特許第5811908号(P5811908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5811908
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 40/28 20090101AFI20151022BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20151022BHJP
   H04W 40/12 20090101ALI20151022BHJP
【FI】
   H04W40/28
   H04W84/18
   H04W40/12
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-55967(P2012-55967)
(22)【出願日】2012年3月13日
(65)【公開番号】特開2013-191984(P2013-191984A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090620
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 宣幸
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】川本 康貴
【審査官】 桑江 晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−288578(JP,A)
【文献】 特開2011−171966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/26
H04W 4/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位レイヤ処理部からのフレームの送信要求に対し、下位レイヤ処理部が、無線チャネルについて定まっている1又は複数の送信休止条件の成立を判定し、成立した送信休止条件があればその送信休止条件に従う無線通信装置において、
上記下位レイヤ処理部が、
いずれかの送信休止条件が成立したか否かを判定する休止条件成立判定部と、
上記休止条件成立判定部による判定で成立した送信休止条件の種類、上記休止条件成立判定部が判定のために算出した情報、上記休止条件成立判定部が閲覧を意図して作成した情報の少なくとも一部を含む開示用情報を、上記上位レイヤ処理部に開示する上位レイヤ開示部とを備える
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
上記送信休止条件が、
送信要求されたフレームの送信期間が第1の規定期間を超える場合には、そのフレームの送信を禁止する、又は、第1の規定期間の経過時点で中断するという第1の送信休止条件、
所定時間当たりの送信期間の総和が予め設定されている上限時間を超えて送信しないという第2の送信休止条件、
送信要求されたフレームの送信期間が第2の規定期間を超える場合には、前のフレームの送信終了時刻から予め設定されている待機時間は送信できないという第3の送信休止条件
の1以上であることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
複数の上記送信休止条件が存在しており、
成立した送信休止条件が、上記第1の送信休止条件又は上記第2の送信休止条件の場合には、上記上位レイヤ開示部は、上記第1の送信休止条件又は上記第2の送信休止条件が成立したことを上記上位レイヤ処理部に開示する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
上記送信休止条件として上記第2の送信休止条件を含み、
上記上位レイヤ開示部は、上記第2の送信休止条件に関連した時間情報を上記上位レイヤ処理部に開示する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
上記第2の送信休止条件に関連した時間情報は、上記第2の送信休止条件が成立するようになるまでの送信可能時間であることを特徴とする請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
上記第2の送信休止条件に関連した時間情報は、成立した上記第2の送信休止条件が再び成立しない状態になるまでの送信可能復帰時間であることを特徴とする請求項4又は5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
上記上位レイヤ処理部は、上記上位レイヤ開示部が開示した全て又は一部の情報を、ルーチングの決定のための通信品質情報として送信させる品質情報制御部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項8】
上記上位レイヤ処理部は、
通信時のパスを決定するルーチング決定部と、
上記ルーチング決定部がパスの決定時に利用する、周辺の他の無線通信装置との通信品質情報を管理する品質情報管理部とを備え、
上記品質情報制御部は、ルーチングの決定のための通信品質情報を周辺の他の無線通信装置に送信させると共に、周辺の他の無線通信装置からルーチングの決定のための通信品質情報を受信したときに、上記品質情報管理部が管理する品質情報管理部を更新させる
ことを特徴とする請求項7に記載の無線通信装置。
【請求項9】
上記ルーチングの決定のための通信品質情報が、上記第2の送信休止条件に関連した時間情報である、上記第2の送信休止条件が成立するようになるまでの送信可能時間であることを特徴とする請求項7又は8に記載の無線通信装置。
【請求項10】
上記ルーチング決定部は、上記送信可能時間の長い方を短い方より通信品質が良好であると取り扱ってパスを決定することを特徴とする請求項9に記載の無線通信装置。
【請求項11】
上記ルーチングの決定のための通信品質情報が、上記第2の送信休止条件に関連した時間情報である、成立した上記第2の送信休止条件が再び成立しない状態になるまでの送信可能復帰時間であることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項12】
上記ルーチング決定部は、上記送信可能復帰時間の短い方を長い方より通信品質が良好であると取り扱ってパスを決定することを特徴とする請求項11に記載の無線通信装置。
【請求項13】
上記送信休止条件が複数存在し、
条件成立時の対応として、送信中止という第1の対応、送信休止条件を満たすようになるまで待ってからの送信という第2の対応とを含み、成立した送信休止条件に応じて、上記第1の対応又は上記第2の対応を起動させる成立時動作決定部を、上記下位レイヤ処理部がさらに有する
ことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信装置に関し、例えば、2012年7月に開放が予定されている920MHz帯を利用する無線通信装置に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
2012年7月に総務省が開放する920MHz帯に関し、法令に準拠した標準規格(ARIB STD−108;非特許文献1)が策定されて公示された。
【0003】
920MHz帯についての送信休止条件を整理すると、概ね、以下の(ア)〜(ウ)のような送信休止条件を挙げることができる。すなわち、920MHz帯を利用してデータ送信をする際には、以下の(ア)〜(ウ)の3つの送信休止条件を充足しなければならない。
【0004】
(ア)1時間当たりの送信期間の総和(適宜、累積送信時間と呼ぶ)が360秒を超えた場合、それ以降の送信を禁止する(以下、「送信期間総和による送信休止」と呼ぶ)。
【0005】
(イ)1つのフレームの送信が完了するまでの期間が規定期間(チャネル幅が400kHzの場合は3ms、600kHz〜1000kHzの場合は2ms)を超える場合、送信完了後の2msの間は送信を禁止する(以下、「送信後の送信休止」と呼ぶ)。
【0006】
(ウ)送信要求されたフレームの送信完了までの期間が規定期間(チャネル幅が400kHzの場合は200ms、600kHz〜1000kHzの場合は100ms)を超える場合、そのフレームの送信は禁止され、又は、規定期間で中断される(以下、「最大連続送信期間による送信休止」と呼ぶ)。
【0007】
上述のような送信制限に対応した、920MHz帯用の容易に考えられる無線通信装置(以下、従来の無線通信装置と呼ぶ)は、図3に示すような構成を有する。
【0008】
従来の無線通信装置100は、上位レイヤ処理部104との間で送信フレームや送信結果などを授受するための送信フレームインタフェース部101、送信フレームの送信を実施するフレーム送信部102、上述したいずれかの送信休止条件に該当しているか否かの判定を実施する休止条件チェック部103、及び、上位レイヤの処理を実行する上位レイヤ処理部104を有する。通常、送信フレームインタフェース部101、フレーム送信部102及び休止条件チェック部103の部分105は、データリンクレイヤであるMACレイヤや、物理(PHY)レイヤの処理を担っている下位レイヤ処理部であり、上位レイヤ処理部104はネットワークレイヤやアプリケーションレイヤの処理を担っている部分である。
【0009】
上位レイヤ処理部104から送出されたフレームの送信要求は、送信フレームインタフェース部101を介してフレーム送信部102に与えられる。休止条件チェック部103は、現時点が休止条件に合致しているか否かをチェックし、休止条件に合致した場合にはフレームの送信を休止するようフレーム送信部102へ指示する。フレーム送信部102は、フレームを送信しようとするときに休止が指示されていなければフレームの送信を行い、一方、送信の休止が指示されたときには送信を見合わせる。フレーム送信部102は、送信結果を、送信フレームインタフェース部101を介して上位レイヤ処理部104へ通知する。
【0010】
以上のような送信休止条件の成立を監視しながらの送信動作により、標準規格や法令を遵守した送信が可能となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ARIB STD−T108
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、下位レイヤ処理部105のうち、MACレイヤに係る処理の全て又は一部をソフトウェア(以下、MACレイヤプログラムと呼ぶ)による処理で実現するように構成することができる。この場合、下位レイヤ処理部105のMACレイヤプログラムは、通常、送信休止の際には、送信を実施せずに、上位レイヤ処理部104に対して送信エラーを返すことになる。
【0013】
しかし、上位レイヤ処理部104にて、「送信期間総和による送信休止」「送信後の送信休止」「最大連続送信期間による送信休止」を区別することなく、同じ送信失敗として扱うと、以下のような課題が生じる。
【0014】
「送信後の送信休止」による送信失敗の場合、2ms待てば、MACレイヤ(MACレイヤプログラム)で再送が可能であるが、上位レイヤ処理部104に送信失敗を通知してさらに再送を実施することになり、通信レートが低下してしまう。
【0015】
「送信期間総和による送信休止」による送信失敗の場合には、次の監視単位の1時間に移行するまではフレーム送信ができないが、上位レイヤ処理部104は、それを知ることができない。
【0016】
「最大連続送信期間による送信休止」による送信失敗の場合には、上位レイヤ処理部104は失敗理由が分からないので、どのような修正対応をとれば良いか分からない。
【0017】
以上のように、従来の無線通信装置においては、標準規格や法令を遵守した通信は可能であるが、効率の良い通信を行うことができない。
【0018】
そのため、送信制限を遵守しながら送信効率を高めることができる無線通信装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上位レイヤ処理部からのフレームの送信要求に対し、下位レイヤ処理部が、無線チャネルについて定まっている1又は複数の送信休止条件の成立を判定し、成立した送信休止条件があればその送信休止条件に従う無線通信装置において、上記下位レイヤ処理部が、(1)いずれかの送信休止条件が成立したか否かを判定する休止条件成立判定部と、(2)上記休止条件成立判定部による判定で成立した送信休止条件の種類、上記休止条件成立判定部が判定のために算出した情報、上記休止条件成立判定部が閲覧を意図して作成した情報の少なくとも一部を含む開示用情報を、上記上位レイヤ処理部に開示する上位レイヤ開示部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、成立した送信休止条件の種類、送信休止条件の成立判定のために算出した情報、閲覧を意図して作成した情報の少なくとも一部の情報が、上位レイヤ処理部に開示され、今回若しくは将来のフレームの送信要求に反映できるので、送信制限を遵守しながら送信効率を高めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施形態に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。
図2】第2の実施形態に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。
図3】従来の無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による無線通信装置の第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。第1の実施形態に係る無線通信装置は、920MHz帯の法令や標準規格に準拠したものを意図している。
【0023】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態に係る無線通信装置200の構成を示すブロック図である。図1に示す構成の一部は、CPUと、CPUが実行するプログラムとで構成することができるが、機能的には、図1で表すことができる。
【0024】
図1において、第1の実施形態に係る無線通信装置200は、送信フレーム入力部201、フレーム送信部202、休止条件処理部203、休止理由上位レイヤ開示部204及び上位レイヤ処理部206を有する。休止条件処理部203は、休止条件成立判定部203Aと成立時動作決定部203Bとを有する。送信フレーム入力部201、フレーム送信部202、休止条件処理部203及び休止理由上位レイヤ開示部204は、データリンクレイヤ(MACレイヤ)や物理(PHY)レイヤの処理を担っている下位レイヤ処理部205である。上位レイヤ処理部206はネットワークレイヤやアプリケーションレイヤの処理を担っている部分である。
【0025】
送信フレーム入力部201は、上位レイヤ処理部206との間で送信フレームや送信結果などを授受すると共に、休止条件処理部203に対して、休止条件の成立を判断させるためのフレームの情報を与えるものである。また、送信フレーム入力部201は、休止条件処理部203からの指示に従った処理を行うものである。休止条件の成立を判断させるためのフレームの情報は、(1)フレームそのもの、(2)フレーム長、(3)フレーム送信にかかる時間(フレーム長を通信速度で割った値)、(4)フレーム送信をする際に電波を出す最大期間(例えば、フレーム送信にかかる時間にアンプなどの出力が安定するのに必要な時間などのマージン時間を除いた時間)などのいずれであっても良い。休止条件の成立を判断させるためのフレームの情報が(1)や(2)の場合には、休止条件処理部203が、休止条件の成立を判断させるためのフレームの情報を時間の情報に変換することになる。
【0026】
フレーム送信部202は、送信フレーム入力部201から与えられたフレームを送信するものである。第1の実施形態に係る無線通信装置200は、920MHz帯の法令や標準規格に準拠したものを意図しているので、例えば、ARIB STD−T108に従って無線送信する。また、通信方式は、例えば、IEEE802.15.4gやIEEE802.11(WiFi)に規定されている方式を適用し得る。
【0027】
休止条件処理部203における休止条件成立判定部203Aは、送信フレーム入力部201から与えられた送信しようとするフレームの情報に基づいて、「最大連続送信期間による送信休止」の条件が成立するか、「送信期間総和による送信休止」の条件が成立するか、「送信後の送信休止」の条件が成立するか、を判定するものである。
【0028】
休止条件処理部203における成立時動作決定部203Bは、「最大連続送信期間による送信休止」、「送信期間総和による送信休止」又は「送信後の送信休止」のいずれかの条件が成立したときに、成立した休止条件に応じて、今回のフレームの送信要求に対する動作を決定するものである。
【0029】
休止理由上位レイヤ開示部204は、いずれかの休止条件が成立したときに、どの休止条件が成立したかなどの情報(以下、休止理由と呼ぶ)を上位レイヤ処理部206に開示するものである。なお、休止理由上位レイヤ開示部204は、いずれかの休止条件の成立ではなく、送信要求されたフレームの送信を休止又は中止することをトリガとして、上位レイヤ処理部206への開示を行うものであっても良い。
【0030】
上位レイヤ処理部206は、ネットワークレイヤやアプリケーションレイヤの処理を担っており、送信フレーム入力部201に対して送信の要求と共に送信フレームを引き渡し、送信要求に対する結果を送信フレーム入力部201から取り込んだりするものである。この第1の実施形態の場合、上位レイヤ処理部206は、休止理由上位レイヤ開示部204から休止理由が開示されるものであり、その後のフレームの送信要求などに、開示された休止理由を反映させるものである。
【0031】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態に係る無線通信装置200の動作を説明する。
【0032】
他の無線通信装置へ送信するフレームが生じたときには、上位レイヤ処理部206から送信フレーム入力部201へ、フレームとその送信要求とが与えられる。このとき、休止条件の成立を判断させるためのフレームの情報が、送信フレーム入力部201から休止条件処理部203に与えられる。
【0033】
これにより、休止条件成立判定部203Aによって、「最大連続送信期間による送信休止」、「送信期間総和による送信休止」又は「送信後の送信休止」の条件が成立するか否かが判定される。
【0034】
「最大連続送信期間による送信休止」は、送信要求されたフレームの送信に要する期間(フレーム長(データ量)を無線回線における通信速度で割って得た時間)が第1の規定期間を超える場合、そのフレームの送信は中止するという条件である。ここで、第1の規定時間は、チャネル幅が400kHzの場合は200ms、600kHz〜1000kHzの場合は100msであるが、例えば、無線通信装置200が、いずれか一方のチャネル幅だけに対応する装置であれば、第1の規定時間を休止条件成立判定部203Aに予め設定しておく。今回のフレームの送信に要する時間と第1の規定時間との大小比較により、「最大連続送信期間による送信休止」の条件が成立するか否かが判定される。
【0035】
「送信期間総和による送信休止」は、1時間当たりの送信期間の総和が360秒を超えた場合に休止するという条件である。そのため、休止条件成立判定部203Aに、直近1時間に送信した時間を認識できる過去のフレーム送信情報203aを格納しておく。例えば、過去のフレーム送信のそれぞれについて、送信終了時刻と送信時間の組を格納しておく。ここで、送信終了時刻が現時刻より1時間以上前の過去のフレーム送信情報は消去されるようにしておく。直近1時間の累積送信時間に、今回のフレームの送信に要する時間が加算され、加算後の累積送信時間と360秒との大小比較により、「送信期間総和による送信休止」の条件が成立するか否かが判定される。
【0036】
「送信後の送信休止」は、前回のフレーム送信期間が第2の規定期間を超えた場合、前回のフレーム送信完了後、2ms以内に、送信フレーム入力部101へ送信しようとするフレームが入力されても、そのフレームの送信を第2の規定期間が経過するまで遅らせるという条件である。ここで、第2の規定時間は、チャネル幅が400kHzの場合は3ms、600kHz〜1000kHzの場合は2msであるが、例えば、無線通信装置200が、いずれか一方のチャネル幅だけに対応する装置であれば、第2の規定時間を休止条件成立判定部203Aに予め設定しておく。格納されている過去のフレーム送信情報203aのうち、直近(前回)のフレーム送信における送信終了時刻と現時刻との差を得た後、得られた差を第2の規定時間と比較することにより、「送信後の送信休止」の条件が成立するか否かが判定される。
【0037】
休止条件成立判定部203Aによって、例えば、「最大連続送信期間による送信休止」、「送信期間総和による送信休止」、「送信後の送信休止」の順に条件の成立が判定される。「最大連続送信期間による送信休止」の条件が成立したときには、「送信期間総和による送信休止」及び「送信後の送信休止」の条件成立の判定は実行されない。「送信期間総和による送信休止」の条件が成立したときには、「送信後の送信休止」の条件成立の判定は実行されない。「送信後の送信休止」の条件が成立しないときには、休止条件成立判定部203Aから送信フレーム入力部201に送信の許可が送出される。
【0038】
「最大連続送信期間による送信休止」、「送信期間総和による送信休止」又は「送信後の送信休止」のいずれかの条件が成立したときには、成立時動作決定部203Bによって、成立した休止条件に応じて、今回のフレームの送信要求に対する動作が決定される。
【0039】
「最大連続送信期間による送信休止」の条件が成立したときには、成立時動作決定部203Bにおいて、フレームの送信中止が決定される。このとき、成立時動作決定部203Bから送信フレーム入力部201に送信中止が通知され、送信フレーム入力部201は送信要求されたフレームをフレーム送信部202に与えることなく、送信要求に対し、送信不可の送信結果を上位レイヤ処理部206に返送する。
【0040】
送信フレーム入力部101は、成立時動作決定部203Bの制御下で、送信要求されたフレームをフレーム送信部103へ、「直ちに渡す」、「遅延させて渡す」、「渡さない」のいずれかの動作を実行するものである。「最大連続送信期間による送信休止」の条件が成立したときには、フレームをフレーム送信部103へ「渡さない」動作を実行する。
【0041】
「送信期間総和による送信休止」の条件が成立したときには、成立時動作決定部203Bにおいて、フレームの送信が可能になるまで送信を休止することが決定される。この条件成立時には、過去のフレーム送信情報203aのうち、送信終了時刻がもう少しで1時間前になる情報が1時間前になったと仮定して1時間当たりの要素から除外し、また、今回のフレームの送信に必要な時間を加算した場合に1時間当たりの送信時間が360秒を超えるか否かを判断し、360秒を超えなければ仮定して除外した情報が1時間前になるまでの時間を休止させる時間とする。360秒を超えていれば、次に古い情報などをも考慮し、同様な方法で休止させる時間を決定する。成立時動作決定部203Bから送信フレーム入力部101へは、遅延時間(決定した休止時間)を明示した遅延送信が通知され、送信フレーム入力部201は送信要求されたフレームを遅延時間後にフレーム送信部202に与えて送信させ、フレーム送信部202からの送信終了を待って、送信要求に対し、送信済の送信結果を上位レイヤ処理部206に返送する。
【0042】
以上では、送信フレーム入力部201が遅延時間の計時を行うように説明したが、遅延時間の計時を成立時動作決定部203Bが行い、遅延時間後に、送信開始を送信フレーム入力部201に通知するものであっても良い。
【0043】
また、成立時動作決定部203Bが、決定した休止時間を閾値と比較し、決定した休止時間が閾値を超えているときには「送信休止」ではなく、「送信中止」に決定するようにしても良い。このようにすると、送信要求したフレームの送信が長期に渡って待たされることを防止することができる。
【0044】
以上では、現時刻の直前1時間の累積送信時間を、「送信期間総和による送信休止」の条件の成立判定に適用するものを説明したが、時間軸を1時間ずつに区切り、区切られた1時間毎に、「送信期間総和による送信休止」の条件の成立判定に適用する累積送信時間を算出するようにしても良い。この場合、新たな1時間に移行した際には、それまでの累積送信時間はリセットされる。さらに、この時間軸を1時間以下の適当な値に設定しても良い。例えば、時間軸を30分間毎に区切るようにすると、30分毎に累積送信時間をリセットできるようになる(但し、30分間での限界送信時間は180秒となる)。
【0045】
「送信後の送信休止」の条件が成立したときには、成立時動作決定部203Bにおいて、前回のフレームの送信終了時刻からの経過時間が第2の規定時間となる時刻が算出され、その算出時刻に達するまでの時間が求められる。そして、成立時動作決定部203Bから送信フレーム入力部101へは、求められた時間を遅延時間として明示した遅延送信が通知され、送信フレーム入力部201は送信要求されたフレームを遅延時間後にフレーム送信部202に与えて送信させ、フレーム送信部202からの送信終了を待って、送信要求に対し、送信済の送信結果を上位レイヤ処理部206に返送する。
【0046】
なお、上記とは異なり、この場合の遅延時間は最大でも2ms若しくは3msであるので、成立時動作決定部203Bが、その遅延時間後に送信フレーム入力部201へ送信許可を通知するようにしても良い。すなわち、送信フレーム入力部201から見て、一般的な送信許可が通知されたように見える処理を行っても良い。
【0047】
「最大連続送信期間による送信休止」、「送信期間総和による送信休止」及び「送信後の送信休止」の全ての条件が成立しない場合には、成立時動作決定部203Bから送信フレーム入力部201へ直ちに送信許可が通知され、送信フレーム入力部201は送信要求されたフレームを直ちにフレーム送信部202に与えて送信させ、フレーム送信部202からの送信終了を待って、送信要求に対し、送信済の送信結果を上位レイヤ処理部206に返送する。
【0048】
フレーム送信部202が実行した場合には、休止条件成立判定部203Aが管理する過去のフレーム送信情報203aに、今回のフレーム送信に係る情報が追加される。
【0049】
休止条件成立判定部203Aによって、「最大連続送信期間による送信休止」、「送信期間総和による送信休止」又は「送信後の送信休止」のいずれかの条件が成立すると判定されたときには、休止理由上位レイヤ開示部204に通知され、休止理由上位レイヤ開示部204によって、上位レイヤ処理部206に対する休止理由の開示が実行される。
【0050】
なお、「送信後の送信休止」の条件が成立したときには、ごくごく短時間の遅延時間後にフレームの送信が実行されるので、上位レイヤ処理部206に対する休止理由の開示を実行しないように構成しても良い。若しくは、付随情報を伴わずに、「送信後の送信休止」の条件が成立した旨だけが上位レイヤ処理部206に開示されるようにしても良い。
【0051】
「最大連続送信期間による送信休止」の条件が成立したときには、その旨が上位レイヤ処理部206に開示される(例えば、エラーコードで通知する)。この開示時には、今回送信しようとしたフレームの送信に要する時間が、第1の規定時間を超えている超過時間の情報をも併せて開示するようにしても良い(例えば、超過時間はエラーコードに付随するパラメータとして開示する)。例えば、上位レイヤ処理部206のソフトウェアの作りにもよるが、上位レイヤ処理部206は、超過時間に応じて、送信中止のフレームにおけるデータ量を複数に分割し、複数のフレームを再構築して、順次、送信要求を行うように対応することもできる。
【0052】
「送信期間総和による送信休止」の条件が成立したときには、その旨が上位レイヤ処理部206に開示される(例えば、エラーコードで通知する)。この開示時には、成立時動作決定部203Bによって決定された休止時間の情報をも併せて開示するようにしても良い(例えば、休止時間はエラーコードに付随するパラメータとして開示する)。ここで、成立時動作決定部203Bが、決定した休止時間を閾値と比較し、決定した休止時間が閾値を超えているときには「送信休止」ではなく、「送信中止」に決定するようにした構成の場合には、閾値を超えている場合といない場合とで異なるエラーコードを利用して開示するようにしても良い。例えば、上位レイヤ処理部206のソフトウェアの作りにもよるが、上位レイヤ処理部206は、「最大連続送信期間による送信休止」の条件が成立した送信中止ではフレームの分割で対応し、「送信期間総和による送信休止」の条件が成立し、しかも、休止時間が長いことによる送信中止では、上位レイヤ処理部206は、内部の時刻管理に基づいたフレームの再送信要求で対応することになる。
【0053】
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、複数の送信休止条件を一律には取り扱わず、成立した送信休止条件に応じて、送信休止条件成立時の動作を切り替えるようにしたので、送信休止条件が成立しても、法令や標準規格に違反することなくフレームを送信させることもでき、送信効率を高めることができる。
【0054】
また、第1の実施形態によれば、無線通信環境に関係のない理由(例えば、法令や標準規格による無線技術条件など)により無線通信ができなかった場合に、通信ができなった理由が上位レイヤ処理部で認識できるので、通信をするための対応を上位レイヤ処理部で検討することができる。
【0055】
(B)第2の実施形態
次に、本発明による無線通信装置の第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。第2の実施形態に係る無線通信装置は、マルチホップネットワークの構成要素である。
【0056】
図2は、第2の実施形態に係る無線通信装置200Aの構成を示すブロック図であり、第1の実施形態に係る図1との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。
【0057】
図2において、第2の実施形態に係る無線通信装置200Aは、送信フレーム入力部201、フレーム送信部202、休止条件処理部203(休止条件成立判定部203A、成立時動作決定部203B)、休止理由上位レイヤ開示部204及び上位レイヤ処理部206に加え、フレーム受信部207及び受信フレーム出力部208を有する。第2の実施形態の場合、上位レイヤ処理部206(例えば、プログラムでなる)は、周囲の無線通信装置のそれぞれについて無線通信路の品質を記述している品質テーブル206aを備えており、また、ルーチング決定部206bと、品質情報制御部206cとを備えている。
【0058】
周知のように、マルチホップネットワークのプロトコルでは、様々な観点から周囲の無線通信装置(ノード)との通信品質を測定し、測定結果に応じたフレームのルーチングを実施する。
【0059】
第2の実施形態に係る無線通信装置200Aは、休止理由上位レイヤ開示部204によって開示された休止理由のうち、所定の情報を、通信品質を規定する情報として、周囲の無線通信装置に送信し、また、周囲の無線通信装置から通信品質を規定する情報が与えられた際には品質テーブル206aを更新し、その後のルーチングに反映させるものである。
【0060】
第2の実施形態の休止理由上位レイヤ開示部204は、「最大連続送信期間による送信休止」、「送信期間総和による送信休止」及び「送信後の送信休止」の全ての条件が成立せず、成立時動作決定部203Bが送信フレーム入力部201へ送信許可を通知した場合にも、成立時動作決定部203Bが、今回の送信要求に係るフレームの送信時間を加算した後の1時間当たりの累積送信時間と360秒との差(以下、送信可能時間と呼ぶ)、言い換えると、「あとどれだけの期間送信できるか」を求めて上位レイヤ処理部206に開示する。
【0061】
また、休止理由上位レイヤ開示部204は、「送信期間総和による送信休止」の条件が成立して、1時間当たりの累積送信時間が360秒以下を満たすようになるまでの休止時間を成立時動作決定部203Bが決定した際には、その休止期間の経過後のフレーム送信を待たずに、決定された休止時間(以下、送信待ち時間と呼ぶ)を上位レイヤ処理部206に開示する。なお、時間軸を1時間ずつに区切り、区切られた1時間毎に、「送信期間総和による送信休止」の条件の成立判定に適用する累積送信時間を算出する構成の場合において、「送信期間総和による送信休止」の条件が成立したときには、休止理由上位レイヤ開示部204は、次の1時間に移行するまでの時間(累積送信時間をリセットするまでの時間;以下、リセット待ち時間と呼ぶ)を上位レイヤ処理部206に開示する。
【0062】
第2の実施形態の上位レイヤ処理部206は、送信可能時間が開示された場合や、送信待ち時間若しくはリセット待ち時間が開示された場合には、開示された時間情報を含む制御チャネルのマルチキャストフレームを形成し、送信フレーム入力部201を介してフレーム送信部202から送信させる。なお、制御チャネルについては、「最大連続送信期間による送信休止」、「送信期間総和による送信休止」、「送信後の送信休止」などの送信制限は設けられていない。
【0063】
フレーム受信部207は制御チャネルのフレームをも受信するものであり、受信された制御チャネルのフレームは、受信フレーム出力部208を介して上位レイヤ処理部206に与えられる。
【0064】
上位レイヤ処理部206において、送信可能時間や、送信待ち時間若しくはリセット待ち時間を含む制御チャネルフレームが与えられたときには、品質情報制御部206cが、品質テーブル206aにおける、制御チャネルフレームの送信元の無線通信装置に係るレコード(行)の該当する時間情報を、受信した制御チャネルフレームに挿入されている時間に更新させる。
【0065】
1レコードは、種々の通信品質(例えば、RSSI値)の項目をフィールドとして備えると共に、複数の通信品質を反映させた品質評価値のフィールドを有する。品質評価値は、各通信品質の実際の値若しくはそれを段階値(例えば、5段階のいずれかの段階)に置き換えた値との重み付け加算値として算出される。送信可能時間は、長い方が短い方より通信品質が良いように段階値に置き換えられる。送信待ち時間若しくはリセット待ち時間は、短い方が長い方より通信品質が良いように段階値に置き換えられる。
【0066】
なお、品質情報制御部206cは、制御チャネルフレームを受信しなくても、上位レイヤ処理部206内のソフトタイマに基づき、所定周期毎に、品質テーブル206aにおける送信待ち時間若しくはリセット待ち時間を所定周期分だけ短くなるように更新させるようにしても良い。
【0067】
ルーチング決定部206bは、自己を送信元(又は中継元)とするフレームの通信経路(パス)を決定するものである。ルーチング決定部206bは、周辺の無線通信装置との通信品質を反映させ、通信品質が良好な無線通信装置を順次経由するようにパスを決定する既存のルーチング決定方法を適用している。ルーチング決定方法の詳細については説明を省略する。
【0068】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加え、送信休止条件の判定で算出したり利用したりした時間情報を、当該無線通信装置に係る通信品質として、周辺の無線通信装置に通知するようにしたので、周辺の無線通信装置がより適切なルーチングを行うことができるという効果をも奏する。
【0069】
(C)他の実施形態
上記第2の実施形態においては、送信可能時間と、送信待ち時間若しくはリセット待ち時間とを、通信品質情報として同報送信するものを示したが、「最大連続送信期間による送信休止」の条件が成立したことや「送信期間総和による送信休止」の条件が成立したことなどを通信品質情報として同報送信するようにしても良い。例えば、データ量の大きなフレームの送信待ちを行っている無線通信装置(ノード)はマルチホップの中継ノードとしては適切なものとは言い難い。
【0070】
上記第2の実施形態では、無線通信装置が個別にルーチングを行うものを示したが、ネットワーク管理システムなどの特定装置がパスを決定し、送信元ノードに通知するようなシステムであれば、通信品質情報を同報送信するのではなく、ネットワーク管理システムなどの特定装置に通知するようにすれば良い。
【0071】
上記各実施形態においては、「最大連続送信期間による送信休止」、「送信期間総和による送信休止」及び「送信後の送信休止」の3条件を監視対象としている無線通信装置を示したが、送信制限の条件はこれより多くても少なくても良い。例えば、IEEE802.15.4gでは利用チャネルが400kHzの場合、通信レートは100kbpsでフレームサイズの最大値は2Kbyte以下であると規定されている。この場合、連続送信期間は200msを超えることはあり得ないので「最大連続送信期間による送信休止」の条件の成立を判定する必要はなく、送信制限の条件に含めないようにしても良い。
【0072】
上記各実施形態においては、送信休止条件の成立判定を、「最大連続送信期間による送信休止」、「送信期間総和による送信休止」、「送信後の送信休止」の順に行うものを示したが、判定の順序はこれに限定されるものではない。
【0073】
上記各実施形態では、上位レイヤ処理部及び下位レイヤ処理部が同一の無線通信装置に含まれているものを示したが、上位レイヤ処理部及び下位レイヤ処理部がそれぞれ別個の装置に組み込まれ、上位レイヤ処理部及び下位レイヤ処理部が接続されたものであっても良い。例えば、パソコン(上位レイヤ処理部)に無線通信用のアダプタやカード(下位レイヤ処理部)が接続されて無線通信装置として機能する場合にも本発明の技術思想を適用することができる。特許請求の範囲における「無線通信装置」の用語は、上位レイヤ処理部及び下位レイヤ処理部がそれぞれ別個の装置に組み込まれている場合をも含むものである。
【0074】
上記各実施形態においては、成立した送信休止条件に応じた異なる対応機能(送信中止、送信休止、遅延後の送信)と、送信休止条件に係る情報の上位レイヤ処理部への開示機能の両機能を実現できるものを示したが、いずれか一方の機能だけを実現できるように無線通信装置を構成にしても良い。
【0075】
上記各実施形態は、920MHz帯の日本の法令や標準規格に準拠したものを意図してなされたものであるが、周波数帯や適用国が限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0076】
200…無線通信装置、201…送信フレーム入力部、202…フレーム送信部、203…休止条件処理部、203A…休止条件成立判定部、203B…成立時動作決定部、204…休止理由上位レイヤ開示部、205…下位レイヤ処理部、206…上位レイヤ処理部、206a…品質テーブル、206b…ルーチング決定部、206c…品質情報制御部。
図1
図2
図3