(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、実施形態に係るインプリント装置およびインプリント方法を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るインプリント装置の構成を示す図である。インプリント装置1Aは、ナノインプリントリソグラフィ(NIL)などのインプリントリソグラフィ法(例えば、光ナノインプリント法)を行なう装置である。インプリント装置1Aは、モールド基板であるテンプレート(原版の型)T1を用いて、ウエハW1などの被転写基板(被加工基板)上にレジストパターンを形成する。
【0011】
本実施形態のインプリント装置1Aは、ウエハW1上に滴下するレジスト(光硬化性有機材料)(光硬化樹脂)2の滴下位置(配置位置)を、ウエハW1の下地パターンの歪みに基づいて設定する。換言すると、インプリント装置1Aは、レジストパターンの位置合わせ対象である下地パターンの歪み量(位置ずれ量)に基づいて、ウエハW1上の所定位置にレジスト2の配置位置を設定する。
【0012】
インプリント装置1Aは、設定した滴下位置にレジスト2を滴下し、回路パターンなどが形成されたテンプレートT1を用いてウエハW1上にテンプレートパターン(回路パターンなど)の転写を行なう。
【0013】
インプリント装置1Aは、制御機構と、インプリント処理機構と、を備えている。制御機構は、滴下制御回路10と、メイン制御部20Aと、位置制御回路21と、位置検出回路22と、テンプレート姿勢制御部23と、を有している。
【0014】
インプリント処理機構は、光源39と、アライメントスコープ(アライメントセンサ)6と、光源照射部40と、ロードセル(押印部)31と、テンプレート保持部32と、基板保持部(基板チャック)36と、ステージ37と、基準マーク台38と、液滴下装置としてのノズル(ディスペンサ)5と、を有している。
【0015】
ステージ37上には、基板保持部36が設けられている。ステージ37は、基板保持部36によってウエハW1を保持するとともに、ウエハW1と平行な平面内(水平面内)を移動することによってウエハW1の面内方向にウエハW1を移動させる。
【0016】
ステージ37は、ウエハW1上にレジスト2を滴下する際にはウエハW1をノズル5の下方側に移動させる。ステージ37は、ウエハW1への押印処理を行う際には、テンプレートT1とウエハW1とが対向するよう、ウエハW1をテンプレートT1の下方側に移動させる。
【0017】
また、ステージ37上には、基準マーク台38が設けられており、基準マーク台38上には基準マークが設けられている。基準マークは、ステージ37の位置を検出するためのマークであり、ウエハW1をステージ37上にロードする際のアライメントに用いられる。ステージ37は、6軸(x,y,z,θ,α,β)の可動方向を有しており、
ステージ定盤上を移動する。
【0018】
ロードセル31は、テンプレート保持部32を駆動することにより、テンプレートT1の位置や姿勢などを制御する。テンプレート保持部32は、テンプレートT1の裏面側(テンプレートパターンの形成されていない側の面)からテンプレートT1を固定する。
【0019】
ロードセル31は、テンプレートT1のテンプレートパターンをウエハW1上のレジスト2に押し当てる。ロードセル31は、上下方向(鉛直方向)に移動することにより、テンプレートT1のレジスト2への押し当てと、テンプレートT1のレジスト2からの引き離し(離型)と、を行う。
【0020】
ロードセル31の上部側には、アライメントスコープ6が設けられている。アライメントスコープ6は、ウエハW1とテンプレートT1との間の位置関係を検出するセンサである。アライメントスコープ6は、例えば、光源とレンズ系とCCD(Charge Coupled Device)カメラと用いて構成されている。
【0021】
本実施形態のアライメントスコープ6は、レジスト2の滴下位置を設定する際に、ウエハW1に形成されているアライメントマークの位置を検出する。アライメントスコープ6によって位置検出されるアライメントマークは、これから形成するレジストパターン(上地パターン)が位置合わせを行うためのマークであり、下地パターンを用いて形成されている。
【0022】
なお、
図1では、アライメントスコープ6が、テンプレートT1越しにアライメントマークの位置を検出する場合の構成を示しているが、アライメントスコープ6の構成は、他の構成であってもよい。
【0023】
光源39は、ロードセル31の上方に設けられており、レジスト2を硬化させる波長の光(例えばUV(Ultra-Violet-rays)光)を出力する。光源39は、例えば、365nm付近の波長を持つ高圧水銀ランプを用いて構成されている。光源照射部40は、透明部材のテンプレートT1がレジスト2に押し当てられた状態で、テンプレートT1上から光を照射する。
【0024】
インプリントに用いるレジスト2は、特定の波長の光を照射することで硬化することができる光硬化樹脂である。レジスト2は、例えば、365nm付近の波長が照射されると硬化するUV硬化樹脂である。なお、レジスト2は熱硬化性などの他の性質を有した樹脂であってもよい。
【0025】
テンプレートT1は、凹凸パターン(回路パターン)を有する透明体である。テンプレートT1の材質としては、石英、サファイア、蛍石、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム等が用いられる。なお、テンプレートT1の凹凸パターン面(ウエハW1に押し当てられる側の表面)にはフッ素系シランカップリング剤等を用いた離型用の処理を施しておいてもよい。
【0026】
ノズル5は、インクジェット方式によってウエハW1上の任意の位置にレジスト2を滴下する装置(有機材料の塗布モジュール)である。ノズル5が備えるインクジェットヘッドは、レジスト2の液滴を噴出する複数の微細孔を有している。ノズル5の複数の微細孔が同時に制御されることによって、ウエハW1上の所望位置にレジスト2を塗布(滴下)することができる。ノズル5は、滴下制御回路10からの指示に従って、ウエハW1上の所定の滴下位置にレジスト2を滴下する。
【0027】
メイン制御回路20Aは、滴下制御回路10、位置制御回路21、位置検出回路22、テンプレート姿勢制御部23を制御する。メイン制御回路20Aは、滴下制御回路10、位置制御回路21、位置検出回路22、テンプレート姿勢制御部23のそれぞれから出力データを受け取るとともに、それぞれに指示を送る。
【0028】
位置制御回路21は、ステージ37の位置を制御する回路である。位置制御回路21は、ステージ37の位置を制御することによって、ノズル5に対するウエハW1の位置や、テンプレートT1に対するウエハW1の位置を制御する。なお、位置制御回路21は、ステージ37の代わりにテンプレートT1の位置やノズル5の位置を制御してもよい。
【0029】
位置検出回路22は、アライメントスコープ6から送られてくる画像(ウエハW1やテンプレートT1の位置に関する情報)の画像処理を行うことによって、ウエハW1とテンプレートT1との間の位置情報(下地パターンの歪み量など)を算出する。位置検出回路22が生成する位置情報は、テンプレートT1に対するウエハW1(下地パターン)の位置情報である。位置検出回路22は、生成した位置情報をメイン制御回路20Aに送る。
【0030】
本実施形態のメイン制御回路20Aは、アライメント補正値算出部7を具備している。アライメント補正値算出部7は、ウエハW1に形成済みの下地パターンの歪み量に基づいて、ウエハW1に対するテンプレートT1のアライメント補正値を算出する。アライメント補正値は、ウエハW1面内における各インプリントショットの位置ずれ(ウエハW1面内の歪み)、各インプリントショット内でのパターンの位置ずれ(インプリントショット内の歪み)を補正するための情報である。アライメント補正値は、インプリントショット毎に算出される。
【0031】
アライメント補正値算出部7は、位置検出回路22から送られてくる下地パターンの位置情報に基づいて、アライメント補正値を算出し、算出したアライメント補正値を、滴下制御回路10とテンプレート姿勢制御部23に送る。
【0032】
テンプレート姿勢制御部23は、テンプレートT1の位置や姿勢(歪み)を制御する回路である。テンプレート姿勢制御部23は、ロードセル31で検出された検出信号およびウエハW1上の被加工部の面積からテンプレートT1とウエハW1との間にかかる圧力を算出する。テンプレート姿勢制御部23は、算出した圧力およびアライメント補正値算出部7で算出されたアライメント補正値に基づいて、テンプレートT1がウエハW1の下地パターンのショット形状に合致するようテンプレートT1を歪ませる。テンプレート姿勢制御部23は、テンプレート保持部32にある複数のアクチュエータを駆動させることにより、テンプレートT1を所望の形状に歪ませる。
【0033】
滴下制御回路10は、滴下レシピ記憶部11、吐出特性記憶部12、吐出量算出部13、アライメント補正値記憶部3、滴下位置補正部4、ノズル制御部16を具備している。
【0034】
滴下レシピ記憶部11は、滴下レシピを記憶するメモリなどである。滴下レシピには、レジスト2を滴下(噴出)するタイミングや滴下位置などが含まれている。滴下レシピは、例えば、レジストパターン(テンプレートパターン)に対応する設計データ(レイアウトパターンデータ)に基づいて生成される。滴下レシピは、インプリント装置1Aが生成してもよいし、インプリント装置1A以外の装置が生成してもよい。
【0035】
吐出特性記憶部12は、ノズル5がレジスト2を吐出する際のノズル5の吐出特性を記憶するメモリなどである。ノズル5の吐出特性には、インクジェットヘッドに設けられている微細孔の数や微細孔からの吐出スピードなどが含まれている。インプリント装置1Aが複数のノズル5を備えている場合、吐出特性記憶部12は、ノズル5毎に吐出特性を記憶しておく。ノズル5の吐出特性は、例えば、インプリント装置1Aから吐出特性記憶部12に入力してもよいし、インプリント装置1A以外の装置から吐出特性記憶部12に入力してもよい。
【0036】
吐出量算出部13は、滴下レシピ記憶部11が記憶している滴下レシピおよび吐出特性記憶部12が記憶しているノズル5の吐出特性に基づいて、ノズル5から吐出するレジスト5の吐出量を算出する。吐出量算出部13は、レジストパターンの形成に必要なレジスト2の量を、レジスト5の吐出量(最適吐出量)として算出する。吐出量算出部13は、算出した吐出量と、滴下レシピと、を滴下位置補正部4に送る。アライメント補正値記憶部3は、アライメント補正値算出部7から送られてくるアライメント補正値を記憶するメモリなどである。
【0037】
滴下位置補正部4は、吐出量算出部13が算出した吐出量と、アライメント補正値記憶部3が記憶しているアライメント補正値と、に基づいて、滴下レシピに設定されているレジスト2の滴下位置を補正する。滴下位置補正部4は、吐出量算出部13が算出したレジスト5の吐出量を維持しつつ、アライメント補正値に対応する位置にレジスト2が滴下されるよう、レジスト2の滴下位置を補正する。滴下位置補正部4は、レジスト2の滴下位置を補正した滴下レシピをノズル制御部16に送る。
【0038】
このように、本実施形態のインプリント装置1Aは、下地パターンのショット歪みに応じた滴下位置にレジスト2を滴下するために、レジスト2の滴下位置を補正するための滴下位置補正部4とアライメント補正値記憶部3と、を滴下制御回路10内に具備している。
【0039】
ノズル制御部16は、滴下位置補正部4が補正した滴下レシピを用いてノズル5の移動位置や駆動姿勢などを制御する。滴下レシピは、ウエハW1の下地パターンの歪みに基づいて補正されているので、ノズル5は、ウエハW1の下地パターンの歪みを補正するよう、下地パターンの歪みに応じた動作を行う。このように、ノズル5は、下地パターンに対してレジスト2が適切な位置に配置されるよう制御される。
【0040】
図2は、第1の実施形態に係るインプリント方法の処理手順を示すフローチャートである。第1の実施形態に係るインプリント方法は、下地パターンの位置情報を用いて、レジスト2の滴下位置を補正する処理を行う。
【0041】
ウエハW1へは、予め下地パターンを形成しておく。ウエハW1の下地パターンは、例えば、インプリント装置1Aを用いて形成される。ウエハW1の下地パターン上にレジストパターン(上地パターン)を形成する際には、ウエハW1がインプリント装置1A内に搬入される。
【0042】
インプリント装置1Aは、ウエハW1をステージ37上に載置して、基板保持部36によって保持する。そして、インプリント装置1Aは、基準マーク台38上の基準マークとアライメントスコープ6を用いてウエハW1のアライメントを行う。
【0043】
さらに、インプリント装置1Aは、アライメントスコープ6を用いて、ウエハW1とテンプレートT1との間の位置合わせを行う。具体的には、アライメントスコープ6が、ウエハW1に形成されているアライメントマークの位置を検出する。
【0044】
図3は、アライメントマークの位置が検出されるショットを説明するための図である。ウエハW1内には複数のインプリントショット50が配置されており、各インプリントショット50内には複数のアライメントマーク61が形成されている。なお、
図3では、説明の便宜上、アライメントマーク61は全インプリントショット50に配置されていないように記載しているが、実際には全てのインプリントショット50に対して同じようにアライメントマーク61が配置されている。
【0045】
アライメントスコープ6は、例えば、ウエハW1内の所定のショットに対してアライメントマークの位置検出を行う。換言すると、アライメントスコープ6は、全ショットのアライメントマークに対して位置検出を行うわけではなく、所定のショットに限定して位置検出を行う。
【0046】
なお、アライメントスコープ6は、全ショットのアライメントマークに対して位置検出を行ってもよい。また、各ショット内に形成するアライメントマークは、4つに限らず、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0047】
位置検出回路22は、アライメントスコープ6から送られてくる画像の画像処理を行うことによって、ウエハW1とテンプレートT1との間の位置情報(下地パターンの位置情報)を算出する。位置検出回路22は、生成した位置情報をアライメント補正値算出部7に送る。これにより、アライメント補正値算出部7は、下地パターンの位置情報を取得する(ステップS1)。
【0048】
アライメント補正値算出部7は、位置検出回路22から送られてくる下地パターンの位置情報に基づいて、アライメント補正値を算出する(ステップS2)。アライメント補正値算出部7は、所定のショットから検出された下地パターンの位置情報に対して、最小二乗法等で最適化された多項式を用いて、下地パターンのショット歪みに関する情報(アライメント補正値)を近似的に算出する。
【0049】
この算出方法では、ウエハW1内でのショット配置(グリッド)とショット形状(ショット歪み)を、それぞれの座標情報を導く多項式の形で表現しておく。これにより、ウエハW1上の各ショット座標は、前記多項式によって表される。
【0050】
アライメント補正値を算出する際には、下地パターンの位置情報から、上述したアライメント補正値もしくはウエハW1上のショット座標を示す多項式を算出する。本実施形態では、以下の式(1)〜(4)で示す多項式の係数を求めることによって、アライメント補正値を算出する。
【0053】
ここでの(DX,DY)は、ショット位置のずれ量を算出するための多項式であり、(DX,DY)の多項式中における(X,Y)は,ウエハW1面上のショット位置初期座標を示している。ショット位置初期座標は、各ショットの初期位置(最初にレジスト2を滴下する位置)である。
【0054】
また、(dx,dy)は、ショット内の各点の位置ずれ量を示しており、(dx,dy)の多項式中における(x、y)は、ショット内の理想座標を示している。上述した式(1)〜(4)の係数Kと係数kを求めることは、ショット位置ならびにショット形状の補正値を求めていることと等価である。なお、半導体製造プロセスにおけるアライメントおよび重ね合わせ補正値の算出には既に多くの手法が知られているので、ここでは詳述しない。
【0055】
また、ここでの式(1)〜(4)は、それぞれ3次成分まで含んでいるが、線形成分のみをアライメントマークの検出によって算出し、高次成分に関しては別途予め実施しておいた重ね合わせ計測結果よりフィードバックされた係数を用いてもよい。また、線形成分のみを用いてアライメント補正値を算出してもよい。さらに、重ね合わせ計測結果のフィードバック等の手法を用いれば、更に高次の多項式を用いてグリッドおよびショット形状を補正することが可能となる。
【0056】
アライメント補正値算出部7は、算出したアライメント補正値を、滴下制御回路10とテンプレート姿勢制御部23に送る。テンプレート姿勢制御部23は、テンプレートT1とウエハW1との間にかかる圧力と、アライメント補正値と、に基づいて、テンプレートT1を歪ませる。滴下制御回路10は、アライメント補正値記憶部3で、アライメント補正値算出部7から送られてくるアライメント補正値を記憶する。
【0057】
滴下位置補正部4は、吐出量算出部13が算出したレジスト2の吐出量と、アライメント補正値記憶部3が記憶しているアライメント補正値と、に基づいて、滴下レシピに設定されているレジスト2の滴下位置を補正する。
【0058】
具体的には、滴下位置補正部4は、アライメント補正値を用いて、各ショットのウエハW1面内での位置座標を補正する。これにより、ノズル5(ディスペンサ)の駆動開始位置(滴下開始位置)が予め設定された開始位置から補正される(ステップS3)。
【0059】
図4は、レジストの滴下開始位置を説明するための図である。
図4の(a)と(b)では、ウエハW1に設定されるインプリントショットの配置位置を示している。
図4の(a)は、下地パターンに対してアライメント補正する前のインプリントショット51の配置位置を示し、
図4の(b)は、下地パターンに対してアライメント補正した後のインプリントショット52の配置位置を示している。
【0060】
下地パターンに対してアライメント補正する前は、X方向およびY方向に規則正しく等間隔で各インプリントショット51が配置されている。具体的には、各インプリントショットの横方向に延びる辺はX方向に平行となり、縦方向に延びる辺はY方向に平行となるよう、各インプリントショットが格子状に配置されている。
【0061】
下地パターンに対してアライメント補正することにより、各インプリントショット51の位置は、アライメント補正値に応じた位置(インプリントショット52の位置)に補正される。これにより、ノズル5の駆動開始位置である滴下開始位置が予め設定された開始位置から補正される。
【0062】
さらに、滴下位置補正部4は、アライメント補正値を用いて、レジスト2の滴下位置をショットの歪み形状に合わせるようにノズル5の駆動姿勢および移動経路を補正する(ステップS4)。
【0063】
このとき、滴下位置補正部4は、ショット内の歪みを示す線形成分(k3,k4,k5,k6,k9,k10)の数値からショット内の歪み形状を取得し、その歪み形状に合わせるようにノズル5の各ショット内における駆動姿勢および移動経路を補正する。滴下位置補正部4は、レジスト2の滴下位置を補正した滴下レシピをノズル制御部16に送る。
【0064】
ノズル制御部16は、滴下位置補正部4が補正した滴下レシピを用いてノズル5の移動位置や駆動姿勢などを制御する。これにより、ノズル5は、滴下位置が補正された滴下レシピに従って、レジスト2をウエハW1上の所望位置に吐出する(ステップS5)。ノズル5の駆動姿勢および移動経路が補正されているので、ノズル5から吐出されたレジスト2は、ショット歪みを示す線形成分を再現するように吐出される。
【0065】
この後、インプリント装置1Aは、テンプレートT1をウエハW1上のレジスト2に押し当て(押印)、これにより、テンプレートパターンへのレジスト2の充填が行われる。テンプレートパターンを掘り込んで作製されたテンプレートT1をレジスト2に接触させると、毛細管現象によりテンプレートパターン内にレジスト2が流入する。そして、テンプレートパターンへのレジスト2の充填が完了すると、光源照射部40は、テンプレートT1上から光を照射する。
【0066】
これにより、レジスト2が硬化する。レジスト2が硬化した後、インプリント装置1Aは、テンプレートT1をレジスト2から離型する。これにより、テンプレートパターンを反転させたレジストパターンがウエハW1上に形成(転写)される(ステップS6)。この後、インプリント装置1Aは、ウエハW1をアンロードする。
【0067】
インプリント装置1Aを用いた滴下位置の補正処理およびインプリント処理は、例えばウエハプロセスのレイヤ毎に行われる。具体的には、ウエハW1上に形成するレジストパターン毎に設計データが作成され、各設計データに応じたテンプレートパターンが作成される。そして、テンプレートパターンを有したテンプレートT1が形成される。
【0068】
インプリント装置1Aは、設計データ毎に滴下位置の補正処理を行う。そして、インプリント装置1Aは、滴下位置の補正された滴下レシピを用いて、ウエハW1上にレジスト2を滴下させる。また、インプリント装置1Aは、テンプレートT1を用いてウエハW1上にレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクとしてウエハW1の下層側が加工(例えば、エッチング)される。半導体装置(半導体集積回路)を製造する際には、滴下位置の補正処理、インプリント処理、レジストパターン上からの加工処理などが、ウエハプロセスのレイヤ毎に繰り返される。
【0069】
なお、本実施の形態では、ノズル制御部16がノズル5の位置制御することにより、下地パターンに応じた位置にレジスト2を滴下することとしたが、位置制御回路21がステージ37の位置を制御することにより、下地パターンに応じた位置にレジスト2を滴下してもよい。この場合、滴下位置補正部4は、位置制御回路21にレジスト2の滴下位置に関する情報を送る。また、ノズル制御部16によるノズル5の位置制御と、位置制御回路21によるステージ37の位置制御と、の両方を行うことにより、下地パターンに応じた位置にレジスト2を滴下してもよい。
【0070】
このように、第1の実施形態によれば、ウエハW1の下地パターンの歪みに基づいて、レジスト2の滴下位置を補正するので、下地パターンに対して適切な位置にレジストを滴下することが可能となる。これにより、テンプレートT1の押印位置とレジスト2の滴下位置との間に発生する位置ずれを防止できるので、インプリント処理における未充填不良やレジスト2のはみ出し不良を防止することが可能となる。
【0071】
(第2の実施形態)
つぎに、
図5〜
図8を用いてこの発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、アライメント補正値を用いてレジスト2の吐出領域形状(後述する滴下フィールド形状)を補正し、補正した滴下フィールド形状に基づいて滴下レシピを作成する。
【0072】
図5は、第2の実施形態に係るインプリント装置の構成を示す図である。
図5の各構成要素のうち
図1に示す第1の実施形態のインプリント装置1Aと同一機能を達成する構成要素については同一符号を付しており、重複する説明は省略する。
【0073】
インプリント装置1Bは、インプリント装置1Aと比較して、メイン制御部20Aの代わりにメイン制御部20Bを有している。すなわち、インプリント装置1Bの制御機構は、滴下制御回路10と、メイン制御部20Bと、位置制御回路21と、位置検出回路22と、テンプレート姿勢制御部23と、を有している。
【0074】
メイン制御部20Bは、アライメント補正値算出部7と、ショット形状設定部8と、滴下レシピ作成部9と、を具備している。ショット形状設定部8は、アライメント補正値算出部7が算出したアライメント補正値を用いて、レジスト2を吐出する領域(滴下フィールド形状)を再設定する。滴下フィールド形状は、レジスト2を滴下するウエハW1上のショット形状であり、アライメント補正値に基づいて、ショット毎に再設定される。
【0075】
ショット形状設定部8は、アライメント補正値(下地パターンの歪み)に基づいて、上地パターンの設計データを補正することにより、滴下フィールド形状を再設定する。滴下レシピ作成部9は、下地パターンの歪みに応じた位置にレジスト2を滴下できるよう、滴下フィールド形状を補正することにより、滴下フィールド形状を再設定する。ショット形状設定部8は、補正した滴下フィールド形状を滴下レシピ作成部9に送る。
【0076】
滴下レシピ作成部9は、滴下フィールド形状に基づいて、レジスト2の滴下レシピを作成する。滴下フィールド形状は、例えば、上地パターンの設計データに応じて設定しておくものである。本実施形態では、アライメント補正値に基づいて上地パターンの設計データが補正されるよう滴下フィールド形状を再設定しているので、滴下フィールド形状は、下地パターンの歪みに応じた領域に設定されることとなる。滴下レシピ作成部9は、作成した滴下レシピを、滴下制御回路10の滴下レシピ記憶部11に送る。本実施形態の吐出量算出部13は、滴下レシピ作成部9で作成された滴下レシピを用いてレジスト2の吐出量を算出する。
【0077】
図6は、第2の実施形態に係るインプリント方法の処理手順を示すフローチャートである。第2の実施形態に係るインプリント方法は、下地パターンの位置情報を用いてレジスト2の滴下位置を補正するとともに、下地パターンの位置情報を用いて滴下レシピを作成する。なお、第1の実施形態に係るインプリント方法の処理と同様の処理については、その説明を省略する。
【0078】
ウエハW1がインプリント装置1B内に搬入された後、位置検出回路22は、アライメントスコープ6から送られてくる画像の画像処理を行うことによって、ウエハW1とテンプレートT1との間の位置情報(下地パターンの位置情報)を算出する。位置検出回路22は、生成した位置情報をアライメント補正値算出部7に送る。これにより、アライメント補正値算出部7は、下地パターンの位置情報を取得する(ステップS11)。
【0079】
アライメント補正値算出部7は、位置検出回路22から送られてくる下地パターンの位置情報に基づいて、アライメント補正値を算出する(ステップS12)。本実施形態のステップS11,S12の処理は、第1の実施形態のステップS1,S2の処理と同様の処理である。
【0080】
アライメント補正値算出部7は、算出したアライメント補正値を、滴下制御回路10、テンプレート姿勢制御部23およびショット形状設定部8に送る。ショット形状設定部8は、アライメント補正値に基づいて、滴下フィールド形状を再設定する。換言すると、ショット形状設定部8は、上地パターンの設計データに対して設定されている滴下フィールド形状を、下地パターンの歪みに基づいて補正する。これにより、下地パターンの歪みに応じた滴下フィールド形状が再設定される(ステップS13)。
【0081】
滴下フィールド形状の再設定処理は、ショット(滴下フィールド形状)の歪みを示す係数を用いて、ショット内の各点の座標を歪みに応じた位置に変換することによって行われる。ここで用いる係数は、第1の実施形態で用いた式(1)〜(4)内の各係数であり、再設定の際の座標補正に対しては、必要な次数までの係数を用いることができる。なお、インプリント装置1Bでショットの歪みを補正する次数には限界があるので、その次数と再設定の際に用いる次数とを一致させておく方が望ましい。ショット形状設定部8は、補正した滴下フィールド形状を滴下レシピ作成部9に送る。
【0082】
滴下レシピ作成部9は、再設定された滴下フィールド形状に基づいて、滴下フィールド形状に最適な滴下レシピを作成する(ステップS14)。換言すると、滴下レシピ作成部9は、再設定されたショット座標を用いて、滴下レシピを再作成する。具体的には、滴下レシピ作成部9は、テンプレートパターンの設計データの位置座標を再設定された座標系に置き換えて滴下レシピを再作成する。滴下レシピの作成方法については、例えば、特開2012−69818号公報や特開2012−69701号公報に記載の手法を適用する。これにより、下地パターンの歪みに応じた滴下レシピが作成される。滴下レシピ作成部9は、作成した滴下レシピを、滴下制御回路10の滴下レシピ記憶部11に送る。
【0083】
図7は、滴下フィールド形状と滴下位置を説明するための図である。
図7の(a)は、再設定前の滴下フィールド形状41を示し、
図7の(b)は、再設定された滴下フィールド形状42を示している。また、
図7の(c)は、再設定された滴下フィールド形状42に設定されるレジスト2の滴下位置を示している。
【0084】
再設定前の滴下フィールド形状41は、矩形状であり、滴下フィールド形状41内の座標は等間隔で並んでいる。再設定された滴下フィールド形状42は、例えば、滴下フィールド形状41の矩形状を歪ませた形状である。再設定された滴下フィールド形状42内の座標は、等間隔で並ぶことなく、下地パターンの歪みに応じた座標が設定される。
【0085】
再設定された滴下フィールド形状42に用いる滴下レシピには、レジスト2の滴下位置44が設定される。滴下位置44は、滴下フィールド形状42内の座標に応じた位置となるので、滴下位置44は、下地パターンの歪みに応じた位置となる。換言すると、滴下位置44は、ショットの歪み成分が補正される位置である。このように、レジスト2は、下地パターンの歪みに応じた滴下位置に滴下される。
【0086】
吐出量算出部13は、滴下レシピ作成部9で作成された滴下レシピを用いてレジスト2の吐出量を算出する。さらに、滴下位置補正部4は、レジスト2の吐出量と、アライメント補正値と、に基づいて、滴下レシピに設定されているレジスト2の滴下位置を補正する。
【0087】
具体的には、滴下位置補正部4は、アライメント補正値を用いて、各ショットのウエハW1面内での位置座標を補正する。これにより、レジスト2の滴下開始位置が予め設定された開始位置から補正される(ステップS15)。
【0088】
さらに、滴下位置補正部4は、アライメント補正値を用いて、レジスト2の滴下位置をショットの歪み形状に合わせるようにノズル5の駆動姿勢および移動経路を補正する(ステップS16)。滴下位置補正部4は、レジスト2の滴下位置を補正した滴下レシピをノズル制御部16に送る。
【0089】
これにより、ノズル制御部16は、滴下レシピ作成部9で作成されて滴下位置補正部4で補正された滴下レシピを用いてノズル5を制御し、レジスト2をウエハW1上の所望位置に吐出する(ステップS17)。このとき、ノズル制御部16は、滴下レシピを用いてノズル5の移動位置や駆動姿勢などを制御する。
【0090】
この後、インプリント装置1Bは、テンプレートT1をレジスト2に押し当てて、テンプレートパターンにレジスト2を充填する。そして、テンプレートパターンへのレジスト2の充填が完了すると、光源照射部40は、テンプレートT1上から光を照射してレジスト2を硬化させる。
【0091】
レジスト2が硬化した後、インプリント装置1Bは、テンプレートT1をレジスト2から離型する。これにより、テンプレートパターンを反転させたレジストパターンがウエハW1上に転写される(ステップS18)。
【0092】
つぎに、インプリント装置1A,1Bが備える制御機構のハードウェア構成について説明する。なお、ここではインプリント装置1Aが有する制御機構とインプリント装置1Bが有する制御機構とは、同様のハードウェア構成を有しているので、インプリント装置1Bが有する制御機構のハードウェア構成について説明する。
【0093】
図8は、制御機構のハードウェア構成を示す図である。制御機構は、CPU(Central Processing Unit)91、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)93、表示部94、入力部95を有している。制御機構では、これらのCPU91、ROM92、RAM93、表示部94、入力部95がバスラインを介して接続されている。
【0094】
CPU91は、コンピュータプログラムである滴下位置補正プログラム97を用いてレジスト滴下位置の補正を行う。滴下位置補正プログラム97は、コンピュータで実行可能な、滴下位置を補正するための複数の命令を含むコンピュータ読取り可能かつ非遷移的な記録媒体を有するコンピュータプログラムプロダクトである。滴下位置補正プログラム97では、前記複数の命令が、滴下位置の補正処理をコンピュータに実行させる。
【0095】
表示部94は、液晶モニタなどの表示装置であり、CPU91からの指示に基づいて、下地パターンの位置(アライメントマークの座標)、アライメント補正値、滴下フィールド形状、滴下レシピ、吐出特性、吐出量、補正後の滴下位置などを表示する。
【0096】
入力部95は、マウスやキーボードを備えて構成され、使用者から外部入力される指示情報(レジスト滴下位置の補正に必要なパラメータ等)を入力する。入力部95へ入力された指示情報は、CPU91へ送られる。
【0097】
滴下位置補正プログラム97は、ROM92内に格納されており、バスラインを介してRAM93へロードされる。
図8では、滴下位置補正プログラム97がRAM93へロードされた状態を示している。
【0098】
CPU91はRAM93内にロードされた滴下位置補正プログラム97を実行する。具体的には、制御機構では、使用者による入力部95からの指示入力に従って、CPU91がROM92内から滴下位置補正プログラム97を読み出してRAM93内のプログラム格納領域に展開して各種処理を実行する。CPU91は、この各種処理に際して生じる各種データをRAM93内に形成されるデータ格納領域に一時的に記憶させておく。
【0099】
制御機構で実行される滴下位置補正プログラム97は、アライメント補正値算出部7、ショット形状設定部8、滴下レシピ作成部9、吐出量算出部13、滴下位置補正部4を含むモジュール構成となっており、これらが主記憶装置上にロードされ、これらが主記憶装置上に生成される。
【0100】
このように、第2の実施形態によれば、ウエハW1の下地パターンの歪みに基づいて、滴下レシピを作成するので、下地パターンに対して適切な位置にレジストを滴下することが可能となる。
【0101】
このように第1および第2の実施形態によれば、下地パターンに対して適切な位置にレジストを滴下することが可能となる。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。