(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が、前記第2のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度及び前記第3のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも高い、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
前記第3のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が、前記第1のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度及び前記第2のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも低い、請求項1又は2に記載の合わせガラス用中間膜。
合わせガラス用中間膜に含まれている全てのポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、合わせガラス用中間膜に含まれている全ての可塑剤の含有量が30重量部以上、50重量部以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
周波数1Hzで測定した最も低温側に現れるtanδのピーク温度におけるtanδの最大値が0.8以上である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
合わせガラス用中間膜の厚み(mm)をTとしたときに、前記第1の層と前記第2の層の合計厚み(mm)が0.05T以上、0.4T以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
前記第1の層と前記第2の層の合計厚みの、前記第3の層と前記第4の層との合計厚みに対する比が、0.1以上、0.5以下である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、第1の層と第2の層と第3の層とを備える。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、3層以上の多層の積層構造を有することが好ましい。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、第1の層と第2の層と第3の層とが積層された積層構造を有することが好ましい。この場合に、本発明に係る合わせガラス用中間膜では、第1の層と第2の層と第3の層との積層順序は特に限定されない。本発明に係る合わせガラス用中間膜では、第1の層と第2の層と第3の層とは、ランダムに積層され、順序を問わず積層される。第1の層と第2の層と第3の層との積層順序がいずれの積層順序であっても、本発明の効果が得られる。
【0028】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、第1の層と第2の層と第3の層とがこの順で積層された積層構造(第1の層/第2の層/第3の層)を有していてもよく、第2の層と第1の層と第3の層とがこの順で積層された積層構造(第2の層/第1の層/第3の層)を有していてもよく、第1の層と第3の層と第2の層とがこの順で積層された構造(第1の層/第3の層/第2の層)を有していてもよい。なかでも、本発明に係る合わせガラス用中間膜は、第1の層と第2の層と第3の層とがこの順で積層された積層構造(第1の層/第2の層/第3の層)を有するか、又は第2の層と第1の層と第3の層とがこの順で積層された積層構造(第2の層/第1の層/第3の層)を有することが好ましい。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、第1の層と第2の層と第3の層とがこの順で積層された積層構造(第1の層/第2の層/第3の層)を有することがより好ましい。
【0029】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、第4の層をさらに備えることが好ましい。この場合に、本発明に係る合わせガラス用中間膜は、第1の層と第2の層と第3の層と第4の層とが積層された多層の積層構造を有することが好ましい。但し、第1の層と第2の層と第3の層と第4の層との積層順序は特に限定されない。本発明に係る合わせガラス用中間膜が第4の層をさらに備える場合には、第4の層と第1の層と第2の層と第3の層とがこの順で積層された積層構造(第4の層/第1の層/第2の層/第3の層)を有することが好ましい。なお、本発明に係る合わせガラス用中間膜は、第4の層を必ずしも備えていなくてもよい。
【0030】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより本発明を明らかにする。
【0031】
図1に、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを模式的に部分切欠断面図で示す。
【0032】
図1に示す中間膜5は、4層の積層構造を有する多層中間膜である。中間膜5は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜5は、合わせガラス用中間膜である。中間膜5は、第1の層1と第2の層2と第3の層3と第4の層4とを備える。中間膜5は、第4の層4と第1の層1と第2の層2と第3の層3とがこの順で積層された積層構造を有する。第1の層1の第1の表面1aに第4の層4が積層されており、第1の表面1aとは反対の第2の表面1bに第2の層2が積層されている。第2の層2の第1の表面2aに第1の層1が積層されており、第1の表面2aとは反対の第2の表面2bに第3の層3が積層されている。第1の層1及び第2の層2は、中間層であり、遮音層として主に機能する。第3の層3及び第4の層4は、保護層であり、本実施形態では表面層である。第1の層1は、第4の層4と第2の層2との間に挟み込まれており、第4の層4と第3の層3との間に配置されている。第2の層2は、第1の層1と第3の層3との間に挟み込まれており、第4の層4と第3の層3との間に配置されている。中間膜5は、第4の層4を必ずしも備えていなくてもよい。
【0033】
図2に、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を断面図で示す。
【0034】
図2に示す中間膜35は、4層の積層構造を有する多層中間膜である。中間膜35は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜35は、合わせガラス用中間膜である。中間膜35は、第1の層31と第2の層32と第3の層33と第4の層34とを備える。中間膜35は、第4の層34と第2の層32と第1の層31と第3の層33とがこの順で積層された積層構造を有する。第2の層32の第1の表面32aに第4の層34が積層されており、第1の表面32aとは反対の第2の表面32bに第1の層31が積層されている。第1の層31の第1の表面31aに第2の層32が積層されており、第1の表面31aとは反対の第2の表面31bに第3の層33が積層されている。第1の層31及び第2の層32は、中間層であり、遮音層として主に機能する。第3の層33及び第4の層34は、保護層であり、本実施形態では表面層である。第2の層32は、第4の層34と第1の層31との間に挟み込まれており、第4の層34と第3の層33との間に配置されている。第1の層31は、第2の層32と第3の層33との間に挟み込まれており、第4の層34と第3の層33との間に配置されている。中間膜35は、第4の層34を必ずしも備えていなくてもよい。
【0035】
図3に示す中間膜45は、3層の積層構造を有する多層中間膜である。中間膜45は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜45は、合わせガラス用中間膜である。中間膜45は、第1の層41と第2の層42と第3の層43とを備える。中間膜45は、第1の層41と第3の層43と第2の層42とがこの順で積層された積層構造を有する。第3の層43の第1の表面43aに第1の層41が積層されており、第1の表面43aとは反対の第2の表面43bに第2の層42が積層されている。第3の層43は、中間層である。第1の層41及び第2の層42は、遮音層として主に機能し、保護層であり、本実施形態では表面層である。第3の層43は、第1の層41と第2の層42との間に挟み込まれている。中間膜45は、第4の層をさらに備えていてもよい。この場合に、第4の層は、第1の層41の外側の表面41aに積層されていてもよく、第2の層42の外側の表面42aに積層されていてもよい。さらに、中間膜45は、第4の層と第5の層とをさらに備えていてもよい。この場合に、第4の層は第1の層41の外側の表面41aに積層されており、かつ第5の層は第2の層42の外側の表面42aに積層されていてもよい。
【0036】
上記第1の層は、第1のポリビニルアセタール樹脂と第1の可塑剤とを含む。上記第2の層は、第2のポリビニルアセタール樹脂と第2の可塑剤とを含む。上記第3の層は、第3のポリビニルアセタール樹脂と第3の可塑剤とを含む。上記第4の層は、第4のポリビニルアセタール樹脂と第4の可塑剤とを含む。上記第5の層は、第5のポリビニルアセタール樹脂と第5の可塑剤とを含む。上記第1の層の組成は、上記第2の層及び上記第3の層の組成と異なる。上記第1の層の組成は、上記第4の層の組成と異なることが好ましく、上記第5の層の組成と異なることが好ましい。上記第2の層の組成は、上記第1の層及び上記第3の層の組成と異なる。上記第2の層の組成は、上記第4の層の組成と異なることが好ましく、上記第5の層の組成と異なることが好ましい。上記第3の層の組成と上記第4,第5の層の組成とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。上記第1,第2,第3,第4,第5の層に上記第1,第2,第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂が含まれていることによって、各層間の接着力及び各層と合わせガラス構成部材との接着力が充分に高くなる。また、中間膜における表面層がポリビニルアセタール樹脂を含むことによって、中間膜と合わせガラス構成部材との接着力が充分に高くなる。例えば、中間膜5の場合に、第3,第4の層3,4に第3,第4のポリビニルアセタール樹脂が含まれていることによって、第3,第4の層3,4と合わせガラス構成部材との接着力が充分に高くなる。
【0037】
ここで、上記第1の層に含まれている上記第1の可塑剤100重量部に上記第1の層に含まれている上記第1のポリビニルアセタール樹脂8重量部を溶解させた第1の液を用いて測定される曇点をC1とする。上記第2の層に含まれている上記第2の可塑剤100重量部に上記第2の層に含まれている上記第2のポリビニルアセタール樹脂8重量部を溶解させた第2の液を用いて測定される曇点をC2とする。上記第3の層に含まれている上記第3の可塑剤100重量部に上記第3の層に含まれている上記第3のポリビニルアセタール樹脂8重量部を溶解させた第3の液を用いて測定される曇点をC3とする。上記第4の層に含まれている上記第4の可塑剤100重量部に上記第4の層に含まれている上記第4のポリビニルアセタール樹脂8重量部を溶解させた第4の液を用いて測定される曇点をC4とする。上記第5の層に含まれている上記第5の可塑剤100重量部に上記第5の層に含まれている上記第5のポリビニルアセタール樹脂8重量部を溶解させた第5の液を用いて測定される曇点をC5とする。
【0038】
言い換えれば、上記第1の層に含まれている上記第1のポリビニルアセタール樹脂及び上記第1の可塑剤は、上記第1の可塑剤100重量部に上記第1のポリビニルアセタール樹脂8重量部を溶解させた第1の液を用いて測定される曇点がC1である第1のポリビニルアセタール樹脂及び第1の可塑剤である。上記第2の層に含まれている上記第2のポリビニルアセタール樹脂及び上記第2の可塑剤は、上記第2の可塑剤100重量部に上記第2のポリビニルアセタール樹脂8重量部を溶解させた第2の液を用いて測定される曇点がC2である第2のポリビニルアセタール樹脂及び第2の可塑剤である。上記第3の層に含まれている上記第3のポリビニルアセタール樹脂及び上記第3の可塑剤は、上記第3の可塑剤100重量部に上記第3のポリビニルアセタール樹脂8重量部を溶解させた第3の液を用いて測定される曇点がC3である第3のポリビニルアセタール樹脂及び第3の可塑剤である。上記第4の層に含まれている上記第4のポリビニルアセタール樹脂及び上記第4の可塑剤は、上記第4の可塑剤100重量部に上記第4のポリビニルアセタール樹脂8重量部を溶解させた第4の液を用いて測定される曇点がC4である第4のポリビニルアセタール樹脂及び第4の可塑剤である。上記第5の層に含まれている上記第5のポリビニルアセタール樹脂及び上記第5の可塑剤は、上記第5の可塑剤100重量部に上記第5のポリビニルアセタール樹脂8重量部を溶解させた第5の液を用いて測定される曇点がC5である第5のポリビニルアセタール樹脂及び第5の可塑剤である。
【0039】
本発明の主な特徴は、上記第1,第2,第3の層が第1,第2,第3のポリビニルアセタール樹脂と第1,第2,第3の可塑剤とを含み、これらの第1,第2,第3の層が積層されており、更に上記曇点C1が10℃以下であり、上記曇点C2が上記曇点C1よりも5℃以上高く、上記曇点C3が上記曇点C1よりも50℃以上高くかつ上記曇点C2よりも高いことである。すなわち、本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上記曇点C1が10℃以下であり、上記曇点C2が上記曇点C1よりも5℃以上高く、上記曇点C3が上記曇点C1よりも50℃以上高くかつ上曇点C2よりも高くなるように、上記第1,第2,第3の層に含まれている上記第1,第2,第3のポリビニルアセタール樹脂と上記第1,第2,第3の可塑剤とが選択されている。これによって、中間膜を用いた合わせガラスの高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡り高めることができる。特に、3kHzを超える高周波域での遮音性を効果的に高めることができる。
【0040】
また、上記第1の層と上記第2の層と上記第3の層とがこの順で積層されている場合に、本発明に係る合わせガラス用中間膜は、上記第1の層の外側の表面に積層されており、かつ第4のポリビニルアセタール樹脂と第4の可塑剤とを含む第4の層をさらに備えることが好ましい。さらに、上記第2の層と上記第1の層と上記第3の層とがこの順で積層されている場合に、本発明に係る合わせガラス用中間膜は、上記第2の層の外側の表面に積層されており、かつ第4のポリビニルアセタール樹脂と第4の可塑剤とを含む第4の層をさらに備えることが好ましい。上記曇点C4は、上記曇点C1よりも50℃以上高くかつ上記曇点C2よりも高いことが好ましい。上記曇点C4と上記曇点C3とは同一であってもよく、異なっていてもよい。中間膜が、上記第1,第2,第3の層に加えて、このような上記第4の層をさらに備えることによって、中間膜を用いた合わせガラスの高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡りより一層高めることができる。また、上記第3,第4の層が表面層として存在することで、中間膜の取り扱い性も高くなる。
【0041】
また、上記第1の層と上記第3の層と上記第2の層とがこの順で積層されている場合に、本発明に係る合わせガラス用中間膜は、上記第1の層の外側の表面に積層されており、かつ第4のポリビニルアセタール樹脂と第4の可塑剤とを含む第4の層と、上記第2の層の外側の表面に積層されており、第5のポリビニルアセタール樹脂と第5の可塑剤とを含む第5の層とをさらに備えることが好ましい。上記曇点C4は、上記曇点C1よりも50℃以上高くかつ上記曇点C2よりも高く、上記曇点C5は、上記曇点C1よりも50℃以上高くかつ上記曇点C2よりも高いことが好ましい。上記曇点C4と上記曇点C3とは同一であってもよく、異なっていてもよい。上記曇点C5と上記曇点C3とは同一であってもよく、異なっていてもよい。上記曇点C4と上記曇点C5とは同一であってもよく、異なっていてもよい。中間膜が、上記第1,第2,第3の層に加えて、このような上記第4,第5の層をさらに備えることによって、中間膜を用いた合わせガラスの高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡りより一層高めることができる。また、上記第4,第5の層が表面層として存在することで、中間膜の取り扱い性も高くなる。
【0042】
合わせガラスの高周波域での遮音性をより一層高める観点からは、上記曇点C1は、好ましくは5℃以下、より好ましくは0℃以下、更に好ましくは−5℃以下、特に好ましくは−10℃以下である。上記曇点C1が低いと、合わせガラスの高周波域での遮音性をより一層高めることができる。上記曇点C1の下限は特に限定されない。
【0043】
合わせガラスの高周波域での遮音性をより一層高める観点からは、上記曇点C2は、上記曇点C1よりも10℃以上高いことが好ましく、20℃以上高いことがより好ましい。合わせガラスの高周波域での遮音性をより一層高める観点からは、上記曇点C2は、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは30℃以上、特に好ましくは40℃以上、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
【0044】
合わせガラスの高周波域での遮音性をより一層高める観点からは、上記曇点C3、上記曇点C4及び上記曇点C5はそれぞれ、上記曇点C2よりも50℃以上高いことが好ましい。
【0045】
合わせガラスの高周波域での遮音性をより一層高める観点からは、上記曇点C3、上記曇点C4及び上記曇点C5はそれぞれ、上記曇点C1よりも60℃以上高いことが好ましく、80℃以上高いことがより好ましく、100℃以上高いことが更に好ましく、120℃以上高いことが特に好ましい。合わせガラスの高周波域での遮音性をより一層高める観点からは、上記曇点C3、上記曇点C4及び上記曇点C5はそれぞれ、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上である。上記曇点C3、上記曇点C4及び上記曇点C5の上限は特に限定されない。上記曇点C3、上記曇点C4及び上記曇点C5は好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である。
【0046】
上記曇点は、JIS K2269に準拠して測定される。上記曇点は、JIS K2267「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」に準拠して測定される曇点である。上記ポリビニルアセタール樹脂及び上記可塑剤を用いて測定される曇点は、具体的には、可塑剤3.5g(100重量部)と、ポリビニルアセタール樹脂0.28g(8重量部)とを用意し、試験管(直径2cm)内で、該可塑剤3.5g(100重量部)と、該ポリビニルアセタール樹脂0.28g(8重量部)とを混合し、該ポリビニルアセタール樹脂を溶解させた溶液を150℃に加熱した後、試験管を−20℃の雰囲気下に放置して溶液の温度を−15℃まで降下させるか、又は試験管を−196℃の雰囲気に放置して溶液の温度を可塑剤の流動点温度まで硬化させたときに、この溶液の一部に曇りが発生し始める温度を意味する(第1の曇点の判定方法)。曇点が低いほど、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高いことを表す。なお、試験管を−20℃の雰囲気下に放置して溶液の温度を−15℃まで降下させて溶液の一部に曇りが発生し始める場合には、試験管を−196℃ではなく−20℃の雰囲気に放置する。
【0047】
なお、上記溶液の温度を、上記可塑剤の流動点温度まで降下させても、上記溶液の一部に曇りが発生しないことがある。この場合には、上記曇点は、0℃よりもかなり低い温度であると判定される。さらに、この場合には、上記ポリビニルアセタール樹脂と上記可塑剤との相溶性はかなり高いことを意味する。
【0048】
従って、上記曇点C1を評価する際には、第1の層に含まれている第1のポリビニルアセタール樹脂8重量部と、第1の層に含まれている第1の可塑剤100重量部とを用意した後、該第1の可塑剤100重量部に該第1のポリビニルアセタール樹脂8重量部を溶解させた第1の液が用いられる。上記曇点C2,C3,C4,C5を評価する際には、上記曇点C1と同様にして調製された第2,第3,第4,第5の液が用いられる。
【0049】
上記溶液の一部に曇りが発生し始める温度(曇点)の測定方法としては、例えば、溶液の外観を目視で観察する方法、溶液のヘーズをヘーズメーターで測定する方法、並びにあらかじめ曇りに関する複数段階の限度見本を作製しておき、この限度見本と対照して曇りを判定する方法等が挙げられる。なかでも、溶液の外観を目視で観察する方法が好ましい。溶液のヘーズをヘーズメーターで測定する場合には、ヘーズが10%以上となる温度を曇点とする。
【0050】
また、上記ポリビニルアセタール樹脂及び上記可塑剤を用いて測定される曇点は可塑剤3.5g(100重量部)と、ポリビニルアセタール樹脂0.28g(8重量部)とを用意し、試験管(直径2cm)内で、該可塑剤3.5g(100重量部)と、該ポリビニルアセタール樹脂0.28g(8重量部)とを混合し、該可塑剤に該ポリビニルアセタール樹脂を溶解させた溶液を150℃に加熱し、次に所定の温度の恒温室内に試験管を1時間放置した後、該恒温室の温度を保持して試験管内の溶液のヘーズをヘーズメーターで測定した場合に、ヘーズが10%以上であるか否かによっても判断できる(第2の曇点の判定方法)。例えば、5℃単位で温度を変えた恒温室内(例えば、0℃付近の曇点を判定する場合には、5℃、0℃及び−5℃の恒温室内)に試験管を1時間放置した後、該恒温室の温度を保持して試験管内の溶液のヘーズをヘーズメーターで測定することにより、ヘーズが10%以上を示した温度を測定してもよい。5℃単位で温度を変えた恒温室内に試験管を1時間放置した後、該恒温室の温度を保持して試験管内の溶液のヘーズをヘーズメーターで測定した際に、ヘーズが10%未満であることが好ましい。
【0051】
本発明では、上記曇点は、上記第1の曇点の判定方法で判定されてもよく、上記第2の曇点の判定方法で判定されてもよい。上記第1の曇点の判定方法で判定されることが好ましいが、曇点をより一層精度良く特定することなどを目的として上記第2の曇点の判定方法も採用可能である。
【0052】
以下、本発明に係る合わせガラス用中間膜を構成する第1,第2,第3,第4,第5の層の詳細、並びに該第1,第2,第3,第4,第5の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤の詳細を説明する。
【0053】
(ポリビニルアセタール樹脂)
上記第1の層は、第1のポリビニルアセタール樹脂を含む。上記第2の層は、第2のポリビニルアセタール樹脂を含む。上記第3の層は、第3のポリビニルアセタール樹脂を含む。上記第4の層は、第4のポリビニルアセタール樹脂を含む。上記第5の層は、第5のポリビニルアセタール樹脂を含む。なお、上記第1,第2,第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、上記第1の層が2種以上の第1のポリビニルアセタール樹脂を含む場合に、上記曇点C1を測定する際の「第1のポリビニルアセタール樹脂8重量部」は、2種以上の第1のポリビニルアセタール樹脂を、上記第1の層に含まれている重量比で合計8重量部となるように配合して得られる。上記第2,第3,第4,第5の層が2種以上の第2,第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂を含む場合についても、「第2のポリビニルアセタール樹脂8重量部」、「第3のポリビニルアセタール樹脂8重量部」、「第4のポリビニルアセタール樹脂8重量部」及び「第5のポリビニルアセタール樹脂8重量部」の意味は、「第1のポリビニルアセタール樹脂8重量部」の意味と同様である。
【0054】
上記第1,第2,第3,第4,第5の層に含まれている上記第1,第2,第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂は、上記曇点C1,C2,C3,C4,C5の上記関係を満たす樹脂であれば特に限定されない。
【0055】
上記第1,第2,第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70〜99.8モル%である。
【0056】
上記第1,第2,第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂を得るための上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは1600以上、特に好ましくは2600以上、最も好ましくは2700以上、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3500以下である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、中間膜の成形が容易になる。
【0057】
合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、2700以上、5000以下であることが特に好ましい。
【0058】
上記第1,第2,第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂に含まれているアセタール基の炭素数は特に限定されない。上記第1,第2,第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂を製造する際に用いるアルデヒドは特に限定されない。上記第1,第2,第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は3〜5であることが好ましく、3又は4であることがより好ましい。上記第1,第2,第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数が3以上であると、中間膜のガラス転移温度が充分に低くなり、低温における固体音の遮音性がより一層高くなる。
【0059】
上記アルデヒドは特に限定されない。上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドがより好ましく、n−ブチルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0060】
上記第1のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率(水酸基量)は、0モル%以上であり、好ましくは40モル%以下である。上記第1のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、0モル%であってもよい。上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。合わせガラスの高周波域での遮音性をより一層高める観点からは、上記第1のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、より好ましくは35モル%以下、更に好ましくは30モル%以下、特に好ましくは25モル%以下である。合わせガラスの高周波域での遮音性をより一層高める観点からは、上記第1のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は低いほどよい。
【0061】
上記第2のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは10モル%以上、好ましくは50モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、可塑剤のブリードアウトが生じ難くなる。さらに、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、合わせガラスの高周波域での遮音性がより一層高くなる。合わせガラスの高周波域での遮音性をより一層高める観点からは、上記第2のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、より好ましくは15モル%以上、より好ましくは40モル%以下である。上記第2のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、更に好ましくは20モル%以上、更に好ましくは35モル%以下、特に好ましくは30モル%以下である。
【0062】
上記第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率(水酸基量)はそれぞれ、好ましくは20モル%以上、好ましくは50モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、可塑剤のブリードアウトが生じ難くなる。さらに、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。合わせガラスの高周波域での遮音性をより一層高める観点からは、上記第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率はそれぞれ、より好ましくは25モル%以上、より好ましくは45モル%以下である。上記第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率はそれぞれ、更に好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以下、特に好ましくは35モル%以下である。
【0063】
上記第1,第2,第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠して、又はASTM D1396−92に準拠して測定することにより求めることができる。
【0064】
上記第1のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度(アセチル基量)は、0モル%以上であり、好ましくは50モル%以下である。上記第1のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は、0モル%であってもよい。合わせガラスの高周波域での遮音性をより一層高める観点からは、上記第1のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度(アセチル基量)は、より好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは15モル%以上、より好ましくは45モル%以下である。上記第1のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は30モル%以下であってもよい。合わせガラスの遮音性をより一層高めるために、上記第1のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は30モル%を超えることが好ましい。
【0065】
上記第2のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は、0モル%以上であり、好ましくは30モル%以下である。上記第2のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は、0モル%であってもよい。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜の強度が高くなり、機械物性が向上する。合わせガラスの高周波域での遮音性をより一層高める観点からは、上記第2のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は、より好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、好ましくは15モル%未満、より好ましくは12モル%以下である。また、上記第2のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が3モル%未満であると、中間膜の機械物性がより一層向上する。この結果、合わせガラスの耐貫通性をより一層向上できる。
【0066】
上記第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度はそれぞれ、0モル%以上であり、好ましくは10モル%以下である。上記第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度はそれぞれ、0モル%であってもよい。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜の強度が高くなり、機械物性が向上する。合わせガラスの高周波域での遮音性をより一層高める観点からは、上記第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度はそれぞれ、より好ましくは8モル%以下、更に好ましくは5モル%未満、特に好ましくは3モル%未満である。上記第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度はそれぞれ、より好ましくは0.1モル%以上、特に好ましくは2モル%以下である。また、上記第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が3モル%未満であると、中間膜の機械物性がより一層向上する。この結果、合わせガラスの耐貫通性をより一層向上できる。
【0067】
合わせガラスの高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡りより一層高める観点からは、上記第1のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は、上記第2のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度及び上記第3のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも高いことが好ましい。第4の層が備えられる場合には、上記第1のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は、上記第2のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度、上記第3のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度及び上記第4のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも高いことが好ましい。上記第5の層が備えられる場合には、上記第1のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は、上記第5のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも高いことが好ましい。合わせガラスの高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡りさらに一層高める観点からは、上記第1のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は、上記第2,第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも4モル%以上高いことが好ましく、7モル%以上高いことがより好ましい。
【0068】
合わせガラスの高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡りより一層高める観点からは、上記第3のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は、上記第1のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度及び上記第2のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも低いことが好ましい。上記第4の層が備えられる場合には、上記第3のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度及び上記第4の層のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度はそれぞれ、上記第1のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度及び上記第2の層のアセチル化度よりも低いことが好ましい。上記第5の層が備えられる場合には、上記第5の層のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は、上記第1のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度及び上記第2の層のアセチル化度よりも低いことが好ましい。合わせガラスの高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡りさらに一層高める観点からは、上記第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は、上記第1,第2のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも5モル%以上低いことが好ましく、10モル%以上低いことがより好ましい。
【0069】
上記第1の層に含まれている上記第1のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が15モル%以上であり、上記第2の層に含まれている上記第2のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が5モル%以上、15モル%未満であり、上記第3の層に含まれている上記第3のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が5モル%未満であることが好ましい。第4の層が備えられる場合に、上記第1の層に含まれている上記第1のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が15モル%以上であり、上記第2の層に含まれている上記第2のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が5モル%以上、15モル%未満であり、上記第3の層に含まれている上記第3のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が5モル%未満であり、上記第4の層に含まれている上記第4のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が5モル%未満であることが好ましい。この場合には、合わせガラスの高周波域での遮音性が広い温度範囲に渡りより一層高くなる。
【0070】
上記アセチル化度は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。上記アセタール基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して又はASTM D1396−92に準拠して測定できる。
【0071】
上記第1のポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合はブチラール化度)は、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上、好ましくは80モル%以下、より好ましくは75モル%以下、更に好ましくは65モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、第1のポリビニルアセタール樹脂と第1の可塑剤との相溶性が高くなり、ブリードアウトを抑制できる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、第1のポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0072】
上記第2のポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合はブチラール化度)は、好ましくは45モル%以上、より好ましくは50モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは80モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、第2のポリビニルアセタール樹脂と第2の可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、第2のポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0073】
上記第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合はブチラール化度)は、好ましくは55モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは63モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは75モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂と第3,第4,第5の可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、第3,第4,第5のポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0074】
上記アセタール化度は、アセタール基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。
【0075】
上記アセタール化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法又はASTM D1396−92に準拠した方法により、アセチル化度(アセチル基量)と水酸基の含有率(ビニルアルコール量)とを測定し、得られた測定結果からモル分率を算出し、次いで、100モル%からアセチル化度と水酸基の含有率とを差し引くことにより算出され得る。
【0076】
なお、ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合には、上記アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」またはASTM D1396−92に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。ASTM D1396−92に準拠した方法により測定することが好ましい。
【0077】
(可塑剤)
上記第1の層は第1の可塑剤を含む。上記第2の層は第2の可塑剤を含む。上記第3の層は第3の可塑剤を含む。上記第4の層は第4の可塑剤を含む。上記第5の層は上記第5の可塑剤を含む。上記第1,第2,第3,第4,第5の可塑剤はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、第1,第2,第3,第4,第5の可塑剤は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、上記第1の層が2種以上の第1の可塑剤を含む場合に、上記曇点C1を測定する際の「第1の可塑剤100重量部」は、2種以上の第1の可塑剤を、上記第1の層に含まれている重量比で合計100重量部となるように配合して得られる。上記第2,第3,第4,第5の層が2種以上の第2,第3,第4,第5の可塑剤を含む場合についても、「第2の可塑剤100重量部」、「第3の可塑剤100重量部」、「第4の可塑剤100重量部」及び「第5の可塑剤100重量部」の意味は、「第1の可塑剤100重量部」の意味と同様である。
【0078】
曇点C1,C2,C3,C4,C5が上述した関係を満足すれば、上記第1,第2,第3,第4,第5の可塑剤は特に限定されない。該第1,第2,第3,第4,第5の可塑剤として、従来公知の可塑剤を使用可能である。
【0079】
上記第1,第2,第3,第4,第5の可塑剤としては、例えば、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などのリン酸可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機エステル可塑剤が好ましい。上記第1,第2,第3,第4,第5の可塑剤はそれぞれ、液状の可塑剤であることが好ましい。
【0080】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル、並びにトリエチレングリコール又はトリプロピレングリコールと一塩基性有機酸とのエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、n−ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0081】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0082】
上記有機エステル可塑剤としては、特に限定されず、トリエチレングリコールジ−2−エチルプロパノエート、トリエチレングリコールジアセタート、トリエチレングリコールジ−n−プロパノエート、トリエチレングリコールジ−n−ブタノエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。
【0083】
上記有機リン酸可塑剤としては、特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0084】
合わせガラスの高周波域での遮音性をより一層高める観点からは、第1,第2,第3,第4,第5の層に含まれている上記第1,第2,第3,第4,第5の可塑剤はそれぞれ、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤を含むことが好ましい。
【0086】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数1〜10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn−プロピレン基を表し、pは2〜10の整数を表す。上記式(1)中のpは好ましくは3以上、好ましくは8以下である。
【0087】
合わせガラスの高周波域での遮音性をより一層高める観点からは、上記第1の層に含まれている上記第1の可塑剤は、下記式(1A)で表されるジエステル可塑剤を含むことが好ましい。また、上記第2,第3,第4,第5の可塑剤はそれぞれ、下記式(1A)で表されるジエステル可塑剤を含んでいてもよい。
【0089】
上記式(1A)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数2〜5の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn−プロピレン基を表し、pは2〜10の整数を表す。上記式(1A)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数2〜4の有機基であることが好ましい。上記式(1A)中のpは好ましくは3以上、好ましくは8以下である。
【0090】
中間膜及び合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、上記第2,第3,第4,第5の層に含まれている上記第2,第3,第4,第5の可塑剤はそれぞれ、下記式(1B)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。なお、第2,第3,第4,第5の可塑剤は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、上記第1の可塑剤は、下記式(1B)で表されるジエステル可塑剤を含んでいてもよい。
【0092】
上記式(1B)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数6〜10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn−プロピレン基を表し、pは2〜10の整数を表す。上記式(1B)中のR1及びR2の炭素数は好ましくは8以下である。上記式(1B)中のpは好ましくは3以上、好ましくは8以下である。
【0093】
上記第2,第3,第4,第5の可塑剤はそれぞれ、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、トリエチレングリコールジアセタート(3G1)、トリエチレングリコールジ−n−プロパノエート(3GE)及びトリエチレングリコールジ−n−ブタノエート(3GB)の内の少なくとも1種を含むことが好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、トリエチレングリコールジ−n−プロパノエート(3GE)及びトリエチレングリコールジ−n−ブタノエート(3GB)の内の少なくとも1種を含むことがより好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)及びトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)の内の少なくとも1種を含むことが更に好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)を含むことが特に好ましい。
【0094】
上記第1の層において、上記第1のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、上記第1の可塑剤の含有量(以下、含有量(1)と記載することがある)は、好ましくは25重量部以上、より好ましくは30重量部以上、更に好ましくは40重量部以上、特に好ましくは50重量部以上、好ましくは80重量部以下、より好ましくは70重量部以下、更に好ましくは60重量部以下である。上記第1の可塑剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、合わせガラスの高周波域での遮音性がより一層高くなる。また、上記第1の可塑剤の含有量が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記第1の可塑剤の含有量が上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層高くなる。
【0095】
上記第2の層において、上記第2のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、上記第2の可塑剤の含有量(以下、含有量(2)と記載することがある)は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、更に好ましくは30重量部以上、特に好ましくは40重量部以上、好ましくは90重量部以下、より好ましくは80重量部以下、更に好ましくは70重量部以下、特に好ましくは60重量部以下である。上記第2の可塑剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、合わせガラスの高周波域での遮音性がより一層高くなる。また、上記第2の可塑剤の含有量が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記第2の可塑剤の含有量が上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層高くなる。
【0096】
上記第3の層において、上記第3のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、上記第3の可塑剤の含有量(以下、含有量(3)と記載することがある)は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、更に好ましくは30重量部以上、好ましくは50重量部以下、より好ましくは45重量部以下、更に好ましくは40重量部以下である。上記第4の層において、上記第4のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、上記第4の可塑剤の含有量(以下、含有量(4)と記載することがある)は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、好ましくは50重量部以下、より好ましくは45重量部以下である。上記第5の層において、上記第5のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、上記第5の可塑剤の含有量(以下、含有量(5)と記載することがある)は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、好ましくは50重量部以下、より好ましくは45重量部以下である。上記第3,第4,第5の可塑剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、合わせガラスの高周波域での遮音性がより一層高くなる。上記第3,第4,第5の可塑剤の含有量が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記第3,第4,第5の可塑剤の含有量が上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層高くなる。
【0097】
合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、上記含有量(3)、含有量(4)及び含有量(5)はそれぞれ、上記含有量(1)よりも少ないことが好ましい。
【0098】
上記含有量(1)と上記含有量(3),(4),(5)との差はそれぞれ、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、更に好ましくは12重量部以上であり、好ましくは40重量部以下、より好ましくは35重量部以下、更に好ましくは30重量部以下である。上記含有量(1)と上記含有量(3),(4),(5)との差が上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなり、上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。なお、上記含有量(1)と上記含有量(3),(4),(5)との差とは、上記含有量(1)から上記含有量(3),(4),(5)を減算した数値である。
【0099】
合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、上記含有量(3)、含有量(4)及び含有量(5)はそれぞれ、上記含有量(2)よりも少ないことが好ましい。
【0100】
上記含有量(2)と上記含有量(3),(4),(5)との差はそれぞれ、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは25重量部以下ある。上記含有量(2)と上記含有量(3),(4),(5)との差が上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなり、上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。なお、上記含有量(2)と上記含有量(3),(4),(5)との差とは、上記含有量(2)から上記含有量(3),(4),(5)を減算した数値である。
【0101】
合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、上記含有量(2)は、上記含有量(1)よりも少ないことが好ましい。
【0102】
上記含有量(1)と上記含有量(2)との差は好ましくは1重量部以上、より好ましくは5重量部以上であり、好ましくは20重量部以下、より好ましくは15重量部以下である。上記含有量(1)と上記含有量(2)との差が上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなり、上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。なお、上記含有量(1)と上記含有量(2)との差とは、上記含有量(1)から上記含有量(2)を減算した数値である。
【0103】
上記第1,第2,第3の層に含まれている第1,第2,第3のポリビニルアセタール樹脂の合計100重量部に対して、上記第1,第2,第3の層に含まれている第1,第2,第3の可塑剤の合計含有量は好ましくは30重量部以上、好ましくは50重量部以下である。この場合には、合わせガラスの高周波域での遮音性が広い温度範囲に渡りより一層高くなる。
【0104】
上記第1,第2,第3,第4の層に含まれている第1,第2,第3,第4のポリビニルアセタール樹脂の合計100重量部に対して、上記第1,第2,第3,第4の層に含まれている第1,第2,第3,第4の可塑剤の合計の含有量は好ましくは30重量部以上、好ましくは50重量部以下である。この場合には、合わせガラスの高周波域での遮音性が広い温度範囲に渡りより一層高くなる。
【0105】
本発明に係る合わせガラス用中間膜に含まれている全てのポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、合わせガラス用中間膜に含まれている全ての可塑剤の含有量は好ましくは30重量部以上、より好ましくは35重量部以上、好ましくは50重量部以下、より好ましくは45重量部以下、更に好ましくは42重量部以下である。この場合には、合わせガラスの高周波域での遮音性が広い温度範囲に渡りより一層高くなる。
【0106】
なお、上記第1,第2,第3の層又は上記第1,第2,第3,第4の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂の合計の含有量及び可塑剤の合計の含有量を算出する際には、これらの成分の密度を考慮して含有量を算出する。また、中間膜に含まれている全てのポリビニルアセタール樹脂の含有量及び全ての可塑剤の含有量を算出する際には、これらの成分の密度を考慮して含有量を算出してもよい。
【0107】
(他の成分)
上記第1,第2,第3,第4,第5の層はそれぞれ、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、接着力調整剤、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0108】
(合わせガラス用中間膜)
合わせガラスの低温及び高周波域での遮音性をより一層高める観点からは、本発明に係る合わせガラス用中間膜の周波数1Hzで測定した最も低温側に現れるtanδのピーク温度は、0℃以下であることが好ましい。
【0109】
合わせガラスの高周波域での遮音性をより一層高める観点からは、周波数1Hzで測定した最も低温側に現れるtanδのピーク温度におけるtanδの最大値は、好ましくは0.8以上、より好ましくは1.15以上である。
【0110】
合わせガラスの高温及び高周波域での遮音性をより一層高める観点からは、周波数1Hzで測定した最も高温側に現れるtanδのピーク温度におけるtanδの最大値は、0.55以上であることが好ましい。
【0111】
なお、上記最低温側に現れるtanδのピーク温度、最も低温側に現れるtanδのピーク温度におけるtanδの最大値、及び、最も高温側に現れるtanδのピーク温度におけるtanδの最大値を測定する際には、合わせガラス用中間膜を23℃の環境下にて、1ヶ月保管した後に測定することが好ましい。
【0112】
上記第1の層の厚みは、0.02mm〜1.8mmの範囲内であることが好ましい。第1の層の厚みは、より好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.5mm以下である。このような好ましい厚みにすることにより、中間膜の厚みが厚くなりすぎず、かつ中間膜及び合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。
【0113】
上記第2の層の厚みは、0.03mm〜1.2mmの範囲内であることが好ましい。第2の層の厚みは、より好ましくは0.04mm以上、より好ましくは0.5mm以下である。このような好ましい厚みにすることにより、中間膜の厚みが厚くなりすぎず、かつ中間膜及び合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。
【0114】
上記第3,第4,第5の層の厚みはそれぞれ、0.1mm〜1mmの範囲内であることが好ましい。上記第3,第4,第5の層の厚みは、より好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.5mm以下である。上記第3,第4,第5の層の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、中間膜の厚みが厚くなりすぎず、かつ中間膜及び合わせガラスの遮音性がより一層高くなり、更に可塑剤のブリードアウトを抑制できる。
【0115】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の厚みは、0.1〜3mmの範囲内であることが好ましい。中間膜の厚みは、より好ましくは0.25mm以上、より好ましくは1.5mm以下である。中間膜の厚みが上記下限以上であると、中間膜及び合わせガラスの耐貫通性が充分に高くなる。中間膜の厚みが上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層良好になる。
【0116】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の厚み(mm)をTとしたときに、上記第1の層と上記第2の層との合計厚み(第1の層の厚みT1+第2の層の厚みT2)(mm)は好ましくは0.05T以上、より好ましくは0.08T以上、好ましくは0.6T以下、より好ましくは0.4T以下である。
【0117】
上記第4の層が備えられる場合に、上記第1の層と上記第2の層との合計厚み(第1の層の厚みT1+第2の層の厚みT2)の、上記第3の層と上記第4の層との合計厚み(第3の層の厚みT3+第4の層の厚みT4)に対する比((T1+T2)/(T3+T4))は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.12以上、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下である。
【0118】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の製造方法は特に限定されない。該中間膜の製造方法として、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤と必要に応じて配合される他の成分とを混練し、中間膜を成形する製造方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。
【0119】
上記混練の方法は特に限定されない。この方法として、例えば、押出機、プラストグラフ、ニーダー、バンバリーミキサー又はカレンダーロール等を用いる方法が挙げられる。なかでも、連続的な生産に適しているため、押出機を用いる方法が好適であり、二軸押出機を用いる方法がより好適である。なお、本発明に係る合わせガラス用中間膜は、各層を別々に作製した後、各層を積層して多層中間膜を得てもよく、各層を共押出により積層して中間膜を得てもよい。
【0120】
(合わせガラス)
図4に、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜5を用いた合わせガラスの一例を断面図で示す。
【0121】
図4に示す合わせガラス11は、中間膜5と、第1,第2の合わせガラス構成部材21,22とを備える。中間膜5は、第1,第2の合わせガラス構成部材21,22の間に挟み込まれている。中間膜5の第1の表面5aに、第1の合わせガラス構成部材21が積層されている。中間膜5の第1の表面5aとは反対の第2の表面5bに、第2の合わせガラス構成部材22が積層されている。第4の層4の外側の表面4aに第1の合わせガラス構成部材21が積層されている。第3の層3の外側の表面3aに第2の合わせガラス構成部材22が積層されている。
【0122】
このように、本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス構成部材と、第2の合わせガラス構成部材と、該第1,第2の合わせガラス構成部材の間に挟み込まれた中間膜とを備えており、該中間膜として、本発明に係る合わせガラス用中間膜が用いられている。
【0123】
上記第1,第2の合わせガラス構成部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。上記合わせガラスには、2枚のガラス板の間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。
【0124】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス及びグリーンガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0125】
上記第1,第2の合わせガラス構成部材の厚みは特に限定されないが、1〜5mmの範囲内であることが好ましい。上記合わせガラス構成部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、1〜5mmの範囲内であることが好ましい。上記合わせガラス構成部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、0.03〜0.5mmの範囲内であることが好ましい。
【0126】
上記合わせガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、上記第1,第2の合わせガラス構成部材の間に、上記中間膜を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバックに入れて減圧吸引したりして、第1,第2の合わせガラス構成部材と中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70〜110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120〜150℃及び1〜1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。
【0127】
上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。上記中間膜は、建築用又は車両用の中間膜であることが好ましく、車両用の中間膜であることがより好ましい。上記合わせガラスは、建築用又は車両用の合わせガラスであることが好ましく、車両用の合わせガラスであることがより好ましい。上記中間膜及び上記合わせガラスは、電気モータを用いた電気自動車及び内燃機関と電気モータとを用いたハイブリッド電気自動車に好適に用いられる。上記合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。
【0128】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0129】
実施例及び比較例では、下記のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を用いた。ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度(ブチラール化度)、アセチル化度及び水酸基の含有率はASTM D1396−92に準拠した方法により測定した。なお、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」により測定した場合も、ASTM D1396−92に準拠した方法と同様の数値を示した。
【0130】
(ポリビニルアセタール樹脂)
ポリビニルアセタール樹脂a(ポリビニルブチラール樹脂、n−ブチルアルデヒドを使用、ブチラール化度54モル%、アセチル化度21モル%、水酸基の含有率25モル%)
ポリビニルアセタール樹脂b(ポリビニルブチラール樹脂、n−ブチルアルデヒドを使用、ブチラール化度56モル%、アセチル化度13モル%、水酸基の含有率31モル%)
ポリビニルアセタール樹脂c(ポリビニルブチラール樹脂、n−ブチルアルデヒドを使用、ブチラール化度68.5モル%、アセチル化度1モル%、水酸基の含有率30.5モル%)
ポリビニルアセタール樹脂d(ポリビニルブチラール樹脂、n−ブチルアルデヒドを使用、ブチラール化度64モル%、アセチル化度23モル%、水酸基の含有率13モル%)
ポリビニルアセタール樹脂e(ポリビニルブチラール樹脂、n−ブチルアルデヒドを使用、ブチラール化度45モル%、アセチル化度40モル%、水酸基の含有率15モル%)
【0131】
(可塑剤)
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)
トリエチレングリコールジ−n−プロパノエート(3GE)
トリエチレングリコールジ−n−ブタノエート(3GB)
【0132】
(実施例1)
ポリビニルアセタール樹脂a100重量部と、可塑剤(3GO)60重量部とをミキシングロールで充分に混練し、中間層Aを形成するための組成物を得た。
【0133】
ポリビニルアセタール樹脂b100重量部と、可塑剤(3GO)50重量部とをミキシングロールで充分に混練し、中間層Bを形成するための組成物を得た。
【0134】
ポリビニルアセタール樹脂c100重量部と、可塑剤(3GO)36重量部とを充分に混練し、表面層Cを形成するための組成物を得た。
【0135】
得られた中間層Aを形成するための組成物、中間層Bを形成するための組成物及び表面層Cを形成するための組成物を、共押出機を用いて成形し、表面層C(厚み0.375mm)/中間層A(厚み0.08mm)/中間層B(厚み0.04mm)/表面層C(厚み0.375mm)の4層の積層構造を有する多層中間膜(厚み0.87mm)を作製した。
【0136】
得られた中間膜を、縦30mm×横320mmに切り出した。次に、2枚の透明なフロートガラス(縦25mm×横305mm×厚み2.0mm)の間に中間膜を挟み込み、真空ラミネーターにて90℃で30分間保持し、真空プレスし、積層体を得た。積層体において、ガラスからはみ出た中間膜部分を切り落とし、合わせガラスを得た。
【0137】
(比較例1)
中間層A及び表面層Cに用いたポリビニルアセタール樹脂の種類、可塑剤の種類及び含有量、並びに中間層Aの厚みを下記の表1に示すように設定したこと、並びに中間層Bを設けなかったこと以外は実施例1と同様にして、3層の積層構造を有する多層中間膜を得た。
【0138】
(比較例2及び実施例2〜33)
中間層A、中間層B及び表面層Cに用いたポリビニルアセタール樹脂の種類、並びに可塑剤の種類及び含有量を下記の表1〜7に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、4層の積層構造を有する多層中間膜を得た。
【0139】
(評価)
(1)中間層Aに含まれているポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を用いて測定された曇点
(1−1)第1の曇点の判定方法による曇点
中間層Aで用いた可塑剤3.5g(100重量部)と、中間層Aで用いたポリビニルアセタール樹脂0.28g(8重量部)とを用意した。試験管(直径2cm)内で、該可塑剤3.5g(100重量部)と、該ポリビニルアセタール樹脂0.28g(8重量部)とを混合し、該可塑剤に該ポリビニルアセタール樹脂を溶解させた溶液を得た。この試験管内の溶液を150℃に加熱した後、試験管を−20℃の雰囲気下に放置して溶液の温度を−15℃まで降下させた。このときに、溶液の一部に曇りが発生し始める温度を目視で観察し、該温度を曇点とした。
【0140】
(1−2)第2の曇点の判定方法による曇点
中間層Aで用いた可塑剤3.5g(100重量部)と、中間層Aで用いたポリビニルアセタール樹脂0.28g(8重量部)とを用意した。試験管(直径2cm)内で、該可塑剤3.5g(100重量部)と、該ポリビニルアセタール樹脂0.28g(8重量部)とを混合し、該可塑剤に該ポリビニルアセタール樹脂を溶解させた溶液を得た。この試験管内の溶液を150℃に加熱し、125℃から−5℃まで5℃単位で温度を変えた恒温室内に試験管を1時間放置した後、該恒温室の温度を保持して試験管内の溶液のヘーズをヘーズメーターで測定した。ヘーズが10%以上を示した最大温度を曇点とした。なお、ヘーズは、ヘーズメーター(東京電色社製「TC−HIIIDPK」)を用いて、JIS K6714に準拠して測定した。
【0141】
この結果、上記第1の曇点の判定方法における曇点が−14℃又は流動点以下(曇点がかなり低い)である場合には、−5℃の恒温室内に試験管を1時間放置した後も、ヘーズが10%以上を示すことはなかった。上記第1の曇点の判定方法における曇点が18℃である場合には、20℃の恒温室内に試験管を1時間放置した後に、ヘーズが10%以上を示さなかったが、15℃の恒温室内に試験管を1時間放置した後に、ヘーズが10%以上を示した。
【0142】
(2)中間層Bに含まれているポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を用いて測定された曇点
(2−1)第1の曇点の判定方法による曇点
中間層Bで用いた可塑剤3.5g(100重量部)と、中間層Bで用いたポリビニルアセタール樹脂0.28g(8重量部)とを用意した。試験管(直径2cm)内で、該可塑剤3.5g(100重量部)と、該ポリビニルアセタール樹脂0.28g(8重量部)とを混合し、該可塑剤に該ポリビニルアセタール樹脂を溶解させた溶液を得た。この試験管内の溶液を150℃に加熱した後、試験管を−20℃の雰囲気下に放置して溶液の温度を−15℃まで降下させた。このときに、溶液の一部に曇りが発生し始める温度を目視で観察し、該温度を曇点とした。
【0143】
(2−2)第2の曇点の判定方法による曇点
中間層Bで用いた可塑剤3.5g(100重量部)と、中間層Bで用いたポリビニルアセタール樹脂0.28g(8重量部)とを用意した。試験管(直径2cm)内で、該可塑剤3.5g(100重量部)と、該ポリビニルアセタール樹脂0.28g(8重量部)とを混合し、該可塑剤に該ポリビニルアセタール樹脂を溶解させた溶液を得た。この試験管内の溶液を150℃に加熱し、125℃から−5℃まで5℃単位で温度を変えた恒温室内に試験管を1時間放置した後、該恒温室の温度を保持して試験管内の溶液のヘーズをヘーズメーターで測定した。ヘーズが10%以上を示した最大温度を曇点とした。なお、ヘーズは、ヘーズメーター(東京電色社製「TC−HIIIDPK」)を用いて、JIS K6714に準拠して測定した。
【0144】
この結果、上記第1の曇点の判定方法における曇点が18℃である場合には、20℃の恒温室内に試験管を1時間放置した後に、ヘーズが10%以上を示さなかったが、15℃の恒温室内に試験管を1時間放置した後に、ヘーズが10%以上を示した。上記第1の曇点の判定方法における曇点が55℃である場合には、60℃の恒温室内に試験管を1時間放置した後に、ヘーズが10%以上を示さなかったが、55℃の恒温室内に試験管を1時間放置した後に、ヘーズが10%以上を示した。
【0145】
(3)表面層Cに含まれているポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を用いて測定された曇点
(3−1)第1の曇点の判定方法による曇点
表面層Cで用いた可塑剤3.5g(100重量部)と、表面層Cで用いたポリビニルアセタール樹脂0.28g(8重量部)とを用意した。試験管(直径2cm)内で、該可塑剤3.5g(100重量部)と、該ポリビニルアセタール樹脂0.28g(8重量部)とを混合し、該可塑剤に該ポリビニルアセタール樹脂を溶解させた溶液を得た。この試験管内の溶液を150℃に加熱した後、試験管を−20℃の雰囲気下に放置して溶液の温度を−15℃まで降下させた。このときに、溶液の一部に曇りが発生し始める温度を目視で観察し、該温度を曇点とした。
【0146】
(3−2)第2の曇点の判定方法による曇点
中間層Cで用いた可塑剤3.5g(100重量部)と、中間層Cで用いたポリビニルアセタール樹脂0.28g(8重量部)とを用意した。試験管(直径2cm)内で、該可塑剤3.5g(100重量部)と、該ポリビニルアセタール樹脂0.28g(8重量部)とを混合し、該可塑剤に該ポリビニルアセタール樹脂を溶解させた溶液を得た。この試験管内の溶液を150℃に加熱し、125℃から−5℃まで5℃単位で温度を変えた恒温室内に試験管を1時間放置した後、該恒温室の温度を保持して試験管内の溶液のヘーズをヘーズメーターで測定した。ヘーズが10%以上を示した最大温度を曇点とした。なお、ヘーズは、ヘーズメーター(東京電色社製「TC−HIIIDPK」)を用いて、JIS K6714に準拠して測定した。
【0147】
この結果、上記第1の曇点の判定方法における曇点が124℃である場合には、125℃の恒温室内に試験管を1時間放置した後に、ヘーズが10%以上を示さなかったが、120℃の恒温室内に試験管を1時間放置した後に、ヘーズが10%以上を示した。
【0148】
(4)粘弾性測定
得られた中間膜を23℃の環境下にて1ヶ月保管した後に、中間膜を直径8mmの円形に切り抜き、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製「ARES」)を用いて、せん断法にて、歪み量1.0%及び周波数1Hzの条件で、昇温速度5℃/分で動的粘弾性の温度分散測定を行うことにより、最も低温側に現れるtanδのピーク温度、及び、最も低温側に現れるtanδのピーク温度におけるtanδの最大値を測定した。
【0149】
(5)損失係数
20℃の環境下にて1ヶ月保管した合わせガラスについて、測定装置「SA−01」(リオン社製)を用いて、10℃の条件で中央加振法により損失係数を測定した。得られた損失係数の共振周波数の6次モード(6300Hz付近)での損失係数(10℃損失係数)を評価した。
【0150】
また、20℃の環境下にて1ヶ月保管した合わせガラスについて、測定装置「SA−01」(リオン社製)を用いて、20℃の条件で中央加振法により損失係数を測定した。得られた損失係数の共振周波数の4次モード(6300Hz付近)での損失係数(20℃損失係数)を評価した。
【0151】
また、20℃の環境下にて1ヶ月保管した合わせガラスについて、測定装置「SA−01」(リオン社製)を用いて、30℃の条件で中央加振法により損失係数を測定した。得られた損失係数の共振周波数の6次モード(6300Hz付近)での損失係数(30℃損失係数)を評価した。
【0152】
また、20℃の環境下にて1ヶ月保管した合わせガラスについて、測定装置「SA−01」(リオン社製)を用いて、40℃の条件で中央加振法により損失係数を測定した。得られた損失係数の共振周波数の6次モード(6300Hz付近)での損失係数(40℃損失係数)を評価した。
【0153】
結果を下記の表1〜7に示す。なお、曇点が「流動点以下」である場合には、曇点がかなり低いことを示し、曇点は0℃よりもかなり低い温度である。