(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バルブは、前記ノズルに前記作動流体が流れないときは、前記弁体が前記バネにより全開方向へ押されて前記ノズルの一部に当接するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のエゼクタ。
吸気通路に過給機を備えたエンジンのブローバイガス還元装置に用いられ、前記過給機により過給された空気の一部が前記作動流体として前記ノズルから噴射され、前記エンジンのブローバイガスが前記目的流体として前記吸入口から前記減圧室へ吸入されるように構成したことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のエゼクタ。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載されるブローバイガス還元装置に使用されるジェットポンプ(エゼクタ)が知られている。この還元装置は、吸気通路に過給機を備えたエンジンに設けられ、エンジンで発生するブローバイガスをブローバイガス還元通路から吸気通路を介してエンジンへ還元するように構成されている。この還元装置は、吸気通路における過給機の上流側と下流側を接続するバイパス通路と、バイパス通路に負圧を発生させるためのエゼクタとを備える。そして、ブローバイガス還元通路の出口がエゼクタを介してバイパス通路に接続される。従って、過給機の作動時には、吸気通路における過給機の上流側と下流側との間で吸気に圧力差が生じ、バイパス通路の両端の間にも圧力差が生じる。この圧力差によってバイパス通路に空気が作動流体として流れ、その流れによってエゼクタに負圧が発生し、その負圧の作用によりブローバイガス還元通路からブローバイガスが目的流体としてエゼクタへ流れ、バイパス通路を介して吸気通路へ流れるようになっている。
【0003】
また、上記の還元装置では、過給機による過給圧が上昇すると、それに伴ってバイパス通路における空気流量、すなわちエゼクタを流れる空気の量が増大し、それに応じてエゼクタで発生する負圧が大きくなる。このため、エンジンからブローバイガス還元通路、エゼクタ及びバイパス通路を介して吸気通路へ流れるブローバイガスの流量が過給圧の上昇に伴って増大するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載のエゼクタによれば、過給圧の上昇に伴い、エゼクタを流れる空気量が増大して、エゼクタで発生する負圧が大きくなる。このため、エンジンへ還元されるブローバイガス流量も多くなり、場合によっては、ブローバイガスがエンジンへ過剰に還元されるおそれがあった。この場合、エンジンのクランクケースからブローバイガスと共にエンジンオイルが持ち去られることとなり、その分だけエンジンオイルの消費が多くなってしまう懸念があった。また、ブローバイガス還元量の増大によって、エンジンの空燃比が変動し、エンジンの排気エミッションの悪化を招くおそれがあった。このため、エゼクタに係る空気の圧力(過給圧)が上昇しても、エゼクタで発生する負圧をある限度で抑えてブローバイガス還元量の増大を抑えることが望まれる。また、エゼクタの用途は、特許文献1の還元装置には限られず、その他の場合でも、上記と同様の要望があり得る。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、作動流体の圧力が上昇しても作動流体の流量の増大を抑えて負圧の発生を抑え、目的流体の流量の必要以上の増大を抑えることを可能としたエゼクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、外側パイプと、外側パイプにて作動流体の入口側に設けられた減圧室と、外側パイプにて作動流体の出口側に設けられたスロートと、外側パイプにて作動流体の入口側に設けられ、先端部が減圧室の中に配置されて作動流体を噴射するノズルと、外側パイプにて減圧室に設けられ、減圧室に目的流体を吸入するための吸入口とを備え、ノズルから噴出される作動流体により減圧室に負圧を発生させて吸入口から目的流体を吸入し、その吸入された目的流体をスロートを介して作動流体と共に外側パイプから排出するように構成したエゼクタにおいて、ノズルには、ノズルを流れる作動流体の流量を調節するためのバルブが設けられ、バルブは、弁座と、弁座に当接可能に設けられた弁体と、弁体を弁座から離間する方向へ押すバネとを備え、弁体が有底の中空に形成され、中空が作動流体の上流側へ向けて開口し
、バルブにより調節される作動流体の流量は、作動流体の流体圧力の範囲内において所定値を上限値として有する流量特性を有することを趣旨とする。
【0008】
上記発明の構成によれば、ノズルに作動流体を導入してノズルから作動流体を噴射させることにより、減圧室に負圧が発生する。この負圧の作用により吸入口から目的流体が吸入され、吸入された目的流体がスロートを介して作動流体と共に外側パイプから排出される。ここで、ノズルに設けられるバルブにより、ノズルを流れる作動流体の流量が調節される。また、バルブは、弁体がバネの押す力に抗して作動流体の圧力により弁座に近付き、すなわち、弁体が閉弁方向へ移動し、ノズルから噴射される作動流体の量が減少する。また、ノズルを流れる作動流体の中に含まれるスラッジが、弁体の開口から弁体の有底の中空の中に入って捕捉される。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、バルブは、ノズルに作動流体が流れないときは、弁体がバネにより全開方向へ押されてノズルの一部に当接するように構成されることを趣旨とする。
【0010】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、ノズルに作動流体が流れないときは、弁体がバネにより全開方向へ押されてノズルの一部に当接するので、バルブの全開状態では、弁体がノズルに押し付けられて固定される。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、バルブは、弁体がノズルの一部に当接した状態で、弁体とノズルとの間に流路が形成されること趣旨とする。
【0012】
上記発明の構成によれば、請求項2に記載の発明の作用に加え、弁体がノズルの一部に当接した状態で、弁体とノズルとの間に流路が形成されるので、バルブの全開状態では、その流路によりノズルに作動流体の流れが保たれる。
【0013】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れに記載の発明において、バルブは、弁体が、弁座の弁孔に緩く挿入される凸部を有することを趣旨とする。
【0014】
上記発明の構成によれば、請求項1乃至3の何れかに記載の発明の作用に加え、弁体の凸部が弁座の弁孔に緩く挿入されるので、弁体の動きが凸部と弁孔との挿入関係により案内される。
【0015】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れに記載の発明において、吸気通路に過給機を備えたエンジンのブローバイガス還元装置に用いられ、過給機により過給された空気の一部が作動流体としてノズルから噴射され、エンジンのブローバイガスが目的流体として吸入口から減圧室へ吸入されるように構成したことを趣旨とする。
【0016】
上記発明の構成によれば、請求項1乃至4の何れかに記載の発明の作用に加え、過給機により過給された空気の一部がノズルから噴出されることにより減圧室に負圧が発生して吸入口からブローバイガスが吸入され、その吸入されたブローバイガスがスロートを介して空気と共に外側パイプから排出される。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、ノズルに作用する作動流体の圧力が上昇しても作動流体の流量の増大を抑えることができ、エゼクタによる負圧の発生を抑えることができ、目的流体の流量の必要以上の増大を抑えることができる。また、スラッジによる弁体の動きの悪化を防止することができ、エゼクタによる作動流体の流量特性の変化を抑えることができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、バルブの全開状態において弁体の振動を防止することができ、振動による弁体の摩耗を防止することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加え、エゼクタに作動流体が流れ始めるときから作動流体の流れを安定化させることができ、作動流体の流量バラツキを低減することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の何れかに記載の発明の効果に加え、弁体の動きを安定化させることができ、作動流体の流量特性を安定させることができ、エゼクタで発生する負圧特性を安定させることができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の何れかに記載の発明の効果に加え、過給圧の上昇に伴い、エゼクタでの負圧の発生を徐々に抑えることができ、ブローバイガス還元量を徐々に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のエゼクタを、エンジンのブローバイガス還元装置に適用して具体化した一実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1に、この実施形態におけるブローバイガス還元装置を含むエンジンシステムを概略構成図により示す。このエンジンシステムは、レシプロタイプのエンジン1を備える。エンジン1の吸気ポート2には、吸気通路3が接続され、排気ポート4には、排気通路5が接続される。吸気通路3の入口には、エアクリーナ6が設けられる。エアクリーナ6より下流の吸気通路3には、排気通路5との間に吸気通路3における吸気を昇圧させるための過給機7が設けられる。
【0025】
過給機7は、吸気通路3に配置されたコンプレッサ8と、排気通路5に配置されたタービン9と、コンプレッサ8とタービン9を一体回転可能に連結する回転軸10とを含む。過給機7は、排気通路5を流れる排気ガスによりタービン9を回転させて回転軸10を介してコンプレッサ8を一体回転させることにより、吸気通路3における吸気を昇圧させる、すなわち過給を行うようになっている。
【0026】
過給機7に隣接して排気通路5には、タービン9を迂回する排気バイパス通路11が設けられる。この排気バイパス通路11には、ウエストゲートバルブ12が設けられる。ウエストゲートバルブ12は、ダイアフラム式のアクチュエータ13により開度が調節されるようになっている。ウエストゲートバルブ12により排気バイパス通路11を流れる排気ガスが調節されることにより、タービン9に供給される排気ガス流量が調節され、タービン9及びコンプレッサ8の回転速度が調節され、過給機7による過給圧が調節されるようになっている。
【0027】
吸気通路3において、過給機7のコンプレッサ8とエンジン1との間には、インタークーラ14が設けられる。このインタークーラ14は、コンプレッサ8により昇圧された吸気を適温に冷却するためのものである。インタークーラ14とエンジン1との間の吸気通路3には、サージタンク3aが設けられる。サージタンク3aの上流側には、スロットルバルブ15が設けられる。
【0028】
吸気通路3における過給機7の上流側と下流側は、吸気バイパス通路16により接続される。すなわち、過給圧が高くなるコンプレッサ8及びインタークーラ14より下流側の吸気通路3と、コンプレッサ8より上流側の吸気通路3との間には、コンプレッサ8を迂回した吸気バイパス通路16が設けられる。この吸気バイパス通路16には、同通路16を流れる空気により負圧を発生させるエゼクタ17が設けられる。
【0029】
図2に、エゼクタ17を断面図により示す。エゼクタ17は、外側パイプ31を備える。外側パイプ31において、作動流体としての空気の入口側には、減圧室31aが設けられる。外側パイプ31において、空気の出口側には、括れ形状をなすスロート31bが設けられる。また、外側パイプ31において、空気の入口側には、ノズル32が設けられる。ノズル32の先端部32aは、減圧室31aの中に配置され、空気を噴射するように構成される。外側パイプ31において、減圧室31aには、減圧室31aに目的流体としてのブローバイガスを吸入するための吸入口31cが設けられる。ノズル32の入口32bは、吸気バイパス通路16の上流側に接続される。外側パイプ31の出口31dは、吸気バイパス通路16の下流側に接続される。外側パイプ31の吸入口31cには、後述する第1ブローバイガス還元通路18が接続される。そして、ノズル32の先端部32aから空気を噴射させることにより、減圧室31aに負圧が発生する。この負圧が吸入口31cに作用することにより、吸入口31cから第1ブローバイガス還元通路18を介してブローバイガスが吸入され、その吸入されたブローバイガスがスロート31bを介して空気と共に外側パイプ31の出口31dから排出される。
【0030】
ここで、
図2に示すように、ノズル32には、ノズル32を流れる空気の流量を調節するためのバルブ36が設けられる。このバルブ36は、ノズル32に設けられた弁座32cと、弁座32cに当接可能に設けられた弁体37と、弁体37を弁座32cから離間する方向へ押すバネ38とを備える。
【0031】
図3に、エゼクタ17のバルブ36の部分を拡大して断面図により示す。
図2に示すように、ノズル32は、多段の外径を有する円筒形状をなす。ノズル32は、大径な基端部32dと、小径な先端部32aとを含み、先端部32aの先端に噴射口32eを有する。また、基端部32dの中空が弁体37を収容する弁室32fとなっている。また、ノズル32の内側において、先端部32aと基端部32dとの境目の段部32gに弁座32cが形成される。弁座32cの中心には弁孔32hが形成される。この弁孔32hは、ノズル32の先端部32aの中空に通じる。ノズル32の基端部32dには、別体のパイプ継手33が設けられ、そのパイプ継手33の開口部がノズル32の入口32bとなっている。
【0032】
図2、
図3に示すように、バルブ36を構成する弁体37は、多段の外径を有する柱形状をなし、有底中空状に形成される。弁体37の中空部37aは空気流の上流側へ向けて開口する。また、弁体37は、弁孔32hに緩く挿入される凸部37bを有する。すなわち、弁体37は、大径部37c、中径部37d及び小径部37eを含む。大径部37cと中径部37dの内部が中空部37aとなっている。中径部37dと小径部37eにより、上記した凸部37bが構成される。大径部37cと中径部37dとの境目は平坦な段部37fとなっている。中径部37dの外径は、ノズル32の先端部32aの内径より若干小さく設定され、両者37d,32aの間で空気の流通が許容される。小径部37eの先端部には、ノズル32の先端部32aの中で小径部37eの動きを案内する複数のリブ37gが形成される。また、大径部37cの基端には、フランジ37hが形成される。フランジ37hの外径は、ノズル32の基端部32dの内径より若干小さく設定され、両者37h,32dの間で空気の流通が許容される。また、フランジ37hの外周には、複数の溝37iが形成され、これら溝37iによっても空気の流通が許容される。フランジ37hの端面には、複数の突起状の脚部37jが形成される。
【0033】
上記の構成において、
図2に示すように、バルブ36は、ノズル32に空気が流れないときは、弁体37がバネ38により全開方向へ押されてノズル32の一部に当接するように構成される。すなわち、
図2に示すように、バルブ36の全開状態において、弁体37のフランジ37hの端面に形成された脚部37jが、ノズル32の基端部32dに設けられるパイプ継手33の端面33aに対してバネ38により押されて当接するようになっている。この状態では、パイプ継手33の端面33aと、弁体37のフランジ37hとの間に、脚部37jを介して流路39が確保される。つまり、バルブ36は、弁体37がノズル32の一部に当接した状態では、弁体37とノズル32との間に流路39が形成されるように構成される。従って、この状態では、ノズル32の入口32bから空気が入ることにより、上記の流路39を介してノズル32の内部に空気が流れる。
【0034】
一方、
図3に示すように、バルブ36は、ノズル32に空気が導入されることにより、弁体37が受ける空気の圧力がある程度高くなる。このとき、弁体37が、空気の圧力を受けてバネ38の力に抗して押され、弁体37の段部37fが弁座32cに当接し、ノズル32の中の流路が弁体37により遮断される。すなわち、バルブ36が閉弁状態となる。
【0035】
図2において、エゼクタ17の減圧室31aに設けられた吸入口31cには、
図1に示すように、第1ブローバイガス還元通路18の出口が接続される。この第1ブローバイガス還元通路18の入口は、エンジン1のクランクケース19に接続される。第1ブローバイガス還元通路18は、エンジン1の燃焼室20からクランクケース19の内部へ漏れ出たブローバイガスを再び吸気通路3を介して燃焼室20へ還元するためのものである。従って、過給機7の作動時には、その過給圧によりエゼクタ17へ空気が流れて、エゼクタ17の減圧室31aに負圧が発生し、この負圧が第1ブローバイガス還元通路18を通じてクランクケース19に作用する。この負圧の作用により、クランクケース19から同還元通路18へブローバイガスが導出され、そのブローバイガスがエゼクタ17から吸気バイパス通路16を介して吸気通路3へ流れる。吸気通路3へ流れたブローバイガスは、コンプレッサ8及び吸気通路3等を経由してエンジン1の燃焼室20へと還元される。
【0036】
この実施形態では、エンジン1のヘッドカバー21に、燃焼室20から漏れ出たブローバイガスを再び吸気通路3を介して燃焼室20へ還元するための第2ブローバイガス還元通路22が接続される。この第2ブローバイガス還元通路22の出口は、吸気通路3のサージタンク3aに接続される。エンジン1の運転時であって過給機7の非作動時には、サージタンク3aの中が負圧となり、第2ブローバイガス還元通路22には、この負圧が作用する。従って、ヘッドカバー21から第2ブローバイガス還元通路22へブローバイガスが導出される。ヘッドカバー21にて、この第2ブローバイガス還元通路22の入口には、PCVバルブ23が設けられる。このPCVバルブ23は、ヘッドカバー21から第2ブローバイガス還元通路22へ導出されるブローバイガス流量を調整するようになっている。
【0037】
この実施形態では、ヘッドカバー21の内部とクランクケース19の内部に新気を導入するための新気導入通路24が、エンジン1と吸気通路3との間に設けられる。この新気導入通路24の入口は、エアクリーナ6の近傍の吸気通路3に接続され、その出口はヘッドカバー21に接続される。なお、ヘッドカバー21の内部とクランクケース19の内部は、エンジン1に設けられた連通路(図示略)を介して連通している。
【0038】
以上説明したこの実施形態のブローバイガス還元装置によれば、エンジン1の運転時であって過給機7の非作動時には、スロットルバルブ15の下流側にて吸気通路3に発生する負圧が第2ブローバイガス還元通路22に作用する。この負圧の作用により、ヘッドカバー21の内部に溜まったブローバイガスが、第2ブローバイガス還元通路22を通じてサージタンク3aへ流れる。このため、過給機7の非作動時には、ヘッドカバー21の内部のブローバイガスを、第2ブローバイガス還元通路22及び吸気通路3を通じて、燃焼室20へ還元することができる。このとき、ヘッドカバー21から第2ブローバイガス還元通路22へ流れるブローバイガス流出量は、PCVバルブ23により適量に調整される。
【0039】
一方、エンジン1の運転時であって過給機7の作動時には、過給機7より下流側の吸気通路3が正圧(過給圧)となるので、第2ブローバイガス還元通路22の出口には負圧が作用しなくなり、ヘッドカバー21から吸気通路3へは第2ブローバイガス還元通路22を通じてブローバイガスを排出できなくなる。このとき、過給機7より上流側の吸気通路3と下流側の吸気通路3との間には吸気に圧力差が生じ、吸気バイパス通路16の両端の間にも吸気に圧力差が生じる。この圧力差(過給圧)によって吸気バイパス通路16に空気が流れ、その空気流によってエゼクタ17に負圧が発生する。従って、第1ブローバイガス還元通路18の出口には、エゼクタ17による負圧が作用し、クランクケース19の内部に溜まったブローバイガスが第1ブローバイガス還元通路18、エゼクタ17及び吸気バイパス通路16を通じて吸気通路3へ流れる。ここで、吸気バイパス通路16は吸気通路3の一部を迂回して設けられるので、吸気バイパス通路16とエゼクタ17が吸気通路3における吸気抵抗に影響を与えることはない。このため、過給機7の作動時に吸気通路3の吸気抵抗を増やすことなくブローバイガスを燃焼室8へ還元することができる。
【0040】
この実施形態のエゼクタ17によれば、ノズル32に作動流体としての空気を導入してノズル32から空気を噴射させることにより、減圧室31aに負圧が発生する。この負圧の作用により吸入口31cから目的流体としてのブローバイガスが吸入され、吸入されたブローバイガスがスロート31bを介して空気と共に外側パイプ31の出口31dから排出される。ここで、ノズル32に設けられるバルブ36により、ノズル32を流れる空気の流量が調節される。また、ノズル32に作用する空気圧力(過給圧)が増大することにより、バルブ36は、弁体37がバネ38の押す力に抗して空気の圧力により弁座32cに近付き、すなわち、弁体37が閉弁方向へ移動し、ノズル32を流れる空気量が減少してノズル32から噴射される空気の量が減少する。このため、ノズル32に作用する空気圧力(過給圧)が上昇しても空気流量の増大を抑えることができ、エゼクタ17による負圧の発生を抑えることができ、ブローバイガス流量の必要以上の増大を抑えることができる。これにより、エンジン1へのブローバイガスの過剰な還元を抑えることができる。
【0041】
従って、過給機7による過給圧が高くなる高過給域では、過給圧がエゼクタ17で消費されず、過給圧の全てをエンジン1へ供給することができる。このため、高過給域でのエンジン1の出力低下を防止することができる。また、高過給域でブローバイガスの過剰な還元を抑えることができるので、エンジン1のクランクケース19からブローバイガスと共にエンジンオイルが持ち去られることを防止することができ、エンジンオイルの消費を抑えることができる。また、ブローバイガスの過剰な還元によって、エンジン1の空燃比が変動し、エンジン1の排気エミッションが悪化することを防止することができる。
【0042】
図4に、この実施形態におけるエゼクタ17の空気流量特性をグラフにより示す。このグラフにおいて、実線は本実施形態のエゼクタ17の空気流量特性を示し、破線はバルブを持たない従来例のエゼクタの空気流量特性を示す。このグラフから分かるように、従来例では、エゼクタに供給される空気の圧力(駆動圧力)が上昇するのに伴い、その空気の流量(駆動流量)も最大値まで徐々に増大する。これに対し、この実施形態では、駆動圧力が上昇するのに伴い、駆動流量は、徐々に増大し、所定値(この場合「70(L/min)」)を上限値として徐々に減少し、やがてほぼゼロに近くなる。従って、この実施形態では、エゼクタ17で発生する負圧も、上記の空気流量特性に合わせて同様に変化することとなり、エゼクタ17等を介して吸気通路3へ流れるブローバイガス流量も同様な特性傾向を示すこととなる。
図4において、駆動流量の「Q」は、エンジンオイルの消費流量を所要の範囲内に収めるための上限値を意味する。この実施形態の空気流量特性は、その上限値Q未満に抑えることができる。
【0043】
この実施形態では、ノズル32を流れる空気の中にスラッジが含まれることがある。この空気中に含まれるスラッジは、弁体37の開口から有底の中空部37aの中に入って捕捉される。このため、スラッジによる弁体37の動きの悪化を防止することができ、エゼクタ17による空気の流量特性の変化を抑えることができる。
【0044】
この実施形態では、バルブ36につき、ノズル32に空気が流れないときは、弁体37がバネ38により全開方向へ押されてノズル32の一部に当接する。従って、バルブ36の全開状態では、弁体37がノズル32に押し付けられて固定される。このため、バルブ36の全開状態において弁体37の振動を防止することができ、振動による弁体37の摩耗を防止することができる。
【0045】
この実施形態では、バルブ36につき、弁体37がノズル32の一部に当接した状態で、弁体37とノズル32との間に流路39が形成される。従って、バルブ36の全開状態では、その流路39によりノズル32に空気の流れが保たれる。このため、エゼクタ17に空気が流れ始めるときから空気の流れを安定化させることができ、空気流量のバラツキを低減することができる。
【0046】
この実施形態では、バルブ36につき、弁体37が、弁座32cの弁孔32hに緩く挿入される凸部37bを有するので、弁体37の凸部37bが弁座32cの弁孔32hに緩く挿入されることとなり、弁体37の動きが凸部37bと弁孔32h及びノズル32の先端部32aの中空との挿入関係により案内される。このため、弁体37の動きを安定化させることができ、空気の流量特性を安定させることができ、エゼクタ17で発生する負圧特性を安定させることができる。
【0047】
この実施形態では、過給機7により過給された空気の一部がノズル32から噴出されることにより減圧室31aに負圧が発生して吸入口31cからブローバイガスが吸入され、その吸入されたブローバイガスがスロート31bを介して空気と共に外側パイプ31の出口31dから排出される。このため、過給圧の上昇に伴い、エゼクタ17での負圧の発生を徐々に抑えることができ、ブローバイガス還元量を徐々に抑えることができる。
【0048】
この実施形態では、第2ブローバイガス還元通路22の入口にPCVバルブ23が設けられるので、このPCVバルブ23により第2ブローバイガス還元通路22へ流れるブローバイガス流量が適量に調整される。このため、第2ブローバイガス還元通路22を通じて過剰なブローバイガスが燃焼室20へ還元されるのを防止することができる。
【0049】
なお、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0050】
例えば、前記実施形態では、過給機付のエンジン1において、過給時にエンジン1へブローバイガスを還元すると共に、その還元量を調節するために本発明のエゼクタ17を使用したが、過給時にエンジンへEGRガスを還流すると共に、そのEGRガスの還流量を調節するために本発明のエゼクタを使用することもできる。