【実施例】
【0020】
スプロケットユニット組立設備の構成を説明する前に、組立対象物であるスプロケットユニットの組立手順を
図1に基づいて説明する。
図1(a)に示すように、円板状のフランジ11に、軸受穴12及び雌ねじ13(この例では5箇所)が設けられている。
【0021】
スタットとも呼ばれる両ねじボルト14を準備する。両ねじボルト14は、締結工具を掛けるねじ無し部15と、このねじ無し部15の一方に設けられる雄ねじ部16と、ねじ無し部15の他方に設けられる雄ねじ部17とからなる。
フランジ11側の雌ねじ13に、雄ねじ部16を軽くねじ込むことで、両ねじボルト14を仮締めする。この仮締めは人手で実施可能である。必要に応じて接着剤容器18から接着剤が塗布される。
【0022】
次に、(b)にて、軸受21及びオイルシール22が軸受穴12に圧入される。この圧入はプレスマシンなどの圧入機で実施される。
次に、(c)にて、所定の締め付けトルクが発生するまで、両ねじボルト14の雄ねじ部16をフランジ11に本格的にねじ込む。この作業は本締めと呼ばれ、ナットランナで実施される。
【0023】
次に、(d)にて、ボルト穴23を有するスプロケット24を準備する。そして、本締めされた両ねじボルト14がボルト穴23を貫通するようにして、フランジ11の上面にスプロケット24を載せる。
【0024】
次に、(e)に示すように、ナット25を準備し、ナット25を両ねじボルト14の雄ねじ部17に、仮締めする。この仮締め作業はナットランナで実施する。
次に、(f)に示すように、ナット25を雄ねじ部17に、所定の締め付けトルクで本締めする。この本締め作業はナットランナで実施する。
以上により、(g)に示すような、スプロケットユニット10が出来上がる。
【0025】
以上の作業を実施する上で、好適な設備を次に説明する。
図2に示すように、スプロケットユニット組立設備30は、丸又は多角形(この例では六角形)の作業テーブル31と、鉛直軸46を中心にして、作業テーブル31を120°づつ(この例では図面反時計廻りに)回転させる回転機構(
図3、符号45)と、作業テーブル31上に所定のピッチで配置されフランジを支える6個のフランジ支持台32L、32Rと、作業テーブル31の周囲のエリアを3等分し、その1つに割り当てられ作業員33が立つ作業床34が設けられる作業員エリア35と、残余の2つに割り当てられ組立に係る各種の自動機が設けられる第1自動機エリア36及び第2自動機エリア37とを、主要素とする。
【0026】
6個のフランジ支持台中、3個は回転機構で回転されたときに作業床34に立つ作業員33の左手38L(Lは左を示す添え字。以下同)近傍に順に到達する左フランジ支持台32Lであり、残りの3個は作業員33の右手38R(Rは右を示す添え字。以下同)近傍に順に到達する右フランジ支持台32Rである。
【0027】
第1自動機エリア36には、フランジに軸受及びオイルシールを圧入する圧入機39と、ナットを仮締めする第2ナットランナ42とが、回転方向に沿ってこの順に配置される。
第2自動機エリア37には、両ねじボルトを本締めする第1ナットランナ41と、ナットを本締めする第3ナットランナ43とが、回転方向に沿ってこの順に配置されている。
【0028】
図3に示すように、第1〜第3ナットランナ41〜43は、支柱44に昇降可能に取り付けられ、所定の締付け作業を実施する。また、作業テーブル31は回転機構45の鉛直軸46に支持され、水平旋回する。作業床34に操作盤47が設けられており、作業員33が操作盤47のボタン48を押すことで、作業テーブル31は120°回転し停止する。すなわち、作業テーブル31は手動始動、自動停止される。
【0029】
図4に示すように、圧入機39はスタンド49と、このスタンド49に下向き取付けられるプッシャ51とからなる。プッシャ51は、所定の軸力を発生する油圧シリンダや空圧シリンダが好適である。
【0030】
図2に示すように、第1自動機エリア36と第2自動機エリア37は、安全策50で囲われている。
作業員33の左側に、両ねじボルト14が並べられているボルトストッカ52が配置されると共にフランジ11を供給するコンベア53が設けられる。
【0031】
また、作業員33の右側に、スプロケット24が並べられているスプロケットストッカ54が配置されると共に完成したスプロケットユニット10を払い出すコンベア55が設けられる。
【0032】
安全柵50を貫通するようにして、柵外から軸受21及びオイルシール22を供給するコンベア56、57が第1自動機エリア36に延ばされ、ナット25を供給するコンベア58が第1自動機エリア36に延ばされる。
さらに、第1自動機エリア36に、部品搬送ロボット61が設けられ、この部品搬送ロボット61が、コンベア56、57、58から軸受21及びオイルシール22、ナット25を選択的に作業テーブル31上へ移す。
【0033】
以上の述べたスプロケットユニット組立設備30の作用を次に述べる。
図5(a)に示すように、左フランジ支持台32Lに、作業員33によりフランジ11が載せられる。そして、フランジ11に両ねじボルト14が仮止め(手締め)される(フランジセット工程)。なお、作業テーブル31に付した黒点(・)は、以下の理解を容易にするための目印である。
【0034】
作業テーブル31が120°回されると、(b)に示すように、フランジ11は第1自動機エリア36に移る。このフランジ11に軸受21及びオイルシール22を部品搬送ロボット61で載せ、圧入機39により圧入する(軸受圧入工程)。
【0035】
作業テーブル31が120°回されると、(c)に示すように、フランジ11は第2自動機エリア37に移る。このフランジ11における両ねじボルトを第1ナットランナ41により締付ける(本締めする)(ボルト締付け工程)。
【0036】
作業テーブル31が120°回されると、(d)に示すように、フランジ11は作業員エリア35に戻る。作業員33は、フランジ11を、右フランジ支持台32Rへ移す(矢印(1))。
移されたフランジ11B(区別するために、左から右へ移された後のフランジは11Bと記す。)に右手38Rでスプロケット24をセットする(スプロケットセット工程)。
【0037】
作業テーブル31が120°回されると、(e)に示すように、フランジ11Bは、第1自動機エリア36に移る。フランジ11における両ねじボルトに部品搬送ロボット61によりナット25を載せ、第2ナットランナ42により仮締めする(ナット仮締め工程)。
【0038】
作業テーブル31が120°回されると、(f)に示すように、フランジ11Bは第2自動機エリア37に移る。第3ナットランナ43によりナットを本締めする(ナット本締め工程)。
作業テーブル31が120°回されると、(g)に示すように、スプロケットユニット10が作業員エリア35に到達する。作業員33は、スプロケットユニット10をコンベア55へ払い出す(ユニット払い出し工程)。
すなわち、7つの工程群が、作業テーブル31を2回転させる間に順次実施される。
【0039】
以上の組立作業を実施するスプロケットユニット組立設備30は、
図2に示すように、コンパクトにまとまっている。すなわち、本発明により、小型で床面積が小さなスプロケットユニット組立設備30が提供される。
【0040】
図5では、組立作業を平易にするために、フランジ11を1個のみ追跡することで説明した。現実の組立作業では、作業テーブル31に、5〜6個のフランジ11を常時載せた状態で作業を実施する。
すなわち、
図6(a)、(b)、(c)に示すように、作業員は順次到着する左フランジ支持台32Lに、次々とフランジ11を載せる。
【0041】
図6(d)では、作業員は、組立途中のフランジ11を左フランジ支持台32Lから右フランジ支持台32Rへ移す(矢印(2))。移されたフランジは符号が11Bになる。空になった左フランジ支持台32Lへ、新たなフランジ11を載せる。
以降、
図6(e)、(f)、(g)で作業員は、組立途中のフランジ11を左フランジ支持台32Lから右フランジ支持台32Rへ移し(矢印(2))、空になった左フランジ支持台32Lへ、新たなフランジ11を載せる作業を繰り返す。
【0042】
(g)以降は、(g)の形態が繰り返される。すなわち、(a)〜(f)が導入形態であり、(g)が定常形態であると言える。
この(g)において、作業員エリア35では、フランジセット工程(
図5(a))とスプロケットセット工程(
図5(d))とユニット払い出し工程(
図5(g))とが一括して実施される。
【0043】
第1自動機エリア36では、軸受圧入工程(
図5(b))とナット仮締め工程(
図5(e))とが並行して実施される。
第2自動機エリア37では、ボルト締付け工程(
図5(c))とナット本締め工程(
図5(f))とが並行して実施される。
【0044】
作業員エリア35及び第1・第2自動機エリア36、37で、各々複数の作業を同時並行的に実施させる。自動機の稼働率が極めて高くなり、生産能率を更に高めることができる。