(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5812903
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月17日
(54)【発明の名称】円筒型電池の保持構造体
(51)【国際特許分類】
H01M 2/10 20060101AFI20151029BHJP
【FI】
H01M2/10 G
H01M2/10 S
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-52285(P2012-52285)
(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公開番号】特開2013-187088(P2013-187088A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2014年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】川口 聡
(72)【発明者】
【氏名】初見 浩之
(72)【発明者】
【氏名】木村 健治
【審査官】
宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0209759(US,A1)
【文献】
特開2002−184374(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0258335(US,A1)
【文献】
特開2011−129428(JP,A)
【文献】
特開2010−009798(JP,A)
【文献】
特開2006−080076(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0057460(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0055371(US,A1)
【文献】
特開2010−225336(JP,A)
【文献】
特開2010−225337(JP,A)
【文献】
特開2001−076699(JP,A)
【文献】
特開2005−285458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に剛性のあるホルダー部材と、当該ホルダー部材よりも軟らかい軟質部材とを備え、
前記ホルダー部材は、隔壁で仕切ることで、複数の円筒型電池を個々に収容する、それぞれが断面円形状の収容部を相互に平行に複数形成し、
前記個々の収容部は前記円筒型電池の外径よりもやや大きい内径からなり、隣接する少なくとも2つ以上の収容部間の隔壁を部分的に切り欠いた開口部を有し、
前記軟質部材は前記開口部であって、隣接する円筒型電池の間に挿入されるスペーサーであることを特徴とする円筒型電池の保持構造体。
【請求項2】
前記スペーサーは押圧力を調整するための調整孔を有することを特徴とする請求項1記載の円筒型電池の保持構造体。
【請求項3】
相対的に剛性のあるホルダー部材と、当該ホルダー部材よりも軟らかい軟質部材とを備え、
前記ホルダー部材は隔壁で仕切ることで、円筒型電池の外径よりもやや大きい内径からなる当該円筒型電池の収容部を複数形成し、各収容部から当該ホルダー部材の外周部にわたって部分的に切り欠いた開口部を形成し、
前記軟質部材はホルダー部材の外周部に巻き付けるものであり、前記各開口部に向けて円筒型電池を側部から押える押え突部を有したバンドであることを特徴とする円筒型電池の保持構造体。
【請求項4】
前記ホルダー部材は円筒型電池収容方向の長さが収容される円筒型電池の長さよりも短いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の円筒型電池の保持構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数個の円筒型電池を保持及び固定するための構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車,ハイブリット車等の分野においては大容量の駆動電源が必要である。
これまでに駆動電源として、複数のプレート状電池セルを積層しモジュール化した角型電池が搭載されていたが、近年、車両の狭いスペースを有効利用できる円筒型電池の搭載方法が検討されている。
例えば特許文献1に箱型のケースにスペーサーを介して、複数の円筒型電池を収容保持させる技術を開示する。
しかし、同公報に開示する技術は円筒型電池を横方向に寝かせながらスペーサーと交互に積み上げるものであり、電池の組み込み作業が大変であるだけでなく、電池を積み上げるに従って、円筒型電池の外形及びスペーサーの厚みや形状バラツキの総和が増幅し、各電池を車両走行時の振動から充分に保護できない恐れがある。
このバラツキを吸収するためにスペーサーの保持荷重を高めようとすると、組み込み時に電池を破損させる恐れがあり、逆に保持荷重が不充分だと車両の走行振動等により電池が破損する恐れが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−219182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は複数の円筒型電池を車両の走行振動等から安定的に保護でき、円筒型電池の組み込み作業性に優れるとともに高い保持力を得ることができる円筒型電池の保持構造体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る円筒型電池の保持構造体は、相対的に剛性のあるホルダー部材と、当該ホルダー部材よりも軟らかい軟質部材とを備え、前記ホルダー部材は
、隔壁で仕切ることで、
複数の円筒型電池を個々に収容する、それぞれが断面円形状の収容部を相互に平行に複数形成し、前記個々の収容部は前記円筒型電池の外径よりもやや大きい内径から
なり、隣接する少なくとも2つ以上の収容部間の隔壁を部分的に切り欠いた開口部を有し、前記軟質部材は前記開口部であって、隣接する円筒型電池の間に挿入されるスペーサーであることを特徴とする。
【0006】
ここで、相対的に剛性があるホルダー部材とは、軟質部材よりも硬くて強い材質で製作されていることをいう。
軟質部材がスペーサーとして円筒型電池同士の間に挿入され、円筒型電池の側部を適度に押圧及び保持するものであることから、比較的弾性力のある樹脂製やゴム製のものが好ましい。
従って、ホルダー部材は樹脂製や金属製等、その材質に制限はないが、少なくとも本発明に係る軟質部材よりも剛性がある。
ホルダー部材は複数の隔壁で仕切った複数の収容部を相互に平行に有することから、樹脂の押出成形やアルミニウム合金等の押出加工にて容易に製作できる。
その中でもアルミニウム合金の押出材を用いると、幅の小さいホルダー部材にしても軽量で電池の保持剛性にも優れる。
また、本発明で円筒型電池の外径よりもやや大きい内径からなる収容部とは、円筒型電池を長手方向に沿ってこの収容部に組み込む際に障害にならない程度に収容部の内径が電池の外径よりも大きいことをいう。
円筒型電池の大きさにもよるが、収容部の内径は概ね電池外径よりも0.1〜1mm程度大きいものが好ましい。
また、収容部の断面形状も円形状が好ましい。
隔壁を部分的に切り欠いて開口部を形成する際に少なくとも2つ以上の収容部間としたのは、3つ又は4つ等の収容部間に跨るように部分的に切り欠いてもよい趣旨であり、例えば3つの収容部を正三角形状に配置し、三角形の中心部の隔壁を切り欠いてもよい。
また、4つの収容部を正方形状に配置し、その中心部の隔壁を切り欠いてもよい。
【0007】
スペーサーの挿入により、スペーサーの反力が円筒型電池を収容部の内周面に向けて押し付けることになり、本発明でスペーサーは押圧力を調整するための調整孔を有するようにしてもよい。
【0008】
本発明はホルダーの収容部の隔壁を部分的に切り欠いたことに特徴があるから、軟質部材をスペーサーとしてではなくバンドとしても利用でき、相対的に剛性のあるホルダー部材と、当該ホルダー部材よりも軟らかい軟質部材とを備え、前記ホルダー部材は隔壁で仕切ることで円筒型電池の外径よりもやや大きい内径からなる当該円筒型電池の収容部を複数形成し、各収容部から当該ホルダー部材の外周部にわたって部分的に切り欠いた開口部を形成し、前記軟質部材はホルダー部材の外周部に巻き付けられるものであり、前記各開口部に向けて円筒型電池を側部から押える押え突部を有したバンドであってもよい。
【0009】
本発明でホルダー部材の収容方向の深さ(長さ)に制限はないが、保持構造体の軽量化と組み込み作業の容易性を考慮し、ホルダー部材は円筒型電池収容方向の長さが収容される円筒型電池の長さよりも短いものでもよい。
よって、本発明でホルダー部材の収容部とは円筒型電池が全長にわたって収容部に納まる必要はなく、円筒型電池の長手方向例えば中央部付近のみを部分的に保持するように挿入保持されるものも含まれる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る保持構造体は、ホルダー部材に予め円筒型電池の外形よりもやや内径の大きい収容部(挿入孔)を形成したので、この収容部に円筒型電池を挿入し、その後に隣接する2つ以上の例えば3つあるいは4つの円筒型電池間の間にスペーサーを差し込むことにより、またはホルダーの周囲にバンドを巻き付けることにより、容易に複数の円筒型電池を保持及び固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る保持構造体の例を示す。(a)は側面図、(b)は斜視図を示す。
【
図2】スペーサーの例を示す。(a)は中実の例を示し、(b)は中央部に中空の調整孔を形成した例を示す。
【
図3】調整孔を有するスペーサーにて電池を固定した例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る円筒型電池(以下必要に応じて単に電池と称する)の保持構造体の例を以下図面に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
図1に示した保持構造体10の実施例は、アルミニウム合金を用いた押出材にて製作したホルダー部材11と樹脂製のスペーサー20とからなる。
ホルダー部材11は隔壁13にて仕切ることで、6つの収容部12を相互に平行に形成した例となっている。
そのうち、3つの収容部を正三角形状に配置し、正三角形の中心部の隔壁を部分的に切り欠いて各収容部に跨って連通した開口部14を有する。
この開口部14に
図2(a)に示したスペーサー20を差し込むことで電池をホルダー部材11に固定する。
開口部14はスペーサー20を差し込むためのものであり、ホルダー部材11の電池挿入方向全長にわたって切り欠く必要は必ずしもないが、全長にわたって切り欠いた場合にスペーサーをどちら側の方向からでも挿入でき、また押出加工にて製作しやすい。
スペーサー20は隣接する3本の電池の側面にそれぞれ当接する円弧状の押え部21を有する。
なお、本実施例は押え部21の中央部に電池の挿入方向に沿った突部21aを形成した例になっているが、この突部21aは必ずしも必要ではない。
【0014】
図2(b)に示したスペーサー20の例は、中央部に中空の調整孔22を挿入方向に沿って設けた例を示す。
このようにすると、
図3に示すように円筒型電池の側面の押圧力を調整することができる。
調整孔22の形状や本数に制限はない。
本実施例は3つの収容部を正三角形状に配置した例を示したが、4つの収容部を正方形状に配置した場合には、中心部に開口部を形成することで4つの円筒型電池を1つのスペーサーで固定することができる。
このように3つ以上の円筒型電池を1つのスペーサーで固定すると、押圧力が相互作用し、保持安定性が向上するとともに組み工数を低減できる。
本実施例ではホルダー部材の長さL
1が、電池の長さL
2よりも短くなっている。
【0015】
図4はバンドで円筒型電池を固定した例を示す。
隔壁13にて仕切ることで、複数の収容部12を相互に平行に形成するとともに外周部の隔壁を部分的に切り欠くことで、この外周部に外側から収容部まで貫通した開口部14をそれぞれ形成したホルダー部材をアルミニウム合金の押出材で製作した。
ホルダー部材の外周部に一対のフック15a,15bを形成し、弾性のあるバンド30を巻き付けるようにし、両端部32a,32bをこのフック15a,15bに引掛け張設する。
バンド30には押え突部31が開口部14に臨むように設けられていて、この押え突部31の反力にて円筒型電池を収容部12の内周面に押し付ける。
この例は1つのバンド30にて6つの電池を固定した例になっているが、その数に制限はない。
【0016】
本発明に係るホルダー部材は個々の電池を予め収容部に収容(挿入)し、後からスペーサーを電池の間に差し込むか、バンドを外周部に巻き付けるだけで、電池を安定的に保持及び固定できる。
なお、収容部の断面形状は電池を収容できれば必ずしも円形状に限定しなくてもよいが、電池を固定しやすい点では円形状が好ましい。
【符号の説明】
【0017】
1 電池
10 保持構造体
11 ホルダー部材
12 収容部
13 隔壁
14 開口部
20 スペーサー