【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するため、
第1の本発明は、複数本の電線からなるワイヤハーネスを挿通する金属製のパイプと、該パイプ内に挿入して組み付ける別体の金属製の仕切材を備え、
前記仕切材と前記パイプの外周壁とで仕切られる複数の電線挿通空間を該パイプの軸線方向に連続して設けて
おり、
前記仕切材の各仕切板の外周端を嵌め込む嵌合凹部を前記パイプの内周面に軸線方向に延在させて設けていると共に、該嵌合凹部を前記パイプの内周面に周方向に一定ピッチで設け、任意の位置の前記嵌合凹部に前記仕切板の外周端を嵌め込むようにし、これら嵌合凹部は両側面が開口側に向けて外広がりとなる台形状の凹部としていることを特徴とするワイヤハーネス用の外装材を提供している。
【0011】
前記パイプおよび仕切材はアルミニウム系金属等の溶融金属を押出成形して設けており、前記パイプは中空部を囲む外周壁のみからなる断面円形、長円または楕円形状とし、前記仕切材は複数の仕切板を放射状に結合した形状または複数の仕切板を連結板から櫛歯を突設した形状としている。
前記放射状の仕切材は断面円形のパイプ内に装着し、前記櫛歯状の仕切材は断面長円形状または断面楕円形状のパイプ内に装着される。
また、各仕切板には径方向の中間位置に少なくとも1つの屈曲部を設けていることが好ましい。
さらに、パイプと仕切材は前記アルミニウム系金属等からなる同種金属で形成することが好ましい。
なお、軽量で、耐食性、加工性が優れる点でアルミニウム系金属が好適に用いられるが、ステンレス系や鉄系金属から形成し、外周面に樹脂コーティングしたり防錆塗料を塗布してもよい。
【0012】
また、前記仕切材の仕切板により仕切られるパイプ内の挿通空間の個数は2個以上、好ましくは3個以上である。上限は限定されないが、多数とすると仕切材がパイプ内で占める割合が多くなり電線挿通空間が減少するため、分割される挿通空間は8個以下、好ましくは5個以下である。具体的には3〜4個が好ましい。
【0013】
具体的には、3相の高圧電線を各1本づつ前記仕切材で仕切られた各電線挿通空間に通すことがこのましい。よって、ワイヤハーネスが前記3相の高圧電線のみからなる場合には、パイプ内を仕切材で3つの電線挿通空間に仕切っている。
また、例えば、前記3相の高圧電線と低電圧バッテリー回路の1本の低圧電線でワイヤハーネスを構成する場合、仕切材で4つの電線挿通空間に仕切り、3相の高圧電線をそれぞれ挿通空間に通し、低圧電線を1つの挿通空間に通している。
【0014】
前記のように、本発明の金属製の仕切り付きパイプからなるワイヤハーネス用の外装材は、パイプと別に製造した仕切材をパイプの中空部に後入れして仕切付きパイプとしている。このように、パイプと仕切材とを一体に押出成形せず、別体で製造して後組みつけをすると、仕切材の肉厚をパイプの外周壁の肉厚より薄くでき、外部干渉材に対する保護材としてのパイプの保護機能と、パイプ内の電線挿通容積の減少を押さえながら電線挿通空間を分割して設けて電線のシールド性能を高めることができるシールド機能とを両立することができる。
かつ、パイプと仕切材とを別々に製造すると、製造時の難易度を下げることができ、管理が容易となる。さらに、パイプのみ又は仕切材のみを変更して仕様を変更でき、パイプと仕切材をそれぞれ汎用化できる。
【0015】
前記仕切材で仕切られた複数の電線挿通空間に前記ワイヤハーネスの電線を分割して挿通し、該挿通した電線と仕切材とに粘着テープまたは結束バンドを巻き付けて固着し、該電線を保持した仕切材を前記パイプに挿通している。
【0016】
具体的には、仕切材の長さ方向に間隔をあけて外周に巻付用切欠を設けることが好ましい。仕切板で仕切られた各電線挿通空間にワイヤハーネスの分割した電線を軸線方向に通した後、前記巻付用切欠を通して電線の外周に粘着テープまたは結束バンドを巻き付け、電線を仕切材に固着し、この状態でパイプに挿入するようにしている。
前記巻付用切欠は放射状の仕切材の場合、複数の仕切板の同一外周上に巻付用切欠を設けている。該巻付用切欠は連続押出成形した仕切材に後工程で打ち抜き加工することで所要の位置に簡単に設けることができる。
【0017】
前記のように、本発明は、電線を保持した状態で仕切材をパイプに挿通している。このように、電線を仕切材で保持してパイプ内に通すため、電線のみの通線と異なり、挿通の途中で電線が折れ曲がって損傷が生じることはない。また、仕切材で仕切られた狭い空間に電線を通す作業を無くすことができ、パイプへの電線の挿通作業を容易とすることができる。
【0018】
前記仕切材の各仕切板の外周先端を嵌め込む嵌合凹部を前記パイプの内周面に軸線方向に延在させて設けることが好ましい。
前記嵌合凹部に仕切板の突出端をはめ込むことで、パイプ内に仕切材を位置決めできる。例えば、仕切板が3つの場合、3つの嵌合凹部を設けている。
【0019】
前記第1の本発明では、前記嵌合凹部を前記パイプの内周面に周方向に一定ピッチで設け、任意の位置の前記嵌合凹部に前記仕切板の外周端を嵌め込むようにし、これら嵌合凹部は両側面が開口側に向けて外広がりとなる台形状の凹部と
している。
このように台形状の嵌合凹部とすると、仕切板の嵌め込み角度が相違しても対応することができ、仕切材をガタつきなくパイプ内に固定できる。
【0020】
仕切材に電線を保持した状態で前記パイプ内に挿通し、この状態で、ワイヤハーネスの配索形態に応じてパイプを曲げ加工している。この曲げ加工時に仕切材が容易に曲がるように、前記のように、仕切材の各仕切板には径方向の中間位置に少なくとも1つの屈曲部を設けておくことが好ましい。該屈曲部を折れ支点として仕切材をスムーズに曲げ加工することができる。
【0021】
第2の本発明では、複数本の電線からなるワイヤハーネスを挿通する金属製のパイプと、該パイプ内に挿入して組み付ける別体の金属製の仕切材を備え、
前記仕切材と前記パイプの外周壁とで仕切られる複数の電線挿通空間を該パイプの軸線方向に連続して設けており、
前記パイプの全長を絞り加工(スウェージング加工)または少なくとも長さ方向の両端を部分的に加締め加工し、該パイプの内周面に仕切材の外周端を圧接固定しているワイヤハーネス用の外装材としている。該第2の発明では、電線を保持した仕切材を前記パイプ内に挿通して位置決めした後に、仕切材をパイプ内に固定するため、前記パイプの全長を絞り加工(スウェージング加工)または少なくとも長さ方向の両端を部分的に加締め加工し、該パイプの内周面に仕切材の外周端を圧接固定している。
【0022】
前記のように、スウェージング加工または部分加締め加工によりパイプ径を縮めることでパイプを仕切材と固定できる。かつ、パイプの外径のバラツキがあってもスウェージング加工をすると矯正できる。
【0023】
また、前記パイプと仕切材とを固定した状態で、パイプの長さ方向の両端から仕切材を突出させ、該仕切材で保持した電線が前記パイプの端縁と接触しないようにしている。
これにより、パイプの端縁のエッジに電線が接触して損傷が生じるのを防止できる。
【0024】
前記仕切材付きのパイプで外装したワイヤハーネスは、電気自動車またはハイブリッド自動車においてリア側床上からフロアパネルの貫通穴を通して車外の床下配索領域に配索し、フロント側床上のエンジンルーム内に配索し、
前記リア側床上でバッテリと接続すると共に前記エンジンルーム内のインバータと接続し、または前記ワイヤハーネスはリア側床上でインバータと接続すると共に前記エンジンルーム内の床上でモータと接続している。
【0025】
なお、リア側床上から床下に配索し、自動車の長さ方向の中間位置で床上に配索する場合にも適用できる。
さらに、床下配索するワイヤハーネスに限定されず、外部干渉材から保護すると共にノイズ対策が必要であるワイヤハーネスの外装材とし適用できる。例えば、エンジンルーム内に配索する信号線を前記仕切材付きの金属パイプからなる外装材で外装してもよい。
【0026】
本発明は、ワイヤハーネスへの前記外装材の装着方法を提供している。即ち、
前記仕切材で仕切られた空間にワイヤハーネスの分割した電線を挿通して、該電線と仕切材とをテープまたは結束バンドで固着し、
ついで、前記電線を保持した仕切材を前記パイプに挿通し、
ついで、パイプを絞り加工または部分加締め加工して前記仕切材とパイプとを固定し、 その後、ワイヤハーネスの配索形態に対応してパイプに曲げ加工を施すワイヤハーネスへの外装材の装着方法を提供している。