【実施例】
【0026】
以下、実施例等を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(白金水酸化物ポリマーを含む溶液の調製)
6.0mol/Lの硝酸溶液100mLに、白金濃度が14g/Lとなるように2.16gのヘキサヒドロキソ白金酸(田中貴金属製、白金65wt%)を溶解し、70℃で22時間保持し、白金水酸化物ポリマーを含む溶液を得た。
調製した溶液について、動的光散乱法(DLS:シスメックス製、ゼーターサイザー)による測定を行った結果、白金水酸化物ポリマーのサイズは40nmと見積もられた。
【0027】
(長期保管時の白金水酸化物ポリマーの安定性)
(実施例1)
白金濃度が14g/Lの白金水酸化物ポリマーを含む溶液86mLに対して、Zr濃度が3.1mol/Lのオキシ硝酸ジルコニウム溶液を10mL添加した後、6.0mol/Lの硝酸溶液を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が12g/L、かつ、Zr/Pt比(モル濃度比)が5.0の溶液を得た。
(実施例2)
白金濃度が14g/Lの白金水酸化物ポリマーを含む溶液86mLに対して、Zr濃度が3.1mol/Lのオキシ硝酸ジルコニウム溶液を3.4mL添加した後、6.0mol/Lの硝酸溶液を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が12g/L、かつ、Zr/Pt比(モル濃度比)が1.7の溶液を得た。
(実施例3)
白金濃度が14g/Lの白金水酸化物ポリマーを含む溶液86mLに対して、Zr濃度が3.1mol/Lのオキシ硝酸ジルコニウム溶液を2.0mL添加した後、6.0mol/Lの硝酸溶液を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が12g/L、かつ、Zr/Pt比(モル濃度比)が1.0の溶液を得た。
(
参考例)
白金濃度が14g/Lの白金水酸化物ポリマーを含む溶液86mLに対して、Zr濃度が3.1mol/Lのオキシ硝酸ジルコニウム溶液を1.0mL添加した後、6.0mol/Lの硝酸溶液を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が12g/L、かつ、Zr/Pt比(モル濃度比)が0.5の溶液を得た。
(比較例1)
白金濃度が14g/Lの白金水酸化物ポリマーを含む溶液86mLを、6.0mol/Lの硝酸溶液を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が12g/Lの溶液を得た。
【0028】
実施例1〜
3、参考例、及び比較例1で調製した溶液を室温で静置し、1週間ごとに、目視による濁り及び沈殿の有無と、DLS測定により白金水酸化物ポリマーの粒径を測定した。それぞれの結果を表1と
図1に示す。なお、DLSにて粒径が80nm以上と見積もられた溶液を「濁り有り」とし、静置した状態で明らかに沈殿が認められる溶液を「沈殿有り」とした。
【0029】
【表1】
【0030】
表1及び
図1より、実施例1〜3で調製した溶液は、室温で静置してから4週間経過した後においても、濁り及び沈殿は見られず、白金水酸化物ポリマーは調製直後のサイズを保持していた。
参考例で調製した溶液については、白金水酸化物ポリマーのサイズは抑制されているが、室温で静置してから3週間目に濁りが見られた。比較例1で調製した溶液については、白金水酸化物ポリマーのサイズは徐々に成長し、室温で静置してから2週間目に濁りが見られ、4週間目に沈殿が確認された。
以上のことから、Zr/Pt比が1.0以上となるようにZrイオンを添加することによって、白金水酸化物ポリマーを含む溶液を長期に保管することが可能であることが確認された。
【0031】
(白金水酸化物ポリマーを含む溶液の希釈時の安定性)
(実施例
4)
白金濃度が14g/Lの白金水酸化物ポリマーを含む溶液50mLに対して、Zr濃度が3.1mol/Lのオキシ硝酸ジルコニウム溶液を47mL添加した後、イオン交換水を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が7g/L、かつ、Zr/Pt比(モル濃度比)が40となる2倍希釈の溶液を得た。
(実施例
5)
実施例
4の溶液6.7mLを、イオン交換水を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が0.47g/L、かつ、Zr/Pt比(モル濃度比)が40となる30倍希釈の溶液を得た。
(実施例
6)
実施例
4の溶液1.0mLを、イオン交換水を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が0.07g/L、かつ、Zr/Pt比(モル濃度比)が40となる200倍希釈の溶液を得た。
(実施例
7)
白金濃度が14g/Lの白金水酸化物ポリマーを含む溶液50mLに対して、Zr濃度が3.1mol/Lのオキシ硝酸ジルコニウム溶液を5.8mL添加した後、イオン交換水を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が7g/L、かつ、Zr/Pt比(モル濃度比)が5.0となる2倍希釈の溶液を得た。
(実施例
8)
実施例
7の溶液6.7mLを、イオン交換水を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が0.47g/L、かつ、Zr/Pt比(モル濃度比)が5.0となる30倍希釈の溶液を得た。
(実施例
9)
実施例
7の溶液1.0mLを、イオン交換水を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が0.07g/L、かつ、Zr/Pt比(モル濃度比)が5.0となる200倍希釈の溶液を得た。
(実施例
10)
白金濃度が14g/Lの白金水酸化物ポリマーを含む溶液50mLに対して、Zr濃度が3.1mol/Lのオキシ硝酸ジルコニウム溶液を2.0mL添加した後、イオン交換水を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が7g/L、かつ、Zr/Pt比(モル濃度比)が1.7となる2倍希釈の溶液を得た。
(実施例
11)
実施例
10の溶液6.7mLを、イオン交換水を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が0.47g/L、かつ、Zr/Pt比(モル濃度比)が1.7となる30倍希釈の溶液を得た。
(実施例
12)
実施例
10の溶液1.0mLを、イオン交換水を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が0.07g/L、かつ、Zr/Pt比(モル濃度比)が1.7となる200倍希釈の溶液を得た。
(実施例
13)
白金濃度が14g/Lの白金水酸化物ポリマーを含む溶液50mLに対して、Zr濃度が3.1mol/Lのオキシ硝酸ジルコニウム溶液を1.2mL添加した後、イオン交換水を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が7g/L、かつ、Zr/Pt比(モル濃度比)が1.0となる2倍希釈の溶液を得た。
(実施例
14)
実施例
13の溶液6.7mLを、イオン交換水を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が0.47g/L、かつ、Zr/Pt比(モル濃度比)が1.0となる30倍希釈の溶液を得た。
(実施例
15)
実施例
13の溶液1.0mLを、イオン交換水を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が0.07g/L、かつ、Zr/Pt比(モル濃度比)が1.0となる200倍希釈の溶液を得た。
(比較例2)
白金濃度が14g/Lの白金水酸化物ポリマーを含む溶液50mLを、イオン交換水を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が7g/Lである2倍希釈の溶液を得た。
(比較例3)
白金濃度が14g/Lの白金水酸化物ポリマーを含む溶液3.3mLを、イオン交換水を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が0.47g/Lである30倍希釈の溶液を得た。
(比較例4)
白金濃度が14g/Lの白金水酸化物ポリマーを含む溶液0.5mLを、イオン交換水を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が0.05g/Lである200倍希釈の溶液を得た。
【0032】
実施例
4〜
15及び比較例2〜4で調製した溶液を室温で24時間静置した後、目視による濁り及び沈殿の有無を確認した。濁り及び沈殿の有無の判断は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
表2より、Zr/Pt比が1.7以上である実施例
4〜
12で調製した溶液は、濁り及び沈殿が見られなかった。Zr/Pt比が1.0である実施例
13〜
15で調製した溶液については、希釈率の高い実施例
15では濁り及び沈殿は見られなかったが、希釈率の低い実施例
13及び
14では沈殿が見られた。Zrイオンを含まない比較例2〜4で調製した溶液は、沈殿が見られた。
以上のことから、Zr/Pt比が1.7以上となるようにZrイオンを添加することによって、白金水酸化物ポリマーを含む溶液を任意の希釈率で希釈することが可能であることが確認された。
【0035】
(Zrイオンの添加による触媒性能への影響)
(実施例
16)
10gのアルミナ粉末に対して、実施例2で調製した溶液を8.3mL滴下し、蒸発乾固させた後、500℃で1時間保持することによって焼成し、1重量%の白金が担持された触媒粉末を得た。
(実施例
17)
10gのアルミナ粉末に対して、実施例1で調製した溶液を8.3mL滴下し、蒸発乾固させた後、500℃で1時間保持することによって焼成し、1重量%の白金が担持された触媒粉末を得た。
(比較例5)
10gのアルミナ粉末に対して、比較例1で調製した溶液を8.3mL滴下し、蒸発乾固させた後、500℃で1時間保持することによって焼成し、1重量%の白金が担持された触媒粉末を得た。
【0036】
実施例
16及び
17と比較例5で作製した触媒粉末を、それぞれペレット成型した。その後粉砕し、粒径が0.5〜1.0mmの粒状である触媒についてモデルガス試験による触媒性能の評価を行った。モデルガス試験は、0.2gの粒状の触媒を反応管内に保持させ、表3に示す組成のガスを毎分1800mLで流通させながら、室温〜500℃まで毎分25℃で昇温させることによって行った。触媒性能の評価は、一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物の浄化率が50%に達する温度(T50)を比較することにより行った。T50の値が低いほど触媒活性が優れていることを示す。結果を
図2に示す。なお、浄化率は下式(式1)により算出した。
浄化率(%)=(1−後ガス濃度/前ガス濃度)×100 (式1)
【0037】
【表3】
【0038】
図2より、比較例5の触媒に対して、実施例
16及び
17の触媒の各成分のT50は上昇していないことから、Zrイオンを添加することによる触媒性能への悪影響はないことが確認された。
【0039】
(酢酸ジルコニウム溶液の添加による白金水酸化物ポリマーの安定性)
(実施例
18)
白金濃度が14g/Lの白金水酸化物ポリマーを含む溶液86mLに対して、Zr濃度が3.1mol/Lの酢酸ジルコニウム溶液を10mL添加した後、6.0mol/Lの硝酸溶液を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が12g/L、かつ、Zr/Pt比(モル濃度比)が5.0の溶液を得た。
(実施例
19)
白金濃度が14g/Lの白金水酸化物ポリマーを含む溶液86mLに対して、Zr濃度が3.1mol/Lのオキシ硝酸ジルコニウム溶液を10mL添加した後、6.0mol/Lの硝酸溶液を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が12g/L、かつ、Zr/Pt比(モル濃度比)が5.0の溶液を得た。
(比較例6)
白金濃度が14g/Lの白金水酸化物ポリマーを含む溶液86mLを、6.0mol/Lの硝酸溶液を用いて100mLにメスアップし、白金濃度が12g/Lの溶液を得た。
【0040】
実施例
18及び
19と比較例6で調製した溶液を、80℃で22時間保持した。このような加熱によって重合反応速度が大きく加速されるため、溶液の安定性を短時間で簡易的に評価することができる。結果を表4に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
表4より、実施例
18及び
19で調製した溶液は、濁り及び沈殿が見られなかった。比較例6で調製した溶液は、沈殿が見られた。
以上のことから、酢酸ジルコニウム溶液の添加によっても、オキシ硝酸ジルコニウム溶液の添加と同様に、白金水酸化物ポリマーを含む溶液の安定性が得られることが確認された。