(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5812189
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】燃料電池車両の吸気装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20060101AFI20151022BHJP
B60L 11/18 20060101ALI20151022BHJP
【FI】
H01M8/04 N
B60L11/18 G
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-506132(P2014-506132)
(86)(22)【出願日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】JP2013056352
(87)【国際公開番号】WO2013141040
(87)【国際公開日】20130926
【審査請求日】2014年7月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-63695(P2012-63695)
(32)【優先日】2012年3月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池谷 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】松本 史郎
(72)【発明者】
【氏名】デービス ダミアン パトリック
(72)【発明者】
【氏名】グレンジ ネイサン
【審査官】
前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−085970(JP,A)
【文献】
特開2009−193671(JP,A)
【文献】
特開2002−058943(JP,A)
【文献】
特開2008−243491(JP,A)
【文献】
特開2005−203264(JP,A)
【文献】
特開2005−243357(JP,A)
【文献】
特開2012−054033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/24
B60L 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電反応に使用する空気を燃料電池スタックに供給する燃料電池車両の吸気装置において、
前記燃料電池スタックに供給される空気の流れ方向の上流側に配置されて前記燃料電池スタックに取り付けられるとともに車体に結合され前記燃料電池スタックに空気を導く吸気ダクトと、
前記燃料電池スタックを挟んで前記吸気ダクトと反対側に配置されて前記燃料電池スタックに取り付けられ前記燃料電池スタックに供給され該燃料電池スタックを通過した空気が排出される空気を導く排気ダクトと、
前記燃料電池スタックから排出される空気の流れ方向下流側で前記排気ダクトに取り付けられ前記吸気ダクトに空気を取り入れるファンと、
前記吸気ダクトが前記車体に結合される部分と重なるとともにフィルタ面が空気の流れ方向に対向し且つ鉛直方向になるように前記吸気ダクト内に配置され前記吸気ダクトを介して前記車体に剛体結合されて主に空気と水とを分離する水フィルタと、
前記吸気ダクト内に前記水フィルタよりも所定距離だけ空気の流れ方向下流側の前記燃料電池スタック側に設けられて空気中の塵埃及び化学物質を除去する塵埃・化学物質フィルタと、を備え
ていることを特徴とする燃料電池車両の吸気装置。
【請求項2】
前記水フィルタはフィルタ材が撥水加工とプリーツ加工とを施した不織布からなるものであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両の吸気装置。
【請求項3】
前記塵埃・化学物質フィルタはフィルタ材がプリーツ加工された一対の不織布と、これら一対の不織布に挟まれた活性炭とによって構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池車両の吸気装置。
【請求項4】
前記吸気ダクトの前記水フィルタより空気の流れ方向上流側の底面に前記水フィルタで補足した水を吸気ダクトの外部に導く傾斜部を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の燃料電池車両の吸気装置。
【請求項5】
前記燃料電池スタックは前記空気によって冷却される空冷式燃料電池スタックであることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の燃料電池車両の吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を搭載した燃料電池車両の吸気装置に関するものであり、特に燃料電池を空気で冷却する空冷式燃料電池を搭載した車両に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、例えば水素と酸素(空気中の酸素)の化学反応エネルギーを直接電気エネルギーに変換するものである。燃料電池車両では、このようして得られた電気エネルギーで例えばモータを駆動し、車両の駆動力とする。このような燃料電池車両としては、例えば下記特許文献1に記載されるものがある。この燃料電池車両では、2以上のセルを備えた燃料電池スタックの外面に空気極を設け、車両前方の吸気ダクトから燃料電池スタックに空気を供給可能とし、車両後方に延びる排気ダクトから燃料電池スタックの排気を排出可能とし、送風機によって吸気ダクトからの吸気を燃料電池スタックの空気極に接触させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−37991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の四輪車両用燃料電池としては、燃料電池スタックを冷却水で冷却する水冷式燃料電池が一般的である。一方、燃料電池スタックを空気で冷却する空冷式燃料電池を用いることも知られている。空冷式燃料電池を用いる燃料電池車両では、反応に必要な酸素を含む空気に加えて燃料電池スタックを冷却するための空気も燃料電池スタックに供給しなければならない。このような大容量の空気を取り込むために燃料電池スタックの車両前方に大きな開口の吸気ダクトを設けた場合、降雨などによる水が吸入空気と共に燃料電池スタックに供給される。水が空気流路を閉塞すると、燃料電池のオーバーヒートに繋がる虞がある。また、燃料電池スタックの空気吸入部には、通常、塵埃、及び大気中の化学物質を除去するためのフィルタが設けられている。このフィルタが水を含む吸気によって目詰まりを起こし、吸気抵抗が増大し、燃料電池スタック反応及び冷却のための空気を十分吸入できなくなる虞がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、燃料電池が水分を含んだ空気を吸入することによって生じる種々の問題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は
、発電反応に使用する空気を燃料電池スタックに供給する燃料電池車両の吸気装置において、
燃料電池スタックに供給される空気の流れ方向の上流側に配置されて燃料電池スタックに取り付けられるとともに車体に結合され燃料電池スタックに空気を導く吸気ダクトと、燃料電池スタックを挟んで吸気ダクトと反対側に配置されて燃料電池スタックに取り付けられ燃料電池スタックに供給され該燃料電池スタックを通過した空気が排出される空気を導く排気ダクトと、燃料電池スタックから排出される空気の流れ方向下流側で排気ダクトに取り付けられ吸気ダクトに空気を取り入れるファンと、吸気ダクトが車体に結合される部分と重なるとともにフィルタ面が空気の流れ方向に対向し且つ鉛直方向になるように吸気ダクト内に配置され吸気ダクトを介して車体に剛体結合されて主に空気と水とを分離する水フィルタと、吸気ダクト内に水フィルタよりも所定距離だけ空気の流れ方向下流側の燃料電池スタック側に設けられて空気中の塵埃及び化学物質を除去する塵埃・化学物質フィルタと、を備え
ていることを特徴とする燃料電池車両の吸気装置である。
【0007】
また、
水フィルタはフィルタ材が撥水加工とプリーツ加工とを施した不織布からなるものであることを特徴とする燃料電池車両の吸気装置である。
また、前記
塵埃・化学物質フィルタはフィルタ材がプリーツ加工された一対の不織布と、これら一対の不織布に挟まれた活性炭とによって構成されることを特徴とする燃料電池車両の吸気装置である。
【0008】
また、前記吸気ダクトの前記
水フィルタより空気の流れ方向上流側の底面に前記
水フィルタで補足した水を吸気ダクトの外部に導く傾斜部を設けたことを特徴とする燃料電池車両の吸気装置。
【0009】
また、前記燃料電池スタックは前記空気によって冷却される空冷式燃料電池スタックであることを特徴とする燃料電池車両の吸気装置である。
【発明の効果】
【0010】
而して、発明の一態様によれば、吸気ダクトを通して発電反応に使用する空気を燃料電池スタックに供給する。吸気ダクト内の燃料電池スタック側に設けられた
塵埃・化学物質フィルタで空気中の塵埃及び化学物質を除去する。また、吸気ダクト内の
塵埃・化学物質フィルタよりも所定距離だけ空気の流れ方向上流側に設けられた
水フィルタで主として空気と水を分離する。このため、吸入空気中の水は
塵埃・化学物質フィルタ及び燃料電池スタック側に到達せず、燃料電池が水分を含んだ空気を吸入することによって生じる種々の問題を解決することができる。また、
塵埃・化学物質フィルタと
水フィルタを個別に設けたため、
塵埃・化学物質フィルタは塵埃及び化学物質の分離性に最適なフィルタ材で構成し、
水フィルタは水の分離性に最適なフィルタ材で構成することができる。その結果、水の分離性と、塵埃及び化学物質の分離性の双方を向上することができる。また、
水フィルタを
塵埃・化学物質フィルタよりも所定距離だけ空気の流れ方向上流側に設けたことにより、
水フィルタで捕捉された水が
塵埃・化学物質フィルタ側に流入するのを抑制することができる。また、
塵埃・化学物質フィルタによって吸気ダクト内の空気の流れを整流することができ、電両電池スタックに空気を均等に流し、発電性能を向上することができる。
【0011】
また、
水フィルタのフィルタ材を撥水加工とプリーツ加工とを施した不織布で構成したことにより、
水フィルタの通気面積を拡大し、燃料電池スタックでの発電性能を向上することができる。
また、
塵埃・化学物質フィルタのフィルタ材をプリーツ加工された一対の不織布と、これら一対の不織布に挟まれた活性炭とによって構成したことにより、
塵埃・化学物質フィルタの通気面積を拡大する一方、活性炭により化学物質を分離できる。このため、燃料電池スタックでの発電性能を向上することができる。
【0012】
また、吸気ダクトを介して
水フィルタを車体に剛体結合したことにより、車両走行時の振動を利用して
水フィルタで捕捉した水を振るい落とすことができる。
また、吸気ダクトの
水フィルタより空気の流れ方向上流側の底面に
水フィルタで捕捉した水を吸気ダクトの外部に導く傾斜部を設けたことにより、
水フィルタで捕捉された水が
塵埃・化学物質フィルタ側に流れるのを抑制することができる。
【0013】
また、燃料電池スタックは空気によって冷却される空冷式燃料電池スタックである場合に、燃料電池スタックに大容量の空気を取り入れる場合であっても、
水フィルタによって水を捕捉することにより、燃料電池が水分を含んだ空気を吸入することによって生じる種々の問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の燃料電池車両の吸気装置の一実施形態を示す燃料電池車両の平面図である。
【
図3】
図1の燃料電池システムのブロック図である。
【
図4】
図1の燃料電池スタック及び吸気装置を車両右斜め前方からみた斜視図である。
【
図5】
図1の燃料電池スタック及び吸気装置を車両左斜め後方からみた斜視図である。
【
図6】
図1の燃料電池スタック及び吸気装置の縦断面図である。
【
図7】第2フィルタのフィルタ材の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の燃料電池車両の吸気装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の吸気装置が適用された燃料電池車両の平面図である。この燃料電池車両1では、駆動輪となる前輪41の車軸42の近傍に、駆動用のモータ43、変速機のギヤボックス44が配置されている。車両の前方部には燃料電池スタック11が搭載されている。また、車両の後方部、後輪45の車軸46の近傍には水素タンク23が配置されている。本実施形態は燃料電池スタック11を空気で冷却する空冷式燃料電池スタックを採用している。燃料電池スタック11の車両前方には吸気ダクト2が取付けられ、燃料電池スタック11の車両後方には排気ダクト5が取付けられている。排気ダクト5の車両後方端部にはブロワなどの低圧ファン6が設けられている。
図6に示すように、吸気ダクト2内の燃料電池スタック11側には、空気中の塵埃及び化学物質を除去する塵埃・化学物質フィルタ3が設けられている。また、吸気ダクト2内の
塵埃・化学物質フィル
タ3よりも所定距離だけ空気の流れ方向上流側、つまり前方には、主として空気と水を分離する水フィル
タ4が設けられている。
【0016】
本実施形態の燃料電池車両の吸気装置の説明の前に、本実施形態で採用されている水素燃料電池について説明する。燃料電池スタック11は、セルと呼ばれる最小構成単位を多数積層して構成される。
図2にセルの一例を示す。通常の固体高分子型燃料電池では、各セルは、水素が供給されるアノード極12、酸素(空気)が供給されるカソード極13、アノード極12及びカソード極13の中間に配置されて水素イオンを選択的に透過する電解質膜16、電解質膜16の両外側に配置されて反応を活性化する触媒層15、各触媒層15とアノード極12又はカソード極13との間に挟まれた拡散層14を備えている。
【0017】
アノード極12に供給された水素分子は、アノード極12の電解質表面にある触媒層15において活性な水素原子となり、更に水素イオンになって電子を放出する。
図2に“1”で示されるこの反応は、以下の1式で表れる。
H
2→2H
++2e
- ………(1)
1式に従って発生した水素イオンは電解質膜16に含まれる水分を伴ってアノード極12側からカソード極13側へ電解質膜16中を移動し、また、電子は外部回路を通じてカソード極13に移動する。一方のカソード極13に供給された空気中の酸素分子は、触媒層15において外部回路から供給された電子を受け取って酸素イオンとなり、電解質膜16を移動してきた水素イオンと結合して水となる。
図2に“2”で示されるこの反応は、以下の2式で表れる。また、このようにして生成された水分の一部は濃度拡散によりカソード極13からアノード極12へと移動する。なお、アノード極12からの排気をアノード排気、カソード極13からの排気をカソード排気とも記す。
1/2O
2+2H
++2e
-→H
2O ………(2)
【0018】
このような化学反応において、燃料電池内部では電解質膜16や電極の電気抵抗に起因する抵抗過電圧、水素と酸素が電気化学反応を起こすための活性化過電圧、拡散層14中を水素や酸素が移動するための拡散過電圧などの様々な損失が発生し、それにより加熱した燃料電池スタック11を冷却する必要がある。
図3は、本実施形態の燃料電池システムのブロック図である。本実施形態の燃料電池システムは空冷式燃料電池システムである。燃料電池スタック11は、前述したフィルタ3、4を介してファン6により空気の供給を受ける。供給された空気は、燃料電池スタック11における発電反応に供するのみでなく、燃料電池スタック11を冷却する役割も担う。なお、燃料電池スタック11には、ファン6による空気の供給だけでなく、走行風によっても空気を供給できるようにしてもよい。一方、水素タンク23内の水素は減圧弁24によって降圧した後に燃料電池スタック11に供給される。そして、発電に使用されなかった水素はアノード排気として燃料電池スタック11から排出される。アノード排気(水素供給側の排気)はパージ弁25を介してカソード排気(空気供給側の排気)に合流される。アノード排気をパージする際には排気水素ガスをカソード排気(空気)によって可燃下限濃度以下に希釈して外部排気する。
【0019】
図4は、本実施形態の燃料電池スタック11及び吸気装置を車両右斜め前方からみた斜視図、
図5は、本実施形態の燃料電池スタック11及び吸気装置を車両左斜め後方からみた斜視図、
図6は、本実施形態の燃料電池スタック11及び吸気装置の縦断面図である。本実施形態では、前述のように、吸気ダクト2内の燃料電池スタック11側に塵埃・化学物質フィルタ3が設け、吸気ダクト2内の塵埃・化学物質フィルタ3よりも所定距離だけ前方に水フィルタ4が設けられている。
【0020】
塵埃・化学物質フィルタ3のフィルタ材は、
図7に示すように、プリーツ加工した一対の不織布7と、これら一対の不織布7に挟まれた活性炭8とを備えて構成される。主として、不織布7は除塵、活性炭8は化学物質の除去を目的としている。また、本実施形態では、塵埃・化学物質フィルタ3は、燃料電池スタック11の吸気部に直接搭載するように設けられている。これにより、フィルタ開口面積を確保し、且つ燃料電池スタック11への吸気の整流効果を発揮する。これにより、燃料電池システムの小型化に寄与すると共に、燃料電池スタック11内の各セルへの空気供給が均等となり、セル間の温度のバラツキを抑制することができる。
【0021】
水フィルタ4はフィルタ面が車両前方方向に対向し且つ鉛直方向になるように車体9に剛体結合されている。水フィルタ4のフィルタ材は、撥水加工した不織布7からなり、通気面積確保のためにプリーツ加工が施されている。撥水加工には、周知のように、シリコン、樹脂ワックス、フッ素系化合物を繊維に結合するものや、ポリウレタン系樹脂をコーティングするものが挙げられる。この水フィルタ4は、空気中の空気と水の分離を主目的とするが、大粒径の異物も除去し、水気のない空気を塵埃・化学物質フィルタ3及び燃料電池スタック11に供給する。本実施形態では、水フィルタ4はフィルタ面が鉛直方向になっているので、水フィルタ4で捕捉された水はフィルタ材の表面を伝って流れ落ちる。
【0022】
また、水フィルタ4は車体9に剛体結合されているため、水フィルタ4で捕捉された水は車体9の振動によって振るい落とされる。また、本実施形態では、吸気ダクト2の水フィルタ4より空気の流れ方向上流側、つまり前方の底面に水フィルタ4で捕捉した水を吸気ダクト2の外部に導く傾斜部10が設けられている。この傾斜部10があるが故に、水フィルタ4の鉛直なフィルタ面に沿って流れ落ちた水、或いは車体9の振動によって振るい落とされた水が車両前方に流れ落ち、吸気ダクト2内に流れ込むことがない。
【0023】
このように本実施形態の燃料電池車両の吸気装置では、吸気ダクト2を通して発電反応に使用する空気を燃料電池スタック11に供給する。吸気ダクト2内の燃料電池スタック11側に設けられた塵埃・科学物質フィルタ(第1フィルタ)3で空気中の塵埃及び化学物質を除去する。また、吸気ダクト2内の塵埃・化学物質フィルタ3よりも所定距離だけ空気の流れ方向上流側に設けられた水フィルタ(第2フィルタ)4で主として空気と水を分離する。このため、吸入空気中の水は塵埃・化学物質フィルタ3及び燃料電池スタック11側に到達せず、燃料電池が水分を含んだ空気を吸入することによって生じる種々の問題を解決することができる。また、塵埃・化学物質フィルタ3と水フィルタ4を個別に設けたため、塵埃・化学物質フィルタ3は塵埃及び化学物質の分離性に最適なフィルタ材で構成し、水フィルタ4は水の分離性に最適なフィルタ材で構成することができる。その結果、水の分離性と、塵埃及び化学物質の分離性の双方を向上することができる。また、水フィルタ4を塵埃・化学物質フィルタ3よりも所定距離だけ空気の流れ方向上流側に設けたことにより、水フィルタ4で捕捉された水が塵埃・化学物質フィルタ3側に流入するのを抑制することができる。また、塵埃・化学物質フィルタ3によって吸気ダクト2内の空気の流れを整流することができ、電両電池スタックに空気を均等に流し、発電性能を向上することができる。
【0024】
また、水フィルタ4のフィルタ材を撥水加工とプリーツ加工とを施した不織布で構成したことにより、水フィルタ4の通気面積を拡大し、燃料電池スタック11での発電性能を向上することができる。
また、塵埃・化学物質フィルタ3のフィルタ材をプリーツ加工された一対の不織布7と、これら一対の不織布7に挟まれた活性炭8とによって構成したことにより、塵埃・化学物質フィルタ3の通気面積を拡大する一方、活性炭8により化学物質を分離できる。このため、燃料電池スタック11での発電性能を向上することができる。
【0025】
また、吸気ダクト2を介して水フィルタ4を車体9に剛体結合したことにより、車両走行時の振動を利用して水フィルタ4で捕捉した水を振るい落とすことができる。
また、吸気ダクト2の水フィルタ4より空気の流れ方向上流側の底面に水フィルタ4で捕捉した水を吸気ダクト2の外部に導く傾斜部10を設けたことにより、水フィルタ4で捕捉された水が塵埃・化学物質フィルタ3側に流れるのを抑制することができる。
【0026】
また、燃料電池スタック11は空気によって冷却される空冷式燃料電池スタックである場合のように、燃料電池スタック11に大容量の空気を取り入れる場合であっても、水フィルタ4によって水を捕捉することにより、燃料電池が水分を含んだ空気を吸入することによって生じる種々の問題を回避することができる。
なお、本発明の燃料電池車両の吸気装置は、燃料電池車両全般に適用可能であるが、燃料電池スタックの反応のみならず、その冷却のために大容量の空気供給を必要とし、故に吸排気系の通気抵抗低減が求められる空冷式燃料電池スタックに特に有効である。
【符号の説明】
【0027】
1は燃料電池車両
2は吸気ダクト
3は塵埃・化学物質フィルタ
4は水フィルタ
5は排気ダクト
6はファン
7は不織布
8は活性炭
9は車体
10は傾斜部
11は燃料電池スタック
12はアノード極
13はカソード極
14は拡散層
15は触媒層
16は電解質膜
23は水素タンク
24は減圧弁
25はパージ弁
41は前輪
42は車軸
43はモータ
44はギヤボックス
45は後輪
46は車軸