特許第5811892号(P5811892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5811892
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス用の外装材
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20151022BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20151022BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20151022BHJP
【FI】
   H02G3/04 062
   H05K9/00 L
   B60K1/00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-38805(P2012-38805)
(22)【出願日】2012年2月24日
(65)【公開番号】特開2013-176206(P2013-176206A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2014年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072660
【弁理士】
【氏名又は名称】大和田 和美
(72)【発明者】
【氏名】志賀 弘章
(72)【発明者】
【氏名】杉野 秀寿
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−269201(JP,A)
【文献】 特開2000−287324(JP,A)
【文献】 実開昭59−189417(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60K 1/00
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の電線からなるワイヤハーネスを挿通する金属製のパイプと、該パイプ内に挿入して組み付ける別体の金属製の仕切材を備え、
前記仕切材と前記パイプの外周壁とで仕切られる複数の電線挿通空間を該パイプの軸線方向に連続して設けており、
前記仕切材の各仕切板の外周端を嵌め込む嵌合凹部を前記パイプの内周面に軸線方向に延在させて設けていると共に、該嵌合凹部を前記パイプの内周面に周方向に一定ピッチで設け、任意の位置の前記嵌合凹部に前記仕切板の外周端を嵌め込むようにし、これら嵌合凹部は両側面が開口側に向けて外広がりとなる台形状の凹部としていることを特徴とするワイヤハーネス用の外装材。
【請求項2】
前記パイプおよび仕切材はアルミニウム系金属等の溶融金属を押出成形して設けており、前記パイプは中空部を囲む外周壁のみからなる断面円形、長円または楕円形状とし、前記仕切材は複数の仕切板を放射状に結合した形状または複数の仕切板を連結板から櫛歯を突設した形状としている請求項1に記載のワイヤハーネス用の外装材。
【請求項3】
前記仕切材で仕切られた複数の電線挿通空間に前記ワイヤハーネスの電線を分割して挿通し、該挿通した電線と仕切材とに粘着テープまたは結束バンドを巻き付けて固着し、該電線を保持した仕切材を前記パイプに挿通している請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネス用の外装材。
【請求項4】
前記仕切板の長さ方向に間隔をあけて外周に巻付用切欠を設けている請求項3に記載のワイヤハーネス用の外装材。
【請求項5】
複数本の電線からなるワイヤハーネスを挿通する金属製のパイプと、該パイプ内に挿入して組み付ける別体の金属製の仕切材を備え、
前記仕切材と前記パイプの外周壁とで仕切られる複数の電線挿通空間を該パイプの軸線方向に連続して設けており、
前記パイプの全長を絞り加工(スウェージング加工)または少なくとも長さ方向の両端を部分的に加締め加工し、該パイプの内周面に仕切材の外周端を圧接固定しているワイヤハーネス用の外装材。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の前記仕切材で仕切られた空間にワイヤハーネスの分割した電線を挿通して、該電線と仕切材とをテープまたは結束バンドで固着し、
ついで、前記電線を保持した仕切材を前記パイプに挿通し、
ついで、パイプを絞り加工または部分加締め加工して前記仕切材とパイプとを固定し、 その後、ワイヤハーネスの配索形態に対応してパイプに曲げ加工を施すワイヤハーネスへの外装材の装着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤハーネス用の外装材に関し、詳しくは、電気自動車またはハイブリッド自動車において床下配索する高圧電線を含むワイヤハーネスを挿通するパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車や電気自動車では、バッテリとインバータとの間やインバータとモータとの間などに配索されるワイヤハーネスは、ノイズ発生源となる高圧電線が含まれるためフロアパネル下方の床下に配索し、床下配索領域ではワイヤハーネスの保護と高圧電線のシールド対策として金属製のパイプに挿通して配線している場合がある。
【0003】
例えば、特開2004−224156号公報(特許文献1)で提供されたケーブル保持構造では、自動車のリア側に搭載されたインバータとエンジンルームに搭載されたモータとを接続する3相の高圧ケーブルからなるワイヤハーネスを床下配線し、該床下配線領域では各高圧ケーブルを一本づつ金属製の保護パイプに挿通している。
【0004】
また、特開2011−146228号公報(特許文献2)で提供されたシールド導電路は図12に示すように、金属パイプ100は外周壁101の内面から仕切材102を一体的に突設し、仕切材102で仕切った複数の挿通空間103内にワイヤハーネスを構成する電線105を分けて挿通している。即ち、電線105は高圧電線からなる動力電線105Aと弱電系の電線105Bとに分割して挿通空間103に挿通し、動力電線105Aから発生する電磁ノイズの影響を弱電系の電線105Bが受けることを低減、防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−224156号公報
【特許文献2】特開2011−146228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献2に開示されたように1つの金属パイプ100内に複数の電線からなるワイヤハーネスを挿通すると、金属パイプ100が1本だけでよいため、軽量化、コスト低減などのメリットがある。該金属パイプは溶融金属を押出成形して製造され、仕切材を設けた金属パイプも外周壁と仕切材とを一体で押し出して製造される。
【0007】
前記金属パイプは外周壁は仕切材と比較して厚肉として保護機能を高め、仕切材は薄肉として分割した挿通空間の容積を大とすることが好ましい。しかしながら、溶融金属を押出成形して部分的に肉厚を変えることは容易ではなく、精度が出にくい問題があり、かつ、仕切材の肉厚を余り薄く作ることは困難である。さらに、金属パイプの外径は同じで仕切材の肉厚を変更したい場合、仕切材の形状を変更したい場合、逆に仕切材は同一で外周壁の肉厚を変更したい場合など、製造用の押出ダイスを新規に起工しなければならず、製造コストが高くなる問題がある。
【0008】
また、仕切材を設けると1本の金属パイプ内に挿通する電線同士のノイズの影響を低減防止できる利点はあるが、外径を変更せずに仕切材を設けると挿通空間の容積は減少し、電線を挿通しにくくなりやすく、かつ、挿通時に電線被覆層が仕切材または外周壁に接触して損傷が生じる恐れがある。
【0009】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、複数本の電線群からなるワイヤハーネスを挿通する金属パイプからなるワイヤハーネス用の外装材において、該金属パイプ内に配置する仕切材の肉厚を金属パイプの肉厚と容易に相違させて薄くできると共に、仕切材の形状変更も容易にでき、かつ、仕切材を備えた金属パイプ内にワイヤハーネスの電線を分割して容易に挿通できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するため、第1の本発明は、複数本の電線からなるワイヤハーネスを挿通する金属製のパイプと、該パイプ内に挿入して組み付ける別体の金属製の仕切材を備え、
前記仕切材と前記パイプの外周壁とで仕切られる複数の電線挿通空間を該パイプの軸線方向に連続して設けており、
前記仕切材の各仕切板の外周端を嵌め込む嵌合凹部を前記パイプの内周面に軸線方向に延在させて設けていると共に、該嵌合凹部を前記パイプの内周面に周方向に一定ピッチで設け、任意の位置の前記嵌合凹部に前記仕切板の外周端を嵌め込むようにし、これら嵌合凹部は両側面が開口側に向けて外広がりとなる台形状の凹部としていることを特徴とするワイヤハーネス用の外装材を提供している。
【0011】
前記パイプおよび仕切材はアルミニウム系金属等の溶融金属を押出成形して設けており、前記パイプは中空部を囲む外周壁のみからなる断面円形、長円または楕円形状とし、前記仕切材は複数の仕切板を放射状に結合した形状または複数の仕切板を連結板から櫛歯を突設した形状としている。
前記放射状の仕切材は断面円形のパイプ内に装着し、前記櫛歯状の仕切材は断面長円形状または断面楕円形状のパイプ内に装着される。
また、各仕切板には径方向の中間位置に少なくとも1つの屈曲部を設けていることが好ましい。
さらに、パイプと仕切材は前記アルミニウム系金属等からなる同種金属で形成することが好ましい。
なお、軽量で、耐食性、加工性が優れる点でアルミニウム系金属が好適に用いられるが、ステンレス系や鉄系金属から形成し、外周面に樹脂コーティングしたり防錆塗料を塗布してもよい。
【0012】
また、前記仕切材の仕切板により仕切られるパイプ内の挿通空間の個数は2個以上、好ましくは3個以上である。上限は限定されないが、多数とすると仕切材がパイプ内で占める割合が多くなり電線挿通空間が減少するため、分割される挿通空間は8個以下、好ましくは5個以下である。具体的には3〜4個が好ましい。
【0013】
具体的には、3相の高圧電線を各1本づつ前記仕切材で仕切られた各電線挿通空間に通すことがこのましい。よって、ワイヤハーネスが前記3相の高圧電線のみからなる場合には、パイプ内を仕切材で3つの電線挿通空間に仕切っている。
また、例えば、前記3相の高圧電線と低電圧バッテリー回路の1本の低圧電線でワイヤハーネスを構成する場合、仕切材で4つの電線挿通空間に仕切り、3相の高圧電線をそれぞれ挿通空間に通し、低圧電線を1つの挿通空間に通している。
【0014】
前記のように、本発明の金属製の仕切り付きパイプからなるワイヤハーネス用の外装材は、パイプと別に製造した仕切材をパイプの中空部に後入れして仕切付きパイプとしている。このように、パイプと仕切材とを一体に押出成形せず、別体で製造して後組みつけをすると、仕切材の肉厚をパイプの外周壁の肉厚より薄くでき、外部干渉材に対する保護材としてのパイプの保護機能と、パイプ内の電線挿通容積の減少を押さえながら電線挿通空間を分割して設けて電線のシールド性能を高めることができるシールド機能とを両立することができる。
かつ、パイプと仕切材とを別々に製造すると、製造時の難易度を下げることができ、管理が容易となる。さらに、パイプのみ又は仕切材のみを変更して仕様を変更でき、パイプと仕切材をそれぞれ汎用化できる。
【0015】
前記仕切材で仕切られた複数の電線挿通空間に前記ワイヤハーネスの電線を分割して挿通し、該挿通した電線と仕切材とに粘着テープまたは結束バンドを巻き付けて固着し、該電線を保持した仕切材を前記パイプに挿通している。
【0016】
具体的には、仕切材の長さ方向に間隔をあけて外周に巻付用切欠を設けることが好ましい。仕切板で仕切られた各電線挿通空間にワイヤハーネスの分割した電線を軸線方向に通した後、前記巻付用切欠を通して電線の外周に粘着テープまたは結束バンドを巻き付け、電線を仕切材に固着し、この状態でパイプに挿入するようにしている。
前記巻付用切欠は放射状の仕切材の場合、複数の仕切板の同一外周上に巻付用切欠を設けている。該巻付用切欠は連続押出成形した仕切材に後工程で打ち抜き加工することで所要の位置に簡単に設けることができる。
【0017】
前記のように、本発明は、電線を保持した状態で仕切材をパイプに挿通している。このように、電線を仕切材で保持してパイプ内に通すため、電線のみの通線と異なり、挿通の途中で電線が折れ曲がって損傷が生じることはない。また、仕切材で仕切られた狭い空間に電線を通す作業を無くすことができ、パイプへの電線の挿通作業を容易とすることができる。
【0018】
前記仕切材の各仕切板の外周先端を嵌め込む嵌合凹部を前記パイプの内周面に軸線方向に延在させて設けることが好ましい。
前記嵌合凹部に仕切板の突出端をはめ込むことで、パイプ内に仕切材を位置決めできる。例えば、仕切板が3つの場合、3つの嵌合凹部を設けている。
【0019】
前記第1の本発明では、前記嵌合凹部を前記パイプの内周面に周方向に一定ピッチで設け、任意の位置の前記嵌合凹部に前記仕切板の外周端を嵌め込むようにし、これら嵌合凹部は両側面が開口側に向けて外広がりとなる台形状の凹部としている。
このように台形状の嵌合凹部とすると、仕切板の嵌め込み角度が相違しても対応することができ、仕切材をガタつきなくパイプ内に固定できる。
【0020】
仕切材に電線を保持した状態で前記パイプ内に挿通し、この状態で、ワイヤハーネスの配索形態に応じてパイプを曲げ加工している。この曲げ加工時に仕切材が容易に曲がるように、前記のように、仕切材の各仕切板には径方向の中間位置に少なくとも1つの屈曲部を設けておくことが好ましい。該屈曲部を折れ支点として仕切材をスムーズに曲げ加工することができる。
【0021】
第2の本発明では、複数本の電線からなるワイヤハーネスを挿通する金属製のパイプと、該パイプ内に挿入して組み付ける別体の金属製の仕切材を備え、
前記仕切材と前記パイプの外周壁とで仕切られる複数の電線挿通空間を該パイプの軸線方向に連続して設けており、
前記パイプの全長を絞り加工(スウェージング加工)または少なくとも長さ方向の両端を部分的に加締め加工し、該パイプの内周面に仕切材の外周端を圧接固定しているワイヤハーネス用の外装材としている。該第2の発明では、電線を保持した仕切材を前記パイプ内に挿通して位置決めした後に、仕切材をパイプ内に固定するため、前記パイプの全長を絞り加工(スウェージング加工)または少なくとも長さ方向の両端を部分的に加締め加工し、該パイプの内周面に仕切材の外周端を圧接固定している。
【0022】
前記のように、スウェージング加工または部分加締め加工によりパイプ径を縮めることでパイプを仕切材と固定できる。かつ、パイプの外径のバラツキがあってもスウェージング加工をすると矯正できる。
【0023】
また、前記パイプと仕切材とを固定した状態で、パイプの長さ方向の両端から仕切材を突出させ、該仕切材で保持した電線が前記パイプの端縁と接触しないようにしている。
これにより、パイプの端縁のエッジに電線が接触して損傷が生じるのを防止できる。
【0024】
前記仕切材付きのパイプで外装したワイヤハーネスは、電気自動車またはハイブリッド自動車においてリア側床上からフロアパネルの貫通穴を通して車外の床下配索領域に配索し、フロント側床上のエンジンルーム内に配索し、
前記リア側床上でバッテリと接続すると共に前記エンジンルーム内のインバータと接続し、または前記ワイヤハーネスはリア側床上でインバータと接続すると共に前記エンジンルーム内の床上でモータと接続している。
【0025】
なお、リア側床上から床下に配索し、自動車の長さ方向の中間位置で床上に配索する場合にも適用できる。
さらに、床下配索するワイヤハーネスに限定されず、外部干渉材から保護すると共にノイズ対策が必要であるワイヤハーネスの外装材とし適用できる。例えば、エンジンルーム内に配索する信号線を前記仕切材付きの金属パイプからなる外装材で外装してもよい。
【0026】
本発明は、ワイヤハーネスへの前記外装材の装着方法を提供している。即ち、
前記仕切材で仕切られた空間にワイヤハーネスの分割した電線を挿通して、該電線と仕切材とをテープまたは結束バンドで固着し、
ついで、前記電線を保持した仕切材を前記パイプに挿通し、
ついで、パイプを絞り加工または部分加締め加工して前記仕切材とパイプとを固定し、 その後、ワイヤハーネスの配索形態に対応してパイプに曲げ加工を施すワイヤハーネスへの外装材の装着方法を提供している。
【発明の効果】
【0027】
前述したように、本発明の金属製の仕切つきパイプからなるワイヤハーネス用の外装材は、パイプと仕切材とを別体とし、仕切材をパイプに通して一体化しているため、仕切材とパイプの肉厚を変えて、仕切材の厚さを薄くでき、パイプ内での電線挿通空間の容積の低減を防止できる。また、肉厚、外径等が相違するパイプと、仕切形状、肉厚等が相違する仕切材とを組み合わせることで、多様な外装材を設けることができ、挿通したワイヤハーネスに適した外装材とすることができる等の種々の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態を示し、(A)は概略全体側面図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
図2】パイプを示し、(A)は斜視図、(B)は正面図である。
図3】仕切材を示し、(A)は斜視図、(B)は正面図である。
図4】巻付用切欠を設けた仕切材を示し、(A)は斜視図、(B)は(A)の要部拡大図である。
図5】パイプに仕切材を挿通した状態を示す側面図である。
図6】(A)〜(F)はワイヤハーネスと仕切材とパイプの組付工程を示す図面である。
図7】本発明の第2実施形態のパイプを示し、(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は要部拡大断面図である。
図8】(A)(B)(C)は第2実施形態のパイプに種類の相違する仕切材を組み合わせた状態を示す図面である。
図9】第2実施形態のパイプと仕切材の固定構造を示す側面図である。
図10】本発明の第3実施形態を示し、(A)はパイプの正面図、(B)は仕切材の斜視図、(C)はパイプと仕切材との関係を示す正面図である。
図11】第3実施形態の仕切材にワイヤハーネスの電線を取り付けた状態を示す断面図である。
図12】従来例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図6に第1実施形態を示す。
本実施形態では、図1(A)(B)に示すように、ハイブリッド自動車のリア側床上に搭載するバッテリ1とフロント側のエンジンルームに搭載するインバータ2との間に3相の高圧電線W1、W2、W3からなるワイヤハーネス3を配索し、前記リア側床上とフロント側床上との間の中間領域はフロアパネル4より下方に床下配線をしている。該床下配線領域Z1の長さ方向の両端で上向きに曲げ、該上向き配線領域Z2、Z3をリア側のフロアパネル4に設けた貫通穴5に挿通し、フロント側はエンジンルームに配索している。
【0030】
前記床下配線領域Z1および、その両側の上向き配線領域Z2、Z3に連続して配索する前記ワイヤハーネス3を1本の連続した仕切材付きのパイプからなる外装材10に挿通している。該外装材10は金属製のパイプ11内に同種金属からなる仕切材12を挿入固定した構成としている。該パイプ11および仕切材はいずれもアルミニウム系金属を溶融して連続押出成形して設けている。
【0031】
前記仕切材12は図3に示すように、3枚の仕切板13(13A、13B、13C)を120度間隔をあけて放射状に結合した形状とし、パイプ11の中空部11bに装着した状態で、3枚の仕切板13A〜13Cの外縁をパイプ11の外周壁11aの内面に密着させ、仕切板13と外周壁11aとで囲まれた3つの密閉された扇状の挿通空間C(C1、C2、C3)を設け、各挿通空間Cに前記高圧電線W1,W2,W3を1本づつ挿通している。
前記パイプ11の肉厚t1は仕切材12の仕切板13の肉厚t2より厚くしている。
パイプ11および仕切材12は高圧電線W1〜W3から発生するノイズが外部へ拡散するのを防止するシールド機能を備え、パイプ11は路面からの飛び石や路面接触から電線を保護する機能を担っている。
【0032】
前記パイプ11は連続押出成形で直管として製造している。図2に示すように、パイプ11は断面円形の中空部11bを円環形状の外周壁11aで囲む形状としている。
該パイプ11の外周壁11aの内周面に120度間隔をあけて嵌合凹部15を軸線方向の全長に設けている。該嵌合凹部15は前記各仕切板13の径方向外端がガタつき無く嵌合できる大きさとしている。
【0033】
3枚の仕切板13を放射状に連結した形状の仕切材12は、前記のように押出成形して設けている。成形後に、図4に示すように、3枚の仕切板13の径方向外端に長さ方向に間隔をあけて巻付用切欠16を打抜加工で形成している。
【0034】
図5に示すように、仕切材12の全長はパイプ11の全長より若干長くし、パイプ11の長さ方向の両端縁11e、11fから仕切材12の長さ方向の両端が突出するようにしている。
また、パイプ11の内径は仕切材12の3枚の仕切板13の外端を連続する仮想外径より僅かに大きくし、パイプ11の中空部11bに仕切材12を容易に挿通できるようにしている。
【0035】
次に、前記パイプ11および仕切材12からなる外装材10で前記高圧電線W1〜W3を外装する方法について説明する。
まず、図6(A)(B)に示すように、仕切材12の仕切板13A〜13Cで仕切られた3つの断面扇状の挿通空間C1〜C3にそれぞれ高圧電線W1〜W3を1本づつ挿通する。この電線の挿通は各挿通空間C1〜C3に軸線直角方向から横入れできるため電線の装着作業が容易となる。
【0036】
ついで、図6(C)(D)に示すように、粘着テープ18を3枚の仕切板13の巻付用切欠16に通すと共に前記高圧電線W1〜W3の外面に粘着させて巻き付け、仕切材12に3本の高圧電線W1〜W3を固着保持する。その際、各挿通空間C1〜C3にそれぞれ挿通した高圧電線W1〜W3が挿通空間C1〜C3から外周へ飛び出さないようにする。
【0037】
ついで、図6(E)に示すように、高圧電線W1〜W3を保持した仕切材12をパイプ11の長さ方向の一端から他端に向けて挿入する。その際、3枚の仕切板13A〜13Cの径方向外端をパイプ11の内面に設けた嵌合凹部15に嵌合して軸線方向に挿入していく。パイプ11に仕切材12を装着した状態で、前記各挿通空間C1〜C3の外周側開口がパイプ11の外周壁11aで閉鎖されるため、3つの密閉空間となり、該密閉空間にそれぞれ1本の高圧電線W1〜W3が分割して挿通された状態となる。
挿入する仕切材12は、図6(F)に示すように、長さ方向の両端がパイプ11の両端11e、11fからそれぞれ若干突出した状態となるように装着する。
【0038】
ついで、パイプ11を長さ方向の一端11eから他端11fに向けて絞り加工(スウェージング加工)し、パイプ11を縮径して仕切材12の各仕切板13の外面にパイプ11の外周壁11aの内面を圧接固定し、前記図1(B)に示す構成とする。
【0039】
図1(A)に示すように、仕切付きパイプ11は床下配線領域Z1の前後両端で上向きに曲げ加工する必要がある。
よって、図6(F)に示すように、パイプ11内に高圧電線W1〜W3を保持した仕切材12を挿通固定した後、パイプ11を曲げジグ(図示せず)を用いて曲げ加工している。
【0040】
前記の工程で外装材10で外装したワイヤハーネス3を図1(A)に示すように、自動車に配索している。
【0041】
図7乃至図9に第2実施形態を示す。
第2実施形態では図7に示すように、パイプ11の外周壁11aの内周面に周方向に一定ピッチで多数の嵌合凹部15を形成している。これら嵌合凹部15は図7(C)に拡大して示すように、開口側に向けて外広がりとなる断面台形状とし、嵌合凹部15の底面15aを挟む両側面15bと15cをテーパ状としている。
【0042】
前記パイプ11は、図8(A)(B)(C)に示すように、複数の仕切材12、22、32のいずれとも装着できるものとしている。仕切材12は前記第1実施形態で用いる仕切材である。仕切材22は4枚の仕切板23を放射状に結合した形状とし、パイプ11内を4つの挿通空間C1〜C4に仕切るものである。仕切材32は4つの仕切板33を放射状に結合した形状とし、各仕切板33は径方向の中間位置に屈曲部33pを設けている。
【0043】
前記仕切材12、22、32のいずれも、仕切板13、23、33の径方向外端をパイプ11の外周壁内面に設けた嵌合凹部15に嵌合して位置決めしている。その際、仕切り板13、23、33の嵌合凹部15への挿入角度が相違しても、嵌合凹部15のテーパ状とした側面に当接し、仕切板13、23、33を嵌合凹部15にガタ付きなく保持できるようにしている。
【0044】
仕切材22、32はパイプ11内を4つの挿通空間C1〜C4に仕切り、3つの挿通空間C1〜C3に第1実施形態と同様に高圧電線W1〜W3を分割して挿通し、残りの挿通空間C4に低電圧バッテリー用の1回路の低圧電線W4を挿通している。このように低圧電線W4を仕切板で高圧電線と仕切ることにより、低圧電線が高圧電線から受けるノイズを遮断または低減できる。
【0045】
また、仕切材32の各仕切板33は径方向の中間位置に設けた屈曲部33pで屈曲させている。このように、仕切板33を予め屈曲させておくと、パイプ11と共に仕切材32を屈曲する際、屈曲部33pが屈曲の起点となり仕切材32をスムーズに曲げ加工することができる。
【0046】
また、該第2実施形態では、仕切材22、32と電線との固着は粘着テープではなく、図8(A)に示すように、結束バンド19で行い、結束バンド19を仕切板に設けた巻付用切欠に通して結束している。
さらに、パイプ11と仕切材22(12、32)との固定は、図9に示すように、パイプ11の長さ方向の両端11e、11fを部分的に加締めて縮径したカシメ部11kを設け、パイプ11と仕切材とを固定している。
他の構成および組立方法は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0047】
図10および図11に第3実施形態を示す。
第3実施形態では、図10(A)(C)に示すように、金属製のパイプ51を断面長円形状としている。また、図10(B)(C)に示すように、仕切材42を櫛歯形状としている。
【0048】
仕切材42は、複数本の櫛歯44の基端を連結部43から平行に突出した形状としている。図10(C)に示すように、連結部43をパイプ51の長尺方向の一方の内面51aに当接させると共に、連結部43の両端をパイプ51の内面に設けた嵌合凹部51cに嵌合し、各櫛歯44の突出端をパイプ51の他方内面に設けた嵌合凹部51bにそれぞれ嵌合させて位置決めしている。また、各櫛歯44および連結部43には長さ方向に間隔をあけて突出端から巻付用切欠46、47を設けている。
【0049】
前記仕切材42の櫛歯44で仕切られた各挿通空間Cに、ワイヤハーネスを構成する電線W1〜W5を分割して挿通し、その後、粘着テープ18を巻付用切欠46、47に通すと共に電線Wに巻き付けて電線W1〜W5を仕切材42に固着保持している。このように、仕切材42で電線Wを保持した後に第1、第2実施形態と同様にパイプ51に挿通している。 他の構成および組みつけ工程は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【符号の説明】
【0050】
3 ワイヤハーネス
4 フロアパネル
10 仕切り付きパイプからなる外装材
11 パイプ
12 仕切材
13 仕切板
15 嵌合凹部
16 巻付用切欠
18 粘着テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12