特許第5814114号(P5814114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5814114板ガラスの製造のためのプリングロール材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5814114
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月17日
(54)【発明の名称】板ガラスの製造のためのプリングロール材料
(51)【国際特許分類】
   C03B 35/16 20060101AFI20151029BHJP
   C03B 17/06 20060101ALI20151029BHJP
   C04B 35/80 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
   C03B35/16
   C03B17/06
   C04B35/80 A
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-507459(P2011-507459)
(86)(22)【出願日】2009年4月30日
(65)【公表番号】特表2011-519337(P2011-519337A)
(43)【公表日】2011年7月7日
(86)【国際出願番号】US2009002670
(87)【国際公開番号】WO2009134413
(87)【国際公開日】20091105
【審査請求日】2012年5月1日
(31)【優先権主張番号】12/150,673
(32)【優先日】2008年4月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ラカッセ,モーリス
(72)【発明者】
【氏名】ニューバウアー,ディーン ヴィー
【審査官】 永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−299980(JP,A)
【文献】 特開平6−287025(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/025402(WO,A1)
【文献】 特開平4−226211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B35/14−35/18
C03B17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのミルボード片を含むガラス製造のためのプリングロールであって、前記少なくとも1つのミルボード片が、
a.5から30重量部までのアルミノケイ酸塩耐火繊維;
b.10から40重量部までのケイ酸塩;
c.5から32重量部までの雲母;
d.10から35重量部までのカオリン粘土;および
e.5から10重量パーセントまでのコロイドシリカ
を含み、
前記a、b、c、およびdの組合せが、前記ミルボード片の少なくとも80重量パーセントを構成し、前記プリングロールの少なくとも一部がムライト、クリストバライト、またはこれらの組合せの少なくとも1つを含み、前記プリングロールが1000℃を超える温度耐性を有する
プリングロール。
【請求項2】
前記ミルボード片が、
b.30重量部よりも大きく40重量部までのケイ酸塩;および
c.25重量部よりも大きく32重量部までの雲母;
を含むことを特徴とする請求項1記載のプリングロール。
【請求項3】
前記a、b、c、およびdの組合せが、前記ミルボード片の少なくとも85重量パーセントを構成することを特徴とする請求項1記載のプリングロール。
【請求項4】
i.25℃において15%〜30%の圧縮率;および
ii.110℃において5%未満の圧縮率
のうち少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1記載のプリングロール。
【請求項5】
前記ミルボードが、少なくとも50%の回復率を有することを特徴とする請求項1記載のプリングロール。
【請求項6】
プリングロールの製造方法であって、
a.5から30重量部までのアルミノケイ酸塩耐火繊維;
b.10から40重量部までのケイ酸塩;
c.5から32重量部までの雲母;
d.10から35重量部までのカオリン粘土;および
e.5から10重量パーセントまでのコロイドシリカ
を含むプリングロールの形態をした少なくとも1つのミルボード片を提供し、
前記ミルボード片を650℃〜1,000℃の温度に曝露することによって、前記ミルボード片を少なくともある程度圧縮する、
各工程を有してなり、
前記a、b、c、およびdの組合せが前記ミルボードの少なくとも80重量パーセントを構成し、前記プリングロールの少なくとも一部がムライト、クリストバライト、またはこれらの組合せの少なくとも1つを含み、前記プリングロールが1000℃を超える温度耐性を有する、方法。
【請求項7】
前記ミルボード片が、
b.30重量部よりも大きく40重量部までのケイ酸塩;および
c.25重量部よりも大きく32重量部までの雲母;
を含むことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
i.25℃において15%〜30%の圧縮率;および
ii.110℃において5%未満の圧縮率
のうち少なくとも1つを有することを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記ミルボードが、少なくとも50%の回復率を有することを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項10】
a.5から30重量部までのアルミノケイ酸塩耐火繊維;
b.10から40重量部までのケイ酸塩;
c.5から32重量部までの雲母;
d.10から35重量部までのカオリン粘土;および
e.5から10重量パーセントまでのコロイドシリカ
を含み、
前記a、b、c、およびdの組合せが前記ミルボードの少なくとも80重量パーセントを構成し、前記プリングロールの少なくとも一部がムライト、クリストバライト、またはこれらの組合せの少なくとも1つを含み、前記プリングロールが1000℃を超える温度耐性を有する
ミルボード。
【請求項11】
前記ミルボード片が、
b.30重量部よりも大きく40重量部までのケイ酸塩;および
c.25重量部よりも大きく32重量部までの雲母;
を含むことを特徴とする請求項10記載のミルボード。
【請求項12】
i.25℃において15%〜30%の圧縮率;および
ii.110℃において5%未満の圧縮率
のうち少なくとも1つを有することを特徴とする請求項10記載のミルボード。
【請求項13】
前記ミルボードが、少なくとも50%の回復率を有することを特徴とする請求項10記載のミルボード。
【請求項14】
前記アルミノケイ酸塩耐火繊維がカオリンから製造されることを特徴とする請求項10記載のミルボード。
【請求項15】
前記ケイ酸塩が、ケイ酸マグネシウム、ロックウール、またはそれらの組合せを含むことを特徴とする請求項10記載のミルボード。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、「板ガラスの製造のためのプリングロール材料(Pulling Roll Material for Manufacture of Sheet Glass)」という発明の名称で2008年4月30日に出願した米国特許出願第12/150,673号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は板ガラスの製造に関する。さらに具体的には、本開示は、例えばオーバーフロー・ダウンドロー・フュージョン法などによる板ガラスの製造に使用するためのミルボード材料およびプリングロールに関する。
【背景技術】
【0003】
プリングロールは、シートを形成するガラスリボンに張力を印加することを目的として板ガラスの製造に用いられ、それによってシートの呼び厚さを調節する。例えばオーバーフロー・ダウンドロー・フュージョン法(特許文献1および2参照)では、プリングロールは溶融パイプの先端または根元の下流に配置され、形成されたガラスリボンがパイプを離れる速度を調整して、完成したシートの呼び厚さを決定するのに用いられる。
【0004】
成功を収めたプリングロールは、多くの相反する基準を満たすことができる。第1に、ロールは、かなりの期間、新しく形成されるガラスに伴う高温に耐えることができなくてはならない。ロールの置換は、所定の機械が生産することのできる最終的なガラスの量を低減し、したがって、ガラスの最終的なコストを増大させることから、このような環境下では、ロールが長く持続するほどよい。
【0005】
第2に、ロールは、ガラスの厚さを調節するために、十分なけん引力を生じることができなければならない。使用に適した完成ガラスとなるリボンの中央部分に損傷を与えないために、ロールは、限定領域のエッジでのみ、リボンと接触することができる。よって、この領域のみを使用して、所要のけん引力を生じさせなければならない。しかしながら、ガラスに印加される力は、リボンの使用に適した中心部分に影響を与えうる表面損傷を生じる可能性があることから、大きすぎてはならない。したがって、ロールは、ガラスのエッジ領域に、小さすぎる力と大きすぎる力との間の印加のバランスを達成すべきである。
【0006】
第3に、プリングロールの構造に用いられるミルボード材料は、長時間の製造の間に、割れたガラスに起因するプロセス損傷に耐えうるように十分に硬くなければならない。
【0007】
第4に、プリングロールは、ガラスに付着する可能性がある、堆積物(onclusions)として知られる表面欠陥を形成する、過剰量の粒子を出すべきではない。各堆積物は、典型的には完成した製品の欠陥領域(例えば、1つ以上の欠陥画素)を示すであろうことから、フラットパネル・ディスプレイ用の基板などの条件の厳しい用途に使用されるべきガラスでは、堆積物は非常に低いレベルに保たれなければならない。プリングロールを動作する高温環境の理由から、ガラスリボンに十分なけん引力を印加することができ、高温が困難な場合にも粒子を排出しない材料の提供が望ましい。
【0008】
プリングロールは、ガラスリボンの外縁、特に、リボンのエッジすれすれに存在する、厚くなったビードのすぐ内側の領域に接触するように設計されることが好ましい。これらのロールのための好ましい構造は、被駆動軸に取り付けられた、ミルボードなどの耐熱性材料のディスクを採用する。この構造の例は、Mooreの特許文献3、Asaumiらの特許文献4、およびHartらの特許文献5に見ることができる。
【0009】
ミルボード材料は、ガスケットにおける断熱として、防火キャビネット用の裏当てとして、および、フロートロールの被覆材料としてガラス製造業において、長年商業的に用いられている。特許文献6〜8に記載されるような初期のミルボード組成物は、しばしば、得られるミルボードを強化するため、および高温用途において耐熱性をもたらすために、セメント結合剤およびアスベスト繊維を含んでいた。アスベストの使用に関する健康への懸念は、アスベストを含まないミルボード材料の開発につながった。例えば特許文献9は、セラミックおよび有機繊維、パイロフィライト、および無機結合剤を含むミルボード組成物について開示している。同様に、特許文献10は、セルロース繊維、硫酸バリウム、セメント、および無機繊維の組合せを含むミルボードについて開示している。
【0010】
洗浄したセラミック繊維から成り、さまざまな充填剤および機能性成分を取り込んだミルボードは、ガラス製造におけるフロートラインロールのためのロールの被覆としても用いられている。これらの洗浄したセラミック材料は、たびたび、100メッシュ(0.0059インチ、0.015cm)未満の大きさの、約20%以上の非繊維化材料、すなわちショットを含む。この非繊維化材料は、フロートラインロールを横切るときに、ガラスシートに微視的欠陥を生じうる。結合剤の除去後、これらのミルボード材料は埃っぽくなり、ガラスシート上に堆積物(onclusion)を生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第3,338,696号明細書
【特許文献2】米国特許第3,682,609号明細書
【特許文献3】米国特許第3,334,010号明細書
【特許文献4】米国特許第4,533,581号明細書
【特許文献5】米国特許第5,989,170号明細書
【特許文献6】米国特許第1,594,417号明細書
【特許文献7】米国特許第1,678,345号明細書
【特許文献8】米国特許第3,334,010号明細書
【特許文献9】米国特許第4,244,781号明細書
【特許文献10】米国特許第4,308,070号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
現存のプリングロールは、高温長寿命、調節された加力、硬度、および汚染度の低さという競合する基準を十分に満たすことができていない。よって、現存のプリングロールよりも高い性能レベルを達成するプリングロールを入手することが、当技術分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、ガラス製造のためのプリングロール、さらに具体的には、プリングロールの製造に用いられるミルボード材料に関する。
【0014】
第1の態様では、少なくとも1つのミルボード片を備えたガラス製造のためのプリングロールが提供され、ここで、前記少なくとも1つのミルボード片は、
(a)約5から約30重量部までのアルミノケイ酸塩耐火繊維;
(b)約10から約40重量部までのケイ酸塩;
(c)約5から約32重量部までの雲母;および
(d)約10から約35重量部までのカオリン粘土;
を含み、ここで、a、b、c、およびdの組合せは、前記ミルボード片の少なくとも80重量パーセントを構成する。
【0015】
第2の態様では、プリングロールの製造方法であって、
(a)約5から約30重量部までのアルミノケイ酸塩耐火繊維;
(b)約10から約40重量部までのケイ酸塩;
(c)約5から約32重量部までの雲母;および
(d)約10から約35重量部までのカオリン粘土;
を含む、プリングロールの形態をした少なくとも1つのミルボード片を提供し、
前記ミルボード片を約650℃〜約1,000℃の温度に曝露することによって、前記ミルボード片を少なくともある程度圧縮する、各工程を有してなり、
a、b、c、およびdの組合せが、前記ミルボードの少なくとも80重量パーセントを構成する、方法を提供する。
【0016】
第3の態様では、
(a)約5から約30重量部までのアルミノケイ酸塩耐火繊維;
(b)約10から約40重量部までのケイ酸塩;
(c)約5から約32重量部までの雲母;および
(d)約10から約35重量部までのカオリン粘土;
を含み、
a、b、c、およびdの組合せが前記ミルボードの少なくとも80重量パーセントを構成する、ミルボードを提供する。
【0017】
さらに別の態様では、本開示の方法によって製造されるプリングロールを提供する。
【0018】
さらに別の態様では、プリングロールの少なくとも一部がムライトを含む、プリングロールを提供する。
【0019】
さらに別の態様では、プリングロールの少なくとも一部がクリストバライトを含む、プリングロールを提供する。
【0020】
さらに別の態様では、約25℃において約15%〜約30%の圧縮率、および/または約110℃において約5%未満の圧縮率を有するプリングロールを提供する。
【0021】
さらに別の態様では、少なくとも約50%の回復率を有するプリングロールを提供する。
【0022】
本開示の追加の態様は、一部には、詳細な説明および特許請求の範囲に記載され、一部には、詳細な説明から導かれ、または開示される典型的な実施の形態の実施によって理解することができよう。後述する利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される要素および組合せによって実現され、達成されるであろう。前述の概要および以下の詳細な説明の両方は、単に典型例および説明のためであって、本開示を限定しないものと理解されるべきである、
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、以下の詳細な説明、実施例、および特許請求の範囲、およびそれらの前述および後述する説明を参照することにより、さらに容易に理解することができる。しかしながら、本物品および/または方法を開示および説明する前に、本開示が、他に特記しない限り、開示される特定の物品および/または方法に限定されず、当然ながら変化するものと理解されるべきである。本明細書で用いられる技術用語は、単に特定の態様を説明する目的のためであって、限定することは意図されていないものと解されるべきである。
【0024】
開示される方法および組成物に用いることができる、開示される方法および組成物と共に用いることができる、開示される方法および組成物の調製に用いることができる、または開示される方法および組成物の製品である、材料、化合物、組成物、および成分について開示する。これらおよび他の材料を本明細書に開示し、これらの材料の組合せ、サブセット、相互関係、群などが開示され、これらの化合物のさまざまな個別的および集合的な組合せおよび順列のそれぞれの特定の言及が明白に開示されていない場合、それぞれが具体的に予定されており、本明細書に開示されているものと理解されたい。
【0025】
以下の説明は、その現在知られている実施の形態における本発明の可能な教示として提供される。この目的のため、当業者は、本発明の有益な結果を得つつも、本明細書に記載される開示のさまざまな態様に多くの変更をなすことができることを認識し、理解するであろう。所望の利益の一部は、他の特性を用いることなく、本開示の特性の一部を選択することによって、得ることができることもまた明らかであろう。したがって、当業者は、本発明に対する多くの変更および適合が可能であり、特定の状況においては望ましい場合さえあり、本開示の一部であることを認識するであろう。よって、以下の説明は、本発明の原理の例示として提供され、それらに限定されない。
【0026】
本明細書では範囲は、「約」特定の値から、および/または、「約」別の特定の値までとして表すことができる。範囲がこのように表される場合、別の態様は、1つの特定の値から、および/または、もう1つの特定の値までを含む。同様に、値が、先行詞「約」を使用して近似値として表される場合、特定の値は、別の態様を形成することが理解されよう。範囲のそれぞれの終点は、もう1つの終点に関連して、およびもう1つの終点とは独立して、意味をなすこともさらに理解されよう。
【0027】
本明細書および添付の特許請求の範囲における、組成物または物品の特定の成分の重量部への言及は、重量部で表した、組成物または物品の成分と任意の他の成分の間の重量の関係を示している。よって、2重量部の成分Xおよび5重量部の成分Yを含む化合物において、XおよびYは2:5の重量比で存在し、化合物に追加の成分が含まれるか否かにかかわらず、このような比で存在する。
【0028】
本明細書では、ある成分の「重量%」または「重量パーセント」または「重量に基づいたパーセント」は、そうでないことが特記されない限り、その成分を含む組成物の合計重量に基づいている。
【0029】
「ショット」とは、非繊維化材料のことをいう。
【0030】
「ムライト」は当業者に周知の用語であり、1600℃の高温で安定であり、低い熱膨張率および良好な機械的強度を示す、天然形態または合成形態のアルミニウムケイ酸塩のことをいう。
【0031】
「クリストバライト」は当業者に周知の用語であり、1,470℃から融点である1,728℃の間で安定なシリカの形態のことをいう。本明細書ではクリストバライトには、268℃より高温で生じるが、1,470℃より高温でのみ安定であり、より低い温度において結晶化および準安定性を持続することができる、高温型クリストバライトとして知られるクリストバライトのバリエーションが含まれる。
【0032】
本明細書では「圧縮率」とは、印加した圧力に対する応答としての材料の相対体積の変化のことをいう。例えば、プリングロールの圧縮率とは、軸圧縮力の印加の際に、組み立てたミルボード片の厚さ、または組み立てたプリングロールの長さの変化のことをいう。
【0033】
本明細書では「回復率」とは、印加した圧力を取り除いた後の圧縮した材料の膨張する能力のことをいう。例えば、プリングロールの回復率とは、軸圧縮力の除去または例えば熱膨張によるプリングロール・シャフトの伸張の際のミルボード片の厚さにおける膨張のことをいう。
【0034】
先に簡単に説明したように、典型的な実施の形態は、例えば板ガラスの製造に有用な、改善されたプリングロールを提供する。以下に詳述する他の態様の中で、典型的な実施の形態は、板ガラスの製造におけるアルミノケイ酸塩耐火繊維、ケイ酸塩、雲母、およびカオリン粘土を含むミルボード材料の使用を含む。さまざまな態様において、本明細書に記載されるミルボードおよびプリングロールは、ガラス製造に使用する場合に、従来のプリングロール材料より埃の量を少なく生産することができる。これらのより低いダスティングは、このようなシステムで製造されるガラスの品質を改善し、例えば、内包物および/または欠陥がより少ないガラスを生じうる。
【0035】
ミルボード
ミルボード材料は、ガラス製造業を含めたさまざまな産業において、しばしば断熱材料として使用される。ミルボード物品は、典型的には、所望の成分のスラリーを生成し、回転する遮蔽(screened)シリンダーを使用して前記成分の吸収および脱水をもたらし、前記脱水成分を合成のフェルトに変換し、その後、アキュムレータ・ロールに変換することによって製造され、ここで、スラリーの層は所望の厚さになるまで相互に蓄積される。これらの蓄積された層は、切込みを入れられ、取り除かれ、その後の用途にとって所望の寸法の平らなシートへと形成されうる。形成後および形成の間に、ミルボードのシートは、均一な厚さになるようにローラーによって圧縮されうる。得られたミルボードシートは、その後加熱され、残留水分を除去されうる。米国特許第1,594,417号、同第1,678,345号、同第3,334,010号、同第4,487,631号、および同第5,989,170号の各明細書には、ミルボード製造のためのさまざまな組成物および方法が記載されている。当業者は、ミルボード物品の製造のための適切な工程条件を容易に決定できよう。
【0036】
アルミノケイ酸塩耐火繊維
1つの態様では、アルミノケイ酸塩耐火繊維は、実質的に、アルミノケイ酸塩材料からなる任意の耐火繊維である。天然または合成の耐火繊維を用いることができる。特に、カオリナイトまたはカオリン系の材料に由来する耐火繊維が使用されうる。別の態様では、カオリン系材料に由来する天然の耐火繊維は、酸化鉄、二酸化チタン、および酸化ナトリウムなどの不純物を含みうる。1つの態様では、耐火繊維は、例えば5μmまでの長さ、例えば3μmまでの直径、および、例えば5:1の縦横比を有しうる。耐火繊維は、実質的にショット、すなわち非繊維化材料を含まないことが好ましい。耐火繊維は、約1,760℃までの温度で溶融せず、約1,260℃までの連続した温度に供される場合に、物理的および化学的完全性(integrity)を保持することが好ましい。耐火繊維は、例えば、カオリンに由来し、約45%〜約51%のアルミナ、約46%〜約52%のシリカ、約1.5%未満の酸化鉄、約2%未満の二酸化チタン、約0.5%未満の酸化ナトリウムから成り、約1.5〜約2.5μmの平均繊維直径を有し、約45%〜約55%の繊維化材料を含む、Unifrax Corporation(米国ニューヨーク州ナイアガラフォールズ所在)から市販される繊維「FRAX」6000などの繊維FRAX(登録商標)材料であって差し支えない。当業者は、適切なアルミノケイ酸塩耐火繊維を容易に選択することができよう。
【0037】
アルミノケイ酸塩耐火繊維は、アルミノケイ酸塩耐火繊維、ケイ酸塩、雲母、およびカオリン粘土の組合せの約5〜約30重量部、好ましくは約10〜約30重量部、さらに好ましくは約20〜約30重量部であって差し支えなく、例えば、上記組合せの約5、6、8、10、15、20、25、26、28、29、または30重量部でありうる
【0038】
ケイ酸塩
ケイ酸塩は、ケイ酸マグネシウム、ロックウール、またはそれらの組合せでありうる。天然または合成のケイ酸塩材料を使用することができる。ケイ酸塩は、鉱物の苦土かんらん石またはクリソタイル・アスベスト繊維のか焼によって得られる合成の苦土かんらん石でありうる。ケイ酸塩は、Ceram−Sna inc.(カナダ国ケベック州シャーブルック所在)から市販されるFRITMAG(商標)ケイ酸マグネシウムなどのケイ酸マグネシウムであることが好ましい。あるいは、ケイ酸塩は、セピオライト・ケイ酸マグネシウムでありうる。ケイ酸塩がセピオライト・ケイ酸マグネシウムである場合、この材料はアスベスト繊維を含みうることから、予防措置を講じるべきである。当業者は適切なケイ酸塩材料を容易に選択できよう。
【0039】
ケイ酸塩は、約10〜約40重量部、好ましくは約15〜約40重量部、さらに好ましくは約30よりも多く約40重量部までのアルミノケイ酸塩耐火繊維、ケイ酸塩、雲母、およびカオリン粘土の組合せであって差し支えなく、例えば、上記組合せの約10、11、12、15、16、17、20、25、30、32、34、36、38、または40重量部でありうる
【0040】
雲母
雲母は、Si25または2:5の比を有するケイ酸塩の4面体の平行シートの形態をした、シート状のケイ酸塩である、雲母群の任意のフィロケイ酸塩であって差し支えなく、例えば、黒雲母、白雲母、レピドライト、金雲母、またはイライトが挙げられる。1つの態様では、雲母は、実質的に不純物が存在せず、熱安定性、低い強熱減量を示し、かつ不活性な高表面積の雲母である。雲母は、好ましくは、Suzorite Mica Products,inc.(カナダ国ケベック州スゾルタウンシップ所在)から市販されるSUZORITE(登録商標)325−Sなどの金雲母の雲母片である。当業者は、適切な雲母材料を容易に選択することができよう。
【0041】
雲母は、アルミノケイ酸塩耐火繊維、ケイ酸塩、雲母、およびカオリン粘土の組合せの約5〜約32重量部、好ましくは約10〜約32重量部、さらに好ましくは約25重量部より多く約32重量部までであって差し支えなく、例えば、上記組合せの約5、6、8、10、15、20、21、22、24、25、26、28、29、30、31、または32重量部でありうる
【0042】
カオリン粘土
カオリン粘土は、カオリナイトなどの任意のカオリンまたは陶土材料でありうる。カオリン粘土は、好ましくは、Kentucky−Tennessee Clay Co.(米国ジョージア州サンダーズビル所在)から市販されるAllen粘土などの中程度の粒度の空中を浮遊するカオリン粘土である。当業者は、適切なカオリン粘土を容易に選択することができよう。
【0043】
カオリン粘土は、アルミノケイ酸塩耐火繊維、ケイ酸塩、雲母、およびカオリン粘土の組合せの約10〜約35重量部、好ましくは約20〜約35重量部、さらに好ましくは約25〜約35重量部であって差し支えなく、例えば、上記組合せの約10、11、13、20、25、30、31、32、または35重量部でありうる
【0044】
他の材料
ミルボード材料は、機能性成分をさらに含む。1つの態様では、機能性成分は、セルロース材料、デンプン材料、コロイドシリカ、またはそれらの混合物を含む。機能性成分はミルボード物品の形成に有用でありうる。機能性成分は、加熱の間にまたは典型的なプリングロール動作温度におけるミルボード物品の使用の間に、燃焼または分解しうる。1つの態様では、機能性成分は、加工した木材パルプのセルロース繊維などの加工助剤でありうる。機能性成分はまた、例えば、American Key Products,inc(米国ニュージャージー州カーニー所在)から市販されるpresol Nなどのカチオン性のジャガイモデンプン、または、例えば、Nalco Chemical Co.(米国イリノイ州ネーパービル所在)から市販されるアルカリ性のコロイドシリカ溶液であるLUDOX(登録商標)−Nalco 1140などのコロイドシリカなどの結合剤でありうる。
【0045】
機能性成分は、ミルボード材料の最大約15重量パーセントまででありうる。
【0046】
ミルボード材料は、実質的に、アスベスト、非繊維化材料、および小さい結晶質のシリカ粒子を含まないことが好ましい。ミルボード材料は、好ましくは、結晶質シリカを約0.5重量パーセント未満で含み、さらに好ましくは約0.1重量パーセント未満で含み、最も好ましくは結晶質シリカを含まない。ミルボード材料はまた、好ましくは、二酸化チタンを約0.8重量パーセント未満で含み、さらに好ましくは約0.3重量パーセント未満で含み、最も好ましくは二酸化チタンを含まない。
【0047】
全般的なミルボード組成物
ミルボードは、
約5から約30重量部までのアルミノケイ酸塩耐火繊維;
約10から約40重量部までのケイ酸塩;
約5から約32重量部までの雲母;および
約10から約35重量部までのカオリン粘土;
を含んで差し支えなく、
ここで、アルミノケイ酸塩耐火物、ケイ酸塩、雲母、およびカオリン粘土の組合せは、前記ミルボード片の少なくとも80重量パーセント、前記ミルボード片の少なくとも85重量パーセント、または前記ミルボード片の少なくとも90重量パーセントを構成する。全般的なミルボード組成物は、さらに、上述の機能性成分を含みうる。機能性成分は、プリングロールの動作およびガラス製造にとって典型的な温度まで加熱する間に燃焼または分解され、全般的なミルボード組成物における個々の成分のパーセンテージに影響を与えうる。機能性成分の燃焼または分解に起因する重量損失は、約0〜約20重量パーセントでありうる。1つの態様では、ミルボード組成物は、加熱の際に約8〜約15重量パーセントが失われる。別の態様では、ミルボード組成物は、加熱の間に約10重量パーセントが失われる。
【0048】
1つの態様では、好ましいミルボード組成物は、加熱後に、約20〜約30重量パーセント、好ましくは約26重量パーセントのアルミノケイ酸塩耐火繊維;約10〜約20重量パーセント、好ましくは約15重量パーセントのケイ酸塩;約14〜約25重量パーセント、好ましくは約20重量パーセントの雲母;約28〜約35重量パーセント、好ましくは約31重量パーセントのカオリン粘土、および約5〜約10重量パーセント、好ましくは約8重量パーセントの「LUDOX」を含む。
【0049】
1つの態様では、好ましいミルボード組成物は、約1,000℃を超える温度耐性を有する。
【0050】
プリングロールの圧縮率は、プリングロールを形成するミルボード片の密度に応じて決まる。プリングロール、およびしたがってミルボード材料は、例えば、25℃で約15〜約30%、および/または約110℃で約5%未満の低い圧縮率を示すことが好ましい。ミルボード材料は、例えば、約30%を超える、好ましくは約50%を超える、さらに好ましくは約60%を超える、高い回復率を示すことが望ましい。1つの態様では、ミルボード材料は、プリングロールが動作の間に晒されるであろう高温、例えば約750℃において、少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約50%、または、さらに好ましくは少なくとも約60%の回復率を有する。特定の態様では、ミルボード材料は、少なくとも約750℃の温度において、少なくとも約50%の回復率を有する。これらの回復率を有するミルボード材料は、プリングロールに置かれた軸圧縮力の除去の際、または熱膨張の結果としてプリングロール・シャフトの伸張の際に膨張し、それによってプリングロールを形成するミルボード片の分離を防止することができる。
【0051】
対照的に、市販のミルボード材料である、ニチアス株式会社(東京所在)から市販されるニチアスSD−115は、1〜10%の耐火物セラミック繊維、40〜50%の雲母、および30〜40%の粘土で構成されると考えられる。ニチアスSD−115材料は、わずか約800℃の温度耐性、加熱の際の14〜16%の重量損失、25℃における10〜17%の圧縮率、および760℃における35〜40%の回復率を有する。
【0052】
本明細書に記載し、下記実施例に示すように、本発明のミルボードは、より高い温度耐性を示し、加熱の際により低い重量損失を示し、および/または760℃においてより高い回復率を示す。
【0053】
プリングロール
板ガラスの製造に使用するためのプリングロールは、上述のようにミルボードから製造することができる。ミルボードは、細かく切り分けられ、その片々は対面接触してシャフトに取り付けられうる。各片の外表面は、プリングロールの外面の一部を形成する。プリングロールの外面の少なくとも一部は、ガラスシートに接触するように適合されうる。ガラスシートに接触するように適合されたプリングロールの部分は、典型的には、室温において、30〜55、好ましくは40〜55のShore D硬度を有する。
【0054】
さまざまなプリングロールの構造形態は文献に示されており、板ガラスの製造における使用に適していることが理解されるべきである。米国特許第6,896,646号明細書には、ガラスシートの製造のためのプリングロール、および、特に、ミルボード材料からプリングロールを生産する方法が開示されている。本開示は、特定のプリングロールの構造形態または配置には限定されず、当業者は適切なプリングロールの構造形態を容易に選択することができよう。
【0055】
典型的な構造形態では、一対のプリングロールは、オーバーフロー・ダウンドロー法で形成されたガラスシートを係合し、ここで、プリングロールの外表面の少なくとも一部がガラスシートと接触する。プリングロールは、シャフトを備えることもでき、このシャフトは、シャフトに取り付けられる際にミルボード片に軸圧縮力を印加することが可能なカラーによって所定の位置に保持された、複数のミルボード片を担持することができる。プリングロールの組立体は、シャフトの少なくとも1つのエッジに配置された軸受表面を含みうる。プリングロールはまた、ガラスシートと接触するのに特に適合した配置を含んでもよく、ここで、プリングロールの外面は、プリングロールの周辺部分よりもさらに長いシャフトからの距離にわたり延在する。これらの構造形態は、プリングロールに由来する粒子がガラスシート上に堆積物(onclusion)として堆積する可能性を軽減しうる。
【0056】
ミルボード片は、ロールの動作温度に曝露されたときに、実質的に組成変化または寸法変化を示さないように、プリングロールを形成するために組み立てる前に、予備的に焼成されうる。例えば、ミルボード片は、予備的焼成工程において、約650℃〜約1,000℃の温度、好ましくは約760℃〜約1,000℃に加熱され、少なくとも2時間、保持されうる。その後、ミルボード片は、周囲温度まで冷却され、プリングロールを形成するように組み立てられうる。セルロースなどのミルボード材料中に存在する機能性成分は、このような予備的焼成工程で加熱することによって燃焼されうる。あるいは、プリングロールは、予備的焼成工程なしに使用されうる。プリングロールを形成するミルボード材料が可燃性の機能性成分を含む場合、プリングロールの組立てに用いられる圧縮力は、燃焼した機能性成分を補うための調整を必要としうる。当然ながら、他の予備的焼成の時間および温度も、それらがロールの動作温度において安定な組成の完成したプリングロールをもたらすことを条件に、典型的な実施の形態の実践に使用することができる。
【0057】
ムライトおよび/またはクリストバライトの圧縮および形成
本発明のプリングロールの1つの態様は、長期間の製造の間にチェックに起因するガラスの割れなどのプロセス損傷に耐えうるように十分に硬いことである。製造の間のガラスの横ばいの動きは、プリングロールを含むミルボード片の分離と関係していることが多い。より柔らかいミルボード材料を用いる場合には、チェック、すなわちプリングロール表面に埋め込まれたガラス粒子が生じうる。例えば約650℃〜約1,200℃の動作温度に曝露される際に、一部のプリングロールは圧縮され、ロールのその部分の密度は、もともと形成されたプリングロールの密度よりも大きくなる。最初、圧縮は、ガラスに接触するプリングロールの外表面で、またはプリングロールの構造形態および特定のガラス製造条件および温度によって決定されるさまざまな形状において、生じうる。経時による圧縮率は、プリングロールが暴露される温度に基づいている。圧縮率は、デュロメーターなどの市販の装置を使用して、プリングロール表面のShore D硬度値を通じて測定することができる。ガラスシートと接触するプリングロールの一部分は、従来のミルボードおよびプリングロール材料よりも硬く、したがってプロセス損傷および埋め込みガラスに対してさらに耐性であることが好ましい。
【0058】
約1,000℃以上の温度にさらに曝露される際に、プリングロールの一部は、ムライト、クリストバライト、またはそれらの組合せを形成しうる。ムライトおよび/またはクリストバライトを形成しうるプリングロールの一部分は、プリングロールの構造形態およびロールが曝露される温度に応じて変化しうるが、典型的には、プリングロールの外側部分であろう。ガラスシートと接触するプリングロールの一部分はまた、ムライト層、クリストバライト層、またはムライトとクリストバライトを含む組合せ層を形成することが好ましい。
【0059】
ムライトの圧縮および形成は、プリングロールの性能にとって有益である。プロセス損傷に耐えうるように十分に硬いプリングロールは、ガラスシートへの過度の力を印加する必要なく、かつ、高いレベルの微粒子汚染を生じることもなしに、従来のプリングロールよりも長い耐用期間を達成することが分かった。本発明のプリングロールは、40日〜100日を超える耐用期間、好ましくは75日を超える耐用期間、最も好ましくは100日日を超える耐用期間を達成することができる。
【0060】
プリングロールは、さまざまな態様において、上述の厳しい要件の1つ以上を満たすことができる。プリングロールは、列挙される要件のすべてを同時に満たすことは必ずしも必要としない。1つの態様では、ムライトの圧縮および/または形成は、プリングロールがガラスの形成に伴う高温に耐え、より長い耐用期間をもたらすことができるようにしうる。別の態様では、クリストバライトの圧縮および/または形成は、プリングロールがガラスの形成に伴う高温に耐え、より長い耐用期間をもたらすことができるようにしうる。別の態様では、プリングロールの表面は、ガラスのシートの厚さを調節するのに十分なけん引力を印加することができる。さらに別の態様では、プリングロールの組成は、ガラスの割れに起因するプロセス損傷に耐えうるように十分に硬く、ダウンドロー法によって製造されたガラスシートに堆積物(onclusion)を生じうる過剰の粒子を排出しない。
【実施例】
【0061】
本開示の原理をさらに例証するため、以下の実施例は、特許明細書の範囲に記載されるミルボードプリングロールおよび方法がいかに成し遂げられ評価されるかについての完全な開示および説明を当業者に提供することを目的として記載される。それらは、本開示の単に典型例であることが意図されており、本発明者らが彼らの発明と見なすものの範囲を限定することは意図されていない。数値(例えば、量、温度など)に関しては正確性を確保するように努力しているが、ある程度の誤差および偏差が生じうる。他に指定のない限り、部は重量部であり、温度は℃または周囲温度であり、圧力は大気圧であるかそれに近い。
【0062】
例示したプリングロール物品を、相対的な物理特性および性能特性、例えば硬度、圧縮率、および回復率などについて評価した。
【0063】
実施例1−本発明にかかるミルボードA
最初の実施例では、従来の製造技術を用いて、下記表1に記載される成分からミルボード材料を製造した。
【表1】
【0064】
上記のように製造した本発明のミルボードの1片を、その後、密度、厚さ、硬度、および圧縮について、2種類の温度で分析した。この分析結果を下記表2にまとめた。硬度の値は、Wilson Instruments(米国マサチューセッツ州ノーウッド所在)から市販されるショアデュロメーター(Shore Durometer)を備えたASTM D2240によって決定した。圧縮率および回復率の値は、ASTM F36によって決定した。
【表2】
【0065】
表2に記載の実験データは、特に、ミルボード組成物が、ガラスの割れに起因するプロセス損傷を被ることなく、ガラスシートの取り扱いおよび加工に利点をもたらすのに十分に高いShore D硬度値を示すことを示唆している。加えて、本発明のミルボード材料の低い圧縮率および高い回復率は、本品がプリングロールの用途に非常に適していることを示唆している。高い回復率は、圧縮したミルボード材料が、製造の間および動作温度において、プリングロールのカラーに対するスプリングとして作用することができることを示唆している。
【0066】
実施例2−対照となるミルボード
第2の実施例では、本発明にかかるミルボードAをニチアスSD−115材料と比較した。表3は、本発明にかかるミルボードAおよびニチアスSD−115材料についての物理的特性の典型的な範囲を詳しく示している。
【表3】
【0067】
上記表3に詳述するように、本発明にかかるミルボードAは、対照とするニチアスSD−115材料よりも高い温度耐性を示す。本発明にかかるミルボードは、760℃における穿孔したミルボードディスクの焼成の際に低い重量損失を示す。熱重量分析によって決定される650℃〜1,000℃の間の漸次的重量損失は、プリングロールの動作の間の燃焼または分解への材料損失の量を示している。より高い漸次的重量損失を有する材料は、典型的には、ディスクの分離を妨げるようにプリングロールの圧縮の調整を必要とするであろう。あるいは、高い回復率を示す材料は、燃焼、分解、または、例えば熱膨張によってプリングロールのシャフトが伸張する際に、体積損失を満たすように膨張することができる。本発明にかかるミルボードは、有利には、より高い回復率値とともに、実質的により低い漸次的重量損失を示す。本発明にかかるミルボードはまた、SD−115材料よりも低い圧縮率を有し、プリングロールの生産における使用により適していることを示唆している。
【0068】
実施例3−ミルボード材料
第3の実施例では、下記表4に詳述される本開示に従って、さまざまな本発明のミルボード材料を調製した。
【表4】
【0069】
表4に示すように、本開示に従って調製されたミルボード材料は、従来の材料と比較して、高いShore D硬度および優れた回復率をもたらすことができる。例えば、サンプルKは、110℃において、Shore D硬度値60および60.82%の回復率をもたらす。
【0070】
本明細書に記載の化合物、組成物、および方法には、さまざまな変更および変形を行うことができる。本明細書に記載の化合物、組成物、および方法の他の態様は、本明細書の考慮および本明細書に開示される化合物、組成物、および方法の実施から明らかであろう。本明細書および実施例は典型例と見なされることが意図されている。