(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ルブリケーション液を塗布する場合に、このルブリケーション液を塗布する場所、位置が非常に重要であることが判ってきている。
例えば、ルブリケーション液を塗布する場所が、
図10に示すビー
ド部の径内端面(
図10の符号11で示す部位)だけであると、ルブリケーション液による潤滑が不十分となり、塗布後にユニフォミティ試験などを行う時にリムに対してタイヤを確実に嵌め込むことができなくなって、タイヤ試験の測定精度を悪化させる場合がある。そのため、ルブリケーション液を塗布する場所を広範囲にすることが好ましい。
【0007】
ところが、特許文献1や特許文献2のタイヤのルブリケータ装置は、タイヤの中央部に形成された空間に、タイヤの回転軸心と並行に塗布ローラを差し込み、その上で、塗布ローラをタイヤの径外側に移動させ、ビード部に塗布ローラを押し当てる構成となっているため、塗布ローラによるルブリケーション液の塗布は、ビー
ド部の径内端面(
図10の符号11)にしか及ばないこととなる。
【0008】
そのため、特許文献1や特許文献2のタイヤのルブリケータ装置では、垂直方向を向いて切り立ったビー
ド部の径内端面にルブリケーション液を塗布することはできても、ビード部の側方端面(ビード部の上下端面であって
図10の符号12で示す部位、リムガード部と呼ぶこともある)にルブリケーション液を塗布することはできず、潤滑が十分に行われない場合があった。
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、ビー
ド部だけでなくリムガード部に対してもルブリケーション液を塗布することができ、潤滑を十分に行った状態でタイヤ試験を高精度に行うことを可能とするタイヤのルブリケータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明のタイヤのルブリケータ装置は、上下軸心回りに回転するタイヤの上側のビー
ド部に接触してルブリケーション液を塗布する上側ローラブラシ部と、前記タイヤの下側のビー
ド部に接触してルブリケーション液を塗布する下側ローラブラシ部と、前記上側ローラブラシ部及び下側ローラブラシ部を、前記タイヤに対して接離自在に支持するルブリケータ本体と、前記上側ローラブラシ部及び下側ローラブラシ部を、前記タイヤに対して接離自在に移動させるブラシ移動手段と、を備えていて、前記ブラシ移動手段は、前記上側ローラブラシ部を下方に移動させつつ前記タイヤに近接させると共に、前記下側ローラブラシ部を上方に移動させつつ前記タイヤに近接させるリンク機構を有することを特徴とする。
【0011】
なお、好ましくは、前記ブラシ移動手段は、上側ローラブラシ部をルブリケータ本体に対して左右軸心回りに揺動自在に支持する上側揺動リンク部を備えており、当該上側揺動リンク部の揺動により前記上側ローラブラシ部をタイヤに近接させる構成とされているとよい。
なお、好ましくは、前記ブラシ移動手段は、下側ローラブラシ部をルブリケータ本体に対して左右軸心回りに揺動自在に支持する下側揺動リンク部を備えており、当該下側揺動リンク部の揺動により前記下側ローラブラシ部をタイヤに近接させる構成とされているとよい。
【0012】
なお、好ましくは、
前記ブラシ移動手段は、下側ローラブラシ部をルブリケータ本体に対して左右軸心回りに揺動自在に支持する下側揺動リンク部を備えており、当該下側揺動リンク部の揺動により前記下側ローラブラシ部をタイヤに近接させる構成とされていて、前記上側揺動リンク部を構成するリンク部材の基端側と下側揺動リンク部を構成するリンク部材の基端側とには、互いに噛合するギヤが設けられており、前記ギヤにより、前記上側揺動リンク部と下側揺動リンク部とは互いに異なる回転方向に向かって揺動可能とされているとよい。
【0013】
なお、好ましくは、前記上側ローラブラシ部には、当該上側ローラブラシ部にルブリケーション液を供給する上側配管が設けられていると共に、前記下側ローラブラシ部には、当該下側ローラブラシ部にルブリケーション液を供給する下側配管が設けられていて、前記上側ローラブラシ部と下側ローラブラシ部とは、独立にルブリケーション液を供給可能とされているとよい。
【0014】
なお、好ましくは、前記上側配管と下側配管とのそれぞれに、前記ルブリケーション液の供給量を調整する流量調整弁が設けられているとよい。
また、本発明に係るタイヤのルブリケータ装置の最も好ましい形態は、上下軸心回りに回転するタイヤの上側のビード部に接触してルブリケーション液を塗布する上側ローラブラシ部と、前記タイヤの下側のビード部に接触してルブリケーション液を塗布する下側ローラブラシ部と、前記上側ローラブラシ部及び下側ローラブラシ部を、前記タイヤに対して接離自在に支持するルブリケータ本体と、前記上側ローラブラシ部及び下側ローラブラシ部を、前記タイヤに対して接離自在に移動させるブラシ移動手段と、を備えていて、前記ブラシ移動手段は、前記上側ローラブラシ部を下方に移動させつつ前記タイヤに近接させると共に、前記下側ローラブラシ部を上方に移動させつつ前記タイヤに近接させるリンク機構を有し、前記ブラシ移動手段は、上側ローラブラシ部をルブリケータ本体に対して左右軸心回りに揺動自在に支持する上側揺動リンク部を備えており、当該上側揺動リンク部の揺動により前記上側ローラブラシ部をタイヤに近接させる構成とされていることを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明に係るタイヤのルブリケータ装置の最も好ましい形態は、上下軸心回りに回転するタイヤの上側のビード部に接触してルブリケーション液を塗布する上側ローラブラシ部と、前記タイヤの下側のビード部に接触してルブリケーション液を塗布する下側ローラブラシ部と、前記上側ローラブラシ部及び下側ローラブラシ部を、前記タイヤに対して接離自在に支持するルブリケータ本体と、前記上側ローラブラシ部及び下側ローラブラシ部を、前記タイヤに対して接離自在に移動させるブラシ移動手段と、を備えていて、前記ブラシ移動手段は、前記上側ローラブラシ部を下方に移動させつつ前記タイヤに近接させると共に、前記下側ローラブラシ部を上方に移動させつつ前記タイヤに近接させるリンク機構を有し、前記ブラシ移動手段は、下側ローラブラシ部をルブリケータ本体に対して左右軸心回りに揺動自在に支持する下側揺動リンク部を備えており、当該下側揺動リンク部の揺動により前記下側ローラブラシ部をタイヤに近接させる構成とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のタイヤのルブリケータ装置を用いることで、ビー
ド部だけでなくリムガード部に対してもルブリケーション液を塗布することができ、潤滑を十分に行った状態でタイヤ試験を高精度に行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のルブリケータ装置1は、ユニフォミティや動バランスといったタイヤ試験を行うタイヤ試験ライン2に設けられていて、タイヤ試験を行うタイヤTに対してルブリケーション液(潤滑剤)を塗布するものである。具体的には、ユニフォミティや動バランスなどのタイヤ試験は、タイヤTをタイヤ試験機50のリムに装着した状態で行われるため、タイヤTのリムへの装着に先だってルブリケーション液の塗布を行うのが好ましい。
【0019】
ルブリケーション液の塗布により、そのルブリケーション液にてリムなどが潤滑され、タイヤ試験時に、リムに対してタイヤTをスムーズに装着したり、リムからタイヤTをスムーズに脱着したりすることが可能となる。また、リムに対するタイヤTの装着状態が安定化し、同一の試験条件でタイヤ試験を行うことも可能となり、タイヤ試験を高精度に行うことも可能となる。そこで、タイヤ試験ライン2においては、本発明のようなルブリケータ装置を用いて予めタイヤTに対するルブリケーション液の塗布が行われる。
【0020】
以降では、本発明のルブリケータ装置1の説明に先立ち、まずルブリケータ装置1が設けられるタイヤ試験ライン2について詳しく説明する。
図1及び
図2に示すように、タイヤ試験ライン2には、タイヤTをタイヤ試験機50へ向けて移送するベルトコンベア5とタイヤ回転用のフリーローラコンベア3が設けられている。フリーローラコンベア3は、水平に敷設されていて、左右方向(
図1における上下方向)に距離をあけて1本ずつ備えられたコンベアレーン4、4から構成されている。
【0021】
これらのコンベアレーン4は、例えば左右方向を向く軸心回りに回転自在とされたフリーローラを水平方向に沿って多数並べたものである。そして、コンベアレーン4により、そのコンベアレーン4に載置されたタイヤTを横倒状態のまま水平に移動できるように構成されている。また、タイヤ試験ライン2には、左右に並んだ2本のコンベアレーン4、4のさらに内側に、コンベアレーン4に沿ってベルトコンベア5が左右1組設けられている。このベルトコンベア5は、コンベアレーン4に沿って無端ベルトをまわし掛けたものである。ベルトコンベア5の無端ベルトを巻回させることでこの無端ベルト及びコンベアレーン4上に載置されたタイヤTを前方に向かって水平方向に搬送できるように構成されている。
【0022】
さらに、タイヤ試験ライン2にはハンドリング機構6が備えられている。このハンドリング機構6は、フリーローラコンベア3に横倒状態で載置されたタイヤTに対して、前方左側、前方右側、後方左側、後方右側の4方向から把持ローラ7を近接させ、把持ローラ7を4方向からタイヤTの外周面に押し当てることでタイヤTをフリーローラコンベア3上の所定位置に位置させることができる。
【0023】
具体的には、このハンドリング機構6は、左側のコンベアレーン4のさらに左側に設けられた2本のアーム部材8a、8bを有している。さらに、ハンドリング機構6は、右側のコンベアレーン4のさらに右側に設けられた2本のアーム部材8c、8dを有している。つまり、ハンドリング機構6は、各コンベアレーン4の外側に2本のアーム部材8(合計4本のアーム部材)を有している。アーム部材8は、フリーローラコンベア3の略半幅程度の長さを有する長尺体である。
【0024】
各コンベアレーン4に隣接する外側には、上下方向に軸心を向けた回転軸部9がコンベアレーン4に沿って2つ設けられ、この回転軸部9に2本のアーム部材8の基端部がそれぞれ枢支されている。アーム部材8の先端部には、水平配置されたタイヤTのトレッド面を四方から挟み込むための把持ローラ7が備えられている。この把持ローラ7は、いずれも上下方向を向く軸回りに回転自在となるように取り付けられている。
【0025】
左側のコンベアレーン4に隣接する2本のアーム部材8a、8b(
図1の上側のアーム部材)の一方8aは、タイヤTの搬送方向に沿って前方を向き、アーム部材の他方8bは、タイヤTの搬送方向に沿って後方を向いている。右側のコンベアレーン4に隣接する2本のアーム部材8c、8d(
図1の下側のアーム部材)も同様である。
これら4つのアーム部材8a〜8dは、いずれも上下方向(
図1における紙面貫通方向)を向く回転軸心の回りを水平面に沿ってフリーローラコンベア3上を揺動できる。そして、アーム部材8の揺動に伴ってアーム部材8の先端に設けられた把持ローラ7をタイヤTの外周面に近接し、あるいはタイヤTの外周面から離反できる。この把持ローラ7は、いずれも上下方向を向く軸回りに回転自在となるように取り付けられている。フリーローラコンベア3上の所定位置に位置決めされたタイヤTは上下軸回りに自在に回転できる。
【0026】
このようにしてフリーローラコンベア3上の所定位置に位置決めされたタイヤTに対して、図示しないタイヤ回動手段を用いて回転駆動力を与えれば、フリーローラコンベア3上でタイヤTが回転する。そして、タイヤ試験ライン2では、回転するタイヤTに対して以降に詳述するルブリケータ装置1を用いてルブリケーション液の塗布が行われる。
本実施形態のタイヤのルブリケータ装置1は、ビー
ド部10の径内端面11だけでなく、ビード部10の側方端面(サイドウォールに続く面、以降、リムガード部12と呼ぶこともある)に対してもルブリケーション液を塗布することができるものである。ビー
ド部10の径内端面11、リムガード部12の具体的な位置は、
図10に示されている。
【0027】
本実施形態のルブリケータ装置1は、上述したタイヤ試験ライン2に設けられた左右のベルトコンベア5、5の間に配備されており、フリーローラコンベア3上に位置決めされたタイヤTと平面上で同じ位置に配備されている。また、ルブリケータ装置1は、潤滑を行わない場合にはフリーローラコンベア3上のタイヤ搬送面Hより下方に収容されており、潤滑を行う場合にタイヤ搬送面Hより上方に向かって上昇し、上昇した位置から前方に向かって後述する上側ローラブラシ部13や下側ローラブラシ部14を移動させられる。
【0028】
次に、
図3及び
図4を用いて、まずルブリケータ装置1の構成を説明する。
なお、この
図3は、上下のローラブラシ部13、14をタイヤT側に向かって移動させる前の状態におけるルブリケータ装置1の構造を示すものであり、
図4は、上下のローラブラシ部13、14をタイヤT側に向かって移動させた後での状態におけるルブリケータ装置1の構造を示すものである。
【0029】
図3及び
図4に示すように、本実施形態のタイヤのルブリケータ装置1は、上下軸心回りに回転するタイヤTの上側のビー
ド部10に接触してルブリケーション液を塗布する上側ローラブラシ部13と、タイヤTの下側のビー
ド部10に接触してルブリケーション液を塗布する下側ローラブラシ部14とを有している。さらに、ルブリケータ装置1は、上側ローラブラシ部13及び下側ローラブラシ部14を、タイヤに対して接離自在に支持するルブリケータ本体15と、上側ローラブラシ部13及び下側ローラブラシ部14を、タイヤTに対して接離自在に移動させるブラシ移動手段16と、を備えている。
【0030】
図3〜
図5(a)に示すように、上側ローラブラシ部13は、上下方向を向く軸回りに円筒状に形成されたブラシ体17と、上下方向を向く軸回りにこのブラシ体17を回転自在に支持するブラシフレーム18と、ブラシ体17にルブリケーション液を供給する供給部19とを備えている。
上側ローラブラシ部13を構成するブラシ体17は、上下方向に長尺な円筒体を有しており、この円筒体の外周面には、ルブリケーション液をタイヤTの表面に塗りつけるブラシ毛が全周に亘って植設されている。
【0031】
具体的には、ブラシ体17は、円環状(短尺な筒状)の外観を有するブラシリング20を、上下方向に沿って複数枚に亘って(本実施形態では14枚)積層させることにより、円筒体の形状に形成されている。
それぞれのブラシリング20の外周面には、可撓性を有するブラシ毛が全周に亘って植設されており、またブラシリング20の中央には上下方向にブラシリングを貫通する貫通孔21が形成されている。この貫通孔21にはシャフト22が上下方向に沿って挿通されており、このシャフト22により複数枚のブラシリング20を貫通状態で固定できる。
【0032】
なお、複数枚のブラシリング20の最も下側には、ブラシリング20がシャフト22から抜け落ちることを抑制する抜け止め部材23が設けられている。
上述したようにブラシ体17を複数枚のブラシリング20の積層体として構成すれば、摩耗などにより継続して使用できなくなったブラシリング20だけを交換すれば良く、ブラシ体17全体を一度に交換するのに比べて必要最小限の交換だけで済むため、ブラシ体17の交換にかかる費用や手間を大幅に削減することができる。
【0033】
上側ローラブラシ部13を構成するブラシフレーム18は、前後方向を向くと共に上下方向に沿って起立状に設けられた長方形の板に対して、この長方形の板の上端と下端とを前方に向かって直角に折り曲げたような形状(左右方向から見た側面視が略コ字状)の部材である。このブラシフレーム18の上端及び下端には、上下軸心回りに回転自在にブラシ体17のシャフト22を支持する軸受部24がそれぞれ設けられており、上述したブラシ体17はブラシフレーム18に上下軸心回りに回転自在に支持されている。このようにブラシ体17をブラシフレーム18で回転自在に支持すれば、ルブリケーション液を塗布する際にブラシ体17自体が回転し、ブラシ毛の摩耗を抑制することが可能となる。
【0034】
ルブリケーション液を供給する供給部19は、ルブリケーション液が貯留されたルブリケーション液タンク(図示略)などからルブリケーション液をブラシ体17に供給するものである。供給部19は、上述したブラシ体17の上側に配備されてルブリケーション液を散布する円盤状の散布部材25と、この散布部材25に対して上方からルブリケーション液を案内するルブリケーション配管26(上側配管)とを有している。散布部材25は、ルブリケーション液を流通できるように内部が空洞とされた部材であり、ブラシ体17に接する下面にルブリケーション液を散布する散布口を周方向に複数備えている。また、ルブリケーション配管26は、ブラシフレーム18の上端に設けられた軸受部24の上方から貫通し、さらにその軸受部24を上下方向に貫通するように設けられている。このルブリケーション配管26を介して、散布部材25の内部にルブリケーション液を直接供給できる。このようにして散布部材25の内部に供給されたルブリケーション液は、複数の散布口に分かれて分配されつつブラシ体17に供給される。ブラシ体17に供給されたルブリケーション液は、ブラシ毛の間を伝ってブラシ体17の内部にしみ込み、ルブリケーション液をブラシ体17の上下方向のほぼ全域に亘って均一に行き渡らせられる。
【0035】
図3〜
図5(a)に示すように、下側ローラブラシ部14も、上側ローラブラシ部13と同様に、上下方向を向く軸回りに円筒状に形成されたブラシ体27と、上下方向を向く軸回りにこのブラシ体27を回転自在に支持するブラシフレーム28と、ブラシ体27にルブリケーション液を供給する供給部29とを備えている。
この下側ローラブラシ部14は、上側ローラブラシ部13に比べて上下方向に短尺に形成されており、また下側ローラブラシ部14における各部材の配置は上側ローラブラシ部13の配置を上下方向に反転したような配置とされている。
【0036】
つまり、下側ローラブラシ部14ではルブリケーション液がブラシ体27の下方から供給されている。そして、ルブリケーション配管30(下側配管)はブラシフレーム28の下端に設けられた軸受部31を上下方向に貫通するように設けられていて、ブラシフレーム28のさらに下方から供給されたルブリケーション液を一旦ブラシフレーム28の上方まで導く。その後、このルブリケーション配管30を介して、ルブリケーション液をシャフト32内を通じさせてブラシ体27の下端から上端まで運んだ後、散布部材33の内部で分配しつつブラシ体27の上側から下側に向けて供給できるようになっている。
【0037】
なお、下側ローラブラシ部14に設けられるブラシ体27の抜け止め部材34は、上側ローラブラシ部13のものと同様に、ブラシ体27の下側に配備されて、複数枚(本実施形態では3枚)のブラシリング35が抜け落ちることを抑制している。
また、上側ローラブラシ部13に設けられるルブリケーション配管26と、下側ローラブラシ部14に設けられるルブリケーション配管30とには、それぞれの配管を流れるルブリケーション液の供給量を調整する流量調整弁(図示略)が設けられていても良い。このような流量調整弁を設ければ、上側ローラブラシ部13と下側ローラブラシ部14とにルブリケーション液をそれぞれ独立に供給して、それぞれのローラブラシ部13、14の潤滑状態を個別に調整することが可能となる。
【0038】
ルブリケータ本体15は、上下方向に沿って起立状に設けられた板状の部材である。このルブリケータ本体15の前面には、上述した上側ローラブラシ部13と下側ローラブラシ部14とが上下に並んで同軸上で取り付けられている。ルブリケータ本体15に対しては、後述するブラシ移動手段16を介して、上側ローラブラシ部13及び下側ローラブラシ部14が取り付けられている。
【0039】
また、ルブリケータ本体15の後面には、ルブリケータ本体15を上下方向に昇降させるエアーシリンダ37が配備されている。
ところで、本発明のルブリケータ装置1は、上述した上側ローラブラシ部13及び下側ローラブラシ部14を、タイヤTに対して接離自在に移動させるブラシ移動手段16を備えており、このブラシ移動手段16が上側ローラブラシ部13を下方に移動させつつタイヤTに近接させると共に、下側ローラブラシ部14を上方に移動させつつタイヤTに近接させるリンク機構で構成されている。
【0040】
本発明のルブリケータ装置1がこのようなリンク機構を採用するのは次のような理由からである。
つまり、ルブリケーション液を塗布する場合に、このルブリケーション液を塗布する場所がビー
ド部10の径内端面11(
図10参照)だけであると、ルブリケーション液による潤滑が不十分となり、タイヤ装着の不備を引き起こすだけでなくタイヤ試験の測定精度を悪化させる場合がある。そのため、本発明のルブリケータ装置1では、ビー
ド部10の径内端面11だけでなく、ビー
ド部10の上面や下面に設けられるリムガード部12(
図10参照)に対しても、ルブリケーション液を塗布できるようにしているのである。
【0041】
次に、本発明の特徴であるブラシ移動手段16、及びこのブラシ移動手段16を構成するリンク機構について詳しく説明する。
ブラシ移動手段16は、上側ローラブラシ部13と下側ローラブラシ部14とをタイヤTのビード部10に近接し、あるいは離反させるものである。そして、ブラシ移動手段16は、上側ローラブラシ部13をルブリケータ本体15に対して左右軸心回りに揺動自在に支持する上側揺動リンク部39と、下側ローラブラシ部14をルブリケータ本体15に対して左右軸心回りに揺動自在に支持する下側揺動リンク部40と、上側揺動リンク部39及び下側揺動リンク部40を揺動(駆動)させるリンク揺動シリンダ41とを有している。
【0042】
上側揺動リンク部39は、ルブリケータ本体15の前面の上側に取り付けられた上下一対のリンク部材42、43から構成されている。これら上下一対のリンク部材42、43は、長尺方向に互いに同じ長さを有する棒状の部材、言い換えれば、短尺の片状部材であり、上述した上側ローラブラシ部13のブラシフレーム18の上下方向長さよりやや短い間隔を上下方向にあけて配備されている。それぞれのリンク部材42、43は、長手方向の一端側(基端側)がルブリケータ本体15の前面に左右軸心回りに揺動自在に連結されている。また、リンク部材42、43の他端側(先端側)は、上側ローラブラシ部13のブラシフレーム18の側面に左右軸心回りに揺動自在に連結されていて、ルブリケータ本体15の前面に対して上側ローラブラシ部13を揺動自在に支持している。
【0043】
例えば、
図3に示すように上側ローラブラシ部13がルブリケータ本体15側に近接している状態(タイヤTから離間している状態)においては、上側揺動リンク部39のリンク部材42、43は上下方向を向き、ルブリケータ本体15に沿うように傾斜している。この状態において上側揺動リンク部39のリンク部材42、43を一端側(ルブリケータ本体15側)を中心に他端側(タイヤT側又は上側ローラブラシ部13側)を前方(
図3の矢印の方向)に揺動させれば、リンク部材42、43が水平方向を向くようになり、リンク部材42、43がルブリケータ本体15から起立するようになった分だけルブリケータ本体15から上側ローラブラシ部13までの距離が大きくなって、上側ローラブラシ部13がルブリケータ本体15に対して「下方に移動しながら前方突出する」ようになる。
【0044】
一方、
図4に示すように上側ローラブラシ部13がルブリケータ本体15から離間している状態(タイヤTに近接している状態)においては、上側揺動リンク部39のリンク部材42、43はルブリケータ本体15から起立する。
この状態においてリンク部材42、43を一端側(ルブリケータ本体15側)を中心に他端側(タイヤT側又は上側ローラブラシ部13側)を後方(
図4の矢印の方向)に揺動させれば、起立状態のリンク部材42、43がルブリケータ本体15に沿うように近づくこととなり、リンク部材42、43が寝た分だけルブリケータ本体15から上側ローラブラシ部13までの距離が小さくなって、上述した場合とは反対に上側ローラブラシ部13が上方に移動しながら後方に後退する。つまり、上述した上下一対のリンク部材42、43は、上側ローラブラシ部13を「下方に移動させつつタイヤTに近接」させたり、上側ローラブラシ部13を「上方に移動させつつタイヤTから離間」させたりするように移動させる上側のリンク機構を構成している。
【0045】
下側揺動リンク部40も、上側揺動リンク部39と同様に、ルブリケータ本体15の前面の下側に取り付けられた上下一対のリンク部材44、45から構成されている。この下側揺動リンク部40のリンク部材44、45は、上側揺動リンク部39のリンク部材44、45の取り付け位置の下側に並んで取り付けられている。
下側揺動リンク部40に設けられる上下一対のリンク部材44、45は、上側揺動リンク部39と同様に、長尺方向に互いに同じ長さを有し、ブラシフレーム28とほぼ同じ間隔を上下方向にあけて配備されている。これらのリンク部材44、45は、長手方向の一端側(基端側)がルブリケータ本体15の前面に左右軸心回りに揺動自在に連結されている。また、リンク部材44、45の他端側(先端側)は、上側ローラブラシ部13のブラシフレーム28の側面に左右軸心回りに揺動自在に連結されており、ルブリケータ本体15の前面に対して下側ローラブラシ部14を揺動自在に支持している。
【0046】
なお、下側揺動リンク部40の上側のリンク部材44は上側揺動リンク部39と同様に棒状であるが、下側のリンク部材45は三角形の板状とされている。この三角形の板状に形成されたリンク部材45は、3つの頂部のうち1つの頂部がルブリケータ本体15の前面に連結され、もう一つの頂部がブラシフレーム28の側面に連結され、残りの1つの頂部に後述するリンク揺動シリンダ41が連結されている。
【0047】
例えば、下側揺動リンク部40に関しても、
図3に示すように下側ローラブラシ部14がルブリケータ本体15側に近接している状態(タイヤTから離間している状態)を考える。この状態において下側揺動リンク部40に設けられるリンク部材44、45の一端側を中心に他端側を前方(
図3の矢印の方向)に揺動させれば、リンク部材44、45が起立状態になり、リンク部材44、45が前方に突出した分だけルブリケータ本体15から下側ローラブラシ部14までの距離が大きくなって、下側ローラブラシ部14が「上方に移動しながら前進」する。
【0048】
一方、リンク部材44、45の双方を一端側を中心に他端側を後方(
図4の矢印の方向)に揺動させれば、起立状態のリンク部材44、45がルブリケータ本体15に沿うように近づくことになり、リンク部材44、45が寝た分だけルブリケータ本体15から下側ローラブラシ部14までの距離が小さくなって、前方揺動の場合とは反対に下側ローラブラシ部14が「下方に移動しながら後方」に後退する。つまり、上述した下側揺動リンク部40に設けられるリンク部材44、45は、下側ローラブラシ部14を上方に移動させつつタイヤTに近接させたり、下側ローラブラシ部14を下方に移動させつつタイヤTから離間させたりするように移動させる下側のリンク機構を構成している。
【0049】
なお、上述した上側揺動リンク部39のリンク部材(下側のリンク部材43)の基端側と、下側揺動リンク部40のリンク部材(上側のリンク部材44)の基端側との間には、互いに噛合するギヤ47が設けられている。これらのギヤ47を噛合させて連結させることにより、上側揺動リンク部39と下側揺動リンク部40とは互いに異なる回転方向に向かって揺動可能とされ、ひいては、上側揺動リンク部39と下側揺動リンク部40が連動して動作する。
【0050】
例えば、
図3に示すように下側揺動リンク部40を上方に向かって回転させれば、上側揺動リンク部39は上述したギヤ47の作用により下側揺動リンク部40とは反対に下方に向かって回転する。また、
図4に示すように下側揺動リンク部40を下方に向かって回転させれば、上側揺動リンク部39は上述したギヤ47の作用により下側揺動リンク部40とは反対に上方に向かって回転する。
【0051】
リンク揺動シリンダ41は、上側揺動リンク部39及び下側揺動リンク部40を揺動させる駆動力を発生するものであり、本実施形態ではルブリケータ本体15の前面における下側揺動リンク部40のさらに下側に配備されている。つまり、本実施形態では、上述したギヤ47の作用により上側揺動リンク部39が下側揺動リンク部40に連動して揺動するため、図例のリンク揺動シリンダ41は下側揺動リンク部39だけを直接揺動する機構となっている。
【0052】
具体的には、リンク揺動シリンダ41は、上下方向に沿って伸縮自在なエアーシリンダから構成されており、図示しない圧力調整弁などを用いて供給されるエアーの圧力を調整することで伸縮自在となっている。このリンク揺動シリンダ41は、基端側がルブリケータ本体15に固定されると共に、先端側が下側揺動リンク部40の下側のリンク部材45に連結されており、リンク揺動シリンダ41を伸縮させると下側のリンク部材40が左右軸回りに回動し、下側揺動リンク部40を揺動させることができる。
【0053】
次に、上述した上側揺動リンク部39、下側揺動リンク部40、リンク揺動シリンダ41及びギヤ47から構成されるブラシ移動手段16を用いて、上側ローラブラシ部13及び下側ローラブラシ部14を移動させる方法、言い換えればタイヤTのルブリケーション方法を説明する。
まず、ルブリケータ装置1を用いてタイヤTにルブリケーション液を塗布する手順について説明する。
【0054】
図7に示すように、潤滑を行っていないときには、ルブリケータ装置1はフリーローラコンベア3上の搬送面Hより下方に収容されている。そして、上述したエアーシリンダ37は伸長しておらず、ルブリケータ本体15は下降位置に下降している。
このようにルブリケータ本体15が下降位置にあるエアーシリンダ37を伸長させると、ルブリケータ本体15がタイヤTとほぼ同じ高さまで上昇し、ルブリケータ本体15が
図8に示すような上昇位置まで上昇する。
【0055】
図8に示す上昇位置では、ルブリケータ本体15が上昇位置まで上昇しても、上側ローラブラシ部13や下側ローラブラシ部14はタイヤTのビー
ド部10から離れているため、ルブリケーション液を塗布することができない。そこで、次はブラシ移動手段16を用いて、上側ローラブラシ部13及び下側ローラブラシ部14をタイヤT側に近接させる。
つまり、リンク揺動シリンダ41を伸長させることで、
図3に示すように下側揺動リンク部40の動作により、下側ローラブラシ部14が上方に移動しながら前進する。一方、上述したギヤ47の作用により上側揺動リンク部39は下側揺動リンク部40とは反対に下方(
図3では時計方向)に回転し、上側ローラブラシ部13が下方に移動しながら前進する。その結果、ブラシ移動手段16により、上側ローラブラシ部13及び下側ローラブラシ部14が、それぞれ下方と上方とに移動しつつ上下に距離を縮め、それと同時にタイヤT側に移動(近接)し、
図8に示す状態から
図9に示す状態に変化する。
【0056】
このとき、
図6に拡大して示すように上側ローラブラシ部13のブラシ毛が上側のリムガード部12に覆い被さるようになり、上側ローラブラシ部13を用いて上側のビー
ド部10の径内端面11だけでなく上側のリムガード部12に対してもルブリケーション液を塗布することができる。また、図示はしないが、下側ローラブラシ部14のブラシ毛が下側のリムガード部12に下方から覆い被さるようになり、下側のビー
ド部10の径内端面11だけでなく下側のリムガード部12に対してもルブリケーション液を塗布することができる。
【0057】
次に、ルブリケータ装置1をタイヤTから離脱させる手順について説明する。
上側ローラブラシ部13や下側ローラブラシ部14をタイヤTから離間させる際には、リンク揺動シリンダ41を縮退させて、
図4に示すように下側揺動リンク部40を左右軸心回りに下方(
図4では時計方向)に回転させれば、下側ローラブラシ部14が下方に移動しながらタイヤT側から後退する。一方、上述したギヤ47の作用により上側揺動リンク部39は下側揺動リンク部40とは反対に上方(
図3では反時計方向)に回転し、上側ローラブラシ部13が上方に移動しながら後退する。その結果、ブラシ移動手段16により、上側ローラブラシ部13及び下側ローラブラシ部14が、それぞれ上方と下方とに移動しつつ上下に距離を広げ、それと同時にタイヤTから離間し、
図9に示す状態から
図8に示す状態に変化する。
【0058】
そして、上述したものとは逆の手順でルブリケータ本体15を搬送面Hの上方から下降させれば、ルブリケータ装置1は
図7の初期状態に戻り、ルブリケータ装置1をタイヤTから離脱させることが可能になる。
上述したように上下のローラブラシ部13、14をタイヤT側に近接させる際に、上側ローラブラシ部13を下方に移動させると共に下側ローラブラシ部14を上方に移動させれば、上下のローラブラシ部13、14の間にタイヤTのビー
ド部10が挟み込まれる。つまり、上側ローラブラシ部13が上側のリムガード部12を巻き込むように下方に移動し、上側のビー
ド部10の径内端面11だけでなく上側のリムガード部12に対してもルブリケーション液を塗布することができる。
【0059】
また、下側ローラブラシ部14が下側のリムガード部12を巻き込むように上方に移動させれば、下側のビー
ド部10の径内端面11だけでなく下側のリムガード部12に対してもルブリケーション液を塗布することができる。
それゆえ、上述したブラシ移動手段16を備えた本発明のルブリケータ装置1では、タイヤTのビー
ド部10の径内端面11やリムガード部12に対して、ルブリケーション液を確実に塗布することができ、ルブリケーション液の塗布による十分な潤滑作用を得ることができるので、潤滑を十分に行った状態でタイヤ試験を高精度に且つ再現性良く行うことが可能となる。
【0060】
ところで、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。また、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。