(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンの運転領域として高回転高負荷側の第1運転領域と、第1運転領域より燃費効率の良い低回転低負荷側の第2運転領域とがあり、前記第2運転領域から前記第1運転領域に移行する前後にアクセルペダルに反力を付与するアクセルペダル踏力制御方法において、
前記第2運転領域と前記第1運転領域との境界となるアクセルペダルの踏み込み量を閾値とし、前記閾値の両側に傾斜領域を設定し、運転者のアクセルペダル操作が前記傾斜領域の下限値に達したら前記踏み込み量と前記傾斜領域の下限との差に比例し、傾斜領域の上限に達したとき所定の大きさになる反力と、前記アクセルペダルの踏み込み量と前記閾値との差を時間積分することによって算出する反力との両反力を合成した反力を前記アクセルペダルに付与することを特徴とするアクセルペダル踏力制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2のヒステリシスを付与する方法の場合、ヒステリシス幅を大きくすれば、上記のばたつきを効果的に防止することができる。しかし、ヒステリシス幅を大きくすると、非エコモードでの運転時間が長くなるので、燃費が悪化することになる。そのため、ヒステリシス幅は極力小さくしたい。しかし、ヒステリシス幅を小さくすると、以下のようなばたつきの問題が起こることになる。
【0010】
図8は、このヒステリシスを付加した場合のアクセルペダルの踏み込み量と反力の関係を示す図である。ここでヒステリシス幅は、設計により任意に設定できる数値で、ここでは、閾値の両側に同じ大きさで設けている。
【0011】
図8(a)は、アクセルペダルへの反力の付加と除去のタイミングを示す図である。縦軸が反力で、横軸がアクセルペダルの踏み込み量である。踏み込む量が第2運転領域(エコモード)から第1運転領域(非エコモード)の境界である閾値を越え、ヒステリシス幅の半分(ヒステリシスの上限)を過ぎた踏み込み量で、反力が立ち上がるようにしている。逆に反力が消滅するのは、踏み込み量が減少し、第1運転領域から第2運転領域の境界である閾値を越え、さらにヒステリシスの半分(ヒステリシスの下限)を過ぎた踏み込み量で、消滅するようにしている。このようにヒステリシスを付与することで、ばたつき状態を防止することができる。
【0012】
図8(b)はヒステリシスを設けた場合であって、アクセルペダルを踏み込んだ状態から戻す場合を示す。上側の線図が「踏み込み量」−「時間」の線図で、下の線図が「反力」−「時間」の線図である。アクセルペダルを踏み込んだ状態では、第1運転領域(非エコモード)にあるので、反力が働いた状態になっている。この状態から踏み込み量が減少し、閾値からヒステリシス幅の半分より少ない踏み込み量(ヒステリシスの下限)に達したとき、反力を消滅させる。すると、運転者はアクセルペダルに加わる抵抗力がなくなったので、アクセルペダルを踏み込んでしまう。踏み込み量が増加していき、閾値からヒステリシス幅の半分(ヒステリシスの上限)を越えたとき、反力が発生する。すると、アクセルペダルは反力により踏み込み方向と反対側へ戻されるため、踏み込み量が減少する。さらに、踏み込み量が、閾値からヒステリシスの下限に達したとき、反力が消滅する。運転者はアクセルペダルに加わる抵抗力が消滅したので、アクセルペダルを踏み込んでしまう。すると、踏み込み量が増加し、閾値からヒステリシスの上限を越えると再び反力が加わり、踏み込み量が強制的に減少させられる。踏み込み量が再び閾値を下回り、閾値からヒステリシスの下限まで下がった踏み込み量になったら、反力が消滅するので、また、踏み込んでしまう。このように、閾値付近では、反力のON,OFFが繰り返されることになり、アクセルペダルのばたつきを起こすことになる。
【0013】
図8(c)はヒステリシスを設けた場合であって、アクセルペダルを踏み込んでいく場合を示す。アクセルペダルを踏み込んでいって、車速に応じたある踏み込み量に達すると、第2運転領域(エコモード)と第1運転領域(非エコモード)の境界である閾値に達する。閾値からヒステリシスの上限に達したとき、アクセルペダルに反力を加える。すると、アクセルペダルは踏み込み方向と反対側へ戻されるため、踏み込み量が減少する。踏み込み量が閾値を下回り、閾値からヒステリシスの下限の踏み込み量になったら、反力が消滅する。すると、運転者は、元々加速しようとしていたのであるから、反力が消滅したので、再びアクセルペダルを踏み込む。踏み込み量が閾値からヒステリシスの上限を越えると、再び反力が加わり、踏み込み量が強制的に減少させられる。踏み込み量が再び閾値を下回り、閾値からヒステリシスの下限まで下がった踏み込み量になったら、反力が消滅するので、また、踏み込んでしまう。このような場合においても、運転者の意に反してばたつき状態が繰り返されることになる。
【0014】
本発明は、斯かる実情に鑑み、アクセルペダルのばたつきを無くすことができるアクティブ制御機構を備えたアクセルペダル踏力制御装置と制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために本発明のアクセルペダル踏力制御装置は、運転者のアクセルペダル操作に対して反力を付与する反力装置と、前記アクセルペダルの開度を検知するアクセル開度検出手段と、走行中の車両状態に基づいて運転領域が変化する閾値情報を取得する閾値情報取得手段と、前記アクセルペダル開度及び前記閾値情報により反力を設定する反力設定手段とを備えたアクセルペダル踏力制御装置において、前記反力設定手段は、第1の反力演算手段又は第2の反力演算手段を有し、前記第1の反力演算手段は、前記閾値の両側に傾斜領域を設定し、前記踏み込み量が前記傾斜領域の下限に達したら、前記第1の反力演算手段が、前記下限からの踏み込み量に比例し、傾斜領域の上限に達したとき所定の大きさになる反力を演算し、前記第2の反力演算手段は、前記アクセルペダルの踏み込み量と前記閾値との差を時間積分することによって反力を演算し、前記反力設定手段は、前記第1の反力演算手段又は前記第2の反力演算手段により算出された反力を出力することを特徴としている。
【0016】
前記反力設定手段は、前記第1の反力演算手段及び前記第2の反力演算手段の双方を備え前記第1の反力演算手段及び前記第2の反力演算手段により算出された反力を合成して反力を出力する構成としたり、前記反力設定手段において、前記アクセルペダルの反力を解除する反力解除開度は、前記アクセルペダルの反力を出力する反力出力開度よりも小さい開度である構成としてもよい。
【0017】
上記の目的を達成するために本発明のアクセルペダル踏力制御方法は、エンジンの運転領域として高回転高負荷側の第1運転領域と、第1運転領域より燃費効率の良い低回転低負荷側の第2運転領域とがあり、前記第2運転領域から前記第1運転領域に移行する前後にアクセルペダルに反力を付与するアクセルペダル踏力制御方法において、前記第2運転領域と前記第1運転領域との境界となるアクセルペダルの踏み込み量を閾値とし、前記閾値の両側に傾斜領域を設定し、運転者のアクセルペダル操作が前記傾斜領域の下限値に達したら前記踏み込み量と前記傾斜領域の下限との差に比例し、傾斜領域の上限に達したとき所定の大きさになる反力と、前記アクセルペダルの踏み込み量と前記閾値との差を時間積分することによって算出する反力の少なくともいずれか一方の反力を前記アクセルペダルに付与することを特徴としている。
【0018】
前記踏み込み量と前記傾斜領域の下限との差に比例し、傾斜領域の上限に達したとき所定の大きさになる前記反力と、前記アクセルペダルの踏み込み量と前記閾値との差を時間積分することによって算出する前記反力との両反力を合成した反力を前記アクセルペダルに付与する構成としたり、前記アクセルペダルの反力を解除する反力解除開度は、前記アクセルペダルの反力を出力する反力出力開度よりも小さい開度である構成とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、アクセルペダルを踏み込む場合、踏み込み速度が遅いときは、傾斜領域の下限に達したら、まず、下限からのアクセルペダルの踏み込み量に比例した反力を加える。この反力は踏み込み量に対応して比較的ゆっくり立ち上がるので、アクセルペダル踏み込み時のばたつきを防止することができる。又は、更に、踏み込んでいってアクセルペダルの踏み込み量が、第1運転領域と第2運転領域との境界となる閾値を越えたら、アクセルペダルの踏み込み量と閾値との差を時間積分し、この積分による反力を加える。積分による反力の増加速度は、アクセルペダルの踏み込み量に対応した反力(ストローク基準の反力)の増加速度より急速なので、反力が急激に上昇することになり、閾値を越えたことを運転者に正確に知らせる事が出来る。運転者は反力が急激に上昇したことで、踏力を弱めるが、これによって、反力も減少する。しかし、反力の減少速度が遅いので、運転者が再度踏み込むことがなくなり、アクセルペダル戻し時においてもばたつきを防止することができる。
【0020】
傾斜領域の下限からのアクセルペダルの踏み込み量に比例した反力と、アクセルペダルの踏み込み量と閾値との差を時間積分し、この積分による反力の双方を加えることにすると、閾値を越えたことを運転者にさらに正確に知らせる事が出来る。
【0021】
一方、アクセルペダルが速く動く時は、アクセルペダルの踏み込み量に比例した反力も、積分要素による反力もともに急激に立ち上がるので、早期に運転者の過度な踏み込みを防止できる。
【0022】
この様にして、ストローク基準の反力と踏み込み量と閾値との差を積分する積分要素を組み合わせる事により、足の踏力と反力との間で、アクセルペダルのばたつきを起こす事なく、閾値のポイントを運転者に正確に認識させる事が出来る。
【0023】
更に、反力に積分要素を加えることで、アクセルペダルの動きが遅い時と速い時で、アクセルペダルの踏み込み量(ストローク量)が閾値を過ぎてから反力が最大値になるまでの時間の差を小さくすることができ、運転者は、常に、同じフィーリングで閾値を認識することができる。
【0024】
よって、ペダルの動作が速いときにもフィーリングは良く、遅い時にもばたつきを防止出来て運転者は精度良く閾値を認識出来る。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明のアクセルペダル装置の斜視図で、
図2は、側面図である。これらの図に示すように本発明のアクセルペダル装置は、自動車等の車体に固定されるハウジング10、アクセルペダル22を有しハウジング10により規定される所定の揺動軸線L1を中心として揺動自在に支持されたペダルアーム20、ペダルアーム20の踏み込み量(回転角度)を検出するアクセル開度検出手段(APS)30、所定条件下においてペダルアーム20を休止位置に向けて押し戻す力(反力)を生じさせるための反力装置40、反力装置40の駆動制御を行う制御ユニット50等を備えている。ハウジング10は、内部でペダルアーム20を軸支している。また、ハウジング10内には、前述した反力を付与する機構に加え、ペダルアーム20を休止位置に戻す付勢力を及ぼす復帰バネも設けられている。
【0027】
図3は、本発明のアクセルペダル装置の制御装置のブロック図であり、(a)はシステムブロック図であり、(b)は制御ブロックを示している。アクセルペダル装置は、制御ユニット50が反力装置40を制御することによって動作する。
【0028】
制御ユニット50には、マイクロコンピュータ(以下「マイコン」と略称する)60が設けられている。マイコン60には電源回路52と、上位ECU57からの閾値情報を受けるインターフェース回路53と、反力装置40のトルクモータ41を駆動する駆動回路54と、このトルクモータ41に流れる電流を計測する電流検出回路55と、トルクモータ41の回転位置を検知するモータポジションセンサ(MPS)42の情報を入力するためのMPS入力回路56と、アクセル開度検出手段(APS)30の情報を入力するためのAPS入力回路57が接続されている。
【0029】
マイコン60は、CPU、メモリ等を備えており、インストールされているプログラムに従って入力された情報を処理する。また、マイコン60には、走行中の車両状態に基づいて上位ECU57から閾値情報を取得する情報取得手段61と、アクセルペダル22の開度及び閾値情報により反力を設定する反力設定手段62と、反力設定手段62にて設定された反力を発生させるための電流量を計算するモータ駆動電流設定手段65と、モータ駆動電流設定手段65にて計算された電流情報とトルクモータ41に通電されている電流値とに基づいて電流量を制御する駆動電流制御手段66がある。さらに、反力設定手段62内には、第1の反力演算手段63と第2の反力演算手段64とがある。第1の反力演算手段63は、アクセルペダル22の踏み込み量に比例した反力を算出するもので、第2の反力演算手段64は、アクセルペダル22の踏み込み量と閾値との差の積分値に対応した反力を算出するものである。これら反力演算手段については、後述する。
【0030】
反力装置40は、トルクモータ41と、トルクモータ41の回転位置を検知するMPS42を有し、マイコン60内の反力設定手段62からの指示によりトルクモータ41を駆動して、アクセルペダル22に反力を加える。トルクモータ41の回転角は、MPS42により検出され、MPS入力回路56を経由してマイコン60内のモータ駆動電流設定手段65と反力設定手段62に伝達される。
【0031】
アクセルペダル22の踏み込み量は、アクセル位置を表しており、アクセル位置は、アクセルペダル22に加わる踏力や、トルクモータ41からの反力によりその位置が変化する。そのため、APS30が、アクセルペダル22の踏み込み量を検知することで、アクセル開度を常時監視している。アクセル開度の情報は上位ECU57に入力されると同時にAPS入力回路57からマイコン60内の反力設定手段62に入力される。
【0032】
また、上位ECU57は、エンジン回転数Neを検出する図示しないエンジン回転数センサと、車速VSPを検出する図示しない車速センサ等の情報およびアクセル開度が入力され、それらの情報に基づき閾値情報をアクセルペダルを制御するマイコン60へ出力する。
【0033】
アクセルペダル22の踏み込み量の増加に応じてアクセル開度が増大し、アクセル開度の増大に応じて燃料噴射量(ひいては燃料消費量)が増大し、車両は加速される。
【0034】
アクセルペダル22を踏み込んでいって、車速が上がってくると、第2運転領域(エコモード)から第1運転領域(非エコモード)へと移行する。第2運転領域と第1運転領域との境界をここでは閾値と言うが、この閾値は、車速とAPS30で検出されたアクセルペダル22のアクセル開度が上位ECU57に入力され、予めECU57に設定されている計算式又は線図などから検知することができる。なお、上記閾値は車速の他、エンジン負荷等の要因も加味して複合的に決められるものである。そして、上位ECU57からインターフェース回路53を経由して閾値情報が出力され、閾値情報取得手段61は閾値情報を受信する。
【0035】
そして、第2運転領域から第1運転領域の境界である閾値の前後で、マイコン60に内蔵する反力設定手段62が閾値情報およびアクセル開度の情報に基づき、反力を算出し、モータ駆動電流設定手段65からモータ駆動電流制御手段66に入力され、駆動回路54に指示を与え、反力装置40のトルクモータ41を駆動する。このとき、モータ駆動電流設定手段65は、指定された反力を発生させるためにトルクモータ41に通電する電流の大きさを計算し、モータ駆動電流制御手段66は計算された大きさの電流を駆動回路54からトルクモータ41に流す。トルクモータ41は、電流の大きさに応じたモータ反力をアクセルペダル22に加え、運転者に知らせることになる。トルクモータ41に流れる電流は、電流検出回路55で確認される。
【0036】
本発明では、トルクモータ41から発生するモータ反力を、アクセルペダル22の踏み込み量に比例した反力(ストローク基準の反力)と、踏み込み量と閾値との差を時間で積分した積分値に基づく反力とを加算することにより決定している。ストローク基準の反力は、第1の反力演算手段63で計算し、踏み込み量と閾値との差を時間で積分した反力は、第2の反力演算手段64で計算する。第1の反力演算手段63と第2の反力演算手段64で算出された反力を、反力設定手段62が合成し、反力を決定することになる。
【0037】
図4は、第1の反力演算工程を説明する線図である。この工程では、第1の反力演算手段63がストローク基準の反力について演算する。縦軸は反力で、横軸は踏み込み量である。以下に記載する閾値とは、ある運転状態と別の運転状態との境界のことで、たとえば、前述した第2運転領域(エコモード)と第1運転領域(非エコモード)の境界のアクセル開度を指すものである。この場合の閾値のアクセル開度は、車速等に応じて決まることになる。
【0038】
ケース1:ヒステリシス無しのON/OFFの制御の場合(
図4(a)の場合)
図4(a)はステップ状の反力を発生させる場合で、かつヒステリシスが無い場合である。アクセルペダル22の踏み込み量が増加して閾値に達したら、ステップ状の反力(TKmax)を付加する。そして、アクセルペダル22の踏み込み量が減少して閾値に達したら、反力(TKmax)をステップ状に消滅させる。
ここで
Tk(s):ストローク基準の反力
s:ストローク(アクセルペダル22の踏み込み量)
TKmax:反力の制限値(上限値)
SP:閾値
とすると
[Tk(s)成分](ストローク基準の反力)は以下のようになる。
s≦SPの時、Tk(s)=0
s>SPの時、Tk(s)=TKmax
【0039】
ケース2:ヒステリシス有のON/OFFの制御の場合(
図4(b)の場合)
図4(b)は、ステップ状の反力(TKmax)を発生させる場合で、かつヒステリシスを設けた場合である。アクセルペダル22の踏み込み量が増加して閾値+ヒステリシス幅の1/2に達したら、ステップ状の反力を出力する。そして、アクセルペダル22の踏み込み量が減少して閾値−ヒステリシス幅の1/2に達したら、反力をステップ状に消滅させるようにする。閾値は、ヒステリシス幅の中心になるようにしている。一般に、ヒステリシスを設けると、アクセルペダルの反力を解除する反力解除開度は、前記アクセルペダルの反力を出力する反力出力開度よりも小さい開度になる。
【0040】
ここで、ストローク基準の反力Tk(s)の値は、
H:ヒステリシス幅、とすると、
アクセルペダルを踏み込む時
s≦SP−H/2の時、Tk(s)=0
SP−H/2<s≦SP+H/2の時、Tk(s)=0
s>SP+H/2の時、Tk(s)=TKmax
アクセルペダルを戻す時
s≦SP−H/2の時、Tk(s)=0
SP−H/2<s≦SP+H/2の時、Tk(s)=TKmax
s>SP+H/2の時、Tk(s)=TKmax
【0041】
なお、この場合、ヒステリシスを閾値の一方にのみ設け、アクセルペダル22の踏み込み量が増加して閾値に達したら、ステップ状の反力を付加し、アクセルペダル22の踏み込み量が減少して閾値−ヒステリシス幅の1/2に達したら、反力をステップ状に消滅させるようにしてもよい。
【0042】
ケース3:閾値付近で傾きを持ち、ヒステリシス無しの制御の場合(
図4(c)の場合)
図4(c)は、アクセルペダルの踏み込み量に比例した反力を発生させる場合である。この場合、閾値の両側に傾斜領域を設定しておく。踏み込み量が傾斜領域の下限に達したら、傾斜領域の下限からの踏み込み量に比例して傾きがKDの直線的に沿って増加する反力を発生させる。そして、傾斜領域の上限に達したとき、所定の反力(TKmax)になるようにしている。
KD:傾き係数とすると、
傾斜領域内では、
Tk(s)=(s−SP)×KD+TKmax/2となり、この値は、
0≦Tk(s)≦TKmax となる。
傾斜領域外では
s<SP−H/2のとき
Tk(s)=0
s<SP+H/2のとき
Tk(s)=TKmax
となる。
【0043】
ケース4:傾きを持ってヒステリシスも有りの制御の場合(
図4(d)の場合)
図4(d)は、踏み込み量に対して傾斜した反力を発生させる場合で、かつ、ヒステリシスを設けた場合である。閾値の両側にヒステリシス幅の1/2ずつをとり、1/2TKmaxの高さのところから傾きKDの斜線をそれぞれに引く。踏み込み時は、閾値+ヒステリシス幅の1/2に引かれた傾きKDの斜線の下端に達したら、傾きがKDの直線的に増加する反力を発生させる。そして、所定の反力(TKmax)に達したら、上昇を停止する。戻し時は、踏み込み量が閾値−ヒステリシス幅の1/2に引かれた傾きKDの斜線の上端に達したら、反力を、傾きがKDの直線的に減少するように制御する。反力の上昇する線と、下降する線とは平行で、これらの間の距離がヒステリシス幅である。この場合も、アクセルペダルの反力を解除する反力解除開度は、前記アクセルペダルの反力を出力する反力出力開度よりも小さい開度になっている。
【0044】
踏み込み時の傾斜領域では
Tk(s)=(s−(SP+H/2))KD+TKmax/2となり、この値は、
0≦Tk(s)≦TKmax である。
戻し時の傾斜領域では
Tk(s)=(s−(SP−H/2))KD+TKmax/2
0≦Tk(s)≦TKmax
第1の反力演算手段63は、以上の4つの方法から設計によって選ばれたいずれかの算出方法で、ストローク基準の反力を計算することになる。
【0045】
次に第2の反力演算工程について説明をする。この工程では、第2の反力演算手段64が積分要素を考慮した反力[Ti(s,t)成分]を演算する
【0046】
図5は、アクセルペダル22の踏み込み量と閾値との差を時間積分する積分要素を演算する例である。図中、(a)から(d)において、各左側の線図は積分の対象となる被積分値Ke(s)を表し、各右側の線図は被積分値Ke(s)を時間積分した際の積分要素[Ti(s,t)成分]の時間との変移を示すものである。
【0047】
ケース1:SP(閾値)で積分される値が±で切り替わる制御の場合(
図5(a)の場合)
【0048】
図5(a)は、被積分値をステップ状に変化させ、かつ、ヒステリシスを設けない場合である。踏み込み量が増加して閾値でステップ状に変化する。反力Ti(s,t)は、
s<SPの時、Ti(s,t)=∫Ke(s)dt=∫(−KEmax)dt
s≧SPの時、Ti(s,t)=∫Ke(s)dt=∫(KEmax)dt
0<Ti(s,t)<KFmaxとなる。
ここで
Ke(s):被積分値
KFmax:積分要素の上限値
であり、ここでは被積分値をステップ状に変化させるので、Ke(s)=±KEmaxである。
【0049】
ケース2:SP(閾値)の両側でヒステリシス幅だけ積分乗数が0でそれ以上は±の値に切り替わる場合(
図5(b)の場合)。
【0050】
図5(b)は、被積分値をステップ状に変化させ、かつ、ヒステリシスを設けた場合である。アクセルペダル22の踏み込み量が、閾値−ヒステリシス幅の1/2に達するまでは、被積分値は−KEmaxである。アクセルペダル22の踏み込み量が増加してヒステリシス幅H内にある間は、被積分値は0とする。そして、アクセルペダル22の踏み込み量がさらに増加して閾値+ヒステリシス幅の1/2に達したら、ステップ状の被積分値KEmaxを付加する。踏み込み量が減少して閾値+ヒステリシス幅の1/2に達したら、被積分値を0とする。さらに、閾値−ヒステリシス幅の1/2に達したら、被積分値は−KEmaxにする。
積分要素Ti(s,t)の値は、
s<SP−H/2の時、Ti(s,t)=∫Ke(s)dt=∫(−KEmax)dt
SP−H/2≦s<SP+H/2の時、Ti(s,t)=∫Ke(s)dt=∫(0)dt
SP+H/2≦sの時、Ti(s,t)=∫Ke(s)dt=∫(KEmax)dt
0<Ti(s,t)<KFmax
で、ここでも被積分値をステップ状に変化させるので、Ke(s)=±KEmaxである。
【0051】
ケース3:SP(閾値)を中心にして±に被積分値が傾きをもって生成される場合(
図5(c)の場合)。
【0052】
図5(c)は、踏み込み量に対して傾斜した被積分値を付加する場合である。この場合、閾値の両側に傾斜領域を設定しておく。閾値より上側が被積分値の増加する領域で、閾値より下側が被積分値の減少する領域となる。この間では、被積分値は、−KEmaxからKEmaxの値となり、勾配の付いた直線状に変化している。
積分要素Ti(s,t)の値は、
s<SPの時、Ti(s,t)=∫(Ke(s)×(SP−s))dt=∫(−KEmax×(SP−s))dt
SP≦sの時、Ti(s,t)=∫(Ke(s)×(s−SP))dt=∫(KEmax×(s−SP))dt
0<Ti(s,t)<KFmax
【0053】
ケース4:SP(閾値)の両側でヒステリシス幅だけ被積分値が0で、その前後は、±に被積分値が傾きをもって生成される場合(
図5(d)の場合)。
【0054】
図5(d)は、踏み込み量に対して傾斜した被積分値を付加する場合で、かつ、被積分値が閾値の両側で0となる領域を設けた場合である。踏み込み量が傾斜領域内では、中央の0の領域の両側で、被積分値が右に向かって直線的に上がっている。
積分要素Ti(s,t)の値は、
s<SP−H/2の時、Ti(s,t)=∫(Ke(s)×(SP−(s−H/2))dt=∫(−KEmax×(SP−(s−H/2)))dt
SP−H/2≦s<SP+H/2の時、Ti(s,t)=∫(0)dt
SP+H/2≦sの時、Ti(s,t)=∫(Ke(s)×((s−H/2)−SP))dt=∫(KEmax×((s−H/2)−SP))dt
0<Ti(s,t)<KFmax
ここでのヒステリシス幅Hは、中心付近の被積分値が0の領域を示している。
【0055】
本発明では、
図4の(a)から(d)のいずれかのストローク基準の反力(Tk(s))と、
図5の(a)から(d)のいずれかの積分要素の反力(Ti(s,t))の任意の2つを組み合わせた反力(T(s,t))を付加するようにしている。したがって、16通りの組合せが考えられる。組み合わせた反力T(s,t)は、次式により求める。
【0056】
T(s,t)=KA×Tk(s)+KB×Ti(s,t)
ここに、
KA:ストローク基準の反力係数
KB:積分要素の反力係数
Tmax:反力の最大値 ここで、Tmax=TKmax+KFmaxとする。
であり、これらの反力係数は設計により任意に定められる。
【0057】
図6は、
図4(c)と
図5(c)を組み合わせた例を示す線図で、踏み込み速度(又は復帰速度)が速い場合を示す。この演算は、反力設定手段62により行われる。
【0058】
図6(a)は、アクセルペダル22のストロークの変化を示している。縦軸がペダルストロークの量で、横軸は時間である。図の三角形の左斜辺が踏み込み時で、右斜辺が戻し時を示す。閾値の前後に傾斜領域を設けている。
【0059】
図6(b)は、ストローク基準の反力Tk(s)を示す線図である。縦軸が反力で、横軸は時間である。アクセルペダル22の踏み込み量が傾斜領域の下限に達すると、傾斜領域の下限からの踏み込み量に比例した反力が発生し、徐々に増加して傾きがKDの直線に沿って上昇して傾斜領域の上限で反力の上限に達する。アクセルペダル22の復帰時は、踏み込み量が傾斜領域の上限まで戻ると、反力が減少を始め、傾斜領域の下限でTk=(s)0になる。
【0060】
図6(c)は、踏み込み量と閾値との差を時間積分した積分要素の反力Ti(s,t)を示す線図である。傾斜領域の下限から閾値までは、
図5(c)で説明したように
踏み込み量が増加するとき
sが傾斜領域の下限から閾値の間の領域では、
Ti(s,t)=∫(Ke(s)×(SP−s))dt=∫(−KEmax×(SP−s))dt
であるが、この値はマイナスになるので、Ti(s,t)=0として扱っている。したがって、積分成分が考慮されるのは、sの値が閾値を越えた部分である。この部分では放物線となる。
【0061】
踏み込み状態から戻すとき
sの値が、傾斜領域の上限から閾値までは被積分値はプラスなので反力は加算されることになり、上限値を下回ることがない。ここで、積分要素Ti(s,t)は、0<Ti(s,t)<KFmaxなので、上限値KFmaxで一定となり、この範囲では変化がない。
sの値が、閾値から傾斜領域の下限までは、被積分値がマイナスなので、反力は放物線を描いて減少することになる。そして、傾斜領域の下限を若干過ぎた位置でTi(s,t)=0になる。
【0062】
図6(d)は、
図6(b)と(c)を合成した線図である。
アクセルペダル22を踏み込んでいくとき、
sが傾斜領域の下限値から閾値までの間は、T(s,t)の値は、ストローク基準の反力Tk(s)の直線成分のみである。すなわち、
T(s,t)=KA×Tk(s)
sが閾値を越えると、ストローク基準の反力Tk(s)成分と、積分要素の反力Ti(s,t)成分の和になる。すなわち、
T(s,t)=KA×Tk(s)+KB×Ti(s,t)
となる。このT(s,t)の値は、増加していくが、設定された上限値Tmaxで頭打ちとなり増加が止む。図示の例では、傾斜領域の上限を若干過ぎたところで上限値Tmaxに達するが、閾値を越えて上限値Tmaxに達するまでの時間をt1とする。
【0063】
アクセルペダル22を踏み込み状態から戻すとき
sが傾斜領域の上限値から閾値までの間は、積分要素の反力Ti(s,t)成分の変化が無いので、Tmaxからストローク基準の反力Tk(s)成分を引いたものになる。したがって、直線に沿って減少していく。
T(s,t)=Tmax−KA×Tk(s)
sが閾値を越えると、被積分値はマイナスになるので、反力T(s,t)は積分要素の反力の分も減少を始める。反力T(s,t)は放物線を描いて降下し、やがてT(s,t)=0になる。図の実施例では、傾斜領域の下限値を若干越えた位置でT(s,t)=0になっている。
【0064】
図7は、
図4(c)と
図5(c)を組み合わせた例を示す線図で、踏み込み速度(又は復帰速度)が遅い場合を示す。
【0065】
図7(a)は、アクセルペダル22のストロークの変化を示している。縦軸がペダルストロークの量で、横軸は時間である。図の中央から左斜辺の折線が踏み込み時で、右斜辺の折線が戻し時を示す。閾値の前後に傾斜領域を設けている。
【0066】
図7(b)は、ストローク基準の反力Tk(s)を示す線図である。縦軸が反力で、横軸は時間である。踏み込み量が傾斜領域の下限に達すると、傾斜領域の下限からの踏み込み量に比例した反力が発生し、傾きがKDの直線に沿って徐々に増加して傾斜領域の上限で反力の上限に達する。アクセルペダル22の復帰時は、踏み込み量が傾斜領域の上限まで戻ると、反力が減少を始め、傾斜領域の下限でTk(s)=0になる。
【0067】
図7(c)は、積分要素の反力Ti(s,t)を示す線図である。傾斜領域の下限から閾値までは、
図5(c)で説明したように、
踏み込み量が増加するとき
sが傾斜領域の下限から閾値の間の領域では、積分要素の反力Ti(s,t)は、
Ti(s,t)=∫(Ke(s)×(SP−s))dt=∫(−KEmax×(SP−s))dt
であるが、この値はマイナスになるので、積分要素の反力Ti(s,t)=0として扱っている。したがって、積分成分が考慮されるのは、sの値が閾値を越えた部分である。この部分では放物線となり、上限値KFmaxで増加が止まる。
【0068】
踏み込み状態から戻すとき
sの値が、傾斜領域の上限から閾値までは、被積分値がプラスなので、積分要素の反力Ti(s,t)が上限値を下回ることがない。積分要素の反力Ti(s,t)成分を加えても、積分要素Ti(s,t)は、0<Ti(s,t)<KFmaxなので、上限値KFmaxで一定となり、この範囲では変化がない。
【0069】
sの値が、閾値から傾斜領域の下限までは、被積分値がマイナスなので、積分要素の反力は放物線を描いて減少し、Ti(s,t)=0になる。図示の実施例では、傾斜領域の下限の若干手前でTi(s,t)=0になっている。
【0070】
図7(d)は、
図7(b)と(c)を合成した線図である。
アクセルペダル22を踏み込んでいくとき、
sが傾斜領域の下限値から閾値までの間は、T(s,t)の値は、ストローク基準の反力Tk(s)の直線成分のみである。すなわち、
T(s,t)=KA×Tk(s)
sが閾値を越えると、ストローク基準の反力Tk(s)成分と、積分要素の反力Ti(s,t)成分の和になる。すなわち、
T(s,t)=KA×Tk(s)+KB×Ti(s,t)
となる。このT(s,t)の値は、増加していくが、設定された上限値Tmaxで増加が止み、その後一定の値となる。図示の例では、傾斜領域の上限を若干過ぎたところで上限値Tmaxに達するが、閾値を越えて上限値Tmaxに達するまでの時間をt2とする。
【0071】
アクセルペダル22を踏み込み状態から戻すとき
sが傾斜領域の上限値から閾値までの間は、上限値Tmax−ストローク基準の反力Tk(s)成分となり、直線的に減少していく。
T(s,t)=Tmax−KA×Tk(s)
sが閾値を越えると、被積分値はマイナスになるので、積分要素の反力Ti(s,t)の減少が始まる。反力T(s,t)は放物線を描いて降下するが、T(s,t)=0になる前に積分要素の反力が消滅するので、最後はストローク基準の反力Tk(s)成分のみとなり、図の実施例では、傾斜領域の下限値で0になっている。
【0072】
制御ユニット50では、車速センサーとAPS30の情報からアクセルペダル22のストローク量や、閾値を求めることができ、マイコン60に予めインストールされているプログラムにしたがって、演算をすることで、ストローク基準の反力Tk(s)と積分要素の反力Ti(s,t)を求め、反力T(s,t)を算出し、反力装置40に指示を出すことで、アクセルペダルに必要な反力を付加することができる。なお、アクセルペダル22のストローク量は、MPS42から間接的に検出することもできる。
【0073】
図6、7の実施例では、ストローク基準の反力Tk(s)と積分要素の反力Ti(s,t)を求め、両反力を合成した反力を付加しているが、本発明では、この態様に限定されない。たとえば、
図4(c)に示すように、踏み込み量が前記傾斜領域の下限に達したら、前記下限からの踏み込み量に比例し、傾斜領域の上限に達したとき所定の大きさになる反力を演算し、この反力のみを付加するようにしてもよい。
【0074】
あるいは、アクセルペダルの踏み込み量と前記閾値との差を時間積分することによって反力を演算し、この反力のみを付加するようにしてもよい。この場合、
図5(c)に示すように踏み込み量に対して傾斜した被積分値を付加することが望ましい。
【0075】
図6及び
図7に説明したように、本発明では、反力に積分要素を加えることで、アクセルペダルの動きが遅い時と速い時で、ストローク量が閾値を過ぎてからモータ反力が最大値になるまでの時間(
図6(d)のt1と
図7(d)のt2)の差を小さくすることができ、運転者は、常に、同じフィーリングで閾値を認識することができる。
【0076】
特に、この実施例では、
図7(c)、(d)に示されるように、積分要素の反力は、アクセルペダル22を踏み込む場合は、閾値を越えてから(閾値より大きい開度で)加算され、アクセルペダル22を戻す場合は、閾値を越えてから(閾値より小さい開度で)加算されているので、閾値を過ぎてから反力が大きく増加、又は減少し、閾値を明確に認識することができ、ばたつきを防止することができる。
【0077】
言い方を代えると、両反力を合成した反力T(s,t)が、反力が付加される場合は、最初のうち前記アクセルペダル22の踏み込み量によって決定されるストローク基準の反力Tk(s)のみが付加され、その後アクセルペダル22の踏み込み量と閾値との差を時間積分することによって算出される反力Ti(s,t)が付加されるようになっている。一方、反力が解除される場合は、最初のうち前記アクセルペダル22の踏み込み量によって決定される反力Tk(s)分の反力のみが徐々に解除され、その後アクセルペダル22の踏み込み量と閾値との差を時間積分することによって算出される反力Ti(s,t)分の反力が解除されるようになっている。そのため、アクセルペダル22の踏み込み量が閾値からのわずかな差でも時間とともに大きな反力となり、結果的に運転者が精度よく閾値を認識できる。
【0078】
ストローク基準の反力Tk(s)と積分要素の反力Ti(s,t)の組み合わせは、反力の切り替わりポイントにおける運転者が感じるフィーリングにより、決定することが望ましい。
【0079】
また、切り替わりポイントを通過するときの速度によっても制御パラメータを変更する事も可能である。
【0080】
特に問題になるのは、閾値付近で人間の足の踏力とモータ反力の制御でばたつく(ハンチングする)のを防止することである。特に速度が遅い場合にばたつき易い。一方、スピードが速いときには、閾値付近での明確な反応が必要になる。以上のことを満足する為に、上記の式の組み合わせや、各パラメータの調整を行なう必要がある。もちろん、車両の走行スピード、路面状態、などにより制御方法、パラメータを変更しても良い。
【0081】
この制御は、第1運転領域と第2運転領域をエコモードと非エコモード時として例を挙げたが、エコモードと非エコモード時の反力の制御に限らず、アイドル付近の反力禁止制御等運転領域の境界でアクセルペダルに反力を発生させる状況があれば使用する事ができる。