(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
PID制御演算により算出した操作量MVi(i=1〜n)を操作量上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して上限処理後の操作量MViを対応する制御アクチュエータに出力するPID制御部をそれぞれ備えたn個の制御系において、このn個の制御系の制御アクチュエータの使用電力を抑制する消費電力量抑制装置であって、
前記n個の制御系に対して使用電力の削減を指示する使用電力削減指示信号を受信する使用電力削減指示入力部と、
前記使用電力削減指示信号に応じて、前記n個の制御系のPID制御演算で使用される操作量上限値OHiを、特定の削減量だけ同時に下降させる操作量上限値下降処理部と、
前記n個の制御系に対して使用電力削減の緩和を指示する使用電力削減緩和指示信号を受信する使用電力削減緩和指示入力部と、
前記使用電力削減緩和指示信号に応じて、前記n個の制御系のPID制御演算で使用される操作量上限値OHiを、特定の増加量だけ同時に上昇させる操作量上限値上昇処理部とを備えることを特徴とする消費電力量抑制装置。
PID制御演算により算出した操作量MVi(i=1〜n)を操作量上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して上限処理後の操作量MViを対応する制御アクチュエータに出力するPID制御部をそれぞれ備えたn個の制御系において、このn個の制御系の制御アクチュエータの使用電力を抑制する消費電力量抑制方法であって、
前記n個の制御系に対して使用電力の削減を指示する使用電力削減指示信号を受信する使用電力削減指示入力ステップと、
前記使用電力削減指示信号に応じて、前記n個の制御系のPID制御演算で使用される操作量上限値OHiを、特定の削減量だけ同時に下降させる操作量上限値下降処理ステップと、
前記n個の制御系に対して使用電力削減の緩和を指示する使用電力削減緩和指示信号を受信する使用電力削減緩和指示入力ステップと、
前記使用電力削減緩和指示信号に応じて、前記n個の制御系のPID制御演算で使用される操作量上限値OHiを、特定の増加量だけ同時に上昇させる操作量上限値上昇処理ステップとを備えることを特徴とする消費電力量抑制方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[発明の原理]
まず「上位の電力管理」は、瞬間的な電力ではなく、一定の時間幅内での消費電力量を扱う。このような電力管理は電力デマンド対応と言うべきものであり、時間幅としては30分間が目安とされている。
PID制御されている電気ヒータ系の加熱装置では、
図1(A)に示すように、昇温時(正確な温度変化が必要ではない非生産状態)に操作量MVが概ね最大の状態(操作量MVが操作量上限値OHに到達する状態)になり電力を大量に消費するが、昇温完了して生産プロセスに入っている状態(正確な温度維持が必要な生産状態)では、実質的に保温の電力が消費される程度になり、すなわち操作量MVは最大の状態からはかなり低くなっている。
【0016】
発明者は、上記の着眼点に基づき、消費電力量を計測して消費電力量を抑える必要性が確認できた後に、操作量上限値OHを全体的に徐々に下げていくという方法に想到した。上記のとおり、昇温時に操作量MVが操作量上限値OHに到達するので、発明者が想到した方法によれば、電力抑制に関わる制御系として昇温途中の制御系が自動的に選ばれることになる。昇温途中の制御系は正確な温度変化が最優先ではない制御系であるので、
図1(B)に示すように操作量上限値OHを下げたとしても、被加熱物の品質に影響が出ることはなく、結果的に上位の電力管理システムからすれば単純で扱いやすい方法になる。すなわち、加熱対象の数が増えたり減ったりすることとは無関係に実施できる。
なお、昇温途中の制御系にとっては、操作量上限値OHが操作されることはPIDループの周波数特性が変化するものではないので、制御の不安定化などの悪影響も現れない。
【0017】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図2は本発明の第1の実施の形態に係る加熱装置の構成を示すブロック図である。加熱装置は、被加熱物を加熱するための加熱処理炉1と、加熱処理炉1の内部に設置された複数の制御アクチュエータであるヒータH1〜H4と、それぞれヒータH1〜H4によって加熱される加熱処理炉1内の制御ゾーンZ1〜Z4の温度PVを測定する複数の温度センサS1〜S4と、ヒータH1〜H4に出力する操作量MV1〜MV4を算出する消費電力量抑制装置2と、消費電力量抑制装置2から出力された操作量MV1〜MV4に応じた電力をそれぞれヒータH1〜H4に供給する電力調整器3−1〜3−4とから構成される。この
図2に示した加熱装置においては、消費電力量抑制装置2が制御ゾーンZ1〜Z4の温度PVを制御する制御系が、4個形成されていることになる。
【0018】
図3は本実施の形態の消費電力量抑制装置2の構成を示すブロック図である。消費電力量抑制装置2は、n個(nは2以上の整数、
図2の例ではn=4)の制御系に対して使用電力の削減を指示する使用電力削減指示信号を受信する使用電力削減指示入力部10と、使用電力削減指示信号に応じて、n個の制御系のPID制御演算で使用される操作量上限値OHi(i=1〜n)を、特定の削減量だけ同時に下降させる操作量上限値下降処理部11と、n個の制御系に対して使用電力削減の緩和を指示する使用電力削減緩和指示信号を受信する使用電力削減緩和指示入力部12と、使用電力削減緩和指示信号に応じて、n個の制御系のPID制御演算で使用される操作量上限値OHiを、特定の増加量だけ同時に上昇させる操作量上限値上昇処理部13と、操作量上限値下降処理部11の処理により、操作量上限値OHiが予め規定された限界値を下回る場合に、限界値を下回らないように操作量上限値OHiを修正する上限値下降下限処理部14と、上限値下降下限処理部14によって操作量上限値OHiが修正された際に、アラーム信号を出力する下限アラーム出力部15と、制御系毎に設けられたPID制御部16−iとから構成される。
【0019】
PID制御部16−iは、設定値SPi入力部17−iと、制御量PVi入力部18−iと、PID制御演算部19−iと、出力上限処理部20−iと、操作量MVi出力部21−iとから構成される。
【0020】
図4は本実施の形態の制御系のブロック線図である。各制御ループLiは、PID制御部16−iと、制御対象Piとから構成される。後述のように、PID制御部16−iは、設定値SPiと制御量PViとから操作量MViを算出して、この操作量MViを制御対象Piに出力する。
図2の例では、制御対象PiはヒータHiが加熱する加熱処理炉1の制御ゾーンZiであるが、操作量MViの実際の出力先は電力調整器3−iであり、操作量MViに応じた電力が電力調整器3−iからヒータHiに供給される。
なお、
図3の例では、消費電力量抑制装置2の内部にPID制御部16−iを設けているが、消費電力量抑制装置2の外部にPID制御部16−iを設けてもよい。
【0021】
以下、本実施の形態の消費電力量抑制装置2の動作を説明する。
図5は消費電力量抑制装置2の動作を示すフローチャートである。
使用電力削減指示入力部10は、消費電力量管理の対象に含まれるn個の制御系に関して使用電力を低下させる必要性が生じている際に、電力を管理する電力管理システムのコンピュータである上位PC4から使用電力削減指示信号を受信する(
図5ステップS100においてYES)。
【0022】
操作量上限値下降処理部11は、使用電力削減指示信号が入力されると、対象に含まれるn個の制御系のPID制御部16−1〜16−nで使用される操作量上限値OH1〜OHnを、特定の削減量だけ同時に下降させる(ステップS101)。
【0023】
一方、使用電力削減緩和指示入力部12は、消費電力量管理の対象に含まれるn個の制御系に関して使用電力削減を緩和することが可能な際に、上位PC4から使用電力削減緩和指示信号を受信する(ステップS102においてYES)。
操作量上限値上昇処理部13は、使用電力削減緩和指示信号が入力されると、対象に含まれるn個の制御系のPID制御部16−1〜16−nで使用される操作量上限値OH1〜OHnを、特定の増加量だけ同時に上昇させる(ステップS103)。
【0024】
次に、上限値下降下限処理部14は、操作量上限値下降処理部11の作用により、操作量上限値OH1〜OHnが予め規定された限界値Lxを下回る場合に(ステップS104においてYES)、限界値Lxを下回らないように操作量上限値OH1〜OHnを修正する(ステップS105)。すなわち、上限値下降下限処理部14は、OHi=Lxとする(i=1〜n)。なお、限界値Lxは、正確な温度維持が必要な生産状態(定常状態)で確保されるべき電力量や、あるいは最低限確保されるべき昇温能力の電力量に対応して規定される。
【0025】
下限アラーム出力部15は、上限値下降下限処理部14によって、操作量上限値OH1〜OHnを下降させる処理が制限された際に、上位PC4に対してアラーム信号を出力する(ステップS106)。
【0026】
次に、PID制御部16−iは、制御ループLiの操作量MViを以下のとおりに算出する。各制御ループLiの設定値SPiは、加熱装置のオペレータによって設定され、設定値SPi入力部17−iを介してPID制御演算部19−iに入力される(ステップS107)。
各制御ループLiの制御量PVi(温度計測値)は、温度センサSiによって測定され、制御量PVi入力部18−iを介してPID制御演算部19−iに入力される(ステップS108)。
【0027】
PID制御演算部19−iは、設定値SPiと制御量PViに基づいて、以下の伝達関数式のようなPID制御演算を行って操作量MViを算出する(ステップS109)。
MVi=(100/PBi){1+(1/TIis)+TDis}(SPi−PVi)
・・・(1)
PBiは比例帯、TIiは積分時間、TDiは微分時間、sはラプラス演算子である。
【0028】
出力上限処理部20−iは、以下の式のような操作量MViの上限処理を行う(ステップS110)。
IF MVi>OHi THEN MVi=OHi ・・・(2)
すなわち、出力上限処理部20−iは、操作量MViが操作量上限値OHiより大きい場合、操作量MVi=OHiとする上限処理を行う。
【0029】
操作量MVi出力部21−iは、出力上限処理部20−iによって上限処理された操作量MViを制御対象(実際の出力先は電力調整器3−i)に出力する(ステップS111)。PID制御部16−iは制御ループLi毎に設けられているので、ステップS107〜S111の処理は制御ループLi毎に実施されることになる。
消費電力量抑制装置2は、以上のようなステップS100〜S111の処理を例えばオペレータの指示によって制御が終了するまで(ステップS112においてYES)、制御周期毎に行う。
【0030】
[使用電力削減の例]
以下、本実施の形態の理解を容易にするために、下記の簡単な仮想的な例で使用電力削減について説明する。ここでは、
図6に示すように、1個の最大消費電力が1kWのヒータH1〜H20を利用した加熱制御系が、1台の製造装置(
図2の加熱装置)に4ループ含まれており、この製造装置が5−A,5−B,5−C,5−D,5−Eの計5台あるものとする。すなわち、合計で最大消費電力20kWになる20ループの加熱制御系が、消費電力量管理の対象に含まれるものとする。なお、
図6の例では、n=20であり、製造装置5−Aにおいては添え字iが1〜4、製造装置5−Bにおいては添え字iが5〜8、製造装置5−Cにおいては添え字iが9〜12、製造装置5−Dにおいては添え字iが13〜16、製造装置5−Eにおいては添え字iが17〜20となっている。また、
図6では、
図2と異なり、PID制御部(温調計)16−1〜16−20を消費電力量抑制装置2の外部に設けている。
【0031】
各加熱制御系は、PID制御によりヒータ出力が調整されている。上記のとおり、i番目のPID制御部16−iは、設定値SPi(設定温度℃)と制御量PVi(温度計測値℃)との偏差に基づき、PID演算によって操作量MVi(ヒータ出力%)を算出し、さらに操作量上限値OHi(%)によって操作量MViを上限処理する。この上限処理された操作量MViが、ヒータHiの電力調整器3−iに送られ、実際の消費電力PWiが確定する。
【0032】
まず、製造装置5−A〜5−Eが全て生産状態(定常状態)にあり、全ての設定値SP1〜SP20が200℃で、全ての制御量PV1〜PV20もほぼ正確に200℃に維持されているものとする。この状態では実質的に保温の電力が消費される程度になり、全ての操作量MV1〜MV20(ヒータ出力)が20%になっている。したがって、各ヒータH1〜H20の消費電力は0.2kWであり、合計で0.2×20の4kWになっている。ただし、この消費電力は、操作量MViとヒータHiの消費電力とが単純に線形な関係にあるものと仮定した場合の数値である。また、全ての操作量上限値OH1〜OH20が、全く下降指示を受けずに100%に設定されている。
【0033】
このとき、工場内の電力デマンド管理担当者(上位の電力管理システムのオペレータ)の判断により、製造装置5−A〜5−Eで消費が許容される消費電力の合計(総電力)が、10kWと設定されているものとする。計測されている消費電力の合計が上記のように4kWであれば、許容範囲内であるので、使用電力削減指示信号は送信されない。
【0034】
ここで、製造装置5−A〜5−Cで生産の処理対象が変更になり、製造装置5−A〜5−CのPID制御部16−1〜16−12に入力される設定値SP1〜SP12が250℃に設定変更されるものとする。製造装置5−A〜5−Cの温度センサS1〜S12によって計測される制御量PV1〜PV12が200℃で、250℃より十分低い状態なので、設定値SP1〜SP12の変更に応じたPID制御部16−1〜16−12のPID演算と上下限処理により操作量MV1〜MV12が100%に上昇する。
【0035】
製造装置5−A〜5−Cの各ヒータH1〜H12の消費電力が1kWになり、製造装置5−D,5−Eの各ヒータH13〜H20の消費電力が0.2kWのままなので、合計では13.6kWになる。許容される消費電力の合計(総電力)が10kWなので、電力デマンド管理担当者の操作により、上位PC4から使用電力削減指示入力部10に使用電力削減指示信号が入力される。
【0036】
使用電力削減指示信号の入力に伴い、操作量上限値下降処理部11は、各製造装置5−A〜5−EのPID制御部16−1〜16−20の全ての操作量上限値OH1〜OH20を特定の削減量(ここでは1%)だけ同時に下降させる。これにより、操作量上限値OH1〜OH20は99%になる。そして、製造装置5−A〜5−CのPID制御部16−1〜16−12のPID演算と上下限処理により操作量MV1〜MV12が99%になるが、このように操作量MV1〜MV12が制限を受けるのは設定値SP1〜SP12の変更に伴う昇温時であり製造装置5−A〜5−Cが非生産状態のときなので、昇温完了後の生産に不具合が生じることはない。一方、製造装置5−D,5−EのPID制御部16−13〜16−20では制御が定常状態にあり、操作量MV13〜MV20が操作量上限値OH13〜OH20=99%よりも低く、操作量上限値OH13〜OH20の影響を受けないので、やはり生産に不具合が生じることはない。
【0037】
操作量上限値OH1〜OH20を99%に下降させたことにより、製造装置5−A〜5−Cの各ヒータH1〜H12の消費電力が0.99kWになり、製造装置5−D,5−Eの各ヒータH13〜H20の消費電力が0.2kWのままなので、合計では13.48kWに下がる。許容される消費電力の合計(総電力)が10kWなので、上位PC4から使用電力削減指示入力部10に使用電力削減指示信号が継続して入力される。
【0038】
使用電力削減指示信号の継続的な入力により、操作量上限値下降処理部11は、全ての操作量上限値OH1〜OH20を1%ずつ低くすることを繰り返し、例えば70%まで下降させる。そして、製造装置5−A〜5−CのPID制御部16−1〜16−12のPID演算と上下限処理により操作量MV1〜MV12が70%になるが、このように操作量MV1〜MV12が制限を受けるのは製造装置5−A〜5−Cが非生産状態のときなので、昇温完了後の生産に不具合が生じることはない。一方、製造装置5−D,5−EのPID制御部16−13〜16−20では操作量MV13〜MV20が操作量上限値OH13〜OH20=70%よりも低く、操作量上限値OH13〜OH20の影響を受けないので、やはり生産に不具合が生じることはない。
【0039】
製造装置5−A〜5−Cの各ヒータH1〜H12の消費電力が0.7kWになり、製造装置5−D,5−Eの各ヒータH13〜H20の消費電力が0.2kWのままなので、合計では10kWに下がる。許容される消費電力の合計(総電力)が10kWなので、電力デマンド管理担当者の操作は停止し、使用電力削減指示信号の送信が停止される。
【0040】
この使用電力削減の例では、結果的に、全ての操作量上限値OH1〜OH20が70%になるという単純な処理になるが、生産に不具合が生じることなく、電力デマンド対応ができることになる。すなわち、上位の電力管理システムからすれば単純で扱いやすい消費電力量抑制方法になり、また加熱対象の数が増えたり減ったりすることとは無関係に電力管理を実施することができる。
【0041】
[使用電力削減緩和の例]
次に、
図6に示した構成に関して、上記のように使用電力削減指示信号の送信が停止した時点以降の動作を説明し、使用電力削減緩和について説明する。
昇温速度はヒータ能力のみによって決まるものではなく、被加熱物の熱容量などによっても決まるものであるので、制御量PV1〜PV12が設定値SP1〜SP12=250℃まで上昇するための所要時間は、通常は異なる。
【0042】
そこで、製造装置5−Aの制御量PV1〜PV4が、製造装置5−B,5−Cの制御量PV5〜PV12よりも早く250℃付近まで上昇するものとする。この場合、制御量PV1〜PV4が250℃に近づくことに伴い、製造装置5−AのPID制御部16−1〜16−4のPID演算と上下限処理により操作量MV1〜MV4が70%よりも小さい値(保温の電力が消費される程度)に低下する。例えば操作量MV1〜MV4が60%まで低下したとすると、製造装置5−Aの各ヒータH1〜H4の消費電力が0.6kWになり、製造装置5−B,5−Cの各ヒータH5〜H12の消費電力が0.7kWのままであり、製造装置5−D,5−Eの各ヒータH13〜H20の消費電力が0.2kWのままなので、合計では9.6kWに下がる。許容される消費電力の合計(総電力)が10kWなので、電力デマンド管理担当者の操作により、上位PC4から使用電力削減緩和指示入力部12に使用電力削減緩和指示信号が入力される。
【0043】
使用電力削減緩和指示信号の入力に伴い、操作量上限値上昇処理部13は、各製造装置5−A〜5−EのPID制御部16−1〜16−20の全ての操作量上限値OH1〜OH20を特定の増加量(ここでは1%)だけ同時に上昇させる。これにより、操作量上限値OH1〜OH20は71%になる。そして、製造装置5−B,5−CのPID制御部16−5〜16−12のPID演算と上下限処理により操作量MV5〜MV12が71%になる。操作量MV1〜MV4,MV13〜MV20は、操作量上限値OH1〜OH20=71%よりも低く、操作量上限値OH1〜OH20の影響を受けることはない。
【0044】
製造装置5−Aの各ヒータH1〜H4の消費電力が0.6kWのままであり、製造装置5−B,5−Cの各ヒータH5〜H12の消費電力が0.71kWに上がり、製造装置5−D,5−Eの各ヒータH13〜H20の消費電力が0.2kWのままなので、合計では9.68kWに上がる。許容される消費電力の合計(総電力)が10kWなので、上位PC4から使用電力削減緩和指示入力部12に使用電力削減緩和指示信号が継続して入力される。
【0045】
使用電力削減緩和指示信号の継続的な入力により、操作量上限値上昇処理部13は、全ての操作量上限値OH1〜OH20を1%ずつ高くすることを繰り返し、例えば75%まで上昇させる。そして、製造装置5−B,5−CのPID制御部16−5〜16−12のPID演算と上下限処理により操作量MV5〜MV12が75%になる。操作量MV1〜MV4,MV13〜MV20は、操作量上限値OH1〜OH20=75%よりも低く、操作量上限値OH1〜OH20の影響を受けることはない。
【0046】
製造装置5−Aの各ヒータH1〜H4の消費電力が0.6kWのままであり、製造装置5−B,5−Cの各ヒータH5〜H12の消費電力が0.75kWに上がり、製造装置5−D,5−Eの各ヒータH13〜H20の消費電力が0.2kWのままなので、合計では10kWに上がる。許容される消費電力の合計(総電力)が10kWなので、電力デマンド管理担当者の操作は停止し、使用電力削減緩和指示信号の送信が停止される。
【0047】
この使用電力削減緩和の例では、結果的に、全ての操作量上限値OH1〜OH20が75%になるという単純な処理になる。ただし、一連の処理の間に操作量MV1〜MV4が60%よりもさらに下がっている場合は、これに伴って全ての操作量上限値OH1〜OH20は75%よりも高くなる。
【0048】
[上限値下降下限処理の例]
次に、
図6に示した構成に関して、上限値下降下限処理について説明する。製造装置5−A〜5−Eでは、最低限確保されるべき昇温能力の電力量に対応して、操作量上限値OH1〜OH20の限界値Lxが60%に設定されているものとする。
まず、製造装置5−A〜5−Eが全て生産状態(定常状態)にあり、全ての設定値SP1〜SP20が200℃で、制御量PV1〜PV20もほぼ正確に200℃に維持されているものとする。この状態では、前述したとおり、全ての操作量上限値OH1〜OH20が、全く下降指示を受けずに100%に設定されている。
【0049】
ここで、製造装置5−A〜5−Eで生産の処理対象が変更になり、設定値SP1〜SP20が250℃に設定変更されるものとする。製造装置5−A〜5−Eの温度センサS1〜S20によって計測される制御量PV1〜PV20が200℃で、250℃より十分低い状態なので、設定値SP1〜SP20の変更に応じたPID制御部16−1〜16−20のPID演算と上下限処理により操作量MV1〜MV20が100%に上昇する。
【0050】
製造装置5−A〜5−Eの各ヒータH1〜H20の消費電力が1kWになり、合計では20kWになる。許容される消費電力の合計(総電力)が10kWなので、電力デマンド管理担当者の操作により、上位PC4から使用電力削減指示入力部10に使用電力削減指示信号が入力される。
【0051】
使用電力削減指示信号の継続的な入力により、操作量上限値下降処理部11は、全ての操作量上限値OH1〜OH20を1%ずつ低くすることを繰り返し、例えば60%まで下降させたとする。
製造装置5−A〜5−Eの各ヒータH1〜H20の消費電力が0.6kWになり、合計では12kWになる。許容される消費電力の合計(総電力)が10kWなので、さらに継続して全ての操作量上限値OH1〜OH20を低くする必要がある。しかし、上限値下降下限処理部14は、操作量上限値OH1〜OH20が限界値Lx=60%を下回らないように制限する。
【0052】
上限値下降下限処理部14にて操作量上限値OH1〜OH20を下降させる処理が制限されると、下限アラーム出力部15はアラーム信号を出力する。これにより、電力デマンド管理担当者は、製造装置5−A〜5−E以外の電力消費を抑制することの必要性を認識できる。
【0053】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、上位の電力管理システムの一部を自動化した構成を含むものである。本実施の形態においても、加熱装置の構成は第1の実施の形態と同様であるので、
図2の符号を用いて説明する。
【0054】
図7は本実施の形態の消費電力量抑制装置2の構成を示すブロック図である。本実施の形態の消費電力量抑制装置2は、使用電力削減指示入力部10と、操作量上限値下降処理部11と、使用電力削減緩和指示入力部12と、操作量上限値上昇処理部13と、上限値下降下限処理部14と、下限アラーム出力部15と、制御ループLi毎に設けられたPID制御部16−iと、n個の制御系のヒータの使用電力量を規定する目標電力XPの情報を受信する目標電力入力部22と、n個の制御系のヒータの使用電力の合計である瞬時総電力MPを計測する電力計測部23と、瞬時総電力MPが目標電力XPより大きい場合、使用電力削減指示信号を使用電力削減指示入力部10に送信し、瞬時総電力MPが目標電力XPより小さい場合、使用電力削減緩和指示信号を使用電力削減緩和指示入力部12に送信する電力削減判断部24とから構成される。
【0055】
図8、
図9は消費電力量抑制装置2の動作を示すフローチャートである。なお、
図8のA,Bは、それぞれ
図9のA,Bと接続されていることは言うまでもない。
目標電力入力部22には、消費電力量管理の対象に含まれるn個の制御系に関して電力デマンドに応じて決定される目標電力XPが、電力管理システムのコンピュータである上位PC4から入力される。(
図8ステップS200)。
電力計測部23は、消費電力量管理の対象に含まれるn個の制御系で使用されているヒータの消費電力の合計(瞬時総電力)MPを計測する(ステップS201)。
【0056】
電力削減判断部24は、MP>XP、すなわち瞬時総電力MPが目標電力XPより大きい場合(ステップS202においてYES)、使用電力削減指示信号を使用電力削減指示入力部10に送信する(ステップS203)。また、電力削減判断部24は、MP<XP、すなわち瞬時総電力MPが目標電力XPより小さい場合(ステップS204においてYES)、使用電力削減緩和指示信号を使用電力削減緩和指示入力部12に送信する(ステップS205)。
【0057】
使用電力削減指示入力部10の動作(ステップS100)、操作量上限値下降処理部11の動作(ステップS101)、使用電力削減緩和指示入力部12の動作(ステップS102)、操作量上限値上昇処理部13の動作(ステップS103)、上限値下降下限処理部14の動作(ステップS104、S105)、下限アラーム出力部15の動作(ステップS106)、およびPID制御部16−iの動作(ステップS107〜S111)は第1の実施の形態で説明したとおりである。
消費電力量抑制装置2は、以上のようなステップS201〜S205,S100〜S111の処理を例えばオペレータの指示によって制御が終了するまで(ステップS112においてYES)、制御周期毎に行う。
【0058】
こうして、本実施の形態では、電力管理システムのオペレータの指示に応じて電力管理システムが使用電力削減指示信号および使用電力削減緩和指示信号を送信する動作を自動化することができる。
なお、
図8の例では、目標電力XPの情報を1回だけ受信するようになっているが、上位PC4は必要に応じて情報を送信し、これにより目標電力XPの値が随時更新されるようになっていてもよい。
【0059】
第1、第2の実施の形態で説明した消費電力量抑制装置は、CPU、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1、第2の実施の形態で説明した処理を実行する。