はその塩の添加量は、アルギニン換算で畜肉原料1gに対して0.000001g〜0.1g、好ましくは0.00001g〜0.05gの範囲が適正である。尚、アルギニン換算とは、前述のとおりである。
畜肉加工食品の製造において、アルギニン又はその塩とトランスグルタミナーゼ、及びカルシウム塩又はマグネシウム塩を添加し、畜肉原料に作用させる場合、トランスグルタミナーゼの添加量は、畜肉原料1gに対して酵素活性が0.0001U〜100U、好ましくは0.001U〜10Uの範囲が適正である。尚、トランスグルタミナーゼの酵素活性については、ベンジルオキシカルボニル−L−グルタミニルグリシンとヒドロキシルアミンを基質として反応を行い、生成したヒドロキサム酸をトリクロロ酢酸存在下で鉄錯体を形成させた後525nmの吸光度を測定し、ヒドロキサム酸の量を検量線より求め活性を算出する。37℃、pH6.0で1分間に1μmolのヒドロキサム酸を生成する酵素量を1U(ユニット)と定義した。
畜肉加工食品の製造において、アルギニン又はその塩とトランスグルタミナーゼ、及びカルシウム塩又はマグネシウム塩を添加し、畜肉原料に作用させる場合、カルシウム塩の添加量は、カルシウム換算で畜肉原料1gに対して0.000001g〜0.05g、好ましくは0.00001g〜0.02g、さらに好ましくは0.00001g〜0.01gの範囲が適正である。尚、カルシウム換算とは、使用するカルシウム塩又はその水和物の重量にカルシウムの原子量を乗じ、使用するカルシウム塩又はその水和物の分子量で除した値を意味する。例えば、塩化カルシウム無水物(分子量110.98)の場合、塩化カルシウム無水物1gのカルシウム換算は、1g×40.08÷110.98=0.36gとなる。
畜肉加工食品の製造において、アルギニン又はその塩とトランスグルタミナーゼ、及びカルシウム塩又はマグネシウム塩を添加し、畜肉原料に作用させる場合、マグネシウム塩の添加量は、マグネシウム換算で畜肉原料1gに対して0.000001g〜0.05g、好ましくは0.00001g〜0.02gの範囲が適正である。尚、マグネシウム換算とは、使用するマグネシウム塩又はその水和物の重量にマグネシウムの原子量を乗じ、使用するマグネシウム塩又はその水和物の分子量で除した値を意味する。例えば、塩化マグネシウム無水物(分子量95.21)の場合、塩化マグネシウム無水物1gのマグネシウム換算は、1g×24.31÷95.21=0.26gとなる。
畜肉加工食品にアルギニン又はその塩とトランスグルタミナーゼ、及びカルシウム塩又はマグネシウム塩を用いる場合の添加量比については、トランスグルタミナーゼの含有量が、アルギニン換算でのアルギニン又はその塩1gあたり、0.1U〜1000000Uが好ましく、1U〜100000Uがより好ましい。また、カルシウム換算でのカルシウム塩の含有量は、アルギニン換算でのアルギニン又はその塩1gあたり、0.0001g〜1000gが好ましく、0.001g〜500gがより好ましい。マグネシウム換算でのマグネシウム塩の含有量は、アルギニン換算でのアルギニン又はその塩1gあたり、0.0001g〜1000gが好ましく、0.001g〜500gがより好ましい。
トランスグルタミナーゼの反応時間は、トランスグルタミナーゼが基質物質に作用することが可能な時間であれば特に構わなく、非常に短い時間でも逆に長時間作用させても構わないが、現実的な作用時間としては5分〜24時間が好ましい。また、反応温度に関してもトランスグルタミナーゼが活性を保つ範囲であればどの温度であっても構わないが、現実的な温度としては0℃〜80℃で作用させることが好ましい。すなわち、通常の畜肉加工工程を経ることで十分な反応時間が得られる。
アルギニン又はその塩とトランスグルタミナーゼ、及びカルシウム塩又はマグネシウム塩を混合することにより、畜肉加工食品改質用の酵素製剤を得ることができる。さらに、澱粉、加工澱粉、デキストリン等の賦形剤、畜肉エキス等の調味料、植物蛋白、グルテン、卵白、ゼラチン、カゼイン等の蛋白質、蛋白加水分解物、蛋白部分分解物、乳化剤、クエン酸塩、重合リン酸塩等のキレート剤、グルタチオン、システイン等の還元剤、アルギン酸、かんすい、色素、酸味料、香料等その他の食品添加物等を混合してもよい。本発明の酵素製剤は液体状、ペースト状、顆粒状、粉末状のいずれの形態でも構わない。また、酵素製剤におけるアルギニン又はその塩とトランスグルタミナーゼ、及びカルシウム塩又はマグネシウム塩の配合量は0%より多く、100%より少ないが、トランスグルタミナーゼの含有量は、アルギニン換算でのアルギニン又はその塩1gあたり、0.1U〜1000000Uが好ましく、1U〜100000Uがより好ましい。また、カルシウム換算でのカルシウム塩の含有量は、アルギニン換算でのアルギニン又はその塩1gあたり、0.0001g〜1000gが好ましく、0.001g〜500gがより好ましい。マグネシウム換算でのマグネシウム塩の含有量は、アルギニン換算でのアルギニン又はその塩1gあたり、0.0001g〜1000gが好ましく、0.001g〜500gがより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1は、本発明の実施例2に係る豚ゲルの歩留まりの比較を示す図である。
図2は、本発明の実施例2に係る豚ゲルの破断強度の比較を示す図である。
図3は、本発明の実施例3に係る豚ゲル物性マップを示す図である。
図4は、本発明の比較例1に係る豚ゲル物性マップを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。本発明は、この実施例により何ら限定されない。
【実施例1】
【0006】
豚内モモ肉(国産一枚肉)を除脂し、2cm角程度の小片にカットした後、3mmダイスのミンサー「グレートミンチWMG−22」(ワタナベフーマック社製)にてミンチ状にした。その後、肉に対して1%相当の食塩を添加し、更に上述のミンサーに3回通してペースト状の肉を得た。得られたペースト状の肉を1試験区あたり100gずつに分け、表1に示す各添加剤を10gの蒸留水に事前に溶解した溶液を100gのペースト状肉に添加混合した。すなわち、肉に対して110%加水となる。アルギニンは味の素社製のL−アルギニンを、トランスグルタミナーゼは「アクティバ」TG(味の素社製)を使用した。尚、前者をArg、後者をTGと略して表記する場合がある。
【表1】
添加剤溶液で加水されたペースト状の肉は、脱気した後ビニール製のケーシングチューブ「クレハロンフィルム47mm×270mm」(呉羽化学工業社製)に詰め、クリッパーにて結搾した。ケーシングチューブに詰めたペースト肉の重量を測定した。ケーシングチューブに詰めた肉は、5℃にて1時間静置した後、プログラムインキュベーター「恒温恒湿槽LH21−13P」(ナガノ科学機械製作所社製)を用いて55℃にて1時間、75℃にて1時間加熱し、豚肉の加熱ゲルを得た。得られた加熱ゲルを豚ゲルと称した。豚ゲルは、5℃にて12時間保存した後、1時間室温にて静置した。豚ゲルのケーシングを開き、豚ゲル表面に付着した水分をペーパータオルにて拭き取った後、重量を測定した。加熱前のペースト状の肉の重量と比較することで、加熱歩留まりを算出した(単位は%)。豚ゲルは、2cm幅にカットし、1本の豚ゲルから5つの円筒状の豚ゲル片を得た。2cm幅の円筒状の豚ゲル片は、曲面に対してプランジャーが挿入される方向にセットし、テクスチャーアナライザー「TA.XT.plus」(Stable Micro Systems社製)に供した。プランジャーはステンレス製の直径7mmの球体を使用し、テストスピードは1mm/secとした。破断点における荷重を破断強度(単位はg)とし、各試験区5つのデータの平均値を求め、破断強度の実測値とした。結果を表2および表3に示す。尚、アルギニンの添加量は畜肉原料に対する重量%、TGの添加量は畜肉原料1gに対する添加ユニット(U)で示した。
また、TGのみを添加した区分およびアルギニンのみを添加した区分の結果をもとに、併用添加区分の理論上の歩留まりおよび破断強度を算出し解析を行った。例えば、アルギニン0.3%とTG0.38U/肉1gを添加した試験区7の場合、試験区3のコントロールに対する歩留まり変化が「7.88%」、試験区2のコントロールに対する歩留まり変化が「−0.89%」であるため、これらを同量添加した試験区7ではコントロールに対する歩留まり変化が理論上これらの値の和である「6.99%」(7.88%−0.89%)となるはずである。この値を理論値Bとした。また、同じく試験区7は、アルギニン0.6%の半量とTG0.76U/肉1gの半量を添加したこととなり、試験区6のコントロールに対する歩留まり変化が「14.15%」、試験区5のコントロールに対する歩留まり変化が「−2.63%」であるため、これらを半量ずつ添加した試験区7ではコントロールに対する歩留まり変化が理論上これらの半数の和である「5.76%」(14.15%/2−2.63%/2)となるはずである。この値を理論値Aとした。実測値におけるコントロールに対する変化量が、これら理論値と等しければ理論通りの効果、すなわち相加効果であり、理論値よりも大きければ理論を上回る効果、すなわち相乗効果であることを意味する。
表2および表3に示す通り、歩留まり、破断強度いずれにおいても、アルギニンとTGを併用した試験区4および試験区7のコントロールに対する変化量(表2および表3中の網掛け部分)が、理論値Aおよび理論値Bのいずれよりも大きい値であった(試験区4においては理論値Aのみ)。従って、歩留まり、破断強度いずれにおいても、アルギニンとTGを併用することによる効果は、相乗的な効果であることが示された。以上より、畜肉加工食品に対してアルギニンとTGを併用することは、歩留まりや食感を改善するこれまでにない優れた手段であることが明らかとなった。
【表2】
【表3】
【実施例2】
【0007】
実施例1と同様の方法にて、表4に示す各添加剤を10gの蒸留水に事前に溶解した溶液を100gのペースト状肉に添加混合し豚ゲルを作成した。ただし、実施例1の方法に加え、ケーシングチューブに注入する前に、加水した肉ペーストのpH測定を実施した。アルギニンおよびトランスグルタミナーゼは実施例1と同じものを使用し、炭酸ナトリウムは「精製炭酸ナトリウム(無水)」(大東化学社製)を使用した。尚、炭酸ナトリウムは炭酸Naと略して表記する場合がある。歩留り、破断強度測定結果を図1および図2に示す。アルギニンの添加量は畜肉原料に対する重量%、TGの添加量は畜肉原料1gに対する添加ユニット(U)、炭酸ナトリウムの添加量は畜肉原料に対する重量%で示した。
図1に示す通り、5.95±0.02の同一pHにおいて、試験区3の炭酸ナトリウム単独添加に比べて炭酸ナトリウムとTGを併用した試験区4では、2.86%の歩留まり低下が見られたが、試験区5のアルギニン単独添加に比べてアルギニンとTGを併用した試験区6ではほとんど歩留まりの低下が見られなかった。また、6.35±0.02のpHにおいても全く同じ傾向が確認された。また、破断強度においても、図2に示す通り、5.95±0.02の同一pHにおいて、試験区3の炭酸ナトリウム単独添加に比べて炭酸ナトリウムとTGを併用した試験区4では、302.22gの破断強度の増加であったが、試験区5のアルギニン単独添加に比べてアルギニンとTGを併用した試験区6では381.08gもの破断強度の増加が見られた。また、6.35±0.02のpHにおいても全く同じ傾向が確認された。以上より、アルギニンとTGによる歩留まりおよび破断強度に対する相乗効果は、アルギニンによるpH上昇がもたらしているのではなく、アルギニン特有の効果であることが示唆された。
【表4】
【実施例3】
【0008】
実施例1と同様の方法にて、表5に示す各添加剤を10gの蒸留水に事前に溶解した溶液を100gのペースト状肉に添加混合し豚ゲルを作成した。アルギニンおよびトランスグルタミナーゼは実施例1と同じものを使用し、リン酸塩は「ポリゴン」(千代田商工社製)を使用した。破断強度及び歩留り測定結果を図3に示す。尚、アルギニンの添加量は畜肉原料に対する重量%、TGの添加量は畜肉原料1gに対する添加ユニット(U)、リン酸塩の添加量は畜肉原料に対する重量%で示した。
図3に示す通り、試験区2のリン酸塩単独添加に比べてリン酸塩とTGを併用した試験区3では、破断強度は増加するものの歩留まりが低下していたが、試験区2とほぼ同等の物性を示す試験区6のアルギニン単独添加に比べてアルギニンとTGを併用した試験区7では、破断強度が大きく増加し歩留まりの低下もほとんど見られなかった。また、上記とは添加量の異なる試験区4のアルギニン単独添加に対しても、TGを添加することで破断強度が増加し歩留まりの低下はほとんど見られなかった。以上より、アルギニンとTGを併用することによる相乗効果は、リン酸塩とTGの併用では得ることのできない、アルギニン特有の効果であることが示唆された。
【表5】
【実施例4】
【0009】
実施例1と同様の方法にて、表6に示す各添加剤を10gの蒸留水に事前に溶解した溶液を100gのペースト状肉に添加混合し豚ゲルを作成した。アルギニンおよびトランスグルタミナーゼは、実施例1と同じものを使用し、ヒスチジン(His)は味の素社製のL−ヒスチジンを、リジン(Lys)はL−リジン(和光純薬工業社製)を使用した。得られた歩留まりおよび破断強度のデータに関し、TGのみを添加した区分およびアルギニン、ヒスチジン、リジンのみを添加した区分の結果をもとに、併用添加区分の理論上の歩留まりおよび破断強度を算出し解析を行った。例えば、アルギニン0.003g/肉1gとTG0.38U/肉1gを添加した試験区4の場合、アルギニン0.003g/肉1gを添加した試験区3のコントロールに対する破断強度変化と、TG0.38U/肉1gを添加した試験区2のコントロールに対する破断強度変化の和が、試験区4のコントロールに対する破断強度変化の理論値となる。試験区4の実測値におけるコントロールに対する破断強度変化がこの理論値と等しければ理論通りの効果、すなわち相加効果であり、理論値よりも大きければ理論を上回る効果、すなわち相乗効果であることを意味する。上記の方法を用い、試験区4、6、8の併用試験区において、歩留まりおよび破断強度それぞれに関する相乗効果の解析を行った。
【表6】
その結果、表7、表8に示す通り、TGとアルギニンを併用した試験区4のコントロールに対する歩留まりおよび破断強度の増加量(表7および表8中の網掛け部分)が、理論値よりも大きい値であった。一方、TGとヒスチジンもしくはリジンを併用した試験区6および試験区8のコントロールに対する歩留まりおよび破断強度の増加量(表7および表8中の網掛け部分)は、理論値よりも小さい値であった。従って、TGとアルギニンを併用することによる効果は相乗効果であり、ヒスチジンやリジンとの併用では得られない特有の効果であることが示唆された。
【表7】
【表8】
【実施例5】
【0010】
アルギニンとTGの併用による畜肉加工食品の改質効果の汎用性を確認するため、各種畜肉加工食品の試作を行った。
豚腕肉を除脂した後3mmダイスを用いてミンチにし、豚脂も同様に3mmダイスを用いてミンチにした。表9に示す配合比率にて、サイレントカッターに各原料を投入しカッティングした。品温が12℃になった時点で取り出し、脱気をした後、17mm径のコラーゲンケーシングに充填した。その後、60℃で30分間乾燥加熱、60℃で10分間スモーク、75℃で30分間ボイルし、10分間流水にて冷却することでソーセージを得た。試験区はコントロールとアルギニンおよびTG併用添加区の2試験区とし、これら添加剤は他の原料と共に投入し混合した。アルギニンの添加量は対肉0.42%、TGの添加量は0.53U/原料肉1gとし、アルギニンおよびTGは実施例1と同じものを使用した。尚、豚腕肉と豚脂を合わせて肉と称する。得られたソーセージは沸騰水にて加熱をした後、官能評価を行った。官能評価は、プリプリ感とジューシー感を有する好ましい食感であるかどうかを評価ポイントとして、4名のパネルで行った。コントロールに対してアルギニンとTGの併用区が評価ポイントにおいて非常に優れている場合は「◎」、優れている場合は「○」、やや優れている場合は「△」、コントロールと同等もしくはコントロールより劣っている場合は「×」とした。
【表9】
豚ロース肉を除脂した後3mmダイスを用いてミンチにし、表10の配合に従い事前に調製したピックル液を、ミンチ肉の40%相当量添加した。すなわち140%加水である。ミキサー(HOBART社製)にてスピード「1」で1分間、スピード「2」で4分間混合し、脱気をした後、折り径104mmのファイブラスケーシングに充填した。その後、55℃で90分間乾燥加熱、65℃で20分間スモーク、75℃で90分間ボイルし、10分間流水にて冷却することでハムを得た。試験区はコントロールとアルギニンおよびTG併用添加区の2試験区とし、これら添加剤はピックル液と共に肉原料に添加し混合した。アルギニンの添加量は対肉0.42%、TGの添加量は0.53U/原料肉1gとし、アルギニンおよびTGは実施例1と同じものを使用した。得られたハムは厚さ1.2mmにスライスし、官能評価を行った。官能評価は、プリプリ感とジューシー感を有する好ましい食感であるかどうかを評価ポイントとして、4名のパネルで行った。コントロールに対してアルギニンとTGの併用区が評価ポイントにおいて非常に優れている場合は「◎」、優れている場合は「○」、やや優れている場合は「△」、コントロールと同等もしくはコントロールより劣っている場合は「×」とした。
【表10】
表11の配合に従い、ミキサー(HOBART社製)にて原料を混合した。混合した生地は45gずつ成型し、180℃にて3分間焼成した後、裏返して2分間焼成し、冷却した後急速凍結をして冷凍ハンバーグを得た。試験区はコントロールとアルギニンおよびTG併用添加区の2試験区とし、これら添加剤は他の原料と共に投入し混合した。アルギニンの添加量は対肉0.5%、TGの添加量は0.63U/原料肉1gとし、アルギニンおよびTGは実施例1と同じものを使用した。冷凍ハンバーグは、室温にて解凍した後レンジアップをし、官能評価を行った。官能評価は、肉粒感とジューシー感を有する好ましい食感であるかどうかを評価ポイントとし、コントロールに対してアルギニンとTGの併用区が評価ポイントにおいて非常に優れている場合は「◎」、優れている場合は「○」、やや優れている場合は「△」、コントロールと同等もしくはコントロールより劣っている場合は「×」とした。
【表11】
豚モモ肉を除脂した後3mmダイスを用いてミンチにし、豚脂も同様に3mmダイスを用いてミンチにした。表12に示す配合比率にて、ミキサー(HOBART社製)に各原料を投入し混合した。品温が12℃になった時点で生地を取り出し、成型した。50℃にて30分間座らせた後、95℃にて8分間加熱し、冷却した後、急速凍結をして冷凍ミートボールを得た。試験区はコントロールとアルギニンおよびTG併用添加区の2試験区とし、これら添加剤は他の原料と共に投入し混合した。アルギニンの添加量は対肉0.44%、TGの添加量は0.56U/原料肉1gとし、アルギニンおよびTGは実施例1と同じものを使用した。尚、豚モモ肉と豚脂を合わせて肉と称する。冷凍ミートボールは、室温にて解凍した後レンジアップをし、官能評価を行った。官能評価は、肉粒感とジューシー感を有する好ましい食感であるかどうかを評価ポイントとして、4名のパネルで行った。コントロールに対してアルギニンとTGの併用区が評価ポイントにおいて非常に優れている場合は「◎」、優れている場合は「○」、やや優れている場合は「△」、コントロールと同等もしくはコントロールより劣っている場合は「×」とした。
【表12】
鶏モモ肉を除皮および除脂した後、25〜30gのピースにカットし、500gのカット肉に150gの水を投入して肉に浸透させた。すなわち130%加水である。水の肉への浸透方法は2通り実施した。一つ目は、そのまま3時間漬け込む方法、二つ目はタンブラーを用いて3時間タンブリングする方法。それぞれの方法にて処理した肉は、ザルにて5分間水を切った後、小麦粉をまぶして165℃にて4分間フライし、から揚げを得た。試験区は、漬け込み法、タンブリング法それぞれにおいて、コントロールとアルギニンおよびTG併用添加区の2試験区とし、これら添加剤は事前に水に溶解させた。アルギニンの添加量は対肉0.3%、TGの添加量は0.38U/原料肉1gとし、アルギニンおよびTGは実施例1と同じものを使用した。得られたから揚げについて、官能評価を行った。官能評価は、やわらかさとジューシー感と自然な繊維感を有する好ましい食感であるかどうかを評価ポイントとして、4名のパネルで行った。コントロールに対してアルギニンとTGの併用区が評価ポイントにおいて非常に優れている場合は「◎」、優れている場合は「○」、やや優れている場合は「△」、コントロールと同等もしくはコントロールより劣っている場合は「×」とした。
豚ロース肉を除脂した後、8mmの厚さにスライスし、500gのスライス肉に150gの水を投入して肉に浸透させた。すなわち130%加水である。水の肉への浸透方法は2通り実施した。一つ目は、そのまま3時間漬け込む方法、二つ目はタンブラーを用いて3時間タンブリングする方法。それぞれの方法にて処理した肉は、ザルにて5分間水を切った後、小麦粉をまぶし、液卵をくぐらせ、パン粉を付けて170℃にて4分間フライし、豚カツを得た。試験区は、漬け込み法、タンブリング法それぞれにおいて、コントロールとアルギニンおよびTG併用添加区の2試験区とし、これら添加剤は事前に水に溶解させた。アルギニンの添加量は対肉0.3%、TGの添加量は0.38U/原料肉1gとし、アルギニンおよびTGは実施例1と同じものを使用した。得られた豚カツについて、官能評価を行った。官能評価は、やわらかさとジューシー感と自然な繊維感を有する好ましい食感であるかどうかを評価ポイントとして、4名のパネルで行った。コントロールに対してアルギニンとTGの併用区が評価ポイントにおいて非常に優れている場合は「◎」、優れている場合は「○」、やや優れている場合は「△」、コントロールと同等もしくはコントロールより劣っている場合は「×」とした。
牛バラ肉を除脂した後、2mmの厚さにスライスした。500gのスライス肉を150gの水に3時間漬け込み、水を肉に浸透させた。すなわち130%加水である。漬け込みをした肉は、ザルにて5分間水を切った後、ホットプレートを用いて180℃で5分間焼き、焼き肉を得た。試験区は、コントロールとアルギニンおよびTG併用添加区の2試験区とし、これら添加剤は事前に水に溶解させた。アルギニンの添加量は対肉0.3%、TGの添加量は0.38U/原料肉1gとし、アルギニンおよびTGは実施例1と同じものを使用した。得られた焼き肉について、官能評価を行った。官能評価は、やわらかさとジューシー感と自然な繊維感を有する好ましい食感であるかどうかを評価ポイントとして、4名のパネルで行った。コントロールに対してアルギニンとTGの併用区が評価ポイントにおいて非常に優れている場合は「◎」、優れている場合は「○」、やや優れている場合は「△」、コントロールと同等もしくはコントロールより劣っている場合は「×」とした。
豚バラ肉を除脂した後、130〜140gになるようにスライスし、スライス肉の1.7倍量の調味液と合わせてパウチに封入した。調味液は、表13の配合に従い調製した。室温にて60分間静置した後、沸騰水にて60分間ボイルし、トンポーローを得た。試験区は、コントロールとアルギニンおよびTG併用添加区の2試験区とし、これら添加剤は事前に調味液に溶解させた。アルギニンの添加量は対肉0.3%、TGの添加量は0.38U/原料肉1gとし、アルギニンおよびTGは実施例1と同じものを使用した。得られた焼き肉について、官能評価を行った。官能評価は、やわらかさとジューシー感と自然な繊維感を有する好ましい食感であるかどうかを評価ポイントとして、4名のパネルで行った。コントロールに対してアルギニンとTGの併用区が評価ポイントにおいて非常に優れている場合は「◎」、優れている場合は「○」、やや優れている場合は「△」、コントロールと同等もしくはコントロールより劣っている場合は「×」とした。
【表13】
豚バラ肉を除脂し、表14の配合に従い事前に調製したピックル液を、肉の30%相当量添加した。すなわち130%加水である。5℃にて一晩タンブリングした後、液を切り、75℃で40分間乾燥加熱、80℃で40分間乾燥加熱、95℃で15分間蒸煮した。冷蔵庫にて冷却した後、スライスしてチャーシューを得た。試験区は、コントロールとアルギニンおよびTG併用添加区の2試験区とし、これら添加剤は事前にピックル液に溶解させた。アルギニンの添加量は対肉0.3%、TGの添加量は0.38U/原料肉1gとし、アルギニンおよびTGは実施例1と同じものを使用した。得られたチャーシューについて、官能評価を行った。官能評価は、やわらかさとジューシー感と自然な繊維感を有する好ましい食感であるかどうかを評価ポイントとして、4名のパネルで行った。コントロールに対してアルギニンとTGの併用区が評価ポイントにおいて非常に優れている場合は「◎」、優れている場合は「○」、やや優れている場合は「△」、コントロールと同等もしくはコントロールより劣っている場合は「×」とした。評価結果を表15に示す。
【表14】
表15に示す通り、いずれの食品系においても、アルギニンとTGを併用することでコントロールに対して優れた食感になることが明らかとなった。中でも、挽き肉を用いた食品系における効果が特に優れていた。また、表には示していないが、挽き肉を用いた食品系においては、アルギニンとTGを併用することにより「保汁感」や「肉々しさ」が付与された。これらは、アルギニンもしくはTGの単独添加では付与することのできない新規の効果である。尚、「保汁感」とは、ハンバーグ等をカットした際に肉汁が溢れ出る「しずる感」とは異なり、噛んだ際に初めて肉汁が染み出してくる感覚であり、しずる感と保汁感を併せてジューシー感と呼ぶ。また、「肉々しさ」とは、肉粒感を持ちながらそれぞれの肉粒の中に繊維感をしっかりと感じる肉そのものの存在感であり、挽き肉を用いた系でこの食感を付与できることは新しい技術であると言える。以上の結果より、畜肉加工食品に対してアルギニン及びTGを併用するという本発明は、汎用的に使用可能であることが示された。
【表15】
【実施例6】
【0011】
豚内モモ肉(国産一枚肉)を除脂し、2cm角程度の小片にカットした後、3mmダイスのミンサー「グレートミンチWMG−22」(ワタナベフーマック社製)にてミンチ状にした。その後、肉に対して1%相当の食塩を添加し、更に上述のミンサーに3回通してペースト状の肉を得た。得られたペースト状の肉を1試験区あたり100gずつに分け、表16に示す各添加剤を10gの蒸留水に事前に溶解した溶液を100gのペースト状肉に添加混合した。すなわち、肉に対して110%加水となる。アルギニンは味の素社製のL−アルギニンを、トランスグルタミナーゼは「アクティバ」TG(味の素社製)を、塩化カルシウムは富田製薬社製の塩化カルシウム2水和物、塩化マグネシウムは富田製薬社製の塩化マグネシウム6水和物を使用した。尚、これらをArg、TG、CaCl2、MgCl2と略して表記する場合がある。
【表16】
添加剤溶液で加水されたペースト状の肉は、脱気した後ビニール製のケーシングチューブ「クレハロンフィルム47mm×270mm」(呉羽化学工業社製)に詰め、クリッパーにて結搾した。ケーシングチューブに詰めた肉は、5℃にて1時間静置した後、プログラムインキュベーター「恒温恒湿槽LH21−13P」(ナガノ科学機械製作所社製)を用いて55℃にて1時間、75℃にて1時間加熱し、豚肉の加熱ゲルを得た。得られた加熱ゲルを豚ゲルと称した。豚ゲルは、5℃にて12時間保存した後、1時間室温にて静置した。豚ゲルのケーシングを開き、豚ゲル表面に付着した水分をペーパータオルにて拭き取った後、2cm幅にカットし、1本の豚ゲルから5つの円筒状の豚ゲル片を得た。2cm幅の円筒状の豚ゲル片は、曲面に対してプランジャーが挿入される方向にセットし、テクスチャーアナライザー「TA.XT.plus」(Stable Micro Systems社製)に供した。プランジャーはステンレス製の直径7mmの球体を使用し、テストスピードは1mm/secとした。破断点における荷重を破断強度(単位はg)とし、各試験区5つのデータの平均値を求め、破断強度の実測値とした。結果を表17に示す。尚、アルギニン、塩化カルシウム、塩化マグネシウムの添加量は畜肉原料に対する重量%、TGの添加量は畜肉原料1gに対する添加ユニット(U)で示した。
【表17】
また、TG、アルギニン、塩化カルシウム、塩化カリウムをそれぞれ単独で添加した区分の結果をもとに、併用添加区分の理論上の破断強度を算出し解析を行った。例えば、アルギニン0.36%、TG0.48U/原料肉1g、塩化カルシウム0.2%を添加した試験区9の場合、試験区2のコントロールに対する破断強度変化が「60.45g」、試験区4のコントロールに対する破断強度変化が「101.86g」、試験区5のコントロールに対する破断強度変化が「3.38g」であるため、これらを同量添加した試験区9ではコントロールに対する破断強度変化が理論上これらの値の和である「165.69g」(60.45g+101.86g+3.38g)となるはずである。この値を理論値とした。実測値におけるコントロールに対する変化量が、これら理論値と等しければ理論通りの効果、すなわち相加効果であり、理論値よりも大きければ理論を上回る効果、すなわち相乗効果であることを意味する。
表17に示す通り、アルギニン、TG、塩化カルシウム又は塩化マグネシウムを併用した試験区9〜試験区14のコントロールに対する破断強度の増加量(表17中の網掛け部分)が、理論値よりも大きい値であった。従って、アルギニン、TG、塩化カルシウム又は塩化マグネシウムを併用することによる破断強度に対する効果は、相乗的な効果であることが示された。以上より、畜肉加工食品に対してアルギニン又はその塩とTG、及びカルシウム塩又はマグネシウム塩を併用することは、これまでにない優れた食感改質手段であることが明らかとなった。
【実施例7】
【0012】
除脂をして2cm角のダイス状にカットした豚腕肉と同様にカットした豚脂を表18の配合に従い混合し、5mmダイスを用いてミンチにした。表18の配合に従い、ミンチにした豚腕肉および豚脂、鶏肉、食塩、重合リン酸塩、アスコルビン酸ナトリウム、10%亜硝酸ナトリウム製剤をニーダーにて4分間混合し、混合した生地を5℃で一晩静置した。表18の配合に従い、タピオカ澱粉、大豆タンパク、グラニュー糖、「味の素」、ホワイトペッパー、水を生地に加え、ニーダーにて4分間混合した。得られた生地に、表19に従い各添加剤を添加し、ミキサー(HOBART社製)にて1分間混合した後、21mm径のコラーゲンケーシングに充填した。その後、60℃で30分間乾燥加熱、65℃で10分間スモーク、75℃で30分間ボイルし、粗挽きソーセージを得た。試験区は表19に示す通りとし、アルギニン、TG、塩化カルシウムは、実施例1と同じものを使用した。アルギニン、塩化カルシウムの添加量は畜肉原料に対する重量%、TGの添加量は畜肉原料1gに対する添加ユニット(U)で示した。尚、豚腕肉、豚脂、鶏肉を合わせて肉と称する。得られたソーセージは沸騰水にて加熱をした後、官能評価を行った。官能評価は、硬さとしなやかさと肉粒感を有する好ましい食感であるかどうかを評価ポイントとして、4名のパネルで行った。コントロールに対して各試験区が評価ポイントにおいて非常に優れている場合は「◎」、優れている場合は「○」、やや優れている場合は「△」、コントロールと同等もしくはコントロールより劣っている場合は「×」とした。結果を表20に示す。
表20に示す通り、アルギニン、TG、塩化カルシウムを併用することにより、コントロールに比べて硬さとしなやかさと肉粒感を有する好ましい食感になることが明らかとなった。
【表18】
【表19】
【表20】
【実施例8】
【0013】
アルギニンとTG及びカルシウム塩又はマグネシウム塩の併用による畜肉加工食品の改質効果の汎用性を確認するため、各種畜肉加工食品の試作を行った。
豚腕肉を除脂した後3mmダイスを用いてミンチにし、豚脂も同様に3mmダイスを用いてミンチにした。表9に示す配合比率にて、サイレントカッターに各原料を投入しカッティングした。品温が12℃になった時点で取り出し、脱気をした後、17mm径のコラーゲンケーシングに充填した。その後、60℃で30分間乾燥加熱、60℃で10分間スモーク、75℃で30分間ボイルし、10分間流水にて冷却することでソーセージを得た。試験区はコントロールと、アルギニン、TG、塩化カルシウム併用添加区、およびアルギニン、TG、塩化マグネシウム併用添加区の3試験区とし、これら添加剤は他の原料と共に投入し混合した。アルギニンの添加量は対肉0.3%、TGの添加量は0.35U/原料肉1g、塩化カルシウムの添加量は対肉0.3%、塩化マグネシウムの添加量は対肉0.3%とし、アルギニン、TG、塩化カルシウム、塩化マグネシウムは実施例1と同じものを使用した。尚、豚腕肉と豚脂を合わせて肉と称する。得られたソーセージは沸騰水にて加熱をした後、官能評価を行った。官能評価は、プリプリ感とジューシー感を有する好ましい食感であるかどうかを評価ポイントとして、4名のパネルで行った。コントロールに対してアルギニン、TG、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムの併用区が評価ポイントにおいて非常に優れている場合は「◎」、優れている場合は「○」、やや優れている場合は「△」、コントロールと同等もしくはコントロールより劣っている場合は「×」とした。
豚ロース肉を除脂した後3mmダイスを用いてミンチにし、表10の配合に従い事前に調製したピックル液を、ミンチ肉の40%相当量添加した。すなわち140%加水である。ミキサー(HOBART社製)にてスピード「1」で1分間、スピード「2」で4分間混合し、脱気をした後、折り径104mmのファイブラスケーシングに充填した。その後、55℃で90分間乾燥加熱、65℃で20分間スモーク、75℃で90分間ボイルし、10分間流水にて冷却することでハムを得た。試験区はコントロールと、アルギニン、TG、塩化カルシウム併用添加区、およびアルギニン、TG、塩化マグネシウム併用添加区の3試験区とし、これら添加剤はピックル液と共に肉原料に添加し混合した。アルギニンの添加量は対肉0.42%、TGの添加量は0.48U/原料肉1g、塩化カルシウムの添加量は対肉0.42%、塩化マグネシウムの添加量は対肉0.42%とし、アルギニン、TG、塩化カルシウム、塩化マグネシウムは実施例1と同じものを使用した。得られたハムは厚さ1.2mmにスライスし、官能評価を行った。官能評価は、プリプリ感とジューシー感を有する好ましい食感であるかどうかを評価ポイントとして、4名のパネルで行った。コントロールに対してアルギニン、TG、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムの併用区が評価ポイントにおいて非常に優れている場合は「◎」、優れている場合は「○」、やや優れている場合は「△」、コントロールと同等もしくはコントロールより劣っている場合は「×」とした。
表11の配合に従い、ミキサー(HOBART社製)にて原料を混合した。混合した生地は45gずつ成型し、180℃にて3分間焼成した後、裏返して2分間焼成し、冷却した後、急速凍結をして冷凍ハンバーグを得た。試験区はコントロールと、アルギニン、TG、塩化カルシウム併用添加区、およびアルギニン、TG、塩化マグネシウム併用添加区の3試験区とし、これら添加剤は他の原料と共に投入し混合した。アルギニンの添加量は対肉0.5%、TGの添加量は0.58U/原料肉1g、塩化カルシウムの添加量は対肉0.5%、塩化マグネシウムの添加量は対肉0.5%とし、アルギニン、TG、塩化カルシウム、塩化マグネシウムは実施例1と同じものを使用した。冷凍ハンバーグは、室温にて解凍した後レンジアップをし、官能評価を行った。官能評価は、肉粒感とジューシー感を有する好ましい食感であるかどうかを評価ポイントとし、コントロールに対してアルギニン、TG、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムの併用区が評価ポイントにおいて非常に優れている場合は「◎」、優れている場合は「○」、やや優れている場合は「△」、コントロールと同等もしくはコントロールより劣っている場合は「×」とした。
豚モモ肉を除脂した後3mmダイスを用いてミンチにし、豚脂も同様に3mmダイスを用いてミンチにした。表12に示す配合比率にて、ミキサー(HOBART社製)に各原料を投入し混合した。品温が12℃になった時点で生地を取り出し、成型した。50℃にて30分間座らせた後、95℃にて8分間加熱し、冷却した後急速凍結をして冷凍ミートボールを得た。試験区はコントロールと、アルギニン、TG、塩化カルシウム併用添加区、およびアルギニン、TG、塩化マグネシウム併用添加区の3試験区とし、これら添加剤は他の原料と共に投入し混合した。アルギニンの添加量は対肉0.44%、TGの添加量は0.51U/原料肉1g、塩化カルシウムの添加量は対肉0.44%、塩化マグネシウムの添加量は対肉0.44%とし、アルギニン、TG、塩化カルシウム、塩化マグネシウムは実施例1と同じものを使用した。尚、豚モモ肉と豚脂を合わせて肉と称する。冷凍ミートボールは、室温にて解凍した後レンジアップをし、官能評価を行った。官能評価は、肉粒感とジューシー感を有する好ましい食感であるかどうかを評価ポイントとして、4名のパネルで行った。コントロールに対してアルギニン、TG、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムの併用区が評価ポイントにおいて非常に優れている場合は「◎」、優れている場合は「○」、やや優れている場合は「△」、コントロールと同等もしくはコントロールより劣っている場合は「×」とした。
鶏モモ肉を除皮および除脂した後、25〜30gのピースにカットし、500gのカット肉に150gの水を投入して肉に浸透させた。すなわち130%加水である。水の肉への浸透方法は2通り実施した。一つ目は、そのまま3時間漬け込む方法、二つ目はタンブラーを用いて3時間タンブリングする方法。それぞれの方法にて処理した肉は、ザルにて5分間水を切った後、小麦粉をまぶして165℃にて4分間フライし、から揚げを得た。試験区は、漬け込み法、タンブリング法それぞれにおいて、コントロールと、アルギニン、TG、塩化カルシウム併用添加区、およびアルギニン、TG、塩化マグネシウム併用添加区の3試験区とし、これら添加剤は事前に水に溶解させた。アルギニンの添加量は対肉0.3%、TGの添加量は0.35U/原料肉1g、塩化カルシウムの添加量は対肉0.3%、塩化マグネシウムの添加量は対肉0.3%とし、アルギニン、TG、塩化カルシウム、塩化マグネシウムは実施例1と同じものを使用した。得られたから揚げについて、官能評価を行った。官能評価は、やわらかさとジューシー感と自然な繊維感を有する好ましい食感であるかどうかを評価ポイントとして、4名のパネルで行った。コントロールに対してアルギニン、TG、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムの併用区が評価ポイントにおいて非常に優れている場合は「◎」、優れている場合は「○」、やや優れている場合は「△」、コントロールと同等もしくはコントロールより劣っている場合は「×」とした。
豚ロース肉を除脂した後、8mmの厚さにスライスし、500gのスライス肉に150gの水を投入して肉に浸透させた。すなわち130%加水である。水の肉への浸透方法は2通り実施した。一つ目は、そのまま3時間漬け込む方法、二つ目はタンブラーを用いて3時間タンブリングする方法。それぞれの方法にて処理した肉は、ザルにて5分間水を切った後、小麦粉をまぶし、液卵をくぐらせ、パン粉を付けて170℃にて4分間フライし、豚カツを得た。試験区は、漬け込み法、タンブリング法それぞれにおいて、コントロールと、アルギニン、TG、塩化カルシウム併用添加区、およびアルギニン、TG、塩化マグネシウム併用添加区の3試験区とし、これら添加剤は事前に水に溶解させた。アルギニンの添加量は対肉0.3%、TGの添加量は0.35U/原料肉1g、塩化カルシウムの添加量は対肉0.3%、塩化マグネシウムの添加量は対肉0.3%とし、アルギニン、TG、塩化カルシウム、塩化マグネシウムは実施例1と同じものを使用した。得られた豚カツについて、官能評価を行った。官能評価は、やわらかさとジューシー感と自然な繊維感を有する好ましい食感であるかどうかを評価ポイントとして、4名のパネルで行った。コントロールに対してアルギニン、TG、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムの併用区が評価ポイントにおいて非常に優れている場合は「◎」、優れている場合は「○」、やや優れている場合は「△」、コントロールと同等もしくはコントロールより劣っている場合は「×」とした。
牛バラ肉を除脂した後、2mmの厚さにスライスした。500gのスライス肉を150gの水に3時間漬け込み、水を肉に浸透させた。すなわち130%加水である。漬け込みをした肉は、ザルにて5分間水を切った後、ホットプレートを用いて180℃で5分間焼き、焼き肉を得た。試験区は、コントロールと、アルギニン、TG、塩化カルシウム併用添加区、およびアルギニン、TG、塩化マグネシウム併用添加区の3試験区とし、これら添加剤は事前に水に溶解させた。アルギニンの添加量は対肉0.3%、TGの添加量は0.35U/原料肉1g、塩化カルシウムの添加量は対肉0.3%、塩化マグネシウムの添加量は対肉0.3%とし、アルギニン、TG、塩化カルシウム、塩化マグネシウムは実施例1と同じものを使用した。得られた焼き肉について、官能評価を行った。官能評価は、やわらかさとジューシー感と自然な繊維感を有する好ましい食感であるかどうかを評価ポイントとして、4名のパネルで行った。コントロールに対してアルギニン、TG、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムの併用区が評価ポイントにおいて非常に優れている場合は「◎」、優れている場合は「○」、やや優れている場合は「△」、コントロールと同等もしくはコントロールより劣っている場合は「×」とした。
豚バラ肉を除脂した後、130〜140gになるようにスライスし、スライス肉の1.7倍量の調味液と合わせてパウチに封入した。調味液は、表13の配合に従い調製した。室温にて60分間静置した後、沸騰水にて60分間ボイルし、トンポーローを得た。試験区は、コントロールと、アルギニン、TG、塩化カルシウム併用添加区、およびアルギニン、TG、塩化マグネシウム併用添加区の3試験区とし、これら添加剤は事前に調味液に溶解させた。アルギニンの添加量は対肉0.3%、TGの添加量は0.35U/原料肉1g、塩化カルシウムの添加量は対肉0.3%、塩化マグネシウムの添加量は対肉0.3%とし、アルギニン、TG、塩化カルシウム、塩化マグネシウムは実施例1と同じものを使用した。得られたトンポーローについて、官能評価を行った。官能評価は、やわらかさとジューシー感と自然な繊維感を有する好ましい食感であるかどうかを評価ポイントとして、4名のパネルで行った。コントロールに対してアルギニン、TG、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムの併用区が評価ポイントにおいて非常に優れている場合は「◎」、優れている場合は「○」、やや優れている場合は「△」、コントロールと同等もしくはコントロールより劣っている場合は「×」とした。
豚バラ肉を除脂し、表14の配合に従い事前に調製したピックル液を、肉の30%相当量添加した。すなわち130%加水である。5℃にて一晩タンブリングした後、液を切り、75℃で40分間乾燥加熱、80℃で40分間乾燥加熱、95℃で15分間蒸煮した。冷蔵庫にて冷却した後、スライスしてチャーシューを得た。試験区は、コントロールと、アルギニン、TG、塩化カルシウム併用添加区、およびアルギニン、TG、塩化マグネシウム併用添加区の3試験区とし、これら添加剤は事前にピックル液に溶解させた。アルギニンの添加量は対肉0.3%、TGの添加量は0.35U/原料肉1g、塩化カルシウムの添加量は対肉0.3%、塩化マグネシウムの添加量は対肉0.3%とし、アルギニン、TG、塩化カルシウム、塩化マグネシウムは実施例1と同じものを使用した。得られたチャーシューについて、官能評価を行った。官能評価は、やわらかさとジューシー感と自然な繊維感を有する好ましい食感であるかどうかを評価ポイントとして、4名のパネルで行った。コントロールに対してアルギニン、TG、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムの併用区が評価ポイントにおいて非常に優れている場合は「◎」、優れている場合は「○」、やや優れている場合は「△」、コントロールと同等もしくはコントロールより劣っている場合は「×」とした。評価結果を表21に示す。
表21に示す通り、いずれの食品系においても、アルギニン、TG、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムを併用することで、コントロールに対して優れた食感になることが明らかとなった。中でも、挽き肉を用いた食品系における効果が特に優れていた。また、表には示していないが、挽き肉を用いた食品系においては、アルギニン、TG、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムを併用することにより「箸通り」が非常に良くなった。これはアルギニン、TG、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムの単独添加では付与することのできない新規の効果である。尚、「箸通り」とは、ハンバーグ等に箸を入れた際に保形したままスムーズにカットできる感覚である。以上の結果より、畜肉加工食品に対してアルギニンとTG及びカルシウム塩又はマグネシウム塩を併用するという本発明は、汎用的に使用可能であることが示された。
【表21】
【実施例9】
【0014】
実施例1と同様の方法にて、表22に示す各添加剤を10gの蒸留水に事前に溶解した溶液を100gのペースト状肉に添加混合し豚ゲルを作成した。アルギニンおよびトランスグルタミナーゼは、実施例1と同じものを使用した。得られた歩留まりおよび破断強度のデータに関し、TGのみを添加した区分およびアルギニンのみを添加した区分の結果をもとに、併用添加区分の理論上の歩留まりおよび破断強度を算出し解析を行った。例えば、アルギニン0.001g/肉1gとTG0.1U/肉1gを添加した試験区59の場合、アルギニン0.001g/肉1gを添加した試験区5のコントロールに対する破断強度変化と、TG0.1U/肉1gを添加した試験区14のコントロールに対する破断強度変化の和が、試験区59のコントロールに対する破断強度変化の理論値となる。試験区59の実測値におけるコントロールに対する破断強度変化がこの理論値と等しければ理論通りの効果、すなわち相加効果であり、理論値よりも大きければ理論を上回る効果、すなわち相乗効果であることを意味する。上記の方法を用い、試験区19から試験区99の全ての併用試験区において、歩留まりおよび破断強度それぞれに関する相乗効果の解析を行った。
【表22】
アルギニンおよびTGの併用区である試験区19から試験区99において、各コントロールに対する歩留まりの増強幅を表23に、破断強度の増強幅を表24に示した。表23、24中のグレーの網掛けで示した領域で相乗効果が確認された。尚、表23、24において、歩留りまたは破断強度向上効果が認められ、総合評価として適当なものを「○」、効果があり総合評価として不適当ではないものを「△」、効果がかなり小さいまたは総合評価として適当ではないものを「×」で示した。以上より、アルギニンの添加量が畜肉原料1gあたり0.000001g〜0.1g、TGの添加量が畜肉原料1gあたり0.0001U〜100Uであり、TGの添加量がアルギニン1gあたり0.1U〜1000000Uである領域、好ましくはアルギニンの添加量が畜肉原料1gあたり0.00001g〜0.05g、TGの添加量が畜肉原料1gあたり0.001U〜10Uであり、TGの添加量がアルギニン1gあたり1U〜100000Uである領域において、畜肉加工食品に対して相乗的な効果を発揮することが示された。
【表23】
【表24】
【実施例10】
【0015】
実施例1と同様の方法にて、表25に示す各添加剤を10gの蒸留水に事前に溶解した溶液を100gのペースト状肉に添加混合し豚ゲルを作成した。アルギニン、トランスグルタミナーゼおよび塩化カルシウムは、実施例1と同じものを使用した。得られた破断強度のデータに関し、アルギニンのみを添加した区分、TGのみを添加した区分および塩化カルシウムのみを添加した区分の結果をもとに、3者併用添加区分の理論上の破断強度を算出し解析を行った。例えば、アルギニン0.001g/肉1g、TG0.1U/肉1g、塩化カルシウムをカルシウム換算で0.00081g/肉1gを添加した試験区60の場合、アルギニン0.001g/肉1gを添加した試験区5のコントロールに対する破断強度変化、TG0.1U/肉1gを添加した試験区14のコントロールに対する破断強度変化、および塩化カルシウムをカルシウム換算で0.00081g/肉1g添加した試験区19のコントロールに対する破断強度変化の和が、試験区60のコントロールに対する破断強度変化の理論値となる。試験区60の実測値におけるコントロールに対する破断強度変化がこの理論値と等しければ理論通りの効果、すなわち相加効果であり、理論値よりも大きければ理論を上回る効果、すなわち相乗効果であることを意味する。上記の方法を用い、試験区20から試験区100の全ての3者併用試験区において、破断強度に関する相乗効果の解析を行った。
アルギニン、TGおよび塩化カルシウムの併用区である試験区20から試験区100において、各コントロールに対する破断強度の増強幅を表26に示した。表26中のグレーの網掛けで示した領域で相乗効果が確認された。尚、表26において、破断強度向上効果が認められ、総合評価として適当なものを「○」、効果があり総合評価として不適当ではないものを「△」、効果がかなり小さいまたは総合評価として適当ではないものを「×」で示した。以上より、アルギニンの添加量が畜肉原料1gあたり0.000001g〜0.1g、TGの添加量が畜肉原料1gあたり0.0001U〜100Uであり、TGの添加量がアルギニン1gあたり0.1U〜1000000Uである領域、好ましくはアルギニンの添加量が畜肉原料1gあたり0.00001g〜0.05g、TGの添加量が畜肉原料1gあたり0.001U〜10Uであり、TGの添加量がアルギニン1gあたり1U〜100000Uである領域において、畜肉加工食品に対して相乗的な効果を発揮することが示された。
【表25】
【表26】
【実施例11】
【0016】
実施例1と同様の方法にて、表27に示す各添加剤を10gの蒸留水に事前に溶解した溶液を100gのペースト状肉に添加混合し豚ゲルを作成した。アルギニン、トランスグルタミナーゼおよび塩化カルシウムは、実施例1と同じものを使用した。得られた破断強度のデータに関し、アルギニンのみを添加した区分、TGのみを添加した区分および塩化カルシウムのみを添加した区分の結果をもとに、3者併用添加区分の理論上の破断強度を算出し解析を行った。例えば、アルギニン0.001g/肉1g、TG0.58U/肉1g、塩化カルシウムをカルシウム換算で0.001g/肉1gを添加した試験区65の場合、アルギニン0.001g/肉1gを添加した試験区5のコントロールに対する破断強度変化、TG0.58U/肉1gを添加した試験区10のコントロールに対する破断強度変化、および塩化カルシウムをカルシウム換算で0.001g/肉1g添加した試験区15のコントロールに対する破断強度変化の和が、試験区65のコントロールに対する破断強度変化の理論値となる。試験区65の実測値におけるコントロールに対する破断強度変化がこの理論値と等しければ理論通りの効果、すなわち相加効果であり、理論値よりも大きければ理論を上回る効果、すなわち相乗効果であることを意味する。上記の方法を用い、試験区21から試験区110の全ての3者併用試験区において、破断強度に関する相乗効果の解析を行った。
【表27】
アルギニン、TGおよび塩化カルシウムの併用区である試験区21から試験区110において、各コントロールに対する破断強度の増強幅を表28に示した。表28中のグレーの網掛けで示した領域で相乗効果が確認された。尚、表28において、破断強度向上効果が認められ、総合評価として適当なものを「○」、効果があり総合評価として不適当ではないものを「△」、効果がかなり小さいまたは総合評価として適当ではないものを「×」で示した。以上より、アルギニンの添加量が畜肉原料1gあたり0.000001g〜0.1g、塩化カルシウムの添加量がカルシウム換算で畜肉原料1gあたり0.000001g〜0.05gであり、塩化カルシウムの添加量がカルシウム換算でアルギニン1gあたり0.0001g〜1000gである領域、好ましくはアルギニンの添加量が畜肉原料1gあたり0.00001g〜0.05g、塩化カルシウムの添加量がカルシウム換算で畜肉原料1gあたり0.00001g〜0.02gであり、塩化カルシウムの添加量がカルシウム換算でアルギニン1gあたり0.001g〜500gである領域において、畜肉加工食品に対して相乗的な効果を発揮することが示された。
【表28】
比較例1
上述の通り、アルギニン高含有タンパク質であるプロタミンとTGを併用することによる食品の保存性向上方法(特許3940816号公報)が報告されている。そこで、アルギニンとTGを併用する本発明と、アルギニンとプロタミンを併用する方法の比較を行うこととした。実施例1と同様の方法にて、表29に示す各添加剤を10gの蒸留水に事前に溶解した溶液を100gのペースト状肉に添加混合し豚ゲルを作成した。尚、特許3940816号公報において示されている実施例では、表29の試験区5と同等の添加量にて実施されている。アルギニンおよびトランスグルタミナーゼは実施例1と同じものを使用し、プロタミンは「MC−70」(上野製薬社製)を使用した。尚、本報において、プロタミンはProと略して表記する場合がある。アルギニンの添加量は畜肉原料に対する重量%、TGの添加量は畜肉原料1gに対する添加ユニット(U)、プロタミンの添加量は上記製剤中に含まれるプロタミン換算で畜肉原料に対する重量%として示した。破断強度、歩留り測定結果を図4に示す。
図4に示す通り、プロタミンを単独で添加した試験区3および試験区4では破断強度は増加するが歩留まりが低下しており、プロタミンとTGを併用した試験区5および試験区6では更に破断強度は増加するものの歩留まりが更に低下した。試験区2のTG単独添加では破断強度が増加し歩留まりが低下したため、プロタミンとTGの併用効果は相加的であると考えられた。一方、アルギニンを単独で添加した試験区7に比べてアルギニンとTGを併用した試験区8では、破断強度が大きく増加し歩留まりの低下は見られなかった。従って、アルギニンとTGの併用による相乗的な改質効果は、プロタミンとTGの併用効果とは全く異なるものであるということが明らかとなった。
【表29】
比較例2
上述の通り、トランスグルタミナーゼと塩化マグネシウムを併用することによるハムの食感改質方法(WO2010−074338)が報告されている。また、接着成形食品用途ではあるが、畜肉加工食品分野において、トランスグルタミナーゼと塩化カルシウム又は塩化マグネシウムを併用するという知見(WO2010−035856)が開示されている。そこで、アルギニン又はその塩とTG、及びカルシウム塩又はマグネシウム塩を併用する本発明と、TGと塩化カルシウム又は塩化マグネシウムを併用する方法の比較を行うこととした。実施例1と同様の方法にて、表30に示す各添加剤を10gの蒸留水に事前に溶解した溶液を100gのペースト状肉に添加混合し豚ゲルを作成した。破断強度測定結果を表7に示す。尚、アルギニン、塩化カルシウム、塩化マグネシウムの添加量は畜肉原料1gに対する重量、TGの添加量は畜肉原料1gに対する添加ユニット(U)で示した。
【表30】
また、アルギニンを単独で添加した区分、TGと塩化カルシウム又は塩化マグネシウムを併用した区分の結果をもとに、アルギニンとTG及び塩化カルシウム又は塩化マグネシウムを併用した区分の理論上の破断強度を算出し解析を行った。例えば、アルギニン0.3%、TG0.38U/原料肉1g、塩化カルシウム0.3%を添加した試験区6の場合、試験区2のコントロールに対する破断強度変化が「395.03g」、試験区5のコントロールに対する破断強度変化が「124.14g」であるため、これらを同量添加した試験区6ではコントロールに対する破断強度変化が理論上これらの値の和である「519.17g」(395.03g+124.14g)となるはずである。この値を理論値とした。実測値におけるコントロールに対する変化量が、これら理論値と等しければ理論通りの効果、すなわち相加効果であり、理論値よりも大きければ理論を上回る効果、すなわち相乗効果であることを意味する。
表31に示す通り、アルギニン、TG、塩化カルシウム又は塩化マグネシウムを併用した試験区6〜試験区8のコントロールに対する破断強度の増加量(表31中の網掛け部分)が、理論値よりも大きい値であった。従って、TGと塩化カルシウム又は塩化マグネシウムの併用効果と、アルギニンによる効果を合わせることで、破断強度において相乗的な効果が得られることが示された。以上より、本発明は、これまでの知見からは想定できない非常に優れた食感改質手段であることが明らかとなった。
【表31】
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明によると、畜肉加工食品の品質を向上できるので、食品分野において極めて有用である。
図1
図2
図3
図4