特許第5812093号(P5812093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5812093
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】線形位置センサシステム
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/14 20060101AFI20151022BHJP
   G01D 5/244 20060101ALI20151022BHJP
【FI】
   G01D5/14 H
   G01D5/244 B
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-519651(P2013-519651)
(86)(22)【出願日】2011年7月13日
(65)【公表番号】特表2013-531254(P2013-531254A)
(43)【公表日】2013年8月1日
(86)【国際出願番号】US2011001228
(87)【国際公開番号】WO2012009013
(87)【国際公開日】20120119
【審査請求日】2014年5月15日
(31)【優先権主張番号】12/836,901
(32)【優先日】2010年7月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399132320
【氏名又は名称】タイコ・エレクトロニクス・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Tyco Electronics Corporation
(73)【特許権者】
【識別番号】503388120
【氏名又は名称】タイコ・エレクトロニクス・ベルギー・イーシー・ビーブイビーエー
【氏名又は名称原語表記】Tyco Electronics Belgium EC BVBA
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンデス・オリバー,サルバドール
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン,ライル,スタンレイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】トラウトヴァイン,シュテファン
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−287117(JP,A)
【文献】 特開2009−222594(JP,A)
【文献】 特開2008−145302(JP,A)
【文献】 特開2008−145379(JP,A)
【文献】 特開2003−167627(JP,A)
【文献】 特開2006−258730(JP,A)
【文献】 米国特許第5525901(US,A)
【文献】 米国特許第5670875(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01B 7/00−7/34
G01R 33/00−33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石システムの位置を検知するためのコンピュータの実行方法であって、
前記実行方法は、
磁石システムによって生じた第一方向における磁界の磁束を位置センサで測定し、前記磁石システムによって生じた、前記第一方向とは異なる第二方向における磁界の磁束を前記位置センサで測定する工程と、
前記第一方向における測定された磁束と関連する測定された第一最高磁束値、測定された第二最高磁束と測定された最低磁束値、および、前記第一方向における前記磁束と関連する第一基準最高磁束値、第二基準最高磁束値と基準最低磁束値に基づいて第一オフセットを決定する工程と、
前記第一オフセット、前記測定された第一最高磁束値と前記測定された第二最高磁束値の一方、前記第一方向における前記磁束と関連する前記第一基準最高磁束値と前記第二基準最高磁束値の一方に基づくか、または、前記第一オフセット、前記第一方向における前記磁束と関連する測定された最低磁束値、基準最低磁束値に基づいて第一ゲインを決定する工程と、
前記第一オフセットおよび前記第一ゲインに基づいて、前記第一方向における前記磁束と関連する零交差点と前記第二方向における前記磁束と関連する零交差点のうち少なくとも1点と前記第一方向における前記測定された磁束値のうち少なくとも一部を調整する工程と、
前記第二方向における測定された磁束と関連する測定された最高磁束値と測定された最低磁束値、および、前記第二方向における前記磁束と関連する基準最高磁束値と基準最低磁束値に基づいて第二オフセットを決定する工程と、
前記第二オフセット、前記第二方向における前記磁束値と関連する前記測定された最高磁束値と前記基準最高磁束値、または、前記第二オフセット、前記第二方向における前記磁束と関連する測定された最低磁束値と基準最低磁束値に基づいて第二ゲインを決定する工程と、
前記第二オフセットおよび前記第二ゲインに基づいて、前記第一方向における前記磁束と関連する零交差点と前記第二方向における前記磁束と関連する零交差点のうち少なくとも1点と前記第一方向における前記測定された磁束値のうち少なくとも一部を調整する工程と、
前記第一方向における前記測定された磁束の前記調整値および前記第二方向における前記測定された磁束の前記調整値に基づいて、所定時間での前記位置センサに対しての前記磁石システムの位置を決定する工程を含むコンピュータの実行方法。
【請求項2】
第一方向における測定された第一最高磁束、測定された第二最高磁束、測定された最低磁束、第一基準最高磁束、第二基準最高磁束と基準最低磁束と関連する妥当性チェック、および、第二方向における測定された最高磁束、測定された最低磁束、基準最高磁束と基準最低磁束と関連する妥当性チェックのうちの少なくとも一方に基づいて、前記位置センサが故障しているかどうかを決定する工程をさらに含む請求項1記載のコンピュータの実行方法。
【請求項3】
前記第一オフセットおよび前記第一ゲインを決定する前に前記第一方向における測定された磁束と前記第二オフセットおよび前記第二ゲインを決定する前に前記第二方向における測定された磁束との少なくとも一方から値をフィルタリングする工程をさらに含む請求項1記載のコンピュータの実行方法。
【請求項4】
前記第一オフセットを決定する工程は、
以下の式を用いて前記第一オフセット(FirstOffset)を計算する工程を含み、
【数1】
(ここで、第一方向の磁束と関連づけられ、Φmax Rは第一基準最高磁束値および第二基準最高磁束値であり、Φmin Rは基準最低磁束値であり、かつ、Φmax Mは測定された第一最高磁束値および測定された第二最高磁束値であり、およびΦmin Mは測定された最低磁束値である)
第一オフセット、第一方向の磁束と関連する測定された第一最高磁束値と測定された第二最高磁束値のうちの一方、第一方向の磁束と関連する第一基準最高磁束値と第二基準最高磁束値のうちの一方に基づき以下の式を用いて、第一ゲイン(FirstGain)を決定される請求項1記載のコンピュータの実行方法。
【数2】
(ここで、Φmax Rは第一基準最高磁束値および第二基準最高磁束値の一方であり、Φmax Mは測定された第一最高磁束値および測定された第二最高磁束値の一方である)
【請求項5】
前記第一オフセットを決定する工程は、
以下の式を用いて前記第一オフセットを計算する工程を含み、
【数3】
(ここで、第一方向の磁束と関連づけられ、Φmax Rは第一基準最高磁束値および第二基準最高磁束値の平均であり、Φmin Rは基準最低磁束値であり、かつ、Φmax Mは測定された第一最高磁束値および測定された第二最高磁束値の平均であり、およびΦmin Mは測定された最低磁束値である)
第一オフセット、第一方向の磁束と関連する測定された最低磁束値と基準最低磁束値に基づき以下の式を用いて、第一ゲインを決定される請求項1記載のコンピュータの実行方法。
【数4】
(ここで、Φmin Rは基準最低磁束値であり、Φmin Mは測定された最低磁束値である)
【請求項6】
前記第二オフセットを決定する工程は、
以下の式を用いて前記第二オフセット(SecondOffset)を計算する工程を含み、
【数5】
(ここで、第二方向の磁束と関連づけられ、Φmax Rは基準最高磁束値であり、Φmin Rは基準最低磁束値であり、かつ、Φmax Mは測定された最高磁束値であり、およびΦmin Mは測定された最低磁束値である)
第二オフセット、第二方向の磁束と関連する測定された最高磁束値、基準最高磁束値に基づき以下の式を用いて、第二ゲイン(SecondGain)を決定される請求項1記載のコンピュータの実行方法。
【数6】
(ここで、Φmax Rは基準最高磁束値であり、Φmax Mは測定された最高磁束値である)
【請求項7】
前記第二オフセットを決定する工程は、
以下の式を用いて前記第二オフセット(SecondOffset)を計算する工程を含み、
【数7】
(ここで、第二方向の磁束と関連づけられ、Φmax Rは基準最高磁束値であり、Φmin Rは基準最低磁束値であり、かつ、Φmax Mは測定された最高磁束値であり、およびΦmin Mは測定された最低磁束値である)
第二オフセット、第二方向の磁束と関連する測定された最低磁束値、基準最低磁束値に基づき以下の式を用いて、第二ゲイン(SecondGain)を決定される請求項1記載のコンピュータの実行方法。
【数8】
(ここで、Φmin Rは基準最低磁束値であり、Φmin Mは測定された最低磁束値である)
【請求項8】
位置センサに対しての磁石システムの位置を検知するための線形位置センサシステムであって、
前記線形位置センサシステムは、
磁石システムによって生じた第一方向における磁界の磁束を測定するように構成された位置センサと、
コンピュータ読み取り可能な有形的表現記憶媒体およびプロセッサを含み、前記位置センサと通信するコントローラを含み、
前記コントローラは、磁石システムによって生じた第一方向における磁界の磁束を測定することを前記位置センサに指示し、前記磁石システムによって生じた前記第一方向とは異なる方向の第二方向における磁界の磁束を測定することを前記位置センサに指示し、
前記第一方向における測定された磁束の測定された最高磁束値と測定された最低磁束値、および、前記第一方向における前記磁束の基準最高磁束値と基準最低磁束値に基づいて第一オフセットを決定し、
前記第一オフセット、前記測定された最高磁束値のうちの測定された最高磁束値、前記基準最高磁束値のうちの基準最高磁束値に基づいて、または、前記第一オフセット、前記第一方向における前記磁束と関連する測定された最低磁束値、基準最低磁束値に基づいて第一ゲインを決定し、
前記第一オフセットおよび前記第一ゲインに基づいて、前記第一方向における前記磁束と関連する零交差点と前記第二方向における前記磁束と関連する零交差点のうち少なくとも1点と前記第一方向における前記測定された磁束値のうち少なくとも一部を調整し、
前記第二方向における測定された磁束の測定された最高磁束値と測定された最低磁束値、および、前記第二方向における前記磁束と関連する基準最高磁束値と基準最低磁束値に基づいて第二オフセットを決定し、
前記第二オフセット、前記第二方向における前記磁束値と関連する前記測定された最高磁束値と前記基準最高磁束値、または、前記第二オフセット、前記第二方向における前記磁束と関連する測定された最低磁束値と基準最低磁束値に基づいて第二ゲインを決定し、
前記第二オフセットおよび前記第二ゲインに基づいて、前記第一方向における前記磁束と関連する零交差点と前記第二方向における前記磁束と関連する零交差点のうち少なくとも1点と前記第一方向における前記測定された磁束値のうち少なくとも一部を調整し、
前記第一方向における前記測定された磁束の前記調整値および前記第二方向における前記測定された磁束の前記調整値に基づいて、所定時間での前記位置センサに対しての前記磁石システムの位置を決定するように構成される線形位置センサシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、第一方向における測定された第一最高磁束、測定された第二最高磁束、測定された最低磁束、第一基準最高磁束、第二基準最高磁束と基準最低磁束と関連する妥当性チェック、および、第二方向における測定された最高磁束、測定された最低磁束、基準最高磁束と基準最低磁束と関連する妥当性チェックのうちの少なくとも一方に基づいて、前記位置センサが故障しているかどうかを決定するようにさらに構成される請求項8記載の線形位置センサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
線形位置センサシステムは、油圧式アクチュエータ、ブレーキシステムやトランスミッションなどの機械部品の移動を監視するためによく用いられる。磁石や位置センサを含む公知の線形位置センサシステムにおいて、磁石は位置センサに対して直線方向に移動するので、位置センサは磁石によって生じる磁束を測定し、磁石の様々な位置に応じて変化する電気信号を生じさせる。
【背景技術】
【0002】
図1は、公知の線形位置センサシステムの出力を示すグラフである。図1は、位置センサと位置センサに対する磁石の位置との関係によって測定される第一方向102の磁束を示している。図1は、位置センサと位置センサに対する磁石の位置との関係によって測定される第二方向104の磁束をさらに示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
問題となるのは、この線形位置センサシステムは、ほぼ第一方向102の磁束における第一零交差点106とほぼ第一方向102の磁束における第二零交差点108との間となる領域105内でのみ正確であることである。この領域では、外気温、線形位置センサシステムの形状、線形位置センサシステム内の空隙、磁石材料、磁化の角度、極の磁化と関連する許容差は、位置センサに対する磁石の位置を検知するために位置センサの能力に関して最小限の影響を有する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
課題を解決するための手段は、大きな磁石ストロークの長さを備えて作動可能な線形位置センサシステムによって提供される。大きな磁石ストロークの長さは、第一方向102の磁束における第一零交差点106を過ぎた領域110内の磁石位置を検知可能であり、かつ、第一方向102の磁束における第二零交差点108を過ぎた領域112内の磁石位置を検知可能である。これら領域では、外気温、線形位置センサシステムの形状、線形位置センサシステム内の空隙、磁石材料、磁化の角度、極の磁化などの要因は、位置センサに対して磁石システムの位置を検知する線形位置センサシステムにおける位置センサの能力に関してより大きな影響を有する。
本発明は、添付図面を参照して実施形態によって以下説明される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、公知の線形位置センサシステムの出力を示すグラフである。
図2図2は、位置センサに対する磁石システムの位置を検知するための三次元/二次元ホール技術を利用する線形位置センサシステムの一実施形態におけるブロック図である。
図3図3は、位置センサに対する磁石システムの位置を検知するための方法の一実施形態のフローチャートである。
図4図4は、位置センサに対する磁石システムの位置に対する第一方向において測定された磁束と第二方向において測定された磁束を示すグラフである。
図5図5は、位置センサに対する磁石システムの位置に対する第一方向において測定された磁束と第二方向において測定された磁束、および位置センサに対する磁石システムの位置に対する第一方向において測定された基準磁束と第二方向において測定された基準磁束を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
拡張された磁石ストローク長さにおいて位置センサに対する磁石システムの位置を正確に検知することが可能な三次元/二次元ホール技術を用いた線形位置センサシステムが以下説明される。以下説明される線形位置センサシステムは、図1によって上述で説明された第一方向102の零交差点106,108を過ぎた領域110,112などに拡張された磁石ストローク長さにおいて作動可能とされる。これら領域では、外気温、線形位置センサシステムの形状、線形位置センサシステム内の空隙、磁石材料、磁化の角度、極の磁化などの要因は、位置センサに対する磁石システムの位置を検知する線形位置センサシステムにおける位置センサの能力に関して影響を与える。
【0007】
図2は、位置センサに対する磁石システムの位置を検知するための線形位置センサシステム200のブロック図である。典型的には、線形位置センサシステム200は、コントローラ202,位置センサ204および磁石システム206を含む。磁石システム206は、線形位置センサシステム200内において、磁石システム206が位置センサ204に対して直線方向に移動可能なように、位置センサ204に対して配置される。実施形態によっては、磁石システム206は1つの磁石を含んでもよいが、別の実施形態では2つ以上の磁石を含んでもよい。磁石システム206に用いることが可能な磁石の例は、リング状永久磁石および円筒状永久磁石を含む。しかしながら、他の磁石のタイプが用いられてもよい。実施形態によっては、磁石システム206は、油圧式アクチュエータ、ブレーキ位置センサ、トランスミッションまたはクラッチペダル上に配置されてもよい。
【0008】
作動の間、磁石システム206が位置センサ204に対して移動することで、位置センサ204は、少なくとも2方向において、磁石システム206によって生み出された磁束を測定する。線形位置センサシステム200において用いることが可能な位置センサ204の例は、線形磁気センサおよび磁気スイッチまたはラッチを含む。実施形態によっては、位置センサ204は磁石システム206を位置センサ204の表面に対して直交して適用することで磁束を測定し、かつ、位置センサ204は磁石システム206を位置センサ204の表面に対して平行に適用することで磁束を測定する。しかしながら、位置センサ204は、これに加えてまたはこれに変えて、磁石システム206を位置センサ204の表面に対して1つ以上の異なる方向に適用することで磁束を測定してもよい。
【0009】
コントローラ202は、位置センサ204と通信し、位置センサ204の磁束測定を利用し、所定時間で位置センサ204に対する磁石システム206の位置を決定する。実施形態によっては、コントローラ202はASIC(Application Specific Integration Circuit)であってもよく、他の実施形態では、コントローラ202は、マイクロプロセッサなどの1つ以上のプロセッサおよびコンピュータ読み取り可能な有形記憶媒体などの1つ以上のメモリモジュールを含んでもよい。これら実施形態において、プロセッサは、メモリ内に蓄積された指令を実行し、線形位置センサシステム200に位置センサ204に対する磁石システム206の位置を検知させるように構成される。
【0010】
以下詳細に説明されるように、磁石システム206の位置を検知するために、コントローラ202は、第一方向102において磁束と関連した磁束測定のために、第一オフセット(offset)および第一ゲイン(gain)を計算する。コントローラ202は、第一方向における磁束と関連した磁束測定と、第一方向における磁束と関連しコントローラ202に蓄積されている基準磁束測定とを比較する。実施形態によっては、コントローラ202は、1以上の測定された最高磁束値、1つの測定された最低磁束値、1以上の基準最高磁束値および1つの基準最低磁束値に基づいて、第一オフセットおよび第一ゲインを計算する。
【0011】
同様に、コントローラ202は、第一方向とは異なる第二方向における磁束と関連する磁束測定のために、第二オフセットおよび第二ゲインを計算する。コントローラ202は、第二方向における磁束と関連した磁束測定と、第二方向における磁束と関連しコントローラ202に蓄積されている基準磁束測定とを比較する。実施形態によっては、コントローラ202は、1つの測定された最高磁束値、1つの測定された最低磁束値、1つの基準最高磁束値および1つの基準最低磁束値に基づいて、第二オフセットおよび第二ゲインを計算する。
【0012】
コントローラ202は、第一ゲインと第一オフセットに基づいて第一方向における磁束と関連した磁束測定の少なくとも一部を調整する。コントローラ202は、第二ゲインと第二オフセットに基づいて第二方向における磁束と関連した磁束測定の少なくとも一部を調整する。それからコントローラ202は、所定時間での第一方向における測定された磁束の調整値および所定時間での第二方向における測定された磁束の調整値に基づいて所定時間での位置センサ204に対する磁石システム206の位置を決定してもよい。
【0013】
理想的な基準磁束値と整合するように測定された磁束値を調整することで、線形位置センサシステム200は、外気温、線形位置センサシステムの形状、線形位置センサシステム内の空隙、磁石材料、磁化の角度、極の磁化などの要因は、位置センサ204に対する磁石システム206の図1によって上述で説明された第一方向102の零交差点106,108を過ぎた領域110,112などでの位置を検知する線形位置センサシステムにおける位置センサ204の能力に関して影響を与える、ストローク長さで作動可能となる。
【0014】
図3は、図2を用いて上述した線形位置センサシステム内などの位置センサに対する磁石システムの位置を検知するためのコンピュータによる実施方法の一実施形態のフローチャートである。ステップ302において、位置センサは、磁石システムを位置センサに対して直線方向に移動させることによって生じる第一方向における磁界の磁束を測定すると共に、位置センサは、磁石システムを位置センサに対して直線方向に移動させることによって生じる第二方向における磁界の磁束を測定する。ここで、第一方向および第二方向は異なる方向である。一実施形態において、第一方向における磁束は、位置センサ204の表面に対して直交して適用する磁束である。第二方向における磁束は、位置センサ204の表面に対して平行となる磁束である。しかしながら、他の方向における磁束にも用いることが可能であることが理解される。
【0015】
位置センサに対する磁石システムの位置に対して、第一方向における測定された測定された磁束および第二方向における測定された磁束の一例が図4に示される。第一方向における測定された磁束は符号402で示され、第二方向における測定された磁束は符号404で示される。
【0016】
図3を再び参照すると、実施形態によっては、ステップ304において、コントローラ202は、第一オフセットおよび第一ゲインを決定する前に第一方向における測定された磁束から1つ以上の測定された磁束値をフィルタリング可能、および/または、コントローラ202は、第二オフセットおよび第二ゲインを決定する前に第二方向における測定された磁束から1つ以上の測定された磁束値をフィルタリング可能である。例えば、コントローラ202は、測定された磁束値が理想的な基準磁束値の所定量内であるかどうかに基づいて、第一方向および/または第二方向における測定された磁束から測定された磁束値をフィルタリング可能である。
【0017】
ステップ306において、コントローラ202は、第一方向における磁束と関連する測定された第一最高磁束値、測定された第二最高磁束値および測定された最低磁束値および第一方向における磁束と関連する第一基準最高磁束値、第二基準最高磁束値および基準最低磁束値に基づいて、第一オフセットを決定する。上述したように、実施形態によっては、第一方向における磁束と関連する第一基準最高磁束値、第二基準最高磁束値および基準最低磁束値は、コントローラ202に蓄積されている。
【0018】
図5は、位置センサに対する磁石システムの位置に対する第一方向において測定された磁束502と第二方向において測定された磁束504を示す図である。図5は、位置センサに対する磁石システムの位置に対する第一方向において測定された基準磁束506と第二方向において測定された基準磁束508をさらに示す。基準磁束506,508は、理想的な磁束測定を表し、外気温、線形位置センサシステムの形状、線形位置センサシステム内の空隙、磁石材料、磁化の角度、極の磁化などの要因は、位置センサに対する磁石システムの位置を検知するために、線形位置センサシステムにおける位置センサの能力に関して影響を与えることがない。
【0019】
第一方向において測定された磁束502は、測定された第一最高磁束値510、測定された第二最高磁束値512および測定された最低磁束値514を含む。同様に、第一方向において測定された基準磁束506は、第一基準最高磁束値516、第二基準最高磁束値518および基準最低磁束値520を含む。典型的には、第一オフセットは、外気温、線形位置センサシステムの形状、線形位置センサシステム内の空隙、磁石材料、磁化の角度、極の磁化などの要因によって生じた線形位置センサシステム内の誤差を表す。
【0020】
実施形態によっては、ステップ306において、コントローラ202は、次の式を用いて第一オフセット(FirstOffset)を決定する。
【数1】
ここで、第一方向の磁束と関連づけられ、Φmax Rは第一基準最高磁束値および第二基準最高磁束値の平均であり、Φmin Rは基準最低磁束値であり、かつ、Φmax Mは測定された第一最高磁束値および測定された第二最高磁束値の平均であり、およびΦmin Mは測定された最低磁束値である。しかしながら、第一オフセットは、第一方向の磁束と関連する測定された第一最高磁束値、測定された第二最高磁束値および測定された最低磁束値、および第一方向の磁束と関連する第一基準最高磁束値、第二基準最高磁束値および基準最低磁束値に基づいて、他の方法でも計算可能であることが理解される。
【0021】
ステップ308において、コントローラ202は、(1)第一オフセット、第一方向の磁束と関連する測定された第一最高磁束値および第一基準最高磁束値に基づいて、(2)第一オフセット、第一方向の磁束と関連する測定された第二最高磁束値および第二基準最高磁束値に基づいて、または(3)第一オフセット、第一方向の磁束と関連する測定された最低磁束値および基準最低磁束値に基づいて第一ゲインを決定する。例えば、図4を参照すると、コントローラ202は、第一方向402の磁束と関連する第一零交差点406までの領域405内において、第一オフセット、第一方向の磁束と関連する測定された第一最高磁束値および第一基準最高磁束値に基づいて第一ゲインを決定してもよい。コントローラ202は、第一方向402の磁束と関連する第一零交差点406と第一方向402の磁束と関連する第二零交差点408との間の領域407内において、第一オフセット、第一方向の磁束と関連する測定された最低磁束値および基準最低磁束値に基づいて第一ゲインを決定してもよい。さらに、コントローラ202は、第一方向402の磁束と関連する第二零交差点408の後の領域409内において、第一オフセット、第一方向の磁束と関連する測定された第二最高磁束値および第二基準最高磁束値に基づいて第一ゲインを決定してもよい。
【0022】
第一オフセットと同様に、典型的には、第一ゲインは、外気温、線形位置センサシステムの形状、線形位置センサシステム内の空隙、磁石材料、磁化の角度、極の磁化などの要因によって引き起こされる線形位置センサシステム内の誤差を表す。実施形態によっては、ステップ308において、コントローラ202は、第一オフセット、第一方向の磁束と関連する測定された第一最高磁束値と測定された第二最高磁束値のうちの一方、第一方向の磁束と関連する第一基準最高磁束値と第二基準最高磁束値のうちの一方に基づき以下の式を用いて、第一ゲイン(FirstGain)を決定する。
【数2】
ここで、Φmax Rは第一基準最高磁束値および第二基準最高磁束値の一方であり、Φmax Mは測定された第一最高磁束値および測定された第二最高磁束値の一方である。しかしながら、第一ゲインは、第一オフセット、第一方向の磁束と関連する測定された第一最高磁束値と第二最高磁束値の一方、第一方向の磁束と関連する第一基準最高磁束値と第二基準最高磁束値の一方に基づいて、他の方法でも計算可能であることが理解される。
【0023】
さらに、実施形態によっては、ステップ308において、コントローラ202は、第一オフセット、第一方向の磁束と関連する測定された最低磁束値および基準最低磁束値に基づいて、以下の式を用いて第一ゲインを決定する。
【数3】
ここで、Φmin Rは、基準最低磁束値であり、Φmin Mは測定された最低磁束値である。しかしながら、第一ゲインは、第一オフセット、第一方向の磁束と関連する測定された最低磁束値および基準最低磁束値に基づいて、他の方法でも計算可能であることが理解される。
【0024】
ステップ310において、コントローラ202は、第一オフセットおよび第一ゲインに基づいて、第一方向における測定された磁束値を少なくとも部分的に調整する。実施形態によっては、コントローラ202は、第一方向における磁束と関連する1以上の零交差点および/または第二方向における磁束と関連する1以上の零交差点において、第一方向における測定された磁束値を調整する。第一方向および/または第二方向における磁束と関連する零交差点において測定された磁束の更新値は、測定された磁束値が調整されるので測定された磁束をスムーズな曲線とすることを補助することが理解されよう。
【0025】
ステップ312において、コントローラ202は、第二方向の磁束と関連する測定された最高磁束値と測定された最低磁束値、および、第二方向の磁束と関連する基準最高磁束値と基準最低磁束値に基づいて、第二オフセットを決定する。図5を再び参照すると、第二方向における測定された磁束504は、測定された最高磁束値526および測定された最低磁束値528を含む。第二方向における基準磁束508は、基準最高磁束値530および基準最低磁束値532を含む。第一オフセットと同様に、第二オフセットは、外気温、線形位置センサシステムの形状、線形位置センサシステム内の空隙、磁石材料、磁化の角度、極の磁化などの要因によって引き起こされた線形位置センサシステム内の誤差を典型的には表す。
【0026】
実施形態によっては、ステップ312において、コントローラ202は、以下の式を用いて第二オフセット(SecondOffset)を決定する。
【数4】
ここで、第二方向の磁束と関連し、Φmax Rは、基準最高磁束値であり、Φmin Rは、基準最低磁束値であり、Φmax Mは測定された最高磁束値、Φmin Mは測定された最低磁束値である。しかしながら、第二オフセットは、第二方向における測定された磁束と関連する測定された最高磁束値および測定された最低磁束値、および第二方向における磁束に関連する基準最低磁束値と基準最高磁束値に基づいて、他の方法でも計算可能であることが理解される。
【0027】
ステップ314において、コントローラ202は、第二オフセット、第二方向の磁束と関連する測定された最高磁束値と基準最高磁束値に基づいて第二ゲインを決定するか、あるいは、コントローラ202は、第二オフセット、第二方向の磁束と関連する測定された最低磁束値と基準最低磁束値に基づいて第二ゲインを決定する。例えば、図4を参照すると、コントローラ202は、第二オフセット、第二方向404の磁束と関連する零交差点412までの領域410における測定された最低磁束値と基準最低磁束値に基づいて第二ゲインを決定してもよく、コントローラ202は、第二オフセット、第二方向404の磁束と関連する零交差点410後の領域414における測定された最高磁束値と基準最高磁束値に基づいて第二ゲインを決定してもよい。
【0028】
第一ゲインと同様に、典型的には、第二ゲインは、外気温、線形位置センサシステムの形状、線形位置センサシステム内の空隙、磁石材料、磁化の角度、極の磁化などの要因によって引き起こされる線形位置センサシステム内の誤差を表す。実施形態によっては、ステップ314において、コントローラ202は、第二オフセット、第二方向の磁束と関連する測定された最高磁束値および基準最高磁束値に基づき以下の式を用いて、第二ゲイン(SecondGain)を決定する。
【数5】
ここで、Φmax Rは基準最高磁束値、Φmax Mは測定された最高磁束値である。しかしながら、第二ゲインは、第二オフセット、第二方向の磁束と関連する測定された最高磁束値および基準最高磁束値に基づいて、他の方法でも計算可能であることが理解される。
【0029】
さらに実施形態によっては、ステップ314において、コントローラ202は、第二オフセット、第二方向の磁束と関連する測定された最低磁束値および基準最低磁束値に基づき以下の式を用いて、第二ゲインを決定する。
【数6】
ここで、Φmin Rは基準最低磁束値、Φmin Mは測定された最低磁束値である。しかしながら、第二ゲインは、第二オフセット、第二方向の磁束と関連する測定された最低磁束値および基準最低磁束値に基づいて、他の方法でも計算可能であることが理解される。
【0030】
ステップ316において、コントローラ202は、第二ゲインと第二オフセットに基づいて第二方向における測定された磁束値を少なくとも部分的に調整する。実施形態によっては、コントローラ202は、第一方向における磁束と関連する1以上の零交差点および/または第二方向における磁束と関連する1以上の零交差点において、第二方向における測定された磁束値を調整する。
【0031】
実施形態によっては、ステップ318において、コントローラ202は、線形位置センサシステムが1つ以上の妥当性チェックを実施することで、線形位置センサシステムが故障しているかどうかをチェック可能である。例えば、コントローラ202は、測定された第一最高磁束が第一基準最高磁束の所定量内であるかどうか、測定された第二最高磁束が第二基準最高磁束の所定量内であるかどうか、測定された最低磁束が基準最低磁束の所定量内であるかどうか、第一オフセットが所定の閾値を超えるかどうか、および/または、第一ゲインが所定の閾値を超えるかどうかを決定することで、第一方向の磁束に対して妥当性チェックを実施してもよい。
【0032】
同様に、コントローラ202は、測定された最高磁束が基準最高磁束の所定量内であるかどうか、測定された最低磁束が基準最低磁束の所定量内であるかどうか、第二オフセットが所定の閾値を超えるかどうか、および/または、第二ゲインが所定の閾値を超えるかどうかを決定することで、第二方向の磁束に対して妥当性チェックを実施してもよい。コントローラ202は、線形位置センサシステムが第一方向の磁束および/または第二方向の磁束に対して妥当性チェックに失敗したことを決定すると、コントローラ202は、線形位置センサシステムが故障して、磁石システムの位置決定に進まないことを決定してもよい。
【0033】
実施形態によっては、コントローラ202が位置センサに対しての磁石システムの位置をステップ320において決定すると同時に、上述を繰り返す方法ループ319が位置センサに対しての磁石システムの複数のストロークを1つずつ実行することが理解される。
【0034】
ステップ320において、コントローラ202は、所定時間の第一方向における測定された磁束の調整値および所定時間の第二方向における測定された磁束の調整値に基づいて、所定時間の磁石システムの位置を決定する。一実施形態において、磁石システムの位置を決定するために、コントローラ202は、所定時間の第一方向における測定された磁束の調整値と所定時間の第二方向における測定された磁束の調整値との間の角度などの関係を決定する。コントローラ202は、決定された関係に基づいて参照表から値を得、参照表からの値を線形化して、所定時間の位置センサに対しての磁石システムの位置を決定する。
【0035】
別の実施形態において、磁石システムの位置を決定するために、コントローラ202は、逆正接関数を利用して、所定時間の第一方向における測定された磁束の調整値と所定時間の第二方向における測定された磁束の調整値との間の関係を決定する。それから、コントローラ202は、多項式位置関数を利用して、所定の関係と関連する値を決定し、値を線形化して、所定時間の位置センサに対しての磁石システムの位置を決定する。
【0036】
さらに別の実施形態において、磁石システムの位置を決定するために、コントローラ202は、座標回転デジタルコンピュータ(CORDIC)機能を利用して、所定時間の第一方向における測定された磁束の調整値と所定時間の第二方向における測定された磁束の調整値に基づいて角度を決定する。それから、コントローラ202は、多項式位置関数を利用して、所定の関係と関連する値を決定し、値を線形化して、所定時間の位置センサに対しての磁石システムの位置を決定する。
【0037】
上述したように、線形位置センサシステムは、少なくとも二方向において磁石システムによって生じた磁束を測定することで、三次元/二次元ホール技術を利用可能である。測定された磁束は、それぞれの測定された磁束方向と関連するオフセットおよびゲインを決定するために、理想の基準磁束と比較される。所定のオフセットおよびゲインを用いることで、外気温、線形位置センサシステムの形状、線形位置センサシステム内の空隙、磁石材料、磁化の角度、極の磁化などの要因が、位置センサに対しての磁石システムの位置を検知する位置センサの能力に深刻な影響を与える拡張された磁石ストローク長さにおいてであっても、線形位置センサシステムが位置センサに対しての磁石システムの位置を正確に検知可能となるように、測定された磁束値は調整される。拡張された磁石ストローク長さにおいて、位置センサに対しての磁石システムの位置を検知可能であることは、線形位置センサシステムにおける小型サイズの磁石を用いることができることや機械デバイスにおける大きな移動幅に亘って磁石システムの位置を検知することができるなどの利点を与える。
【0038】
上述の詳細な説明は制限的なものではなく、例示的なものであることの意図とされる。以下の請求項は、全ての等価物を含み、本発明の技術的思想と技術的範囲を規定する意図があるものとして理解される。
【符号の説明】
【0039】
102,402・・・第一方向
104,404・・・第二方向
106,108,406,408,412・・・零交差点
105,110,112,405,407,409,410,414・・・領域
202・・・コントローラ
204・・・位置センサ
206・・・磁石システム
302・・・第一方向および第二方向における磁束測定
304・・・測定された磁束値のフィルタリング
306・・・第一オフセットの決定
308・・・第一ゲインの決定
310・・・第一オフセットおよび第一ゲインに基づいて測定された磁束値調整
312・・・第二オフセットの決定
314・・・第二ゲインの決定
316・・・第二オフセットおよび第二ゲインに基づいて測定された磁束値調整
318・・・妥当性チェック
320・・・位置センサに対しての磁石システムの位置決定
502・・・第一方向において測定された磁束
504・・・第二方向において測定された磁束
506・・・第一方向において測定された基準磁束
508・・・第二方向において測定された基準磁束
510・・・測定された第一最高磁束値、
512・・・測定された第二最高磁束値
514・・・測定された最低磁束値
516・・・第一基準最高磁束値
518・・・第二基準最高磁束値
520・・・基準最低磁束値
526・・・測定された最高磁束値
528・・・測定された最低磁束値
530・・・基準最高磁束値
532・・・基準最低磁束値
図1
図2
図3
図4
図5