(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記定着ベルトの内側に定着ローラとベルトガイドとを備え、前記加圧部材によって前記定着ベルトを張架することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の定着装置。
前記定着ベルトの内側に配置されて、前記定着ベルトを介して前記加圧ローラに圧接し、ニップ部を形成する押圧ガイド手段を備えたことを特徴とする請求項6記載の定着装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、本発明による定着装置を採用する実施の形態1の画像形成装置の要部構成を概略的に示す概略構成図である。
【0009】
同図に示す画像形成装置100は、例えばカラー電子写真プリンタとしての構成を備え、装置内部には、記録媒体としての記録用紙101を収納する給紙カセット104が装着され、記録用紙101を給紙カセット104から取り出す給紙ローラ105、記録用紙101を所定のタイミングで画像形成部に給紙するレジストローラ106が配置される。また、画像形成装置100内には、画像形成部として、ブラック(K)の現像剤としてのトナーの画像を形成する現像装置110K、イエロー(Y)のトナー画像を形成する現像装置110Y、マゼンダ(M)のトナー画像を形成する現像装置110M、シアン(C)のトナー画像を形成する現像装置110C(これらの現像装置を特に区別する必要がない場合には単に110とする場合がある)が、記録用紙101の搬送経路に沿って、上流側から順に配置されている。これらの現像装置110は、所定色のトナーを使用する外は同じ構成を有する。
【0010】
例えばブラック(K)のトナーを使用する現像装置110Kに示すように、各現像装置110は、静電潜像担持体としての感光体ドラム111と、その周りに回転方向(矢印方向)上流側から順に配置された、感光体ドラム111の表面に電荷を供給して帯電させる帯電装置112、帯電された感光体ドラム111の表面に画像データをもとに選択的に光を照射して静電潜像を形成する露光装置113、感光体ドラム111に形成された静電潜像を前記トナーにより現像してトナー画像を形成する現像剤供給装置114、及び感光体ドラム111の表面に残留したトナーを除去すべく、感光体ドラム111に接触して配置されるクリーニング装置115等を備える。
【0011】
また、画像形成装置100内には、ベルト式の転写装置120として、記録用紙101を搬送し、且つ搬送する記録用紙101に各現像装置で形成したトナー画像を順次転写するエンドレス転写ベルト121、図示せぬ駆動部より回転されてエンドレス転写ベルト121を矢印方向に駆動するドライブローラ122、ドライブローラ122と対を成してエンドレス転写ベルト121を張架するテンションローラ123を備える。
【0012】
そして、前記記録用紙101上に形成されたトナー画像を、熱及び圧力を加えることによって定着させる定着装置10、定着装置10を通過した記録用紙101を搬送し、画像が定着された記録用紙101を貯留する排紙積載部130に排出する搬送用ローラ131,132が配置される。定着装置10については、後で詳しく説明する。
【0013】
尚、
図1中のX、Y、Zの各軸は、記録用紙101が画像形成部を通過する際の搬送方向にX軸をとり、感光体ドラム111の回転軸方向にY軸をとり、これら両軸と直交する方向にZ軸をとっている。また、後述する他の図においてX、Y、Zの各軸が示される場合、これらの軸方向は、共通する方向を示すものとする。即ち、各図のX、Y、Z軸は、各図の描写部分が、
図1に示す画像形成装置100を構成する際の配置方向を示している。またここでは、Z軸が略鉛直方向となるように配置されるものとする。
【0014】
以上の構成において、画像形成装置の印刷動作の概略について、
図1を参照しながら説明する。尚、同図中の点線矢印は、搬送される記録用紙101の搬送方向を示す。
【0015】
画像形成装置100は電源が投入され、操作者が画像形成を開始する周知の操作を行うと、給紙カセット104に収納された記録用紙101は、給紙ローラ105によって給紙カセット104から取り出され、レジストローラ106により斜行が矯正された後、所定のタイミングで、4つの現像装置110と転写装置120からなる画像形成部に搬送される。
【0016】
このとき、感光体ドラム111が矢印方向に回転するのに伴い、各現像装置110の感光体ドラム111の表面は、図示しない電源装置により電圧が印加された帯電装置112により帯電される。続いて、帯電された感光体ドラム111表面が露光装置113の付近に到達すると、露光装置113によって露光され、感光体ドラム111表面に画像情報に応じた静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像剤供給装置114により現像され、感光体ドラム111の表面に各色に対応したトナー画像が形成される。
【0017】
画像形成部に搬送された記録用紙101は、エンドレス転写ベルト121に吸着して矢印方向に搬送され、各現像装置110の矢印方向に回転する感光体ドラム111とエンドレス転写ベルト121とで順次挟持される過程で、所定のタイミングで形成されたブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の各色のトナー画像が順次重ねて転写され、記録用紙101上に各色のトナーによるカラー画像が形成される。感光体ドラム111は、転写後に感光体ドラム111上に残留している残トナーがクリーニング装置115によって掻き取られてクリーニングされた後、次の帯電に供される。
【0018】
続いて、表面に各色のトナーによるカラー画像が形成された記録用紙101は、定着装置10に搬送される。記録用紙101上のトナー画像は、定着装置10によって加圧及び加熱されて溶融し、記録用紙101上に固定される。更に、記録用紙101は、搬送用ローラ131,132により排紙積載部130に排出され、印刷の動作が終了する。
【0019】
図2は、本発明による定着装置10の要部構成図である。
【0020】
図2に示すように、定着装置10は、無端状の定着ベルト15と加圧ローラ22等によって形成されるニップ領域23に、トナー像150が転写された記録用紙101を搬送し、通過させることによって定着を行う。このため、定着ベルト15の内側には、定着ローラ18、支持部材17、加熱ユニット30、ベルトガイド21、押圧ガイド部材19、加圧スプリング16,20、及び温度センサ24がそれぞれ配設されている。
【0021】
定着ローラ18は、ローラ状の芯金部18aとその外周面に配設された弾性層18bとを有し、回転軸がY軸方向(長手方向)に配設された芯金部18aの長手方向両端部が、定着装置10本体に備えられた図示しない回転軸受によって回転自在に支持されている。定着ローラ18は、芯金部18aの片側端部に図示せぬ駆動系が実装され、図示しない駆動源から動力が付与されることで矢印A方向へ回転し、その内壁面が定着ローラ18の外周面に接して張架される定着ベルト15を矢印B方向に移送する。
【0022】
加熱ユニット30は、断面円弧状に形成されて定着ベルト15の内壁面に幅方向略全域に亘って当接してガイドする湾曲ガイド面と、Y軸方向に配置されてその両端部が定着装置10本体に回動自在に保持される回動支点14aとを有する熱伝達部材14と、湾曲ガイド面とは反対側の平面部で、熱伝達グリス13を介して熱伝達部材14に接して配置される発熱部材12、発熱部材12に接してこれを加圧する加圧プレート11等を有する。
【0023】
図3は、発熱部材12の外観斜視図であり、
図4はその分解斜視図である。これらの図に示すように発熱部材12は、その長手方向がY軸方向に沿って配置される平面状の基材12g上に、電流が流れることで発熱する抵抗発熱体としての抵抗線12dを配置する。保護層12c、12fは、この抵抗線12dの上下に配置され、抵抗線12dに流れる電流が、基材12g或いは他部材にリークするのを防止する。また抵抗線12dは、配線12eによりコンタクト部12a,12bに電気的に接続され、このコンタクト部12a,12bを介して図示しない外部制御装置によって電流が供給される。
【0024】
熱伝達グリス13は、発熱部材12と熱伝達部材14の間に塗布され、発熱部材12と熱伝達部材14の接合部間に存在する微小な空隙を埋めることで、両者の熱伝達効率を高める働きをする。
【0025】
図5は、本発明による実施の形態1の加圧プレート11の外観斜視図である。加圧プレート11は、同図に示すようにその長手方向(Y軸方向)の、両端部に温度調整部11b、11bを有し、プレス加工により作製された板金部材である。ここでは、温度調整部11b、11bが、発熱部材接触面11aに対し凹形状となっている。また、発熱部材接触面11aと表裏の関係にある加圧平面11dは、後述する加圧スプリング16により押圧される。
【0026】
図2に示すように、定着ベルト15の内側には、内部を上下に隔てるように断面略L字状に形成された支持部材17が定着装置10本体に固定されて配置されている。この支持部材17と加熱ユニット30の加圧プレート11の加圧平面11d間には、圧縮された状態の加圧スプリング16が架けられている。これにより、加圧プレート11を介して、発熱部材12と熱伝達部材14の平面部とが圧接され、更に回動支点14aを中心に変位する熱伝達部材14の湾曲ガイド面が、定着ベルト15の内側に圧接し、後述する他の部材と共に定着ベルト15を張架する。尚、加圧プレート11と加圧スプリング16とが加圧部材に相当する。
【0027】
ベルトガイド21は、支持部材17に固定され、内側から4箇所で定着ベルト15に当接してこれを略円弧状にガイドすると共に、このガイド領域の略中央部で内側から定着ベルト15に当接或いは近接して定着ベルト15の温度を検出する温度センサ24を保持する。温度センサ24は、図示せぬ制御部に定着ベルト15の温度情報を送ることで、定着装置10が常に良好な定着を行えるようにしている。
【0028】
加圧ローラ22は、ローラ状の芯金部22aとその外周面に配設された弾性層22bとを有し、回転軸がY軸方向(長手方向)に配設された芯金部22aの長手方向両端部が、定着装置10本体に備えられた図示しない回転軸受によって回転自在に支持されると共に、図示しない加圧機構によって、矢印F方向(Z軸プラス方向)、即ち定着ローラ18及び後述する押圧ガイド部材19に向かう方向に付勢されている。
【0029】
押圧ガイド部材19は、定着ローラ18に隣接して、加圧ローラ22に対して接離可能な矢印D、E方向にスライド可能に定着装置10本体に保持され、支持部材17との間に圧縮した状態で架けられた加圧スプリング20によって矢印D方向に付勢され、定着ローラ18から離間する定着ベルト15を内側から押圧する。このように定着ベルト15を内側から押圧する押圧ガイド部材19の押圧面は、
図2に示すように定着ローラ18側の一部が加圧ローラ22の周面に沿った形状となっている。尚、押圧ガイド部材19と加圧スプリング20とが押圧ガイド手段に相当する。
【0030】
従って、加圧ローラ22の弾性層22bと、定着ローラ18の弾性層18b及び押圧ガイド部材19の押圧面の一部が、定着ベルト15を介して圧接するニップ領域23を形成している。
【0031】
定着ベルト15は、内面にポリイミドの基材と、この基材の外周層となるシリコーンゴムによる弾性層、更に表層となるPFAチューブを有し、図示しないフランジ部材によって長手方向(Y軸方向)の位置が規制され、前記したように定着ローラ18、加熱ユニット30、ベルトガイド21、及び押圧ガイド部材19によって、張架された状態で矢印B方向に回転駆動される。加圧ローラ22は、定着ベルト15の矢印B方向への移動に伴って矢印C方向に回転する。尚、ここでいう定着ベルト15の長手方向とは、これを駆動する定着ローラ18の回転軸方向と同方向である。
【0032】
以上の構成において、定着装置10の定着動作について
図2を参照しながら更に説明する。
【0033】
定着装置10の発熱部材12は、定着時に記録用紙101上に形成されたトナー像150を熱圧着するのに十分な熱量を供給するように、図示しない制御装置から供給される電流が抵抗線12d(
図4)を流れることによって発熱する。定着装置10の定着ローラ18は、発熱部材12の発熱と同時に、図示しない駆動系から動力を受けて矢印A方向への回転を開始し、これに伴って定着ベルト15が矢印B方向への移動を開始し、加圧ローラ22が矢印C方向への回転を開始する。
【0034】
定着装置10に実装された発熱部材12は、ここでは長手方向に温度勾配をつけていない断面積が均一な抵抗線12d(
図4)による発熱を行っている。このような発熱部材12を用いた一般的な定着装置では、装置の構成上、長手方向の両端部にニップ(NIP)を構成する各部材の支持部材があり、これら両端部の支持部材に発熱部材12から発生した熱が伝わるため、両端部の温度が下がる傾向がある。
【0035】
ここで参考例として、
図5に示す、温度調整部11bを備えた本発明による加圧プレート11の代わりに、
図8に示す、温度調整部11bを備えない加圧プレート311を採用した定着装置310における熱の伝わり方について、
図9を参照しながら説明する。尚、この参考例における定着装置310は、
図2の本願実施の形態の定着装置10において、
図5に示す加圧プレート11の代わりに
図8に示す加圧プレート311を採用するものである。
【0036】
図9は、参考例としての定着装置310の、加熱ユニット330近傍の長手方向(Y軸方向)における部分断面図であり、長手方向両端部と中央部における発熱部材12周辺の熱の伝わり方を示したものである。
【0037】
発熱部材12から発生した熱は、加熱ユニット330の長手方向の中央部330aにおいては、加圧プレート311に伝わる経路L2と、熱伝達グリス13と熱伝達部材14を介して定着ベルト15へ伝わる経路M2があり、経路M2を通り定着ベルト15へ伝わる熱量をQb´、経路L2を通って加圧プレート311に伝わる熱量をQa´とした時に、定着ベルト15の長手方向中央部15aにおける温度は経路M2から伝わる熱量Qb´により決定される。
【0038】
加熱ユニット330の両端部330b周辺においては、加圧プレート311に伝わる経路R2、熱伝達グリス13と熱伝達部材14を介して定着ベルト15へ伝わる経路S2、更に両端部を支持している部材に伝わる経路T2があり、経路S2を伝わる熱量をQd´、経路R2を伝わる熱量をQc´、経路T2を伝わる熱量をΔQe´とすると、定着ベルト15の長手方向両端部15bにおける温度は、経路S2から伝わる熱量Qd´によって決定される。
【0039】
発熱部材12は、ここでは長手方向に対して均一な熱量を発生するため、中央部330aと両端部330bの発熱量を同等とした時に、両端部330bではΔQe´だけ余分に熱量の流出がある。従ってこの余分の熱量流出に伴い、定着ベルト15の両端部15bに伝えられる熱量Qd´は低減し、結果として定着ベルト15の長手方向両端部15bの温度は、定着ベルト15の中央部15aと比較して低くなる。
【0040】
次に、
図5に示すように、温度調整部11b,11bを有する加圧プレート11を備えた本発明による定着装置10における熱の伝わり方について、
図6を参照しながら説明する。
【0041】
図6は、本発明による定着装置10の加熱ユニット30近傍の長手方向(Y軸方向)における部分断面図であり、長手方向両端部と中央部における発熱部材12周辺の熱の伝わり方を示したものである。
【0042】
発熱部材12から発生した熱は、加熱ユニット30の長手方向の中央部30aにおいては、加圧プレート11に伝わる経路L1と、熱伝達グリス13と熱伝達部材14を介し、定着ベルト15へ伝わる経路M1があり、経路M1を通り定着ベルト15に伝わる熱量をQb、経路L1を通って加圧プレート11に伝わる熱量をQaとした時に、定着ベルト15の長手方向中央部15aにおける温度は経路M1から伝わる熱量Qbによって決定される。
【0043】
加熱ユニット30の両端部30b周辺においては、加圧プレート11の温度調整部11bに伝わる経路R1、熱伝達グリス13と熱伝達部材14を介して定着ベルト15へ伝わる経路S1、さらに両端部を支持している部材に伝わる経路T1があり、経路M1を伝わる熱量をQb、経路L1を伝わる熱量をQa、経路S1を伝わる熱量をQd、経路R1を伝わる熱量をQc、経路T1を伝わる熱量をΔQeとすると、定着ベルト15の長手方向両端部15bの温度は、経路S1から伝わる熱量Qdにより決定される。
【0044】
発熱部材12は、長手方向(Y軸方向)に対して均一な熱量を発生するため、熱量をQとした時に、長手方向中央部と、両端部の熱量の関係は、以下の式にて表される。
・長手方向中央部では、
Q=Qa+Qb
・長手方向両端部では、
Q=Qc+Qd+ΔQe
となる。
尚、発熱部材12の構成を示す
図3、
図4では、抵抗線12dが端部まで均一に配線されていないように見えるが、便宜上であって、実際には、加圧プレート11の温度調整部11bに対向する両端部まで、均一の熱量を発生するように配線されているものである。
【0045】
長手方向の両端部30bにおいて、発熱部材12から、凹形状の温度調整部11b周辺での加圧プレート11への熱伝達効率は、両部材間に空隙があることから、両部材が接している長手方向中央部30aと比較して大幅に低下している。従って、発熱部材12から加圧プレート11へ伝わる熱量は、中央部30aで伝わる熱量Qaに比べて両端部30bで伝わる熱量Qcが小さくなり、その差分だけ両端部30bでは熱量Qd及び△Qeが増加することとなる。
【0046】
以上のように、本実施の形態の定着装置10では、前記した参考例の定着装置310に比べ、定着ベルト15の両端部15bに伝えられる熱量Qdが増加するため、ベルト両端部15bでの温度低下を防いで所望のレベルに保ち、長手方向の温度分布を良好な状態とすることが可能となる。
【0047】
更に、温度調整部11bを設けた加圧プレート11が、現像剤像の定着を行う定着ベルト15に直接接触していないことから、温度調整部11bにて生ずる温度勾配が、定着ベルト15に転写されにくく、温度調整部11b周辺における定着ベルト15の温度分布も安定したものとなる。
【0048】
以上のように、定着ベルト15は、
図2に示すように、矢印B方向に搬送されて加熱ユニット30を通過する過程で、長手方向全域における温度分布が良好な状態で加熱された後に、ニップ領域23へ搬送され、このニップ領域23にて、このニップ領域23を通過する記録用紙101上に形成されたトナー像150の熱圧着を行う。
【0049】
尚、長手方向の両端部30bにおいて、加圧プレート11への熱伝達効率を低下させる空隙を得るため、発熱部材12にではなく、加圧プレート11に凹形状の温度調整部11bを設けたが、その理由は以下の通りである。
・発熱部材12が対称形状でないと、熱膨張に対するバランスがくずれ、熱変形が増大して熱の伝達性が低下する。
・発熱部材12では、抵抗線12d、配線12e等のパターンをスクリーン印刷で作製するため、凹凸を設けることが難しい。
【0050】
また、
図6に示すように、加圧プレート11の凹形状の温度調整部11bでは、空隙を形成する底部の厚さが、加圧プレート11の他の部分の厚さと略等しく形成されているが、その理由は以下の通りである。
即ち、孔ではなく打ち出し形状とし、凹部の厚さを中央部と同様にすることで、加圧プレート11における端部と中央部の熱容量が同じままとなる。これにより、立ち上がり時などの短い時間間隔では、加圧プレート11の端部が
発熱部材12と接触していないために端部の温度が上昇するが、長い時間が経って定常状態となった場合には、長手方向の熱容量が同じため、長時間の連続印刷時に発生しやすい端部温度上昇(定着部材としての記録用紙が走行しない最端部では、記録用紙に熱を奪われないため、長時間連続印刷を行うと端部の温度が上昇しすぎ、定着不良を起こす)を抑え、良好な定着が可能となる。
【0051】
ここで、定着装置10の具体的な構成例について説明する。
図5、
図6に示す加圧プレート11は、長さ350[mm]、幅10[mm]、厚さ2.0[mm]のA5052製であり、長手方向中央部30aの中心から両端側に120[mm]離れた位置から各端部方向に、幅6.5[mm]、長さ30[mm]、深さ0.5[mm]の温度調整部11bが形成されている。
【0052】
図3、
図4に示す発熱部材102は、長さ350[mm]、幅10[mm]、厚さ0.6[mm]のSUS製の基材12g上に、下から順に、ガラス製の保護層12f、銀とパラジウム合金で線幅3[mm]の抵抗線12d、ガラス製の保護層12cが積層されている。ここでの抵抗線12dの出力は、1200[W]である。
図2、
図6に示す熱伝達グリス13は、シリコーンオイルに酸化亜鉛の粉末を混合し、熱伝達性を向上させている。
【0053】
図2、
図6に示す熱伝達部材14は、その材料がアルミの押し出し材であるA6063であり、定着ベルト15と圧接する曲面の曲率半径Rは25[mm]であり、この曲面における定着ベルト15の搬送方向に対する長さは30[mm]である。
【0054】
図2、
図6に示す定着ベルト15は、内径がφ45[mm]、Y軸方向の幅(長手方向)が320[mm]であり、内面に厚さ0.1[mm]のポリイミドの基材層を有し、その外周に厚さ0.2[mm]のシリコーンゴムの弾性層が形成され、更にその外周にPFAのチューブ層を有する。
図2に示す加圧スプリング16は、ここでは、合計4[kgf]の加圧力で加圧プレート11をZ軸のプラス方向に均等に加圧している。
【0055】
図2に示す定着ローラ18は、外径がφ25[mm]で、弾性層18bがシリコーンスポンジで形成され、その弾性層の厚さは2[mm]である。
図2に示す押圧ガイド部材19は、素材がアルミの押し出し材A6063であり、定着ベルト15との接触面にはシリコーンゴムによる約1[mm]の厚さの弾性層を有し、加圧スプリング20によって、加圧ローラ22に向かう方向に3.5[kgf]の加圧力を付与されている。
【0056】
図2に示す加圧ローラ22は、外径がφ35[mm]であり、その弾性層22bが厚さ2[mm]のシリコーンゴムで形成され、更にその外周がPFAチューブ層にて構成される。また、加圧ローラ22の芯金部22aの両端は、図示しない付勢手段により矢印F方向(Z軸プラス方向)、即ち定着ローラ18及び押圧ガイド部材19に向かう方向に20[kgf]の加圧力が付与されている。
【0057】
上記した構成例の定着装置10を用いて定着ベルト15の中央部温度と端部温度の差、及び端部での定着率を測定する評価試験を行った。比較のため、
図8に示すように温度調整部11bを備えない加圧プレート311を採用した前記参考例の定着装置310も同様の評価試験を行った。参考例の定着装置310は、加圧プレート以外は定着装置10と同構成である。
【0058】
評価試験の測定条件は以下の通りである。
(1)定着ベルト15の長手方向(Y軸方向)中央部と、中央部から150mm離れた端部にサーミスタを取り付け、両部における定着ベルト15の温度を測定する。
(2)定着ベルト15全体が25[℃]にある状態にて、発熱部材12の抵抗線12dに電流を投入すると同時に定着ローラ18を回転駆動し、定着ベルト15及び加圧ローラ22を回転させる。
(3)定着ベルト15の長手方向中央部の測定温度が、記録用紙101上のトナー像150を良好に定着可能とする160[℃]に最初に達した際の端部温度、及びその際にA4横送り35[ppm]の印刷速度にて印刷を行ったトナー像の定着率をそれぞれ測定する。
【0059】
次に定着率の測定方法について説明する。
(4)はじめに、上記測定条件のもとで、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の各色のトナーを、画像形成装置の濃度設定100%で記録用紙101上に転写し、定着する。
尚、各色のトナー像の転写・定着は、定着ベルト15の長手方向中央部、両端部に対応する位置で、記録用紙の搬送方向先端部、中央部、後端部の9の測定箇所で行う。
(5)記録用紙101上に定着された各色のトナー像の濃度を測定し、その値をNbとする。
(6)各色のトナー像の上から所定の粘着テープを貼り付け、500gの荷重をかけてトナー像と粘着テープを密着させた後に粘着テープを剥離し、再度各色のトナー像の濃度Naを測定する。
(7)測定した濃度Nb、Naを用い、下式によって定着率を求める。
定着率=(Na/Nb)×100[%]
尚、この定着率は、前記した9の測定箇所毎に測定した濃度Nb、Naに基づいて算出する。
【0060】
尚、定着率が70%を下回った場合、ユーザーが定着後のトナー像を指で触れると、トナー像の一部が記録用紙から剥離し、ユーザーの指に付着する。このため、良好な定着を行う際は定着率を70%以上とすることが必要となる。また、本評価にてベルト中央部の温度に設定している160[℃]時における定着率は96〜100[%]である。ここでの定着率96〜100[%]は、前記した9の測定箇所のうち、該当する箇所(複数)で求めた定着率のばらつきの範囲を示している。表中の定着率も同様のばらつきの範囲を示している。
【0061】
表1は、上記評価試験の結果を示す表である。
【0063】
表1の試験結果によれば、比較例としての定着装置310では、定着ベルト15の中央部の温度に対してベルト端部の温度が5[℃]低かったのに対し、本実施の形態の定着装置10では2[°C]高く、比較例の定着装置310に対して両端部の温度が7[℃]上昇している。このため、比較例としての定着装置310では、端部での定着率が86〜93[%]であったのに対して、定着装置10では96〜100[%]に増加している。このように、比較例としての定着装置310に対し、本実施の形態の定着装置10では、定着ベルト15の端部での温度が上昇しているため、端部での定着率が良くなっている。
【0064】
表2は、
図4に示す抵抗線12dの代わりに、両端部の発熱が中央部の発熱に対して5%低下する抵抗線12Nを採用した、本実施の形態の定着装置10Nと比較例としての定着装置310Nを用いて同様の評価試験を行った結果を示す表である。定着装置10N及び定着装置310Nは、抵抗線以外は定着装置10及び定着装置310と同一である。
【0066】
この場合、表2の試験結果によれば、定着ベルト15の中央部では、定着装置10N及び定着装置310Nの両方とも160[℃]であるので、ここでの定着率は共に96〜100[%]である。しかしながら、比較例としての定着装置310では、端部の定着率が71〜79[%]となり、良否の評価基準としている70[%]を上回っているものの、ばらつきの下限は70[%]に近く、マージンが非常に小さい。これに対して、本実施の形態の定着装置10Nでは、端部の定着率が86〜91[%]となり、評価基準としている70[%]を大幅に上回っている。このように本実施の形態の定着装置10Nによれば、長手方向両端部の発熱量が中央部と比較して5%低い抵抗線12Nが実装された場合においても、安定した定着が行われる。
【0067】
以上のように、加圧プレート11に温度調整部を設けた本実施の形態の定着装置10によれば、定着ベルト15における長手方向の温度むらを低減し、記録用紙の、搬送方向と直交する方向全域において良好な定着を行うことが可能となる。
【0068】
実施の形態2.
図7は、本発明に基づく実施の形態2の定着装置に採用される加圧プレート211の構成を示す外観斜視図である。本実施の形態の定着装置は、この加圧プレート211を前記した実施の形態1の
図5に示す加圧プレート11に代えて採用している以外は、
図2に示す実施の形態1の定着装置10と全く同じである。従って、この定着装置が、前記した実施の形態1の定着装置10と共通する部分には同符号を付して、或いは図面を省いて説明を省略し、異なる点を重点的に説明する。尚、本実施の形態の定着装置の要部構成は、加圧プレート211以外において
図2に示す実施の形態1の定着装置10の要部構成と共通するため、必要に応じて
図2を参照する。
【0069】
図7に示すように、本実施の形態の加圧プレート211は、その長手方向(Y軸方向)の、両端部に温度調整部211b、211bを有し、プレス加工により作製された板金部材であるが、温度調整部211b、211bが貫通した孔形状となっている。それ以外は、
図5に示す実施の形態1の加圧プレート11と同じである。この場合、温度調整部211b、211bの領域の熱容量が、中央部に比較して少なく、発熱部材12(
図6参照)から発生して加圧プレート211に伝わる熱量が、温度調整部211b、211bを設けた両端部では減少するため、結果として定着ベルト15の両端部に伝わる熱量が増加する。その他の動作は実施の形態1の場合と同様である。
【0070】
本実施の形態の加圧プレート211では、温度調整部211bの熱容量が、前記した実施の形態1の加圧プレート11の温度調整部11bより小さいため、加圧プレート211を採用する発熱部材では、実施の形態1の発熱部材
12の場合より、定着ベルト15の両端部に伝わる熱量が増加する。
【0071】
以上のように、本実施の形態の定着装置によれば、加圧プレート211に孔形状の温度調整部211bを設けたことで、長手方向における定着ベルトの温度制御幅を、前記した実施の形態1の定着装置に比べてさらに増加することが可能となる。
【0072】
尚、上記した各実施の形態では、ニップ領域23の拡大(高速印刷対応)のため押圧ガイド部材19を使用しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、押圧ガイド部材19を省いた構成とすることも可能である。
また、上記した各実施の形態では、ニップ領域23から離れた位置に加熱ユニット30を配設しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、押圧ガイド部材19に代えて、加圧スプリングで付勢されたこの加熱ユニット30を配設し、定着ベルト15への加熱と同時にニップ領域を形成するように構成することも可能である。
また、上記した各実施の形態では、定着ベルト15の内側から加熱ユニット30を圧接しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、定着ベルト15の外側から加熱ユニット30を圧接する構成とすることも可能である。
また、上記した各実施の形態では、ニップ領域23を形成するため加圧ローラ22を設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ローラ以外の摺動部材を設ける構成とすることも可能である。
更に、上記した各実施の形態では、定着装置の駆動力が、定着ローラ18から伝わるように構成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、加圧ローラ22から伝わるように構成してもよいなど、種々の態様を取り得るものである。