【実施例1】
【0014】
以下、第1の実施形態の冷蔵庫10について、
図1〜
図7に基づいて説明する。
【0015】
(1)冷蔵庫10の構造
冷蔵庫10の構造について
図1及び
図2に基づいて説明する。
【0016】
冷蔵庫10のキャビネット12は、外箱と内箱を組み合わせたものであり、その間に断熱材が配され、
図2に示すように、上段から冷蔵室14、野菜室16、上冷凍室18、冷凍室20に区画され、上冷凍室18の左側には製氷室22が設けられている。野菜室16と上冷凍室18、製氷室22との間には断熱仕切壁24が設けられ、冷蔵室14と野菜室16とで冷蔵空間が構成され、上冷凍室18、冷凍室20及び製氷室22とで冷凍空間が構成されている。また、冷蔵室14と野菜室16との間には仕切り板25が配されている。
【0017】
冷蔵室14の背面には、冷蔵空間を冷却するための冷蔵用蒸発器(以下、単に「Rエバ」という)26が配され、野菜室16の背面には、冷蔵用ファン(以下、単に「Rファン」という)28が配されている。冷凍室20の背面には、冷凍空間を冷却するための冷凍用蒸発器(以下、単に「Fエバ」という)30が配され、上冷凍室18には冷凍用ファン(以下、単に「Fファン」という)32が配されている。
【0018】
図1に示すように、Rエバ26で冷却された空気はRファン28で冷蔵室14に送風され、その後に仕切り板25を経て野菜室16を冷却する。また、冷蔵室14を冷却した冷気は、野菜室16の背面に設けられているリターンダクト34に送られる。
【0019】
また、Fエバ30で冷却された空気は、Fファン32によって送風されて、上冷凍室18、冷凍室20及び製氷室22を冷却する。
【0020】
(2)野菜室16の構造
次に、
図1に基づいて、野菜室16の構造について説明する。
【0021】
野菜室16の背面には、上記したようにリターンダクト34が設けられている。リターンダクト34は縦方向に設けられ、冷蔵室14から冷気が送られてくる前空間36と、Rエバ26に繋がる後空間38とを有し、前空間36と後空間38との間には仕切り壁40が設けられている。仕切り壁40の下部には、冷気を流すためのRファン28が縦方向に設けられている。
【0022】
野菜室16には、引出し式の扉42が設けられ、扉42の後面からは左右一対の移動レール44,44が前後方向に水平に突出している。左右一対の移動レール44,44は、野菜室16の両内側壁に設けられた固定レール46,46に対し移動自在である。
【0023】
左右一対の移動レール44,44には、下容器48が架設され、下容器48の上方には上容器50が積層されている。下容器48と上容器50とは略同じ大きさであり、下容器48の開口した上面は、上容器50の底面が被さっているが、上容器50の底面には、複数の貫通孔51が開口し、下容器48と上容器50とは通気が可能となっている。上容器50には、蓋52が設けられている。この蓋52については、後から説明する。
【0024】
接続ダクト60内部における下部であって、減酸素装置58よりも下方の位置には、シート状の吸水材74が、幅方向において水平に設けられ、かつ、前部は接続ダクト60内部に位置し、後部はリターンダクト34の壁を貫通し、リターンダクト34の前空間36の底面近傍に位置している。この底面近傍に位置している吸水材74の後端部は、複数回屈曲されてプリーツ状に形成されている。
【0025】
(3)減酸素装置58の構造
次に、減酸素手段である減酸素装置58について
図3と
図4に基づいて説明する。
【0026】
減酸素装置58は、高分子電解質膜よりなるものであって、背景技術で説明したように、アノードとカソードとの間に電圧を与え、カソード側で酸素が水に変わることで酸素を消費してカソード側の酸素を減少させていく装置である。減酸素装置58は、板状であって、正面から見た場合、
図4に示すように略正方形をなしている。
【0027】
野菜室16の背面には、上記したようにリターンダクト34が設けられている。このリターンダクト34の前面、すなわち前空間36の前面は、上方ほど前部に傾斜するように設けられている。このリターンダクト34の前面に板状の減酸素装置58が設けられている。減酸素装置58のアノード側がリターンダクト34の前空間36内部に露出し、カソード側がリターンダクト34の外方に露出している。
【0028】
減酸素装置58が取り付けられたリターンダクト34の前面には、接続ダクト60が設けられている。この接続ダクト60は、
図3及び
図4に示すように、筒状の後接続部62と筒状の前接続部64とより構成されている。筒状の後接続部62は、減酸素装置58を全て覆う大きさに形成され、筒状の前接続部64は、減酸素装置58における高分子電解質膜が露出した部分のみに対応するように後接続部62から段部を経て後接続部62より小さく形成されている。後接続部62及び前接続部64は正面から見てほぼ正方形であり、前接続部64の前面には開口部70が設けられ、後接続部62と前接続部64の底面は一体となり、後方にいくほど下方に傾斜するように形成されている。前接続部64の開口部70の縁部にはフランジ部66が設けられ、フランジ部66の段部には、シリコン等よりなる環状のシール部材68が取り付けられている。
【0029】
下容器48の後面における前記開口部70に対応する位置には、正面から見てほぼ正方形の容器開口部72が開口している。扉42を閉めて、下容器48と上容器50を野菜室16に収納した状態では、開口部70及び容器開口部72が接触して、下容器48内部と接続ダクト60内部とが空間的に接続され、他の空間とはシール部材68によって遮断されている。
【0030】
(4)蓋52の構造
次に、上容器50の蓋52の構造について
図5〜
図7に基づいて説明する。
【0031】
蓋52は板状であって、上容器50の前後方向の寸法よりも長く形成され、蓋52が上容器50に被さった場合に、上容器50よりも前方に延設部53が形成される状態となる。
【0032】
蓋52の上面において、前部と後部の近傍にそれぞれ係合部54が突設されている。この係合部54は、
図5に示すように、左右一対の立壁54a,54aの上端部に掛け渡された天井部54bとから構成された略逆U字状の形状となっている。
【0033】
仕切り板25の下面から、L字状の引き上げ部材56が突出している。この2個の引き上げ部材56の突出する位置は、蓋52における2個の係合部54の位置に対応している。この引き上げ部材56の下部は、後方ほど下方に傾斜する傾斜面56aを有し、係合部54の天井部54bと当接する。
【0034】
蓋52の後端部は、下方に折り返され、後フランジ部90を有する。また、蓋52の前端部、すなわち、延設部53の前端部の下方に折り返され、前フランジ部92を有する。
【0035】
扉42の後面中央部から後方に向かって引き出し部材94が突出している。この引き出し部材94の後端部は上方に突出し、爪状に形成されている。この引き出し部材94の後端部は、蓋52の前フランジ部92と係合する。
【0036】
(5)扉42の状態
まず、下容器48と上容器50が野菜室16に収納されているときの蓋52の状態について説明する。
【0037】
図6に示すように、蓋52が上容器50に載置され、上容器50の開口した上面を密閉している。このとき、上容器50は、蓋52の後ろ側に位置し、上容器50の前方に蓋52の延設部53が位置している。また、引き上げ部材56と係合部54とは、離れた状態で配置されている。また、扉42から後方に突出した引き出し部材94の後端部は、蓋52の前フランジ部92と係合している。
【0038】
次に、扉42を開けるときの状態について説明する。
【0039】
扉42をを前方に引き出すと、上容器50と下容器48も同時に前方に引き出される。また、引き出し部材94が前方に移動するため、蓋52も前方に移動する。蓋52が前方に移動すると、係合部54の天井部54bが、引き上げ部材56の下部の傾斜面56aと係合し、この傾斜面56aに沿って係合部54が上方に移動し、それと共に蓋52が引き上げられて、上容器50の上面が開口する。このとき、上容器50は、蓋52の延設部53を移動中であるため、蓋52が開かれても、上容器50が、野菜室16から前方には露出しない。そして、蓋52が少しでも開かれると上容器50及び下容器48内部に酸素が流入する。また、このとき下容器48の容器開口部72も、減酸素装置58から切り離されるため、この容器開口部72からも酸素が流入する。上容器50を完全に引き出した状態では、上容器50と下容器48内部には多量の酸素が流入し、その内部の酸素濃度が上昇している。したがって、扉42を開いた状態で、酸素濃度が低いことによるユーザに対する悪影響がない。
【0040】
次に、扉42を閉めるときの状態について説明する。
【0041】
扉42を閉めると、上容器50の後端部が蓋52の後フランジ部90に当接され、蓋52を後方に押圧する。すると、引き上げ部材56と係合部54の係合が解除され、蓋52は再び
図6に示すように、上容器50の上面開口部を密閉する。
【0042】
(6)減酸素装置58の動作状態
次に、減酸素装置58の動作状態について、
図3に基づいて順番に説明する。
【0043】
まず、扉42を閉めると、下容器48の容器開口部72と開口部70が連通し、下容器48が密閉された状態で減酸素装置58のカソード側と繋がる。
【0044】
この状態で減酸素装置58のアノード側とカソード側にそれぞれ電圧をかけると、カソード側における酸素が消費されて、下容器48内部の酸素濃度が低下し、下容器48に収納されている食品の鮮度を維持することができる。
【0045】
この酸素濃度の減少により、減酸素装置58のカソード側には水が発生する。この水は、減酸素装置58の電解質膜の表面に最も多く分布する。この分布した水は、減酸素装置58が縦方向で、かつ、上方ほど前方に傾斜するように配置されているため、電解質膜の表面の水が流れ落ちて接続ダクト60の後接続部62の底面にある貯水部63に溜まってくる。
【0046】
この底面にある貯水部63に溜まった水は、吸水材74の前部によって吸収され、リターンダクト34の前空間36の底面にある貯水部37に排水される。接続ダクト60内部の水をリターンダクト34に排水することにより、下容器48に水が流れることがなく、食品を腐敗させることがない。このとき、吸水材74は、水のみを流し、酸素濃度が少なくなった空気をリターンダクト34の前空間36へ流れることを遮断する。そのため、この吸水材74が、水の排水手段であり、また、空気の遮断手段も兼ねている。
【0047】
排水された水は、リターンダクト34の前空間36の貯水部37に溜まり、前空間36の湿度が上昇する。一方、このリターンダクト34は、冷蔵室14及び野菜室16を循環した冷気であるため、冷気内部に湿度を多く含んでいる。減酸素装置58のアノード側においては、背景技術で説明したように、水蒸気を反応に必要としているため、このリターンダクト34に戻ってきた湿度を有する冷気と、前空間36の底面に溜まった水からの湿度により、その反応がより促進され、減酸素装置58における酸素濃度の低減に繋がる。特に、吸水材74の後部がプリーツ状に形成されているため、リターンダクト34の貯水部37に溜まった水を積極的に蒸発させることができ、リターンダクト34内部の蒸発水分量を増やすことができ、多量の水を処理できる。また、この蒸発した水分は、上記したように減酸素装置58の反応を促進させることができる。そのため、この吸水材74は、湿度回収手段も兼ねている。
【0048】
(7)効果
以上により本実施形態の冷蔵庫10であると、扉42を開いたときに、蓋52が上容器50の上面開口部を開くと共に、上容器が蓋52の延設部53を通過中に開いた上面開口部から上容器50と下容器48内に酸素が流入し、上容器50と下容器48の酸素濃度が上昇する。したがって、ユーザに悪影響を及ぼすことがない。
【実施例3】
【0054】
次に、第3の実施形態の冷蔵庫10について、
図9及び
図10に基づいて説明する。
【0055】
本実施形態と第1の実施形態の冷蔵庫の異なる点は、減酸素装置58のアノード側がリターンダクト34内部に設けられているのではなく、高酸素室100内部に設けられている点にある。
【0056】
すなわち、
図9に示すように、高酸素室100の一方の部分には減酸素装置58が設けられ、他方の部分にはダンパ102の一方が設けられている。そして、ダンパ102他方は、接続ダクト60内部に接続されている。
【0057】
また、扉42の前部には、扉開放スイッチ104と開放ランプ106が設けられている。ダンパ102,減酸素装置58、扉開放スイッチ104、開放ランプ106は、不図示の制御部に接続されている。
【0058】
また、扉42の後面から左右一対の開放阻止部材108が突出している。この開放阻止部材108は板状であって、ロック孔110が開口している。一方、この開放阻止部材108に対応する野菜室16の内側壁の前端部には、左右一対のロック部材112が設けられている。このロック部材112は、左右方向に突出するロック突部114が進退自在に設けられ、このロック突部114が開放阻止部材108のロック孔110と係合する。これによって、扉42の開放を阻止する。ロック部材112は、前記制御部と接続され、扉開放スイッチ104をON状態にすると、ロック突部114がロック部材112に退出させてロック状態を解除する。
【0059】
上記構成の冷蔵庫10において扉42を開放するときの動作状態について、
図10のフローチャートに基づいて説明する。
【0060】
ステップ1において、ユーザが野菜室16を開ける前に、扉開放スイッチ104をON状態にする。なお、扉開放スイッチ104をON状態にしないと、ロック突部114が開放阻止部材108のロック孔110に係合しているため、ユーザは扉42を開放できない。
【0061】
ステップ2において、扉開放スイッチ104がON状態になると、制御部は、減酸素装置58のカソードとアノードにかけている電圧を停止させると共に、ダンパ102を開放する。減酸素装置58が動作しているときは、高分子電解質膜の反応により高酸素室100内部の酸素濃度が上昇している。そのため、ダンパ102が開放することにより、この酸素濃度の高い空気が、下容器48内部に流入し酸素濃度が上昇する。
【0062】
ステップ3において、制御部は、ロック部材112のロック突部114を退出させて、ロック孔110とロック突部114とのロックを解除する。これによって、扉42が開放状態となる。
【0063】
ステップ4において、制御部は、開放ランプ106を点灯させ、ユーザに対し扉42が開放できることを表示する。
【0064】
以上により本実施形態の冷蔵庫10であると、高酸素室100内部の酸素濃度の高い空気を下容器48内部に流入させるため、下容器48の酸素濃度を短時間に上昇させることができる。また、ロック部材112によって、酸素濃度が上昇してから扉42を開放できる状態にするため、ユーザが酸素濃度の低い空気を吸うことがない。