(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記記憶媒体に記録された前記利用実績から任意の時間帯を抽出して、特定の時刻に各階床に滞在している人数、および任意の時間帯の各階床での乗降人数と移動方向とを含む人の流れを出力する分析装置
をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載されたエレベータシステム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の実施形態の人数計測装置1について、既設のエレベータの乗籠101に設置して使用する状況を例に、
図1から
図10を参照して説明する。
図1は、人数計測装置1のステレオカメラ2を乗籠101の天井101aに、映像処理装置3などを内蔵するケース11を乗籠101の上に、それぞれ設置した状態を示す斜視図である。
図2は、人数計測装置1を装備したエレベータ100および人数計測装置1と外部装置との接続形態を示すブロック図である。
図3は、人数計測装置1のステレオカメラ2で撮影される視野について鉛直方向に沿う断面図で示す。
図4は、乗籠101から降りる利用者P1をステレオカメラ2で撮影した画像を示す。
図5は、乗籠101に乗り込む利用者P2をステレオカメラ2で撮影した画像を示す。
図6は、表示器用カメラ4で表示器102の階床表示部102Aを撮影した画像を基に乗籠101の着床階および運転方向を判定する方法を示す。
図7は、表示器用カメラ4で表示器102の方向表示部102Bを撮影した画像を基に乗籠101の移動方向を判定する方法を示す。
図8は、着床階を数字で、移動方向を矢印で、それぞれ表示するデジタル表示のインジケータ104を表示器用カメラ4で撮影した画像を基に、乗籠101の着床階および運転方向を判定する方法を示す。
図9は、人数計測装置1の処理内容を示すフローチャート。
図10は、人数計測装置1から出力され記憶媒体5に記録された利用実績を階床ごとに示すグラフである。
【0014】
人数計測装置1は、
図1に示すように乗籠101の天井101aの近傍に設置されたステレオカメラ2と、乗籠の上に設置されたケース11に収められた映像処理装置3とを備える。ステレオカメラ2は、ドア装置105を通過する利用者を撮影できるように、
図3に示すように乗籠101の内部からドア装置105越しに見える着床階の乗場106まで
図3から
図5に示す範囲を撮影する。映像処理装置3は、ステレオカメラ2で撮影された映像を基に乗籠101に乗り降りする利用者P1,P2の三次元位置情報を算出し、各階で乗り降りする利用者P1,P2の人数をそれぞれ計測する。そして、映像処理装置3は、計測した人数情報を、その人数が計測された階床を示す階床情報と、その階床に停止する前後の乗籠101の移動方向と、人数が計測された時刻とに関連付けた利用実績として出力する。階床情報および移動方向を取得する方法は、
図6から
図8を用いて後述する。
【0015】
本実施形態において人数計測装置1は、既設のエレベータ100に設置される。
図1に示すように、ステレオカメラ2は、臨時に仮設されたバー21に取り付けられる。バー21は、乗籠101の天井101aおよび側壁101bに支持され、ドア装置105と平行かつ水平に設置されている。バー21を設ける代わりに、ブラケットを天井101aや側壁に101bに直接固定し、ステレオカメラ2を取り付けてもよい。また、人数計測装置1を恒久的に設置してもよい。恒久的に設置する場合、ステレオカメラ2は、天井101aまたは天井照明装置内に組み込まれる。人数計測装置1のステレオカメラ2は、エレベータの使用によってはドア装置105の上部の幕板で覆われる部分に組み込んでもよい。
【0016】
ステレオカメラ2は、ドア装置105と平行で水平方向に離して配置されることで撮影角度の異なる2つのカメラ2R,2Lを含む。2つのカメラ2R,2Lどうしの距離および撮影角度が異なっていることによる視差を基に、この2つのカメラ2R,2Lで同時に撮影されたそれぞれの画像を解析処理することで、被写体の三次元位置を特定することができる。特定された三次元位置は、三次元情報として取り扱われる。
【0017】
本実施形態では、さらに、表示器用カメラ4を備える。表示器用カメラ4は、乗籠101の内部に設置された表示器102を撮影する。
図1に示す場合、表示器102は、乗籠101のドア装置105の上部に配置されているので、表示器用カメラ4は、ステレオカメラ2の2つのカメラ2R,2Lの間のバー21に固定されている。表示器用カメラ4は、表示器102を撮影できればよいので、表示器102が見える場所であればバー21以外の場所に取り付けられていてもよい。表示器用カメラ4は、映像処理装置3に接続されている。
【0018】
映像処理装置3は、
図2に示すように、画像キャプチャ部31を備える。画像キャプチャ部31は、接続されているステレオカメラ2および表示器用カメラ4から得られる画像を同期させる。人数計測装置1は、さらに記憶媒体5と通信部6と解析装置7とを備えている。記憶媒体5は、映像処理装置3から出力される利用実績を記録する。通信部6は、イーサネット(登録商標)8を媒介して外部装置に接続されるように構成されている。
【0019】
外部装置として、作業用のポータブルコンピュータ91、ルータ92がイーサネット(登録商標)8に接続される。作業用のポータブルコンピュータ91は、人数計測装置1の設定を変更したり、記憶媒体5に記録された情報を読み取ったりするために接続される。ルータ92は、インターネット80に接続されるとともに、無線LANによって通信可能圏内にある携帯電話93、携帯端末94、作業用のポータブルコンピュータ91に接続される。携帯端末94には、画面を有し無線LANに接続できる機能を有しているゲーム機も含まれる。またステレオカメラ2や表示器用カメラ4で撮影された映像をリアルタイムで映し出すモニタをルータ92に接続してもよい。
【0020】
ルータ92がインターネット80に接続されているので、エレベータ100を管理している監視センタ110のコンピュータ111や、インターネット80を介して遠隔地からポータブルコンピュータ91、携帯電話93、携帯端末94などを接続することも可能である。いずれの場合でも、人数計測装置1に対して接続するためのアクセスコードが設定されることは言うまでもない。ルータ92がインターネット80に接続されているとともに無線LAN機能を有しているので、人数計測装置1によって得られる情報を外部から容易に入手することが可能であり、エレベータ100の制御やこのエレベータ100が設置されている建物に広く活用することができる。
【0021】
映像処理装置3は、乗籠101に乗り降りする利用者の数を計測するための機能として、三次元情報化機能と人間抽出機能と人間追跡処理機能とエリア推移判定処理機能と人数計測機能とを備える。三次元情報化機能は、ステレオカメラ2の右側のカメラ2Rと左側のカメラ2Lとが撮影した画像の視差を基に撮影されたものの三次元情報を算出する。人間抽出機能は、その三次元情報に基づき人か否かを判定し、ステレオカメラ2で撮影された映像から人を抽出する機能である。人間追跡処理機能は、時刻が異なる映像の中から人間抽出機能によって選択された形象の相似形を関連付けすることで、同一の利用者を判定する機能である。これらの機能によって、利用者がどの位置に動いても、また、二人以上の利用者が交差しても、個別に追跡することができる。また、各利用者の位置、大きさ、移動方向、移動速度などの情報を得ることもできる。したがって、利用者が大人であるか子供であるかも判別することが可能である。
【0022】
エリア推移判定処理機能は、人間追跡処理機能によって追跡されている特定の利用者の三次元位置情報をもとにその人が乗籠101の中に居るのか外に居るのかを判定する。本実施形態では、ステレオカメラ2で撮影される範囲を
図3に示すように乗場エリアA1、ドアエリアA2、籠室エリアA3の3つのエリアに区分けしている。人数計測機能は、乗籠101が停止している間に人間追跡機能によって特定された利用者が、エリア推移判定処理機能の情報を基に乗籠に乗ったか降りたかを計測する。乗籠101に利用者が乗った場合に「+1」とし、乗籠101から利用者が降りた場合に「−1」とする。
【0023】
例えば
図4に示すように、籠室エリアA3からドアエリアA2、そして乗場エリアA1へと移動した場合は、「降りた」と判定し、乗籠101から降りた人数としてカウントする。また、
図5に示すように乗場エリアA1からドアエリアA2、籠室エリアA3へと移動した場合は、「乗った」と判定し、乗籠101に乗った人数としてカウントする。
【0024】
なお、誤検知を防止するために、人間抽出機能によって抽出された利用者がドアエリアA2で一時停滞する場合、または3つのエリアを推移しないような検出結果となった場合は、検知対象から外し、乗り降りのどちらにもカウントしない。
【0025】
また、この実施形態の人数計測装置1において、映像処理装置3は、乗籠101が停止している間に乗場エリアA1にいることが検知された
図5に示す利用者P3が籠室エリアA3に移動しなかったことを基に、これを積み残し人数としてカウントする。映像処理装置3は、乗籠101が目的階に着床してドア装置105が解放されると人数の計測を開始し、ドア装置105が閉じられると人数の計測を終了し、乗降人数を利用実績として記憶媒体5に記録する。
【0026】
次に、利用実績として乗降人数と関連付けられて記録される階床情報および移動方向を取得することについて説明する。
【0027】
階床情報は、表示器用カメラ4で撮影された
図6に示す表示器102の階床表示部102Aの画像を基に判定される。本実施形態の場合、階床表示部102Aは、ドア装置105の上部の幕板部に設置されており、
図6に示すように、着床階の階床番号が点灯する。映像処理装置3は、表示器用カメラ4で撮影された画像中の階床表示部102Aの各階床表示灯の位置に合わせて区切られた階床表示領域102Aa〜102Afの輝度の分散値をそれぞれ算出する。分散値は、以下の式で求められる。
【数1】
【0028】
このとき、σを分散値、wを階床表示領域の幅、hを階床表示領域の高さ、μを階床表示領域内の平均輝度、X
ijを階床表示領域における輝度とする。
【0029】
着床階の階床表示灯が点灯することによって、階床表示領域の輝度の分散値は、他のものに比べて大きくなるので、分散値を比較することで、容易に着床階を判定できる。
図6に示す場合、2階を示す表示灯「2」を含む階床表示領域102Acの分散値が最も大きいので、乗籠101は、2階に着床していると判定される。
【0030】
移動方向は、表示器用カメラ4で撮影された
図7に示す表示器102の方向表示部102Bの画像を基に判定される。本実施形態の場合、方向表示部102Bは、矢印の向きによって乗籠101の移動方向を表示する。映像処理装置3は、
図7に示したように矢印の向きを判別するために矢印の先端部にあたる部分102Bu,102Bdを画像中からそれぞれ区切り、その範囲の輝度の分散値を上述と同じ方法で計算する。そして、分散値の多いほうを運転方向と判定する。
【0031】
移動方向の判定は、階床表示部102Aの映像から判定してもよい。
図6に示す表示器102の場合、乗籠101が移動することによって階床表示灯の点灯位置が変わる。例えば、分散値の大きい部分が
図6において階床表示領域102Acから階床表示領域102Adへ右に移行した場合、乗籠101は上昇運転されたことであり、階床表示領域102Acから階床表示領域102Abへ左に移行した場合、乗籠101は下降運転されたことであることが容易に分かる。なおこの場合、乗籠101から降りた利用者の人数には、着床直前の乗籠101の移動方向を関連付け、乗籠101に乗った利用者の人数には離床直後の乗籠101の移動方向を関連付ける。
【0032】
さらに、表示器102がLEDや液晶などのデジタル表示である場合、
図8に示すように、表示器102のドットに合わせて表示範囲を細分化し、ここの輝度の分散値を算出する。分散値が大きい部分で構成されるパターンを、あらかじめ登録されている階床番号や移動方向を示す矢印のパターンと照合して、着床階および移動方向を判定する。
図8に示す表示器102の場合、乗籠101が3階に着床しており、この後、上昇運転されることを示している。
【0033】
以上のように構成された人数計測装置1は、
図9に示すフローチャートにしたがって以下に説明するように動作する。まず、乗籠101が目的階に着床すると、映像処理装置3は、ステレオカメラ2で撮影された映像を三次元情報に変換する(S1)。次に、三次元情報を基に人間抽出処理によって画像中に映っている利用者を特定する(S2)。抽出された利用者をそれぞれ追跡し(S3)、エリア推移判定処理(S4)によって乗籠101から降りた人数および乗籠101に乗った人数をそれぞれ計測(S6)する。また利用者が移動するのを追跡する間に、表示器用カメラ4によって撮影した映像から乗籠101が停止している階床番号および移動方向を判定する(S5)。階床番号および移動方向を判定する停止階床認識処理(S5)は、乗籠101が着床してから離床するまでの間のどの段階で行なわれてもよく、少なくとも、人数情報を記憶媒体5に記録する前に関連付けされる段階で揃っていればよい。利用者が乗場106と乗籠101の間を移動しなくなり、ドア装置105が閉じられると、映像処理装置3は、その階床における乗降人数を確定し、階床情報と移動方向と時刻とを関連付けた利用実績として出力(S6)し、記憶媒体5に記録する。
【0034】
記憶媒体5に記録された利用実績の情報は、
図2に示したように、外部接続されるポータブルコンピュータ91や、インターネット80経由で接続される監視センタ110のコンピュータ111によって読み取られ、よりよい運行パターンに反映するため、解析および分析される(S7)。
図2に示したように人数計測装置1が解析装置7も備えている場合は、解析装置7で処理した結果をエレベータ100の制御盤107に運行パターンを変更する指令を直接出力してもよい。
【0035】
人数計測装置1は、例えばエレベータ100のリニューアル工事に先駆けて、既存のエレベータ100の利用状況を調査するために、エレベータ100の乗籠101に設置される。また、リニューアル工事によらず、エレベータ100が乗籠101の運行パターンを変更できる仕様のエレベータ100である場合、エレベータ100の運転効率を改善するために、人数計測装置1は、一定の期間設置される。作業員は、定期的にポータブルコンピュータ91を接続して、または遠隔地にある監視センタ110のコンピュータ111から接続し、利用実績を解析および分析した結果を基に、乗籠101の運行パターンを変更する指令を必要に応じてエレベータ100の制御盤107に対して入力する。制御盤107は、運行パターンを変更する指令を受けると、乗籠101を駆動する巻上機108を運行パターンにしたがって運転制御する。
【0036】
また、外部接続されるポータブルコンピュータ91や監視センタ110のコンピュータ111からある特定の時間帯の乗降人数を人数計測装置1に問い合わせることによって、OD表(Origin-Destination Table)のような図表を人数計測装置1から出力してもよい(S8)。
図10に示す図はその一例であり、12:00〜15:00の間に各階で乗籠101に乗り降りした人数を実数値および棒グラフで示す。なお、
図10に示す図は、外部接続されたポータブルコンピュータ91やインターネット80経由で接続される監視センタ110のコンピュータ111で利用実績を解析して作成されてもよい。
【0037】
この人数計測装置1は、運行パターンを変更できる機能を有するエレベータ100に対して、オプションで恒久的に組み込んでもよい。その場合は、ステレオカメラ2および表示器用カメラは、意匠性を考慮して目立たないように超小型カメラが採用される。人数計測装置1を恒久的に備えるエレベータ100は、解析装置7の解析結果に基づいて乗籠101の運行パターンを変更する指令を制御盤107に出力する変更装置71をさらに備える。
【0038】
エレベータ100は、解析装置7および変更装置71を備えることで、独立して運行パターンを常に最適な条件となるように変更し続けることができる。例えば、ステレオカメラ2で撮影された映像中に乗場106から乗籠101へ移動しなかった利用者を積み残し人数として計測した場合、変更装置71は、このときの積み残し人数と階床情報と移動方向と時刻に基づいて、乗籠101の運行パターンを変更する指令を制御盤に出力し、積み残した利用者を積極的に迎えに行くようにしてもよい。
【0039】
上述の実施形態において人数計測装置1は、人数情報に関連付けるための階床情報および移動方向の情報を、表示器用カメラ4で撮影した映像から取得している。これは、既存のエレベータ100である場合、制御盤107から階床情報や移動方向の情報をとることができないことが多いためである。したがって、既存のエレベータであっても比較的新しい場合、制御盤107から階床情報や移動方向の情報を直接入手してもよい。この場合、表示器用カメラ4は不要である。
【0040】
次に、第2の実施形態のエレベータシステム200について、
図11から
図16を参照して説明する。
図11は、群管理制御される複数のエレベータ100がそれぞれ人数計測装置1を備えるエレベータシステム200を示す。
図12および
図13は、群管理制御されるエレベータ100の動作フローを示す。
図14から
図16は、エレベータシステム200において人数計測装置1の計測結果を解析または分析した結果得られるデータを示す。
【0041】
エレベータシステム200は、
図11に示すように並設された複数のエレベータ100と、それぞれのエレベータ100に設置された人数計測装置1と、各エレベータ100の制御盤107に接続された群管理装置201とを備える。
図11に示す実施形態の場合、エレベータ100は3つ並べて設置されている。各エレベータ100に装備される人数計測装置1は、第1の実施形態で示した人数計測装置1と同じ機能および構成を有している。人数計測装置1の詳細は、第1の実施形態で
図1から
図10を参照して説明したとおりであるから、人数計測装置1に係る詳細は、第1の実施形態の記載を参酌する。第1の実施形態の場合、記憶媒体5と通信部6と解析装置7とが人数計測装置1に備えられていたのに対し、第2の実施形態の場合、記憶媒体5と通信部6と解析装置7とは、群管理装置201に集約して設けられている。
【0042】
群管理装置201は、解析装置と需要認定装置と混雑認定装置と分配装置と閑散認定装置と渋滞検出装置とを含む。解析装置は、人数計測装置1が出力する利用実績に基づいて、複数のエレベータ100の利用状況を解析する。需要認定装置は、解析装置の解析結果を基に、階床情報と時刻とに対応する運行需要の大きさを判定する。混雑認定装置は、需要認定装置で判定された運行需要の大きさが一定の値を超える場合、例えば1つのエレベータの乗籠101では一度に輸送できない場合、その着床情報と時間帯とを検出し、混雑状況であると判定する。分配装置は、混雑状況であると認定された階床およびその時間帯に優先的に乗籠101を手配するためにそれぞれのエレベータ100の制御盤107に運行パターンを変更する指令を個別に出力する。閑散認定装置は、運行需要の大きさが一定の値よりも少ない時間帯、たとえば、群管理されているエレベータをすべて稼動させなくても混雑することなく十分に利用者を輸送できる程度に利用者が少ない時間帯、を利用実績から検出し、閑散状況であると判定する。閑散状況であることが認定されると、分配装置は、閑散状況となる時間帯に少なくとも1つのエレベータ100の制御盤107を休止する指令を出力する。渋滞検出装置は、人数計測装置1によって積み残し人数が計測されると、この積み残し人数を運行需要の大きさと比較して一定の条件を超えた場合、例えばそのままの運行パターンを維持した場合に積み残し人数を他のエレベータ100で解消できないと判断された場合、その階床を渋滞階と認定する。渋滞階と認定された階床が発生すると、分配装置は、渋滞階に着床させるエレベータ100の数を増やすために各エレベータ100の制御盤107に運行パターンを変更する指令を個別に出力する。
【0043】
このエレベータシステム200は、さらに分析装置を備える。分析装置は、記憶媒体5に記録された利用実績から任意の時間帯の利用実績を抽出し、この時間帯に各階床で乗り降りした人数を出力する。また、この分析装置は、記憶媒体5に記録されている利用実績から任意の時間帯の利用実績を抽出し、特定の時刻に各階床に滞在している人数および任意の時間帯の人の流れを出力してもよい。
【0044】
各エレベータ100の人数計測装置1によって計測された利用実績を基に、複数のエレベータ100を効率よく運転するための一例を
図12に示す。各エレベータ100の乗籠101が任意の階床に着床すると、人数計測装置1によって乗籠101から降りる利用者および乗籠101に乗る利用者の人数を計測するために、
図12に示す乗降人数検知部S11において、人数計測装置1は、ステレオカメラ2で撮影された映像を基に利用者を抽出および追跡する。またこのとき、表示器用カメラ4で撮影された映像または制御盤107から直接得られる信号によって乗籠101の停止階も確認される。
【0045】
ドア装置105が閉じられたことをトリガーに
図12の乗降人数計測部S12において、それまでの間に乗籠101に乗った人数および乗籠101から降りた人数を計測する。この計測結果は、利用実績として群管理装置201の記憶媒体5に記録される。各エレベータ100の人数計測装置1から出力される利用実績は、
図12の乗降人数学習部S13において、各階の乗降人数をそのときの乗籠101の移動方向、および所定の時間帯ごとに区分けして集計される。集計された結果のデータは、
図12に示す学習結果記憶テーブルS14において時間帯毎のデータとして記録される。
【0046】
群管理装置201は、
図12に示す群管理制御S15において学習結果記憶テーブルS14で記録された過去のデータと、乗降人数計測部S12において得られる最新のデータを基に、混雑する時間帯および階床または、閑散となる時間帯を判定する。そして群管理装置201は、
図12の号機別制御部S16において各エレベータ100の制御盤107に対して、個別に運行パターンを変更する指令を出力する。この結果、混雑状況であると判断された階床および時間帯には、同じ階床に複数の乗籠101が手配され、閑散となる時間帯には、いくつかのエレベータ100を休止させ、稼動するエレベータ100の数が減らされる。
【0047】
また、人数計測装置1が積み残し人数を計測した場合における群管理装置201の動作の一例を
図13に示す。
図13の乗降人数検知部S21では、ステレオカメラ2の映像を基に着床した階で利用者を抽出および追跡するとともに、表示器用カメラ4の映像または制御盤107から直接得られる信号によって乗籠101の停止階も確認される。この乗降人数検知部S21は、
図12の乗降人数検知部S11と同じものである。そして、
図13の積み残し計測S22において、乗場106側に検出されたあと乗籠101側に異動しなかった利用者を積み残し人数として計測し、そのときの階床情報、移動方向、時刻と関連付けられ、積み残し情報として記録される。
【0048】
積み残し情報は、
図13の積み残し判定部S23において、他のエレベータ100の人数計測装置1から得られる情報、例えば乗籠101内の人数と比較し、そのときの運行パターンを維持することで積み残した利用者を他のエレベータ100で回収できるか判定する。運行パターンを維持した場合に積み残した利用者を他のエレベータ100で処理できないと判定されると、群管理制御部S24において、群管理装置201は、運行パターンを変更する指令を個々のエレベータ100の制御盤107に出力し、積み残した利用者を積極的に回収するようにエレベータ100を割り当てる。
【0049】
この実施形態において、
図12に示した乗降人数学習部S13では各階における乗降人数を10分間単位で乗籠101の移動方向別に集計されている。乗降人数テーブルとして集計されたデータの一部を
図14に示す。
図14では、8時20分から8時30分の間に、1階で14人が乗籠101に乗車しており、2階で2人降り、3階で5人降り、4階で7人降りて1人乗ったことが分かる。
図14に示した計測時間帯は一例であって、これに言及されない。人の流れがめまぐるしく変化する場合は、
図14に示した期間間隔よりも短い時間間隔で乗降人数を集計してもよい。
【0050】
図12の学習結果記憶テーブルS14では、乗降人数学習部S13の集計結果を記録する。このデータは任意の期間で集積される。集計結果は、乗降人数表示テーブルS17において、ある時間帯の利用実績として出力される。オフィスビルの12時00分から15時00分までの間の利用実績の一例を
図15に示す。一般にこの時間帯は、昼食時間が含まれるので、上階から大人数が乗り込み、基準階や食堂階に当たる階床でこれらの利用者が乗籠から降りる。このように、記憶媒体5に蓄積された利用実績のうち任意の時間帯のデータを読み出し、集計することによって、任意の時間帯の各階における乗降人数を簡単に把握することができる。
【0051】
記憶媒体5に蓄積された利用実績を集計したものを分析することによって、
図16に示すように任意の時刻における各階の大まかな在館人数を知ることができる。また、乗降人数と移動方向とを分析することで、人の動きのパターンなどを知ることも容易である。人の流
れを知ることは、オフィスビルにおける部署の配置やデパートなどの売り場コーナの配置などを変更する場合に有効である。また、在館人数を把握することは、テナントビルの警備などに有効である。
【0052】
図14から
図16に示したような解析結果や分析結果は、ある程度蓄積されるたびに第1の実施形態の
図2に示したような通信手段を介して、メンテナンスに訪れた作業員の情報端末に出力してもよいし、遠隔地の監視センタや携帯電話など外部接続によって出力されてもよい。また、群管理装置201が各エレベータ100の運転制御をするために直接的に必要の無い
図15および
図16に示したような分析データは、通信手段を介して外部から記憶媒体5のデータを読み出し、必要なところで分析してもよい。
【0053】
また、連続する複数
回分の利用実績を過去の利用実績と比較して異なる運行状況を検出した場合、故障や、悪戯の疑いがあるため、通信手段を介して監視センタへ警報を発信してもよい。さらに、既存の表示灯や液晶表示板などの表示装置あるいは案内装置を乗籠101内部または乗場106の少なくとも一方に設置し、そのエレベータの運行パターンやサービスの状況を報知装置によって出力する。出力方法は、表示装置の場合、文字情報や図柄を表示し、案内装置の場合、文字情報や図柄の他に音声アナウンスであってもよい。
【0054】
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態の人数計測装置1によれば、乗籠101内に設置されたステレオカメラ2によって撮影された映像から乗降人数を正確に計測することができる。この乗降人数のデータを用いて交通需要を学習することで、混雑階を予測しやすくなる。また、この人数計測装置1によれば、乗籠101内に設置されたステレオカメラ2によって撮影された利用者の積み残しを計測することができる。したがって、恒久的に人数計測装置1が設置されるエレベータ100によれば、任意の階に発生した混雑に迅速に対応して、混雑を早期に解消することができる。また、この人数計測装置1を装備するエレベータ100は、乗籠101内に設置されるステレオカメラ2のみの情報で、交通需要の学習や積み残した利用者を積極的に回収する運行パターンに切り換える。制御盤107や操作パネルと連携をとるための大掛かりな改造工事が不要である。したがって、高価な装置を使うことなく、安価に目的を達成することができる。さらに、本実施形態の人数計測装置1は、通信部6を有しているので、ポータブルコンピュータ91の画面に表示したり紙に印刷したりするなど、交通需要をビルの管理者に提供可能である。そして、こられの相乗効果により、エレベータの利用者や管理者に対するサービス品質の向上が期待される。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。