(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
周波数指令により指令された出力周波数と振幅レベル指令により指令された出力振幅レベルとを有する高周波信号を発生するように構成されて、負荷に与える高周波電力の基本周波数に等しい第1の周波数及び該第1の周波数と異なる第2の周波数を有する第1及び第2の高周波信号をそれぞれ発生する第1及び第2の高周波発生部と、
前記第1の高周波信号を増幅する電力増幅部と、
前記電力増幅部から負荷に向かう進行波電力及び前記負荷側から前記電力増幅部に向かう反射波電力をそれぞれ検出して前記進行波電力の情報を含む進行波検出信号及び前記反射波電力の情報を含む反射波検出信号をそれぞれ出力する高周波検出部と、
前記第1の周波数を変化させた場合でも前記第1の周波数と第2の周波数との差を一定に保つように前記第1の高周波発生部及び第2の高周波発生部に周波数指令を与える周波数制御部と、
前記高周波検出部により得られた進行波検出信号と前記第2の高周波信号とを乗算して、前記第1の周波数と前記第2の周波数との差の周波数成分を含む信号を得る第1の乗算部と、
前記第1の乗算部の出力から前記第1の周波数と前記第2の周波数との差の周波数成分を抽出して第1の差周波数信号を出力する第1のフィルタと、
前記第1のフィルタから得られる第1の差周波数信号のレベルを検出して前記進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の情報を含む進行波電力基本周波数成分検出信号を出力する第1の差周波数信号レベル検出部と、
前記高周波検出部により得られた反射波検出信号と前記第2の高周波信号とを乗算して、前記第1の周波数と前記第2の周波数との差の周波数成分を含む信号を得る第2の乗算部と、
前記第2の乗算部の出力から前記第1の周波数と前記第2の周波数との差の周波数成分を抽出して第2の差周波数信号を出力する第2のフィルタと、
前記第2のフィルタから得られる第2の差周波数信号のレベルを検出して前記反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の情報を含む反射波電力基本周波数成分検出信号を出力する第2の差周波数信号レベル検出部と、
前記電力増幅部から負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の設定値または前記進行波電力基本周波数成分検出信号から検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と前記反射波電力基本周波数成分検出信号から検出される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が前記設定値よりも大きい値に設定された制限値以下であるときには、前記進行波電力基本周波数成分検出信号から検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を前記設定値に保つように前記第1の高周波発生部に振幅レベル指令を与え、前記合計値が前記制限値を超えたときには、前記合計値を前記制限値以下に低下させるように前記第1の高周波発生部に振幅レベル指令を与えるレベル制御部と、
を具備したことを特徴とする高周波電源装置。
周波数指令により指令された出力周波数と振幅レベル指令により指令された出力振幅レベルとを有する高周波信号を発生するように構成されて第1及び第2の周波数を有する第1及び第2の高周波信号をそれぞれ発生する第1及び第2の高周波発生部と、
前記第1の高周波信号を増幅する電力増幅部と、
前記電力増幅部から負荷に向かう進行波電力及び前記負荷側から前記電力増幅部に向かう反射波電力をそれぞれ検出して前記進行波電力の情報を含む進行波検出信号及び前記反射波電力の情報を含む反射波検出信号をそれぞれ出力する高周波検出部と、
前記第1の周波数を変化させた場合でも前記第1の周波数と第2の周波数との差を一定に保つように前記第1の高周波発生部及び第2の高周波発生部に周波数指令を与える周波数制御部と、
前記高周波検出部により得られた進行波検出信号と前記第2の高周波信号とを乗算して、前記第1の周波数と前記第2の周波数との差の周波数成分を含む信号を得る第1の乗算部と、
前記第1の乗算部の出力から前記第1の周波数と前記第2の周波数との差の周波数成分を抽出して第1の差周波数信号を出力する第1のフィルタと、
前記第1のフィルタから出力される第1の差周波数信号のレベルを検出して前記進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の情報を含む進行波電力基本周波数成分検出信号を出力する第1の差周波数信号レベル検出部と、
前記高周波検出部により得られた反射波検出信号と前記第2の高周波信号とを乗算して、前記第1の周波数と前記第2の周波数との差の周波数成分を含む信号を得る第2の乗算部と、
前記第2の乗算部の出力から前記第1の周波数と前記第2の周波数との差の周波数成分を抽出して第2の差周波数信号を出力する第2のフィルタと、
前記第2のフィルタから出力される第2の差周波数信号のレベルを検出して前記反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の情報を含む反射波電力基本周波数成分検出信号を出力する第2の差周波数信号レベル検出部と、
前記反射波電力基本周波数成分検出信号から検出される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が、前記電力増幅部から負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の設定値または前記進行波電力基本周波数成分検出信号から検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に対して演算された許容上限値以下であるときには、前記進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を前記設定値に保つように前記第1の高周波発生部に振幅レベル指令を与え、前記反射波電力基本周波数成分検出信号から検出される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が前記許容上限値を超えたときには、前記反射波電力基本周波数成分検出信号から検出される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を前記許容上限値以下に低下させるように前記第1の高周波発生部に振幅レベル指令を与えるレベル制御部と、
を具備したことを特徴とする高周波電源装置。
前記第2の高周波信号のレベルを一定に保つように前記第2の高周波発生部に振幅レベル指令を与えるレベル制御部が更に設けられている請求項1ないし7の何れか一つに記載の高周波電源装置。
【背景技術】
【0002】
半導体への微細加工を行なうプラズマ処理装置などの負荷に電力を供給するために、高周波電源装置が用いられている。一般に高周波電源装置は、高周波信号を発生する高周波発生部と、高周波発生部の出力を増幅する電力増幅部と、電力増幅部から負荷に与えられる進行波電力の情報を含む進行波検出信号と負荷で反射されて増幅部側に戻る反射波電力の情報を含む反射波検出信号とを得る高周波検出部と、進行波検出信号及び反射波検出信号に応じて高周波電力増幅部を制御する制御部とを備えている。
【0003】
この種の電源装置においては、高周波電力が高い純度を有している(不要な周波数成分を含まない)ことが要求される。そのため、高周波発生部から電力増幅部の出力段に至るまでの各ステージに各種の高周波フィルタを配置して、増幅段で発生するスプリアス成分を除去している。電力増幅部の出力側には、該増幅部から負荷に与える電力から高調波成分を除去するためのローパスフィルタが設けられている。また高周波発生部の出力端と負荷との間にインピーダンス整合器を設けて、定常状態にある負荷に対してインピーダンスの整合をとることにより、負荷で反射波電力が発生するのを防いでいる。従って、負荷が定常状態にあるときには、高周波電力増幅部から負荷に与えられる進行波電力(実質的に基本周波数成分のみを含む。)のレベルが安定に保たれ、負荷で反射されて高周波電力増幅部に戻る反射波電力は最小となっている。
【0004】
しかしながら、プラズマ処理装置などの負荷の起動時には、負荷のインピーダンスが非線形の状態にあって、高速で変動するため、整合器の整合動作が追いつかず、不整合状態が生じて、負荷を節として反射波が発生する。更に負荷の内部では、その非線形性に起因して生じる周波数混合作用により、種々の新しい周波数成分がスプリアス成分として発生し、これらのスプリアス成分が反射波に重畳する。スプリアス成分が重畳した反射波電力は整合器内を逆流し、該反射波電力のうち、基本周波数成分は、高周波電力増幅部の出力側に設けられたローパスフィルタを通過して高周波電力増幅部の出力段まで戻ってくる。
【0005】
また、エッチングなどを行なうプラズマ処理装置においては、
図11に示すように、第1及び第2の高周波電源装置11及び12から第1及び第2の整合装置13及び15を通してプラズマ処理装置15の電極に出力周波数が異なる2種類の高周波電力が同時に与えられることがある。この場合、第1の高周波電源装置から負荷に与えられる第1の高周波電力はプラズマ発生用の高周波電力であり、第2の高周波電源装置12から負荷に与えられる第2の高周波電力は、例えば、プラズマ中のイオンを引き込むためのバイアス用の高周波電力である。第1の高周波電源装置11の出力周波数は十数MHzないし数十MHz程度の高い周波数を有し、第2の高周波電源装置12の出力周波数は数百KHzないし数MHz程度の比較的低い周波数を有している。
【0006】
このようなシステムでは、負荷のインピーダンスが複雑に変化するため、インピーダンス整合器によってインピーダンスの整合を完全にとることができず、負荷で反射波が発生するのを避けることができない。この場合、負荷側からプラズマ発生用高周波電源装置の増幅部側に戻ってくる反射波には、バイアス用高周波電源装置の基本周波数成分とその近辺のスプリアス成分とが含まれているが、バイアス用高周波電源装置の基本周波数は、プラズマ発生用高周波電源装置の基本周波数よりも低いため、負荷側からプラズマ発生用高周波電源装置側に向かう反射波に含まれるバイアス用高周波電源装置の基本周波数成分は、プラズマ発生用高周波電源装置の出力側に設けられているローパスフィルタを通過して、該高周波電源装置の増幅部に到達してしまう。
【0007】
例えば、
図11において、第1の高周波電源装置11の出力周波数が50MHz、第2の高周波電源装置12の出力周波数が2MHzである場合、周波数が高い第1の高周波電源装置11側で生じる反射波電力の基本周波数成分とその前後に生じるスプリアス成分とを模式的に示すと
図10のようになる。同図において、50MHzは基本周波数、44,46,48,52,54,56MHzは基本周波数成分の前後に2MHz間隔で発生するスプリアス成分である。
【0008】
負荷で生じた反射波電力は、高周波電力増幅部と負荷との間を接続する伝送路上で進行波電力と合成されるため、伝送路上に定在波が発生する。反射波電力が大きく、高いレベルの定在波(電力、電圧及び電流)が発生すると、電力増幅部の半導体増幅素子に印加される電圧が過大になって、該半導体増幅素子が劣化したり破損したりするおそれがある。このような問題が生じるのを防ぐため、特許文献1に示されているように、電力増幅部と負荷との間に挿入した高周波検出部により進行波電力と反射波電力とを検出し、検出された進行波電力と反射波電力との合計値(合計電力値)が制限値を超えたときに、電力増幅部の出力を抑制する制御を行なって、増幅部の半導体素子を保護することが行われている。
【0009】
なお通常「スプリアス」という語は、基本周波数の前後に現れる不要周波数と、各高調波周波数の前後に現れる不要周波数とを指す意味で用いられることもあるが、本明細書においては、説明の便宜上、負荷に供給する周波数成分としては不要な周波数成分(通常は基本周波数成分以外の成分)のすべてをスプリアス成分と呼ぶことにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、従来の高周波電源装置では、電力増幅部と負荷との間に挿入した高周波検出部を通して進行波電力と反射波電力とを検出し、検出された進行波電力と反射波電力との合計値(合計電力値)が制限値を超えたときに、高周波電力増幅部の出力を抑制する制御を行うようにしていた。
【0012】
この場合、高周波検出部では、反射波電力に含まれる基本周波数成分とすべてのスプリアス成分とが一括して検出される。これに対し、電力増幅部の出力側にはローパスフィルタが設けられているため、電力増幅部に到達する反射波電力からは、基本周波数成分よりも高いスプリアス成分が除去される。従って、高周波検出部により検出される反射波電力には、電力増幅部に到達する反射波電力に含まれるスプリアス成分よりも多くのスプリアス成分が含まれることになる。
【0013】
そのため、高周波検出部により検出された反射波電力と進行波電力との合計値が制限値を超えたときに、反射波電力と進行波電力との合計値を制限値以下に低減させるように電力増幅部の出力を抑制する制御を行うと、反射波電力に基本周波数よりも高いスプリアス成分が多く含まれている場合に、本来であれば、電力増幅部の出力を抑制する必要がないにもかかわらず、出力を抑制する制御が行なわれて、過剰な保護動作が行われることになり、増幅部の出力が不足する状態が生じるという問題があった。
【0014】
上記のような問題を生じないようにするためには、反射波電力については、その基本周波数成分と、電力増幅部の出力側に設けられたローパスフィルタを通過する基本周波数付近のスプリアス成分のみとを検出して、増幅部の保護を図るための制御を行うようにすればよい。例えば、基本周波数が50MHzである場合には、反射波電力のスプリアス成分のうち、例えば、46, 48, 52及び54MHzの周波数成分のみを検出して、これらのスプリアス成分の電力値と進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値を超えたときに、電力増幅部の出力を抑制する制御を行うようにすればよい。
【0015】
この場合、スプリアス成分は、基本周波数成分に比べて十分に小さいため、反射波電力に含まれる基本周波数成分のみを検出して、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値を制限値以下に保つ制御を行っても、電力増幅部の半導体増幅素子の保護を図るという目的を達成することができる。反射波電力のスプリアス成分の影響に対しては、制限値に余裕を持たせておく(制限値を小さめに設定しておく)ことにより対処することができる。
【0016】
また進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と負荷側から電力増幅部に戻ってくる反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値を制限値以下に保つように電力増幅部の出力を抑制する制御を行う代りに、反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が、負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に応じて適正な大きさに設定された制限値を超えることがないように、電力増幅部の出力を抑制する制御を行うことによっても、電力増幅部を構成する半導体増幅素子の保護を図ることができる。
【0017】
上記のように、進行波電力及び反射波電力に含まれる基本周波数成分を検出して、電力増幅部の保護を図るための制御を的確に行うためには、高周波検出部の検出出力から、進行波電力に含まれる基本周波数成分と、反射波電力に含まれる基本周波数成分とを正確に検出することが必要である。進行波電力及び反射波電力に含まれる基本周波数成分の検出は、高周波検出部から得られる検出信号をフィルタに通して、基本周波数成分を抽出することにより行うことが考えられるが、基本周波数が高い場合(例えば50MHzである場合)には、減衰特性が優れたフィルタを得ることが難しいため、基本周波数成分を正確に抽出することは容易ではない。
【0018】
また最近では、可変周波数方式の高周波電源装置が多く用いられるようになっている。フィルタの減衰率は周波数により変化するため、高周波電源装置の周波数が変化する場合、進行波電力及び反射波電力をフィルタを通して正確に検出することは更に難しくなる。
【0019】
本発明の目的は、周波数が高い場合や、周波数が変化させられる場合でも、電力増幅部から負荷に供給される進行波電力と負荷側から電力増幅部に戻ってくる反射波電力とを的確に検出して、電力増幅部の保護を図るための制御を的確に行うことができるようにした高周波電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願の明細書及び図面においては、上記の目的を達成するために、少なくとも第1の発明ないし第8の発明が開示される。以下、第1の発明ないし第8の発明の概要について説明する。
【0021】
第1の発明
第1の発明は、負荷に供給される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と負荷側から戻ってくる反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値を制限値以下に保つ制御を行う機能を有する高周波電源装置に係わるものである。第1の発明に係わる高周波電源装置は、以下の要素により構成される。
(a)周波数指令により指令された出力周波数と振幅レベル指令により指令された出力振幅レベルとを有する高周波信号を発生するように構成されて、負荷に与える高周波電力の基本周波数に等しい第1の周波数及び該第1の周波数と異なる第2の周波数を有する第1及び第2の高周波信号をそれぞれ発生する第1及び第2の高周波発生部。
(b)第1の高周波信号を増幅する電力増幅部。
(c)電力増幅部から負荷に向かう進行波電力及び負荷側から電力増幅部に向かう反射波電力をそれぞれ検出して進行波電力の情報を含む進行波検出信号及び反射波電力の情報を含む反射波検出信号をそれぞれ出力する高周波検出部。
(d)
前記第1の周波数を変化させた場合でも第1の周波数と第2の周波数との差を一定に保つように第1の高周波発生部及び第2の高周波発生部に周波数指令を与える周波数制御部。
(e)高周波検出部により得られた進行波検出信号と第2の高周波信号とを乗算して、第1の周波数と前記第2の周波数との差の周波数成分を含む信号を得る第1の乗算部。
(f)第1の乗算部の出力から第1の周波数と第2の周波数との差の周波数成分を抽出して第1の差周波数信号を出力する第1のフィルタ。
(g)第1のフィルタから得られる第1の差周波数信号のレベルを検出して進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の情報を含む進行波電力基本周波数成分検出信号を出力する第1の差周波数信号レベル検出部。
(h)高周波検出部により得られた反射波検出信号と第2の高周波信号とを乗算して、第1の周波数と第2の周波数との差の周波数成分を含む信号を得る第2の乗算部。
(i)第2の乗算部の出力から第1の周波数と第2の周波数との差の周波数成分を抽出して第2の差周波数信号を出力する第2のフィルタ。
(j)第2のフィルタから得られる第2の差周波数信号のレベルを検出して反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の情報を含む反射波電力基本周波数成分検出信号を出力する第2の差周波数信号レベル検出部。
(k)電力増幅部から負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の設定値または進行波電力基本周波数成分検出信号から検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力基本周波数成分検出信号から検出される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が前記設定値よりも大きい値に設定された制限値以下であるときには、進行波電力基本周波数成分検出信号から検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を設定値に保つように第1の高周波発生部に振幅レベル指令を与え、合計値が制限値を超えたときには、合計値を制限値以下に低下させるように第1の高周波発生部に振幅レベル指令を与えるレベル制御部。
【0022】
上記のように構成すると、高周波電源装置の出力周波数である第1の周波数に対して第2の周波数を適切に設定することにより、進行波電力に含まれる基本周波数成分及び反射波電力に含まれる基本周波数成分を、減衰性が優れたフィルタを入手し得る、十分に低い周波数(第1の周波数と第2の周波数との差の周波数)を有する差周波数信号に変換することができるため、進行波電力及び反射波電力に含まれる基本周波数成分を、フィルタの特性の影響を受けることなく、正確に検出することができる。従って、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値を制限値以下に制限して電力増幅部の保護を図る制御を的確に行うことができる。反射波電力のスプリアス成分の影響に対しては、制限値を余裕を持たせて設定する(制限値を小さめに設定しておく)ことにより対処することができる。
【0023】
また、上記のように、第1の周波数と第2の周波数との差周波数を一定に保つように第1の高周波発生部及び第2の高周波発生部に周波数指令を与えるようにすると、電源装置の出力周波数(第1の周波数)を変更した場合でも第1の周波数と第2の周波数との差を一定に保つことができるため、電源装置の出力周波数を変更した場合にも、進行波電力及び反射波電力に含まれる基本周波数成分を、フィルタの周波数特性の影響を受けることなく正確に検出して、電力増幅部の保護を図るための制御を的確に行うことができる。
【0024】
第2の発明
第2の発明は、第1の発明に適用されるもので、本発明においては、上記レベル制御部が、レベル指令値演算部と、振幅指令出力部とを備えている。
レベル指令値演算部は、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が設定された制限値以下であるときに進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を設定値に保つために第1の高周波発生部に与える振幅レベル指令の指令値を演算し、合計値が制限値を超えたときには合計値を制限値以下に制限するために第1の高周波発生部に与える振幅レベル指令の指令値を演算するように構成される。
また振幅指令出力部は、レベル指令値演算部が演算した指令値を有する振幅レベル指令を第1の高周波発生部に与えるように構成される。
【0025】
第3の発明
本願に開示された第3の発明は、第1の発明に適用されるもので、本発明においては、上記レベル制御部が、前記合計値と設定された制限値との差を演算して合計値の制限値からの超過量を演算する電力超過量演算部と、第1の高周波発生部に与える振幅レベル指令値を演算するレベル指令値演算部と、レベル指令値演算部が演算した指令値を有する振幅レベル指令を第1の高周波発生部に与える振幅指令出力部とを備えている。
レベル指令値演算部は、合計値が前記制限値以下のときに進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を設定値に保つために第1の高周波発生部に与える振幅レベル指令の指令値を演算し、合計値が制限値を超えているときには進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力と超過量との和を設定値に保つために第1の高周波発生部に与える振幅レベル指令値を演算するように構成される。
【0026】
上記のように構成すると、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値を超えたときに、見かけ上、合計値の制限値からの超過量分だけ、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の検出値を大きくすることができるため、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の実際の値を超過量分だけ小さくして、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値を超えるのを防ぐことができる。
【0027】
第4の発明
第4の発明は、第1の発明に適用されるもので、本発明においても、レベル制御部が、合計値と設定された制限値との差を演算して合計値の制限値からの超過量を演算する電力超過量演算部と、第1の高周波発生部に与える振幅レベル指令値を演算するレベル指令値演算部と、レベル指令値演算部が演算した指令値を有する振幅レベル指令を第1の高周波発生部に与える振幅指令出力部とを備えている。
本発明で用いるレベル指令値演算部は、前記合計値が制限値以下のときに進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を設定値に保つために第1の高周波発生部に与える振幅レベル指令の指令値を演算し、合計値が制限値を超えているときには進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力を、設定値から超過量を減算して求めた目標値に保つために第1の高周波発生部に与える振幅レベル指令値を演算する。
【0028】
上記のように構成すると、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値を超えたときに、合計値の制限値からの超過量分だけ、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の目標値を小さくすることができるため、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の実際の値を超過量分だけ小さくして、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値を超えるのを防ぐことができる。
【0029】
第5の発明
第5の発明は、負荷に供給される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に対して許容される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の制限値を決定して、負荷側から戻ってくる反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を制限値以下に保つように、負荷に供給される進行波電力を制御する機能を有する高周波電源装置に係わるもので、第5の発明に係わる高周波電源装置は、下記の構成要素により構成される。
(a)′周波数指令により指令された出力周波数と振幅レベル指令により指令された出力振幅レベルとを有する高周波信号を発生するように構成されて第1及び第2の周波数を有する第1及び第2の高周波信号をそれぞれ発生する第1及び第2の高周波発生部。
(b)′第1の高周波信号を増幅する電力増幅部。
(c)′電力増幅部から負荷に向かう進行波電力及び前記負荷側から前記電力増幅部に向かう反射波電力をそれぞれ検出して前記進行波電力の情報を含む進行波検出信号及び前記反射波電力の情報を含む反射波検出信号をそれぞれ出力する高周波検出部。
(d)′
前記第1の周波数を変化させた場合でも第1の周波数と第2の周波数との差を一定に保つように前記第1の高周波発生部及び第2の高周波発生部に周波数指令を与える周波数制御部。
(e)′高周波検出部により得られた進行波検出信号と前記第2の高周波信号とを乗算して、前記第1の周波数と前記第2の周波数との差の周波数成分を含む信号を得る第1の乗算部。
(f)′第1の乗算部の出力から前記第1の周波数と前記第2の周波数との差の周波数成分を抽出して第1の差周波数信号を出力する第1のフィルタ。
(g)′第1のフィルタから出力される第1の差周波数信号のレベルを検出して進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の情報を含む進行波電力基本周波数成分検出信号を出力する第1の差周波数信号レベル検出部。
(h)′高周波検出部により得られた反射波検出信号と前記第2の高周波信号とを乗算して、前記第1の周波数と前記第2の周波数との差の周波数成分を含む信号を得る第2の乗算部。
(i)′第2の乗算部の出力から前記第1の周波数と前記第2の周波数との差の周波数成分を抽出して第2の差周波数信号を出力する第2のフィルタ。
(j)′第2のフィルタから出力される第2の差周波数信号のレベルを検出して前記反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の情報を含む反射波電力基本周波数成分検出信号を出力する第2の差周波数信号レベル検出部。
(k)′反射波電力基本周波数成分検出信号から検出される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が、電力増幅部から負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分の設定値または進行波電力基本周波数成分検出信号から検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に対して演算された許容上限値以下であるときには、進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を前記設定値に保つように第1の高周波発生部に振幅レベル指令を与え、反射波電力基本周波数成分検出信号から検出される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が前記許容上限値を超えたときには、反射波電力基本周波数成分検出信号から検出される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を許容上限値以下に低下させるように第1の高周波発生部に振幅レベル指令を与えるレベル制御部。
【0030】
上記のように構成すると、反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が、負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の設定値または該進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の検出値に対して演算された許容上限値を超えることがないように、電力増幅部の出力を抑制する制御を行うことができるため、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に対して反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の許容上限値を適切な値(進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値を許容上限値以下に保つ際に許容される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の最大値)に演算するようにしておくことにより、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値を超えるのを防いで、電力増幅部を構成する半導体増幅素子の保護を的確に図ることができる。反射波電力のスプリアス成分の影響に対しては、上記許容上限値に余裕を持たせておく(上限値を小さめに設定しておく)ことにより対処することができる。
【0031】
また、上記のように、第1の周波数と第2の周波数との差周波数を一定に保つように第1の高周波発生部及び第2の高周波発生部に周波数指令を与えるようにすると、電源装置の出力周波数(第1の周波数)を変更した場合でも第1の周波数と第2の周波数との差を一定に保つことができるため、電源装置の出力周波数を変更した場合にも、進行波電力及び反射波電力に含まれる基本周波数成分を、フィルタの周波数特性の影響を受けることなく正確に検出して、電力増幅部の保護を図るための制御を的確に行うことができる。
【0032】
第6の発明
第6の発明は、第5の発明に適用される。本発明においては、上記レベル制御部が、電力増幅部から負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の設定値または進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に対して反射波電力の許容上限値を演算する反射波上限値演算部と、反射波電力基本周波数成分検出信号から検出された反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と前記許容上限値との差を演算して反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の許容上限値からの超過量を演算する電力超過量演算部と、検出された反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が前記許容上限値以下のときには、進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分を設定値に保つために第1の高周波発生部に与える振幅レベル指令の指令値を演算し、検出された反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が許容上限値を超えているときには進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力の値に前記超過量を加算することにより求めた電力値を設定値に保つために第1の高周波発生部に与える振幅レベル指令の指令値を演算するレベル指令値演算部と、レベル指令値演算部が演算した指令値を有する振幅レベル指令を第1の高周波発生部に与える振幅指令出力部とを備えた構成とされる。
【0033】
上記のように構成すると、反射波電力に含まれる基本周波数成分が、負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分の設定値または進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に対して演算された反射波電力の制限値を超えたときに、反射波電力の制限値からの超過量分だけ、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の検出値を見かけ上大きくすることができるため、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を抑制することができる。従って、反射波電力の許容上限値を適切な値(進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値を許容上限値以下に保つ際に許容される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の最大値)に演算することにより、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値を超えるのを防いで、電力増幅部を構成する半導体増幅素子の保護を的確に図ることができる。
【0034】
第7の発明
第7の発明も第5の発明に適用される。本発明においては、上記レベル制御部を、電力増幅部から負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の設定値または進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に対して反射波電力の許容上限値を演算する反射波上限値演算部と、反射波電力基本周波数成分検出信号から検出された反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と許容上限値との差を演算して反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の許容上限値からの超過量を演算する電力超過量演算部と、検出された反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が許容上限値以下のときには、進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を設定値に保つために第1の高周波発生部に与える振幅レベル指令の指令値を演算し、検出された反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が許容上限値を超えているときには進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力を、その設定値から上記超過量を減算して求めた目標値に保つために第1の高周波発生部に与える振幅レベル指令値を演算するレベル指令値演算部と、レベル指令値演算部が演算した指令値を有する振幅レベル指令を前記第1の高周波発生部に与える振幅指令出力部とを備えた構成とする。
【0035】
上記のように構成すると、反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が許容上限値を超えたときに、反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の許容上限値からの超過量分だけ、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の目標値を小さくすることができるため、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を抑制することができる。従って、反射波電力の許容上限値を適切な値(進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値を許容上限値以下に保つ際に許容される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の最大値)に演算することにより、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値を超えるのを防ぐことができる。
【0036】
第8の発明
第8の発明は、第1の発明ないし第7の発明のいずれかに適用されるもので、本発明においては、第2の高周波信号のレベルを一定に保つように第2の高周波発生部に振幅レベル指令を与えるレベル制御部が更に設けられている。
【0037】
上記のように構成すると、第2の高周波信号のレベルを常に一定に保つことができるため、進行波電力に含まれる基本周波数成分及び反射波電力に含まれる基本周波数成分を正確に検出することができる。
【発明の効果】
【0038】
第1の発明ないし第4の発明によれば、高周波電源装置の出力周波数である第1の周波数に対して第2の周波数を適切に設定することにより、進行波電力に含まれる基本周波数成分及び反射波電力に含まれる基本周波数成分を、減衰特性が優れたフィルタを入手し得る、十分に低い周波数(第1の周波数と第2の周波数との差の周波数)を有する差周波数信号に変換することができるため、進行波電力及び反射波電力に含まれる基本周波数成分を、フィルタの特性の影響を受けることなく、正確に検出することができる。従って、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値を制限値以下に制限して電力増幅部の保護を図る制御を的確に行うことができる。
【0039】
また、第1の発明ないし第4の発明によれば、第1の周波数と第2の周波数との差周波数を一定に保つように第1の高周波発生部及び第2の高周波発生部に周波数指令を与えるので、電源装置の出力周波数(第1の周波数)を変更した場合でも第1の周波数と第2の周波数との差を一定に保つことができる。従って、電源装置の出力周波数を変更した場合にも、進行波電力及び反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を、フィルタの周波数特性の影響を受けることなく正確に検出して、電力増幅部の保護を図るための制御を的確に行うことができる。
【0040】
第5の発明ないし第7の発明によれば、反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が、負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に対して演算された許容上限値を超えることがないように、電力増幅部の出力を抑制する制御を行うことができるため、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に対して反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の許容上限値を適切な値に演算するようにしておくことにより、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値を超えるのを防いで、電力増幅部を構成する半導体増幅素子の保護を的確に図ることができる。
【0041】
また、第5の発明ないし第7の発明によれば、第1の周波数と第2の周波数との差周波数を一定に保つように第1の高周波発生部及び第2の高周波発生部に周波数指令を与えるので、電源装置の出力周波数(第1の周波数)を変更した場合でも第1の周波数と第2の周波数との差を一定に保つことができる。従って、電源装置の出力周波数を変更した場合にも、進行波電力及び反射波電力に含まれる基本周波数成分を、フィルタの周波数特性の影響を受けることなく正確に検出して、電力増幅部の保護を図るための制御を的確に行うことができる。
【0042】
第8の発明によれば、第2の高周波信号のレベルを常に一定に保つことができるため、進行波電力に含まれる基本周波数成分及び反射波電力に含まれる基本周波数成分を正確に検出して、負荷に供給する進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を設定値に保つ制御及び進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値を制限値以下に保って電力増幅部を構成する半導体素子を保護する制御を正確に行わせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は本発明に係わる高周波電源装置の第1の実施形態の構成を示したものである。本実施形態では、出力周波数を可変とする場合に、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を設定値に保つ制御を精度よく行わせるとともに、反射波電力の基本周波成分を精度よく検出して、反射波電力が過大になったときに電力増幅部が破損するのを防ぐために電力増幅部の出力を抑制する制御を的確に行うことができるようにする。
【0045】
先ず本実施形態の構成を概略的に説明すると、
図1において、101は、第1の周波数指令Cf1により指令された出力周波数(第1の周波数)f1と第1の振幅レベル指令Ca1により指令された出力振幅レベルとを有する第1の高周波信号S1を発生する第1の高周波発生部、102は第2の周波数指令Cf2により指令された出力周波数(第2の周波数)f2と第2の振幅レベル指令Ca2により指令された出力振幅レベルとを有する第2の高周波信号S2を発生する第2の高周波発生部である。
【0046】
また103は公知の電力増幅回路からなる電力増幅部で、第1の高周波信号S1を増幅して負荷に与える高周波電力を出力する。電力増幅部103の出力は図示しないインピーダンス整合装置を通してプラズマ処理装置等の負荷に供給される。なお、インピーダンス整合装置が用いられない場合もある。
【0047】
104は、電力増幅部103の出力端と図示しないインピーダンス整合装置との間(インピーダンス整合装置が設けられない場合には、電力増幅部103の出力端と負荷との間)に挿入された高周波検出部である。高周波検出部104は、例えば方向性結合器からなっていて、電力増幅部103から負荷に向かう進行波電力の情報を含む進行波検出信号Spと、負荷側から電力増幅部103に向かう反射波電力の情報を含む反射波検出信号Srとを出力する。
【0048】
105は第1の高周波信号S1の周波数f1と第2の高周波信号S2の周波数f2との差Δfを一定に保つように第1及び第2の高周波発生部101及び102に周波数指令Cf1及びCf2をそれぞれ与える周波数制御部である。
【0049】
周波数制御部105はまた、後述するように、負荷側から電力増幅部103に戻ってくる反射波電力を可能な限り減少させるべく、第1の高周波発生部101及び第2の高周波発生部102からそれぞれ発生させる高周波信号の周波数f1及びf2を微調整する機能を有する。これらの周波数の微調整を行う際にも、周波数f1とf2との差Δfは一定に保たれる。
【0050】
図1において、106は、高周波検出部104が出力する進行波検出信号Spと第2の高周波発生部102が出力する第2の高周波信号S2とが入力された第1の乗算部、107は第1の乗算部106の出力から進行波電力に含まれる基本周波数成分のレベルを示す第1の差周波数信号を抽出する第1のフィルタである。108は第1のフィルタ107から得られる第1の差周波数信号のレベルを検出して進行波電力基本周波数成分検出信号Spaを出力する第1の差周波数信号レベル検出部、109は高周波電源の出力(進行波電力)のレベルを設定する第1のレベル設定部である。進行波電力基本周波数成分検出信号Spaは、電力増幅部103から負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分のレベルを示す信号である。
【0051】
また110は、高周波検出部104が出力する反射波検出信号Srと、第2の高周波発生部102が出力する第2の高周波信号S2とが入力された第2の乗算部、111は第2の乗算部110の出力から反射波電力に含まれる基本周波数成分のレベルを示す第2の差周波数信号を抽出する第2のフィルタ、112は第2のフィルタ111から得られる第2の差周波数信号のレベルを検出して反射波電力基本周波数成分検出信号Sprを出力する第2の差周波数信号レベル検出部である。反射波電力基本周波数成分検出信号Sprは、負荷側から電力増幅部に戻ってくる反射波波電力に含まれる基本周波数成分のレベルを示す信号である。
【0052】
113は負荷側から電力増幅部103に戻ってくる反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の制限値を設定する制限値設定部、114は第1及び第2の差周波数信号レベル検出部108及び112の出力と、第1のレベル設定部109の出力と制限値設定部112の出力とを入力として、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を設定値に保つ制御と、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値を制限値以下に保つ制御とを行うように第1の高周波発生部101に振幅レベル指令Ca1を与える第1のレベル制御部である。
【0053】
また115は、第2の高周波発生部102の出力レベルを検出する出力レベル検出部、116は、第2の高周波発生部102の出力のレベルを設定する第2のレベル設定部、117は、出力レベル検出部115により検出される第2の高周波発生部102の出力レベルを第2のレベル設定部116により設定されたレベルに保つように第2の高周波発生部102に振幅レベル指令Ca2を与える第2のレベル制御部である。
【0054】
本実施形態ではまた、負荷側から電力増幅部に戻ってくる反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の基準レベルを設定する反射波基準レベル設定部118が設けられ、この反射波基準レベル設定部の出力が、第2の差周波数レベル検出部112から得られる反射波電力基本周波数成分検出信号とともに周波数制御部105に入力されている。
【0055】
以下、上記の各部を更に詳細に説明する。
本実施形態で用いる周波数制御部105は、高周波電源装置の出力周波数を第1の周波数f1として、第1の周波数f1の高周波信号S1を発生することを指令する第1の周波数指令Cf1を第1の高周波発生部101に与えるとともに、第1の周波数f1に対して一定の差Δfを有する周波数を第2の周波数f2として、この第2の周波数f2を有する第2の高周波信号S2を発生させることを指令する第2の周波数指令Cf2を、第2の高周波102に与える。周波数制御部105は、第1の高周波信号の周波数f1と第2の高周波信号の周波数f2との差を常に一定値Δf(=|f1−f2|)に保つように、第1の高周波発生部101及び第2の高周波発生部102を制御する。
【0056】
ここで、第1の周波数f1(第1の高周波発生部101の出力周波数)は、高周波電源装置の基本周波数である。第2の周波数f2は、第1の周波数f1よりも低くてもよく、高くてもよい。本実施形態では、Δfを0.5MHzに設定して、第1の高周波信号の基本周波数が50MHzのときに、第2の周波数f2が49.5MHzになるようにしている。
【0057】
周波数制御部105はまた、第2の差周波数信号レベル検出部112により検出された反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が反射波基準レベル設定部118により設定された反射波基準値を超えているときに、第1の周波数f1の値を微小な周波数範囲ΔF内で変化させて、その周波数範囲内で反射波電力を最小にする第1の周波数f1の値を探索する周波数探索手段と、この周波数探索手段により探索された周波数を新たな基準周波数として、第1の周波数f1を該新たな基準周波数に等しくするように周波数指令Cf1を与える手段とを備えており、これらの手段により、反射波電力を基準値以下に抑制する制御を行う。
【0058】
第1の乗算部106は、進行波検出信号Spと第2の高周波信号S2とを乗算することにより、第1の高周波信号S1の周波数(第1の周波数)f1と第2の高周波信号S2の周波数(第2の周波数)f2との差の周波数成分を含む信号Sfp′を出力する部分であり、第1のフィルタ107は、第1の乗算部106の出力から希望する第1の差周波数信号Sfpを抽出するフィルタである。このフィルタは、アナログフィルタ(パンドパスフィルタまたはローパスフィルタ)からなっていてもよく、デジタルフィルタからなっていてもよい。
【0059】
周知のように、乗算部で2つの信号を乗算すると、2つの信号の周波数の差の周波数成分と、2つの信号の周波数の和の周波数成分とを含む信号が得られる。例えば
図1に示した高周波電源装置が、
図11に示したシステムの第1の高周波電源装置11であるとし、その基本周波数(第1の高周波信号S1の周波数f1)が50MHz、第2の高周波電源装置12の基本周波数が2MHzであるとする。この場合、第1の高周波電源装置11の出力端子には、出力伝送系を通して、基本周波数50MHzの近傍にスプリアス成分として46,48,52,54MHzなどの成分が流入してくる。この場合、第2の高周波発生部102の出力周波数(第2の周波数f2)を49.5MHzに設定して、希望の差周波数を0.5MHzとすると、基本周波数50MHzに対する差周波数は0.5MHz、和周波数は99.5MHzとなる。同様に上記のスプリアス成分に対する差周波数は3.5,1.5,2.5,4.5MHzになり、和周波数は95.5,97.5,101.5, 103.5MHzとなる。スプリアス成分に対する差周波数はいずれも、基本周波数に対する差周波数よりも高い値を示す。
【0060】
本発明においては、第1の高周波信号S1の周波数f1と第2の高周波信号S2の周波数f2との差を常に一定値Δfに保つように制御するため、
図11のシステムにおいて、第1の高周波電源装置11の出力周波数(第1の周波数f1)を変化させた場合でも、第1の周波数f1と第2の周波数f2との差周波数は一定(上記の例では0.5MHz)となる。
【0061】
例えば、第1の周波数f1を50MHz→50.5MHz→51.0MHzのように変化させる場合、第2の周波数f2は49.5MHz→50.0MHz→50.5MHzのように変化させられ、第1の周波数f1と第2の周波数f2との差周波数が常に0.5MHz(一定)に保たれる。また、スプリアス周波数も、基本周波数(第1の周波数f1)の変化に応じて変化するので、スプリアス周波数と第2の周波数との差周波数も上記の関係と変わらない。
【0062】
したがって、第1のフィルタ107として、基本周波数に対する差周波数0.5MHzの成分を通過させ、スプリアス成分の差周波数以上の周波数成分を除去する特性を有するフィルタ(例えば、カットオフ周波数が1MHzの特性を有するもの)を用いれば、フィルタの周波数特性(周波数によってフィルタの減衰率が変化する特性)の影響を受けることなく、基本周波数に対する差周波数0.5MHzの成分を精度良く抽出することができる。
【0063】
すなわち、第1のフィルタ107における抽出対象を、第1の高周波信号S1の周波数f1と第2の高周波信号S2の周波数f2との差の周波数成分(0.5MHzの成分)とし、フィルタ107の特性を、スプリアス周波数と第2の高周波信号S2の周波数f2との差の周波数成分(3.5,1.5,2.5,4.5MHz等の周波数成分)を除去する特性にすれば、第1の高周波信号S1の周波数f1を変化させても、抽出対象の周波数は一定であるため、抽出対象の出力レベルはフィルタ107の周波数特性に影響されない。フィルタ107により抽出される差周波数信号のレベルは、電力増幅部103から出力される進行波電力に含まれる基本周波数成分のレベルに対応している。そのため、第1のフィルタ107により抽出された差周波数信号Sfpのレベルを検出することにより、進行波電力に含まれる基本周波数成分のレベルを検出することができる。
【0064】
なお、
図11に示したシステムにおいて、第1の高周波電源装置11の基本周波数が50MHzから50.5MHzに変化した場合、基本周波数50MHzに対する和周波数は100.5MHzとなり、上記に示した関係と異なる。また、スプリアス成分に対する和周波数も上記に示した関係と異なってしまう。しかし、これらの周波数成分は、第1のフィルタ107により除去される対象であるので、進行波電力に含まれる基本周波数成分の検出には影響を及ぼさない。
【0065】
第1のフィルタ107により抽出された第1の差周波数信号Sfpは、第1の差周波数信号レベル検出部108に与えられる。第1の差周波数信号レベル検出部108は、差周波数信号Sfpをアナログ処理またはデジタル処理することにより、差周波数信号Sfpのレベルを検出して、進行波電力に含まれる基本周波数成分のレベルを示す進行波電力基本周波数成分検出信号Spaを発生する。
【0066】
第1の差周波数信号Sfpをアナログ処理することにより、差周波数信号Sfpのレベルを検出する差周波数信号レベル検出部108は、ダイオード検波や自乗検波を行う検波回路により構成することができる。
【0067】
また第1の差周波数信号Sfpをデジタル処理することにより、差周波数信号Sfpのレベルを検出する差周波数信号レベル検出部は、例えば、差周波数信号の値をサンプリングする手段と、そのサンプリング値から差周波数信号の平均値または実効値を演算する手段とにより構成できる。また差周波数信号を検波する検波回路と該検波回路の出力をデジタル信号に変換するA/D変換器とによっても、差周波数信号のレベルをデジタル量として出力する差周波数信号レベル検出部108を構成することができる。
【0068】
本実施形態では、差周波数信号Sfpをデジタル処理することにより、差周波数信号Sfpのレベルを検出するように(デジタル回路により)第1の差周波数信号レベル検出部108が構成されている。
【0069】
第1の差周波数信号レベル検出部108をデジタル回路により構成する場合、第1の差周波数信号レベル検出部108が出力する進行波電力基本周波数成分検出信号Spaの値は、進行波検出信号Spの大きさ(電圧値)を示す値でもよく、進行波検出信号Spの電圧値を換算して求めた進行波電力の電力値を示す値でもよい。本実施形態では、第1の差周波数信号レベル検出部108が出力する進行波電力基本周波数成分検出信号が、進行波電力の電力値を示す値を有するように構成されている。
【0070】
本実施形態では、第1の乗算部106と、第1のフィルタ107と、第1の差周波数信号レベル検出部108とにより、電力増幅部103から負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分を検出する進行波検出部が構成されている。
【0071】
本実施形態ではまた、第2の高周波発生部102の出力S2が、高周波検出部104から出力される反射波検出信号Srとともに第2の乗算部110に入力されている。第2の乗算部110は、高周波検出部104により得られた反射波検出信号Srと第2の高周波発生部102が発生する第2の高周波信号S2とを乗算して、第1の周波数f1と第2の高周波信号の周波数f2との差の周波数成分を含む信号を出力する。第2の乗算部110の出力信号は、第2のフィルタ111に与えられる。
【0072】
第2のフィルタ111は、第2の乗算部110の出力から、反射波電力の基本周波数f1と第2の周波数f2との差の周波数を有する第2の差周波数信号を抽出して、抽出した第2の差周波数信号を第2の差周波数信号レベル検出部112に与える。
【0073】
第2の差周波数信号レベル検出部112は、第2のフィルタ111ら出力される第2の差周波数信号のレベルを検出して、反射波電力に含まれる基本周波数成分のレベルを示す反射波電力基本周波数成分検出信号Sprを出力する。
【0074】
本実施形態では、第2の乗算部110と、第2のフィルタ111と、第2の差周波数信号レベル検出部112とにより、負荷側から電力増幅部103に戻ってくる反射波電力に含まれる基本周波数成分を検出する反射波検出部が構成されている。
【0075】
本実施形態では、第1の差周波数信号レベル検出部108から得られる進行波電力基本周波数成分検出信号Spaと、第2の差周波数信号レベル検出部112から得られる反射波電力基本周波数成分検出信号Sprとが、第1のレベル設定部109から得られる第1のレベル設定信号Spas及び制限値設定部113から得られる制限値設定信号Sptsと共に、第1のレベル制御部114に与えられている。
【0076】
ここで、第1のレベル設定部109から得られる第1のレベル設定信号Spasは、電力増幅部103から出力される進行波電力の設定値を与える信号である。また制限値設定部113から得られる制限値設定信号Sptsは、電力増幅部から負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の設定値(第1のレベル設定信号Spasにより与えられる設定値)または進行波電力基本周波数成分検出信号Sraから検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と、反射波電力基本周波数成分検出信号Sprから検出される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値の制限値を与える信号である。この制限値は、電力増幅部103から負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の設定値よりも大きい値で、かつ電力増幅部103を構成する半導体増幅素子を保護するために必要なレベルに設定されている。
【0077】
第1のレベル制御部114は、第1のレベル設定信号Spasにより設定される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の設定値または進行波電力基本周波数成分検出信号Spaから検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と、反射波電力基本周波数成分検出信号Sprから検出される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が、制限値設定信号Sptsにより設定される制限値以下であるときに、進行波電力基本周波数成分検出信号Spaから検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を、第1のレベル設定信号Spasにより設定される設定値に保つように第1の高周波発生部101に振幅レベル指令Ca1を与え、上記合計値が制限値を超えたときには、合計値を制限値以下に低下させるように第1の高周波発生部101に振幅レベル指令Ca1を与える。
【0078】
第1のレベル制御部112は、アナログ回路からなっていてもよく、デジタル回路からなっていてもよい。本実施形態では、第1の高周波発生部101がDDS(Direct Digital Synthesizer)からなっているため、第1のレベル制御部112から第1の高周波発生部101にデジタル信号からなる振幅レベル指令を与える必要がある。そのため、第1のレベル制御部112がアナログ回路により構成される場合には、第1のレベル制御部112の出力側にADコンバータ等を設けて、第1のレベル制御部112の出力信号をデジタル信号に変換する必要がある。
【0079】
本実施形態では、第1の差周波数信号レベル検出部110がデジタル回路からなっていて、レベル検出信号Spaをデジタル信号として出力するため、第1のレベル制御部112もデジタル回路により構成されている。
【0080】
本実施形態ではまた、第2の高周波発生部102の出力レベルを検出する出力レベル検出部115設けられて、その出力信号S2aが、第2のレベル設定部116から出力されるレベル設定信号S2asと共に第2のレベル制御部117に入力されている。
【0081】
第2のレベル制御部117は、出力レベル検出部115により検出された第2の高周波発生部102の出力レベルを第2のレベル設定部116により設定された設定レベルと比較演算し、その演算結果に基づいて、第2の高周波発生部102が出力する第2の高周波信号S2のレベルを設定レベルに保つように、第2の高周波発生部102に振幅レベル指令Ca2を与える。
【0082】
本実施形態では、第2のレベル制御部117がデジタル回路からなっていて、出力レベル検出部115ら得られるレベル検出信号S2aがA/D変換器を通して第2のレベル制御部117に与えられる。第2のレベル制御部117は、レベル検出信号S2aのレベルを設定レベルに等しくするために必要な第2の高周波信号S2のレベルを演算して、演算したレベルの第2の高周波信号S2を第2の高周波発生部102から発生させるように、第2の高周波発生部102に振幅レベル指令Ca2を与える。
【0083】
このように構成しておくと、第1の高周波信号の周波数f1及び第2の高周波信号の周波数f2を変化させた場合でも、第2の高周波信号S2のレベルを常に一定に保つことができるため、第1の差周波数信号レベル検出部108から得られる進行波電力基本周波数成分検出信号Spaと負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との対応関係、及び第2の差周波数信号レベル検出部112から得られる反射波電力基本周波数成分検出信号Sprと負荷側から戻ってくる反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との対応関係が変動するのを防ぐことができ、負荷に供給される進行波電力を設定レベルに保つ制御と、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値を制限値以下に保つ制御とを正確に行わせることができる。
【0084】
本実施形態ではまた、高周波検出部104により検出される反射波電力を基準レベル以下に抑制するように第1の高周波発生部101の出力周波数を変更する制御を行わせるために、反射波電力基本周波数検出信号Sprと、反射波基準レベル設定部118から得られる反射波基準レベル設定信号とが周波数制御部105に与えられている。
【0085】
周波数制御部105は、反射波電力基本周波数検出信号Sprにより検出された反射波電力に含まれる基本周波数成分のレベルが反射波基準レベル設定部118により設定された反射波基準値を超えているときに、第1の周波数f1の値を微小な周波数範囲ΔF内で変化させて、その周波数範囲内で反射波電力を最小にする第1の周波数f1の値を探索する周波数探索手段を備えていて、この周波数探索手段により探索された周波数を新たな基準周波数とし、第1の周波数f1を該基準周波数に等しくするように周波数指令Cf1を与えることにより、反射波電力を基準値以下に抑制する制御を行う。
【0086】
反射波基準値は、電力増幅部103から負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が設定値に等しく、電力増幅部と負荷との間に設けられているインピーダンス整合器によるインピーダンスの整合が大きく崩れていない状態で、電力増幅部103から出入りする進行波電力と反射波電力との合計値を、電力増幅部103を構成する半導体増幅素子を保護するために必要な最大レベル以下に制限するために必要な大きさに設定される。
【0087】
上記第1のレベル制御部114は、進行波電力基本周波数成分検出信号Spaにより検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力基本周波数成分検出信号Sprにより検出される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値以下であるときに、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を設定値に保つために第1の高周波発生部101に与える振幅レベル指令Ca1の指令値を演算し、上記合計値が制限値を超えたときには、合計値を制限値以下に制限するために第1の高周波発生部101に与える振幅レベル指令Ca1の指令値を演算するレベル指令値演算部と、このレベル指令値演算部が演算した指令値を有する振幅レベル指令を第1の高周波発生部101に与える振幅指令出力部とにより構成することができる。
【0088】
本実施形態では、周波数制御部105が、微小な周波数範囲内で反射波電力を最小にする第1の周波数f1の値を探索して、探索した周波数を新たな基準周波数とし、第1の周波数f1を該基準周波数に等しくするように、第1の高周波発生部101に周波数指令Cf1を与えるので、電力増幅部103と負荷との間のインピーダンスの整合がほぼとれている定常状態では、反射波電力が基準値以下に保たれている。
【0089】
この状態では、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値以下であるため、第1のレベル制御部114が、第1の高周波発生部101から電力増幅部103を通して負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を設定値に保つために必要な振幅レベル指令Ca1を第1の高周波発生部101に与える。従って、負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値は設定値に保たれる。これに対し、何らかの原因で、電力増幅部103と負荷との間のインピーダンスの整合が大きく崩れ、反射波電力が増大して進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値を超えた場合には、第1のレベル制御部114が、進行波電力と反射波電力の合計値を制限値以下に制限するために第1の高周波発生部101に与える振幅レベル指令Ca1の指令値を演算して、演算した指令値を有する振幅レベル指令を第1の高周波発生部101に与えるため、進行波電力と反射波電力の合計値が制限値以下に制限され、電力増幅部103の保護が図られる。
【0090】
図8を参照すると、
図1の実施形態の要部をマイクロプロセッサを用いて構成する場合に、マイクロプロセッサに実行させる処理のアルゴリズムを示すフローチャートが示されている。このアルゴリズムによる場合には、先ずステップS101で各部の初期化が行われる。この初期化のステップでは、メモリの内容が初期化されるとともに、基準周波数の初期値が50MHzに設定される。
【0091】
次いでステップS102で第1及び第2の高周波発生部101及び102の出力周波数f1及びf2を決定する。先ず高周波電源装置の出力周波数である第1の周波数f1を決定し、第1の周波数f1に基づいて第2の周波数f2を決定する。本実施形態では、第1の周波数を50.0MHz、第2の周波数を49.5MHzとする。
【0092】
次いでステップS103で各高周波発生部から高周波信号を出力させる。このとき各高周波信号の周波数及び振幅は初期値である。初期値の定め方には、大きく分けて次の3通りの方法がある。
(1)初期値を外部から各高周波発生部に入力する。例えば、周波数は周波数制御部から各高周波発生部に入力し、振幅は図示しない外部装置から各高周波発生部に入力する。周波数及び振幅の双方を外部から入力するようにしてもよい。
(2)各高周波発生部自体にメモリを設けて、周波数及び振幅を記憶させておく。
(3)各高周波発生部に民生機器などで用いられているラストワンメモリー機能を搭載して、電源を切る直前の最後の振幅及び周波数の設定値を各高周波発生部内に記憶させておくようにしてもよい。
【0093】
次いでステップS104で電力増幅部103から進行波電力を出力させる。またステップS105で高周波検出部104から進行波検出信号Sp及び反射波検出信号Srを読み込む。次いでステップS106で、第1の差周波数信号レベル検出部108が出力している進行波電力基本周波数成分検出信号の値から進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を検出してその検出値をメモリに記憶させ、第2の差周波数信号レベル検出部112が出力している反射波電力基本周波数成分検出信号の値から反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を検出して、その値をメモリに記憶させる。
【0094】
次いでステップS107で、進行波電力基本周波数成分検出信号から検出された進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と、反射波電力基本周波数成分検出信号から検出される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値とを加算して、両者の合計値を演算し、ステップS108で、演算された合計値が制限値以下であるか否かを判定する。
【0095】
ステップS108で合計値が制限値以下であると判定されたときには、ステップS109に進んで、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を第1のレベル設定部109により設定された設定値とするように、第1の高周波発生部101に振幅レベル指令Ca1を与える。またステップS108で合計値が制限値を超えていると判定されたときには、ステップS110に進んで、合計値を制限値以下とするように第1の高周波発生部101に振幅レベル指令Ca1を与える。
【0096】
ステップS109またはS110を実行した後、ステップS111に進んで、周波数制御を行う。この周波数制御では、第2の差周波数信号レベル検出部112が出力する反射波電力基本周波数成分検出信号から検出される反射波電力に含まれる基本周波数成分のレベルと、反射波基準レベル設定部118により設定された反射波基準レベルとを比較して、反射波電力に含まれる基本周波数成分のレベルが反射波基準レベル以下であるときには、第1の高周波発生部101の出力周波数を50MHzとし、第2の高周波発生部102の出力周波数を49.5MHzとするように、第1の高周波発生部101及び第2の高周波発生部102に周波数指令Cf1及びCf2を与える。
【0097】
ステップS111ではまた、検出された反射波電力に含まれる基本周波数成分が反射波基準レベルを超えているときに第1の周波数f1を設定した微小範囲で変化させながら反射波検出値を最小にする周波数f1を探索する過程を行って、探索した周波数f1を新たな基準周波数とし、第1の周波数f1を新たな基準周波数に一致させるように第1の高周波発生部101の周波数指令Cf1を与える。また、第2の周波数f2を第1の周波数f1よりもΔfだけ低い周波数とするように、第2の高周波発生部102に周波数指令Cf2を与える。その後、ステップS103に戻って処理を繰り返す。
【0098】
図8に示したアルゴリズムによる場合には、ステップS105及びS106により、第1の差周波数信号レベル検出部108及び第2の差周波数信号レベル検出部112が構成される。またステップS107ないしS110により第1のレベル制御部114が構成され、ステップS102及びステップS111により、周波数制御部105が構成される。
【0099】
[第2の実施形態]
図2は、本発明の第2の実施形態を示したものである。本実施形態では、第1のレベル制御部114が、電力超過量演算部121と、第1のレベル指令値演算部122と、第1の振幅指令出力部123とにより、第1のレベル制御部114が構成されている。
【0100】
電力超過量演算部121は、第1の差周波数信号レベル検出部108の出力(進行波電力基本周波数成分検出信号)から検出された進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と、第2の差周波数成分検出部112の出力(反射波電力基本周波数成分検出信号)から検出された反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値と、制限値設定部113により設定された制限値との差を演算して、合計値の制限値からの超過量を演算する部分である。
【0101】
第1のレベル指令値演算部122は、前記合計値が前記制限値以下のときに進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を、第1のレベル設定部109により設定された設定値に保つために第1の高周波発生部に与える振幅レベル指令の指令値を演算し、前記合計値が前記制限値を超えているときには進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力と前記超過量との和を設定値に保つために第1の高周波発生部に与える振幅レベル指令値を演算する。
【0102】
第1の振幅指令出力部123は、第1のレベル指令値演算部122が演算した指令値を有する振幅レベル指令Ca1を第1の高周波発生部101に与える。
【0103】
上記のように、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値を超えているときに、検出されている進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と合計値の制限値からの超過量との和を設定値に保つために第1の高周波発生部101に与える振幅レベル指令値を演算するようにすると、合計値が制限値を超えたときに、見かけ上、合計値の制限値からの超過量分だけ、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の検出値を大きくすることができるため、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の実際の値を超過量分だけ小さくして、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値を超えるのを防ぐことができる。
【0104】
本実施形態ではまた、第2の高周波信号S2のレベルを一定に保つように第2の高周波発生部102に振幅レベル指令を与える第2のレベル制御部117が、出力レベル検出部115により検出される第2の高周波発生部102の出力レベルを、第2のレベル設定部116により設定された設定値に保つために第2の高周波発生部102に与える振幅レベル指令Ca2の指令値を演算する第2のレベル指令値演算部124と、第2のレベル指令値演算部124が演算した指令値を有する振幅レベル指令Ca2を第1の高周波発生部に与える振幅指令出力部125とにより構成されている。
【0105】
上記の説明では、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値を超えているときに、検出されている進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と超過量との和を設定値に保つために第1の高周波発生部101に与える振幅レベル指令値を演算するように、第1のレベル指令値演算部122を構成するとしたが、合計値が制限値を超えているときに進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力を、「設定値から超過量を減算して求めた目標値」に保つために第1の高周波発生部に与える振幅レベル指令値を演算するように、第1のレベル指令値演算部122を構成してもよい。
【0106】
即ち、第1のレベル制御部114は、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値と設定された制限値との差を演算して合計値の制限値からの超過量を演算する電力超過量演算部121と、上記合計値が制限値以下のときには、進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を第1のレベル設定部109により設定された設定値に保つために第1の高周波発生部101に与える振幅レベル指令Ca1の指令値を演算し、上記合計値が制限値を超えているときには進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力を、第1のレベル設定部109により設定された設定値から上記超過量を減算して求めた目標値に保つために第1の高周波発生部に与える振幅レベル指令値を演算するレベル指令値演算部122と、このレベル指令値演算部が演算した指令値を有する振幅レベル指令を第1の高周波発生部101に与える振幅指令出力部123とにより構成することもできる。
【0107】
このように構成した場合には、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値を超えたときに、合計値の制限値からの超過量分だけ、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の目標値を小さくすることができるため、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の実際の値を超過量分だけ小さくして、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値を超えるのを防ぐことができる。
【0108】
[第3の実施形態]
図3は、本発明の第3の実施形態の構成を示したものである。この実施形態では、第1の差周波数信号レベル検出部108から得られる進行波電力基本周波数成分検出信号が超過量演算部121に与えられる代りに、第1のレベル設定部109の出力が超過量演算部121に与えられている。その他の構成は、
図2に示した構成と同様である。
【0109】
本実施形態では、電力増幅部から負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の設定値(第1のレベル設定部109により設定される設定値)と第2の差周波数信号レベル検出部112から得られる反射波電力基本周波数成分検出信号から検出される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値以下であるときに、第1の差周波数信号レベル検出部108から得られる進行波電力基本周波数成分検出信号から検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を設定値に保つように第1の高周波発生部101に振幅レベル指令Ca1を与え、上記合計値が制限値を超えたときに該合計値を制限値以下に低下させるように第1の高周波発生部101に振幅レベル指令を与えるように、レベル制御部114が構成されている。即ち、本実施形態に構成は、検出された反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と、進行波電力の設定値との合計値を演算して、この合計値を制限値以下に保つように制御する点を除き、第2の実施形態の構成と同様である。
【0110】
進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値は第1のレベル設定部109により設定される設定値にほぼ保たれているので、第2の実施形態のように、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の検出値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の検出値との合計値を制限値以下に保つように制御しても、本実施形態のように、進行波電力の設定値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の検出値との合計値を演算して、この合計値を制限値以下に保つように制御しても大差はない。
【0111】
[第4の実施形態]
図4は、本発明の第4の実施形態を示したもので、本実施形態では、検出された進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値を制限値以下に保つように制御する代りに、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に対して、許容される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の許容上限値を演算して、反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を、演算された許容上限値以下に保つように、第1の高周波発生部101から出力される高周波信号のレベルを制御して、反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が過度に増大したときに電力増幅部の出力を抑制する制御を行う。
【0112】
反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が、負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の検出値に対して演算された許容上限値を超えることがないように、電力増幅部の出力を抑制する制御を行うと、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に対して反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の許容上限値を適切な値に演算するようにしておくことにより、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値を超えるのを防いで、電力増幅部を構成する半導体増幅素子の保護を的確に図ることができる。上記許容上限値に余裕を持たせておく(許容上限値を小さめに設定しておく)ことにより、反射波電力のスプリアス成分の影響にも対処することができる。
【0113】
本実施形態では、検出された進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に対して、反射波電力の許容上限値を演算するために、第1の差周波数信号レベル検出部108から得られる進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に対して反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の許容上限値を演算する反射波上限値演算部113′が設けられている。反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の許容上限値は、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値を許容上限値以下に保つ際に許容される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の最大値に設定しておく。反射波電力に含まれるスプリアス成分を無視できない場合には、許容上限値を小さめに設定しておく。
【0114】
本実施形態では、レベル制御部114が、第2の差周波数信号レベル検出部112が出力する反射波電力基本周波数成分検出信号から検出される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が、第1の差周波数信号レベル検出部108が出力する進行波電力基本周波数成分検出信号から検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に対して演算された許容上限値以下であるときに、進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を第1のレベル設定部109により設定された設定値に保つように第1の高周波発生部101に振幅レベル指令Ca1を与え、第2の差周波数信号レベル検出部112が出力する反射波電力基本周波数成分検出信号から検出される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が上記許容上限値を超えたときには、検出される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を上記許容上限値以下に低下させるように第1の高周波発生部101に振幅レベル指令Ca1を与えるように構成されている。
【0115】
図9を参照すると、
図4の実施形態の要部をマイクロプロセッサを用いて構成する場合に、マイクロプロセッサに実行させる処理のアルゴリズムを示すフローチャートが示されている。
図9に示したフローチャートにおいて、ステップ101ないし106は、
図8に示したフローチャートと同様である。
【0116】
図9に示した処理では、ステップ106で、第1の差周波数信号レベル検出部108が出力している進行波電力基本周波数成分検出信号の値から進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を検出してその検出値をメモリに記憶させ、第2の差周波数信号レベル検出部112が出力している反射波電力基本周波数成分検出信号の値から反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を検出して、その値をメモリに記憶させた後、ステップS108′で反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が許容上限値以下であるか否かを判定する。
【0117】
ステップ108′で反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が許容上限値以下であると判定されたときには、ステップS109に進んで、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を第1のレベル設定部109により設定された設定値とするように、第1の高周波発生部101に振幅レベル指令Ca1を与える。またステップS108′で反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が許容上限値を超えていると判定されたときには、ステップS110′に進んで、反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を許容上限値以下とするように第1の高周波発生部101に振幅レベル指令Ca1を与える。
【0118】
ステップS109またはS110′を実行した後、ステップS111に進んで、
図8に示した処理と同様の周波数制御を行う。
【0119】
図9に示したアルゴリズムによる場合には、ステップS105及びS106により、第1の差周波数信号レベル検出部108及び第2の差周波数信号レベル検出部112が構成され、ステップS108′,S109及びS110′により第1のレベル制御部114が構成される。またステップS102及びステップS111により、周波数制御部105が構成される。
【0120】
[第5の実施形態]
図5は本発明の第5の実施形態を示している。
図4に示した実施形態では、検出された進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に対して、反射波電力の許容上限値を演算するように反射波上限値演算部113′を構成したが、本実施形態では、第1のレベル設定部109により設定される進行波電力の設定値に対して、反射波電力の許容上限値を演算するように反射波上限値演算部113′が構成されている。その他の構成は
図4に示した実施形態と同様である。
【0121】
進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値は第1のレベル設定部109により設定される設定値にほぼ保たれているので、
図4に示した第4の実施形態のように、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の検出値に対して反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の許容上限値を演算するようにしても、本実施形態のように、進行波電力の設定値に対して反射波電力の許容上限値を演算するようにしても大差はない。
【0122】
[第6の実施形態]
図6は、本発明の第6の実施形態を示している。本実施形態では、第1のレベル制御部114が、電力超過量演算部121と、第1のレベル指令値演算部122と、第1の振幅指令出力部123とからなっている。その他の部分は、
図4に示した実施形態と同様に構成されており、反射波上限値演算部113′は、第1の差周波数信号レベル検出部108が出力する進行波電力基本周波数成分検出信号から検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に対して、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の許容上限値を演算する。
【0123】
本実施形態において、電力超過量演算部121は、第2の差周波数信号レベル検出部112から得られる反射波電力基本周波数成分検出信号から検出された反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と、上限値設定部113′において進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に対して演算された許容上限値との差を演算して、検出された反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の許容上限値からの超過量を演算するように構成される。
【0124】
また第1のレベル指令値演算部122は、検出された反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が許容上限値以下のときには、進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を設定値に保つために第1の高周波発生部101に与える振幅レベル指令Ca1の指令値を演算し、検出された反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が許容上限値を超えているときには進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に超過量を加算することにより求めた電力値を設定値に保つために第1の高周波発生部に与える振幅レベル指令の指令値を演算するように構成される。
【0125】
振幅指令出力部123は、レベル指令値演算部122が演算した指令値を有する振幅レベル指令Ca1を出力して第1の高周波発生部101に与える。
【0126】
上記のように構成すると、反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が、負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の設定値または進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に対して演算された反射波電力の制限値を超えたときに、反射波電力の制限値からの超過量分だけ、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の検出値を見かけ上大きくすることができるため、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を抑制することができる。従って、反射波電力の許容上限値を適切な値(進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値を許容上限値以下に保つ際に許容される反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の最大値)に演算することにより、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値を超えるのを防いで、電力増幅部を構成する半導体増幅素子の保護を的確に図ることができる。
【0127】
上記の説明では、第1のレベル指令値演算部122が、検出された反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が許容上限値を超えているときに進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値に超過量を加算することにより求めた電力値を設定値に保つために第1の高周波発生部に与える振幅レベル指令の指令値を演算するとしたが、検出された反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が許容上限値を超えているときに進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力を、その設定値から上記超過量を減算して求めた目標値に保つために第1の高周波発生部に与える振幅レベル指令値を演算するように、第1のレベル指令値演算部122を構成することもできる。
【0128】
即ち、第1のレベル指令値演算部122は、検出された反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が許容上限値以下のときに進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を設定値に保つために第1の高周波発生部101に与える振幅レベル指令Ca1の指令値を演算し、検出された反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が許容上限値を超えているときには進行波電力基本周波数成分検出信号により検出される進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を、設定値から超過量を減算して求めた目標値に保つために第1の高周波発生部101に与える振幅レベル指令値を演算するように構成することもできる。
【0129】
上記のように構成した場合には、反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が許容上限値を超えたときに、反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の許容上限値からの超過量分だけ、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の目標値を小さくすることができるため、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値を抑制することができる。従って、反射波上限値演算部113′で反射波電力の許容上限値を適切な値に演算することにより、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値と反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値との合計値が制限値を超えるのを防ぐことができる。
【0130】
[第7の実施形態]
図7は、本発明の第7の実施形態を示している。本実施形態においては、第1の差周波数信号レベル検出部108により検出された進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の検出値が反射波上限値演算部113′に与えられる代りに、第1のレベル設定部109により設定された設定値が反射波上限値演算部113′に与えられている。その他の構成は、
図6に示した実施形態と同様である。
【0131】
図7の実施形態においては、反射波上限値演算部113′が、電力増幅部から負荷に与えられる進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の設定値に対して反射波電力の許容上限値を演算する。
【0132】
進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値は第1のレベル設定部109により設定される設定値にほぼ保たれているため、
図6に示した実施形態のように、進行波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の検出値に対して反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値の許容上限値を演算する代りに、本実施形態のように、進行波電力の設定値に対して反射波電力の許容上限値を演算するようにしても何等差し支えがない。
【0133】
上記の各実施形態では、反射波電力に含まれる基本周波数成分の電力値が反射波基準値を超えたときに、第1の周波数f1を設定した微小範囲で変化させながら反射波検出値を最小にする周波数f1を探索する過程を行って探索した周波数f1を新たな基準周波数とし、第1の周波数f1を新たな基準周波数に一致させるように第1の高周波発生部101に周波数例Cf1を与える制御を行うようにしているが、この制御は省略することができる。