特許第5811977号(P5811977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5811977
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/47 20060101AFI20151022BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20151022BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20151022BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20151022BHJP
【FI】
   H01L29/48 F
   H01L29/48 M
   H01L29/48 D
   H01L29/06 301G
   H01L21/265 Z
   H01L29/06 301V
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-204595(P2012-204595)
(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-60276(P2014-60276A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2014年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上東 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】内藤 正美
(72)【発明者】
【氏名】森野 友生
【審査官】 河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−059870(JP,A)
【文献】 特開2009−016603(JP,A)
【文献】 特開2005−340685(JP,A)
【文献】 特開2002−261295(JP,A)
【文献】 特開2012−231019(JP,A)
【文献】 特表2008−546181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/47
H01L 21/265
H01L 29/06
H01L 29/872
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主表面(1a)および裏面(1b)を有し、オフ角を有する第1導電型の炭化珪素からなる基板(1)と、
前記基板の前記主表面上に形成され、前記基板よりも低不純物濃度とされた第1導電型の炭化珪素からなるドリフト層(2)と、
前記ドリフト層の上に配置され、該ドリフト層におけるセル部に開口部(3a)が形成された絶縁膜(3)と、
前記セル部に形成され、前記絶縁膜の開口部を通じて、前記ドリフト層の表面とショットキー接触するように形成されたショットキー電極(4)と、前記基板の裏面に形成されたオーミック電極(5)とを備えてなるショットキーバリアダイオード(10)と、
前記ショットキー電極のうち前記ドリフト層と接する領域の下方に、前記ドリフト層の表面において前記ショットキー電極と接続されるように形成され、かつ、互いに離間して配置された複数の第2導電型層(8)とを備え、
前記複数の第2導電型層と前記ドリフト層とによりPNダイオードが構成され、
前記複数の第2導電型層は、前記基板の法線方向から見た厚みが一定とされた棒状の積層欠陥と平行となる方向にのみストライプ状に形成されていることを特徴とするジャンクションバリアショットキーダイオードを備えた炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記棒状の積層欠陥が前記基板のオフ方向に沿って伸びていることを特徴とする請求項1に記載のジャンクションバリアショットキーダイオードを備えた炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記ショットキー電極は、前記ドリフト層の表面とショットキー接触し、かつ、前記複数の第2導電型層の表面と絶縁する材料であることを特徴とする請求項1または2に記載のジャンクションバリアショットキーダイオードを備えた炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記ショットキー電極の材料がAu、Ni、Ti、Moのいずれかであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のジャンクションバリアショットキーダイオードを備えた炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記複数の第2導電型層それぞれの幅(W2)が該幅と同方向における前記棒状の積層欠陥の厚み以上とされていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のジャンクションバリアショットキーダイオードを備えた炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記複数の第2導電型層それぞれの幅が1μm以上3μm以下であることを特徴とする請求項5に記載のジャンクションバリアショットキーダイオードを備えた炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記複数の第2導電型層は、互いに等しい間隔(W1)を空けて配置されていて、かつ、等しい幅(W2)を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載のジャンクションバリアショットキーダイオードを備えた炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記棒状の積層欠陥が前記複数の第2導電型層の内側にすべて入っていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載のジャンクションバリアショットキーダイオードを備えた炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
主表面(1a)および裏面(1b)を有し、オフ角を有する第1導電型の炭化珪素からなる基板(1)と、
前記基板の前記主表面上に形成され、前記基板よりも低不純物濃度とされた第1導電型の炭化珪素からなるドリフト層(2)と、前記ドリフト層の上に配置され、該ドリフト層におけるセル部に開口部(3a)が形成された絶縁膜(3)と、
前記セル部に形成され、前記絶縁膜の開口部を通じて、前記ドリフト層の表面とショットキー接触するように形成されたショットキー電極(4)と、前記基板の裏面に形成されたオーミック電極(5)とを備えてなるショットキーバリアダイオード(10)と、
前記ショットキー電極のうち前記ドリフト層と接する領域の下方に、前記ドリフト層の表面において前記ショットキー電極と接続されるように形成され、かつ、互いに離間して配置された複数の第2導電型層(8)とを備え、
前記複数の第2導電型層と前記ドリフト層とによりPNダイオードが構成され、
前記複数の第2導電型層は、前記基板の法線方向から見た厚みが一定とされた棒状の積層欠陥と垂直となる方向にのみストライプ状に形成されていて、かつ、前記基板のオフ角をθ、前記ドリフト層の厚みをdとするとき、前記複数の第2導電型層それぞれの幅(W2)がd/tanθ以上とされていることを特徴とするジャンクションバリアショットキーダイオードを備えた炭化珪素半導体装置。
【請求項10】
前記棒状の積層欠陥が前記基板のオフ方向に沿って伸びていることを特徴とする請求項9に記載のジャンクションバリアショットキーダイオードを備えた炭化珪素半導体装置。
【請求項11】
前記ショットキー電極は、前記ドリフト層の表面とショットキー接触し、かつ、前記複数の第2導電型層の表面と絶縁する材料であることを特徴とする請求項9または10に記載のジャンクションバリアショットキーダイオードを備えた炭化珪素半導体装置。
【請求項12】
前記ショットキー電極の材料がAu、Ni、Ti、Moのいずれかであることを特徴とする請求項9ないし11のいずれか1つに記載のジャンクションバリアショットキーダイオードを備えた炭化珪素半導体装置。
【請求項13】
前記棒状の積層欠陥が前記複数の第2導電型層の内側にすべて入っていることを特徴とする請求項9ないし12のいずれか1つに記載のジャンクションバリアショットキーダイオードを備えた炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショットキーバリアダイオード(以下、SBDという)にPNダイオードを加えたジャンクションバリアショットキーダイオード(以下、JBSという)を有する炭化珪素(以下、SiCという)半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、SBDに更にPNダイオードを加えたJBSを有するSiC半導体装置が提案されている。具体的には、SiCにて構成されたn-型エピタキシャル層の表面にショットキー電極を形成することでSBDを構成し、n-型エピタキシャル層の表層部にp型層を形成すると共にp型層の表面にショットキー電極を接触させることでPNダイオードを構成している。このような構造により、SBDに更にPNダイオードを加えたJBSを有するSiC半導体装置が構成されている。そして、このような構成とすることで、PNダイオードを構成するPN接合部にて形成される空乏層により、逆方向リーク電流を抑え、高耐圧が得られるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−16603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、n-型エピタキシャル層中に存在する積層欠陥など、種々の欠陥がショットキー電極と接触することで電流パスが形成され、逆方向リーク電流が大きくなって、デバイス歩留まりに影響を与えるという問題を発生させる。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、欠陥とショットキー電極との接触による電流パスを低減し、逆方向リーク電流の抑制を図ることで、デバイス歩留まりの向上を図ることが可能なSiC半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、ショットキー電極(4)のうちドリフト層(2)と接する領域の下方に、ドリフト層の表面においてショットキー電極と接続されるように形成され、かつ、互いに離間して配置された複数の第2導電型層(8)を備え、複数の第2導電型層とドリフト層とによりPNダイオードが構成されたJBSを備えたSiC半導体装置において、複数の第2導電型層(8)は、基板の法線方向から見た厚みが一定とされた棒状の積層欠陥と平行となる方向にのみストライプ状に形成されていることを特徴としている。
【0007】
このように、複数の第2導電型層をストライプ状にレイアウトすると共に、各第2導電型層の長手方向を棒状の積層欠陥と平行な方向としている。このため、ドリフト層に形成された積層欠陥などの欠陥の全部もしくは多くを、各第2導電型層内に入れた状態にできる。これにより、結晶欠陥とショットキー電極との接触による電流パスを低減することが可能となり、逆方向リーク電流の抑制が図れ、デバイス歩留まりを向上することが可能となる。
【0008】
請求項9に記載の発明では、ショットキー電極(4)のうちドリフト層(2)と接する領域の下方に、ドリフト層の表面においてショットキー電極と接続されるように形成され、かつ、互いに離間して配置された複数の第2導電型層(8)を備え、複数の第2導電型層とドリフト層とによりPNダイオードが構成されたJBSを備えたSiC半導体装置において、複数の第2導電型層(8)は、基板の法線方向から見た厚みが一定とされた棒状の積層欠陥と垂直となる方向にのみストライプ状に形成されていて、かつ、基板(1)のオフ角をθ、ドリフト層の厚みをdとするとき、複数の第2導電型層それぞれの幅(W2)がd/tanθ以上とされていることを特徴としている。
【0009】
このように、各第2導電型層の幅がd/tanθ以上となるようにしている。したがって、オフ方向に延びる積層欠陥が第2導電型層内に含まれる可能性が高くなり、少なくとも積層欠陥の一部が第2導電型層内に含まれる可能性をより高くすることができる。これにより、結晶欠陥とショットキー電極との接触による電流パスを低減することが可能となり、逆方向リーク電流の抑制が図れ、デバイス歩留まりを向上することが可能となる。
【0010】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態にかかるSBDを備えたSiC半導体装置の断面図である。
図2図1に示すSiC半導体装置の斜視断面図である。
図3図1に示すSiC半導体装置の上面レイアウト図である。
図4図1図3に示すSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
図5(a)】p型層8の長手方向をオフ方向に対して垂直にした場合の積層欠陥の様子を示した上面図である。
図5(b)】p型層8を同心状に配置した場合の積層欠陥の様子を示した上面図である。
図5(c)】p型層8の長手方向をオフ方向に対して平行にした場合の積層欠陥の様子を示した上面図である。
図6】本発明の第2実施形態にかかるSBDを備えたSiC半導体装置の上面レイアウト図を示す。
図7図6に示すSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
図8】本発明の第3実施形態にかかるSBDを備えたSiC半導体装置の上面レイアウト図を示す。
図9】積層欠陥を基板表面の法線方向と基板水平方向から見たときの様子を示した図である。
図10】p型層8の長手方向をオフ方向に対して垂直にした場合の積層欠陥の様子を示した上面図である。
図11図8に示すSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。まず、本実施形態にかかるSiC半導体装置の製造方法によって製造されるSiC半導体装置の構造について、図1図3を参照して説明する。なお、図1は、図2および図3のA−A’断面図に相当している。また、図3は断面図ではないが、図を見易くするために部分的にハッチングを示してある。
【0014】
図1および図2に示すように、SiC半導体装置は、例えば2×1018〜1×1021cm-3程度不純物濃度とされたSiCからなるn+型基板1を用いて形成されている。n+型基板1の上面を主表面1a、主表面1aの反対面である下面を裏面1bとすると、主表面1a上には、基板1よりも低いドーパント濃度のSiCで構成されたn-型エピタキシャル層(ドリフト層)2が積層されている。n-型エピタキシャル層2は、例えば1×1014〜1×1017cm-3程度不純物濃度とされている。これらn+型基板1およびn-型エピタキシャル層2によって構成されたSiC半導体基板のセル部にSBD10が形成されていると共に、その外周領域に終端構造が形成されることでSiC半導体装置が構成されている。
【0015】
具体的には、n+型基板1として、主表面1aが例えば(0001)面に対してオフ角を有するSiC基板を用いている。本実施形態の場合、図2および図3に示すようにオフ方向が(11−20)方向とされ、例えば4°のオフ角を有するSiC基板をn+型基板1として用いている。そして、その上にエピタキシャル成長によりn-型エピタキシャル層2が形成させられており、n-型エピタキシャル層2についても、(11−20)方向がオフ方向とされた結晶となっている。n+型基板1やn-型エピタキシャル層2には、結晶欠陥が少ないものが好ましいが、n+型基板1上にn-型エピタキシャル層2を成長させる際に積層欠陥などの欠陥が発生する。このため、n-型エピタキシャル層2には、積層欠陥などの欠陥が存在した状態となってる。また、n+型基板1に存在していた結晶欠陥についてもn-型エピタキシャル層2に伝播するという特性を有しており、これもn-型エピタキシャル層2中に欠陥が入る要因になっている。
【0016】
このn-型エピタキシャル層2の表面には、例えばシリコン酸化膜などで構成された絶縁膜3が形成されている。絶縁膜3には、セル部において部分的に開口部3aが形成されており、この絶縁膜3の開口部3aにおいてn-型エピタキシャル層2と接触させられたショットキー電極4が形成されている。このショットキー電極4は、例えばAu(金)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、Mo(モリブデン)等のように、n-型エピタキシャル層2に対してショットキー接触し、後述するp型層8とのコンタクトが絶縁状態にできる材料で構成されている。そして、n+型基板1の裏面と接触するように、例えばAu、Ni、Ti、Mo等により構成されたオーミック電極5が形成されている。これにより、SBD10が構成されている。SBD10の上面レイアウトはどのようなものであっても良いが、本実施形態では、図3に示すように各角部が丸められた正方形状となるようにしてある。
【0017】
また、SBD10の外周領域に形成された終端構造として、ショットキー電極4の外縁部におけるn-型エピタキシャル層2の表層部に、ショットキー電極4と接するように、p型リサーフ層6が形成されていると。また、p型リサーフ層6の外周をさらに囲むように複数個のp型ガードリング層7等が配置されている。これらp型リサーフ層6およびp型ガードリング層7等により、終端構造が構成されている。p型リサーフ層6やp型ガードリング層7は、例えばAlを不純物として用いて構成されたものであり、例えば、5×1016〜1×1019cm-3程度の不純物濃度で構成されている。これらp型リサーフ層6やp型ガードリング層7を配置することにより、SBD10の外周において電界が広範囲に延びるようにでき、電界集中を緩和できる。このため、耐圧を向上させることができる。このような構造により、SBD10が構成されている。
【0018】
なお、図示していないが、ショットキー電極4の表面に、バリア層となる接合用電極や外部接続用の表面電極等を順に積層することができ、表面電極の表面にボンディングワイヤ等を接続することで、SBD10と外部との電気的接続が図れるようになっている。
【0019】
さらに、終端構造を構成する部分のうち最もセル部側に位置しているp型リサーフ層6の内側(内周側)の端部よりもさらに内側に、ショットキー電極4と接するように構成されたp型層8が形成されている。p型層8は、図3に示すように、オフ方向と同方向を長手方向とする短冊状のものが(1−100)方向に複数本並べられたストライプ状とされている。各p型層8は、図1に示すように、セル部の中心に対して対称的に配置されるように、各p型層8が等しい間隔W1だけ空けた配置とされ、かつ、各p型層8の幅W2も等しくされた構造とされている。このようなp型層8は、例えば、5×1017〜1×1020cm-3程度の不純物濃度で構成されている。各p型層8の間隔W1は、例えば2.0±0.5μmとされている。各p型層8の幅W2は、n-型エピタキシャル層2内に形成される棒状の積層欠陥の厚み、つまり積層欠陥のうちオフ方向に対する垂直方向の幅(本実施形態の場合、(1−100)方向の寸法)以上に設定してあり、例えば1μm以上3μm以下とされている。また、各p型層8の深さは、例えば0.3μm以上1.0μm以下とされている。
【0020】
このように構成されるp型層8により、n-型エピタキシャル層2との間においてPNダイオードが構成される。しかしながら、p型層8の表面とショットキー電極4とのコンタクトについては、ショットキー電極4をAu、Ni、Ti、Mo等の材料で構成することで、これらの間のコンタクト抵抗が非常に大きくできることから、絶縁状態となる。これにより、SBD10に加えてPNダイオードが備えられたJBSが構成されている。
【0021】
このような構造のSBD10を備えたSiC半導体装置では、ショットキー電極4をアノード、オーミック電極5をカソードとして機能する。具体的には、ショットキー電極4に対してショットキー障壁を超える電圧を印加することにより、ショットキー電極4とオーミック電極の間に電流を流す。また、外周部領域に関しては、p型リサーフ層6やp型ガードリング層7を備えてあるため、等電位線が偏り無く広範囲で延びるようにすることができる。これにより、高耐圧素子とすることが可能となる。
【0022】
また、本実施形態では、オフ方向を長手方向としてp型層8を延設している。つまり、n-型エピタキシャル層2に形成される積層欠陥と平行となる方向にのみp型層8を延設したストライプ状としている。このため、n-型エピタキシャル層2に形成された積層欠陥などの欠陥の全部もしくは多くを、各p型層8内に入った状態にできる。そして、各p型層8の表面とショットキー電極4との間のコンタクト抵抗が非常に大きく絶縁状態となっていることから、各p型層8内に結晶欠陥の全部もしくは多くを入れることで、結晶欠陥とショットキー電極との接触による電流パスを低減することが可能となる。したがって、逆方向リーク電流を抑制でき、デバイス歩留まりの向上を図ることが可能となる。
【0023】
次に、本実施形態にかかるSiC半導体装置の製造方法について説明する。図4は、図1に示すSiC半導体装置の製造工程を示した断面図であるが、図を簡略化して図4中ではp型ガードリング層7を省略してある。
【0024】
まず、図4(a)に示す工程では、n+型基板1の主表面1aにn-型ドリフト層2をエピタキシャル成長させる。続いて、図4(b)に示す工程では、LTO(low-temperature oxide)等で構成されたマスク9を配置したのち、フォトリソグラフィ・エッチング工程にてマスク9のうちp型リサーフ層6およびp型ガードリング層7の形成予定領域を開口させる。そして、このマスク9を用いて例えばAlなどのp型不純物をイオン注入し、熱処理などによって活性化することでp型リサーフ層6およびp型ガードリング層7を形成する。
【0025】
次に、図4(c)に示す工程では、マスク9を除去したのち、再びLTO等で構成されたマスク11を配置し、フォトリソグラフィ・エッチング工程にてマスク11のうちp型層8の形成予定領域を開口させる。このとき、積層欠陥などの欠陥を確認することなくマスク合わせしても多くの結晶欠陥がp型層8の形成予定領域に含まれた状態になるが、結晶欠陥を確認しながらマスク合わせすれば、より多くの結晶欠陥がp型層8の形成予定領域に含まれるようにできる。例えば、フォトルミネッセンスで欠陥位置を認識できることから、それによっておよその欠陥位置を把握しておき、その上でマスク合わせを行うようにすれば良い。
【0026】
そして、このマスク11を用いて例えばAlなどのp型不純物をイオン注入し、熱処理などによって活性化することでp型層8を形成する。その後、図4(d)に示す工程では、マスク11を除去したのち、例えば、プラズマCVDによりシリコン酸化膜を成膜したのち、これをリフロー処理することで絶縁膜3を成膜し、フォトリソグラフィ・エッチング工程を経て、絶縁膜3に対して開口部3aを形成する。そして、図4(e)に示す工程では、開口部3a内を含めて絶縁膜3の上にショットキー電極4を形成するための金属層を成膜したのち、パターニングすることでショットキー電極4を形成する。さらに、n+型基板1の裏面1b側にNi、Ti、Mo、W等により構成される金属層を形成することにより、オーミック電極5を形成する。これにより、図1に示したSBD10を備えたSiC半導体装置が完成する。
【0027】
以上説明したように、本実施形態では、p型層8をストライプ状にレイアウトすると共に、各p型層8の長手方向を棒状の積層欠陥と平行な方向、つまりオフ方向と同方向としている。このため、n-型エピタキシャル層2に形成された積層欠陥などの結晶欠陥の全部もしくは多くを、各p型層8内に入れた状態にできる。これにより、結晶欠陥とショットキー電極との接触による電流パスを低減することが可能となり、逆方向リーク電流の抑制が図れ、デバイス歩留まりを向上することが可能となる。
【0028】
すなわち、仮に、図5(a)に示すようにp型層8の長手方向をオフ方向に対して垂直方向にしたり、図5(b)に示すようにp型層8を複数の枠形状のものを同心状に配置した構造とすると、オフ方向に延びる積層欠陥のうちp型層8内に入る部分が少なくなる。電流パスが形成されるメカニズムは明らかではないが、p型層8内に含まれる結晶欠陥の割合を多くするほどリーク電流が低減されることが確認されいる。そして、図5(a)、(b)に示すように積層欠陥のうちp型層8内に入る部分が少なくなると、リーク電流の抑制が十分には行えていなかった。これに対して、本実施形態のように、p型層8の長手方向をオフ方向と同方向にすると、図5(c)に示すようにオフ方向に延びる積層欠陥のうちp型層8内に入る部分をより多くすることができる。これにより、リーク電流をより抑制することが可能になる。
【0029】
このように、各p型層8の長手方向を棒状の積層欠陥と平行な方向、つまりオフ方向と同方向とすることで、上記効果を得ることが可能となる。なお、積層欠陥などの欠陥すべてをp型層8内にすべて入れることが好ましいが、より多く入れることでも上記効果が得られることを確認している。このため、積層欠陥などの欠陥すべてがp型層8内に入っていなくても、各p型層8の長手方向をオフ方向と同方向とすることで欠陥がよりp型層8内に入るようにでき、上記効果を得ることができる。
【0030】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してオフ方向やp型層8の長手方向およびSiC半導体装置の製造方法を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0031】
図6に示すように、本実施形態では、n+型基板1として、(0001)面に対してオフ方向が(1−100)方向とされたオフ角を有するSiC基板を用いている。また、n+型基板1の上に形成されたn-型エピタキシャル層2についても、(1−100)方向がオフ方向とされた結晶となっている。そして、このようなn-型エピタキシャル層2に対して、オフ方向である(1−100)方向と同方向を長手方向とするp型層8を形成している。
【0032】
次に、本実施形態のSiC半導体装置の製造方法について、図7を参照して説明する。なお、図7は、本実施形態にかかるSiC半導体装置の製造工程を示した断面図であるが、図を簡略化して図7中ではp型ガードリング層7を省略してある。
【0033】
まず、n+型基板1として、(0001)面に対してオフ方向が(1−100)方向とされたオフ角を有するSiC基板を用意する。そして、図7(a)、(b)に示す工程として、第1実施形態で説明した図4(a)、(b)と同様の工程を行う。その後、図7(c)に示す工程では、LTO等で構成されたマスク11を配置し、フォトリソグラフィ・エッチング工程にてマスク11のうちp型層8の形成予定領域を開口させる。 このときにも、積層欠陥などの欠陥を確認することなくマスク合わせしても多くの結晶欠陥がp型層8の形成予定領域に含まれた状態になるが、結晶欠陥を確認しながらマスク合わせすれば、より多くの結晶欠陥がp型層8の形成予定領域に含まれるようにできる。
【0034】
そして、このマスク11を用いてドライエッチングを行うことで、p型層8の形成予定領域においてn-型エピタキシャル層2を除去して溝を形成する。そして、マスク11を除去した後、溝内を含むn-型エピタキシャル層2の表面全面にp型層8をエピタキシャル成長させたのちp型層8の不要部分を除去すること、もしくは、溝内のみにp型層8を選択的にエピタキシャル成長させることで、p型層8を形成する。この後は、図7(d)、(e)に示す工程として、第1実施形態で説明した図4(d)、(e)と同様の工程を行う。これにより、本実施形態のSiC半導体装置が完成する。
【0035】
このように、第1実施形態で説明したSiC半導体装置に対して、オフ方向やp型層8の長手方向を変更した構造としている。このように、オフ方向やp型層8の長手方向を変更しても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第1実施形態ではp型層8をイオン注入によって形成する場合について説明したが、本実施形態のように、n-型エピタキシャル層2をドライエッチングして形成した溝内にp型層8をエピタキシャル成長させて形成することもできる。
【0036】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してオフ方向とp型層8の長手方向との関係やp型層8の幅W2を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0037】
図8に示すように、本実施形態では、n+型基板1として、(0001)面に対してオフ方向が(11−20)方向とされたオフ角を有するSiC基板を用いている。また、n+型基板1の上に形成されたn-型エピタキシャル層2についても、(11−20)方向がオフ方向とされた結晶となっている。そして、このようなn-型エピタキシャル層2に対して、オフ方向である(11−20)方向に対する垂直方向を長手方向としてp型層8を形成している。各p型層8の幅W2は、オフ方向と同方向に延びる積層欠陥の長さを加味して設定してあり、図9(a)に示すように積層欠陥を基板表面の法線方向から見たときの長さ以上となるようにしている。具体的には、図9(b)に示すように、オフ角をθ、n-型エピタキシャル層2の膜厚をdとして、各p型層8の幅W2がd/tanθ以上となるようにしている。
【0038】
したがって、図10に示すように、オフ方向に延びる積層欠陥がp型層8内に含まれる可能性が高くなり、少なくとも積層欠陥の一部がp型層8内に含まれる可能性をより高くすることができる。
【0039】
次に、本実施形態のSiC半導体装置の製造方法について、図11を参照して説明する。なお、図11は、本実施形態にかかるSiC半導体装置の製造工程を示した断面図であるが、図を簡略化して図11中ではp型ガードリング層7を省略してある。
【0040】
まず、n+型基板1として、(0001)面に対してオフ方向が(11−20)方向とされたオフ角を有するSiC基板を用意する。そして、図11(a)、(b)に示す工程として、第1実施形態で説明した図4(a)、(b)と同様の工程を行う。その後、図11(c)に示す工程では、LTO等で構成されたマスク11を配置し、フォトリソグラフィ・エッチング工程にてマスク11のうちp型層8の形成予定領域を開口させる。このときにも、積層欠陥などの欠陥を確認することなくマスク合わせしても多くの結晶欠陥がp型層8の形成予定領域に含まれた状態になるが、結晶欠陥を確認しながらマスク合わせすれば、より多くの結晶欠陥がp型層8の形成予定領域に含まれるようにできる。
【0041】
そして、このマスク11を用いて例えばAlなどのp型不純物をイオン注入し、熱処理などによって活性化することでp型層8を形成する。このとき、p型層8の長手方向がオフ方向と垂直、p型層8の幅方向がオフ方向と同方向となるようにしており、かつ、p型層8の幅W2がd/tanθ以上となるようにしている。この後は、図11(d)、(e)に示す工程として、第1実施形態で説明した図4(d)、(e)と同様の工程を行う。これにより、本実施形態のSiC半導体装置が完成する。
【0042】
このように、p型層8の長手方向をオフ方向の垂直方向とする場合でも、p型層8の幅W2がd/tanθ以上となるようにすることで、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
(他の実施形態)
上記実施形態では、n+型基板1として主表面が(0001)面に対してオフ角を有するSiC基板を用いたが、主表面が(000−1)面に対してオフ角を有するSiC基板を用いても良い。オフ角も一例として4°とした場合を例に挙げたが、他の角度、例えば2°であっても良い。
【0044】
また、上記第2実施形態では、第1実施形態に対してドライエッチングによる溝形成と溝内への埋め込みによってp型層8を形成した場合を述べたが、第3実施形態においても同様の工程によってp型層8を形成することができる。
【0045】
また、上記実施形態では、第1導電型をn型とし、第2導電型をp型とするSiC半導体装置について説明したが、各導電型を反転させた構造としても良い。
【0046】
なお、結晶の方位を示す場合、本来ならば所望の数字の上にバー(−)を付すべきであるが、電子出願に基づく表現上の制限が存在するため、本明細書においては、所望の数字の前にバーを付すものとする。
【符号の説明】
【0047】
1 n+型基板
1a 主表面
1b 裏面
2 n-型エピタキシャル層(ドリフト層)
3 絶縁膜
4 ショットキー電極
5 オーミック電極
6 p型リサーフ層
8 p型層
10 SBD
図1
図2
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図6
図7
図8
図9
図10
図11