特許第5811943号(P5811943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5811943
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】車載電気機器用ケース
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20151022BHJP
   B60L 15/00 20060101ALI20151022BHJP
【FI】
   B60R16/02 610A
   B60L15/00 H
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-106634(P2012-106634)
(22)【出願日】2012年5月8日
(65)【公開番号】特開2013-233839(P2013-233839A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2014年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西前 誠
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−167816(JP,A)
【文献】 特開2009−286326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60L 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載電気機器(10)を収容するためのケースであって、
複数の壁部(2)を備え、
該複数の壁部(2)の内側が、上記車載電気機器(10)を収容するための収容空間となっており、
上記複数の壁部(2)のうち少なくとも一部の壁部(2)は、車両に固定するための固定部(3)を有する車両固定壁部(2a)であり、
上記固定部(3)は、上記車両固定壁部(2a)から該車両固定壁部(2a)の板厚方向におけるケース外側に突出しており、
上記車両固定壁部(2a)は、上記固定部(3)の周囲を補強するためのリブ(4)を有し、
該リブ(4)は、上記固定部(3)に連結しており、
上記固定部(3)には、該固定部(3)の端面に開口した雌螺子部(11)が形成されており、該雌螺子部(11)の軸線は上記固定部(3)の突出方向に平行であり、上記雌螺子部(11)に雄螺子(12)が螺合し、該雄螺子(12)によって、上記車載電気機器用ケース(1)を上記車両に固定するよう構成されていることを特徴とする車載電気機器用ケース(1)。
【請求項2】
車載電気機器(10)を収容するためのケースであって、
複数の壁部(2)を備え、
該複数の壁部(2)の内側が、上記車載電気機器(10)を収容するための収容空間となっており、
上記複数の壁部(2)のうち少なくとも一部の壁部(2)は、車両に固定するための固定部(3)を有する車両固定壁部(2a)であり、
上記固定部(3)は、上記車両固定壁部(2a)から該車両固定壁部(2a)の板厚方向におけるケース外側に突出しており、
上記車両固定壁部(2a)は、上記固定部(3)の周囲を補強するためのリブ(4)を有し、
該リブ(4)は、上記固定部(3)に連結しており、
上記複数の壁部(2)には、上記車両固定壁部(2a)と、上記固定部(3)が形成されていない非車両固定壁部(2b)とがあり、上記リブ(4)における上記車両固定壁部(2a)の厚さは、上記非車両固定壁部(2b)の、最も薄い部分の厚さよりも厚いことを特徴とする車載電気機器用ケース(1)。
【請求項3】
車載電気機器(10)を収容するためのケースであって、
複数の壁部(2)を備え、
該複数の壁部(2)の内側が、上記車載電気機器(10)を収容するための収容空間となっており、
上記複数の壁部(2)のうち少なくとも一部の壁部(2)は、車両に固定するための固定部(3)を有する車両固定壁部(2a)であり、
上記固定部(3)は、上記車両固定壁部(2a)から該車両固定壁部(2a)の板厚方向におけるケース外側に突出しており、
上記車両固定壁部(2a)は、上記固定部(3)の周囲を補強するためのリブ(4)を有し、
該リブ(4)は、上記固定部(3)に連結しており、
上記車両固定壁部(2a)は複数の上記固定部(3)を備え、該複数の固定部(3)のうち少なくとも2個の固定部(3)は、上記リブ(4)によって互いに連結された連結固定部(30)となっており、
上記連結固定部(30)を連結する上記リブ(4)は、複数の環状リブ(41)を隣接配置して互いに接続した複合環状リブ(4a)であることを特徴とする車載電気機器用ケース(1)。
【請求項4】
請求項3に記載の車載電気機器用ケース(1)において、上記固定部(3)には、該固定部(3)の端面に開口した雌螺子部(11)が形成されており、該雌螺子部(11)の軸線は上記固定部(3)の突出方向に平行であり、上記雌螺子部(11)に雄螺子(12)が螺合し、該雄螺子(12)によって、上記車載電気機器用ケース(1)を上記車両に固定するよう構成されていることを特徴とする車載電気機器用ケース(1)。
【請求項5】
請求項1、請求項3、請求項4のいずれか一項に記載の車載電気機器用ケース(1)において、上記複数の壁部(2)には、上記車両固定壁部(2a)と、上記固定部(3)が形成されていない非車両固定壁部(2b)とがあり、上記リブ(4)における上記車両固定壁部(2a)の厚さは、上記非車両固定壁部(2b)の、最も薄い部分の厚さよりも厚いことを特徴とする車載電気機器用ケース(1)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の車載電気機器用ケース(1)において、上記車両固定壁部(2a)は複数の上記固定部(3)を備え、上記車載電気機器用ケース(1)の開口部(100)には、蓋(13)を取り付けるためのフランジ部(40)が形成され、上記複数の固定部(3)のうち少なくとも1個の固定部(3)は、上記フランジ部(40)に接続したフランジ接続固定部(31)となっており、上記フランジ部(40)が、上記フランジ接続固定部(31)の周囲を補強するための上記リブ(4)を兼ねていることを特徴とする車載電気機器用ケース(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載電気機器を収容し、車体に固定するための車載電気機器用ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インバータ等の車載電気機器を収容し、車両に固定するための車載電気機器用ケースが知られている。この車載電気機器用ケースを車両に固定する構造として、例えば、ケース壁部に突出形成した固定部を利用するものが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
固定部には、例えば雌螺子部を形成してある。この固定部に、車体に取り付けた被固定部(板状部材)を重ね合わせる。被固定部には貫通孔を設けてある。この貫通孔と雌螺子部とを位置合わせし、貫通孔にボルトを挿入して、雌螺子部に螺合する。このようにして、車載電気機器用ケースを車体にしっかりと固定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−154757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車載電気機器用ケースは、交通事故等が起きた場合に、次のようなメカニズムによる、大きな荷重が作用することで、破損の可能性が考えられる。すなわち、交通事故等により走行中の車両が他の物体に衝突した場合、内部に車載電気機器を収容した車載電気機器用ケースは慣性によって移動し続けようとするが、固定部が車体に固定されているため、固定部の周囲(根元付近)に大きな応力が生じやすい。この大きな応力によって、固定部の周囲が破損することが考えられる。また、交通事故等が起きた場合、車両に搭載した他の部品が車載電気機器用ケースに衝突し、これによって生じた衝撃が原因となって、固定部の周囲に大きな応力が生じると、破損することが考えられる。
車載電機機器用ケースが破損すると、収容した車載電機機器の高圧部が露出するおそれがある。そのため、交通事故等により大きな衝撃を受けても破損しにくい車載電気機器用ケースが望まれている。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、大きな衝撃を受けても破損しにくい車載電気機器用ケースを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、車載電気機器を収容するためのケースであって、
複数の壁部を備え、
該複数の壁部の内側が、上記車載電気機器を収容するための収容空間となっており、
上記複数の壁部のうち少なくとも一部の壁部は、車両に固定するための固定部を有する車両固定壁部であり、
上記固定部は、上記車両固定壁部から該車両固定壁部の板厚方向におけるケース外側に突出しており、
上記車両固定壁部は、上記固定部の周囲を補強するためのリブを有し、
該リブは、上記固定部に連結しており、
上記固定部には、該固定部の端面に開口した雌螺子部が形成されており、該雌螺子部の軸線は上記固定部の突出方向に平行であり、上記雌螺子部に雄螺子が螺合し、該雄螺子によって、上記車載電気機器用ケースを上記車両に固定するよう構成されていることを特徴とする車載電気機器用ケースにある(請求項1)。
本発明の第2の態様は、車載電気機器を収容するためのケースであって、
複数の壁部を備え、
該複数の壁部の内側が、上記車載電気機器を収容するための収容空間となっており、
上記複数の壁部のうち少なくとも一部の壁部は、車両に固定するための固定部を有する車両固定壁部であり、
上記固定部は、上記車両固定壁部から該車両固定壁部の板厚方向におけるケース外側に突出しており、
上記車両固定壁部は、上記固定部の周囲を補強するためのリブを有し、
該リブは、上記固定部に連結しており、
上記複数の壁部には、上記車両固定壁部と、上記固定部が形成されていない非車両固定壁部とがあり、上記リブにおける上記車両固定壁部の厚さは、上記非車両固定壁部の、最も薄い部分の厚さよりも厚いことを特徴とする車載電気機器用ケースにある(請求項2)。
本発明の第3の態様は、車載電気機器を収容するためのケースであって、
複数の壁部を備え、
該複数の壁部の内側が、上記車載電気機器を収容するための収容空間となっており、
上記複数の壁部のうち少なくとも一部の壁部は、車両に固定するための固定部を有する車両固定壁部であり、
上記固定部は、上記車両固定壁部から該車両固定壁部の板厚方向におけるケース外側に突出しており、
上記車両固定壁部は、上記固定部の周囲を補強するためのリブを有し、
該リブは、上記固定部に連結しており、
上記車両固定壁部は複数の上記固定部を備え、該複数の固定部のうち少なくとも2個の固定部は、上記リブによって互いに連結された連結固定部となっており、
上記連結固定部を連結する上記リブは、複数の環状リブを隣接配置して互いに接続した複合環状リブであることを特徴とする車載電気機器用ケースにある(請求項3)。
【発明の効果】
【0008】
上記車載電気機器用ケースにおいては、固定部を設けた壁部(車両固定壁部)に、リブを形成してある。このリブは、固定部に連結している。
それゆえ、車両固定壁部における固定部の周囲(根元付近)を、リブによって充分に補強することができる。そのため、交通事故等によって大きな衝撃を受け、車両固定壁部における固定部の周囲に大きな応力が発生しても、この部位が破損することを防止でき、車載電機機器用ケースの破損を防止することができる。
【0009】
以上のごとく、本例によれば、大きな衝撃を受けても破損しにくい車載電気機器用ケースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1における、車載電気機器用ケースの側面図。
図2図1のII矢視図。
図3図1のIII−III断面図。
図4図1のIV−IV断面図。
図5図1のV−V断面図。
図6】実施例1における、車両に取り付けた状態における、車載電気機器用ケースの正面図。
図7】実施例1における、車載電気機器用ケースの製造方法説明図。
図8】実施例1における、凹部を四角形状にした車載電気機器用ケースの側面図。
図9】実施例1における、凹部を三角形状にした車載電気機器用ケースの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記車載電気機器用ケースに収容する車載電気機器は、電気自動車やハイブリッド車に用いるための電力変換装置とすることができる。
【0012】
また、上記固定部には、該固定部の端面に開口した雌螺子部が形成されており、該雌螺子部の軸線は上記固定部の突出方向に平行であり、上記雌螺子部に雄螺子が螺合し、該雄螺子によって、上記車載電気機器用ケースを上記車両に固定するよう構成されている(請求項1、請求項4)。
そのため、固定部の上記雌螺子部に、雄螺子を上記突出方向から螺合するため、雄螺子によって固定部が補強され、上記突出方向に直交する方向から衝撃が加わっても固定部が折れにくくなる。したがって、衝撃を受けた時に固定部が折れず、固定部の周囲に応力が加わりやすくなる。そのため、リブを形成して、固定部の周辺を補強した場合の効果が大きい。
【0013】
また、上記複数の壁部には、上記車両固定壁部と、上記固定部が形成されていない非車両固定壁部とがあり、上記リブにおける上記車両固定壁部の厚さは、上記非車両固定壁部の、最も薄い部分の厚さよりも厚い(請求項2、請求項5)。
そのため、リブにおける車両固定壁部の厚さを厚くすることができるため、固定部の周囲をしっかりと補強することができる。
【0014】
また、上記車両固定壁部は複数の上記固定部を備え、該複数の固定部のうち少なくとも2個の固定部は、上記リブによって互いに連結された連結固定部となっている(請求項)。
そのため、複数の固定部(連結固定部)がリブによって互いに連結されているため、車両固定壁部における、複数の連結固定部の間の領域を、リブによって補強することができる。そのため、複数の連結固定部を互いに離れた位置に設けることにより、車両固定壁部全体を補強することが可能になり、車両固定壁部の破損をより効果的に防止できる。
【0015】
また、上記連結固定部を連結する上記リブは、複数の環状リブを隣接配置して互いに接続した複合環状リブである(請求項)。
そのため、車載電気機器用ケースの破損を効果的に防止できると共に、軽量化することが可能になる。すなわち、上記複合環状リブは面積を広くしやすいため、車両固定壁部の広い範囲を補強できる。そのため、衝撃を受けたときに車載電機機器用ケースがより破損しにくくなる。また、複合環状リブは、中央が凹んだ環状リブを複数個、接続して形成したもので、複数の凹みを有する。そのため、車載電気機器用ケースを軽量化することができる。
【0016】
また、上記車両固定壁部は複数の上記固定部を備え、上記車載電気機器用ケースの開口部には、蓋を取り付けるためのフランジ部が形成され、上記複数の固定部のうち少なくとも1個の固定部は、上記フランジ部に接続したフランジ接続固定部となっており、上記フランジ部が、上記フランジ接続固定部の周囲を補強するための上記リブを兼ねていることが好ましい(請求項6)。
この場合には、フランジ部がリブを兼ねているため、車両固定壁部の補強専用のリブを設ける必要がなくなる。そのため、車載電気機器用ケースをより軽量化しやすくなる。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
上記車載電気機器用ケースに係る実施例について、図1図7を用いて説明する。
図1図2に示すごとく、本例の車載電気機器用ケース1は、複数の壁部2を有する。この複数の壁部2の内側が、車載電気機器を収容するための収容空間となっている。
複数の壁部2のうち1つの壁部2は、車両に固定するための固定部3を有する車両固定壁部2aである。
固定部3は、車両固定壁部2aから、該車両固定壁部2aの板厚方向(Z方向)におけるケース外側に突出している。
車両固定壁部2aは、固定部3の周囲を補強するためのリブ4を有する。
リブ4は、固定部3に連結している。
【0018】
本例の車載電気機器用ケース1に収容する車載電気機器は、電気自動車やハイブリッド車に用いるための電力変換装置である。この電力変換装置は、複数の半導体モジュール(図示しない)と冷却管とを積層して構成したものである。図1図2に示すごとく、上記冷却管に冷媒を導入するための導入パイプ14aと、冷却管から冷媒を導出するための導出パイプ14bとが、車載電気機器用ケース1から突出している。
【0019】
また、本例の車載電気機器用ケース1は5つの壁部2を備える。この5つの壁部2のうち、1つの壁部2は上記車両固定壁部2aであり、他の4つの壁部2は、固定部3を形成していない非車両固定壁部2bである。非車両固定壁部2bには、上記導入パイプ14aと導出パイプ14bとが突出するパイプ突出壁部21と、バッテリー18(図6参照)を固定するためのバッテリー固定壁部22と、コネクタ16,17(図6参照)を接続するためのコネクタ接続壁部23と、他の電子機器に隣接する他機器隣接壁部24とがある。
【0020】
車載電気機器用ケース1の開口100には、蓋13を取り付けてある。車載電気機器用ケース1は、その開口100において、ケース外側へ突出したフランジ部40を備える。このフランジ部40に、蓋13の蓋側フランジ部130を重ね合わせ、ボルト19を使って、蓋13をフランジ部40に固定するようになっている。
【0021】
また、図1に示すごとく、車両固定壁部2aには、4個の固定部3(3a〜3d)を設けてある。これら4個の固定部3のうち、第1固定部3aと第2固定部3bは、導入パイプ14aの突出方向(Y方向)における、車両固定壁部2bの両端にそれぞれ設けられている。第2固定部3bは、フランジ部40の厚さ方向(X方向)において、フランジ部40とコネクタ接続壁部23との間に位置している。また、第1固定部3aは、X方向において、フランジ部40に近い位置に設けられている。
【0022】
第3固定部3cは、X方向におけるコネクタ接続壁部23付近に設けられている。第4固定部3dは、フランジ部40に接続している。第4固定部3dは、Y方向において、車両固定壁部2aの中央に位置している。
【0023】
このように、4個の固定部3を互いに離れた位置に設けることにより、車両固定壁部2bをバランスよく車体に固定できるよう構成してある。
【0024】
4個の固定部3のうち、3個の固定部3(第1固定部3a、第2固定部3b、第3固定部3c)は、リブ4によって互いに連結された連結固定部30となっている。この連結固定部30を互いに連結するリブ4は、環状リブ41を隣接配置して互いに接続した複合環状リブ4aである。環状リブ41の中央には凹部410を形成してある。凹部410は円形に形成されている。
【0025】
また、4個の固定部3のうち1個の固定部3(第4固定部3d)は、フランジ部40に接続したフランジ接続固定部31となっている。そしてフランジ部40が、フランジ接続固定部31を補強するためのリブ4を兼ねている。
【0026】
図1に示すごとく、Z方向から見た場合に、第1固定部3aと第2固定部3bは、X方向に細長い形状を呈しており、第3固定部3cと第4固定部3dは円形を呈している。第1固定部3aと第2固定部3bには、後述する被固定部5(図6参照)に位置合わせをするための位置合わせ突部15が形成されている。
【0027】
また、図2に示すごとく、固定部3には雌螺子部11を形成してある。雌螺子部11の軸線Aは、Z方向に平行である。4個の固定部3の端面300は面一である。
【0028】
図6に示すごとく、本例では車載電気機器用ケース1を、板状の被固定部5に固定するようになっている。被固定部5は車体に取り付けられており、複数の貫通孔50を有する。貫通孔50は、4個の雌螺子部11にそれぞれ対応する位置に形成されている。また、被固定部5には、位置合わせ突部15が係合する凹状部150が形成されている。
【0029】
車載電気機器用ケース1を固定する際には、固定部3の端面300に被固定部5を重ね合わせ、突部15を凹状部150に係合させる。このようにすると、固定部3の雌螺子部11と、被固定部5の貫通孔50とが位置合わせされる。この状態で貫通孔50に雄螺子部12を挿入し、雌螺子部11に螺合する。これにより、車載電気機器用ケース1を被固定部5に固定する。
【0030】
また、車載電気機器用ケース1は、被固定部5に対して重力方向上側に配置される。車両は、Z方向(重力方向)に直交する方向に進行する。そのため、交通事故等が発生した場合、衝撃は、車載電気機器用ケース1に対して、Z方向に直交する方向から加わる。また、上述したように、固定部3の中心には、雄螺子12がZ方向から挿入されている。そのため、固定部3は雄螺子12によって補強され、Z方向に直交する方向から衝撃が加わっても、固定部3は容易に折れない。
【0031】
また、図6に示すごとく、コネクタ接続壁部23には、高圧コネクタ16と低圧コネクタ17との2つのコネクタが取り付けられる。バッテリー固定壁部22には、バッテリー固定部220が形成されている。このバッテリー固定部220に、バッテリー18を固定してある。
【0032】
一方、図3図4に示すごとく、固定部3における車両固定壁部2aの厚さx1(Z方向における、内壁面310から端面300までの距離)は、リブ4における車両固定壁部2aの厚さx2よりも厚い。また、上記厚さx2は、非車両固定壁部2bの、最も薄い部分の厚さx3よりも厚い。さらに、車両固定壁部2aの、最も薄い部分の厚さx4は、非車両固定壁部2bの、最も薄い部分の厚さx4と略同一である。
【0033】
また、最も薄い部分の厚さx3は、上記パイプ突出壁部21と、バッテリー固定壁部22と、コネクタ接続壁部23と、他機器隣接壁部24とにおいて、それぞれ略同一である。
【0034】
また、図3図4に示すごとく、固定部3の根元には、アール状部320を形成してある。このアール状部320によって、固定部3の根元に加わる応力を緩和し、固定部3を破損しにくくしている。同様に、リブ4の根元にもアール状部330を形成してある。
【0035】
一方、図1に示すごとく、車両固定壁部2aには、リブ4を形成してある領域と、形成していない領域(リブ非形成領域45)とがある。本例では、3つのリブ非形成領域45(45a〜45c)を設けてある。第1リブ非形成領域45aは、車両固定壁部2aの、Y方向におけるパイプ突出壁部21側であって、かつX方向におけるコネクタ接続壁部23側の部位に形成されている。また、第2リブ非形成領域45bは、車両固定壁部2aの、Y方向における他機器隣接壁部24側であって、かつX方向におけるコネクタ接続壁部23側の部位に形成されている。第3リブ非形成領域45cは、車両固定壁部2aの、Y方向における他機器隣接壁部24側であって、かつX方向におけるフランジ部40側の部位に形成されている。
【0036】
第1リブ非形成領域45aと第2リブ非形成領域45bとの間には、傾斜リブ49が形成されている。傾斜リブ49は、図2に示すごとく、X方向においてコネクタ接続壁部23側に向うほど、Z方向厚さが次第に薄くなるように、傾斜状に形成されている。
【0037】
また、図1に示すごとく、フランジ接続固定部31の、X方向におけるコネクタ接続壁部23側の約半分の部分は、第3リブ非形成領域45cに面している。フランジ接続固定部31は、複合環状リブ4aには接続していない。また、フランジ接続固定部31の、蓋13側の約半分の部分は、フランジ部40に接続している。
【0038】
フランジ部40は複合環状リブ4aに接続していない。フランジ部40と複合環状リブ4aとの間には隙間部48が形成されている。隙間部48のZ方向厚さは、リブ非形成領域45のZ方向厚さと略同一である。
【0039】
また、上述したように、連結固定部30(第1固定部3a、第2固定部3b、第3固定部3c)を互いに連結するリブ4は、複数の環状リブ41を互いに接続した複合環状リブ4aである。環状リブ41の中央に形成されている凹部410は円形であり、この凹部410の直径は、第3固定部3c及び第4固定部4dの直径と略等しい。
【0040】
図1に示すごとく、第1固定部3aには、複合環状リブ4aを構成する3つのリブ411,412,413が接続している。また、第2固定部3bは、その周囲を殆ど全て、複合環状リブ4aに囲まれている。第3固定部3bには、複合環状リブ4aを構成する3つのリブ414,415,416が接続している。
【0041】
また、車両固定壁部2aには、2個の支持用凹部46が形成されている。バッテリー固定壁部22(図2参照)にも同様に、2個の支持用凹部46が形成されている。車載電気機器用ケース1を運ぶ場合には、これら4個の支持用凹部46に、ピン状の治具(図示しない)を差し込む。この治具を使って、車載電気機器用ケース1を持ち運ぶようになっている。また、上記治具を支持用凹部46に挿入しやすくするため、支持用凹部46の周囲にはリブ4を形成していない。
【0042】
本例の車載電気機器用ケース1の製造方法について説明する。本例では、アルミニウムの鋳造により、車載電気機器用ケース1を製造する。図7に示すごとく、複数の鋳型6(6a,6b)を組み合わせ、これらの鋳型6a,6bの隙間60に、加熱して溶かしたアルミニウムを流し込む。そして、アルミニウムを冷却して固化させた後、鋳型6を取り外し、車載電気機器用ケース1を得る。鋳型6には、複合環状リブ4aの凹部410(図1参照)に対応する位置に、金属製の突条部61を取り付けてある。この突条部61によって、上記凹部410が形成される。鋳造工程を繰り返すと突条部61が磨耗するため、突条部61の磨耗が進んだときに、突条部61を取り替えるようになっている。
【0043】
本例の作用効果について説明する。本例では図1に示すごとく、車両固定壁部2aにリブ4を形成してある。このリブ4は、固定部3に連結している。
それゆえ、車両固定壁部2aにおける固定部3の周囲(根元付近)を、リブ4によって充分に補強することができる。そのため、交通事故等によって車載電気機器用ケース1が大きな衝撃を受け、車両固定壁部2aにおける固定部3の周囲に大きな応力が発生しても、この部位が破損することを防止でき、車載電機機器用ケース1の破損を防止することができる。
【0044】
また、図2図6に示すごとく、固定部3には、端面300に開口した雌螺子部11が形成されている。雌螺子部11の軸線Aは固定部3の突出方向(Z方向)に平行である。そして、雌螺子部11に雄螺子12が螺合し、この雄螺子12によって、車載電気機器用ケース1を車両に固定するよう構成されている。
このようにすると、固定部3に雄螺子12をZ方向から螺合するため、雄螺子12によって固定部3が補強され、Z方向に直交する方向から衝撃が加わっても固定部3が折れにくくなる。したがって、衝撃を受けた時に固定部3が折れず、固定部3の周囲に応力が加わりやすくなる。そのため、リブ4を形成して、固定部3の周辺を補強した場合の効果が大きい。
【0045】
また、図4に示すごとく、リブ4における車両固定壁部2aの厚さx2は、非車両固定壁部2bの、最も薄い部分の厚さx3よりも厚い。
このようにすると、リブ4における車両固定壁部2aの厚さx2を厚くすることができるため、固定部3の周辺をしっかりと補強することができる。
【0046】
また、図1に示すごとく、4個の固定部3のうち3個の固定部3(3a〜3c)は、リブ4によって互いに連結された連結固定部30となっている。
このようにすると、複数の連結固定部30がリブ4によって互いに連結されているため、車両固定壁部2aにおける、複数の連結固定部30の間の領域を、リブ4によって補強することができる。そのため、複数の連結固定部30を互いに離れた位置に設けることにより、車両固定壁部2a全体を補強することが可能になり、車両固定壁部2aの破損をより効果的に防止できる。
【0047】
また、図1に示すごとく、連結固定部30を連結するリブ4は、複数の環状リブ41を隣接配置して互いに接続した複合環状リブ4aである。
このようにすると、車載電気機器用ケース1の破損を効果的に防止できると共に、軽量化することができる。すなわち、複合環状リブ41は面積を広くしやすいため、車両固定壁部2aの広い範囲を補強できる。そのため、車載電機機器用ケース1がより破損しにくくなる。また、複合環状リブ4aは、中央が凹んだ環状リブ41を複数個、接続して形成したもので、複数の凹部410を有する。そのため、車載電気機器用ケース1を軽量化することができる。
【0048】
また、図1に示すごとく、4個の固定部3のうち1個の固定部3(第4固定部3d)は、フランジ部40に接続したフランジ接続固定部31となっている。そしてフランジ部40が、フランジ接続固定部31の周囲を補強するためのリブ4を兼ねている。
このようにすると、フランジ部40がリブ4を兼ねているため、車両固定壁部2aの補強専用のリブ4を設ける必要がなくなる。そのため、車載電気機器用ケース1をより軽量化しやすくなる。また、複合環状リブ4aの面積が増えすぎることを防止できるため、車載電気機器用ケース1を製造する際に、突条部61(図7参照)に加わる負担を減少させることができる。
【0049】
また、図1に示すごとく、本例では、リブ4を車両固定壁部2aの全面に形成するのではなく、衝撃が加わった時に応力があまり生じない部分は、リブ4を形成しないリブ非形成領域45としてある。このようにすると、リブ4の面積が増えすぎることを防止できる。そのため、車載電気機器用ケース1を製造する際に、鋳型6(図7参照)や突条部61の負担を減らすことが可能になる。
【0050】
また、図1に示すごとく、本例では、凹部410は円形になっている。すなわち、突条部61(図7参照)は円柱状に形成されている。鋳造工程を繰り返すと突条部61が磨耗するが、突条部61を円柱状にすると、磨耗が比較的少なくてすむ。
【0051】
以上のごとく、本例によれば、大きな衝撃を受けても破損しにくい車載電気機器用ケースを提供することができる。
【0052】
なお、本例ではリブ4を、車両固定壁部2aに、Z方向におけるケース外側に突出するよう形成したが、ケース内側に突出するよう形成してもよい。また、本例においては、内壁面310(図3参照)も固定部3に含まれる。すなわち、リブ4をケース内側に突出形成し、内壁面310において、リブ4を固定部3に連結してもよい。
【0053】
また、本例では図1に示すごとく、凹部410を円形に形成したが、四角形状(図8参照)や、三角形状(図9参照)など、任意の形状にすることができる。
【0054】
また、本例では図1に示すごとく、全ての固定部3(3a〜3d)がリブ4に接続しているが、リブ4に接続していない固定部3を設けてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 車載電気機器用ケース
10 車載電気機器
2 壁部
2a 車両固定壁部
3 固定部
4 リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9