特許第5812436号(P5812436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5812436
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月11日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/631 20060101AFI20151022BHJP
【FI】
   H01R13/631
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-199579(P2012-199579)
(22)【出願日】2012年9月11日
(65)【公開番号】特開2014-56664(P2014-56664A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 元
(72)【発明者】
【氏名】田端 正明
(72)【発明者】
【氏名】大森 康雄
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−043743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/631
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハウジングと、
カム溝が形成され、前記第1ハウジングに回転可能に設けた円形のギヤと、
前記ギヤの外周に形成された複数の従動歯と、
前記第1ハウジングと嵌合可能であり、前記カム溝に係合可能なカムフォロアを備えた第2ハウジングと、
長さ方向に沿って並ぶ複数の駆動歯を有し、前記駆動歯を前記従動歯に噛み合わせた状態で長さ方向への相対変位を可能に前記第1ハウジングに取り付けられる帯状治具と、
少なくとも前記ギヤの周方向に間隔を空けた複数箇所において前記従動歯と対向するように配され、前記帯状治具が前記駆動歯を前記従動歯から外す方向へ変位するのを規制する規制部とを備えていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記駆動歯の強度が前記従動歯の強度よりも高く設定され、
前記帯状治具が、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの嵌合後に前記第1ハウジングから引き抜かれるようになっていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ギヤの中心部に第1ハウジングの外面に露出するように形成され、汎用工具を嵌合させて前記ギヤを回転させることを許容する嵌合部を備えていることを特徴とする請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記複数の駆動歯が形成されていて、前記第1ハウジングの内部で前記ギヤの外周に沿って略半円弧状に回曲することで、前記駆動歯を前記従動歯に噛み合わせる本体部と、
前記本体部の基端部に形成され、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの嵌合時に前記帯状治具を引張り操作するための操作部とを備え、
嵌合前の状態では、前記本体部のうち前記操作部側の領域が、前記第1ハウジングに対する前記第2ハウジングの嵌合方向とは反対方向へ導出されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1ハウジングと、カム溝を有し、第1ハウジング内に回転可能に設けられた円形のギヤと、カムフォロアを有する第2ハウジングと、長さ方向に沿って複数の歯が形成された帯状治具とを備えたコネクタが開示されている。このコネクタは、第1ハウジングと第2ハウジングを浅く嵌合してカムフォロアをカム溝に進入させた状態で、帯状治具の歯をギヤの外周の歯に噛み合わせ、帯状治具を長さ方向に引いてギヤを回転させることにより、カム溝とカムフォロアの係合によるカム作用によって、第1ハウジングと第2ハウジングを嵌合するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−043743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のコネクタでは、帯状治具がギヤの外周に対して接線方向に直線的に延びるように配され、帯状治具の少数の歯とギヤの少数の歯とが、噛み合うようになっている。したがって、帯状治具を引っ張り操作したときに、嵌合抵抗に起因する応力が少数の歯に集中することになる。そのため、嵌合抵抗が大きい場合には、応力集中によって、歯が折れたり削れたりするような不正な変形を生じ、嵌合作業が不完全になってしまうことが懸念される。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、嵌合作業の信頼性向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、本発明は、
第1ハウジングと、
カム溝が形成され、前記第1ハウジングに回転可能に設けた円形のギヤと、
前記ギヤの外周に形成された複数の従動歯と、
前記第1ハウジングと嵌合可能であり、前記カム溝に係合可能なカムフォロアを備えた第2ハウジングと、
長さ方向に沿って並ぶ複数の駆動歯を有し、前記駆動歯を前記従動歯に噛み合わせた状態で前記第1ハウジングに対して相対変位が可能な帯状治具と、
少なくとも前記ギヤの周方向に間隔を空けた複数箇所において前記従動歯と対向するように配され、前記帯状治具が前記駆動歯を前記従動歯から外す方向へ変位するのを規制する規制部とを備えている
ところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0006】
この構成によれば、帯状治具を従動歯と規制部との間で挟み込むように組み付けると、複数の駆動歯と複数の従動歯が、周方向において連続して噛み合った状態となる。これにより、両ハウジングの嵌合抵抗に起因する応力が、複数の駆動歯及び複数の従動歯に分散されるので、駆動歯や従動歯が不正な変形を生じる虞はない。したがって、嵌合作業の信頼性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1の第1ハウジングの斜視図
図2】第1ハウジングの正面図
図3】ギヤの斜視図
図4】ギヤの平面図
図5】帯状治具の側面図
図6】第2ハウジングの斜視図
図7】第1ハウジングにギヤと帯状治具を組み付けて変位規制した状態をあらわす斜視図
図8】第1ハウジングにギヤと帯状治具を組み付けて変位規制した状態をあらわす正面図
図9図8のA−A線断面図
図10図8のB−B線断面図
図11】第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合を開始した状態をあらわす平断面図
図12】第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合を開始した状態をあらわす斜視図
図13】第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合が完了した状態をあらわす平断面図
図14】第1ハウジングと第2ハウジングが嵌合してギヤが変位規制されている状態をあらわす側断面図
図15】第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合が完了した後、帯状治具をギヤから抜き取った状態をあらわす平断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のコネクタは、
前記駆動歯の強度が前記従動歯の強度よりも高く設定され、
前記帯状治具が、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの嵌合後に前記第1ハウジングから引き抜かれるようになっていてもよい。
この構成によれば、両ハウジングが正規嵌合した後、駆動歯と従動歯の係止力を上回る操作力で帯状治具を変位させると、従動歯が塑性変形することによって、帯状治具がギヤから解離して第1ハウジングから外れる。駆動歯を塑性変形させることなく帯状治具を第1ハウジングから抜き取ることができるので、帯状治具の再使用が可能である。また、帯状治具を第1ハウジングから引き抜くときには、嵌合過程に比べると、駆動歯と従動歯との噛み合い数が少なくなっているので、引抜きに必要な操作力が過大にならずに済む。
【0009】
本発明のコネクタは、
前記ギヤの中心部に第1ハウジングの外面に露出するように形成され、汎用工具を嵌合させて前記ギヤを回転させることを許容する嵌合部を備えていてもよい。
この構成によれば、両ハウジングを正規嵌合して帯状治具を第1ハウジングから抜き取った後、嵌合部に汎用工具を嵌合してギヤを回転させれば、両ハウジングを離脱させることができる。
【0010】
本発明のコネクタは、
前記複数の駆動歯が形成されていて、前記第1ハウジングの内部で前記ギヤの外周に沿って略半円弧状に回曲することで、前記駆動歯を前記従動歯に噛み合わせる本体部と、
前記本体部の基端部に形成され、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの嵌合時に前記帯状治具を引張り操作するための操作部とを備え、
嵌合前の状態では、前記本体部のうち前記操作部側の領域が、前記第1ハウジングに対する前記第2ハウジングの嵌合方向とは反対方向へ導出されていてもよい。
この構成によれば、第2ハウジングが第1ハウジングに嵌合する過程で、カムフォロアがカム溝に進入するのであるが、帯状治具の本体部は、ギヤの外周のうちカムフォロアがカム溝に接近する側とは反対側の略半円弧領域に沿って配されているので、カムフォロアが本体部と干渉することはない。
【0011】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図15を参照して説明する。本実施例のコネクタは、第1ハウジング10と、ギヤ30と、帯状治具40と、第2ハウジング50とを備えて構成されている。尚、以下の説明において、第1ハウジング10の前後方向については図9,10における左側を前側とし、第2ハウジング50の前後方向については図13,14における右側を前側という。
【0012】
<第1ハウジング10>
第1ハウジング10は、合成樹脂製であり、図1,2,9,10に示すように、ブロック状の端子収容部11と、角形のフード部12とを一体に形成して構成されている。端子収容部11の内部には、第1ハウジング10の後方から周知形態の雄端子金具13が挿入されている。フード部12は、下壁部14と左右両側壁部15と上壁部16とで構成されている。下壁部14は、端子収容部11の下面壁の前端から前方へ延出した形態である。左右両側壁部15は、下壁部14の左右両側縁及び端子収容部11の左右両側縁の上端から上方へ延出した形態である。上壁部16は、端子収容部11の上方において、左右両側壁部15の上端縁同士を連結した形態である。
【0013】
図10に示すように、フード部12内の空間のうち端子収容部11よりも前方の領域は、第2ハウジング50を嵌入させるための嵌合空間17となっている。フード部12内の空間のうち端子収容部11よりも上方の領域は、ギヤ30を収容するための収容空間18となっている。収容空間18の前端は、第1ハウジング10の前端面に開放されているが、収容空間18の後端は、後述する第1規制部25によって大部分が閉塞されている。また、嵌合空間17の上端領域と収容空間18の前端側領域とは、共用の空間となっている。
【0014】
図1に示すように、上壁部16の左右方向における中央部には、内周に係止縁部20を有する円形の軸受孔19が貫通して形成されている。上壁部16の上面(外面)における軸受孔19の孔縁には、目視による識別が可能な初期位置用指標部21と嵌合位置用指標部22が、周方向に所定の角度の間隔を空けて形成されている。
【0015】
上壁部16には、略U字形のスリットで囲まれた形態のストッパ23が形成されている。ストッパ23は、後方へ片持ち状に延出した形態であり、上下方向(ギヤ30の変位方向と交差する方向)に弾性撓み可能である。ストッパ23の後端部(延出端部)には、下方(収容空間18内に突出する方向)に突出する係止突起24が形成されている。ストッパ23は、ギヤ30を初期位置と嵌合位置とに選択的に保持するための手段として機能する。
【0016】
図10に示すように、端子収容部11の上面と上壁部16の下面との間には、第1規制部25(本発明の構成要件である規制部)が形成されている。図9に示すように、第1規制部25は、軸受孔19(ギヤ30の回転中心)と同心の円弧状をなす左右一対の弧状部26によって構成されている。弧状部26は、略四半円弧状をなし、曲率半径は、ギヤ30の中心から従動歯43の歯先までの半径よりも少し大きい寸法である。また、右側の弧状部26の前端部は右側の側壁部15に繋がり、左側の弧状部26の前端部は左側の側壁部15に繋がっている。
【0017】
第1規制部25は、帯状治具40がギヤ30を回転させる方向(周方向)へ変位することは許容するが、帯状治具40が駆動歯38を従動歯43から径方向に外す方向へ変位するのは規制する。この第1規制部25により、第1規制部25の周方向における両端(つまり、収容空間18の左右両端)の間では、複数の駆動歯38と複数の従動歯43が連続して噛み合わされた状態に保持される。
【0018】
図2,10に示すように、上壁部16の下面と端子収容部11の上面のうち第1規制部25に沿った半円弧領域は、互いに上下に対向する上下一対の第2規制部27(本発明の構成要件である規制部)となっている。第2規制部27は、帯状治具40がギヤ30を回転させる方向(周方向)へ変位することは許容するが、帯状治具40が駆動歯38を従動歯43から上下に外す方向へ変位するのを規制する。つまり、第2規制部27も、第1規制部25と同様、帯状治具40がギヤ30と噛み合う状態を保持するための手段として機能する。
【0019】
<ギヤ30>
ギヤ30は、合成樹脂製であり、図3,4に示すように、円板形をなす。ギヤ30の上面中央部には、軸部31が突出形成されている。軸部31は、中央部に配された角柱部32と、角柱部32の各辺と対向するように配置された4つの櫛形をなす弾性係止片33とから構成されている。軸部31には、角柱部32の上面を六角形状に凹ませた形態の嵌合部34が形成されている。4つの弾性係止片33のうち1つの弾性係止片33の上面には、三角形状をなすことで目視による認識可能な可動側指標部35が形成されている。
【0020】
ギヤ30の上面には、ギヤ30を初期位置に保持するための初期位置用係止溝36と、ギヤ30を嵌合位置に保持するための嵌合位置用係止溝37が形成されている。初期位置用係止溝36と嵌合位置用係止溝37は、軸部31(ギヤ30の回転中心)から径方向外方へ外れた位置に配され、互いに周方向に離間している。
【0021】
ギヤ30の外周には、複数の駆動歯38が、全周に渡って一定ピッチで連続して形成されている。図4に示すように、ギヤ30には、その下面を凹ませた形態のカム溝39が形成されている。カム溝39の入口39Eは、ギヤ30の外周面に開口している。ギヤ30の奥端は、周方向において入口39Eから離間し、且つ径方向において入口39Eよりも内側に位置している。
【0022】
ギヤ30は、第1ハウジング10の前方から収容空間18内に組み付けられる。このとき、軸部31が上壁部16と干渉するのを回避するために、上壁部16を上方へ弾性変形させる。ギヤ30が収容空間18内に所定の組付位置に至ると、上壁部16を弾性復帰させ、軸部31を軸受孔19に嵌合させる。このとき、4つの弾性係止片33を、一旦、内側(角柱部32に接近する方向)へ弾性変形させた後、係止縁部20に対して外面側(上面側)から係止させる。これにより、軸部31が、上壁部16に対して上下方向(軸部31の軸線方向)への相対変位を規制された状態に嵌合される。
【0023】
これにより、ギヤ30は、上下方向の軸(軸部31と軸受孔19)を中心として回転し得るように第1ハウジング10に組み付けられる。組付け状態では、ギヤ30のうち軸部31を除いた大部分が収容空間18の内部に収容され、軸部31の上面が上壁部16の上面に露出する。ギヤ30のうち前端側の領域(軸部31よりも前方の領域)は、端子収容部11よりも前方へ突出するように位置する。また、ギヤ30の外周のうち軸部31よりも後方の略半円弧形領域では、複数の従動歯43が、ギヤ30と同心円弧状をなす第1規制部25と僅かな間隔を空けて径方向に対向する。
【0024】
ギヤ30が初期位置にある状態では、図10に示すように、ストッパ23の係止突起24が初期位置用係止溝36に係止し、ストッパ23のセミロック機能により、ギヤ30が回転規制される。ギヤ30が初期位置にある状態ではカム溝39の入口39Eが前方に向かって開口する。初期位置用係止溝36と係止突起24との係止力を上回る回転力がギヤ30に作用すると、ストッパ23による回転規制が解除される。また、ギヤ30が嵌合位置にある状態では、図14に示すように、ストッパ23の係止突起24が嵌合位置用係止溝37に係止し、ストッパ23セミロック機能により、ギヤ30が回転規制される。嵌合位置用係止溝37と係止突起24との係止力を上回る回転力がギヤ30に作用すると、ストッパ23による回転規制が解除される。
【0025】
<帯状治具40>
帯状治具40は、両ハウジング10,50を嵌合するときに用いる合成樹脂製の治具である。図5に示すように、帯状治具40は、長尺の帯状をなす本体部41と、本体部41の基端部に繋がる操作部42とを一体に形成したものである。操作部42の幅寸法(両ハウジング10,50を嵌合する際には、上下方向の寸法)は、本体部41の幅寸法よりも大きいので、操作部42の手で掴み易くなっている。本体部41は可撓性を有し、本体部41の表面には、複数の駆動歯38が、長さ方向に一定ピッチ(従動歯43と同じピッチ)で並ぶように形成されている。帯状治具40は、ギヤ30よりも強度の高い材料からなる。
【0026】
<第2ハウジング50>
第2ハウジング50は、合成樹脂製であり、図6に示すように、全体としてブロック状をなしている。図14に示すように、第2ハウジング50内には、周知形態の雌端子金具51が収容されている。第2ハウジング50の上面には、円柱状のカムフォロア52が突出形成されている。第2ハウジング50の上面における左側縁部には、左右一対のガイドリブ53が形成されている。
【0027】
<嵌合の作業工程>
両ハウジング10,50を嵌合する際には、予め、ギヤ30と帯状治具40を、同時に第1ハウジング10に組み付けておく。このとき、ギヤ30のうちカム溝39が形成されている領域が収容空間18内に収容されるため、カム溝39の入口39Eの位置を目視確認することができない。しかし、可動側指標部35が初期位置用指標部21と対応する位置関係となるようにギヤ30の向きを調整することで、図7に示すように、ギヤ30を初期位置に位置決めすることができる。初期位置に組み付けたギヤ30は、ストッパ23により回転規制される。ギヤ30が初期位置に保持されることにより、カム溝39の入口39Eが第1ハウジング10の前方に向かって開口し、カム溝39の入口39Eにカムフォロア52が進入できる状態となる。
【0028】
一方、帯状治具40は、本体部41を略U字形に曲げて後方からギヤ30の外周に外嵌し、ギヤ30の後端側の略半円弧領域において従動歯43に駆動歯38を噛み合わせる。その状態で、帯状治具40とギヤ30を一緒に第1ハウジング10の前方から収容空間18内に収容する。本体部41のうち基端側(操作部42側)の所定長さの領域と操作部42は、第1ハウジング10の前方(第1ハウジング10に対する第2ハウジング50の嵌合方向とは反対方向)へ突出させておく。帯状治具40を第1ハウジング10に組み付けた状態では、円弧状に湾曲した本体部41の裏面(駆動歯38とは反対側の面)が、第1規制部25のほぼ全領域に対して当接又は接近して対向する。また、本体部41は、一対の第2規制部27によって上下に挟まれた状態となる。この第1規制部25と第2規制部27により、帯状治具40は、駆動歯38を従動歯43に噛み合わせた状態に保持される。
【0029】
帯状治具40は、その駆動歯38を従動歯43に噛み合わせることにより、ギヤ30に対して周方向への相対変位を規制されている。そして、ギヤ30は、ストッパ23の係止作用によって初期位置において回転規制された状態に保持されている。したがって、帯状治具40とギヤ30は、第1ハウジング10に対し相対変位を規制された組付け状態に保持される。これにより、第1ハウジング10とギヤ30と帯状治具40を、1つのユニットとして保管、運搬することができる。
【0030】
このユニット化した第1ハウジング10とギヤ30と帯状治具40は、両ハウジング10,50の嵌合現場へ搬入される。嵌合する際には、図11に示すように、第2ハウジング50を第1ハウジング10のフード部12内に浅く嵌入し、カムフォロア52をカム溝39の入口39Eに進入させるとともに、帯状治具40の本体部41を、第1ハウジング10の前方において左右一対のガイドリブ53の間に通す。その後、第1ハウジング10と操作部42を掴み、帯状治具40を第1ハウジング10に対してその前方へ相対変位させるように引っ張る。このときの帯状治具40の引張り方向は、第1ハウジング10に対する第2ハウジング50の嵌合方向とは反対方向である。また、本体部41がガイドリブ53の間に通されているので、帯状治具40の左右方向の位置が安定する。
【0031】
帯状治具40を引っ張ると、ストッパ23が弾性変形して係止突起24が初期位置用係止溝36から外れ、駆動歯38と従動歯43との噛み合いにより、ギヤ30が初期位置から嵌合位置に向かって回転する。ギヤ30が回転する間、本体部41は、第1規制部25とギヤ30との間で円弧形状を維持したままで周方向に沿って変位する。したがって、複数の駆動歯38と複数の従動歯43が、ギヤ30の外周に連続する所定の周方向領域に亘って噛み合う。
【0032】
ギヤ30の回転に伴い、カム溝39とカムフォロア52との係合によるカム作用により、第2ハウジング50が第1ハウジング10(フード部12)内に引き込まれて、嵌合が進む。また、ギヤ30の回転が進むのに伴い、本体部41の先端がギヤ30の右方から後方へ変位し、さらにギヤ30の右方へ変位していくため、駆動歯38と従動歯43の噛み合う数が、次第に少なくなっていく。そして、ギヤ30が嵌合位置に到達すると、両ハウジング10,50が正規の嵌合状態となる。
【0033】
図13に示すように、ギヤ30が嵌合位置に到達すると、ストッパ23が弾性復帰し、図14に示すように、係止突起24が嵌合位置用係止溝37に係止し、この係止作用により、ギヤ30が嵌合位置に保持される。そして、カム溝39とカムフォロア52の係合により、両ハウジング10,50が正規嵌合状態に保持される。また、ギヤ30が嵌合位置に到達した状態では、駆動歯38と従動歯43が本体部41の先端近くで噛み合ったままであるが、これは、ギヤ30が嵌合位置に到達する前に駆動歯38が従動歯43から外れてしまうのを防止するためである。
【0034】
両ハウジング10,50が正規嵌合すると、ギヤ30がストッパ23の係止により回転規制されるとともに、第2ハウジング50が端子収容部11の前端面に突き当たって前止まりされるため、その衝撃が、作業者の操作部42を掴む手に伝わる。この後、作業者は、操作部42を掴んだまま、帯状治具40を強く引っ張る。引張力が、従動歯43の強度を上回ると、従動歯43が、駆動歯38により削られるように塑性変形させられ、図15に示すように、ギヤ30は回転せずに嵌合位置に保持されたままで、帯状治具40が引き抜かれる。帯状治具40を引き抜くときには、従動歯43が組成変形することに起因して引抜き抵抗が生じるのであるが、引き抜く時の駆動歯38と従動歯43との噛み合う数は、嵌合過程に比べて少ないので、引抜き抵抗は比較的小さくて済む。帯状治具40が引き抜かれると、両ハウジング10,50の嵌合作業が完了する。
【0035】
両ハウジング10,50を正規嵌合して帯状治具40を第1ハウジング10から抜き取った後で、嵌合状態の両ハウジング10,50を離脱させる際には、図15に示すように、第1ハウジング10の外面(上面)に露出している嵌合部34に六角レンチ55(本発明の構成要件である汎用工具)を嵌めて、ギヤ30を初期位置側へ回転させる。すると、カム溝39とカムフォロア52との係合によるカム作用により、両ハウジング10,50が離脱する。
【0036】
本実施例のコネクタは、カム溝39が形成された円形のギヤ30と、ギヤ30の外周に形成された複数の従動歯43と、カムフォロア52を備えた第2ハウジング50と、長さ方向に沿って並ぶ複数の駆動歯38を有し、駆動歯38を従動歯43に噛み合わせた状態で第1ハウジング10に対して相対変位が可能な帯状治具40と、少なくともギヤ30の周方向に間隔を空けた複数箇所において従動歯43と対向するように配され、帯状治具40が駆動歯38を従動歯43から外す方向へ変位するのを規制する第1規制部25及び第2規制部27を備えている。
【0037】
この構成によれば、帯状治具40を従動歯43と規制部との間で挟み込むように組み付けると、複数の駆動歯38と複数の従動歯43が、周方向において連続して噛み合った状態となる。これにより、両ハウジング10,50の嵌合抵抗に起因する応力が、複数の駆動歯38及び複数の従動歯43に分散されるので、駆動歯38や従動歯43が不正な変形を生じる虞はない。したがって、嵌合作業の信頼性に優れている。
【0038】
本実施例のコネクタは、駆動歯38の強度が従動歯43の強度よりも高く設定され、帯状治具40が、両ハウジング10,50の嵌合後に第1ハウジング10から引き抜かれるようになっている。この構成によれば、両ハウジング10,50が正規嵌合した後、駆動歯38と従動歯43の係止力を上回る操作力で帯状治具40を変位させると、従動歯43が塑性変形することによって、帯状治具40がギヤ30から解離して第1ハウジング10から外れる。駆動歯38を塑性変形させることなく帯状治具40を第1ハウジング10から抜き取ることができるので、帯状治具40の再使用が可能である。また、帯状治具40を第1ハウジング10から引き抜くときには、嵌合過程に比べると、駆動歯38と従動歯43との噛み合い数が少なくなっているので、引抜きに必要な操作力が過大にならずに済む。
【0039】
本実施例のコネクタは、複数の駆動歯38が形成されていて、第1ハウジング10の内部でギヤ30の外周に沿って略半円弧状に回曲することで、駆動歯38を従動歯43に噛み合わせる本体部41と、本体部41の基端部に形成され、両ハウジング10,50の嵌合時に帯状治具40を引張り操作するための操作部42とを備え、嵌合前の状態では、本体部41のうち操作部42側の領域が、第1ハウジング10に対する第2ハウジング50の嵌合方向とは反対方向へ導出されている。第2ハウジング50が第1ハウジング10に嵌合する過程で、カムフォロア52がカム溝39に進入するのであるが、帯状治具40の本体部41は、ギヤ30の外周のうちカムフォロア52がカム溝39に接近する側とは反対側(後方)の略半円弧領域に沿って配されているので、カムフォロア52が本体部41と干渉することはない。
【0040】
本実施例のコネクタは、ギヤ30が、カム溝39に対するカムフォロア52の進入を許容する初期位置にあるときに、ストッパ23がギヤ30に係止してギヤ30の回転を規制するようになっている。この構成によれば、ストッパ23によってギヤ30が初期位置に保持されるので、第2ハウジング50との嵌合現場では、ギヤ30と帯状治具40を変位させることなく、直ちに、両ハウジング10,50の嵌合作業を開始することができる。
【0041】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、規制部が周方向に連続した円弧状領域を有するが、規制部は、周方向に間隔を空けた複数位置に点在する形態でもよい。
(2)上記実施例では、規制部が2つに分割されているが、規制部は分割されずに連続した単一の形態であってもよい。
(3)上記実施例では、規制部を第1ハウジングに一体に形成したが、規制部は、ギヤに一体形成されていてもよく、第1ハウジング及びギヤとは別体の独立した部品であってもよい。
(4)上記実施例では、両ハウジングを嵌合する際に、帯状治具を引っ張り操作するようにしたが、帯状治具を第1ハウジング内に押し込むことによって両ハウジングを嵌合するようにしてもよい。
(5)上記実施例では、両ハウジングを嵌合する際に、帯状治具を第1ハウジングに対する第2ハウジングの嵌合方向とは反対方向(つまり、第1ハウジングの前方)へ引っ張るようにしたが、帯状治具を第1ハウジングに対する第2ハウジングの嵌合方向と平行な方向(つまり、第1ハウジングの後方)へ引っ張るようにしてもよく、両ハウジングの嵌合方向と交差する方向へ引っ張るようにしてもよい。
(6)上記実施例では、両ハウジングが正規嵌合した後、帯状治具を抜き取る際に、帯状治具の駆動歯を変形させずに、ギヤの従動歯を削るように変形(塑性変形)させたが、帯状治具を抜き取る際には、ギヤの従動歯が変形せずに帯状治具の駆動歯が塑性変形するようにしてもよく、帯状治具の駆動歯とギヤの従動歯の両方が塑性変形するようにしてもよい。
(7)上記実施例では、両ハウジングが正規嵌合した後、帯状治具を第1ハウジングから抜き取るようにしたが、両ハウジングが正規嵌合した後、帯状治具を第1ハウジングに組み付けたままにしておいてもよい。
(8)上記実施例では、ギヤの数を1つとしたが、複数のギヤを両ハウジングの嵌合方向と直交する方向に並べ、この複数のギヤを1つの帯状治具で同期回転させることによって、両ハウジングを嵌合させてもよい。このようにすれば、両ハウジング間の嵌合過程における姿勢の傾きを防止できる。
(9)上記実施例では、第1ハウジングに第2ハウジングを嵌入させるためのフード部を形成し、このフード部内にギヤを収容したが、第1ハウジングの外面を浅く凹ませた形態の収容凹部を形成し、この収容凹部内にギヤを収容するとともに、第1ハウジングとギヤを、第2ハウジングに形成したフード部内に嵌入させるようにしてもよい。
(10)上記実施例では、ギヤの中心部に、第1ハウジングの外面に露出する嵌合部を形成し、この嵌合部に汎用工具を嵌合させることによってギヤを回転させることができるようにしたが、ギヤは、このような嵌合部を形成しない形態であってもよい。
(11)上記実施例において、帯状治具と第1ハウジングにセンサを取り付け、両ハウジングが嵌合した後、帯状治具が第1ハウジングに組み付けられたままであるか、帯状治具が第1ハウジングから抜き取られたかを検知するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…第1ハウジング
25…第1規制部(規制部)
27…第2規制部(規制部)
30…ギヤ
34…嵌合部
38…従動歯
39…カム溝
40…帯状治具
41…本体部
42…操作部
43…駆動歯
50…第2ハウジング
52…カムフォロア
55…六角レンチ(汎用工具)
図1
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図15