【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、通常のDME地上装置は、自己診断を行うために、固定した信号レベルの診断用質問信号を監視制御装置で繰り返し発生させて受信機へ入力し、入力した診断用質問信号に対する応答信号の送信パルスをモニタしながらDME地上装置の動作状況を常時監視している。この場合、診断用質問信号の信号レベル以上のCW妨害波が外部から混入すると、受信機が正常な信号レベルの診断用質問信号を受信できなくなり、その結果、応答信号の送信パルスが発生しなくなるため、DME地上装置は運用を停止(シャットダウン)してしまう。
【0008】
このことについて、
図5、
図6、及び
図7を用いてさらに詳しく説明する。
図5は、従来のDME地上装置の一部構成を示すブロック図である。
図5に示すように、DME地上装置30は、自己診断を行うために、監視制御装置37内の質問信号発生部38にて固定レベルの診断用質問信号S38を発生させる。そして、この診断用質問信号S38は、方向性結合器33を通して、デュプレクサ34により受信機35へ導かれる。
【0009】
このとき、診断用質問信号S38が受信機35により正常な信号レベルの質問信号であると判定された場合は、DME地上装置30のシステムに起因するシステム遅延時間の後に、送信機36によって応答信号の送信パルスS36を発生させる。そして、この送信パルスS36は、デュプレクサ34の方向選択により方向性結合器33を通過し、さらに、方向性結合器32を経由して、空中線31からDME機上装置(図示せず)へ放射される。このとき、送信パルスS36の一部は、方向性結合器32から監視制御装置37内の送信パルスモニタ部40へ入力されて常時監視される。
【0010】
図6は、
図5に示すDME地上装置におけるCW妨害波がない場合の各部の動作波形図であり、横軸に時間の流れを示し、縦軸に信号レベルを示している。したがって、
図6の動作波形図を用いて、CW妨害波がない場合のDME地上装置30の動作について説明する。
【0011】
先ず、
図6(a)に示すような診断用質問信号S38が、監視制御装置37の質問信号発生部38において発生する。そして、質問信号発生部38から出力された診断用質問信号S38は、方向性結合器33によって、空中線31から入力された距離を測定するための測定用質問信号と時間軸上で合併される。すなわち、
図6(b)に示すように、診断用質問信号S38と測定用質問信号は受信信号として受信機35へ入力される。そして、受信機35によって正常な信号レベルの診断用質問信号S38であると判定されると、この診断用質問信号S38は、
図6(c)に示すように、受信機35から送信機36へ受信器出力信号として出力される。
【0012】
さらに、DME地上装置30のシステム構成に起因するシステム遅延時間Tの後、
図6(d)に示すように、送信機3によって応答信号の送信パルスS36を発生させる。そして、この送信パルスS36は、デュプレクサ34、方向性結合器33、及び方向性結合器32を経由して空中線31からDME機上装置(図示せず)へ放射される。さらに、その送信パルスS36の一部は監視制御装置37内の送信パルスモニタ部40へ入力される。そして、送信パルスモニタ部10にて、診断用質問信号S38と送信パルスS36との時間間隔を計測し、システム遅延時間Tの後に正常に送信パルスS36が存在するときは、診断用質問信号S38の信号レベルは正常であると判断する。
【0013】
次に、CW妨害波が存在する場合のDME地上装置30の動作について説明する。
図7は、
図5に示すDME地上装置におけるCW妨害波が存在する場合の各部の動作波形図であり、横軸に時間の流れを示し、縦軸に信号レベルを示している。したがって、
図7の動作波形図を用いて、CW妨害波が存在する場合のDME地上装置30の動作について説明する。
【0014】
図7(a)に示すように、監視制御装置37の質問信号発生部38において診断用質問信号S38が発生すると、質問信号発生部38から出力された診断用質問信号S38は、方向性結合器33によって、空中線1から入力された測定用質問信号と時間軸上で合併される。すなわち、
図7(b)に示すように、診断用質問信号S38と測定用質問信号は受信信号として受信機35へ入力される。
【0015】
このとき、
図7(b)に示すように、診断用質問信号S38の信号レベルに比べて、空中線31から混入したCW妨害波の信号レベルの方が高いため、受信機35は、この診断用質問信号S38を正常な信号レベルの質問信号として処理することができない。そのため、
図7(c)に示すように、受信機35は診断用質問信号S38に基づく受信器出力信号を出力することができない。したがって、送信機36は、受信器35から受信器出力信号を受信することができないので、
図7(d)に示すように、システム遅延時間Tの後に、送信機36から応答信号の送信パルスS36が出力されない。すなわち、診断用質問信号S38の信号レベルを基準として、システム遅延時間Tの後に送信パルスS36が存在しないため、監視制御装置37は、DME地上装置30が通信異常であると判断する。このようにして通信異常の状態が所定時間以上に亘って継続すると、DME地上装置30は運用を停止してしまう。したがって、DME地上装置30は航空機に対して距離測定サービスを提供することができない。
【0016】
なお、前述の特許文献1の技術は、DME地上装置の運用上許容できる低レベルのCW妨害波が持続しても、そのCW妨害波より強い測定用質問信号を正常に検出して応答信号を送信できるようにしているが、運用上許容できない強度の妨害波が所定時間以上に亘って発生した場合はDME地上装置の運用が停止してしまう。したがって、この場合は、DME地上装置は航空機に対して距離測定サービスを提供することができない。
【0017】
また、前述の特許文献2の技術は、所定レベルのCW妨害波のCW信号を除去することはできるが、測定用質問信号に対してCW妨害波が強い場合やCW妨害波の変動が大きい場合は、CW妨害波のCW信号を打ち消すことが困難となる。したがって、DME地上装置はCW妨害波を除去した測定用質問信号のみを入力することができなくなる。その結果、DME地上装置からDME機上装置へ応答信号を送信することができないために、DME地上装置とDME機上装置との間で距離の測定データを交信することができない。
【0018】
さらに、前述の特許文献3の技術は、CW妨害波の雑音レベルに応じて測定用質問信号の利得を制御(増幅)することにより、CW妨害波の雑音レベルより高い信号レベルの測定用質問信号を受信するようにしている。しかしながら、この技術は、診断用質問信号によって自己診断しながら、CW妨害波の雑音レベルより高い診断用質問信号を生成してDME地上装置の運用停止を防止するものではない。すなわち、この技術では、DME機上装置から刻々と到来する測定用質問信号がCW妨害波の雑音レベルより高くなるように測定用質問信号の利得を制御している。そのため、DME地上装置に到来してくる大小様々な測定用質問信号を、その都度、CW妨害波の雑音レベルと比較しながら、測定用質問信号の信号レベルがCW妨害波の雑音レベルより常に高くなるように利得を制御しなければならない。したがって、測定用質問信号の利得を制御するための制御系の回路構成が複雑になるためDME地上装置がコストアップしてしまう。
【0019】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、所定の信号レベル以上のCW妨害波が入力されても、正常な応答信号の送信パルスを発生させることによって運用停止に至ることのないようなDME地上装置、及び航空機に対して距離情報を送信するためのDME地上装置による距離情報送信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、この発明の第1の構成は、地上に設置され、航空機と地上との距離を測定するための距離測定情報を前記航空機へ提供するDME地上装置に係り、当該装置の運用継続/停止について自己診断を行うための診断用質問信号を発生させる質問信号発生手段と、前記航空機から到来する距離測定のための測定用質問信号、前記質問信号発生手段が発生させた前記診断用質問信号、及び当該装置に向けられたCW妨害波を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記測定用質問信号や前記診断用質問信号に対応する応答信号を発生させ、その応答信号を前記航空機
及び監視手段へ送信する送信手段と、前記受信手段に入力され受信された前記CW妨害波の信号レベルに応じて、前記質問信号発生手段が発生させた診断用質問信号の信号レベルを制御する制御手段と、前記送信手段から空中線を介して前記航空機へ送信される応答信号を分岐抽出してモニタする
前記監視手段とを備え、前記受信手段は、自己に入力され受信された前記CW妨害波の信号レベルをリアルタイムで前記制御手段へ送信し、前記制御手段は、前記航空機から到来する前記測定用質問信号の信号レベルが前記CW妨害波の信号レベルよりも高い状態にあるため、前記受信手段が前記測定用質問信号を正常に受信できているときでも、前記質問信号発生手段が発生させた前記診断用質問信号の信号レベルが、前記受信手段からリアルタイムで受信した前記CW妨害波の信号レベルよりも低ければ、前記診断用質問信号の信号レベルが、前記CW妨害波の信号レベルよりも高くなるように増幅作用を行い、かつ、前記送信手段は、前記制御手段で増幅された前記診断用質問信号の信号レベルが前記CW妨害波の信号レベルより高いときに、前記航空機及び前記監視手段へ前記応答信号を送信することを特徴としている。
【0021】
また、この発明の第2の構成は、地上に設置され、航空機と地上との距離を測定するための距離測定情報を前記航空機へ提供するDME地上装置が、前記航空機に対して距離情報を送信するためのDME地上装置による距離情報送信方法に係り、当該DME地上装置の運用継続/停止について自己診断を行うための診断用質問信号を発生させる質問信号発生ステップと、前記航空機から到来する距離測定のための測定用質問信号、前記質問信号発生ステップで発生させた前記診断用質問信号、及び当該DME地上装置に向けられたCW妨害波を受信する受信ステップと、前記受信ステップで受信した前記測定用質問信号や前記診断用質問信号に対応する応答信号を発生させ、その応答信号を前記航空機
及び監視ステップへ送信する送信ステップと、前記受信ステップの過程で入力され受信されたCW妨害波の信号レベルに応じて、前記質問信号発生ステップで発生させた診断用質問信号の信号レベルを制御する制御ステップと、空中線を介して前記航空機へ送信される前記応答信号を分岐抽出してモニタする
前記監視ステップとを含み、前記受信ステップでは、入力され受信された前記CW妨害波の信号レベルをリアルタイムで前記制御ステップのために送信し、前記制御ステップでは、前記航空機から到来する前記測定用質問信号の信号レベルが前記CW妨害波の信号レベルよりも高い状態にあるため、前記受信ステップで前記測定用質問信号を正常に受信できているときでも、前記質問信号発生ステップで発生させた前記診断用質問信号の信号レベルが、前記受信ステップでリアルタイムで受信した前記CW妨害波の信号レベルよりも低ければ、前記診断用質問信号の信号レベルが、前記CW妨害波の信号レベルよりも高くなるように増幅作用を行い、かつ、前記送信ステップでは、前記制御ステップで増幅された前記診断用質問信号の信号レベルが前記CW妨害波の信号レベルより高いときに、前記航空機及び前記監視ステップに向けて前記応答信号を送信することを特徴としている。