(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回路基板を保持する基板保持装置と、その基板保持装置に保持された回路基板に対して作業を行う作業ヘッドと、その作業ヘッドを保持する可動部材を備え、その可動部材を移動させることによって作業ヘッドを前記基板保持装置に対して移動させるヘッド移動装置と、それら基板保持装置,作業ヘッドおよびヘッド移動装置を支持する機械本体とを含む対回路基板作業機であって、
当該対回路基板作業機の診断に必要な情報を取得する診断情報取得部を含み、その診断情報取得部が前記可動部材に保持されて、前記ヘッド移動装置により前記基板保持装置に対して移動させられ、
前記診断情報取得部の少なくとも一部が、前記可動部材に保持されるアダプタと、そのアダプタに対して着脱される診断用ヘッドとの少なくとも一方に設けられたことを特徴とする対回路基板作業機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の事情の下に、対回路基板作業機の能力低下,故障等の異常発生を、対回路基板作業機自体に効率的に発見させ得る技術を開発することを課題として為されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題
を解決するために、本発明に係る対回路基板作業機は、
回路基板を保持する基板保持装置と、その基板保持装置に保持された回路基板に対して作業を行う作業ヘッドと、その作業ヘッドを保持する可動部材を備え、その可動部材を移動させることによって作業ヘッドを前記基板保持装置に対して移動させるヘッド移動装置と、それら基板保持装置,作業ヘッドおよびヘッド移動装置を支持する機械本体とを含む対回路基板作業機であって、
当該対回路基板作業機の診断に必要な情報を取得する診断情報取得部を含み、その診断情報取得部が前記可動部材に保持されて、前記ヘッド移動装置により前記基板保持装置に対して移動させられ、
前記診断情報取得部の少なくとも一部が、前記可動部材に保持されるアダプタと、そのアダプタに対して着脱される診断用ヘッドとの少なくとも一方に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
作業ヘッドは、対回路基板作業機の各部に設けられている種々の装置の作動の結果が集約的に現れる部分である。したがって、対回路基板作業機の診断に必要な情報を取得する診断情報取得部を、作業ヘッドないし作業ヘッドと等価の部分に設ければ、診断情報を効率的に取得することが可能となる。
ただし、対回路基板作業機においては、作業ヘッドが複数種類準備され、作業目的に応じて選択的に使用されることが多く、それらすべてに診断情報取得部を設ければ、設備コストが高くなる。また、作業ヘッドは、加速,減速を繰り返す部分であるため慣性質量をできる限り小さくすることが要求される。そのため、本発明の望ましい態様においては、診断情報取得部が、作業ヘッドを着脱可能に保持するアダプタ、あるいは作業ヘッドと択一的にアダプタあるいは可動部材に保持させられる診断専用のヘッドに設けられることが望ましい。
この観点から、本発明に係る対回路基板作業機においては、診断情報取得部の少なくとも一部が、可動部材に保持されるアダプタと、そのアダプタに対して着脱される診断用ヘッドとの少なくとも一方に設けられる。
【0007】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、特許請求の範囲に記載された発明である「本願発明」の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載,従来技術等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0008】
(1)回路基板を保持する基板保持装置と、その基板保持装置に保持された回路基板に対して作業を行う作業ヘッドと、その作業ヘッドを保持する可動部材を備え、その可動部材を移動させることによって作業ヘッドを前記基板保持装置に対して移動させるヘッド移動装置と、それら基板保持装置,作業ヘッドおよびヘッド移動装置を支持する機械本体とを含む対回路基板作業機であって、
当該対回路基板作業機の診断に必要な情報を取得する診断情報取得部を含み、その診断情報取得部が前記可動部材に保持されて、前記ヘッド移動装置により前記基板保持装置に対して移動させられることを特徴とする対回路基板作業機。
対回路基板作業機には、塗布機,部品実装機,回路検査機等、回路基板に対する種々の作業である対回路基板作業を行うものがあり、行うべき作業に応じて塗布ヘッド,部品実装ヘッド,検査ヘッド等がヘッド移動装置の可動部材に保持させられる。
(2)前記診断情報取得部の少なくとも一部が、前記可動部材に保持されるアダプタと、そのアダプタに対して着脱される診断用ヘッドとの少なくとも一方に設けられた(1)項に記載の対回路基板作業機。
診断情報取得部の少なくとも一部が設けられるアダプタは、作業ヘッドと診断用ヘッドとに共通のものでも、診断用ヘッド専用のものでもよい。特殊な場合として、診断情報取得部が複数種類の作業ヘッドに共通のアダプタのみに設けられる場合もあり、その場合には診断用ヘッドは設けられないこととなる。
(3)前記診断情報取得部が前記診断用ヘッドのみに設けられた(2)項に記載の対回路基板作業機。
診断用ヘッドが設けられる場合、診断情報取得部は診断用ヘッドとそれが取り付けられるアダプタとに分けて設けられてもよい。診断情報取得部が診断用ヘッドとアダプタとに分けて設けられる場合、アダプタは作業ヘッドが取り付けられるアダプタと共用とすることも、診断ヘッドに専用のものとすることも可能である。診断用ヘッド専用のアダプタとする場合、そのアダプタは、作業ヘッド用のアダプタをヘッド移動装置の可動部材から取り外し、それの代わりに取り付けられることが望ましい。
それに対し、診断情報取得部が診断用ヘッドのみに設けられる場合には、診断用ヘッドを作業ヘッドと共通のアダプタに対して着脱することが可能となり、診断情報取得部の可動部材に対する着脱作業が容易となる。
しかも、対回路基板作業機の各部に発生する不具合の結果が集約的に現れるヘッド部において集中的に取得することが可能となる効果が得られる上、作業ヘッドおよびそれが取り付けられるアダプタの慣性質量が小さくて済み、その分、作業ヘッドを急激に加速あるいは減速することができ、作業能率を向上させることができる効果が得られる。
(4)前記診断情報取得部が、前記機械本体側から前記作業ヘッドに供給される負圧と正圧との少なくとも一方を検出する圧力検出部と、前記機械本体側の通信機器と前記作業ヘッド側の通信機器との間の通信を検出する通信検出部と、前記機械本体側から前記作業ヘッド側へ供給される電圧と電流との少なくとも一方を検出する電圧/電流検出部と、前記作業ヘッドの加速度を検出する加速度検出部との少なくとも一つを含む(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の対回路基板作業機。
(5)さらに、前記診断情報取得部により取得された情報を報知する診断情報報知部を含む(1)項ないし(4)項のいずれかに記載の対回路基板作業機。
診断情報報知部は、後述の診断結果報知部と兼用とすることも、診断情報のみを報知するものとすることも可能である。診断結果報知部と兼用とする場合は勿論、専用とする場合にも、診断結果報知部に関する後述の説明がそのまま当てはまるが、診断情報報知部としてはデイスプレイによるものが特に望ましい。
(6)前記診断情報取得部により取得された情報に基づいて当該対回路基板作業機の診断を行う診断部を含む(1)項ないし(5)項のいずれかに記載の対回路基板作業機。
(7)前記診断部が診断情報取得部と共に前記ヘッド移動装置により移動させられる(6)項に記載の対回路基板作業機。
本明細書において「診断用ヘッド」なる用語は、診断情報取得部のみを備えたヘッドと、診断情報取得部および診断部の両方を備えたヘッドとの両方を包含する用語として使用し、「診断ヘッド」なる用語は、診断情報取得部および診断部の両方を備えたヘッドを意味する用語として使用する。
(8)前記診断部による診断の結果を報知する診断結果報知部を含む(6)項または(7)項に記載の対回路基板作業機。
診断結果報知部は、ディスプレイへの文字,数字,記号,図等による表示、LEDランプ等の点灯表示、音声による報知の少なくとも一つを行うものとすることができ、報知が行われる箇所も診断ヘッド自体,診断ヘッドが着脱されるアダプタ,機械本体,機械本体とは別体の制御装置,あるいは複数の対回路基板作業機を統括制御する統括制御装置等から選択することが可能であり、さらに、例えば、診断ヘッドと機械本体、機械本体と統括制御装置のように複数個所において連動して報知が行われるようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施例である部品実装機を複数台含む部品実装ラインを示す斜視図である。
【
図2】上記部品実装ラインの一モジュールを取り出して示す斜視図である。
【
図3】上記部品実装機のヘッド移動装置を示す斜視図である。
【
図4】上記部品実装機における複数種類の実装ヘッドを例示する斜視図である。
【
図5】上記部品実装機における実装ヘッドとそれを着脱可能なアダプタとを示す斜視図である。
【
図6】上記アダプタに実装ヘッドを着脱するための着脱装置を示す図である。
【
図7】上記複数種類の実装ヘッドの1種類をカバーを取り外して示す斜視図である。
【
図8】
図7に示した実装ヘッドのヘッド側制御部と、本体側制御部との請求可能発明に関連が深い部分のみを示すブロック図である。
【
図9】
図7に示す実装ヘッドの代わりに装着される診断ヘッドを示す斜視図である。
【
図10】上記診断ヘッドの電気的な構成を示すブロック図である。
【
図11】上記診断ヘッドの一構成要素であるコンピュータの機能ブロック図である。
【
図12】上記診断ヘッドにおける圧力の異常診断を説明するための図である。
【
図13】上記診断ヘッドにおけるヘッド移動装置の異常診断を説明するための図である。
【
図14】本発明の別の実施例である部品実装機における可動部材とアダプタとを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、請求可能発明の一実施例を図面に基づいて説明する。ただし、部品実装機の診断に関する部分以外は、例えば、特開2010−4059号公報に詳細に記載されており、既知のものであるので簡単に説明する。
請求可能発明に係る対回路基板作業機の一例である部品実装機10は、
図1に示すように、複数台が並べられて部品実装ライン12を構成する。各部品実装機10はそれぞれ操作装置14,表示装置(ディスプレイ)16および個別制御装置を備えているが、個別制御装置はさらに統括制御装置22により統括制御される。統括制御装置22も操作装置24および表示装置(ディスプレイ)26を備えている。
【0011】
上記部品実装ライン12の1モジュールを
図2に示すが、1モジュールは2台の部品実装機10が共通の支持台30に支持されたものであり、各部品実装機10は幅方向において互いに近接しているが、支持台30に前後方向に移動可能に支持されており、1台ずつ前方へ引き出されることにより、各部品実装機10の内部への作業者のアクセスが可能とされている。1台の部品実装機10を1モジュールと考え、2モジュールの部品実装機10が1つの支持台30を共有していると考えることもできる。
【0012】
各部品実装機10は、本体フレーム31に支持された前後2つの基板コンベヤ32,34を備え、各基板コンベヤ32,34に対して個々に昇降可能な基板支持装置が設けられ、各基板コンベヤ32,34の各一部と共同して回路基板を固定的に保持する基板保持装置42,44を構成している。前後2つの基板コンベヤ32,34および基板保持装置42,44については、本請求可能発明と直接関係がないので、これ以上の説明は省略する。
【0013】
各部品実装機10は、各1種類ずつの電子回路部品(以下、部品と略称する)を供給する複数の部品供給装置48と、それら部品供給装置48から1個ずつの部品を取り出して、各基板保持装置42,44に保持された回路基板に実装する部品実装装置54とを備えている。部品実装装置54は、
図3に拡大して示すように、作業ヘッドの一種としての部品実装ヘッド56と、それをX軸方向(左右方向)とY軸方向(前後方向)とに移動させるヘッド移動装置58とを含んでいる。部品実装ヘッド56としては、
図4に例示する複数種類のもの56a,56b,56c等が準備されており、それらが
図5に示すアダプタ60に、
図6に示す着脱装置62により選択的に取り付けられる。
図4〜6において、符号64は部品実装ヘッド56に取り付けられたローラを示し、アダプタ60に設けられた偏心カム66がハンドル68により回転させられることにより、同じくアダプタ60に設けられたロック部材70が押し下げられて上記ローラ64に係合させられるとともに、部品実装ヘッド56の係合部72がアダプタ60の係合部74に係合させられ、その結果、部品実装ヘッド56の背面がアダプタ60の前面に密着させられるとともに、上下方向に強固に固定される。なお、一対のローラ76は部品実装ヘッド56の係合突起80の両側面と係合し、別の一対のローラ78は部品実装ヘッド56の一対の係合突起82の各内側面と係合することにより、部品実装ヘッド56の幅方向の位置決めを行う。
【0014】
上記複数種類の部品実装ヘッド56a,56b,56cのうち、
図4(a)に示す部品実装ヘッド56aの構成を代表的に
図7に示す。この部品実装ヘッド56aは、保持体回転モータ90により一定角度ずつ回転させられる回転保持体92を備え、回転保持体92には上記一定角度の間隔で複数の実装ユニット94が軸方向に移動可能かつ個々に回転回転可能に保持されている。したがって、各実装ユニット94は回転保持体92の回転により回転保持体92の回転軸線まわりを旋回させられるとともに、自身の軸線まわりに自転可能である。この実装ユニット94の絶対的な位相は、ユニット回転モータ98の回転と保持体回転モータ90の回転との関連制御により制御される。また、複数の実装ユニット94が特定の旋回位置にある状態で、ユニット昇降モータ100により昇降させられる図示を省略する昇降駆動部材により軸方向に昇降せられる。複数の実装ユニット94の各々の下端部には吸着ノズル102が着脱可能に保持されており、各実装ユニット94の昇降に伴って各吸着ノズル102が昇降させられ、部品供給装置48から部品を吸着により保持して取り出し、基板保持装置42,44に保持された回路基板に実装する。上記回転保持体92や各モータ90,98,100等はヘッド本体104に保持されており、ヘッド本体104のアダプタ60に対する着脱により一斉に着脱される。
【0015】
部品実装機10は、上記部品実装ヘッド56側とそれが着脱される実装機本体側とに分けて考えることができ、実装機本体側は、部品実装機10の本体フレーム31と、その本体フレーム31に支持された前記基板コンベヤ32,34、基板保持装置42,44、部品供給装置48およびヘッド移動装置58等とを含んでいる。なお、前記支持台30内に部品実装機10の電気制御装置が設置されており、したがって、支持台30の電気制御装置を収容している部分も実装機本体側と考えるのが妥当である。
上記吸着ノズル102による部品の保持,解放は、上記実装機本体側に設けられた負圧供給装置および正圧供給装置(図示省略)の制御と、部品実装ヘッド56に設けられた連成圧切換ユニット106(
図8参照)の制御とにより行われる。連成圧切換ユニット106は吸着ノズル102への負圧,正圧の選択的な供給と吸着ノズル102の大気への開放とにより部品の保持,解放を制御する。
【0016】
上記保持体回転モータ90,ユニット回転モータ98,ユニット昇降モータ100および連成圧切換ユニット106等の作動は、
図8に示す部品実装機10の個別制御装置110により制御される。個別制御装置110は、ヘッド側制御部112と本体側制御部114とを含み、ヘッド側制御部112は通信部116において本体側制御部114の通信部118との通信による情報や指令の授受を行うとともに、本体側制御部114からヘッド側制御部112へ電源線(図示省略)により電力が供給されるようになっている。本体側制御部114はさらに、それ自身の通信部118を経て前述の統括制御装置22との情報や指令の授受を行い得るようになっている。なお、
図8において、本体側制御部114の構成は、請求可能発明の説明に必要な部分のみを図示する。
【0017】
部品実装機10は、上記部品実装ヘッド56に代えて
図9に示す診断ヘッド120をアダプタ60に装着し得るようになっている。診断ヘッド120は、
図7に示した実装ヘッド56aのヘッド本体104と同様にしてアダプタ60に着脱し得るヘッド本体122を備えているのである。ヘッド本体122には、正圧と負圧との両方を検出し得る連成圧センサユニット124と、その連成圧センサユニット124を図示を省略する正圧供給通路,負圧供給通路および大気圧通路に選択的に連通させ得る連成圧切換ユニット126とが取り付けられている。ヘッド本体122にはさらに、X,Y,Z3軸方向の加速度を検出し得る加速度センサユニット128が取り付けられるとともに、プリント回路板130が取り付けられている。加速度センサユニット128としては、例えば、クロスボー株式会社製のCXL10GP3等、MEMS(Micro Electro Mecanical System)タイプの加速度センサユニットを使用可能であり、プリント回路板130には、
図10に示すように、連成圧センサユニット124,連成圧切換ユニット126および加速度センサユニット128と共同して診断部140を構成する電子回路138が形成されている。この電子回路138は、診断ヘッド120に対する電源の電圧および電流を検出する電圧/電流センサユニット142と、その電圧/電流センサユニット142と上記連成圧センサユニット124および加速度センサユニット128との出力をそれぞれアナログ/デジタル変換するA/Dコンバータ144,146,148と、本体側制御部114との通信を行う通信部150と、コンピュータ152とを含んでいる。
【0018】
本体側制御部114の通信部118とヘッド側制御部112の通信部116との間には、例えば、通信部118からの「ヘッドの取付位置誤差等の固有値を下さい」等の情報要求に通信部116が応える等の比較的複雑な内容のシリアル通信を行う第一通信系と、即時性の要求の強い信号(例えば、0と1 にのみ変化する信号)の授受を行う第二通信系とが形成されており、診断ヘッド120の通信部150も通信部116と同様の通信を行い得るようにされている。そして、コンピュータ152はCPU154,RAM156およびROM158を備え、
図11の機能ブロック図で表される機能を果たすことにより、診断ヘッド120に供給される正圧,負圧の異常、電源の電圧/電流の異常、通信の異常およびヘッド移動装置58の異常等の異常診断を行う診断部140を構成する。
【0019】
異常診断の実行時には、最初に通信に異常がないことが確認されることが望ましい。通信以外の異常が発見された場合にも、その旨の情報が本体側制御部114の通信部118へ送信され、表示装置16に表示される必要があるが、通信に異常があればそれら通信や表示が適正に行われない可能性があるからである。
本実施形態においては、まず、第二通信系に異常があるか否かの診断が行われ、異常がない場合に第一通信系に異常があるか否かの診断が行われる。なお、第一通信系と第二通信系とがそれぞれ専用の通信線を有するようにすることも、同じ通信線を共用するようにすることも可能である。また、通信部118,150は、第一通信系に関しても第二通信系に関しても、単方向出力でも双方向出力でもよい。
【0020】
第二通信系の異常診断はループバックによって行われる。診断ヘッド120の通信部150が例えば1パルスの信号を本体側制御部114の通信部118へ送信し、その1パルスの信号が通信部118から通信部150へ送り返されるか否かによって第二通信系が正常であるか異常であるかの判定が行われるのである。通信部150における1パルスの信号の送信,通信部118における1パルスの信号の送り返し,通信部150における信号の送り返しの有無の判定は、ハード回路によって行われるようにすることも、コンピュータ152によりソフト的に行われるようにすることも可能である。いずれにしても、正常である旨の判定の結果、すなわち正常診断結果は第二通信系により通信部118へ送信され、それに基づいて表示装置16に第二通信系は正常である旨の表示が行われる。それに対して、第二通信系が正常でない場合には、正常診断結果が第二通信系により通信部118へ送信されないため、表示装置16に第二通信系が異常である旨の表示が行われる。表示装置16の通信系の診断結果の表示は、初期設定で「異常である」旨の表示とされており、正常診断結果が第二通信系により通信部118に送信された場合に「正常である」旨の表示に変更されるのである。
【0021】
第一通信系の異常診断は、シリアル通信の誤送信検査に通常用いられるパリティチェック,チェックサム,CRCチェック(Cyclic Redundancy Check)等、誤送信検査法の少なくとも1つ以上の実行により行われる。例えば、診断ヘッド120の通信部150が予めコンピュータ152に記憶させられている「診断ヘッドの取付位置誤差」の値を、通信部118へシリアル送信し、通信部118が受信した「取付位置誤差」の値をそのまま通信部150へシリアル通信により送り返し、コンピュータ152が上記誤送信検査法を実行することにより、第一通信系の異常診断を行うのである。誤送信検査法の実行をコンピュータ152に行わせる代わりに、市販のLSI(Large Scale Integration)を使用して異常診断をすることも可能である。異常診断の結果の第一通信系による通信部118への送信および表示装置16における診断結果の表示については、第二通信系について行った上記説明がそのまま当てはまる。
【0022】
次に、正圧および負圧の異常診断について説明する。コンピュータ152により構成される診断部140の切換ユニット制御部170が、駆動回路172(
図10参照)を介して連成圧切換ユニット126を予め設定されたタイムチャートで制御し、連成圧センサユニット124を大気圧通路に連通した状態から負圧供給通路と正圧供給通路とに順次連通させた後、大気圧通路に連通する状態に戻し、その間における連成圧センサユニット124の出力がA/Dコンバータ146により変換された圧力値がデータ記憶部174に記憶させられる。その一例を
図12に示す。この圧力値は、圧力データベース176に予め記憶させられている各しきい値と比較判定部178において比較され、異常の有無判定と異常原因の推定とが行われる。例えば、圧力データベース176には、負圧しきい値、大気圧しきい値、大気圧から負圧しきい値に達するのに要する時間である立上がり時間、最大負圧から大気圧しきい値に達するまでの立下り時間、立上がり開始から大気圧しきい値に達するまでの時間である総時間および最大負圧値等のしきい値が記憶されており、これらのしきい値とA/Dコンバータ146により変換された圧力値とに基づいて、異常の有無が判定され、異常がある場合にはその原因の推定が行われるのである。例えば、
図12に示す例は、シール部材の劣化により漏れが発生しているために、立上がり時間が異常に長くなる一方、立下り時間が異常に短くなっているが、最大負圧値は負圧しきい値を超える状態を示しており、負圧供給装置は正常であるがシール部材劣化の異常が発生している旨の情報が通信部150を経て本体側制御部114に送信され、表示装置16に表示されることとなる。
【0023】
ヘッド移動装置58の異常は、ヘッド移動装置58のガイドとボールねじとの経年劣化の有無について以下のようにして診断される。本体側制御部114から診断ヘッド120へ、通信部118,150を経て、ヘッド移動装置58の異常検出を開始すべき旨の通知が行われた後、本体側制御部114の制御によってヘッド移動装置58がランダム加振あるいはサイン加振のいずれかのパターンで作動させられ、その際における加速度センサユニット128のX,Y,Z3軸方向の3つのアナログ出力がA/Dコンバータ148によりデジタル変換されたものがデータ記憶部186に記憶させられる。この記憶させられたデジタル出力値に基づいて周波数分析部188においてFFT(Fast Fourier Transform)により周波数分析が行われ、得られた結果と、異常周波数データベース190に予め記憶させられているデータとが比較判定部192において比較され、異常の有無判定と異常がある場合の原因推定が行われる。
図13に前後方向であるY軸方向における周波数分析の結果であって、ガイドの経年劣化とボールネジの経年劣化との両方が生じている場合の一例を示す。
図13において実線が正常時を示し、破線が異常時を示しており、右上がりの斜線で表される周波数領域における振幅が一点鎖線で表されるしきい振幅値を超えているため、ガイドの経年劣化が生じていると判定され、右下がりの斜線で表される周波数領域における振幅値が二点鎖線で表されるしきい振幅値を超えているため、ボールねじの経年劣化が生じていると判定される。
【0024】
電源の異常は、例えば、以下のようにして検出される。コンピュータ152のみの作動状態と、コンピュータ152および連成切換ユニット126の両方の作動状態とにおいて、電源線の電圧と電流とが電圧/電流センサユニット142およびA/Dコンバータ144により検出され、データ記憶部200に記憶させられる。これら記憶された電圧値および電流値が、電圧/ 電流データベース202に予め記憶させられている電圧および電流の標準値と比較され、それらの差の絶対値が設定値を超えれば、電圧または電流の異常が検出される。
上記ヘッド移動装置58の異常や電源の電圧/電流の異常の有無や異常原因の推定結果が、通信部150を経て本体側制御部114に送信され、表示装置16に表示されることは他の異常についてと同様である。
【0025】
以上、請求可能発明の一実施例を詳細に説明したが、これは文字通り例示に過ぎず、請求可能発明は、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
その一部を具体的に述べれば、上に説明した実施例においては、あらゆる異常の診断のための情報の取得と、取得した情報に基づく診断との両方が診断ヘッド120の診断部140において行われるようにされていたが、診断の一部または全部が本体側制御部114において行われるようにすることも可能である。この場合には、圧力,電圧,電流,加速度等の検出値が通信部150,118を経て本体側制御部114に送られるようにする。
また、連成圧切換ユニット106およびそれの駆動回路が部品実装ヘッド56に設けられ、それに対応して連成圧切換ユニット126およびそれの駆動回路172も診断ヘッド120に設けられていた。吸着ノズル102に対する負圧および正圧の供給遅れを可及的に小さくする上で、連成圧切換ユニット106を部品実装ヘッド56に設けることが望ましいからであるが、連成圧切換ユニット106,126の駆動回路は本体側制御部114に設けて、共用としてもよい。実質的な遅れの問題は生じないからである。
【0026】
また、通信の異常に関しては、診断ヘッド120の通信部150とコンピュータ152との少なくとも一方に、通信部118から送られて来る信号や情報を受信して通信部118へ送り返す機能を持たせ、その送り返された信号や情報に基づいて本体側制御部114において通信異常の有無の診断が行われるようにすることも可能であり、その場合には、上記「通信部118から送られて来る信号や情報を受信し、通信部118へ送り返す機能」は、通信の異常診断のための情報を取得する情報取得部と考えることができる。
通信に関してはさらに、異常診断のための情報の取得と診断との両方が本体側制御部114において行われるようにすることも可能である。また、通信は勿論、あらゆる異常の診断のための情報がすべて統括制御制御装置に送られ、そこで診断が行われるようにすることも可能である。
【0027】
また、前記実施例においては、ヘッド移動装置58の可動部材自体がアダプタ60とされていた(アダプタが可動部材と一体的に構成されていたと考えることもできる)が、
図14に示すように、可動部材212とアダプタ214とを別体とし、アダプタ214をボルト216等の解除可能な締結手段により可動部材212に取り付けることも可能である。
さらに、実装ヘッドよりアダプタを大きくする等により、それらアダプタに診断部を保持させたままで、複数種類の実装ヘッドを選択的に保持させ得るようにし、それら複数種類の実装ヘッドに共通の診断部とすることも可能である。