【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、環境省、地球温暖化対策技術開発事業「既存住宅における断熱性向上のための薄型断熱内装建材に関する技術開発」委託契約業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
屋外空間と屋内空間とを区画する既存の壁体の屋内側の壁面の上端側及び下端側にそれぞれ沿わせるように略水平に上下の横桟木を設け、前記上側の横桟木の下面に、前記壁面に沿わせるように設けた複数の縦桟木の上端部をそれぞれに受け入れる複数の凹部を設け、これら上下の横桟木及び縦桟木の前面側に断熱パネルを固定した構造とされ、
前記縦桟木と前記上下の横桟木との上下の接合部の両方または一方に吸湿材を設けたことを特徴とする断熱パネルの固定構造。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1及び
図2は、第1実施形態に係る断熱パネルの固定構造の一例を模式的に示す図である。
本実施形態に係る断熱パネルの固定構造1は、
図1に示すように、屋外空間Aと屋内空間Bとを区画する既存の壁体2の屋内側の壁面2aの上端側及び下端側にそれぞれ沿わせるように略水平に上下の横桟木10,14を設けた構造とされている。
また、断熱パネルの固定構造1は、壁面2aに沿わせるように複数の縦桟木16を設け、これら上下の横桟木10,14及び縦桟木16の前面側に断熱パネル18を固定した構造とされている。
既存の壁体2としては、一般的な鉄骨造や、木造軸組構造、木造枠組壁構造等からなる壁体2としてもよい。
このような既存の壁体2は、
図2(a)に示すように、一般的に、その内部に、左右方向に所定の間隔(ピッチ)を隔てて壁下地としての間柱6(スタッド)等が設けられており、これら間柱6の屋内側(前面側)に、壁面2aを構成する石膏ボード等の壁面材が設けられた構造とされている。
【0011】
断熱パネル18は、略矩形平板状とされており、複数枚を横並びに隣接させて、既存の壁体2の壁面2aを略覆うように、壁面2aの左右方向の略全域に亘って配設されている。また、これら複数枚の断熱パネル18は、互いに略同幅寸法とされている。なお、壁体2の壁面2aの左右寸法に応じて、例えば、複数枚の断熱パネル18のうちの一枚の幅寸法を他の断熱パネル18の幅寸法と異ならせたものとしてもよい。
これら隣り合う断熱パネル18,18は、互いに向き合う側端部18a,18aを当接させるように配設されている。なお、これら隣り合う断熱パネル18,18は、互いに向き合う側端部18a,18a同士を密着させることが好ましいが、施工誤差や加工誤差等に起因して、これらの間に隙間が生じることが考えられ、
図1(a)及び
図4(a)では、この隙間を誇張して図示している。
また、これら断熱パネル18を、その上端面を天井3に当接させるように、かつ、その下端面を床4に当接させるように配設した例を示している。
【0012】
また、断熱パネル18は、例えば、表裏の面材と、これらの各対向面の四周端部に沿うように設けられた枠材と、これら四周枠材内に充填、収容された断熱材と、を備えた構造とされたものとしてもよい。
なお、断熱パネル18の表裏の面材や枠材としては、木質系材料や、石膏ボード等の無機質系材料等から形成されたものとしてもよい。
また、断熱パネル18の断熱材としては、各種フォーム系(発泡系)断熱材や繊維系断熱材等を採用してもよく、または、例えば、グラスファイバー等の繊維で芯材を形成し、その芯材を金属フィルム等の包装材で外装して真空吸引することにより形成された真空断熱材を採用してもよい。
【0013】
上桟木(上側の横桟木)10は、側面視略矩形状で比較的に長尺の略帯板状体とされている。また、上桟木10は、
図1(b)に示すように、その上面を天井3に当接または近接させるように配設されている。また、上桟木10は、壁体2の壁面2aの左右方向の略全幅に亘って配設されている。
また、上桟木10の下面(下桟木(下側の横桟木)14に対向する面)に、下桟木14側に向けて開口するように複数の凹部11を設けている。凹部11は、縦桟木16の上端部17を受け入れる構造とされ、その幅寸法(左右寸法)が縦桟木16の幅寸法(左右寸法)と略同寸法とされている。
また、これら凹部11は、上桟木10の下面に、当該上桟木10の長手方向に沿って略等間隔を空けて設けられている。本実施形態では、これら凹部11のそれぞれを、断熱パネル18の幅寸法に応じた間隔を空けて上桟木10に設けている。
下桟木14は、側面視略矩形状で比較的に長尺の略帯板状体とされている。また、下桟木14は、
図1(b)に示すように、その下面を床4に当接または近接させるように配設されている。また、下桟木14は、壁体2の壁面2aの左右方向の略全幅に亘って配設されている。
これら上桟木10及び下桟木14は、
図1(b)及び
図2(a)に示すように、釘やねじ等の固定止具5によって、上記のように既存の壁体2内に設けられた間柱6に対して固定するようにしてもよい。また、固定止具5に加えて、これら上桟木10及び下桟木14を、接着剤等によって壁体2の壁面2aに固定するようにしてもよい。また、これら上桟木10及び下桟木14は、壁体2の壁面2aの左右方向の幅寸法に応じた長さ寸法とされたものとしてもよく、または、複数本を左右に隣接させたものとしてもよい。
【0014】
縦桟木16は、平面視略矩形状で比較的に長尺の略帯板状体とされている。また、縦桟木16は、
図1(b)に示すように、既存の壁体2の壁面2aに沿うように、また、上下の横桟木10,14を接続するように設けられている。
縦桟木16は、その下端面を下桟木14の上面に当接させ、かつ、その上端部17を上桟木10の凹部11に嵌め込み、上下の横桟木10,14を接続するように配設されている。また、上桟木10に設けられた複数の凹部11のそれぞれに複数の縦桟木16のそれぞれの上端部を嵌め込み、これら縦桟木16を左右方向に略等間隔を空けて配設している。
なお、縦桟木16の上端面と凹部11の凹底面(下方に向く面)との間に、各桟木10,14,16の施工誤差や加工誤差等、または、これら各桟木10,14,16の固定対象に生じた不陸等に起因して間隙が生じることが考えられ、
図1、
図2(b)、
図3及び
図4では、この間隙を誇張して図示している。
【0015】
これら縦桟木16は、上記した壁体2の壁面材等に対して、接着剤やタッカー等を用いて固定するようにしてもよい。
また、これら複数の縦桟木16、上桟木10及び下桟木14の厚さ寸法は、互いに略同寸法とされている。これら複数の縦桟木16、上桟木10及び下桟木14の厚さ寸法は、屋内空間を有効利用する観点や、後記するように断熱パネル18の固定対象となる上下の桟木10,14に対する固定止具5の保持強度の観点等から適宜、設定するようにしてもよい。例えば、このような観点等から、これら複数の縦桟木16、上桟木10及び下桟木14の厚さ寸法を、一般的な壁下地としての胴縁等よりも薄い3mm〜20mm程度、好ましくは、3mm〜10mm程度としてもよい。
また、これら縦桟木16、上桟木10及び下桟木14は、木質系材料や合成樹脂系材料等から形成されたものとしてもよい。
【0016】
このような構造とされた上下の横桟木10,14及び縦桟木16の前面側に複数枚の断熱パネル18を固定している。これら断熱パネル18は、
図1(b)に示すように、その裏面を上下の横桟木10,14及び縦桟木16の前面に当接させ、釘やねじ等の固定止具5によって、上下の横桟木10,14に対して固定してもよい。また、固定止具5に加えて、これら断熱パネル18を、接着剤等によって上下の横桟木10,14に固定するようにしてもよい。
また、本実施形態に係る断熱パネルの固定構造1では、複数枚の断熱パネル18,18を、上桟木10の各凹部11にそれぞれの上端部が受け入れられた複数の縦桟木16のそれぞれの前面側に、隣り合う断熱パネル18,18同士の側端部18a,18aを位置させるように、固定している。
【0017】
次に、上記構成とされた本実施形態に係る断熱パネルの固定構造1の施工手順の一例について説明する。
まず、
図2(a)に示すように、上下の横桟木10,14を、上記のように天井3及び床4にそれぞれ沿わせるように、既存の壁体2の壁面2aに沿わせて固定する。
次いで、
図2(b)に示すように、複数の縦桟木16を、上記のように、上桟木10の各凹部11にそれぞれの上端部17を嵌め込ませ、上下の横桟木10,14を接続するようにそれぞれ配設する。
次いで、複数枚の断熱パネル18,18を、
図1に示すように、上記のように、これら上下の横桟木10,14及び複数の縦桟木16の前面側に固定する。
【0018】
上記構成とされた本実施形態に係る断熱パネルの固定構造1によれば、既存の壁体2の屋内側に配設される断熱パネル18の施工性を向上させることができる。
つまり、屋外空間Aと屋内空間Bとを区画する既存の壁体2の屋内側の壁面2aの上端側及び下端側にそれぞれ沿わせるように略水平に上下の横桟木10,14を設け、これら上下の横桟木10,14を接続するように壁面2aに沿わせて複数の縦桟木16を設け、これら上下の横桟木10,14及び縦桟木16の前面側に断熱パネル18を固定した構造としている。従って、上下の横桟木10,14を既存の壁体2の間柱6に固定し、これら上下の横桟木10,14に断熱パネル18の上下端部を固定することができる。これにより、断熱パネル18を切断したり、捨て張り合板等を設ける必要がなく、断熱パネル18の施工性を向上させることができる。また、上下の横桟木10,14を接続するように縦桟木16を設けているので、縦桟木16がスペーサとなり、断熱パネル18の上下方向途中部位の変形等を抑制することができる。
なお、断熱パネル18は、上下の横桟木10,14に加えて、縦桟木16に対しても接着剤や固定止具等によって固定するようにしてもよい。これにより、断熱パネル18の安定性を向上させることができる。
【0019】
また、上桟木10の下面に、複数の縦桟木16の上端部17をそれぞれに受け入れる複数の凹部11を設けている。従って、これら凹部11に複数の縦桟木16の各上端部17を嵌め込むようにして、これら縦桟木16を施工することができ、これら縦桟木16の位置合わせを容易に行うことができ、施工性を向上させることができる。
また、これら凹部11によって、これら縦桟木16の上下端部と上下の横桟木10,14との間に間隙を生じ難くすることができる。つまり、このような凹部11を設けない場合には、上下の横桟木10,14と、縦桟木16の上下端部との間に、これら各桟木10,14,16の施工誤差や加工誤差等、または、これら各桟木10,14,16の固定対象に生じた不陸等に起因して間隙が生じることが考えられる。本実施形態によれば、縦桟木16の下端を下桟木14に当接させ、縦桟木16の上端部17を上桟木10の凹部11に嵌め込むように収容させることができるので、凹部11によって施工誤差や加工誤差等を吸収することができ、上記のような間隙を生じ難くすることができる。この結果、隣り合う断熱パネル18,18同士の接合部に隙間が生じているような場合にも、断熱パネル18の裏面側への水蒸気の流入を抑制することができ、断熱パネル18の裏面側における結露の発生を抑制することができる。
つまり、断熱パネル18,18同士の接合部に隙間が生じているような場合において、縦桟木16の上下端部と上下の横桟木10,14との間に間隙が生じているような場合には、桟木間の間隙を介して空気が対流し易くなることが考えられ、この結果、接合部の隙間から断熱パネル18の裏面側へ水蒸気が流入し易くなる。本実施形態によれば、断熱パネル18の裏面側の桟木間の間隙を生じ難くすることができるので、断熱パネル18の裏面側において空気の対流が生じ難くなり、断熱パネル18の裏面側への水蒸気の流入を生じ難くすることができる。
【0020】
また、本実施形態では、上桟木10の各凹部11を、各断熱パネル18の幅寸法に応じた間隔を空けて設け、これら凹部11に上端部17がそれぞれに受け入れられた縦桟木16の前面16a側に、隣り合う断熱パネル18,18同士の側端部18a,18aを位置させるように複数枚の断熱パネル18,18を固定している。つまり、縦桟木16の前面側に隣り合う断熱パネル18,18の接合部が位置することとなる。従って、断熱パネル18の幅方向両側端部18a,18aにそれぞれ応じた縦桟木16を設けた場合と比べて、構造の簡略化を図ることができる。また、例えば、縦桟木16を断熱パネル18の幅方向途中位置等に設けた場合と比べて、断熱パネル18の側端部18a,18aにおける浮きや変形等を抑制することができる。
また、隣り合う断熱パネル18,18の接合部の裏面側に縦桟木16が位置することとなるので、断熱パネル18,18間に隙間が生じているような場合にも、断熱パネル18の裏面側への水蒸気の流入をより効果的に抑制することができる。
【0021】
次に、本発明に係る他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図3は、第2実施形態に係る断熱パネルの固定構造の一例を模式的に示す図である。
なお、上記第1実施形態との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。
本実施形態に係る断熱パネルの固定構造1Aは、上下の横桟木10A,14Aの構造が、上記第1実施形態に係る断熱パネルの固定構造1とは主に異なる。
断熱パネルの固定構造1Aは、縦桟木16と上下の横桟木10A,14Aとの上下の接合部の両方または一方に吸湿材19を設けている。
図例では、縦桟木16と上下の横桟木10A,14Aとの上下の接合部の両方に吸湿材19,19をそれぞれに設けた例を示している。また、図例では、上下の横桟木10A,14Aに、それぞれ吸湿材19、19を設けた例を示している。
【0022】
上桟木10Aには、
図3(a)に示すように、それぞれの凹部11Aの凹底面(下方に向く面)側に、吸湿材19を収容させた吸湿材収容凹部12を設けている。
また、下桟木14Aには、その上面に、上方に向けて開口し、吸湿材19を収容させた吸湿材収容凹部15を複数設けている。これら吸湿材収容凹部15は、上桟木10Aのそれぞれの凹部11Aの直下に位置するように、下桟木14Aの長手方向に沿って互いに略等間隔を空けて設けられている。
【0023】
吸湿材19は、例えば、粒状の吸湿剤を、透湿性を有した袋状や箱状の収容体に充填、収容させた構成とされたものとしてもよい。このような粒状の吸湿剤としては、例えば、シリカゲルやゼオライト等の無機系吸湿剤や、合成高分子系吸湿剤等の有機系吸湿剤等を採用するようにしてもよい。また、吸湿剤としては、乾燥等させることで、再吸湿可能とされたものとしてもよい。また、吸湿剤としては、水蒸気を吸放湿可能としたものとしてもよい。
【0024】
上記構成とされた本実施形態に係る断熱パネルの固定構造1Aにおいても、上記第1実施形態と概ね同様の効果を奏する。
また、本実施形態では、縦桟木16と上下の横桟木10A,14Aとの上下の接合部の両方または一方に吸湿材19を設けている。従って、水蒸気が断熱パネル18の裏面側へ流入した場合でも、吸湿することができ、断熱パネル18の裏面側における結露の発生をより効果的に抑制することができる。
また、本実施形態においても、縦桟木16の前面側に隣り合う断熱パネル18,18の接合部を位置させている。つまりは、吸湿材19の前面側に、隣り合う断熱パネル18,18の接合部が位置することとなる。従って、上記のように、断熱パネル18,18間に隙間が生じているような場合において、縦桟木16と上下の横桟木10A,14Aとの上下の接合部のうちの吸湿材19が設けられた接合部を介して断熱パネル18の裏面側へ流入しようとする水蒸気をこの吸湿材19によって効果的に吸湿することができる。
また、上記した例では、上下の横桟木10A,14Aの両方に、それぞれ吸湿材19,19を設けている。従って、これら上下のそれぞれの吸湿材19,19によって水蒸気を吸湿することができ、断熱パネル18の裏面側における結露の発生をより効果的に抑制することができる。
【0025】
次に、本実施形態に係る断熱パネルの固定構造1Aの一変形例について、
図4を参照しながら説明する。
なお、上記した例との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。
本変形例では、上桟木10Bに設けられた凹部11Bの構造が、上記した例における凹部11Aとは主に異なる。
本変形例では、上桟木10Bの凹部11Bの左右内壁面に、互いに向き合う方向に開口するように、かつそれぞれに吸湿材19,19を収容させた吸湿材収容凹部13,13を設けている。
本変形例に係る断熱パネルの固定構造1Bによれば、上桟木10Bの凹部11Bに上端部17が嵌め込まれた縦桟木16の上端部17の左右両側に、吸湿材19,19をそれぞれに収容させた吸湿材収容凹部13,13が位置することとなる。従って、縦桟木16の左右両側の空間の一方側から、縦桟木16と上桟木10Bとの接合部を介して、他方側へ移動しようとする水蒸気を効果的に吸湿することができる。
【0026】
なお、本実施形態では、上下の横桟木10A(10B),14Aに吸湿材19を設けた例を示しているが、この態様に限定されず、縦桟木16の上端部17や下端部に吸湿材19を設けるようにしてもよい。また、この場合、縦桟木16の上端部17や下端部に、吸湿材19を収容させる吸湿材収容凹部を設けるようにしてもよい。
また、本実施形態では、縦桟木16と上下の横桟木10A(10B),14Aとの上下の接合部の両方に吸湿材19を設けた例を示しているが、この態様に限定されず、縦桟木16と上下の横桟木10A(10B),14Aとの上下の接合部のいずれか一方に吸湿材19を設けるようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、上桟木10,10A,10Bの凹部11,11A,11Bのそれぞれを、各断熱パネル18の幅寸法に応じた間隔を空けて設け、隣り合う断熱パネル18,18の接合部を、縦桟木16の前面側に位置させた例を示しているが、この態様に限定されない。例えば、上桟木10,10A,10Bの凹部11,11A,11Bのそれぞれを、各断熱パネル18の幅寸法とは異なる等間隔を空けて設けたり、または、互いに異なる間隔を空けて設けたりするようにしてもよい。このようなものでも、断熱パネル18の施工性を向上させることができ、また、断熱パネル18の裏面側における結露の発生を抑制することができる。