(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5812237
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】水槽内沈殿物の排除装置
(51)【国際特許分類】
B01D 21/24 20060101AFI20151022BHJP
B01D 21/02 20060101ALI20151022BHJP
B01D 21/30 20060101ALI20151022BHJP
【FI】
B01D21/24 B
B01D21/02 J
B01D21/02 N
B01D21/30 G
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-229054(P2010-229054)
(22)【出願日】2010年9月21日
(65)【公開番号】特開2012-66233(P2012-66233A)
(43)【公開日】2012年4月5日
【審査請求日】2013年9月9日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】000118970
【氏名又は名称】井上 虎男
(72)【発明者】
【氏名】井上 虎男
【審査官】
金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭53−031371(JP,U)
【文献】
特開昭53−105059(JP,A)
【文献】
特開昭61−050610(JP,A)
【文献】
実開昭58−100004(JP,U)
【文献】
特開2011−110504(JP,A)
【文献】
特開昭57−084710(JP,A)
【文献】
特開昭49−103259(JP,A)
【文献】
米国特許第2973866(US,A)
【文献】
米国特許第3121680(US,A)
【文献】
仏国特許発明第1015977(FR,A)
【文献】
独国特許出願公開第19730246(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第4407343(DE,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第0927579(EP,A2)
【文献】
西独国特許出願公開第1642826(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00−21/34
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横流れ方式の沈殿分離水槽において、傾斜分離板下方の沈殿物貯留部内を、通水方向に直交して区画する複数の阻流板の最深部に、該阻流板を貫通する形で、上半を開放したケースとスクリューで構成するスクリューコンベヤーを、被処理水の通水方向に逆行する方向に沈殿物を移送するように配設し、スクリュー送出側端部の一定長さを筒状の加圧ケース内に挿入して加圧部を構成すると共に、該加圧ケース端には上方向に伸延する排泥管を連接し、上端を分離水槽水位より高い位置で開放するようにした、沈殿物の排除装置。
【請求項2】
スクリューコンベヤーのスクリュー先端に、軸流ポンプの羽根車様の加圧羽根車を装着した請求項1に記載する沈殿物の排除装置。
【請求項3】
装置の停止前、或いは、排泥管詰りを防止するために、一時的にスクリュー回転数を増大させるようにした請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載する沈殿物の排除装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般水槽や水処理設備の沈殿分離槽内の沈殿物を槽外に排除する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水槽内の沈殿物を排除、或いは回収するためには、チェーンやロープに掻き板を取付け一定方向に掻き寄せ、或いは、上半を開放したケースとスクリューで構成するスクリューコンベヤーで一定方向に移送集積した後、遠心ポンプや容積形ポンプで吸引、或いは垂直や傾斜して配設したスクリューコンベヤーを用いて水槽外に排除する等の方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2001−347103
【特許文献2】 特開2003−334404
【特許文献3】 特開2005−342568
【特許文献4】 特開2008−12528
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
集積した沈殿物汚泥を遠心ポンプや容積形ポンプを使用して水槽外に排出する方法にあっては、集積汚泥量とポンプ排出量を終始一致させることは、検出技術が発達した今日においても非常に困難なことであり、沈殿物を沈殿状態以下の水分量で排除回収することは至難なことであり、結局、余分な水分も吸入させて排除しているのが現状である。
【0005】
垂直方向、或いは、傾斜したスクリューコンベヤーを用いる方法にあっても、凝集剤を使用して沈降分離するような軽質、微細粒子の沈殿物の場合においては、沈殿状態水分量のままでの排除は困難であり、スクリュー詰りも生じやすい。
【0006】
沈殿物汚泥の水分量を減らすために、水平移送用スクリューコンベヤーの先端部に加圧部とフイルター機構を連接して、絞り機能を備えたものにあっては、取扱調整が煩雑であるばかりでなく、特に微細粒子を取扱う設備ではフイルタートラブルが多く好ましくない。
【0007】
また、重力式沈殿分離法の一種である横流れ方式の沈殿分離装置は、分離水槽内に、通水方向に対して平行で、通水方向に直角な平面内では大きく傾斜させた分離板を層状に多数配列して沈殿分離を早めるようにした装置であり、傾斜分離板下方には沈殿物貯留部を設けるのであるが、傾斜分離板を密集させた分離板間の被処理液の通水流路よりも、抵抗の少ない被処理水の流水路となるために、これを防止すべく通水方向に直角な粗流板を複数配列して区画する。
【0008】
しかし、連続操業のできる装置とするためには、分離板長さ全範囲にわたる沈殿物の掻き寄せ等の移送設備が必要であり、該移送設備には、やむなく生じる通水方向の貫通したスペースがあり、流水抵抗も比較的少なくなりやすいために充分な沈降分離がなされないばかりでなく、傾斜分離板から沈降する分離汚泥を再混入させる流路(以下“くぐり水路”と呼ぶ)となり、傾斜分離板終端近くに再流入(以下“くぐり水”と呼ぶ)して処理水に混合流出し、分離性能を低下させる問題が実験結果から判明している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
沈殿分離水槽等の水槽底にほぼ水平に配設した移送用のスクリューコンベヤーは、ケースの上半が開放された長さ範囲では、水や沈殿物を移送する能力はあるけれども圧力を発生させることはできないが、スクリュー外周が全周囲われた状態では幾分かの圧力を発生させることができ、スクリューの断面積を漸減させることや、スクリューピッチを漸減させること等で更に加圧力を得ることができることは、スクリュー式ポンプやスクリュー式脱水濃縮機等の技術から容易に理解できるところである。
【0010】
本発明では、水槽底にほぼ水平に配設したスクリューコンベヤーの上半が開放された範囲で水槽内沈殿物を先端側に移送集積し、スクリュー先端の一定長さ範囲を少ない隙間を設けた加圧ケースで囲い加圧力を得る構成にして、該加圧ケース端にはポンプやスクリューコンベヤー等の加圧、または、掻き揚げ手段を設けない排泥管を上方向に伸延させて連接し、上端を水槽内水位よりも高い位置で水槽外に開放する。
排泥管内水位は無加圧の状態では水槽内水位と同等であり、スクリューコンベヤーの稼動により幾分上昇する。
排泥管内に集積した沈殿物を水槽外に排出するためには、“排泥管水頭×排泥管内液の密度−水槽の水頭×水槽内液の密度+排泥管の流動抵抗”以上の加圧力が必要であるが、液頭差が主体の比較的小さな加圧力で沈殿物の排出を行うことができる。
【0011】
スクリューコンベヤーにより移送され、排泥管内に集積される沈殿物汚泥は、スクリューの加圧力と沈殿物汚泥の自重によって圧蜜される。
圧蜜とともに沈殿物汚泥は粘度が上り、スクリューとケース間隙間の漏れ量減少の影響もあって加圧力は更に上昇しやすくなり、排泥管上端より濃縮された沈殿物汚泥が排出される。
【0012】
更に、水分量の少ない沈殿物汚泥を得るためには、ケース内のスクリュー先端に軸流ポンプの羽根車様の加圧羽根車を装着して、沈殿物の押し込み効果を高める。
【0013】
横流れ方式の沈殿分離水槽においても前述と同様に、加圧部を備えたスクリューコンベヤーを分離水槽底に配設すると共に排泥管を連接し、沈殿物貯留部を区画する複数の阻流板下方端にはスクリュー外周に近接させた孔を開窄してスクリューを貫通させ、スクリューの移送方向を分離水槽の被処理水の通水方向と逆行する方向とすることにより、くぐり水に対向する水流を発生させてくぐり水を防止し、装置の分離精度の低下が防止できる。
【発明の効果】
【0014】
上述したように本発明装置は、加圧部を設けた水平方向の移送用スクリューコンベヤーのみで、垂直方向の揚送用ポンプやスクリューコンベヤー設備を用いる場合よりも濃縮された沈殿物を排除回収することができ、後段の運搬、脱水、乾燥、焼却等に与える省エネルギー効果、経済効果は大きい。
加えて、横流れ方式の沈殿分離装置においては、くぐり水を防止して装置の分離精度を向上できる効果は大きく、水処理分野装置のコンパクト化に大きく貢献できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施例装置の重力式沈殿分離水槽の側断面図。
【
図3】(イ)は
図1のB−B断面詳細図、(ロ)は
図1のA−A断面におけるスクリュー部詳細図。
【
図4】第2実施例装置の横流れ方式重力沈殿水槽の側断面図。
【
図5】(ハ)は
図4のC−C断面図、(ニ)はC−C断面におけるスクリュー部の詳細図。
【
図7】スクリュー先端に加圧羽根車を取付けた実施例の部分詳細断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を
図1〜
図8に基づいて説明する。
【実施例】
【0017】
本発明の第1実施例装置の重力式沈殿分離水槽である
図1〜
図3において、分離水槽1の流入樋2から流入した浮遊物を含む被処理水は分離エリアaで沈降分離され、流出樋3に流出する。
沈降する混入浮遊物は沈殿物貯留部bに沈殿し、上半を開放したスクリューコンベヤー11によって反駆動方向に移送され、筒状の加圧ケース5内を通り排泥管6のc部に吐出される。
排泥管6の上部は、上下方向に摺動可能にパッキング10で止水された上部排泥管7を備えて、上端を開放し、排泥管内における沈殿物自重での圧蜜と、水面より上方のd部分での脱水作用で濃縮された沈殿物汚泥が吐出され、シュート8から滑落排出する。
【0018】
スクリューコンベヤー11先端部の加圧ケース5内に内包されるスクリュー部分は、必要に応じてスクリューピッチを漸減させることや、スクリュー11と加圧ケース5の断面積を漸減させて加圧力の増加を図ることができる。
【0019】
上部排泥管7の上端開放位置は、沈殿物の性状に合せて、排出が可能な範囲でなるべく高く設定し、排出汚泥水分量の低減を計る。
【0020】
第2実施例の横流れ方式の重力沈殿水槽装置を
図4〜
図6で説明する。
本実施例の場合、排泥管6の上下方向調整は不要なものの例であり、原水投入管17から投入された被処理水は、分離水槽1内に配設した傾斜分離板21を通過する間に沈降分離され、処理水は流出樋3に流出し、分離汚泥は沈殿物貯留部bに沈降する。
沈殿物貯留部b内は被処理水のくぐり水を防止するために、通水方向に直交した複数の阻流板23によって区画し、最下部にはスクリューコンベヤー11の回動に支障のない大きさの孔を開窄し、スクリュー11を貫通させる。
【0021】
本実施例装置の阻流板23は、沈殿物貯留部bを完全区画して分離精度を維持したいのであるが、スクリュー11と阻流板23間の隙間、及び、スクリュー11のスクリュー自体の羽根ピッチ間の空隙からのくぐり水が生じるのであるが、スクリューコンベヤーの移送方向を被処理水の通水方向と逆方向とすることで、沈殿物の移送と共に、くぐり水と逆行する水流を発生させることによって、くぐり水を防止して装置の分離精度を維持する。
【0022】
図7及び
図8に示す実施例は、スクリュー11先端に3枚の羽根を持つ軸流ポンプの羽根車様の加圧羽根車31を装着し、ナット32で固定したものの実施態様を示す。
加圧羽根車31は、回転数の低い本実施例装置の場合、水力学的ポンプ作用よりも沈殿物汚泥を排泥管6内にヘラで押し込むような働きを期待するものであり、スクリュー11と別体に作ることによって、羽根枚数と羽根角度を自由に選べること、耐摩耗性の良い材質で製作できる利点がある。
【0023】
また、本発明装置の稼動停止時においては、排泥管6内に排除されない沈殿物汚泥が残る問題が発生するけれども、装置の稼動停止前に、一時的にスクリュー11の回転数を高くすることで、加圧羽根車31の水力学的加圧力を増大させ、軸流ポンプの羽根車が小水量ほど高い(締切り点で250〜300%)加圧力を示す特性もあり、排泥管内の沈殿物汚泥を排除することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の水槽内沈殿物の排除装置は、自然な沈殿状態よりも濃縮した沈殿物汚泥を水槽外に排出することができ、加えて、従来必要とされていた沈殿物を槽外に排出するためのポンプや、垂直、或いは傾斜スクリューコンベヤーを不要にするものであり、水処理装置の沈殿水槽を始めとし、沈殿物の発生するあらゆる水槽や、河川、湖沼の汚泥の堆積しやすい場所にも利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 分離水槽
2 流入樋
3 流出樋
4 スクリューコンベヤーのケース
5 加圧ケース
6 排泥管
7 上部排泥管
8 排泥用シュート
9 処理水接続口
10 パッキング
11 スクリューコンベヤーのスクリュー
12 軸受ケース
13 ベアリング
14 シール
15 スクリュー駆動用のモーター
16 チェーン
17 原水投入管
21 傾斜分離板
22 分離板押え
23 阻流板
31 加圧羽根車
32 加圧羽根車31の締付ナット
a 分離エリア
b 沈殿物貯留部
c 排泥管始端部
d 排泥管終端部
e 流入エリア
f 流出エリア