特許第5813689号(P5813689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5813689
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月17日
(54)【発明の名称】車両制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 28/06 20060101AFI20151029BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20151029BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20151029BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20151029BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
   B60K28/06 B
   B60W40/08
   F02D29/02 311C
   F02D29/02 311H
   G08G1/16 F
   B60T7/12 Z
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-77068(P2013-77068)
(22)【出願日】2013年4月2日
(65)【公開番号】特開2014-201121(P2014-201121A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2014年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昭夫
【審査官】 黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−202655(JP,A)
【文献】 特開2011−073503(JP,A)
【文献】 特開2008−204213(JP,A)
【文献】 特開2010−047055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 40/08
G08G 1/16
B60K 28/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者を対象としてアルコールの濃度を検知するアルコール検知手段と、
前記アルコール検知手段によって所定値以上のアルコールの濃度が前記運転者から検知された場合に前記運転者が飲酒状態であると判定するとともに、前記車両を停止させる車両停止手段と、
前記車両のドアが閉鎖状態から開放状態に切り替えられてから前記車両の始動が指示されるまでの間に前記アルコール検知手段による検知を開始、前記アルコール検知手段からアルコールの濃度の検知結果が出力される以前に前記車両の発進を許可するとともに、前記アルコール検知手段からアルコールの濃度の検知結果が出力されるまでの間は、前記車両の速度を所定速度以下に規制する車両制御手段と、
を備える、
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
前記車両制御手段は、
前記車両の前記速度規制をスロットルアクチュエータまたはブレーキアクチュエータの制御により行う
ことを特徴とする請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記車両制御手段は、
前記車両停止手段が、前記運転者が飲酒状態でないと判定した場合には、前記車両の前記速度規制を解除する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記車両制御手段によって制御可能な報知手段を備え、
前記車両制御手段は、前記アルコール検知手段による検知を開始する際に、前記アルコール検知手段によって前記所定値以上のアルコールの濃度が検知された場合には所定時間以内に前記車両が停止すること、または前記アルコール検知手段から検知結果が出力されるまでの間は、前記車両の速度が前記所定速度以下に規制されることを、前記報知手段によって前記車両の乗員に報知する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルコール検知の対象者に車両を運転する意思がなく、エンジン始動のみを行ないたい場合に、わざわざアルコール検知を行なうという煩雑さを解消するために、アイドリングを要求する操作手段が操作されたときに、アルコール検知の結果を問わずに(つまりアルコール検知の実行有無を問わずに)エンジンの始動を許容し、かつ走行を禁止するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−1101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係るシステムによれば、アルコール検知の対象者が飲酒しておらず、かつ車両を運転する意思がある場合には、先ず、アルコール検知の実行を開始するアルコール検知スイッチを操作する必要があり、車両始動時の運転操作が煩雑になるという問題が生じる。さらに、アルコール検知の実行が開始されてから、アルコール検知の検知結果が出力されて、車両が走行可能になるまでに所定の待ち時間を要してしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、所望の利便性を確保しつつ飲酒運転を適切に防止することが可能な車両制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係る車両制御システムは、車両(例えば、実施形態での車両1)の運転者を対象としてアルコールの濃度を検知するアルコール検知手段(例えば、実施形態でのアルコール検査器11)と、前記アルコール検知手段によって所定値以上のアルコールの濃度が前記運転者から検知された場合に前記運転者が飲酒状態であると判定するとともに、前記車両を停止させる車両停止手段(例えば、実施形態での車両制御部21および走行制御部22)と、前記車両のドアが閉鎖状態から開放状態に切り替えられてから前記車両の始動が指示されるまでの間に前記アルコール検知手段による検知を開始、前記アルコール検知手段からアルコールの濃度の検知結果が出力される以前に前記車両の発進を許可するとともに、前記アルコール検知手段からアルコールの濃度の検知結果が出力されるまでの間は、前記車両の速度を所定速度以下に規制する車両制御手段(例えば、実施形態での車両制御部21が兼ねる)と、を備える。
【0007】
(2)上記(1)に記載の車両制御システムでは、前記車両制御手段は、前記車両の前記速度規制をスロットルアクチュエータまたはブレーキアクチュエータの制御により行ってもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載の車両制御システムでは、前記車両制御手段は、前記車両停止手段が、前記運転者が飲酒状態でないと判定した場合には、前記車両の前記速度規制を解除してもよい。
【0008】
)上記(1)から(3)の何れか1つに記載の車両制御システムでは、前記車両制御手段によって制御可能な報知手段(例えば、実施形態での報知装置18)を備え、前記車両制御手段は、前記アルコール検知手段による検知を開始する際に、前記アルコール検知手段によって前記所定値以上のアルコールの濃度が検知された場合には所定時間以内に前記車両が停止すること、または前記アルコール検知手段から検知結果が出力されるまでの間は、前記車両の速度が前記所定速度以下に規制されることを、前記報知手段によって前記車両の乗員に報知してもよい。
【発明の効果】
【0009】
上記(1)に記載の態様に係る車両制御システムによれば、アルコール検知手段による検知が開始されてから検知結果が出力されるまでの時間を待たずに車両を発進させることができ、アルコール検知手段を備えていない車両と同等の利便性を確保しつつ、飲酒運転を適切に防止することができる。
さらに所望の走行安全性を確保することができる。
さらに、上記()の場合、飲酒者に対して運転意欲を減退させ、飲酒運転を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る車両制御システムの構成図である。
図2】本発明の実施形態に係るアルコール検査器の配置を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る車両制御システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の車両制御システムの一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
本実施形態による車両制御システム10は、図1に示すように、アルコール検査器11と、車両状態センサ12と、入力デバイス13と、処理装置14と、スロットルアクチュエータ15と、ブレーキアクチュエータ16と、ステアリングアクチュエータ17と、報知装置18と、を備えて構成されている。さらに、処理装置14は、車両制御部21と、走行制御部22と、を備えている。
【0012】
アルコール検査器11は、例えば図2に示すように、車両1の運転席1aの周辺に配置されている。アルコール検査器11は、例えば、ステアリングコラムカバー31の上面に設けられた呼気吹きかけ型のアルコールセンサ11A、ステアリングホイール32よりも車幅方向外側のインスツルメントパネル33に配置された呼気吹き込み型のアルコールセンサ11B、ステアリングホイール32に設けられたタッチ型のアルコールセンサ11Cなどである。
呼気吹きかけ型のアルコールセンサ11Aおよび呼気吹き込み型のアルコールセンサ11Bは、検査対象者の呼気中に含まれるアルコールの濃度を検出する。
タッチ型のアルコールセンサ11Cは、検査対象者の手のひらや指の表面から分泌される汗などに含まれるアルコールの濃度や皮下組織に含まれるアルコールの濃度を検出する。
【0013】
車両状態センサ12は、車両1の各種の車両情報を検知し、検知した車両情報の信号を出力する。
車両状態センサ12は、車両1の駆動輪の回転速度(車輪速)を検出する車輪速センサと、車体に作用する加速度を検知する加速度センサと、車体の姿勢や進行方向を検知するジャイロセンサと、車体のヨーレート(車両重心の上下方向軸回りの回転角速度)を検知するヨーレートセンサと、を備えている。また、車両状態センサ12は、人工衛星を利用して自車両の位置を測定するための測位システム(例えば、Global Positioning System:GPSまたはGlobal Navigation Satellite System:GNSSなど)の測位信号を受信する受信機を備えている。車両状態センサ12は、測位信号に基づいて車両1の現在位置を検出するとともに、車輪速に基づく車両1の速度およびヨーレートなどを用いた自律航法の演算処理を併用して、車両1の現在位置を検出可能である。また、車両状態センサ12は、車両1のドアの閉鎖状態および開放状態に応じた信号を出力するセンサを備えている。
入力デバイス13は、操作者の入力操作に応じた各種の信号を出力する。
【0014】
処理装置14の車両制御部21は、車両1の状態および動作を制御する。
車両制御部21は運転席1aの周辺のアルコール検査器11によって検知されたアルコールの濃度に基づき、検査対象者である運転者が飲酒状態であるか否かを検知する。例えば、アルコール検査器11によって所定値以上のアルコールの濃度が検知された場合に運転者が飲酒状態であると判定する。そして、運転者が飲酒状態であることを検知した場合に、車両1が走行中であれば、報知装置18から警報を出力し、走行制御部22によって車両1を自動的に減速および走行停止させる。さらに、所定条件に応じて車両1の駆動源(例えば、内燃機関など)を停止させる。一方、車両1の走行中に運転者が飲酒状態ではないことを検知した場合には、車両1の運行継続を許可する。
【0015】
車両制御部21は、車両1の停止状態で車両1のドアが閉鎖状態から開放状態に切り替えられてから運転者によって車両1の始動が指示されるまでの間にアルコール検査器11による検知を開始するとともに、アルコール検査器11から検知結果が出力される以前に車両1の発進を許可する。さらに、車両制御部21は、アルコール検査器11による検知を開始かつ車両1の発進を許可した以後に、アルコール検査器11から検知結果が出力されるまでの間は、走行制御部22によって車両1の速度を所定速度(例えば、15km/hなど)以下に規制する。
車両制御部21は、アルコール検査器11による検知を開始する際に、アルコール検査器11によって所定値以上のアルコールの濃度が検知されて運転者が飲酒状態であると判定された場合には所定時間以内に車両1が停止することを、報知装置18によって運転者に報知する。また、車両制御部21は、アルコール検査器11による検知を開始する際に、アルコール検査器11から検知結果が出力されるまでの間は、車両1の速度が所定速度以下に規制されることを、報知装置18によって運転者に報知する。
【0016】
走行制御部22は、車両制御部21の制御に応じて車両1を自動的に減速および走行停止させる場合などにおいて、スロットルアクチュエータ15を制御して車両1の加速を制御したり、ブレーキアクチュエータ16を制御して車両1の減速を制御したり、ステアリングアクチュエータ17を制御して車両1の転舵を制御する。
【0017】
報知装置18は、例えば、触覚的伝達装置と、視覚的伝達装置と、聴覚的伝達装置とを備えて構成されている。
触覚的伝達装置は、例えばシートベルト装置や操舵制御装置等であって、車両制御部21から入力される制御信号に応じて、例えばシートベルトに所定の張力を発生させて車両1の運転者が触覚的に知覚可能な締め付け力を作用させたり、例えばステアリングホイール32に運転者が触覚的に知覚可能な振動(ステアリング振動)を発生させる。視覚的伝達装置は、例えば表示装置等であって、車両制御部21から入力される制御信号に応じて、例えば表示装置に所定の警報情報を表示したり、所定の警報灯を点滅させる。聴覚的伝達装置は、例えばスピーカ等であって、車両制御部21から入力される制御信号に応じて所定の警報音や音声等を出力する。
【0018】
本実施形態による車両制御システム10は上記構成を備えており、次に、車両制御システム10の動作について説明する。
なお、図3に示す処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
先ず、図3に示すステップS01においては、車両1の停止状態で運転席1a側のドアが閉鎖状態から開放状態に切り替えられたことなどによって、運転者が車両1に乗車したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS02に進む。
そして、ステップS02においては、運転者を検査対象者として、アルコール検査器11による検知を開始する。さらに、アルコール検査器11から検知結果が出力されるまでの間は、車両1の速度が所定速度以下に規制されること、および運転者が飲酒状態であると判定された場合には所定時間以内に車両1が停止すること、を報知する。
【0019】
次に、ステップS03においては、車両1の始動および発進を許可する。
次に、ステップS04においては、走行制御部22によって車両1の走行時の速度を所定速度以下に規制する。
次に、ステップS05においては、アルコール検査器11による検知が終了したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS05の判定処理を繰り返し実行する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS06に進む。
【0020】
そして、ステップS06においては、運転者は飲酒状態であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS07に進み、このステップS07においては、車両1の運行継続を許可し、車両1の速度規制を解除し、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS08に進み、このステップS08においては、報知装置18から警報を出力する。
そして、ステップS09においては、走行制御部22によって車両1を自動的に減速および走行停止させ、必要に応じて車両1の駆動源(例えば、エンジンなど)を停止させ、エンドに進む。
【0021】
上述したように、本実施形態の車両制御システムによれば、アルコール検査器11による検知が開始されてから、検知結果が出力されるまでの時間を待たずに車両1を発進させることができ、アルコール検査器11を備えていない車両と同等の利便性を確保しつつ、飲酒運転を適切に防止することができる。さらに、アルコール検査器11による検知を開始した以後に、アルコール検査器11から検知結果が出力されるまでの間は、走行制御部22によって車両1の速度を所定速度以下に規制することによって、所望の走行安全性を確保することができる。さらに、運転者の飲酒状態を検知した場合に、車両1が停止すること、またはアルコール検査器11から検知結果が出力されるまでの間は速度が規制されることを報知することによって、飲酒者に対して運転意欲を減退させ、飲酒運転を防止することができる。
【0022】
なお、上述した実施形態においては、ステップS01からステップS09の処理において、運転者が車両1に乗車した場合に自動的にアルコール検査器11による検知を開始するとしたが、これに限定されず、例えば呼気吹き込み型のアルコールセンサ11Bなどのように検査対象者による能動的な所定動作(息の吹き込みなど)が必要とされるアルコール検査器11のみを備える場合には、この所定動作の実行を促す報知を行ない、この報知に応じて所定動作の実行が開始された後に車両1の始動および発進を許可する。
【0023】
上述の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述の新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上述の実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0024】
1 車両
10 車両制御システム
11 アルコール検査器(アルコール検知手段)
14 処理装置
18 報知装置(報知手段)
21 車両制御部(車両制御手段、車両停止手段)
22 走行制御部(車両停止手段)
図1
図2
図3