【実施例】
【0029】
実施例に係る車体構造10について説明する。
図1、
図2に示すように、車体構造10は、車両Veの床部を形成するフロア13と、フロア13の左側部(両側部の一方)13aに沿って車体前後方向に延びる左サイドフレーム(サイドフレーム)15と、フロア13の右側部(両側部の他方)13bに沿って車体前後方向に延びる右サイドフレーム(サイドフレーム)16と、左右のサイドフレーム15,16に亘って車幅方向に延ばされるフロアクロスメンバ(前クロスメンバ)17と、フロアクロスメンバ17の車体後方に設けられるフロアパン18とを備えている。
【0030】
さらに、車体構造10は、フロアパン18に設けられた状態で車幅方向に並べられる左シート取付部(シート取付部)21および右シート取付部(シート取付部)22と、左右のシート取付部21,22に取り付けられるシート23と、フロアパン18を補強する補強メンバ手段25とを備えている。
【0031】
図3に示すように、左サイドフレーム15は、フロア13の左側部13aに接合される前フレーム31と、フロアパン18の前左側部18aに接合される傾斜フレーム32と、フロアパン18の後左側部18bに接合される後フレーム33とを備えている。
【0032】
前フレーム31は、フロア13の左側部13aに沿って車体前後方向に延ばされている。
傾斜フレーム32は、前フレーム31の後端部31aからフロアパン18の前左側部18aに沿って車体後方向で、かつ、車幅方向外側に向けて傾斜状に延ばされている。
後フレーム33は、傾斜フレーム32の後端部32aからフロアパン18の後左側部18bに沿って車体後方向に延ばされている。
【0033】
右サイドフレーム16は、左サイドフレーム15と略左右対称の部材であり、各構成部材に左サイドフレーム15の構成部材と同じ符号を付して説明する。
【0034】
図2、
図4に示すように、左右の前フレーム31に亘ってフロアクロスメンバ17が車幅方向に延ばされている。
フロアクロスメンバ17は、補強メンバ手段25(具体的には、底部クロスメンバ65)の車体前方に隣接して配置され、略矩形状の閉断面に形成されている。フロアクロスメンバ17の前端部17aがフロア13の後端部13cに接合されている。
また、フロアクロスメンバ17の後端部17bが、底部クロスメンバ65の前端部65aおよびフロアパン18(具体的には、前壁35)の前端部35aに接合されている。
【0035】
フロアクロスメンバ17の車体後方にフロアパン18が設けられている。
フロアパン18は、左サイドフレーム15の後半部(左の傾斜フレーム32および左の後フレーム33)と、右サイドフレーム16の後半部(右の傾斜フレーム32および右の後フレーム33)との間に設けられている。
【0036】
このフロアパン18は、フロアクロスメンバ17の後端部17bに連結される前壁35と、前壁35の車体後方に設けられた底部36と、前壁35および底部36を接続する前稜線部(稜線部)37と、底部36の左側部36aから立ち上げられた左側壁38と、底部36の右側部36bから立ち上げられた右側壁39とを備えている。
【0037】
図5に示すように、前壁35は、フロア13の後端部13cにフロアクロスメンバ17を介して前端部35aが連結され、底部36の前端部36cに向けて下方に張り出されている。
底部36は、フロア13より下方に配置され、フロア13と同様に略水平状に形成されている。
前稜線部37は、前壁35および底部36の交差部で形成され、車体前側下方に向けて断面略湾曲状に突出されている。この前稜線部37で前壁35の下端部35bおよび底部36の前端部36cが接続(連結)されている。
【0038】
図2に戻って、フロアパン18に左シート取付部21および右シート取付部22が設けられている。左シート取付部21および右シート取付部22は、車幅方向(すなわち、左右方向)に隣接して設けられている。
【0039】
図6、
図7に示すように、左シート取付部21は、底部36の上面36dにおいて左前端部に設けられる下取付部43と、取付底部36の前上方に位置して前壁35に設けられる上取付部44と、上取付部44および下取付部43を連結する取付連結部45とを有する。
上取付部44、下取付部43および取付連結部45で、左シート取付部21が車外28方向に突出するように断面略V字状に形成されている。取付連結部45は、前稜線部37に対して上方に間隔をおいて対峙するように配置されている。
【0040】
下取付部43は、底部36の上面36dにおいて前端部36cに取り付けられる第1取付部47、第2取付部48および第3取付部49を有する。
上取付部44は、前壁35の後面35cに取り付けられる第4取付部51および第5取付部52を有する。
【0041】
右シート取付部22は、左シート取付部21と略左右対称の部材であり、各構成部材に左シート取付部21の構成部材と同じ符号を付して説明する。
【0042】
図1に戻って、左シート取付部21および右シート取付部22にシート23が取り付けられる。シート23は、乗員を着座させるために車室12の内部に設けられている。
このシート23は、左シート取付部21に取り付けられる大シート55と、右シート取付部22に取り付けられる小シート56とに分割されている。
【0043】
図4に示すように、大シート55は、前脚部57がストライカ58に嵌合され、後脚部61が左シート取付部21に取り付けられる。
ストライカ58は、フロアクロスメンバ17の左側前端部に取り付けられている。後脚部61は、後支持ピン62を軸にして車体前後方向に回転自在に連結されている。
【0044】
大シート55は、車幅方向のシート幅寸法が大きくなるように車幅方向に延ばされ、複数の乗員が着座可能なシートである。
よって、例えば、車両Veの前端部に衝撃荷重F1が入力した場合に、大シート55に着座した乗員が慣性力で車体前方に移動する。このため、大シート55に大きな荷重がかかり、車体前方に移動する。
大シート55が車体前方に移動することにより、左シート取付部21に大きな荷重が作用する。
【0045】
図1に示すように、小シート56は、大シート55と略同様に構成されているので詳しい説明を省略する。
すなわち、小シート56は、大シート55の車幅方向右側に、大シート55に隣接された状態で並んで設けられている。小シート56は、大シート55よりシート幅寸法が小さく抑えられ、単数の乗員が着座可能なシートである。
【0046】
よって、例えば、車両Veの前端部に衝撃荷重F1が入力した場合に、小シート56に着座した乗員が慣性力で車体前方に移動する。このため、小シート56に大シート55より小さな荷重がかかり、車体前方に移動する。
小シート56が車体前方に移動することにより、右シート取付部22に左シート取付部21より小さな荷重が作用する。左シート取付部21や右シート取付部22に作用する荷重を支えるために、フロアパン18が補強メンバ手段25で補強されている。
【0047】
図3、
図8に示すように、補強メンバ手段25は、フロアパン18の前稜線部37に沿って車幅方向に延びる底部クロスメンバ(第1底部クロスメンバ)65と、フロアパン18の後端部18cに沿って車幅方向に延びる後底部クロスメンバ(第2底部クロスメンバ)66と、底部クロスメンバ65および後底部クロスメンバ66間に設けられた中底部クロスメンバ67(第3底部クロスメンバ)とを備えている。
【0048】
さらに、補強メンバ手段25は、底部クロスメンバ65および後底部クロスメンバ66に亘って車体前後方向に延ばされる左縦メンバ(縦メンバ)71と、底部クロスメンバ65および後底部クロスメンバ66に亘って車体前後方向に延ばされる右縦メンバ(縦メンバ)72と、左縦メンバ71の車幅方向左側に設けられる補強部材73とを備えている。
【0049】
底部クロスメンバ65は、左右の傾斜フレーム32の各前端部32bに亘って車幅方向に延ばされ、左シート取付部21および右シート取付部22(
図1、
図7参照)に相当する部位に対応させて(合わせて)配置される。
この底部クロスメンバ65は、前稜線部37(
図7参照)に沿って車幅方向に延びるクロス中央部75と、クロス中央部75の左端部(端部)75aおよび左の傾斜フレーム32を連結する左クロス端部(一対のクロス端部の一方)76と、クロス中央部75の右端部(端部)75bおよび右の傾斜フレーム32を連結する右クロス端部(一対のクロス端部の他方)77とを備えている。
【0050】
図7に戻って、クロス中央部75は、フロアパン18(前壁35)の前面35dに沿って配置されるクロス前壁81と、クロス前壁81の下端部81aに設けられたクロス膨出部82と、クロス膨出部82の後端部82aから車体後方に張り出されたクロス接合部83とを有する。
【0051】
クロス前壁81は、フロアパン18(前壁35)の前面35dに接合されている。また、クロス接合部83は、底部36の下面36eに接合されている。よって、クロス中央部75は、フロアパン18の前稜線部37に沿った状態でフロアパン18に車外28側から固定される。
この状態で、クロス膨出部82が底部36の前端部36cより下方に間隔をおいて配置される。これにより、クロス膨出部82および底部36の前端部36cで閉断面が形成される。
【0052】
図9に示すように、左クロス端部76は、内端部85がクロス中央部75の左端部75aと同様な断面形状に形成されている。すなわち、左クロス端部76の内端部85は、フロアパン18(前壁35)の前面35d左側部に沿って配置される左クロス前壁87と、左クロス前壁87の下端部87aに設けられた左クロス膨出部88と、左クロス膨出部88の後端部88aから車体後方に張り出された左クロス接合部89とを有する。
【0053】
図10、
図11に示すように、左クロス端部76は、左クロス前壁87がフロアパン18(前壁35)の前面35d左側部に車外28の車体前方から接合され、左クロス接合部89がフロアパン18(底部36)の下面36e左側部に車外28の下方から接合される(
図9も参照)。
さらに、左クロス端部76は、外端部86の左接合部86aが左の傾斜フレーム32に車外28の下方から接合される。
【0054】
この状態において、
図9、
図11に示すように、左クロス前壁87が前稜線部37に沿って固定され、左クロス膨出部88が底部36の前端部36cより下方に間隔をおいて配置される。これにより、左クロス膨出部88および底部36の前端部36cで閉断面が形成される。
【0055】
さらに、左クロス端部76は、内端部85がクロス中央部75の左端部75aに車外28の下方から重ね合わされた状態でボルト91、ナット92(締結部材)で連結され、外端部86が左の傾斜フレーム32に下方から接合される。
この状態で、左クロス端部76は、フロアパン18の底部36前左端部、およびフロアパン18の左側壁38前端部に設けられている。
左クロス端部76の内端部85およびクロス中央部75の左端部75aのボルト91、ナット92による連結については後で詳しく説明する。
【0056】
図3、
図8に戻って、右クロス端部77は、クロス中央部75の右端部75bに下方から重ね合わされた状態で、クロス中央部75の右端部75bにボルト93、ナット94(締結部材)で連結される。
右クロス端部77は、左クロス端部76と略左右対称の部材であり、右クロス端部77の詳しい説明を省略する。
【0057】
クロス中央部75、左クロス端部76および右クロス端部77で底部クロスメンバ65が構成される。この底部クロスメンバ65がフロアパン18の前稜線部37(
図7、
図9参照)に沿って固定される。
図7、
図9に示すように、底部クロスメンバ65および底部36の前端部36cで閉断面が形成される。よって、底部クロスメンバ65および底部36(フロアパン18)の重ね合わせた部分の強度を高くできる。
これにより、底部クロスメンバ65および底部36の重ね合わせた部分で、左シート取付部21(すなわち、大シート55)を確実に支持できる。
【0058】
さらに、底部クロスメンバ65が前稜線部37に沿って固定されることにより、前稜線部37が底部クロスメンバ65で下方から覆われる。底部クロスメンバ65は左右の傾斜フレーム32の各前端部32b(
図3参照)に亘って車幅方向に延ばされた剛性の高い部材である。
よって、前稜線部37を底部クロスメンバ65で補強して前稜線部37の剛性を高めることができる。これにより、前稜線部37で左シート取付部21および右シート取付部22(
図1参照)を強固に支えることができる。
【0059】
左シート取付部21を強固に支えることにより、左シート取付部21(すなわち、フロアパン18)に取り付けられた大シート55を確実に支持できる。さらに、右シート取付部22を強固に支えることにより、右シート取付部22(すなわち、フロアパン18)に取り付けられた小シート56(
図1参照)を確実に支持できる。
これにより、例えば、車両Veの前端部に衝撃荷重が入力して大シート55や小シート56に大きな荷重がかかった場合に、大きな荷重を前稜線部37や底部クロスメンバ65で支えて大シート55や小シート56をフロアパン18に確実に支持できる。
【0060】
さらに、
図3に示すように、底部クロスメンバ65を左右の傾斜フレーム32の各前端部32bに亘らせることにより、車両Veを底部クロスメンバ65で補強できる。
これにより、車両Veの変形や捩れに対する剛性を底部クロスメンバ65で高めることができる。
【0061】
ここで、
図5に示すように、底部クロスメンバ65の車体前方に隣接してフロアクロスメンバ17が配置されている。さらに、フロアクロスメンバ17の後端部17bに底部クロスメンバ65の前端部65aに接合されている。
フロアクロスメンバ17は、車両Veの強度・剛性を確保するために車両を補強する剛性の高い部材である。
【0062】
よって、剛性の高いフロアクロスメンバ17に底部クロスメンバ65を隣接させ、かつ、接合することにより、底部クロスメンバ65の剛性をフロアクロスメンバ17で高めることができる。
これにより、左シート取付部21および右シート取付部22(
図1参照)を底部クロスメンバ65で強固に支えることが可能になり、大シート55および小シート56(
図1参照)をフロアパン18に確実に支持できる。
【0063】
図3、
図4に示すように、底部クロスメンバ65の車体後方に後底部クロスメンバ66が配置されている。後底部クロスメンバ66は、左右の後フレーム33の各後端部33aに亘ってフロアパン18の後端部18cに沿って車幅方向に延ばされている。
この後底部クロスメンバ66は、フロアパン18(底部36)の後端部18cに沿って車幅方向に延びる後クロス中央部96と、後クロス中央部96の左端部96aおよび左の後フレーム33(後端部33a)を連結する後左クロス端部97と、後クロス中央部96の右端部96bおよび右の後フレーム33(後端部33a)を連結する後右クロス端部98とを備えている。
【0064】
後クロス中央部96の左端部96aに後左クロス端部97の内端部が車外28の下方から重ね合わされている。また、後クロス中央部96の右端部96bに後右クロス端部98の内端部が車外28の下方から重ね合わされている。
【0065】
後底部クロスメンバ66および底部クロスメンバ65間に中底部クロスメンバ67が設けられている。中底部クロスメンバ67は、左右の後フレーム33の各前端部33bに亘って車幅方向に延ばされている。
この中底部クロスメンバ67は、フロアパン18(底部36)の車体前後方向中央において車幅方向に延びる中クロス中央部101と、中クロス中央部101の左端部101aおよび左の後フレーム33(前端部33b)を連結する中左クロス端部102と、中クロス中央部101の右端部101bおよび右の後フレーム33(前端部33b)を連結する中右クロス端部103とを備えている。
【0066】
中クロス中央部101の左端部101aに中左クロス端部102の内端部が車外28の下方から重ね合わされている。また、中クロス中央部101の右端部101bに中右クロス端部103の内端部が車外28の下方から重ね合わされている。
【0067】
底部クロスメンバ65および後底部クロスメンバ66間に中底部クロスメンバ67を配置することにより、フロアパン18の剛性を中底部クロスメンバ67で高めることができる。さらに、中底部クロスメンバ67を左右の後フレーム33の各前端部33bに亘らせた。
【0068】
よって、車両Veの後端部に衝撃荷重F2が入力した場合に、衝撃荷重F2で左右のサイドフレーム15,16の各後半部(具体的には、傾斜フレーム32および後フレーム33)が車幅方向外側に開くように変形することを中底部クロスメンバ67で防止できる。
これにより、車両Veの後端部に入力した衝撃荷重F2を左右のサイドフレーム15,16で良好に支えることが可能になり、衝撃荷重F2がフロア13に影響をおよぼすことを防止できる。
【0069】
底部クロスメンバ65および後底部クロスメンバ66に亘って左縦メンバ71および右縦メンバ72が車体前後方向に延ばされている。左右の縦メンバ71,72は、車体中心に対して左右側に所定間隔をおいて設けられている。
よって、フロアパン18の底部36を左右の縦メンバ71,72で車体前後方向に補強することができる。これにより、フロアパン18の剛性を左右の縦メンバ71,72で高めることができる。
【0070】
図3、
図11に示すように、左縦メンバ71は、底部36の下面36eに設けられ、中央部71aが中底部クロスメンバ67によって車外28の下方から重ね合わされている。よって、左縦メンバ71の中央部71aは、中底部クロスメンバ67とともに底部36の下面36eに設けられる(接合される)。
【0071】
右縦メンバ72は、左縦メンバ71と略左右対称の部材であり、各構成部材に左縦メンバ71の構成部材と同じ符号を付して説明する。
【0072】
中底部クロスメンバ67を左縦メンバ71の中央部71aとともに底部36の下面36eに設け、中底部クロスメンバ67を右縦メンバ72の中央部72aとともに底部36の下面36eに設けた。
よって、例えば、車両Veの前端部に衝撃荷重F1が入力してシート23(大シート55、小シート56(
図1参照))に大きな荷重がかかった場合に、大きな荷重を左右の縦メンバ71,72を経て中底部クロスメンバ67に分散させることができる。これにより、シート23にかかった大きな荷重を良好に支えることができる。
【0073】
図12に示すように、左縦メンバ71の車幅方向左側に補強部材73が設けられる。
補強部材73は、左縦メンバ71の車幅方向左側に所定間隔をおいて、車体前後方向に延ばされている。
この補強部材73は、前端部73aに底部クロスメンバ65(左クロス端部76)が下方から重ね合わされ、後端部73bに中底部クロスメンバ67(中クロス中央部101)が下方から重ね合わされている。すなわち、補強部材73は、左クロス端部76および中底部クロスメンバ67に亘らされている。
【0074】
補強部材73の前端部73aが底部クロスメンバ65(左クロス端部76)とともに底部36の下面36eに固定される。また、補強部材73の後端部73bが中底部クロスメンバ67とともに底部36の下面36eに固定される。
この状態において、補強部材73の前端部73aは、底部36の下面36eのうち大シート55(左シート取付部21(
図1参照))が取り付けられる部位(すなわち、前左端部)に固定される。
【0075】
補強部材73の前端部73aを大シート55(左シート取付部21)が取り付けられる部位に合わせる理由はつぎの通りである。
すなわち、
図5、
図12に示すように、大シート55に複数の乗員が着座した場合、乗員の慣性力で大シート55が車体前方に移動することにより左シート取付部21に大きな荷重が作用する。
【0076】
そこで、大シート55が取り付けられる底部36の下面36eに補強部材73を設け、補強部材73の前端部73aを底部クロスメンバ65(左クロス端部76)に固定した。
よって、例えば、車両Veの前端部に衝撃荷重F1が入力して大シート55に大きな荷重がかかった場合に、大きな荷重を補強部材73に分散させることができる。これにより、大シート55にかかった大きな荷重を良好に支えることが可能になり、大シート55をフロアパン18に確実に支持できる。
【0077】
加えて、中底部クロスメンバ67を補強部材73の後端部73bとともに底部36の下面36eに設けた。これにより、大シート55にかかった大きな荷重を補強部材73を経て中底部クロスメンバ67に分散させることができる。
【0078】
図1、
図2に示すように、補強メンバ手段25で補強されたフロアパン18に左シート取付部21および右シート取付部22が設けられている。
具体的には、
図6、
図9に示すように、左シート取付部21(上取付部44)の第4取付部51は、フロアパン18(前壁35)、底部クロスメンバ65(クロス前壁81)、および底部クロスメンバ65(左クロス前壁87)に重ね合わされた状態で、各部材35,81,87とともにボルト91、ナット92で固定される。
【0079】
また、
図6、
図7に示すように、左シート取付部21(上取付部44)の第5取付部52は、フロアパン18(前壁35)、および底部クロスメンバ65(クロス前壁81)に重ね合わされた状態で、各部材35,81とともにボルト106、ナット107(締結部材)で固定される。
【0080】
さらに、
図6、
図9に示すように、左シート取付部21(下取付部43)の第1取付部47は、フロアパン18(底部36)の前端部36c、底部クロスメンバ65(クロス接合部83)、および底部クロスメンバ65(左クロス接合部89)に重ね合わされた状態で、各部材36c,83,89とともにボルト91、ナット92で固定される。
この第1取付部47は、底部36の上面36dのうち左前端部に固定される。
【0081】
加えて、
図6、
図7に示すように、左シート取付部21(下取付部43)の第2取付部48および第3取付部49は、フロアパン18(底部36)の前端部36c、底部クロスメンバ65(クロス接合部83)、および左縦メンバ71(前端部71b(
図12も参照))に重ね合わされた状態で、各部材36c、83,71bとともにボルト108、ナット109(締結部材)で固定される。
第2取付部48および第3取付部49は、底部36の上面36dのうち左前端部に固定される。
【0082】
よって、例えば、車両Veの前端部に衝撃荷重F1が入力してシート23(大シート55)に大きな荷重がかかった場合に、大きな荷重を左縦メンバ71に分散させることができる。これにより、シート23(大シート55)にかかった大きな荷重を良好に支えることが可能になり、シート23(大シート55)をフロアパン18に確実に支持できる。
【0083】
また、フロアパン18の底部36がフロア13より下方に配置されることによりフロアパン18が立体的に形成される。よって、フロアパン18の前稜線部37に沿って設けられる底部クロスメンバ65の形状が複雑になることが考えられる。
そこで、底部クロスメンバ65をクロス中央部75および左右のクロス端部76,777に分割した。
【0084】
図3、
図9に示すように、分割されたクロス中央部75に左クロス端部76が下方から重ね合わされた状態でボルト91、ナット92で連結される。さらに、分割されたクロス中央部75に右クロス端部77が下方から重ね合わされた状態でボルト91、ナット92で連結される。
【0085】
よって、分割したクロス中央部75、左クロス端部76および右クロス端部77を、立体的なフロアパン18に手間をかけることなく組み付けることができる。
これにより、フロアパン18の剛性を底部クロスメンバ65で確保し、かつ、フロアパン18に底部クロスメンバ65を組み付ける際の生産性を高めることができる。
【0086】
また、クロス中央部75の左端部75aおよび左クロス端部76の内端部85が重ね合わされ、重ね合わされた各端部75a,85が左シート取付部21および底部36とともに固定される。
さらに、クロス中央部75の右端部75bおよび右クロス端部77の内端部85が重ね合わされ、重ね合わされた各端部75b,85が右シート取付部22(
図6参照)および底部36とともに固定される。
よって、左シート取付部21をクロス中央部75および左クロス端部76(すなわち、底部クロスメンバ65)で良好に補強できる。これにより、左シート取付部21に取り付けられた大シート55をフロアパン18に確実に支持できる。
【0087】
つぎに、車両Veに衝撃荷重F3が入力した場合にシート23をフロアパン18に支持する例を
図13も基づいて説明する。なお、
図13においては、シート23のうち大シート55に荷重が作用した例について説明して、小シート56に荷重が作用した例の説明を省略する。
【0088】
図13(a)に示すように、車両Veの前端部に衝撃荷重F3が入力する。
ここで、大シート55に複数の乗員が着座し、複数の乗員がシートベルトで大シート55に拘束されている。
よって、車両Veの前端部に衝撃荷重F3が入力した場合に、大シート55に着座した乗員が慣性力で車体前方に移動する。乗員が車体前方に移動することにより大シート55に大きな荷重F4が作用する。
大シート55に大きな荷重F4が作用することにより、大シート55が車体前方に向けて矢印A方向に移動する。
【0089】
図13(b)に示すように、大シート55が矢印A方向に移動することにより後脚部61の中央部61aがフロアクロスメンバ17の角部17cに当接する。後脚部61が中央部61aを中心にして反時計回り方向に回転させる荷重が作用する。
よって、後脚部61の下端部61bから左シート取付部21に荷重F5が作用する。荷重F5は、左シート取付部21をフロアパン18から剥離させる方向に作用する。
【0090】
ここで、フロアパン18は補強メンバ手段25で補強されている。そして、補強メンバ手段25で補強されたフロアパン18に左シート取付部21が取り付けられている。よって、左シート取付部21に作用した荷重F5を補強メンバ手段25で支えることができる。
これにより、左シート取付部21がフロアパン18から剥離することを防いで、左シート取付部21(すなわち、大シート55)をフロアパン18に確実に支持することができる。
【0091】
なお、本発明に係る車体構造は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、補強部材73を車体前後方向に延ばし、かつ、前端部73aを底部クロスメンバ65に固定し、後端部73bを中底部クロスメンバ67に固定した例について説明したが、これに限定するものではい。
例えば、補強部材73を傾斜状に延ばすことも可能であり、さらに、前端部73aを除いた部位を底部クロスメンバ65に固定し、後端部73bを除いた部位を中底部クロスメンバ67に固定することも可能である。
【0092】
また、前記実施例では、縦メンバとして左右の縦メンバ71,72を備えた例について説明したが、これに限らないで、縦メンバの個数は適宜変更することが可能である。
加えて、前記実施例では、左右の縦メンバ71,72を車体前後方向に延ばした例について説明したが、これに限らないで、左右の縦メンバ71,72を、例えば傾斜状などの他の方向に延ばすことも可能である。
【0093】
さらに、前記実施例で示した車体構造、車両、フロア、左右のサイドフレーム、前クロスメンバ、フロアパン、左右のシート取付部、シート(大シート、小シート、)、前壁、底部、前稜線部、底部クロスメンバ、後底部クロスメンバ、中底部クロスメンバ、左右の縦メンバ、補強部材およびクロス中央部などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。