特許第5812900号(P5812900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5812900
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月17日
(54)【発明の名称】流体混合装置及び乾式排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 5/00 20060101AFI20151029BHJP
   B01F 3/02 20060101ALI20151029BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20151029BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
   B01F5/00 EZAB
   B01F3/02
   B01D53/56 300
   B01D53/86 222
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-44426(P2012-44426)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-180227(P2013-180227A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】小田 学
【審査官】 藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−050941(JP,A)
【文献】 特開平07−180705(JP,A)
【文献】 特開2009−136716(JP,A)
【文献】 特開2012−011316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 5/00
B01D 53/56
B01D 53/86
B01F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の流路を流れる排ガスと前記流路内に注入された還元剤とが通過して混合される流体混合装置であって、
前記流路内に前記排ガス及び前記還元剤が通過するように流体流れ方向と交差して配設された1または複数の層状混合体エレメントを備え、
前記層状混合体エレメントは、前記流体流れ方向上流側の頂部に設けた矩形状平板の間隙形成部と、該間隙形成部の対向する辺に上底側が連結された連結部で前記流体流れ方向の下流側へ折曲されている略台形状を有する2つの板状羽根部と、該板状羽根部に隣接して設けられた略台形状の開口部とにより略角錐台形状を形成する複数の混合セルを備え、
該混合セルが、前記板状羽根部及び前記開口部を90度回転させた状態で互いに隣接して連結されており、
前記開口部は、前記層状混合体エレメントを前記流体流れ方向の上流側からみた場合に開口していることを特徴とする流体混合装置。
【請求項2】
前記間隙形成部の矩形辺長さ(S)は、前記板状羽根部の略台形状下底長さ(D)を基準にして1/5以上(S≧1/5D)に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の流体混合装置。
【請求項3】
前記層状混合体エレメントは、前記混合セルを上下左右に4つ連結してなる混合ユニットが複数連結されていることを特徴とする請求項1または2に記載の流体混合装置。
【請求項4】
前記混合ユニットは、前記混合セルの前記略角錘台形状を形成する2つの前記板状羽根部が、略台形状下底の端部どうしを互いに接するように配置された一方を残すとともに、他方の前記板状羽根部を除去して前記開口部とされることを特徴とする請求項3に記載の流体混合装置。
【請求項5】
前記層状混合体エレメントは、前記混合ユニットの間に間隙部を設けて連結されることを特徴とする請求項またはに記載の流体混合装置。
【請求項6】
処理対象の排ガスを流す流路と、該流路の内部に還元剤を注入する還元剤注入部と、前記流路の直管部に設置されて前記排ガス及び前記還元剤を混合する請求項1から5のいずれか1項に記載の流体混合装置と、前記流路の内部に設置されて前記流体混合装置で混合された流体を通過させて分解する触媒と、を具備して構成したことを特徴とする乾式排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば脱硝装置の排ガス及び還元剤のように、異なる流体を混合させる流体混合装置及びこの流体混合装置を備えた乾式排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車やボイラ等から排出される排ガス中には、光化学スモッグや酸性雨等の環境負荷を引き起こす窒素酸化物が含まれている。そこで、窒素酸化物が大気中に放出されることを防止するため、窒素酸化物を除去する手段として、脱硝装置が用いられている。
脱硝装置に用いられる脱硝法としては、排ガス中の窒素酸化物を還元剤のアンモニアと反応させ、触媒により水と窒素に分解するSCR法(乾式アンモニア選択接触還元法)がある。
【0003】
具体的に説明すると、SCR法の脱硝装置は、排ガスが通過するダクト内の直管部に、上流側から順に設置したアンモニア注入部、混合器(流体混合装置)及び触媒を備えている。従って、ダクト内に噴射したアンモニアは、排ガスとともに混合器を通過することにより、排ガス中の窒素酸化物がアンモニアと混合された状態となって触媒に流入する。
なお、アンモニア注入部には、アンモニア水を気化器により気化させたアンモニアガスを噴射するアンモニア注入グリッド(AIG)方式や、アンモニア水の液滴をダクト内に噴射し、ダクト内で気化させるアンモニア水液滴噴霧方式がある。
【0004】
従来の混合器としては、下記の特許文献1及び2に開示されているように、流れ方向に互い違いに板(羽根)を設置することで強制的に縦渦を生成し、この縦渦によって拡散混合効果を高めるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−252545号公報
【特許文献2】米国特許第4830792号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術によれば、流れ方向に互い違いに板(羽根)を設置することで強制的に縦渦を生成し、この縦渦によって拡散混合効果を高める混合器が使用されている。しかし、このような混合器は、強制的に縦渦を生成させるために、圧力損失が大きいという問題が指摘されている。
さらに、従来の混合器は、互い違いの板が接近して設置されているので、各板において生成された渦が互いに干渉することにより、せっかく形成された渦が減衰して拡散混合効果を低下させるという問題もある。
【0007】
このように、排ガスと還元剤との混合が必要とされる脱硝装置等の乾式排ガス処理装置においては、排ガス中の窒素酸化物と還元剤とを混合させる混合装置(混合器)の圧力損失を低減し、消費動力が少なく運転効率のよい装置の開発が望まれている。また、混合装置の隣接する渦が干渉することに起因した減衰を抑制し、混合装置の拡散混合効率を向上させて運転効率のよい装置が望まれる。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、混合装置における圧力損失や渦の干渉による減衰の問題を解決することにより、運転効率のよい流体混合装置及び乾式排ガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る流体混合装置は、所定の流路を流れる排ガスと前記流路内に注入された還元剤とが通過して混合される流体混合装置であって、前記流路内に前記排ガス及び前記還元剤が通過するように流体流れ方向と交差して配設された1または複数の層状混合体エレメントを備え、前記層状混合体エレメントは、前記流体流れ方向上流側の頂部に設けた矩形状平板の間隙形成部と、該間隙形成部の対向する辺に上底側が連結された連結部で前記流体流れ方向の下流側へ折曲されている略台形状を有する2つの板状羽根部と、該板状羽根部に隣接して設けられた略台形状の開口部とにより略角錐台形状を形成する複数の混合セルを備え、該混合セルが、前記板状羽根部及び前記開口部を90度回転させた状態で互いに隣接して連結されており、前記開口部は、前記層状混合体エレメントを前記流体流れ方向の上流側からみた場合に開口していることを特徴とするものである。
【0009】
このような流体混合装置によれば、流路内に配設された層状混合体エレメントが、流れ方向上流側の頂部に設けた矩形状平板の間隙形成部と、該間隙形成部の対向する辺に連結された略台形状を有する2つの板状羽根部と、該板状羽根部に隣接して設けられた略台形状の開口部とにより略角錐台形状を形成する複数の混合セルを備え、該混合セルが、板状羽根部及び前記開口部を90度回転させた状態で互いに隣接して連結されているので、各板状羽根部は、間隙形成部の分だけ互いに離間した配置になるとともに、流れ方向に対して傾斜した状態にある。このため、流体混合装置を通過する排ガス及び還元剤は、傾斜した板状羽根部から自然発生する縦渦(旋回流)が結合した大規模な縦渦により、効率よく拡散混合される。
【0010】
このとき、隣接する板状羽根部が間隙形成部の分だけ互いに離間しているので、各板状羽根から生成された渦が干渉して減衰することを抑制でき、従って、大規模な縦渦を効率よく形成することが可能になる。
また、間隙形成部を設けたことにより、混合セル及び層状混合体エレメントの制作性も向上する。
【0011】
上述した流体混合装置において、前記間隙形成部の矩形辺長さ(S)は、前記板状羽根部の略台形状下底長さ(D)を基準にして1/5以上(S≧1/5D)に設定されていることが好ましく、これにより、各板状羽根から生成された渦が互いに干渉して減衰することを確実に抑制できる。なお、間隙形成部の矩形辺長さ(S)の上限については、各板状羽根部の縦渦形成や各板状羽根部で自然発生した縦渦の結合を考慮すれば、できるだけ下限の1/5Dに近い値が望ましい。
【0012】
上述した流体混合装置において、前記層状混合体エレメントは、前記混合セルを上下左右に4つ連結してなる混合ユニットが複数連結されていることが好ましく、これにより、良好な拡散混合を実施できる。
【0013】
また、上述した流体混合装置において、前記混合ユニットは、前記混合セルの前記混合セルの前記略角錘台形状を形成する2つの前記板状羽根部が、略台形状下底の端部どうしを互いに接するように配置された一方を残すとともに、他方の前記板状羽根部を除去して前記開口部とされることが好ましく、これにより、拡散混合の性能を確保しながら圧力損失を抑制することが可能になる。すなわち、大きな旋回流の形成に寄与する板状羽根部のみを残すことにより、拡散混合を行う縦渦を確実に形成するとともに、板状羽根部の半減により流路断面積を増して圧力損失の抑制が可能になる。
【0014】
このような流体混合装置において、前記層状混合体エレメントは、前記混合ユニットの間に間隙部を設けて連結されることが好ましく、これにより、互いの干渉による減衰を抑制することができる。この場合、隣り合う渦は、互いに逆方向とすることで減衰が小さくなるので、上下左右方向に隣り合う渦が全て逆方向となるように層状混合体エレメントを配置することが望ましい。
【0015】
本発明の乾式排ガス処理装置は、処理対象の排ガスを流す流路と、該流路の内部に還元剤を注入する還元剤注入部と、前記流路の直管部に設置されて前記排ガス及び前記還元剤を混合する請求項1から5のいずれか1項に記載の流体混合装置と、前記流路の内部に設置されて前記流体混合装置で混合された流体を通過させて分解する触媒と、を具備して構成したことを特徴とするものである。
【0016】
このような乾式排ガス処理装置によれば、請求項1から5のいずれか1項に記載の流体混合装置を備えているので、流体混合装置を通過する排ガス及び還元剤は、傾斜した板状羽根部から自然発生する縦渦が互いに干渉して減衰することなく結合した大規模な縦渦により効率よく拡散混合され。この結果、流体混合装置は、排ガス及び還元剤を効率よく混合して反応させることが可能になり、従って、触媒を通過する排ガス及び還元剤の混合流体も効率よく分解することができる。
【発明の効果】
【0017】
上述した本発明の流体混合装置によれば、脱硝装置における排ガス及び還元剤のような流体を、圧力損失の低減により少ない消費動力で効率よく混合できるようになる。また、本発明の流体混合装置によれば、隣接する渦が干渉することに起因した減衰を抑制し、混合装置の拡散混合効率を向上させて運転効率のよい装置となる。従って、この流体混合装置を備えた乾式排ガス処理装置は、必須の構成要素である混合装置において、圧力損失や渦の干渉による減衰の問題が解決されて運転効率のよい装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る流体混合装置の一実施形態を示す図で、(a)は層状混合体エレメントの混合セル及び混合ユニットを示す斜視図、(b)は(a)の混合セル及び混合ユニットを背面(流れ方向下流)側から見た図である。
図2図1に示した混合セル及び混合ユニットを複数組み合わせて構成された層状混合体エレメントを正面(流れ方向上流)側から見た図である。
図3】混合セルの背面において板状羽根部の端から形成される縦渦を示す斜視図である。
図4】本発明に係る乾式排ガス処理装置の一実施形態を示す縦断面図である。
図5図2に示した層状混合体エレメントの第1変形例を示す正面(流れ方向上流)側から見た図である。
図6図2に示した層状混合体エレメントの第1変形例を示す図で、(a)は層状混合体エレメントを正面(流れ方向上流)側から見た図、(b)は(a)の混合セルを背面側から見た図である。
図7】層状混合体エレメントを流れ方向に2段配置する場合について、層状混合体エレメント間隔(距離X)と混合セルを構成する板状羽根部の略台形状下底長さ(D)との比(X/D)について、濃度バラツキ(%)と、圧力損失(1段との比率)との関係を示す図である。
図8】層状混合体エレメントを流れ方向に2段配置する場合について、層状混合体エレメントのアスペクト比(2L/D)について、濃度バラツキ(%)と圧力損失(1段との比率)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る流体混合装置及び乾式排ガス処理装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図4には、乾式排ガス処理装置の一実施形態として、排ガス中の窒素酸化物を還元剤のアンモニアと反応させ、触媒により水と窒素に分解するSCR法(乾式アンモニア選択接触還元法)を採用した脱硝装置1が示されている。
【0020】
図示の脱硝装置1は、処理対象となる排ガスを流すダクト(流路)2と、ダクト2の内部にアンモニア(還元剤)を注入する還元剤注入部3と、ダクト2の直管部に設置されて排ガス及びアンモニアを混合する流体混合装置10と、ダクト2の内部に設置されて流体混合装置10で混合された流体を通過させて分解する触媒4と、を具備して構成される。
なお、この場合の還元剤注入部3は、アンモニア水を気化器により気化させたアンモニアガスを噴射するアンモニア注入グリッド(AIG)方式、あるいは、アンモニア水の液滴をダクト内に噴射してダクト2の内部で気化させるアンモニア水液滴噴霧方式のいずれであってもよい。
【0021】
流体混合装置10は、所定の流路を形成するダクト2の内部を流れる排ガスと、ダクト2の内部に注入された還元剤のアンモニアとが通過し、いずれも気体である排ガス及びアンモニアを混合させる装置である。この流体混合装置10は、たとえば図1から図3に示すように、複数の混合セル20を組み合わせて構成される層状混合体エレメント11をダクト2の内部に設置したものである。
層状混合体エレメント11は、全体として薄い層状(板状)をなす部材であり、排ガス及びアンモニアガスが通過して流れるように排ガスの流体流れ方向と交差して、好ましくは排ガスの流体流れ方向と直交するように、1枚(段)または複数枚(段)が設置されている。
【0022】
そして、層状混合体エレメント11を構成する混合セル20は、流れ方向上流側の頂部に設けた矩形状平板の間隙形成部21と、間隙形成部21の対向する辺に連結された略台形状を有する2つの板状羽根部22と、板状羽根部22に隣接して設けられた略台形状の開口部23とにより、略角錐台形状を形成する部材である。このように構成された混合セル20は、複数を組み合わせて層状混合体エレメント11を形成するが、この場合、複数の混合セル20は、板状羽根部22及び開口部23を90度回転させた状態で互いに隣接して連結されている。すなわち、上下左右に隣接する混合セル20は、板状羽根部22及び開口部23の下底部どうしが接するように、板状羽根部22の下底となる辺の端部が連結されている。
【0023】
層状混合体エレメント11は、たとえば図1に示すように、混合セル20を上下左右に4つ連結してなる混合ユニット30を形成し、この混合ユニット30を複数連結することが望ましい。このため、図2に示す層状混合体エレメント11は、縦方向に6個と横方向に10個の混合セル20が連結された構成、すなわち、合計15(縦3列/横5列)の混合ユニット30を連結した構成とされるが、この数に限定されることはない。この場合、層状混合体エレメント11の混合ユニット30は、上下左右のいずれにも間隙をもうけることなく連結されている。
また、各板状羽根部22及び開口部23は、上底長さS及び下底長さDの略台形形状とされ、対向する一対の板状羽根部22及び開口部23と、1辺の長さがSの矩形とした間隙形成部21と、1辺の長さがDの矩形とした開口面とにより、間隙形成部21を上面とし開口面を仮想底面とする略角錐台形状が形成されている。
【0024】
上述した混合セル20の制作には、1辺の長さがSの正方形とした間隙形成部21に対し、対向する2辺に上底長さS及び下底長さDの台形とした板状羽根部22を連結してなる板材を用意する。この後、間隙形成部21と板状羽根部22の上底とが連結された位置において、板状羽根部22が流れ方向に対して傾斜するように折曲すれば、上述した略角錐台形状の混合セル20となる。そして、複数の混合セル20は、板状羽根部22の下底となる辺が隣接する端部と適宜連結されることにより、1枚の層状混合体エレメント11となる。
【0025】
このように構成された流体混合装置10の層状混合体エレメント11において、各板状羽根部22は、間隙形成部21の分だけ互いに離間した配置になり、しかも、排ガスの流れ方向に対して傾斜した状態(角度をもって配置された状態)にある。すなわち、排ガス及びアンモニアガスの流れに縦渦を形成する板状羽根部22は、流れ方向上流側の正面頂部となる部分が、1辺の長さをSとした矩形の間隙形成部21によって離間させられた状態にある。すなわち、図示の間隙形成部21は、1辺の長さがSの正方形とされるため、隣接する板状羽根部22の上流側頂部には、間隙形成部21の矩形辺長さSだけクリアランスが設けられている。
【0026】
流体混合装置10を通過する排ガス及びアンモニアガスの流れは、たとえば図1(b)及び図3に矢印で示すように、開口部23を通過した流れが、流れ方向下流側となる各混合セル20の背面において、傾斜した板状羽根部22から自然発生する縦渦(旋回流)fとなる。この縦渦fは、下底となる辺の端部どうしを連結した4つの混合セル20毎に結合し、図中に矢印で示す大規模な合成縦渦(旋回流)Fとなる。このような合成縦渦Fが形成されると、排ガス及びアンモニアガスは、板状羽根部22がいわゆるデルタ翼として機能することで、効率よく拡散混合される。
【0027】
このとき、隣接する板状羽根部22が間隙形成部21の辺長さSだけ互いに離間しているので、各板状羽根22から生成された縦渦fが干渉して減衰することを抑制できる。このため、液体混合装置10の層状混合体エレメント11は、大規模な合成縦渦Fを効率よく形成することができる。また、間隙形成部21を設けたことは、混合セル20及び層状混合体エレメント11の制作性向上にも有効である。
特に、層状混合体エレメント11は、混合セル20を上下左右に4つ連結してなる混合ユニット30を形成しているので、各混合ユニット30において合成縦渦Fを効率よく形成して良好な拡散混合を実施できる。
【0028】
ところで、上述した流体混合装置10においては、矩形とする間隙形成部21の辺長さSについて、略台形状とした板状羽根部22の下底長さDを基準にして1/5以上(S≧1/5D)に設定することが望ましい。この辺長さSは、間隙形成部21の減衰抑制効果が確実に得られていることを、すなわち、各板状羽根22から生成される縦渦fが互いの干渉によって減衰することを確実に抑制できていることを、実証機や実験等によりを確認した値である。
従って、間隙形成部21の辺長さSは、1/5Dより短すぎると十分な干渉抑制ができなくなる。しかし、辺長さSの上限については、各板状羽根部22で自然発生する縦渦fの形成や、各板状羽根部22で自然発生した縦渦fの結合による合成縦渦Fの形成を考慮すれば、混合セル20における板状羽根部22の割合が小さくなることは好ましくないので、できるだけ下限の1/5Dに近い値に設定することが望ましい。
【0029】
次に、図2に示した層状混合体エレメント11の第1変形例について、図5を参照して説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
第1変形例の層状混合体エレメント11Aは、混合セル20を上下左右に4つ連結してなる混合ユニット30が、隣接するユニット間に間隙部40を設けて連結されている。図示の構成例では、縦に2列及び横に4列を配置して合計8つの混合ユニット30が設けられている。そして、上下及び左右に隣接する混合ユニット30の間には、上下方向及び左右方向の間隙部40が設けられている。この間隙部40は、混合セル20が全く存在しない領域である。
【0030】
このような第1変形例の層状混合体エレメント11Aは、隣接する混合ユニット30の間に間隙部40が設けられているので、4つの混合セル20で板状羽根部22から自然発生する縦渦fがユニット毎に結合して大規模な合成縦渦Fとなる。この場合、隣接する混合ユニット30の向きを逆方向に配置しておけば、すなわち、隣接する混合ユニット30において板状羽根部22及び開口部23の向きが逆方向になれば、隣接する混合ユニット30毎に逆方向の合成縦渦Fが形成されるようになり、互いの干渉による減衰が小さくなる。このため、間隙部40を設けた層状混合体エレメント11Aにおいては、混合ユニット30は、隣り合う渦が全て逆方向となるように配置することが望ましい。
【0031】
次に、図2に示した層状混合体エレメント11の第2変形例について、図6を参照して説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
第2変形例の層状混合体エレメント11Bは、異なる形状の混合セル20Aを採用している。この混合セル20Aは、上述した実施形態の混合セル20から板状羽根部22が1枚除去されたものであり、矩形状平板の間隙形成部21と、間隙形成部21の1辺に連結された略台形状を有する1つの板状羽根部22と、板状羽根部22に隣接して設けられた略台形状の3つの開口部23とにより、略角錐台形状を形成する部材である。
【0032】
具体的に説明すると、1つの混合セル20Aには、略台形状下底の端部どうしを互いに接するように配置された1つの板状羽根部22が設けられているので、この板状羽根部22の底辺端部どうしを4つ連結することにより、第2変形例の混合ユニット30Aが構成されている。なお、図示の構成例では、ユニット間に間隙部40を設けて合成縦渦40が同方向となるようにしているが、図2に示した実施形態のように、間隙部40のない構成としてもよい。
【0033】
このような第2変形例では、大きな旋回流の形成に寄与するユニット内側の板状羽根部22を残すことにより、拡散混合を行う大規模な合成縦渦Fを確実に形成することができる。換言すれば、混合ユニット30Aにおいて4つの板状羽根部22が連結される位置にあり、合成縦渦Fの形成に有効なものだけを残し、ユニット内に設けられる板状羽根部22の数を半減させているので、大規模な合成縦渦Fを確実に形成できるだけでなく、板状羽根部22の減少分だけ流路断面積が増すので、圧力損失の抑制も可能になる。
【0034】
上述した実施形態の流体混合装置10によれば、強制的に縦渦を生成させるものと比較して圧力損失が低減するので、排ガス及び還元剤を少ない消費動力で効率よく混合することができる。
また、上述した流体混合装置10によれば、隣接する渦の干渉による減衰を抑制して拡散混合効率を向上させることができるので、運転効率のよい装置となる。従って、この流体混合装置10を備えた脱硝装置1のような乾式排ガス処理装置は、必須の構成要素である流体混合装置10において、圧力損失や渦の干渉による減衰の問題が解決されて運転効率のよい装置となる。
【0035】
ところで、上述した層状混合体エレメント11を流れ方向に2段配置する場合、図7に示すように、層状混合体エレメント11の間隔(距離X)と、混合セル20を構成する板状羽根部22の略台形状下底長さDとの比(X/D)は、3以上(X/D≧3)となる。これは、下底長さDを一定にして距離Xを広げると、濃度バラツキは減少するものの、圧力損失は増加するので、距離Xの変動に対して濃度バラツキ及び圧力損失の変化が比較的小さいく傾きの緩やかな領域を比(X/D)の最適値とするものである。
【0036】
また、層状混合体エレメント11を流れ方向に2段配置する場合、図8に示すように、層状混合体エレメント11の最適なアスペクト比(2L/D)は、0.8程度となる。これは、アスペクト比の増加とともに圧力損失は低減するので、濃度バラツキの極小値を最適値とするものである。なお、アスペクト比を算出する分子のLは、混合セル20の流れ方向幅(略角錐台形状の高さ)である。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 脱硝装置(乾式排ガス処理装置)
2 ダクト(流路)
3 還元剤注入部
4 触媒
10 流体混合装置
11,11A,11B 層状混合体エレメント
20,20A 混合セル
21 間隙形成部
22 板状羽根部
23 開口部
30,30A 混合ユニット
40 間隙部
f 縦渦(旋回流)
F 合成縦渦(旋回流)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8