【実施例】
【0017】
(実施例1)
上記車載電気機器用ケースに係る実施例について、
図1〜
図7を用いて説明する。
図1、
図2に示すごとく、本例の車載電気機器用ケース1は、複数の壁部2を有する。この複数の壁部2の内側が、車載電気機器を収容するための収容空間となっている。
複数の壁部2のうち1つの壁部2は、車両に固定するための固定部3を有する車両固定壁部2aである。
固定部3は、車両固定壁部2aから、該車両固定壁部2aの板厚方向(Z方向)におけるケース外側に突出している。
車両固定壁部2aは、固定部3の周囲を補強するためのリブ4を有する。
リブ4は、固定部3に連結している。
【0018】
本例の車載電気機器用ケース1に収容する車載電気機器は、電気自動車やハイブリッド車に用いるための電力変換装置である。この電力変換装置は、複数の半導体モジュール(図示しない)と冷却管とを積層して構成したものである。
図1、
図2に示すごとく、上記冷却管に冷媒を導入するための導入パイプ14aと、冷却管から冷媒を導出するための導出パイプ14bとが、車載電気機器用ケース1から突出している。
【0019】
また、本例の車載電気機器用ケース1は5つの壁部2を備える。この5つの壁部2のうち、1つの壁部2は上記車両固定壁部2aであり、他の4つの壁部2は、固定部3を形成していない非車両固定壁部2bである。非車両固定壁部2bには、上記導入パイプ14aと導出パイプ14bとが突出するパイプ突出壁部21と、バッテリー18(
図6参照)を固定するためのバッテリー固定壁部22と、コネクタ16,17(
図6参照)を接続するためのコネクタ接続壁部23と、他の電子機器に隣接する他機器隣接壁部24とがある。
【0020】
車載電気機器用ケース1の開口100には、蓋13を取り付けてある。車載電気機器用ケース1は、その開口100において、ケース外側へ突出したフランジ部40を備える。このフランジ部40に、蓋13の蓋側フランジ部130を重ね合わせ、ボルト19を使って、蓋13をフランジ部40に固定するようになっている。
【0021】
また、
図1に示すごとく、車両固定壁部2aには、4個の固定部3(3a〜3d)を設けてある。これら4個の固定部3のうち、第1固定部3aと第2固定部3bは、導入パイプ14aの突出方向(Y方向)における、車両固定壁部2bの両端にそれぞれ設けられている。第2固定部3bは、フランジ部40の厚さ方向(X方向)において、フランジ部40とコネクタ接続壁部23との間に位置している。また、第1固定部3aは、X方向において、フランジ部40に近い位置に設けられている。
【0022】
第3固定部3cは、X方向におけるコネクタ接続壁部23付近に設けられている。第4固定部3dは、フランジ部40に接続している。第4固定部3dは、Y方向において、車両固定壁部2aの中央に位置している。
【0023】
このように、4個の固定部3を互いに離れた位置に設けることにより、車両固定壁部2bをバランスよく車体に固定できるよう構成してある。
【0024】
4個の固定部3のうち、3個の固定部3(第1固定部3a、第2固定部3b、第3固定部3c)は、リブ4によって互いに連結された連結固定部30となっている。この連結固定部30を互いに連結するリブ4は、環状リブ41を隣接配置して互いに接続した複合環状リブ4aである。環状リブ41の中央には凹部410を形成してある。凹部410は円形に形成されている。
【0025】
また、4個の固定部3のうち1個の固定部3(第4固定部3d)は、フランジ部40に接続したフランジ接続固定部31となっている。そしてフランジ部40が、フランジ接続固定部31を補強するためのリブ4を兼ねている。
【0026】
図1に示すごとく、Z方向から見た場合に、第1固定部3aと第2固定部3bは、X方向に細長い形状を呈しており、第3固定部3cと第4固定部3dは円形を呈している。第1固定部3aと第2固定部3bには、後述する被固定部5(
図6参照)に位置合わせをするための位置合わせ突部15が形成されている。
【0027】
また、
図2に示すごとく、固定部3には雌螺子部11を形成してある。雌螺子部11の軸線Aは、Z方向に平行である。4個の固定部3の端面300は面一である。
【0028】
図6に示すごとく、本例では車載電気機器用ケース1を、板状の被固定部5に固定するようになっている。被固定部5は車体に取り付けられており、複数の貫通孔50を有する。貫通孔50は、4個の雌螺子部11にそれぞれ対応する位置に形成されている。また、被固定部5には、位置合わせ突部15が係合する凹状部150が形成されている。
【0029】
車載電気機器用ケース1を固定する際には、固定部3の端面300に被固定部5を重ね合わせ、突部15を凹状部150に係合させる。このようにすると、固定部3の雌螺子部11と、被固定部5の貫通孔50とが位置合わせされる。この状態で貫通孔50に雄螺子部12を挿入し、雌螺子部11に螺合する。これにより、車載電気機器用ケース1を被固定部5に固定する。
【0030】
また、車載電気機器用ケース1は、被固定部5に対して重力方向上側に配置される。車両は、Z方向(重力方向)に直交する方向に進行する。そのため、交通事故等が発生した場合、衝撃は、車載電気機器用ケース1に対して、Z方向に直交する方向から加わる。また、上述したように、固定部3の中心には、雄螺子12がZ方向から挿入されている。そのため、固定部3は雄螺子12によって補強され、Z方向に直交する方向から衝撃が加わっても、固定部3は容易に折れない。
【0031】
また、
図6に示すごとく、コネクタ接続壁部23には、高圧コネクタ16と低圧コネクタ17との2つのコネクタが取り付けられる。バッテリー固定壁部22には、バッテリー固定部220が形成されている。このバッテリー固定部220に、バッテリー18を固定してある。
【0032】
一方、
図3、
図4に示すごとく、固定部3における車両固定壁部2aの厚さx1(Z方向における、内壁面310から端面300までの距離)は、リブ4における車両固定壁部2aの厚さx2よりも厚い。また、上記厚さx2は、非車両固定壁部2bの、最も薄い部分の厚さx3よりも厚い。さらに、車両固定壁部2aの、最も薄い部分の厚さx4は、非車両固定壁部2bの、最も薄い部分の厚さx4と略同一である。
【0033】
また、最も薄い部分の厚さx3は、上記パイプ突出壁部21と、バッテリー固定壁部22と、コネクタ接続壁部23と、他機器隣接壁部24とにおいて、それぞれ略同一である。
【0034】
また、
図3、
図4に示すごとく、固定部3の根元には、アール状部320を形成してある。このアール状部320によって、固定部3の根元に加わる応力を緩和し、固定部3を破損しにくくしている。同様に、リブ4の根元にもアール状部330を形成してある。
【0035】
一方、
図1に示すごとく、車両固定壁部2aには、リブ4を形成してある領域と、形成していない領域(リブ非形成領域45)とがある。本例では、3つのリブ非形成領域45(45a〜45c)を設けてある。第1リブ非形成領域45aは、車両固定壁部2aの、Y方向におけるパイプ突出壁部21側であって、かつX方向におけるコネクタ接続壁部23側の部位に形成されている。また、第2リブ非形成領域45bは、車両固定壁部2aの、Y方向における他機器隣接壁部24側であって、かつX方向におけるコネクタ接続壁部23側の部位に形成されている。第3リブ非形成領域45cは、車両固定壁部2aの、Y方向における他機器隣接壁部24側であって、かつX方向におけるフランジ部40側の部位に形成されている。
【0036】
第1リブ非形成領域45aと第2リブ非形成領域45bとの間には、傾斜リブ49が形成されている。傾斜リブ49は、
図2に示すごとく、X方向においてコネクタ接続壁部23側に向うほど、Z方向厚さが次第に薄くなるように、傾斜状に形成されている。
【0037】
また、
図1に示すごとく、フランジ接続固定部31の、X方向におけるコネクタ接続壁部23側の約半分の部分は、第3リブ非形成領域45cに面している。フランジ接続固定部31は、複合環状リブ4aには接続していない。また、フランジ接続固定部31の、蓋13側の約半分の部分は、フランジ部40に接続している。
【0038】
フランジ部40は複合環状リブ4aに接続していない。フランジ部40と複合環状リブ4aとの間には隙間部48が形成されている。隙間部48のZ方向厚さは、リブ非形成領域45のZ方向厚さと略同一である。
【0039】
また、上述したように、連結固定部30(第1固定部3a、第2固定部3b、第3固定部3c)を互いに連結するリブ4は、複数の環状リブ41を互いに接続した複合環状リブ4aである。環状リブ41の中央に形成されている凹部410は円形であり、この凹部410の直径は、第3固定部3c及び第4固定部4dの直径と略等しい。
【0040】
図1に示すごとく、第1固定部3aには、複合環状リブ4aを構成する3つのリブ411,412,413が接続している。また、第2固定部3bは、その周囲を殆ど全て、複合環状リブ4aに囲まれている。第3固定部3bには、複合環状リブ4aを構成する3つのリブ414,415,416が接続している。
【0041】
また、車両固定壁部2aには、2個の支持用凹部46が形成されている。バッテリー固定壁部22(
図2参照)にも同様に、2個の支持用凹部46が形成されている。車載電気機器用ケース1を運ぶ場合には、これら4個の支持用凹部46に、ピン状の治具(図示しない)を差し込む。この治具を使って、車載電気機器用ケース1を持ち運ぶようになっている。また、上記治具を支持用凹部46に挿入しやすくするため、支持用凹部46の周囲にはリブ4を形成していない。
【0042】
本例の車載電気機器用ケース1の製造方法について説明する。本例では、アルミニウムの鋳造により、車載電気機器用ケース1を製造する。
図7に示すごとく、複数の鋳型6(6a,6b)を組み合わせ、これらの鋳型6a,6bの隙間60に、加熱して溶かしたアルミニウムを流し込む。そして、アルミニウムを冷却して固化させた後、鋳型6を取り外し、車載電気機器用ケース1を得る。鋳型6には、複合環状リブ4aの凹部410(
図1参照)に対応する位置に、金属製の突条部61を取り付けてある。この突条部61によって、上記凹部410が形成される。鋳造工程を繰り返すと突条部61が磨耗するため、突条部61の磨耗が進んだときに、突条部61を取り替えるようになっている。
【0043】
本例の作用効果について説明する。本例では
図1に示すごとく、車両固定壁部2aにリブ4を形成してある。このリブ4は、固定部3に連結している。
それゆえ、車両固定壁部2aにおける固定部3の周囲(根元付近)を、リブ4によって充分に補強することができる。そのため、交通事故等によって車載電気機器用ケース1が大きな衝撃を受け、車両固定壁部2aにおける固定部3の周囲に大きな応力が発生しても、この部位が破損することを防止でき、車載電機機器用ケース1の破損を防止することができる。
【0044】
また、
図2、
図6に示すごとく、固定部3には、端面300に開口した雌螺子部11が形成されている。雌螺子部11の軸線Aは固定部3の突出方向(Z方向)に平行である。そして、雌螺子部11に雄螺子12が螺合し、この雄螺子12によって、車載電気機器用ケース1を車両に固定するよう構成されている。
このようにすると、固定部3に雄螺子12をZ方向から螺合するため、雄螺子12によって固定部3が補強され、Z方向に直交する方向から衝撃が加わっても固定部3が折れにくくなる。したがって、衝撃を受けた時に固定部3が折れず、固定部3の周囲に応力が加わりやすくなる。そのため、リブ4を形成して、固定部3の周辺を補強した場合の効果が大きい。
【0045】
また、
図4に示すごとく、リブ4における車両固定壁部2aの厚さx2は、非車両固定壁部2bの、最も薄い部分の厚さx3よりも厚い。
このようにすると、リブ4における車両固定壁部2aの厚さx2を厚くすることができるため、固定部3の周辺をしっかりと補強することができる。
【0046】
また、
図1に示すごとく、4個の固定部3のうち3個の固定部3(3a〜3c)は、リブ4によって互いに連結された連結固定部30となっている。
このようにすると、複数の連結固定部30がリブ4によって互いに連結されているため、車両固定壁部2aにおける、複数の連結固定部30の間の領域を、リブ4によって補強することができる。そのため、複数の連結固定部30を互いに離れた位置に設けることにより、車両固定壁部2a全体を補強することが可能になり、車両固定壁部2aの破損をより効果的に防止できる。
【0047】
また、
図1に示すごとく、連結固定部30を連結するリブ4は、複数の環状リブ41を隣接配置して互いに接続した複合環状リブ4aである。
このようにすると、車載電気機器用ケース1の破損を効果的に防止できると共に、軽量化することができる。すなわち、複合環状リブ41は面積を広くしやすいため、車両固定壁部2aの広い範囲を補強できる。そのため、車載電機機器用ケース1がより破損しにくくなる。また、複合環状リブ4aは、中央が凹んだ環状リブ41を複数個、接続して形成したもので、複数の凹部410を有する。そのため、車載電気機器用ケース1を軽量化することができる。
【0048】
また、
図1に示すごとく、4個の固定部3のうち1個の固定部3(第4固定部3d)は、フランジ部40に接続したフランジ接続固定部31となっている。そしてフランジ部40が、フランジ接続固定部31の周囲を補強するためのリブ4を兼ねている。
このようにすると、フランジ部40がリブ4を兼ねているため、車両固定壁部2aの補強専用のリブ4を設ける必要がなくなる。そのため、車載電気機器用ケース1をより軽量化しやすくなる。また、複合環状リブ4aの面積が増えすぎることを防止できるため、車載電気機器用ケース1を製造する際に、突条部61(
図7参照)に加わる負担を減少させることができる。
【0049】
また、
図1に示すごとく、本例では、リブ4を車両固定壁部2aの全面に形成するのではなく、衝撃が加わった時に応力があまり生じない部分は、リブ4を形成しないリブ非形成領域45としてある。このようにすると、リブ4の面積が増えすぎることを防止できる。そのため、車載電気機器用ケース1を製造する際に、鋳型6(
図7参照)や突条部61の負担を減らすことが可能になる。
【0050】
また、
図1に示すごとく、本例では、凹部410は円形になっている。すなわち、突条部61(
図7参照)は円柱状に形成されている。鋳造工程を繰り返すと突条部61が磨耗するが、突条部61を円柱状にすると、磨耗が比較的少なくてすむ。
【0051】
以上のごとく、本例によれば、大きな衝撃を受けても破損しにくい車載電気機器用ケースを提供することができる。
【0052】
なお、本例ではリブ4を、車両固定壁部2aに、Z方向におけるケース外側に突出するよう形成したが、ケース内側に突出するよう形成してもよい。また、本例においては、内壁面310(
図3参照)も固定部3に含まれる。すなわち、リブ4をケース内側に突出形成し、内壁面310において、リブ4を固定部3に連結してもよい。
【0053】
また、本例では
図1に示すごとく、凹部410を円形に形成したが、四角形状(
図8参照)や、三角形状(
図9参照)など、任意の形状にすることができる。
【0054】
また、本例では
図1に示すごとく、全ての固定部3(3a〜3d)がリブ4に接続しているが、リブ4に接続していない固定部3を設けてもよい。