特許第5811941号(P5811941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5811941
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20151022BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20151022BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20151022BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20151022BHJP
【FI】
   H02J3/32
   H02J7/00 P
   H02J7/34 J
   H01M10/44 P
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-100368(P2012-100368)
(22)【出願日】2012年4月25日
(65)【公開番号】特開2013-230004(P2013-230004A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2014年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】土屋 静男
【審査官】 岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−008380(JP,A)
【文献】 特開2011−130647(JP,A)
【文献】 特開2009−278776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42−10/48
H02J 3/00− 7/12
7/34− 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統(2)から供給される交流電力を直流電力に変換可能で、入力される直流電力を交流電力に変換して前記電力系統及び電気機器(3)に給電可能である双方向型電力変換装置(11)と、
前記電力系統から供給される交流電力を車両(20)に搭載された蓄電装置(23)に給電し、前記車両の前記蓄電装置に蓄えられた電力を受電する充放電装置(30)と、
前記充放電装置から供給される交流電力を直流電力に変換して出力する電力変換装置(12)と、
前記電力変換装置から出力される直流電力を検出する出力検出装置(17)と、
前記双方向型電力変換装置に入力される直流電力を検出する入力検出装置(18)と、
前記電力変換装置から出力される直流電力を蓄電し、蓄電されている電力を前記双方向型電力変換装置に放電する定置式の蓄電装置(13)と、
前記電力変換装置から出力される直流電力が前記定置式の蓄電装置及び前記双方向型電力変換装置へ入力可能な電力経路と前記定置式の蓄電装置から出力される直流電力が前記双方向型電力変換装置へ入力可能な電力経路とを含む直流電力線(15,16)と、
前記車両の前記蓄電装置から前記充放電装置を介して放電が行われる場合に、前記出力検出装置及び前記入力検出装置によって検出される各直流電力値に応じて、前記電力変換装置の出力電力値と前記双方向型電力変換装置の入力電力値を決定し、当該決定した出力電力値と入力電力値を満たすように前記電力変換装置及び前記双方向型電力変換装置の作動を制御する充放電制御装置(5)と、
を備えることを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
前記充放電制御装置は、前記車両の前記蓄電装置から前記充放電装置を介した放電を行う場合に、予め定めた最低出力値以上の電力が出力できるときに前記車両の前記蓄電装置からの放電を許可することを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記充放電制御装置は、前記車両の前記蓄電装置から前記充放電装置を介して放電を一旦実行すると、前記車両の前記蓄電装置の放電可能な電力量が放電されるまで、前記最低出力値以上の電力量で放電を継続することを特徴とする請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記充放電制御装置は、前記車両の前記蓄電装置から前記充放電装置を介した放電を行う場合に、前記電力変換装置の出力電力値から前記双方向型電力変換装置の入力電力値を差し引いた電力値を常に前記定置式の蓄電装置に蓄電するように制御することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された蓄電装置を定置用の蓄電装置と建物内の交流電力線とへ給電する電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特許文献1に開示された電力供給システムが知られている。当該電力供給システムは、外部の電力系統を家庭内負荷に供給する電力配線に接続した充放電器と全体制御を行うメインコントローラとを備え、充放電器を介して、電気自動車のバッテリと住宅側との間で相互に電力伝達可能とする。そして、電力供給システムは、車両側の蓄電池から住宅側に電力を過剰供給しないようにして、車両側の蓄電池に次の走行用の電力を確保するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−8380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載の装置では、車両に搭載される蓄電池の電力が電力系統へ向けて逆潮流されてしまうことの防止について、対策が講じられていない。また、車両搭載される蓄電池からの放電及び放電停止の頻度増加により、車両側の放電に関わる各種装置の劣化が促進されてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、電力系統への過度な逆潮流の抑制と放電に関わる車両搭載装置の劣化防止とを図ることができる電力供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の電力供給システムに係る発明は、電力系統(2)から供給される交流電力を直流電力に変換可能で、入力される直流電力を交流電力に変換して電力系統及び電気機器(3)に給電可能である双方向型電力変換装置(11)と、電力系統から供給される交流電力を車両(20)に搭載された蓄電装置(23)に給電し、車両の前記蓄電装置に蓄えられた電力を受電する充放電装置(30)と、充放電装置から供給される交流電力を直流電力に変換して出力する電力変換装置(12)と、電力変換装置から出力される直流電力を検出する出力検出装置(17)と、双方向型電力変換装置に入力される直流電力を検出する入力検出装置(18)と、電力変換装置から出力される直流電力を蓄電し、蓄電されている電力を双方向型電力変換装置に放電する定置式の蓄電装置(13)と、電力変換装置から出力される直流電力が定置式の蓄電装置及び双方向型電力変換装置へ入力可能な電力経路と定置式の蓄電装置から出力される直流電力が双方向型電力変換装置へ入力可能な電力経路とを含む直流電力線(15,16)と、車両の蓄電装置から充放電装置を介して放電が行われる場合に、出力検出装置及び入力検出装置によって検出される各直流電力値に応じて、電力変換装置の出力電力値と双方向型電力変換装置の入力電力値を決定し、当該決定した出力電力値と入力電力値を満たすように電力変換装置及び双方向型電力変換装置の作動を制御する充放電制御装置(5)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、電力変換装置、定置式の蓄電装置及び双方向型電力変換装置を連絡する直流電力線を有し、当該直流電力線を流れる直流電力のうち、電力変換装置から出力される直流電力と双方向型電力変換装置に入力される直流電力とを検出し、これらの検出値に応じて決定した値にしたがって、定置式の蓄電装置への蓄電量、電力系統及び電気機器への放電量を制御する。この制御によれば、双方向型電力変換装置の入力電力値を適正に決定することにより電力系統及び電気機器への過度な放電量を防止し、電力変換装置の出力電力値を適正に決定することにより車両の蓄電装置からの頻繁な放電を防止することができる。したがって、電力系統への過度な逆潮流の抑制と放電に関わる車両搭載装置の劣化防止とを図ることができる電力供給システムを提供できる。
【0008】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明を適用した第1実施形態に係る電力供給システムの構成を示す概略図である。
図2】車両の蓄電電力を利用に関する電力供給システムの作動を示すフローチャートである。
図3図2のステップ30のV2H連続運転モードに関する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合わせることも可能である。
【0011】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態の電力供給システム100は、例えば住宅である建物に設置された分電盤1と、分電盤1から延びる交流電力線6に接続された蓄電ユニット10と、車両20の蓄電池23及び蓄電ユニット10の蓄電池13に充放電する充放電スタンド30と、蓄電ユニット10及び車両20と通信する充放電制御装置5と、を備える。車両20は、蓄電容量の大きな蓄電池23を搭載し、例えばプラグインハイブリッド自動車、電気自動車等である。
【0012】
充放電スタンド30は、電力系統2からの系統電力を供給して車両20の蓄電池23に充電したり、車両20の蓄電池23に蓄えられた電力を蓄電ユニット10のAC/DCコンバータ12へ出力したりする充放電装置である。交流電力線6は、例えば単相3線式の(1本の中性線と2本の電圧線とからなる)電力線であり、電力会社の電力系統2の系統電力が分電盤1を介して供給される。分電盤1には、主幹ブレーカ、各回路系統に流れる電流上限値を規制する漏電検知機能付きの電流ブレーカが設けられている。
【0013】
また、交流電力線6は、太陽光エネルギー、太陽熱エネルギー、風力エネルギー、水力エネルギー等の自然界のエネルギーから各種発電手段を用いて得られた系統外電力も供給される構成であってもよい。交流電力線6には、各種電気機器等からなる負荷3が接続されており、これらの電気機器等には交流電力線6を介して給電されるようになっている。
【0014】
交流電力線6には、例えば建物の外部に設置された蓄電ユニット10(蓄電システム、e−Stationと呼ばれることもある)が接続している。蓄電ユニット10は、双方向パワーコンディショナ11、AC/DCコンバータ12、蓄電池13等を備える。蓄電池13は、建物、土地等に固定された定置式の蓄電装置であり、例えばリチウムイオン電池等の二次電池からなる単電池を複数組み合わせた組電池である。
【0015】
双方向パワーコンディショナ11(以下、双方向PCS11ともいう)は、例えば、充電・PCS制御用基盤、電源変換回路、通信基盤及びDC/DCコンバータを備える。双方向PCS11は、交流電力と直流電力とを相互に変換可能な双方向型電力変換装置である。
【0016】
蓄電池13は、双方向PCS11を介して交流電力線6に電気的に接続され、交流電力線6からの交流電力を充電したり、蓄電された直流電力を交流電力線6へ放電したりすることが可能となっている。蓄電池13は、直流電力線16、直流電力線15を介してAC/DCコンバータ12に接続され、充放電スタンド30からの交流電力を直流電力変換して充電できるとともに、直流電力線16、直流電力線15を介して双方向PCS11に接続され、直流電力を交流電力に変換して分電盤1へ放電可能できる蓄電装置である。電力変換装置であるAC/DCコンバータ12によって交流から直流に変換された電力は、直流電力線15、直流電力線16を介してすべて蓄電池13に入力される場合と、一部が蓄電池13に入力されるとともに残りが直流電力線15を介して双方向PCS11に入力される場合と、すべて直流電力線15を介して双方向PCS11に入力される場合と、がある。
【0017】
直流電力線15には、AC/DCコンバータ12の出力側に直流電力センサ17が設けられている。直流電力センサ17は、AC/DCコンバータ12から出力される直流電力を検出する出力検出装置である。直流電力線15には、双方向PCS11への入力側に直流電力センサ18が設けられている。直流電力センサ18は、双方向PCS11に入力される直流電力を検出する入力検出装置である。
【0018】
充放電制御装置5には、直流電力センサ17及び直流電力センサ18からの検出信号が入力される。AC/DCコンバータ12から出力される直流電力の出力値は、直流電力センサ17によって検出され、双方向PCS11へ入力される直流電力がある場合には、その入力値が直流電力センサ18によって検出されることになる。したがって、直流電力センサ17によって検出されるAC/DCコンバータ12の出力値から、直流電力センサ18によって検出される双方向PCS11への入力値を差し引いた値は、蓄電池13へ充電される電力値である。
【0019】
蓄電池13に充放電する際には、双方向PCS11の充電・PCS制御用基盤の指令に基づいて電源変換回路が交直変換、電圧調整、充放電電力量の調整を行う。充放電制御装置5は、当該充電・PCS制御用基盤を介して、電源変換回路による交直変換、電圧調整、充放電電力量の調整を行う。充電・PCS制御用基盤には、分電盤1よりも上流側の電力線に設けられた電流センサ4からの信号が入力される。電流センサ4は、電力系統2へ電力を供給する際の逆潮流を検出することができる。充放電制御装置5は、蓄電池13から双方向PCS11を介して分電盤1へ放電しているときに、電流センサ4からの入力信号に基づいて電力系統2への電力逆潮流現象の発生を検出した場合には、充電・PCS制御用基盤を制御して放電を禁止することができる。
【0020】
双方向PCS11のDC/DCコンバータからは、充放電制御装置5及び操作表示装置(図示せず)へ給電線が延びている。電力系統2の系統電力の停電時にも充放電制御装置5やコントローラへ電源を供給し、これらを作動可能とする。操作表示装置は、電力供給システム100の動作状態が表示される装置であり、例えば建物内に配設される遠隔操作手段である。
【0021】
充放電制御装置5は、充放電スタンド30、車両20の双方向インバータ22、双方向PCS11、蓄電池13、AC/DCコンバータ12等の作動を制御する。充放電制御装置5は、充放電スタンド30のシステムECU31、双方向インバータ22の通信基盤、双方向PCS11の通信基盤、蓄電池13の蓄電池監視ECU等と通信可能に接続されている。充放電制御装置5は、電力供給システム100の各種機器を制御可能とする拡張ECUである。充放電制御装置5は、ユーザーが操作入力できる操作表示装置内に搭載される構成でもよい。
【0022】
充放電スタンド30は、例えば建物の外部に、蓄電ユニット10とは別体で設置されている。充放電スタンド30には、分電盤1で交流電力線6から分岐した充電電力線7が接続されている。充電電力線7は、充放電スタンド30内にまで配設され、充放電スタンド30の本体部から外部に延出する充放電ケーブル72に接続している。充放電ケーブル72の先端部には、充放電コネクタが取付けられている。充放電スタンド30の本体部内において、充電電力線7には交流放電電力線71が分岐接続しており、充放電スタンド30の本体部から外部へ延びる交流放電電力線71は、蓄電ユニット10内にまで延設されている。
【0023】
充放電スタンド30に内蔵されるシステムECU31は、充放電制御装置5と通信することにより、車載蓄電装置である蓄電池23に対する充放電を制御する。すなわち、システムECU31は、車載の蓄電装置に対する充放電制御手段である。充放電ケーブル72内には、電力線とともにCPLT線及びGND線が配設され、CPLT信号が通信可能となっている。
【0024】
車両20には、例えば充放電コネクタの差込口が設けられている。この充放電コネクタに充放電スタンド30の充放電コネクタを接続することにより、車載の充放電器である双方向インバータ22を介して、車載の蓄電池23を充放電することが可能である。車載の蓄電池23を充電する際には、充放電ケーブル72を介して供給された交流電力を双方向インバータ22が直流電力に変換して、車載の蓄電池23に充電する。一方、車載の蓄電池23から放電する際には、車載の蓄電池23が蓄電している直流電力を双方向インバータ22が交流電力に変換して、リレー21、充放電ケーブル72を介して充放電スタンド30へ放電する。つまり、双方向インバータ22は、蓄電池23の充電時には交流電力を直流電力に変換し、蓄電池23の放電時には直流電力を交流電力に変換する電力変換器である。
【0025】
次に、上記構成の電力供給システム100の作動例について説明する。車載の蓄電池23を充電する充電モード時には、システムECU31は、まず、充放電ケーブル72先端の充放電コネクタが車両20に接続されたことをCPLT通信等にて確認し、LAN経由で宅内の操作表示装置へ接続完了を送信する。操作表示装置は、例えば表示画面に接続完了を表示する。次に、システムECU31は、PLC通信を開始し、PLC通信等にて検出した車両20側の情報をLAN経由で操作表示装置へ送信する。操作表示装置は、例えば表示画面に車両情報を表示する。
【0026】
システムECU31は、充電モード時に、充放電コネクタが車両20に接続されたことをCPLT通信等によって確認した場合には、車両20内の直流電力線に介設されたリレー21をオフ状態とする。そして、システムECU31は、操作表示装置の操作スイッチ等が操作されて操作表示装置からLAN経由で充電開始指令が送信された場合には、リレー21をオン状態とし、CPLT通信等にて車載の双方向インバータ22に指定電力での充電開始を指示する。
【0027】
システムECU31は、車載の蓄電池23の充電終了をCPLT信号等にて検知した場合には、充電終了情報をLAN経由にて操作表示装置に送信して待機する。操作表示装置は、例えば表示画面に充電終了情報を表示する。
【0028】
また、システムECU31は、操作表示装置の操作スイッチ等が操作されて操作表示装置からの充電停止指令を受信した場合には、CPLT通信等にて車載の双方向インバータ22の充電動作を停止させ待機する。そして、システムECU31は、充放電コネクタが車両20から取り外されたことをCPLT通信等にて確認後、リレー21をオフし、LAN経由で操作表示装置に充放電コネクタが外されたことを送信する。操作表示装置は、例えば表示画面にコネクタ取り外しの情報を表示する。
【0029】
次に、車載の蓄電池23から放電する放電モードについて説明する。システムECU31は、充放電コネクタが車両20のコネクタに接続された場合には、車載の蓄電池23の直流電力を車載の双方向インバータ22で交流電力に変換して放電する。
【0030】
車載の蓄電池23の電力を車両20から交流電力として放電する放電モード時には、システムECU31は、まず、充放電コネクタが車両20に接続されたことをCPLT通信等にて確認し、LAN経由で操作表示装置へ接続完了を送信する。操作表示装置は、例えば表示画面に接続完了を表示する。次に、システムECU31は、PLC通信を開始し、PLC通信等にて検出した車両20側の情報をLAN経由で操作表示装置へ送信する。操作表示装置は、例えば表示画面に車両情報を表示する。操作表示装置には、例えば、車両20の蓄電池23に、次回の車両走行のために必要な蓄電量を上回る余剰の蓄電量があるか否かが表示される。
【0031】
車載の蓄電池23に余剰電力が蓄電されている場合に、例えば操作表示装置が操作されて、操作表示装置からLAN経由で放電開始指令が送信されたときは、システムECU31は、リレー21をオン状態としてCPLT通信等またはPLC通信等によって双方向インバータ22に放電開始を指示し、車載の蓄電池23の放電を開始する。さらに、システムECU31と通信する充放電制御装置5は、AC/DCコンバータ12をオン状態とする。これにより、車両20からの交流出力が直流電力に変換され、充放電制御装置5は、変換された直流電力を、図2及び図3のフローチャートに記載の処理にしたがって、双方向PCS11、定置式の蓄電池13に出力する。
【0032】
次に、充放電制御装置5により実行される放電に係る制御について説明する。充放電制御装置5は、車両20の蓄電池23からの交流出力がAC/DCコンバータ12に入力されているときに、分電盤1から電力系統2への逆潮流の有無情報を監視し、蓄電池13の蓄電量、AC/DCコンバータ12の出力値、双方向PCS11への入力値等に基づいて、蓄電池13への充電量と分電盤1への供給量を制御する。
【0033】
充放電制御装置5は、蓄電池23から出力される交流電力がAC/DCコンバータ12で直流電力に変換されて双方向PCS11を介して分電盤1に放電されているときに、蓄電池23のSOC状態(蓄電状態)に余剰がなくなり双方向インバータ22からの放電停止指令を受信した場合に、放電を停止する。このとき、車載の蓄電池23の蓄電量情報はLAN経由で操作表示装置に送信される。操作表示装置は、例えば車載の蓄電池23に余剰電力がない旨を表示画面に表示する。
【0034】
充放電制御装置5は、車両20の蓄電池23から分電盤1、例えば住宅側に給電する場合には、蓄電池23の劣化(寿命低下)に繋がらないように、予め定めた最低出力値以上の電力を供給するように双方向インバータ22を制御する。換言すれば、充放電制御装置5は、最低出力値未満の電力供給しかできない場合には、蓄電池23からの放電を実行しない。また、充放電制御装置5は、一旦、車両20の蓄電池23から分電盤1への給電指令があった場合、蓄電池23の放電可能な電力量が放電されるまで、最低出力値以上の電力値で放電を継続する。このように、充放電制御装置5は、車両20の蓄電池23からの放電を継続的に行い、放電の停止及び実行を頻繁に行わない。
【0035】
充放電制御装置5は、住宅側での電力需要が増加すると、双方向PCS11を介して分電盤1への給電量を確保するために、できるだけ定置用の蓄電池13から放電させるとともに、車両20の蓄電池23からの放電量で補完するように制御する。このとき、充放電制御装置5は、定置用の蓄電池13のSOCが0%にならないように分電盤1への給電量を確保し、蓄電池13の放電量、蓄電池23の放電量を制御する。
【0036】
充放電制御装置5は、蓄電ユニット10の蓄電池13の蓄電量が予め定める所定量以下の場合に限り、車両20の蓄電池23の蓄電力を充放電スタンド30を介してAC/DCコンバータ12に放電するように制御する。これによれば、蓄電池23からの放電回数が抑制でき、リレー21、蓄電池23等の車両搭載装置の劣化を防止できる。
【0037】
充放電制御装置5は、車両20の蓄電池23に余剰電力が蓄電されている場合に、AC/DCコンバータ12から出力される出力電力値と、双方向PCS11に入力される入力電力値とを監視し、これらの電力値を用いて蓄電池23から給電される電力量を制御する。このとき、充放電制御装置5は、入力電力値が出力電力値よりも大きくなるように(例えば、予め定めた所定の電力値分大きくなるように)、AC/DCコンバータ12と双方向PCS11を制御する。そして、充放電制御装置5は、出力電力値よりも大きい入力電力値の余剰分を、定置式の蓄電池13に充電する電力量に割り当てるように制御する。
【0038】
次に、車両20の蓄電量利用制御の一例を図2及び図3に示すフローチャートにしたがって説明する。当該制御に係る処理は、主に充放電制御装置5によって実行される。充放電制御装置5は、車載の蓄電池23に余剰電力が蓄電されており、かつ放電開始指令を受信すると、車両20の蓄電量利用制御を開始する。まずステップ10で、直流電力センサ17による検出値が550W以上であるか否かを判定する。つまり、ステップ10では、AC/DCコンバータ12から出力される出力電力値が第1の所定値以上(550W以上)であるか否かを判定する。
【0039】
ステップ10でAC/DCコンバータ12の出力電力値が550W未満であると判定すると、ステップ15に進み、V2H運転起動モードの処理を実行する。このV2H運転起動モードでは、充放電制御装置5は、AC/DCコンバータ12に対し、ステップ10の閾値よりも高い600Wの出力値となるように出力許可指令を出してAC/DCコンバータ12を制御するとともに、出力を禁止するように双方向PCS11を制御する。そしてステップ40に進む。
【0040】
ステップ40では、電力系統2側に異常状態が検出されるか否かを判定する。ステップ40で異常状態の検出なしと判定すると、ステップ10に戻り、本制御を継続する。ステップ40で異常状態の検出ありと判定すると、ステップ50に進み、電力系統異常待機モードの処理を実行する。この電力系統異常待機モードでは、充放電制御装置5は、AC/DCコンバータ12に対し、ステップ15と同様に600Wの出力値となるように出力許可指令を出してAC/DCコンバータ12を制御するとともに、出力を禁止するように双方向PCS11を制御する。そしてステップ10に戻り、本制御を継続する。
【0041】
ステップ10でAC/DCコンバータ12の出力電力値が550W以上であると判定すると、ステップ20に進み、直流電力センサ18による検出値が350W以上であるか否かを判定する。つまり、ステップ20では、双方向PCS11に入力される入力電力値が第2の所定値以上(350W以上)であるか否かを判定する。
【0042】
ステップ20で双方向PCS11への入力電力値が350W未満であると判定すると、ステップ25に進み、PCS起動モードの処理を実行する。このPCS起動モードでは、充放電制御装置5は、AC/DCコンバータ12に対し、ステップ15と同様に600Wの出力値となるように出力許可指令を出してAC/DCコンバータ12を制御するとともに、DCPP放電出力許可及び400Wの出力値となるように出力許可指令を出して双方向PCS11を制御する。そして、前述のステップ40に進む。このようにPCS起動モードでは、車両20の蓄電池23から放電された電力は、充放電スタンド30を経由して、AC/DCコンバータ12によって600Wの直流電力として出力される。この600Wの直流電力のうち、400Wが双方向PCS11に入力されて分電盤1に交流電力として出力され、残りの200Wが蓄電ユニット10の蓄電池13に蓄電される。
【0043】
ステップ20で双方向PCS11への入力電力値が350W以上であると判定すると、ステップ30に進み、V2H連続運転モードの処理を実行する。このV2H連続運転モードでは、充放電制御装置5は、図3に示すサブルーチンを実行して、AC/DCコンバータ12に対する出力電力指令値と双方向PCS11への入力電力指令値を決定する。
【0044】
V2H連続運転モードでは、まずステップ300で、直流電力センサ18によって検出される双方向PCS11の入力電力瞬時値が、双方向PCS11に対する入力電力指令値から40Wを減じた値以上であるか否かを判定する。ステップ300でNOと判定すると、ステップ320に進む。
【0045】
ステップ300でYESと判定すると、ステップ310に進み、充放電制御装置5は、出力電力指令値に対し100W高めた出力電力値となるようにAC/DCコンバータ12を制御するとともに、入力電力指令値に対し100W高めた入力電力値となるように双方向PCS11を制御する。つまり、ステップ300での判定結果により、充放電制御装置5は、住宅側の負荷3の要求電力が大きいと判断して双方向PCS11から分電盤1への出力電力を増加させるように、AC/DCコンバータ12及び双方向PCS11を制御する。
【0046】
次にステップ320では、直流電力センサ18によって検出される双方向PCS11の入力電力瞬時値が、双方向PCS11に対する入力電力指令値から160Wを減じた値未満であるか否かを判定する。ステップ320でNOと判定すると、本サブルーチンを終了しステップ40に進む。
【0047】
ステップ320でYESと判定すると、ステップ330に進み、充放電制御装置5は、出力電力指令値に対し100W減じた出力電力値となるようにAC/DCコンバータ12を制御するとともに、入力電力指令値に対し100W減じた入力電力値となるように双方向PCS11を制御し、本サブルーチンを終了しステップ40に進む。つまり、ステップ320での判定結果により、充放電制御装置5は、住宅側の負荷3の要求電力が小さいと判断して双方向PCS11から分電盤1への出力電力を低下させるように、AC/DCコンバータ12及び双方向PCS11を制御する。
【0048】
第1実施形態の電力供給システム100がもたらす作用効果を以下に述べる。電力供給システム100によれば、充放電制御装置5は、車両20の蓄電池23から充放電スタンド30を介して放電が行われる場合に、直流電力センサ17及び直流電力センサ18によって検出される各直流電力値に応じて、AC/DCコンバータ12の出力電力値と双方向PCS11の入力電力値を決定する。充放電制御装置5は、当該決定した出力電力値と入力電力値を満たすようにAC/DCコンバータ12及び双方向PCS11の作動を制御する。
【0049】
これによれば、AC/DCコンバータ12、蓄電ユニット10の蓄電池13及び双方向PCS11を連絡する直流電力線15,16を有し、直流電力線15,16を流れる直流電力のうち、AC/DCコンバータ12から出力される直流電力と双方向PCS11に入力される直流電力とを検出し、これらの検出値に応じて決定した値にしたがって、蓄電池13への蓄電量、電力系統2及び負荷3等への放電量を制御する。この制御によれば、双方向PCS11の入力電力値を適正に決定することにより、電力系統2及び負荷3への過度な放電量を防止し、AC/DCコンバータ12の出力電力値を適正に決定することにより車両20の蓄電池23からの頻繁な放電を防止することができる。したがって、電力系統2への過度な逆潮流の抑制と放電に関わる車両搭載装置であるリレー21、蓄電池23等の劣化防止とを図ることができる。
【0050】
また、充放電制御装置5は、車両20の蓄電池23から充放電スタンド30を介して放電が行われる場合に、予め定めた最低出力値以上の電力が出力できるときに蓄電池23からの放電を許可する。この制御によれば、蓄電池23の蓄電量が少なく、最低出力値以上の電力が出力できない場合には、放電は行われない。これにより、蓄電池23からの放電回数が抑制でき、リレー21、蓄電池23等の放電に関わる車両搭載装置の劣化を防止でき、これらの機器の寿命低下の抑制が図れる。
【0051】
充放電制御装置5は、車両20の蓄電池23から充放電スタンド30を介して放電を一旦実行すると、蓄電池23の放電可能な電力量が放電されるまで、最低出力値以上の電力量で放電を継続する。この制御によれば、当該条件が成立するまで放電を停止することはない。したがって、放電の停止、再開が繰り返し行われず、リレー21、蓄電池23等の放電に関わる車両搭載装置の劣化を防止でき、これらの機器の寿命低下の抑制が図れる。
【0052】
充放電制御装置5は、車両20の蓄電池23から充放電スタンド30を介した放電を行う場合に、AC/DCコンバータ12の出力電力値から双方向PCS11の入力電力値を差し引いた電力値を常に定置式の蓄電池13に蓄電するように制御する。この制御によれば、AC/DCコンバータ12の出力電力値を双方向PCS11の入力電力値よりも常に少なくして定置式の蓄電池13に蓄電することにより、住宅側の負荷3等が変動しても電力系統2への逆潮流や定置式の蓄電池13からの過放電を防止できるとともに、車両20の蓄電池23からの放電を急に停止する頻度を抑制することができる。したがって、蓄電池13、蓄電池23、リレー21等の劣化を防止でき、これらの機器の寿命低下の抑制が図れる。
【0053】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0054】
上記実施形態では、各構成要素間で情報を伝達する通信において、LAN通信、PLC通信、CPLT通信等を用いているが、この形態に限定されるものではなく、上記実施形態の記載とは異なる通信方法を採用してもよい。また、有線通信に限定されず、無線通信を採用することも可能である。
【0055】
また、上記実施形態では、蓄電ユニット10と充放電スタンド30とは別体の構成要素であるが、両者が一体であってもよい。蓄電ユニット10と充放電スタンド30とが別体の場合には、それぞれのユニットの設置位置、設置姿勢の自由度が向上する。一方、蓄電ユニット10と充放電スタンド30とが一体の場合には、構成の簡素化、小型化が可能である。
【0056】
また、上記実施形態では、負荷3が設置される建物は住宅であったが、これに限定されない。例えば、建物は、商業施設、公共施設、工場、倉庫等であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
2…電力系統
3…負荷(電気機器)
11…双方向パワーコンディショナ(双方向PCS、双方向型電力変換装置)
12…AC/DCコンバータ(電力変換装置)
13…蓄電池(定置式の蓄電装置)
15,16…直流電力線
17…直流電力センサ(出力検出装置)
18…直流電力センサ(入力検出装置)
23…蓄電池(蓄電装置)
30…充放電スタンド(充放電装置)
図1
図2
図3