特許第5812077号(P5812077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5812077
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】温度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/22 20060101AFI20151022BHJP
   G01K 1/16 20060101ALI20151022BHJP
【FI】
   G01K7/22 J
   G01K1/16
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-209398(P2013-209398)
(22)【出願日】2013年10月4日
(65)【公開番号】特開2015-75332(P2015-75332A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2014年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】若林 裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 常喜
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 薫
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭64−000025(JP,U)
【文献】 特開2004−361370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 7/22
G01K 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱素子と、
前記感熱素子が収容される外装ケースと、
前記外装ケースの内部で前記感熱素子の周囲に充填される封止樹脂と、を有する温度センサであって、
前記外装ケースが、
前記感熱素子のリード線が引き出される方向に開口部を持つケース側壁と、
前記開口部と反対側に位置する前記ケース側壁の底部に一体に形成してあるケース底壁と、
前記ケース側壁と一体に形成され、前記開口部と反対側に突出する張り出し部と、を有し、
前記ケース底壁が、前記張り出し部に連続する前記ケース側壁に対して、鋭角な所定角度で交わり、前記張り出し部と一体化される温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度を検出したい物体に対して容易に取り付けることが可能な温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
温度を検出したい物体に対して容易に取り付けることが可能な温度センサとして、たとえば下記の特許文献1に示す温度センサが知られている。この温度センサでは、熱応答性を向上させるために、熱伝導性に優れた金属板が、感熱素子の周囲を覆っている。
【0003】
しかしながら、従来の温度センサでは、実温度と検知温度において誤差の度合い(温度乖離)が大きく、且つ、感温素子が安定温度へ達する時間(熱応答性)が、依然として遅いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実登3007342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、温度を検出したい物体に対して容易に取り付けることが可能で、しかも温度乖離が小さく正確な温度検出が可能であり、さらに熱応答性に優れた温度センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る温度センサは、
感熱素子と、
前記感熱素子が収容される外装ケースと、
前記外装ケースの内部で前記感熱素子の周囲に充填される封止樹脂と、を有する温度センサであって、
前記外装ケースが、
前記感熱素子のリード線が引き出される方向に開口部を持つケース側壁と、
前記開口部と反対側に位置する前記ケース側壁の底部に一体に形成してあるケース底壁と、
前記ケース側壁と一体に形成され、前記開口部と反対側に突出する張り出し部と、を有し、
前記ケース底壁が、前記張り出し部に連続する前記ケース側壁に対して、鋭角な所定角度で交わり、前記張り出し部と一体化される。
【0007】
本発明に係る温度センサでは、張り出し部を用いて、温度を検出したい物体(測温対象物)またはその付近の取付部に対して容易に取り付けることが可能である。たとえば張り出し部に、ボルト穴を設け、ボルトやねじにより、測温対象物またはその付近の取付部に温度センサを容易に着脱自在に取り付けることができる。あるいは、張り出し部を、測温対象物またはその付近の取付部に具備された差し込み溝に差し込むことで、測温対象物またはその付近の取付部に温度センサを容易に着脱自在に取り付けてもよい。あるいは、張り出し部を測温対象物またはその付近の取付部に接着することで、測温対象物またはその付近の取付部に温度センサを取り付けても良い。
【0008】
また、本発明に係る温度センサでは、従来の温度センサに比べて、実温度と検知温度において誤差の度合い(温度乖離)が小さく正確な温度検出が可能であり、さらに熱応答性にも優れている。その第1の理由としては、軸方向の両端が開口するケース側壁ではなく、一方の端部がケース底壁により閉塞される構造であるためと考えられる。また、第2の理由としては、ケース底壁が、張り出し部に連続する前記ケース側壁に対して、鋭角な所定角度で交わり、前記張り出し部と一体化されるためと考えられる。
【0009】
ケース底壁が、張り出し部に連続するケース側壁に対して、鋭角な所定角度で交わることで、外装ケースの内部に感熱素子を入れて封止樹脂で外装ケースの内部を充填すると、感熱素子の先端頭部は、鋭角な所定角度の底壁と側壁との間に挟まれる構造となり易い。そのため、測温対象物から張り出し部または張り出し部に連続するケース側壁に伝わる熱は、封止樹脂を介さず、あるいは薄い封止樹脂層を介して、感熱素子に伝わることが予想される。このため、本発明に係る温度センサでは、従来の温度センサに比べて、温度乖離が小さく正確な温度検出が可能であり、さらに熱応答性にも優れていると考えられる。
【0010】
また、本発明では、感熱素子の先端頭部は、鋭角な所定角度の底壁と側壁との間に挟まれる構造となり易いため、外装ケースの内部における感熱素子の位置の製品毎のバラツキが少ない。そのため、温度センサの製品毎の特性バラツキも少ない。
【0011】
好ましくは、前記張り出し部は、前記ケース側壁を構成する筒状本体の一方の端部を平板状に加圧成形することで形成され、
平板状に加圧成形された前記張り出し部と、加圧成形されていない前記筒状本体との間に、前記ケース底壁が自動的に形成される。
【0012】
このような構成を採用することで、本発明の温度センサの製造が、きわめて容易となり、しかも、従来の温度センサに比べて、温度乖離が小さく正確な温度検出が可能であり、さらに熱応答性にも優れており、温度センサの製品毎の特性バラツキも少ない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明の一実施形態に係る温度センサの斜視図である。
図2図2図1に示すII−II線に沿う温度センサの概略断面図である。
図3図3図1に示す温度センサの平面図である。
図4図4は本発明の比較例(従来例)に係る温度センサの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1および図2に示すように、本発明の一実施形態に係る温度センサ2は、外装ケース10の内部に、感熱素子4を有している。感熱素子4は、素子本体6と、素子本体6の外周を被覆している被覆層7とを有する。
【0015】
素子本体6としては、温度を検出することができるものであれば、特に限定されないが、たとえばNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタ素子、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタ素子などが用いられる。被覆層7は、絶縁性の樹脂あるいはガラスなどで構成される。被覆層7を構成する樹脂としては、特に限定されないが、たとえばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、ABS樹脂、PPS樹脂、PBT樹脂などが用いられる。また、被覆層7を構成するガラスとしては、特に限定されない。
【0016】
素子本体6には、一対のリード線8が接続してあり、リード線8を通して、素子本体6により検出した温度信号を、測定装置や制御装置などの他の装置に送信可能になっている。リード線8は、外装ケース10のX軸方向の一端に形成してある開口部12からX軸方向に飛び出している。リード線8としては、特に限定されず、たとえば塩ビ電線、ポリエチレン電線、シリコン電線、フッ素電線などが用いられる。
【0017】
外装ケース10は、感熱素子4のリード線8が引き出される方向に開口部12を持ち、感熱素子4の周囲(X軸の回り)を囲むケース側壁14を有する。本実施形態では、ケース側壁14は、図1に示すように円筒形状であるが、特に限定されず、三角筒、四角筒、あるいはその他の多角筒形状、あるいは楕円筒形状、あるいはその他の異形筒形状でも良い。
【0018】
ケース側壁14における開口部12とX軸方向の反対側に位置するケース側壁の底部には、ケース底壁20が一体に形成してある。また、ケース底壁20のX軸方向の反開口部側には、平板状の張り出し部16が側壁14および底壁20と一体に形成してある。張り出し部16は、X−Y軸平面に平行な平面を有し、略中央部に、Z軸方向に貫通する貫通孔18を有する。
【0019】
貫通孔18には、たとえばボルトやねじが通され、測温対象物自体あるいは測温対象物の近くに位置する図2に示す取付用突起40または取付用平面42に張り出し部16を固定するために用いられる。
【0020】
なお、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直であり、X−Y軸平面が張り出し部16の平面と平行になり、X軸は、外装ケース10からリード線8が飛び出す方向に一致している。
【0021】
図2に示すように、本実施形態では、Y軸に垂直なX−Z平面に平行な断面(張り出し部16の平面に垂直な断面)において、ケース底壁20が、張り出し部16にX軸方向に沿って連続するケース側壁14aに対して、鋭角な所定角度θで交わり、張り出し部16と一体化される。鋭角な所定角度θとは、鋭角であれば特に限定されないが、好ましくは、45〜60度である。底壁20および張り出し部16は、後述するような方法により容易に形成することができる。
【0022】
図3に示すように、張り出し部16のY軸方向の幅w1は、ケース側壁14の外径d1よりも大きい。w1/d1は、好ましくは1〜2である。ケース底壁20のY軸方向幅は、ケース側壁14の外径d1から張り出し部16のY軸方向の幅w1となるように徐々に変化する。ケース側壁14の外径d1は、外装ケース10の内部に収容される感熱素子4の外径よりも大きく、好ましくは4〜8mmである。
【0023】
ケース側壁14の周囲におけるX軸方向に最も短いケース側壁14の長さL1は、特に限定されないが、感熱素子4のX軸方向の長さよりも長いことが好ましく、好ましくは5〜15mmである。また、ケース底壁20のX軸方向の長さL2は、外装ケース10の外径d1との関係で決定されることが好ましい。ケース側壁14におけるX軸方向に最も長い部分に対応するケース側壁14aの長さ(L1+L2)は、感温素子4が外装ケース10に完全に覆われるように決定される。
【0024】
張り出し部16のX軸方向の長さL3は、測温対象物またはその近くに位置する取付部分に応じて決定され、特に限定されない。また、本実施形態では、張り出し部分16は、図2に示すように、ケース側壁14の内のX軸方向に最も長い位置に対応するケース側壁14aに対して一直線上に連続するが、本発明では、これに限定されず、張り出し部16は、ケース側壁14aに対して所定角度で折り曲げられて連続するように構成しても良い。
【0025】
外装ケース10の内部には、感温素子4が収容してあり、さらに、封止樹脂30が充填してある。封止樹脂30としては、特に限定されないが、たとえばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂で構成される。被覆層7が樹脂で構成される場合には、被覆層7を構成する樹脂に比較して、封止樹脂30は、接着特性、熱伝導特性に優れた樹脂が好ましい。封止樹脂30には、フィラーなどが混入してあっても良い。封止樹脂30は、外装ケース10の内部で、感温素子4とケース10との隙間を埋めるように充填され、開口部12から多少はみ出して形成されても良い。感温素子4は、外装ケース10の内部で封止樹脂により完全に埋まるようになっている。
【0026】
本実施形態に係る温度センサ2の外装ケース10は、たとえば以下のようにして製造することができる。
【0027】
すなわち、まず、ケース側壁14と同一外径d1を有する筒状本体を準備する。そして、その筒状本体のX軸方向の一方の端部(図2に示す開口部12の反対側)に位置する筒状本体の端部をプレス装置により平板状に加圧成形して張り出し部16を形成する。そして、その平板状に加圧成形された張り出し部16と、加圧成形されていない筒状本体との間に、ケース底壁20が自動的に形成され、加圧成形されていない部分が、そのままケース側壁14として残る。その後に、必要に応じて、張り出し部16に貫通孔18を形成する。
【0028】
本実施形態に係る温度センサ2では、張り出し部16を用いて、温度を検出したい物体(測温対象物)またはその付近の取付部に対して容易に取り付けることが可能である。たとえば張り出し部16に、ボルト穴としての貫通孔18を設け、ボルトやねじにより、図2に示すように、測温対象物自体またはその付近の取付用突起40または取付用平面42に温度センサ2を容易に着脱自在に取り付けることができる。
【0029】
また、本実施形態に係る温度センサ2では、従来の温度センサに比べて、実温度と検知温度において誤差の度合い(温度乖離)が小さく正確な温度検出が可能であり、さらに熱応答性にも優れている。その第1の理由としては、たとえば図4に示すような軸方向の両端12,20aが開口するケース側壁14aを持つ温度センサとは異なり、本実施形態では、図2に示すように、ケース側壁14の一方のX軸方向端部がケース底壁20により閉塞される構造であるためと考えられる。また、第2の理由としては、図2に示すように、ケース底壁20が、張り出し部16に連続するケース側壁14aに対して、鋭角な所定角度θで交わり、張り出し部16と一体化されるためと考えられる。
【0030】
ケース底壁20が、張り出し部16に連続するケース側壁14に対して、鋭角な所定角度θで交わることで、外装ケース10の内部に感熱素子4を入れて封止樹脂30で外装ケース10の内部を充填すると、図2に示すように、感熱素子4の先端頭部は、鋭角な所定角度θの底壁20と側壁14aとの間に挟まれる構造となり易い。そのため、測温対象物から張り出し部16または張り出し部16に連続するケース側壁14に伝わる熱は、封止樹脂30を介さず、あるいは薄い封止樹脂層を介して、感熱素子4に伝わることが予想される。このため、図1図3に示す本実施形態に係る温度センサ2では、図4に示す従来の温度センサに比べて、温度乖離が小さく正確な温度検出が可能であり、さらに熱応答性にも優れている。
【0031】
より具体的には、図4に示す従来の温度センサ2aに比較して、図1図3に示す実施形態の温度センサ2では、85℃の測温対象物に対する温度乖離が、20%以上の割合で改善することができた。
【0032】
また、図4に示す従来の温度センサ2aに比較して、図1図3に示す実施形態の温度センサ2では、85℃の測温対象物に対する熱応答性が、15%以上の割合で改善することができた。
【0033】
また、本実施形態では、感熱素子4の先端頭部は、鋭角な所定角度θの底壁20と側壁14aとの間に挟まれる構造となり易いため、外装ケース10の内部における感熱素子4の位置の製品毎のバラツキが少ない。そのため、温度センサ2の製品毎の特性バラツキも少ない。
【0034】
しかも本実施形態では、上述したように、平板状に加圧成形された張り出し部16と、加圧成形されていない筒状本体との間に、ケース底壁20が自動的に形成される。そのため、温度センサ2(外装ケース10)の製造が、きわめて容易となり、しかも、従来の温度センサに比べて、温度乖離が小さく正確な温度検出が可能であり、さらに熱応答性にも優れており、温度センサ2の製品毎の特性バラツキも少ない。
【0035】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0036】
たとえば、張り出し部16には、必ずしも貫通孔18を形成する必要はない。たとえば張り出し部16を、測温対象物またはその付近の取付部40,42に具備された差し込み溝に差し込むことで、測温対象物またはその付近の取付部に温度センサを容易に着脱自在に取り付けてもよい。あるいは、張り出し部16を測温対象物またはその付近の取付部40,42に接着することで、測温対象物またはその付近の取付部40,42に温度センサ2を取り付けても良い。
【符号の説明】
【0037】
2… 温度センサ
4… 感熱素子
6… 素子本体
7… 被覆層
8… リード線
10… 外装ケース
12… 開口部
14… ケース側壁
16… 張り出し部
18… 貫通孔
20… ケース底壁
30… 封止樹脂
40… 取付用突起
42… 取付用平面
図1
図2
図3
図4