特許第5812904号(P5812904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5812904
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月17日
(54)【発明の名称】シーラ塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20151029BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20151029BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20151029BHJP
   B05C 9/14 20060101ALI20151029BHJP
   B05B 12/08 20060101ALN20151029BHJP
【FI】
   B05C5/00 A
   B05C11/10
   B05C11/00
   B05C9/14
   !B05B12/08
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-52479(P2012-52479)
(22)【出願日】2012年3月9日
(65)【公開番号】特開2013-184133(P2013-184133A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2014年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】筏井 陽介
(72)【発明者】
【氏名】岸本 直輝
(72)【発明者】
【氏名】江藤 直樹
【審査官】 中島 慎一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−007561(JP,A)
【文献】 特開平08−010676(JP,A)
【文献】 特開平05−138099(JP,A)
【文献】 特表2003−534121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00 − 5/04
B05C 7/00 − 21/00
B05B 1/00 − 3/18 , 7/00 − 9/08
B05B 12/00 − 13/06
B05D 1/00 − 7/26
B23K 31/00 − 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の板材の下面に、この第1の板材の端部よりも端部が突出するようにして第2の板材を当て、前記第1の板材の端部より第1の板材の中央寄り位置にて前記第1の板材と前記第2の板材が接合された合わせ板構造物を施工対象とし、前記第1の板材の端面と前記第2の板材の上面との間のコーナー部位に、シーラを塗布するシーラ塗布装置において、
前記第1の板材の上方に配置され、前記コーナー部位を横断するように移動され、前記第1の板材の上面までの距離及び前記第2の板材の上面までの距離を計測する距離計と、
この距離計で得た距離の変化に基づいて前記第1の板材の端面の向きを識別する端面向き識別部と、
前記コーナー部位における隙間の大きさを演算する隙間演算部と、
前記端面向き識別部で識別した前記第1部材の端面に所定の角度になるように前記シーラガンを位置決めするガン位置決め部と、
シーラを低圧とこの低圧より高い高圧に切換えて吐出することができる圧力切換え式シーラガンと、
前記隙間演算部で求めた隙間の大きさが、所定値以下であれば、前記低圧を選択し、前記隙間の大きさが所定値を超えていれば、前記高圧を選択するように圧力切換え式シーラガンの吐出圧を切換える指令を発する圧力切換指令部と、
からなることを特徴とするシーラ塗布装置。
【請求項2】
前記圧力切換え式シーラガンは、ガンボディに、前記シーラを吐出するシーラ吐出管と、この吐出管を囲う外筒とを備え、この外筒の先端と前記シーラ吐出管の先端の軸方向位置がほぼ合致している状態から、前記シーラ吐出管を前記ガンボディ側へ移動させる又は前記外管を反ガンボディ側へ移動させる管移動機構を備えていることを特徴とする請求項1記載のシーラ塗布装置。
【請求項3】
前記シーラ吐出管に、ヒータが備えられていることを特徴とする請求項2記載のシーラ塗布装置。
【請求項4】
前記管移動機構は、前記ガンボディに移動自在に収納されるピストンであることを特徴とする請求項2又は請求項3記載のシーラ塗布装置。
【請求項5】
前記圧力切換え式シーラガンは、ガンボディに、前記シーラを吐出する第1シーラ吐出管と、この第1シーラ吐出管に平行に配置され前記シーラを吐出する第2シーラ吐出管とを備え、
前記第1シーラ吐出管と前記第2吐出管の一方から低圧のシーラを吐出させ、他方から高圧のシーラを吐出させることができるようにしたことを特徴とする請求項1記載のシーラ塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーラ塗布技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車体には、図13に示すように、第1の板材101の下面に第2の板材102を当て、第1の板材101と第2の板材102を溶接ナゲット103で接合した箇所が存在する。
第1の板材101の端面104と第2の板材102の上面105との間に不可避的に隙間106が発生する。この隙間106から雨水が侵入すると、錆が発生する。コーナーに、隙間充填剤(以下、シーラと記す。)107を塗布することが一般に行われている。
【0003】
このシーラ塗布には、周知の塗布ガンが使用される(例えば、特許文献1(図1)参照。)。すなわち、特許文献1に示される塗布ガンは、吐出力及び応答性が高い。このような塗布ガンでシーラの塗布が実施される。
【0004】
次に、従来の技術の問題点を説明する。
図14(a)に示すように、第2の板材102に第1の板材101を重ねたものを、一対の溶接チップ108、109で挟む。そして、溶接チップ108、109で強く挟みながら、溶接チップ108、109間に通電する。
【0005】
すると、図14(b)に示すように、第1の板材101と第2の板材102とが溶接ナゲット103で接合される。溶接ナゲット103が凝固するときに収縮する。溶接チップ108、109による圧縮と、溶接ナゲット103による収縮により、第1の板材101及び第2の板材102に反りが発生する。結果、第1の板材101の端面104と第2の板材102の上面105との間における隙間106が拡大する。この隙間106は、ワーク(例えば、第1の板材101及び第2の板材102)の個体差によっても生じることがある。
【0006】
図14(c)に示すように、コーナー部位に低圧でシーラ107を塗布する。このシーラ107と溶接ナゲット103の間で空気が封じ込められる。この空気は、次の乾燥工程で加熱され膨張する。この膨張により空気がシーラ107を突き破ることがある。結果、シーラ107に亀裂が入る。この亀裂から雨水が侵入し、錆が発生する。
【0007】
対策として、シーラ107の吐出圧を高める方法がある。シーラ107の吐出圧を高めると、図14(d)に示すように、シーラ107の一部が隙間に侵入し、空気だまり空間が小さくなり、好ましい。しかし、吐出圧を高めるとシーラ107の吐出量が増加し、一部が第1の板材101の上面112から上方へはみ出す。はみ出すと外観性が悪くなる。そこで、はみ出し部分113は、人の手や機械で拭き取る必要がある。
【0008】
すなわち、シーラ塗布工程後に、余剰シーラを拭き取る工程が必要であり、シーラが無駄に消費されると共に工程数が増加し、生産コストが嵩む。
そこで、シーラの消費の適正化と工数の削減とが可能なシーラ塗布技術が求められてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−222787公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、シーラの消費の適正化と工数の削減とが可能なシーラ塗布技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、第1の板材の下面に、この第1の板材の端部よりも端部が突出するようにして第2の板材を当て、前記第1の板材の端部より第1の板材の中央寄り位置にて前記第1の板材と前記第2の板材が接合された合わせ板構造物を施工対象とし、前記第1の板材の端面と前記第2の板材の上面との間のコーナー部位に、シーラを塗布するシーラ塗布装置において、
前記第1の板材の上方に配置され、前記コーナー部位を横断するように移動され、前記第1の板材の上面までの距離及び前記第2の板材の上面までの距離を計測する距離計と、
この距離計で得た距離の変化に基づいて前記第1の板材の端面の向きを識別する端面向き識別部と、
前記コーナー部位における隙間の大きさを演算する隙間演算部と、
前記端面向き識別部で識別した前記第1部材の端面に所定の角度になるように前記シーラガンを位置決めするガン位置決め部と、
シーラを低圧とこの低圧より高い高圧に切換えて吐出することができる圧力切換え式シーラガンと、
前記隙間演算部で求めた隙間の大きさが、所定値以下であれば、前記低圧を選択し、前記隙間の大きさが所定値を超えていれば、前記高圧を選択するように圧力切換え式シーラガンの吐出圧を切換える指令を発する圧力切換指令部と、からなることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明では、圧力切換え式シーラガンは、ガンボディに、シーラを吐出するシーラ吐出管と、この吐出管を囲う外筒とを備え、この外筒の先端とシーラ吐出管の先端の軸方向位置がほぼ合致している状態から、シーラ吐出管をガンボディ側へ移動させる又は外管を反ガンボディ側へ移動させる管移動機構を備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明では、シーラ吐出管に、ヒータが備えられていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明では、管移動機構は、ガンボディに移動自在に収納されるピストンであることを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る発明では、圧力切換え式シーラガンは、ガンボディに、シーラを吐出する第1シーラ吐出管と、この第1シーラ吐出管に平行に配置されシーラを吐出する第2シーラ吐出管とを備え、
第1シーラ吐出管と第2吐出管の一方から低圧のシーラを吐出させ、他方から高圧のシーラを吐出させることができるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、第1の板材の端部と第2の板材の上面との間に形成される隙間の大きさが所定値以下であれば、シーラを低圧で吐出する。低圧であるため、シーラが第1の板材から上へはみ出す量はゼロ又は僅かであり、シーラの無駄使いを防止することができる。低圧であるため、隙間へシーラが進入することは期待できないが、隙間が小さいので溜まる空気の量は少なくなり、シーラに亀裂が入る心配はなくなる。
【0017】
一方、隙間の大きさが所定値を超えていれば、シーラを高圧で吐出する。シーラは隙間に進入する。高圧であるため、シーラの吐出量が増加するが、隙間が大きいため、第1の板材の上面も上がっており、このような第1の板材の上面からシーラがはみ出す量はゼロ又は僅かである。シーラを除去する必要がないので、工数の削減が図れる。
したがって、本発明によれば、シーラの消費の適正化と工数の削減とが可能なシーラ塗布技術が提供される。
【0018】
請求項2に係る発明では、圧力切換え式シーラガンは、ガンボディに、シーラを吐出するシーラ吐出管と、この吐出管を囲う外筒と、シーラ吐出管をガンボディ側へ移動させる又は外管を反ガンボディ側へ移動させる管移動機構を備えている。
【0019】
シーラ吐出管から高圧のシーラを吐出することができる。一方、外管がシーラ吐出管より相対的に出ていれば、シーラ吐出管から吐出されるシーラは外管に充満した後に、外管から吐出される。外管の内断面積(流路面積)がシーラ吐出管の内断面積より大きいため、シーラの圧力が低下する。外管から低圧のシーラを吐出させることができる。
【0020】
管移動機構で圧力の切換えが行われる。シーラガンへは一定の圧力でシーラを供給するだけでよい。
管移動機構はシーラガンに内蔵される。シーラガンへのシーラ供給ラインに圧力切換え機構を設ける必要がないのでシーラ供給ラインの簡素化が図れる。
【0021】
請求項3に係る発明では、シーラ吐出管に、ヒータが備えられている。ヒータに通電することで適宜シーラ吐出管を加熱することができる。加熱により、シーラは粘性が変化し、流動性が増し、隙間へ進入しやすくなる。隙間の大きさが所定値を超えているときに有効である。
【0022】
請求項4に係る発明では、管移動機構は、ガンボディに移動自在に収納されるピストンである。ピストンがガンボディに収納されるため、管移動機構をガンボディの外に設ける場合に比べて、圧力切換え式シーラガンの小径化を図ることができる。
【0023】
請求項5に係る発明では、第1シーラ吐出管と第2吐出管の一方から低圧のシーラを吐出させ、他方から高圧のシーラを吐出させることができる。
請求項4に比較して大径化するものの、管移動機構が不要であるため、圧力切換え式シーラガンを簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係るシーラ塗布装置の原理図である。
図2】距離計の原理図である。
図3】距離計の作用図である。
図4】圧力切換え式シーラガンの断面図である。
図5】圧力切換え式シーラガンの作用図である。
図6】距離計測法を説明する図である。
図7】ガン位置決めとシーラ吐出を説明する図である。
図8図4に示した圧力切換え式シーラガンの変更例を説明する図である。
図9図8に示した圧力切換え式シーラガンの変更例を説明する図である。
図10図4示した圧力切換え式シーラガンのさらなる変更例を説明する図である。
図11図10の作用を説明する図である。
図12図10の作用を説明する図である。
図13】合わせ板構造物の断面図である。
図14】従来のシーラ塗布方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0026】
説明の都合で、図6(a)、図1の順で説明する。
図6(a)に示すように、本発明は、第1の板材11の下面に、この第1の板材11の端部11aよりも端部12aが突出するようにして第2の板材12を当て、第1の板材11の端部11aより第1の板材11の中央寄り位置にて、第1の板材11と第2の板材12が溶接ナゲット13で接合された合わせ板構造物10を施工対象とする。溶接ナゲット13が凝固するときに引っ張られるなどして、第1の板材11の端部11aと第2の板材12との間で隙間14が発生する。
【0027】
この隙間14へシーラを塗布するシーラ塗布装置20は、図1に示すように、ロボット21と、このロボット21のアーム22に支持され合わせ板構造物10の上方に配置される距離計23と、この距離計23で得た距離の変化に基づいて第1の板材11の端面11bの向きを識別する端面向き識別部24と、第2の板材12までの距離から第1の板材11までの距離を差し引き、さらに第1の板材11の厚さ(図6(a)、符号t)を減ずることで、第1の板材11の端部11aにおける隙間の大きさを演算する隙間演算部25と、端面向き識別部24で識別した第1の部材11の端面11bに所定の角度になるようにロボット21を制御しシーラガンを位置決めするガン位置決め部26と、ロボット21に支持されシーラを低圧とこの低圧より高い高圧に切換えて吐出することができる圧力切換え式シーラガン50と、隙間演算部25で求めた隙間の大きさが、所定値以下であれば、低圧を選択し、隙間の大きさが所定値を超えていれば、高圧を選択するように圧力切換え式シーラガン50の吐出圧を切換える指令を発する圧力切換指令部28とからなる。
【0028】
距離計23は、ガン移動機構30を介してロボット21に取付けられる。
ガン移動機構30は、ロボット21のアーム22に取付けられるブラケット31と、このブラケット31に水平維持機構33を介して支持されるフレーム32と、このフレーム32を水平に保つ水平維持機構33と、フレーム32に回転自在に支持され水平に延びるねじ軸34と、このねじ軸34を回すサーボモータ35と、ねじ軸34に水平移動可能に支持され距離計23を支えるナット36とからなる。
【0029】
サーボモータ35により、距離計23は、第1の板材11の端部11aから第2の板材12の上面までをこの順に、又は逆順に動かされる。
また、この例ではアーム22に圧力切換え式シーラガン50と距離計23とを設けた。圧力切換え式シーラガン50の傾斜角度にアーム22が傾けられても、水平維持機構33により距離計23は水平に移動する。
【0030】
なお、圧力切換え式シーラガン50及び距離計23は、ロボット21に代わる運搬機構や移動機構により移動させることは差し支えない。
【0031】
以下、構成要素を詳しく説明する。
図2(a)に示すように、距離計23は、レーザの発射光38を照射するレーザ発射部39と、発射光38を絞る投光レンズ41と、反射光42を絞る受光レンズ43と、反射光42の受光位置を特定する光位置検出素子44と、これらを一括して収納する距離計ケース45とからなる。
【0032】
図2(b)に示すように、発射光38は、レーザ発射部39から投光レンズ41を介して合わせ板構造物10に到達する。合わせ板構造物10は局部的に反っており、普通の反射式距離計では反射光が戻ってこない可能性がある。しかし、本例の距離計23であれば計測に支障がない。その理由を次に説明する。
【0033】
周知の通りに、鏡面以外の面(合わせ板構造物10の表面など)では光は乱反射される。
すなわち、図2(c)に示すように、合わせ板構造物10の表面で乱反射光46が発生し、この乱反射光46の一部の反射光42が受光レンズ43に到達し、受光レンズ43で絞られて光位置検出素子44に到達する。なお、本発明では、無数の乱反射光46のうちで、受光レンズ43に向かう光のみを反射光42と呼ぶことにする。
【0034】
図3に示すように、光位置検出素子44は無数(便宜的に6個)の受光素子44a〜44fで構成される。
合わせ板構造物10が投光レンズ41に近いところにある場合には、発射光38が当たる点P1と、受光レンズ43の中心とを結ぶ線上を反射光42が進み、第5番素子44eに受光される。
【0035】
又は、合わせ板構造物10が投光レンズ41に遠いところにある場合には、発射光38が当たる点P2と、受光レンズ43の中心とを結ぶ線上を反射光42が進み、第2番素子44bに受光される。
レーザ発射部39、投光レンズ41、受光レンズ43及び光位置検出素子44は、相対位置が固定されていて、位置座標は既知である。そのため、受光素子44a〜44fの何れに受光されているかが定まれば、幾何学的に合わせ板構造物10までの距離が求められる。
以上に説明したように、乱反射光を利用するため、合わせ板構造物10が反っていても距離は正しく計測される。
【0036】
図4に示すように、圧力切換え式シーラガン50は、有底筒状のガンボディ51と、このガンボディ51に内蔵される弁座ブロック52と、この弁座ブロック52の通孔53を開閉するステム54と、ガンボディ51に内蔵されステム54を移動可能に支持するステムガイド55と、このステムガイド55と弁座ブロック52との間に形成されるシーラ室56と、このシーラ室56へ所定の圧力のシーラを供給するシーラ供給路57と、ガンボディ51に内蔵されステム54の基部に連結される第1ピストン58と、ステム54が弁座ブロック52に当たるように第1ピストン58を付勢する第1付勢部材59と、第1ピストン58とステムガイド55との間へ圧縮空気などの作動流体を供給する第1流体供給路61と、この第1流体供給路61に設けられる第1オンオフ弁62と、弁座ブロック52とガンボディ51の底51aとの間に設けられる管移動機構70と、弁座ブロック52から離れるようにして底51aから延ばされるシーラ吐出管63及び外管64と、シーラ吐出管63の先端に設けたヒータ65とからなる。
【0037】
管移動機構70は、ガンボディ51に移動自在に内蔵されシーラ吐出管63を支える第2ピストン71と、シーラ吐出管63が前進する方向へ第2ピストン71を付勢する第2付勢部材72と、第2ピストン71と底51aとの間に圧縮空気などの作動流体を送る第2流体供給路73と、この第2流体供給路73に設けられる第2オンオフ弁74とからなる。第2オンオフ弁74は圧力切換指令部28でオンオフ制御される。
【0038】
組立を容易にするために、ガンボディ51に、底51aに近づくほど径が段階的小さくなる多段穴76を設ける。そして、Oリング77を備える第2ピストン71を多段穴76に嵌め、第2付勢部材72を投入し、Oリング78を備える弁座ブロック52を多段穴76に嵌めて止め輪79で抜け止めを施し、Oリング81、82を備えるステムガイド55を多段穴76に嵌めて止め輪83で抜け止めを施し、次にOリング84を備える第1ピストン58を多段穴76に嵌め、第1付勢部材59を投入し、最後に、多段穴76をプラグナット85で塞ぐ構造が推奨される。しかし、圧力切換え式シーラガン50の構造は、適宜変更可能である。代表的な変更例は後述する。
【0039】
図4では、シーラ吐出管63と外管64の先端同士が揃っている。この状態で、第1オンオフ弁62を開くと、第1流体供給路61から作動流体がステムガイド55と第1ピストン58の間に供給される。第1ピストン58は第1付勢部材59に抗して後退(図では上昇)する。ステム54の先端が弁座ブロック52から離れる。シーラ室56内のシーラ86が通孔53を通り、シーラ吐出管63から高圧で吐出される。
【0040】
または、図4の状態から、シーラ吐出管63のポジションを管移動機構70により移動させることができる。
先ず、第2オンオフ弁74を開く。すると、底51aと第2ピストン71の間に作動流体が供給され、第2ピストン71が第2付勢部材72に抗して後退(図では上昇)する。
【0041】
すると、図5に示すように、シーラ吐出管63が外管64からδだけ、後退する。
この状態では、シーラ86が外管64を満たし、その後に外管64から吐出される。仮に、シーラ吐出管63の内断面積に対して、外管64の内断面積が2倍であれば、シーラ86の吐出速度が1/2になり、理論的には圧力は1/4になる。すなわち、外管64からシーラ86が低圧で吐出される。
【0042】
以上の構成からなるシーラ塗布装置の作用を次に説明する。
図6(a)に示すように、圧力切換え式シーラガン50を待機位置に置き、距離計23を第1の板材11の上面に置く。次に、コーナー部位87を横断するように、距離計23を第2の板材12の上面まで移動させる。この間に連続して合わせ板構造物1までの距離を計測する。
【0043】
すると、図6(b)に示すような距離データが取得できる。隙間演算部(図1、符号25)に第1の板材11の厚さtが記憶されており、隙間演算部で(L2−L1−t)の計算により、コーナー部位87での隙間14の大きさを算出する。
図6(b)に示すグラフの横軸から、コーナー部位87の位置座標が求められる。
【0044】
端面向き識別部(図1、符号24)は、図6(b)のグラフに示す距離の変化から、第1の板材11の端部11aが、図面右側に延びていることを識別する。すなわち、第1の板材11の端面11bの向きを識別する。この情報は、ガン位置決め部(図1、符号26)へ送られる。
【0045】
ガン位置決め部は、図7(a)に示すように、圧力切換え式シーラガン50の軸50aがコーナー部位87(例えば、第1の板材11の端面11bから下ろした線が第2の板材12の上面に交わった点88)を通るように、且つ傾斜角θの大きさが所定値(例えば50°)となるように傾斜姿勢を定める。並行して、点88から圧力切換え式シーラガン50先端までの距離L3の大きさが所定値になるように調整する。以上の要領で、ガン位置決め部により、圧力切換え式シーラガン50が位置決めされる。
【0046】
圧力切換指令部(図1、符号28)は、隙間演算部で求めた隙間14の大きさが、所定値以下であれば、低圧を選択し、隙間14の大きさの大きさが所定値を超えていれば、高圧を選択するように、圧力切換え式シーラガン50の吐出圧を切換える指令(信号)を発生する。
所定値は、第1の板材の厚さtをパラメータとして、α×tと定めることができる。αは0.05〜0.5のうちから選択される。所定値は経験的定めることもでき、それの決定法は任意である。
【0047】
隙間14の大きさが所定値以下であれば、低圧が選択される。具体的には、圧力切換え式シーラガン50は図5の形態にされる。
そして、図7(b)に示すように、低圧のシーラ86がコーナー部位87へ吐出される。隙間14が小さいため、隙間14へシーラ86が進入することは求められない。低圧であるため、シーラ86が第1の板材11の上面を超えてはみ出す心配もない。シーラ86を拭く必要がないため、工数の削減が図れる。また、シーラ86のはみ出しがないため、シーラ86は適正に消費される。
【0048】
隙間14の大きさが所定値を超えているときは、高圧が選択される。具体的には、圧力切換え式シーラガン50は図4の形態にされる。
そして、図7(c)に示すように、高圧のシーラ86がコーナー部位87へ吐出される。高圧であるため、隙間14へシーラ86が進入する。隙間14が大きいため、シーラ86が第1の板材11の上面を超えてはみ出す心配もない。シーラ86を拭く必要がないため、工数の削減が図れる。また、シーラ86のはみ出しがないため、シーラ86は適正に消費される。
【0049】
図7(c)においては、ヒータ65に通電することが推奨される。加熱によりシーラ86が軟らかくなり、流動性が増す。結果、隙間への進入が促される。
【0050】
次に、図4に示した圧力切換え式シーラガンの変更例を説明する。
図8は変更例を示す図であり、図4と共通する構成要素は符号を流用して詳細な説明を省く。
図8に示すように、シーラ吐出管63は弁座ブロック52に基部が固定され、外管64が第2ピストン71に基部が固定されている。第2ピストン71と弁座ブロック52との間に作動流体が吹き込まれると、外管64が想像線で示す位置まで前進する。すなわち、想像線で示す形態により低圧のシーラが吐出でき、実線で示す形態により高圧のシーラが吐出できる。
【0051】
図4図8から明らかなように、シーラ吐出管63が外管64に対して相対的に移動される。具体的には、シーラ吐出管63を固定して外管64を移動させる、又は、外管64を固定してシーラ吐出管63を移動させる。
【0052】
また、図9に示すように、外管64を短くし、この外管64をガンボディ51の外に設けた小型シリンダユニット89で移動させるようにしても良い。ガンボディ51の小型化が可能になる。
【0053】
また、圧力切換え式シーラガン50は、図10に示すように、ガンボディ51に2つの多段穴76A、76Bを設け、各々にステムガイド55A、55Bをセットし、ステム54A、54B、ピストン58A、58B及び付勢部材59A、59Bを内蔵し、底51aから第1シーラ吐出管63A及び第2シーラ吐出管63Bを延ばし、これらのシーラ吐出管63A、63Bの先端同士を接合して束ねた構造の物でも良い。
【0054】
シーラの圧力は、供給されるシーラの圧力により定まる。便宜上、一方のシーラ室56Aに低圧のシーラが供給され、他方のシーラ室56Bに高圧のシーラが供給されている。なお、両方のシーラ室56A、56Bに低圧のシーラを供給すること、又は、両方のシーラ室56A、56Bに高圧のシーラを供給することは妨げない。
【0055】
図11(a)に示すように、隙間14の大きさが所定値以下である場合は、第1シーラ吐出管63Aからコーナー部位87へ低圧のシーラ86が吐出される。
又は、図11(b)に示すように、隙間14の大きさが所定値を超えている場合は、第2シーラ吐出管63Bからコーナー部位87へ高圧のシーラ86が吐出される。高圧であるから、隙間14へシーラ86が進入する。
【0056】
また、図12に示すように、第1シーラ吐出管63Aと第2シーラ吐出管63Bとの両方からシーラ86を吐出させることができる。
例えば、第2シーラ吐出管63Bから高圧のシーラ86を吐出し、このシーラ86を隙間14へ進入させる。このシーラ86の上に、第1シーラ吐出管63Aから低圧のシーラ86を吐出する。いわゆる、二層盛りを実施する。
【0057】
尚、本発明のシーラ塗布装置は、実施の形態では車両の車体に適用したが、一般の溶接構造物に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のシーラ塗布装置は、車体に好適である。
【符号の説明】
【0059】
10…合わせ板構造物、11…第1の板材、11a…第1の板材の端部、11b…第1の板材の端面、12…第2の板材、12a…第2の板材の端部、13…溶接ナゲット、14…隙間、20…シーラ塗布装置、21…ロボット、23…距離計、24…端面向き識別部、25…隙間演算部、26…ガン位置決定部、28…圧力切換指令部、50…圧力切換え式シーラガン、51…ガンボディ、51a…ガンボディの底、63…シーラ吐出管、63A…第1シーラ吐出管、63B…第2シーラ吐出管、64…外管、65…ヒータ、70…管移動機構、71…管移動機構のピストン(第2ピストン)、86…シーラ、87…コーナー部。
図1
図2
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