(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1実施形態である二次電池を
図1に基づいて説明する。本実施形態の二次電池では、第1の電極1、有機電解液を含んだセパレータ3、第2の電極2がこの順に積層された発電要素4が、第1の集電体5に設けられた凹部6に収納され、第2の集電体7が凹部6とその内部に収納された発電要素4を覆うように配置されている。そして、第1の集電体5と第2の集電体7には、それぞれ接続端子8、9が超音波溶接やスポット溶接等により取り付けられている。
【0012】
このように、発電要素4が、第1の電極1および第2の電極2を収納可能な開口部を有する第1の集電体1の凹部6に収納されているため、高精度な装置を用いなくても電極同士の位置合わせが容易となり、二次電池を組み立てる際の位置ずれの可能性も低減できる。なお、セパレータ3は凹部6の開口部よりも大きく、その周縁部が第1の集電体5と第2の電極2との間、および第1の集電体5の凹部6の周縁部と第2の集電体7の周縁部との間に位置することにより、第1の集電体5と、第2の電極および第2の集電体7との電気的絶縁を担っている。
【0013】
なお、第2の電極2が導電性を有する場合は、第2の電極2に直接接続端子9を接続してもよく、この場合第2の集電体7は用いなくてもよい。
【0014】
このとき、第1の集電体5に設けられた凹部6の開口部および底面の形状を第1の電極1および第2の電極2の形状と相似とし、凹部6の底面を第1の電極1および第2電極2の主面よりも若干、たとえばセパレータ3の厚さと同等な20〜100μm程度の範囲で大きくすることで、第1の電極1、セパレータ3および第2の電極2を凹部6に収納する際、電極同士の位置合わせをより正確に行うことができる。さらに、第2の電極2の大きさを第1の電極1よりも小さくしてもよいが、凹部6の開口部の大きさを凹部6の底面の大きさよりも若干、たとえばセパレータ3の厚さと同等な20〜100μm程度の範囲で大きくすることにより、第1の電極1と第2の電極2の大きさを同じにしてそれぞれの電極が有する容量を効率よく利用することができる。
【0015】
第1の集電体5の凹部6に第1の電極1のみを収納して、凹部6および第1の電極1を覆うように、凹部6の開口部よりも面積が大きいセパレータ3、第2の電極2および第2の集電体7を配置してもよい。この場合、セパレータ3は、第1の集電体5および第1の電極1と、第2の電極2との間に位置しており、第2の集電体7には接していなくてもよい。なお、セパレータ3の大きさは、第1の集電体5および第2の集電体7の大きさ以上であることが、集電体同士のショート防止という点から好ましい。セパレータ3は、第1の集電体5および第2の集電体7の周縁部から突出していてもかまわない。
【0016】
また、第1の集電体5に凹部6を、第2の集電体7に凹部6’を設け、第1の電極1が収納された凹部6と第2の電極2が収納された凹部6’とが、セパレータ3を介して向かい合うように、第1の集電体5と第2の集電体7とを重ね合わせてもよい。この場合も、それぞれの集電体の凹部同士を位置合わせすることで、容易に電極の位置合わせを行うことができる。
【0017】
なお、凹部6の形状は、所望の電池容量を得るための電極の形状に合わせて適宜設計す
ればよく、たとえば500×500mm、深さ10mmなどの形状とすることができる。
【0018】
本発明の第2実施形態では、
図2に示すように、第2の電極2が両主面に設けられた第2の集電体7が、有機電解液を含んだセパレータ3を介して第1の電極1および1’の2層に挟持されて、第2の集電体7を含む発電要素4を形成している。第1の集電体は、凹部6を有する第1の集電体5と、凹部を有さない第1の集電体5’とからなり、第1の集電体5の凹部6は、その内部に収納される発電要素4の積層方向に沿う側面のひとつに開口部が設けられている。発電要素4は、第2の電極2および第2の集電体7が、第1の集電体5の凹部6の側面に接触しないように凹部6に収納され、さらに第1の集電体5’が凹部6とその内部に収納された発電要素4を覆うように配置され、第1の集電体5の凹部6の周縁部は、直接または導電性材料を介して第1の集電体5’の周縁部と重なり合っている。第1の集電体5または5’および第2の集電体7には、それぞれ接続端子8、9が超音波溶接やスポット溶接等により取り付けられ、第2の集電体7に取り付けられた接続端子9は、第1の集電体5の凹部6の側面に設けられた開口部から外部に引き出されている。
【0019】
このとき、第1の集電体5に設けられた凹部6の開口部および底面の形状を第1の電極1、1’および第2の電極2と相似形とし、凹部6の底面を第1の電極1および第2電極2の主面よりも若干、たとえばセパレータ3の厚さと同等な20〜100μm程度の範囲で大きくすることで、第1の電極1、1’、セパレータ3および第2の電極2が両主面に設けられた第2の集電体7を凹部6に収納する際、第1実施形態と同様に高精度な装置を用いなくても電極同士の位置合わせをより正確に行うことができる。このとき、第2の電極2が両主面に設けられた第2の集電体7は、凹部6の側面に接触しないようセパレータ3で周囲を覆われた状態、あるいは袋状のセパレータ3に挿入された状態で凹部6に収納されることが好ましい。また、セパレータ3は凹部6の側面に設けられた開口部から突出していてもよいが、第1の電極1、1’および第2の電極2は、凹部6の側面に設けられた開口部から突出しないことが好ましい。
【0020】
本発明の第3実施形態では、第2実施形態における第1の集電体5の凹部6に第2の集電体7および発電要素4が収納されたものを複数積み重ね、そのうち最も端に位置する第1の集電体5の、他の第1の集電体5で覆われていない凹部6の開口部とその内部に収納された発電要素4とを覆うように、凹部を有さない第1の集電体5’を配置したものである。
【0021】
このとき、接続端子9は、それぞれの第2の集電体7または発電要素4の第2の電極2に個別に接続端子9を接続し、その接続端子9群を第1の集電体5の凹部6の側面に設けられた開口部からそれぞれ引き出し、束ねて、超音波溶着やスポット溶接で接続すればよい。また、接続端子8は、発電要素4および第2の集電体7が収納されたそれぞれの第1の集電体5に個別に接続端子8を接続し、その接続端子8群を束ねて超音波溶着やスポット溶接で接続してもよいし、互いに電気的に接続された第1の集電体5および5’のいずれか1ヶ所に接続端子8を接続してもよい。
【0022】
これら第1〜第3実施形態において示したような、集電体および接続端子付きの発電要素4を、外装体である缶やラミネートフィルムに収納し、必要に応じて非水電解質溶液を注入し、外装体を密閉することで二次電池となる。
【0023】
なお、いずれの実施形態においても、第1の集電体5側と、第2の集電体7または第1の集電体5’側の両方から圧力を加えることで、それぞれの集電体と電極との接触性が向上するとともに、第1の電極1(および1’)と第2の電極2の電極間距離が小さくなり、電極間の電気的抵抗が低減され、電池性能が向上する。これは、第1の電極1(および
1’)と第2の電極2のいずれか一方または両方に、活物質を含む焼結体を用いた場合に特に有効となる。活物質を含む焼結体を電極とした場合、焼結体と集電体との間の導電性を向上させるため、焼結体の集電体との接触部分に、Pt、Au、Al等を蒸着したり、導電性接着剤を塗布するなどしてもよい。
【0024】
凹部6は、集電体となる金属箔や導電性材料をプレス成形するなどして形成すればよい。特に金属箔を用いることが、導電性や、凹部6の形成が容易な点から好ましい。
【0025】
発電要素4の正極側に配する集電体の材料としては、正極の電位において溶解などの反応が発生しない耐食性を有する金属、たとえばアルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、金、白金等を含む材料を用いることができる。その中でもアルミニウム、金、白金は耐食性に優れ、容易に入手できるため好ましい。特にアルミニウムは、表面に酸化被膜を形成して不動態化し、高い電位においても耐食性に優れる点から好ましい。
【0026】
また、負極側に配する集電体の材料としては、負極の電位においてイオン伝導体である金属(Liなど)との合金化などの副反応が発生しない金属、たとえば、銅、ニッケル、真鍮、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、タングステン、金、白金等を含む材料を用いればよく、箔として用いた時の強度が高いステンレス、銅、金、白金などが好ましい。特に、導電性が高く比較的安価な点から、銅またはニッケルを用いることが好ましい。
【0027】
第1の集電体5(および5’)、第2の集電体7の厚さは、電池作製工程において損傷なくハンドリングが可能であればよく、たとえば5μm〜100μmの範囲とすればよい。
【0028】
電極と集電体との電気的接続確保のため、導電性接着剤を用いる場合は、たとえば、金、銀、ニッケル、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム、酸化チタン、チタン酸化カリム等の導電性フィラーと、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、シリコン系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド系樹脂等の高分子粘着材とからなる混合物を用いることができる。導電性接着剤の厚さは、二次電池として充分なエネルギー密度を得られるだけの発電要素4の厚さを確保し、導電性接着剤による電気抵抗を最小限に抑えるために、10μm以下とすることが望ましい。
【0029】
第1の電極1(および1’)、第2の電極2としては、正極活物質または負極活物質の粒子を結着材で固めたものや、正極活物質または負極活物質からなる圧粉体および焼結体を用いることができる。特に、発電に直接かかわらない導電助剤や結着材、固体電解質などを含まず、正極活物質および負極活物質の充填率をより高めることができ、よりエネルギー密度の高い二次電池が得られることから、焼結体を使用することが好ましい。
【0030】
焼結体を電極として用いる場合、以下のような手順で作製すればよい。正極活物質や負極活物質の原料粉末と、ブチラール等のバインダーとを、必要に応じて分散剤、可塑剤を加えた水、またはトルエン等の有機溶剤を溶媒として周知の方法でそれぞれ混合し、スラリーを作製する。このスラリーをポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム等の基材フィルム上に周知の方法で塗工、乾燥して所望の厚さのグリーンシートを作製する。このとき、スラリーを乾燥造粒し、ロールプレスによりグリーンシートを作製したり、所望の形状にプレス成形してもよい。得られたグリーンシートを所望の形状に打ち抜き、必要に応じて脱脂処理を行った後、焼成することで、緻密な焼結体が得られる。焼成温度は原料粉末である活物質の焼結性に応じて適宜選択すればよい。
【0031】
第1の電極1(および1’)、第2の電極2の厚さは、それぞれ20μm〜200μmとすることが好ましい。これにより、電池容量を得るために必要な活物質の絶対量が確保
できるとともに、良好な充放電特性の二次電池が得られる。また、第1の電極1(および1’)や第2の電極2として焼結体を用いる場合も、上記厚みとすることで、ハンドリング性がよく取り扱いが容易な電極となる。
【0032】
正極活物質としては、リチウムイオン二次電池の場合、リチウムを含む遷移金属の複合酸化物、たとえばリチウムコバルト複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物、二酸化マンガン、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムバナジウム複合酸化物などが挙げられる。このうち、特にリチウムコバルト複合酸化物は電子伝導性が高く、出力特性に優れた二次電池とすることができる。また、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LiNi
xMn
yO
4(x=0.1〜0.5、y=1.5〜1.9))は、他の材料に比べ電位が高く、起電力の高い二次電池とすることが出来る。なお、正極は相対密度の高い焼結体として用いることが好ましく、その相対密度は85%以上、さらには90%以上であることが好ましい。
【0033】
負極活物質としては、例えば、黒鉛、難黒鉛化性炭素、ガラス状炭素などの炭素質材料、金属ケイ素およびその合金、ケイ素と酸素や窒素とを含む化合物等のケイ素含有材料、酸化チタン、酸化ニオブ、リチウムチタン複合酸化物などが挙げられる。なかでもリチウムチタン複合酸化物は、相対密度が85%以上、さらには90%以上の焼結体として用いた場合も、充放電における負極の体積変化を小さくすることができ、サイクル特性の良い二次電池とすることが出来る。
【0034】
また、金属ケイ素およびその合金、ケイ素と酸素や窒素とを含む化合物等は、高容量を得られるという点から好ましい。このようなケイ素含有材料は、その粒子と、炭素とを含む塗膜や焼結体として用いればよい。なお、ケイ素を含む粒子は充放電時に体積変化するが、焼結体として用いる場合でも、気孔率を10〜60%の範囲とすることにより、体積変化により発生した応力を焼結体内部に存在する気孔で吸収することができる。ケイ素含有材料を含む焼結体は、ケイ素含有材料の原料粉末と、熱処理により炭化して炭素質材料となる炭素前駆体とを混合し、所望の形状に成形、乾燥して、非酸化雰囲気で熱処理を行うことで得られる。炭素前駆体としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、キシレン樹脂等の熱硬化性樹脂、ナフタレン、アセナフチレン、フェナントレン、アントラセン、トリフェニレン、ピレン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン等の縮合系多環炭化水素化合物またはその誘導体、あるいはその混合物を主成分とするピッチ等の有機材料が挙げられる。なお、熱処理により炭化して炭素質材料となる炭素前駆体には、さらに上述した黒鉛、難黒鉛化性炭素等の炭素質材料の粒子を加えてもよい。また、気孔を形成するために、熱処理時に消失して気孔となる樹脂材料等を造孔剤として添加してもよい。なお、正極及び負極の相対密度や気孔率は、アルキメデス法、水銀圧入法、電極断面写真の画像解析等の手法を用いて算出すればよい。
【0035】
本実施形態ではいずれも、第1の電極1(および1’)と第2の電極2との少なくともいずれか一方を活物質の焼結体で構成した場合に特に有効である。なお、他方の電極は塗膜電極、すなわち、活物質とバインダーを含む塗液を集電体上に塗布し、乾燥又は熱処理して集電体に接合させた塗膜を電極として用いてもよい。
【0036】
特にリチウムを含む遷移金属の複合酸化物は焼結体化が容易で、活物質充填率の高い正極とすることができるため、正極として、リチウムを含む遷移金属の複合酸化物の焼結体を用いることが好ましい。第1の実施形態においては、第2の電極2を正極とし、第1の電極1を負極として、第1の集電体5の凹部6に負極活物質の粒子等を含む炭素前駆体を塗布し、必要に応じて熱処理して負極を形成した後に、負極が形成された凹部6内部にセパレータ3および正極活物質の焼結体である正極を収納し、それを覆うように第2の集電
体7を配置することで、焼結体である正極の位置ズレを抑制できる。
【0037】
第2、第3の実施形態においても同様に、第2の電極2を正極とし、負極が形成された第1の集電体5の凹部6の内部に、セパレータ3で周囲を覆われた第2の集電体7および正極を収納して、凹部6と、セパレータ3で周囲を覆われた第2の集電体7および正極とを、さらに負極が形成された第1の集電体5’の負極が形成された面で覆うように配置してもよいし、別の第1の集電体5の凹部6の底面の裏側に負極を形成して積み重ねてもよい。なお、この場合、負極は第1の集電体5および5’の両面全面に形成されていてもよい。
【0038】
非水電解質としては、有機電解液、高分子固体電解質、無機固体電解質、イオン液体等のいずれも用いることができる。
【0039】
有機電解液を用いる場合は、正極と負極との間にセパレータ3を配する。有機電解液は、有機溶媒と電解質塩によって構成され、必要に応じて、電極表面への固体電解質層の形成抑制、過充電防止、難燃性の付与等を目的とした添加剤を加えてもよい。
【0040】
有機溶媒としては、高誘電率を有し、低粘性、低蒸気圧のものが好適に用いられ、このような材料としては、たとえば、エチレンカーボネイト、プロピレンカーボネイト、ブチレンカーボネイト、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、メチルエチルカーボネイト、ジメチルカーボネイト、ジエチルカーボネイトなどから選ばれる1種もしくは2種以上を混合した溶媒が挙げられる。
【0041】
電解質塩としては、例えばLiClO
4、LiBF
4、LiPF
6、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2などのリチウム塩があげられる。
【0042】
セパレータ3には、有機樹脂繊維の不織布や、無機繊維の不織布、セラミックの多孔質材料などを用いることができるが、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンを主成分とした有機多孔質膜にセラミック粒子を混合したものや、セラミックフィラーを含む多孔質膜を接着したもの、無機繊維の不織布、有機材料と無機材料の複合多孔質膜、セラミックの多孔質材料を用いることが好ましい。これらは耐熱性が高く、二次電池の熱暴走に対する安全性を高めることができる。
【0043】
高分子固体電解質、無機固体電解質を用いる場合は、第1〜第3実施形態におけるセパレータ3に替えて、高分子固体電解質のシートを用いたり、第2の電極2の表面に固体電解質層を形成して被覆すればよい。第1実施形態においては、第1の集電体5と第2の集電体7とは絶縁材を介して重ね合わせればよく、絶縁性接着剤を用いて第1の集電体5と第2の集電体7の周縁部を接着することもできる。
【0044】
接続端子8、9の材質は、負極側ではNiまたはCuを用いることが、負極の電位において電解液中のイオン伝導体である金属(Liなど)との合金化などの副反応が発生しない点、導電性が高く比較的安価な点から好ましく、正極側ではAlを用いることが、表面に酸化皮膜を形成して不動態化し、高い電位においても耐酸化性に優れている点から好ましい。
【実施例】
【0045】
本発明の実施例として、まず、正極を以下のようにして作製した。正極活物質としてコバルト酸リチウムを用い、その原料粉末に、成形助剤、可塑剤、分散剤、溶剤を加えて混
合し、スラリーを調整した。このスラリーを、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にドクターブレード法にて塗布した後乾燥させて、グリーンシートを作製した。作製したグリーンシートを、焼成後の寸法が40×50mmになるように打ち抜き、大気中にて975℃で焼成し、相対密度85%、厚さ35μmの焼結体である正極を作製した。
【0046】
負極活物質としては、フェノール樹脂の熱処理により得られる炭素質材料を用いた。
市販のフェノール樹脂を溶剤であるテトラヒドロフラン(THF)に溶解した濃度35質量%のフェノール樹脂溶液を、厚さ10μmのCu箔の一方の表面上に、ドクターブレード法により塗布し乾燥した後、窒素雰囲気中にて最高温度900℃で10分間熱処理することにより、Cu箔上に炭素質材料を結着させ、41×51mm、厚さ56μmの負極を形成した。
【0047】
負極を結着したCu箔を、45×55mmの四辺形の中央部に負極が位置するとともに、一方の短辺側に幅5mm、長さ20mmのタブを有する形状にカットした。なお、タブの位置は、短辺を二等分した一方の領域の中央付近とした。
【0048】
Cu箔の負極が形成された面にセパレータとしてポリエチレン製の不織布(45×58mm、厚さ16μm)を重ね合わせ、プレス機を用いてCu箔に41×51mm、深さ90μmの凹部を形成した。なお、プレスの際には負極が凹部の底面に位置するように調整した。
【0049】
作製した正極の一方の主面にPtを蒸着し、他方の主面が凹部内のセパレータと対向するようにCu箔の凹部内に正極を収納した。さらに、45×55mmの四辺形で、一方の短辺側に幅5mm、長さ20mmのタブを有する形状にカットした、厚さ10μmのAl箔を、Cu箔の凹部と凹部内に収納した正極のPtを蒸着した面を覆うように重ね合わせた。なお、このときCu箔のタブとAl箔のタブとが重ならないようにAl箔を配置した。
【0050】
Cu箔のタブにNiリード線を、Al箔のタブにAlリード線を接続端子としてスポット溶接で接続した後、これら発電要素と集電体からなる極群を外装体である袋状のアルミラミネートフィルムに挿入し、有機電解液としてエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)を体積比3:7の比で混合した溶媒に、ヘキサフルオロリン酸
リチウムLiPF
6を1mol/Lで溶解させたものを注入して、リード線のみを外装体の開口部から引き出した状態で外装体の開口部を熱溶着により密閉し、二次電池とした。
【0051】
作製した二次電池10個について、以下の条件で500サイクルの充放電試験を行った。
【0052】
充電レート:1.0C
放電レート:0.2C
充放電電圧:3.0V−4.2V
測定温度 :30℃
充放電試験の結果、作製した二次電池のいずれも顕著な容量劣化は確認されなかった。また、充放電試験後の二次電池を解体して観察した結果、電極の位置ずれやデンドライト状Li金属の析出はみられなかった。