(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述したように上顎歯列模型が載置される面が球状凹面となった基準板を備えた従来の上顎歯列模型調整器は、上顎歯列模型において人の理想的な歯列が再現されるように義歯等を配列することを支援するものである。しかしながら、義歯等が理想的に配列されたとしても、その各義歯等が下顎の対応する義歯等に適切に咬み合うようになっているかは保証できていない。そのため、その咬み合わせを適切にするための調整作業が技工士や歯科医師の経験に頼らざるをえなかった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、上顎や下顎の歯列模型における特に臼歯に対応した補綴物や義歯を適切な咬み合わせとなるように配列することを容易に行い得る歯列模型調整器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る上顎歯列模型調整器は、上顎歯列模型の各臼歯部の調整を行う際に用いられる上顎歯列模型調整器であって、上顎歯列模型の歯列に沿う縁部と、該縁部に形成され、前記上顎歯列模型の左右いずれか側の各臼歯部の舌側咬頭の内面を所定の傾きにて規制する第1基準面と、前記縁部に形成され、前記上顎模型の他方側の各臼歯部の舌側咬頭の内面を所定の傾きにて規制する第2基準面とを有する構成となる。
【0007】
このような構成により、上顎歯列模型の歯列を上顎歯列模型調整器の縁部に沿うようにセットした状態で、左右のうちの一方側の各臼歯部の舌側咬頭内面が第1基準面に適正に接するように当該各臼歯部の舌側咬頭内面の傾きの調整を行い、また、他方側の各臼歯部の舌側咬頭の内面が第2基準面に適切に接するように当該各臼歯部の舌側咬頭内面の傾きの調整を行うことにより、上顎歯列模型における左右の各臼歯部の舌側咬頭の内面が第1基準面及び第2基準面により規制される傾きに調整されるようになる。
【0008】
咀嚼運動においては、下顎が移動して下顎の各臼歯における頬側咬頭内面が上顎の対応する臼歯における舌側咬頭内面に押し当てられるようにして食物をすりつぶすようになる。このような咀嚼運動における下顎の各臼歯と上顎の対応する臼歯との咬合を想定して、上顎歯列模型調整器における第1基準面及び第2基準面を適正に設定することにより、下顎の各臼歯の頬側咬頭の内面と接触して咀嚼時の圧力を受けるべき上顎歯列模型における各臼歯部の舌側咬頭の内面の傾きを適正なものとすることができる。
【0009】
本発明に係る上顎歯列模型調整器において、前記第1基準面と前記第2基準面とは、左右の対応する臼歯部を垂直に通る断面において同一円に接するように形成されている構成とすることができる。
【0010】
このような構成により、左右の対応する各臼歯部を垂直に通る断面において左右各臼歯部の舌側咬頭内面が同一の円に接するような傾きに調整することができる。
【0011】
また、本発明に係る上顎歯列模型調整器において、前記第1基準面及び第2基準面のそれぞれは、上顎の臼歯に咬み合う下顎の対応する臼歯の頬側咬頭の内面を模している構成とすることができる。
【0012】
このような構成により、上顎歯列模型において左右各臼歯部の舌側咬頭内面を第1基準面及び第2基準面に適正に接するように調整することにより、左右各臼歯部が下顎の対応する臼歯部の頬側咬頭内面に接するように調整され得る。
【0013】
本発明に係る下顎歯列模型調整器において、下顎歯列模型の各臼歯部の調整を行う際に用いられる下顎歯列模型調整器であって、下顎歯列模型の歯列に沿う縁部と、該縁部に形成され、下顎歯列模型の左右いずれか側の各臼歯部の頬側咬頭の内面を所定の傾きにて規制する第1基準面と、前記縁部に形成され、前記下顎歯列模型の他方側の各臼歯部の頬側内面を所定の傾きにて規制する第2基準面とを有する構成となる。
【0014】
このような構成により、下顎歯列模型の歯列を下顎歯列模型調整器の縁部に沿うようにセットした状態で、左右のうちの一方側の各臼歯部の頬側咬頭内面が第1基準面に適正に接するように当該各臼歯部の頬側咬頭内面の傾きの調整を行い、また、他方側の各臼歯部の頬側咬頭の内面が第2基準面に適切に接するように当該各臼歯部の頬側咬頭内面の傾きの調整を行うことにより、下顎歯列模型の左右の各臼歯部の頬側咬頭の内面が第1基準面及び第2基準面により規制される傾きに調整されるようになる。
【0015】
前述したような下顎の移動による咀嚼運動における当該下顎の各臼歯と上顎の対応する臼歯との咬合を想定して、下顎歯列模型調整器における第1基準面及び第2基準面を適正に設定することにより、咀嚼時に上顎の臼歯の舌側咬頭の内面に押し付けられるべき下顎歯列模型における各臼歯部の頬側咬頭の内面の傾きを適正なものとすることができる。
【0016】
本発明に係る下顎歯列模型調整器において、前記第1基準面と前記第2基準面とは、左右の対応する臼歯部を垂直に通る断面において同一円に接するように形成されている構成とすることができる。
【0017】
このような構成により、左右の対応する各臼歯部を垂直に通る断面において左右各臼歯部の頬側咬頭内面が同一の円に接するような傾きに調整することができる。
【0018】
また、本発明に係る下顎歯列模型調整器において、前記第1基準面及び第2基準面のそれぞれは、下顎の臼歯に咬み合う上顎の対応する臼歯の舌側咬頭の内面を模している構成とすることができる。
【0019】
このような構成により、下顎歯列模型における左右各臼歯部の頬側咬頭内面を第1基準面及び第2基準面に適正に接するように調整することにより、左右各臼歯部が上顎の対応する臼歯部の舌側咬頭内面に接するように調整され得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る上顎歯列模型調整器によれば、上顎歯列模型における左右の各臼歯部の舌側咬頭の内面が第1基準面及び第2基準面により規制される傾きに調整されるようになるので、上記第1基準面及び第2基準面を適正に設定することにより、上顎歯列模型における特に臼歯に対応した補綴物や義歯を下顎側の対応する臼歯に対して適切な咬み合わせとなるように配列することを容易に行い得るようになる。
【0021】
また、本発明に係る下顎歯列模型調整器によれば、下顎歯列模型の左右の各臼歯部の頬側咬頭の内面が第1基準面及び第2基準面により規制される傾きに調整されるようになるので、上記第1基準面及び第2基準面を適正に設定することにより、下顎歯列模型における特に臼歯に対応した補綴物や義歯を上顎側の対応する臼歯に対して適切な咬み合わせとなるように配列することを容易に行い得るようになる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の一形態に係る上顎歯列模型調整器は、
図1及び
図2に示すように、咬合器に装着して使用される。
【0024】
図1及び
図2において、咬合器100は、支柱110a、110bの下端部に一体的に形成された略T字状の下弓120と、支柱110a、110bの上端部に軸111を中心に回動自在となるように支持された略T字状の上弓130とが対向する構造となっている。上弓130の先端部には鉛直方向に延びるインサイザルピン133が装着され、インサイザルピン133の先端が下弓120の先端部に設けられた受け部121に当接するようになっている。インサイザルピン133の上弓130への固定位置を調整することにより、上弓130の下弓120に対する角度を調整することができる。上弓130の内面に調整の対象となる上顎歯列模型50の固定されたマウント部55が固定ネジ132によって着脱自在に固定される。下弓120の内面に上顎歯列模型調整器10の固定されたマウント部15が固定ネジ122によって着脱自在に固定される。
【0025】
上顎歯列模型50では、例えば、
図3に示すように、歯部がアーチ状に配列されている。特に正中線Lcの右側において、第1小臼歯部PM
R1、第2小臼歯部PM
R2、第1大臼歯部M
R1及び第2大臼歯部M
R2が前歯側から奥に向けて広がるように配列され、正中線Lcの左側において、第1小臼歯部PM
L1、第2小臼歯部PM
L2、第1大臼歯部M
L1及び第2大臼歯部M
L2が右側と同様に前歯側から奥に向けて広がるように配列されている。これら、右側の臼歯部PM
R1、PM
R2、M
R1、M
R2及び左側の臼歯部PM
L1、PM
L2、M
L1、M
L2が上顎歯列模型調整器10での具体的な調整の対象である。
【0026】
上顎歯列模型50における歯部のアーチ状の配列は、本願発明者が特許第4468247号で提案している咬合調整彎曲板により既に調整されている。それにより、右側第1小臼歯部PM
R1と左側第2大臼歯部M
L2とを結ぶ直線L1と、左側第1小臼歯部PM
L1と右側第2大臼歯部M
R2とを結ぶ直線L2とが正中線Lc上で交差する。その交点Pが顎運動の合理的な基準点とみなし得る点として本願発明者が提唱した「咬合原点」に対応した点である(特許第4468247号公報参照)。
【0027】
咬合器100の下弓120にマウント部15を介して固定される上顎歯列模型調整器10は、金属、樹脂等の材料で形成されており、上面12が縁部11から内方に向かって低くなる凹状形状となっている。縁部11は、上顎歯列模型50におけるアーチ状の歯列(
図3参照)に沿うようにアーチ状に彎曲した形状に形成されている。そして、縁部11の内側所定部位には、右側の各臼歯部PM
R1、PM
R2、M
R1、M
R2に対応した右側臼歯調整部13が形成され、左側の各臼歯部PM
L1、PM
L2、M
L1、M
L2に対応した左側臼歯調整部14が形成されている。
【0028】
右側臼歯調整部13には、上顎歯列模型50における右側の各臼歯部PM
R1、PM
R2、M
R1及びM
R2の舌側咬頭(機能咬頭)の内面にあてがわれて当該舌側咬頭の内面を所定の傾きにて規制する第1基準面13aが形成されている。例えば、右側臼歯調整部13の第2大臼歯部M
R2(UJ:上顎側を意味する。以下、下顎側と区別する場合に用いる。)に対応する部分では、
図4に示すように、第1基準面13aは、上顎の第2大臼歯に咬み合う下顎側の第2大臼歯M
R2(LJ:下顎側を意味する。以下、上顎側と区別する場合に用いる)の頬側咬頭FC1(LJ)(機能咬頭)の内面に対応した平面PL
Rと同じ傾きとなっている。従って、右側臼歯調整部13の第2大臼歯部M
R2(UJ)に対応する部分では、第1基準面13aが第2大臼歯部M
R2(UJ)の舌側咬頭FC2(UJ)の内面にあてがわれてその舌側咬頭FC2(UJ)の内面を下顎の対応する第2大臼歯M
R2の頬側咬頭FC1(LJ)の内面の傾きに規制する。右側臼歯調整部13の他の臼歯部M
R1、PM
R2、PM
R1に対応する部分についても、同様に、第1基準面13aがその臼歯部の舌側咬頭の内面を下顎の対応する臼歯の頬側咬頭の内面の傾きに規制する。
【0029】
また、左側臼歯調整部14にも、右側臼歯調整部13と同様に、上顎歯列模型50における左側の各臼歯部PM
L1、PM
L2、M
L1、M
L2の舌側咬頭にあてがわれて当該舌側咬頭の内面を所定の傾き、具体的には、下顎の対応する臼歯の頬側咬頭の内面に対応する平面PL
Lと同じ傾きに規制する第2基準面14aが形成されている。そして、右側臼歯調整部13の第1基準面13aと、左側臼歯調整部14の第2基準面14aとは、左右の対応する臼歯部を垂直に通る断面において同一円に接するように形成されている。例えば、
図5に示すように、左右の第2大臼歯部M
R2(UJ)、M
L2(UJ)を垂直に通る断面において、第1基準面13a(平面PL
R)と、第2基準面14a(平面PL
L)とが、左右の中心(上顎歯列模型50における正中線Lcに対応)から鉛直に延びる線上に中心を有する同一円C1に接するように形成されている。そして、前側の臼歯部になるほど、即ち、第1小臼歯部PM
R1、PM
L1に近づくほど、それらを垂直に通る断面において、第1基準面13a(平面PL
R)と第2基準面14a(平面PL
L)とが接する円は小さくなる。
【0030】
右臼歯調整部13及び左臼歯調整部14における上述した第1基準面13a及び第2基準面14aの傾き(
図4参照)、及び第1基準面13aと第2基準面14aとの関係(
図5参照)は、本願発明者の次のような考察に基づくものである。
【0031】
図6に示すように、人間の上顎歯牙列は、ある種の彎曲面(球面)Coに沿って配列されるべきであるという考えのもとに、上顎歯列模型50における歯部のアーチ状の配列(
図3参照)が、特許第4468247号で提案された咬合調整彎曲板により調整された。また、咀嚼運動において、下顎が移動して下顎の各臼歯における頬側咬頭内面が上顎の対応する臼歯にける舌側咬頭内面に押し当てられるようにして食物をすりつぶすようになる。このような咀嚼運動における下顎の各臼歯と上顎の対応する臼歯との咬合を想定することにより、上顎歯列模型50の各臼歯の舌側咬頭内面の傾きを規制すべき前記第1基準面13aと第2基準面14aの傾きは、下顎の臼歯における頬側咬頭内面PL
R、PL
Lの傾きに設定される(
図4参照)。
【0032】
また、
図6に示すように、上顎の各歯牙が球面Co(特許第4468247号で提案している咬合調整彎曲板の内面)上に配列されるモデルにおいて、左右における上顎及び下顎の対応する臼歯の咬合が、左右対称的に同一円C1に接する面(真の咬合面)にてなされることを考慮して、上顎歯列模型50の左右の対応する臼歯を垂直に通る断面において、前述した第1基準面13a(平面PL
R)と、第2基準面14a(平面PL
L)とが、左右の中心から鉛直に延びる線上に中心を有する同一円C1に接するようにしている。
【0033】
上述した上顎歯列模型調整器10を用いて上顎歯列模型50の各臼歯を次のようにして調整することができる。
【0034】
咬合器100の上弓130に装着された上顎歯列模型50の歯列を下弓120に装着された上顎歯列模型調整器10の縁部11に沿うようにセットした状態で、右側の各臼歯部M
R2、M
R1、PM
R2、PM
R1の舌側咬頭FC2(UJ)の内面に第1基準面13aをあてがってその舌側咬頭FC2(UJ)内面が第1基準面13aに適正に接するように各臼歯部M
R2、M
R1、PM
R2、PM
R1の舌側咬頭FC2(UJ)の内面の傾きの調整を行う(
図4参照)。この舌側咬頭FC2(UJ)の傾きの調整は、例えば、臼歯部自体の傾きの調整や舌側咬頭FC2(UJ)の内面を削ることにより行うことができる。また、右側の各臼歯部M
L2、M
L1、PM
L2、PM
L1についても同様に、舌側咬頭FC2(UJ)の内面に左側臼歯調整部14の第2基準面14aをあてがってその舌側咬頭FC2(UJ)内面が第2基準面14aに適正に接するように各臼歯部M
R2、M
R1、PM
R2、PM
R1の舌側咬頭FC2(UJ)の内面の傾きの調整を行う。
【0035】
これらにより、上顎歯列模型50における左右の各臼歯部の舌側咬頭の内面が第1基準面13a及び第2基準面14aにより規制される傾きに調整される。そして、第1基準面13a及び第2基準面14aの傾きが、下顎の各臼歯の頬側咬頭の内面の傾き(
図4、
図5におけるPLR、PLL参照)に設定されているので、これら第1基準面13a及び第2基準面14aにより舌側咬頭の内面の傾きが調整される上顎歯列模型50における左右の各臼歯部は、その舌側咬頭が下顎の各臼歯の頬側咬頭の内面と接触して咀嚼時の圧力を適正に受けることができるように調整され得る。従って、上顎歯列模型50における特に臼歯に対応した補綴物や義歯を下顎側の対応する臼歯に対して適切な咬み合わせとなるように配列することを容易に行い得るようになる。
【0036】
次に、下顎歯列模型の各臼歯部の調整を行う際に用いられる下顎歯列模型調整器について説明する。本発明の実施の一形態に係る下顎歯列模型調整器は、前述した上顎歯列模型調整器10(
図1及び
図2参照)と同様に
図7及び
図8に示すように、咬合器100に装着して使用される。具体的には、下弓120の内面に調整の対象となる下顎歯列模型60の固定されたマウント部65が固定ネジ132によって着脱自在に固定され、上弓130の内面に下顎歯列模型調整器20の固定されたマウント部25が固定ネジ122によって着脱自在に固定される。
【0037】
下顎歯列模型60では、上顎歯列模型50(
図3参照)と同様に、例えば、
図9に示すように、歯部がアーチ状に配列されている。そして、特に正中線Lcの右側において、第1小臼歯部PM
R1、第2小臼歯部PM
R2、第1大臼歯部M
R1及び第2大臼歯部M
R2が前歯側から奥に向けて広がるように配列され、正中線Lcの左側において、第1小臼歯部PM
L1、第2小臼歯部PM
L2、第1大臼歯部M
L1及び第2大臼歯部M
L2が右側と同様に前歯側から奥に向けて広がるように配列されている。下顎歯列模型60におけるアーチ状の歯列は、上顎歯列模型50(
図3参照)の歯列に対応するように調整されている。それにより、下顎歯列模型60においても、上顎歯列模型50と同様に、右側第1小臼歯部PM
R1と左側第2大臼歯部M
L2とを結ぶ直線L1と、左側第1小臼歯部PM
L1と右側第2大臼歯部M
R2とを結ぶ直線L2とが正中線Lc上で交差する(交点P)。
【0038】
咬合器100の上弓130にマウント部25を介して固定される下顎歯列模型調整器20は、金属、樹脂等の材料で形成されており、上面22が縁部21から内方に向かって低くなる凹状形状となっている。縁部21は、下顎歯列模型60におけるアーチ状の歯列(
図9参照)に沿うようにアーチ状に彎曲した形状に形成されている。そして、縁部21の外側所定部位には、右側の各臼歯部PM
R1、PM
R2、M
R1、M
R2に対応した右側臼歯調整部23が形成され、左側の各臼歯部PM
L1、PM
L2、M
L1、M
L2に対応した左側臼歯調整部24が形成されている。
【0039】
右側臼歯調整部23には、下顎歯列模型60における右側の各臼歯部PM
R1、PM
R2、M
R1及びM
R2の頬側咬頭の内面にあてがわれて当該頬側咬頭の内面を所定の傾きにて規制する第1基準面23aが形成されている。例えば、右側臼歯調整部23の第2大臼歯部M
R2(LJ)に対応する部分では、
図10に示すように、縁部21の外側部分に形成された第1基準面23aは、下顎の第2大臼歯に咬み合う上顎側の第2大臼歯M
R2(UJ)の舌側咬頭の内面に対応した平面PL
Rと同じ傾きとなっている。従って、右側臼歯調整部23の第2大臼歯部M
R2(LJ)に対応する部分では、第1基準面23aが第2大臼歯部M
R2(LJ)の頬側咬頭FC1(LJ)の内面にあてがわれてその頬側咬頭FC1(LJ)の内面を上顎の対応する第2大臼歯M
R2の舌側咬頭の内面の傾きに規制する。右側臼歯調整部23の他の臼歯部M
R1、PM
R2、PM
R1に対応する部分についても、同様に、第1基準面23aがその臼歯部の頬側咬頭の内面にあてがわれて当該頬側咬頭の内面を上顎の対応する臼歯の舌側咬頭の内面の傾きに規制する。
【0040】
また、左側臼歯調整部24にも、右側臼歯調整部23と同様に、下顎歯列模型60における左側の各臼歯部PM
L1、PM
L2、M
L1、M
L2の頬側咬頭にあてがわれて当該頬側咬頭の内面を所定の傾き、具体的には、上顎の対応する臼歯の舌側咬頭の内面に対応する平面PL
Lと同じ傾きに規制する第2基準面24aが形成されている。そして、右側臼歯調整部23の第1基準面23aと、左側臼歯調整部24の第2基準面24aとは、左右の対応する臼歯部を垂直に通る断面において同一円に接するように形成されている。例えば、
図11に示すように、左右の第2大臼歯部M
R2(LJ)、M
L2(LJ)を垂直に通る断面において、第1基準面23a(平面PL
R)と、第2基準面24a(平面PL
L)とが、左右の中心(上顎歯列模型50における正中線Lcに対応)から鉛直に延びる線上に中心を有する同一円C1に接するように形成されている。そして、前側の臼歯部になるほど、即ち、第1小臼歯部PM
R1、PM
L1に近づくほど、それらを垂直に通る断面において、第1基準面23a(平面PL
R)と第2基準面24a(平面PL
L)とが接する円は小さくなる。
【0041】
右臼歯調整部23及び左臼歯調整部24における上述した第1基準面23a及び第2基準面24aの傾き(
図10参照)、及び第1基準面23aと第2基準面24aとの関係(
図11参照)は、上述した本願発明者の考察に基づいて決められた上顎歯列模型調整器10によって調整される上顎歯列模型50に下顎歯列模型60が適正に咬合できるように決められたものである。
【0042】
上述した下顎歯列模型調整器20を用いて下顎歯列模型60各臼歯を次のようにして調整することができる。
【0043】
咬合器100の下弓120に装着された下顎歯列模型60の歯列を上弓130に装着された下顎歯列模型調整器20の縁部21に沿うようにセットした状態で、右側の各臼歯部M
R2、M
R1、PM
R2、PM
R1の頬側咬頭FC1(LJ)の内面に右側臼歯調整部23の第1基準面23aをあてがってその頬側咬頭FC1(LJ)内面が第1基準面23aに適正に接するように各臼歯部M
R2、M
R1、PM
R2、PM
R1の頬側咬頭FC1(LJ)の内面の傾きの調整を行う(
図10参照)。この頬側咬頭FC1(LJ)の傾きの調整は、例えば、臼歯部自体の傾きの調整や頬側咬頭FC1(LJ)の内面を削ることにより行うことができる。また、右側の各臼歯部M
L2、M
L1、PM
L2、PM
L1についても同様に、頬側咬頭FC1(LJ)の内面に左側臼歯調整部24の第2基準面24aをあてがってその頬側咬頭FC1(LJ)内面が第2基準面24aに適正に接するように各臼歯部M
R2、M
R1、PM
R2、PM
R1の頬側咬頭FC1(LJ)の内面の傾きの調整を行う。
【0044】
これらにより、下顎歯列模型50における左右の各臼歯部の頬側咬頭の内面が第1基準面23a及び第2基準面24aにより規制される傾きに調整される。そして、第1基準面23a及び第2基準面24aの傾きが、上顎の各臼歯の舌側咬頭の内面の傾き(
図10、
図11におけるPL
R、PL
L参照)に設定されているので、これら第1基準面23a及び第2基準面24aにより頬側咬頭の内面の傾きが調整される下顎歯列模型60における左右の各臼歯部は、その頬側咬頭が上顎の各臼歯の舌側咬頭の内面と接触して咀嚼時の圧力を適正に受けることができるように調整され得る。従って、下顎歯列模型60における特に臼歯に対応した補綴物や義歯を上顎側の対応する臼歯に対して適切な咬み合わせとなるように配列することを容易に行い得るようになる。