【実施例】
【0066】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0067】
カチオン性エポキシ樹脂(A)の製造
製造例1 基体樹脂No.1溶液の製造例 (実施例用)
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに、jER828EL(注1)760部、EPICLON HP−820(注2)450部、ビスフェノールA 456部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、120℃でエポキシ当量833になるまで反応させた。次にエチレングリコールモノブチルエーテル110部を加え、反応温度を100℃にした。
【0068】
次に、ジエタノールアミン158部及びジエチレントリアミンのケチミン化物95部(純度84%、メチルイソブチルケトン溶液)を加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテル289部を加え、樹脂固形分80質量%の基体樹脂No.1溶液を得た。基体樹脂No.1は、アミン価64mgKOH/g、数平均分子量1900であった。カテコール骨格単位は18%である。
エポキシ樹脂(a1)のエポキシ基のモル数/フェノール性水酸基含有化合物(a2)のフェノール性水酸基のモル数=1.5である。
(注1)jER828EL:ジャパンエポキシレジン社製、商品名、エポキシ
樹脂、エポキシ当量190、数平均分子量380
(注2)EPICLON HP−820:DIC社製、商品名、カテコール及びアルキルカテコールから選ばれる少なくとも1種とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂、エポキシ当量225、数平均分子量450。
【0069】
製造例2 基体樹脂No.2溶液の製造例 (実施例用)
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに、jER828EL(注1)1140部、カテコール220部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、120℃でエポキシ当量680になるまで反応させた。次にエチレングリコールモノブチルエーテル110部を加え、反応温度を100℃にした。次に、ジエタノールアミン158部及びジエチレントリアミンのケチミン化物95部(純度84%、メチルイソブチルケトン溶液)を加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテル211部を加え、樹脂固形分80質量%の基体樹脂No.2溶液を得た。基体樹脂No.2は、アミン価76mgKOH/g、数平均分子量1500、カテコール骨格単位は14%である。
エポキシ樹脂(a1)のエポキシ基のモル数/フェノール性水酸基含有化合物(a2)のフェノール性水酸基のモル数=1.5である。
【0070】
製造例3 基体樹脂No.3溶液の製造例(実施例用)
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに、jER828EL(注1)1140部、tert−ブチルカテコール332部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、120℃でエポキシ当量736になるまで反応させた。次にエチレングリコールモノブチルエーテル110部を加え、反応温度を100℃にした。
次に、ジエタノールアミン158部及びジエチレントリアミンのケチミン化物95部(純度84%、メチルイソブチルケトン溶液)を加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテル241部を加え、樹脂固形分80質量%の基体樹脂No.3溶液を得た。基体樹脂No.3は、アミン価71mgKOH/g、数平均分子量1700、カテコール骨格単位は20%である。
エポキシ樹脂(a1)のエポキシ基のモル数/フェノール性水酸基含有化合物(a2)のフェノール性水酸基のモル数=1.5である。
【0071】
製造例4 基体樹脂No.4溶液の製造例(実施例用)
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに、jER828EL(注1)1634部、tert−ブチルカテコール548部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、120℃でエポキシ当量798になるまで反応させた。次にエチレングリコールモノブチルエーテル110部を加え、反応温度を100℃にした。
次に、ジエタノールアミン158部及びジエチレントリアミンのケチミン化物95部(純度84%、メチルイソブチルケトン溶液)を加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテル419部を加え、樹脂固形分80質量%の基体樹脂No.4溶液を得た。
基体樹脂No.4は、アミン価50mgKOH/g、数平均分子量2300、カテコール骨格単位は23%である。エポキシ樹脂(a1)のエポキシ基のモル数/フェノール性水酸基含有化合物(a2)のフェノール性水酸基のモル数=1.3である。
【0072】
製造例5 基体樹脂No.5溶液の製造例(実施例用)
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに、jER828EL(注1)760部、tert−ブチルカテコール166部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、120℃でエポキシ当量418になるまで反応させた。次にエチレングリコールモノブチルエーテル110部を加え、反応温度を100℃にした。
【0073】
次に、ジエタノールアミン200部及びジエチレントリアミンのケチミン化物95部(純度84%、メチルイソブチルケトン溶液)を加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテル104部を加え、樹脂固形分80質量%の基体樹脂No.5溶液を得た。基体樹脂No.5は、アミン価106mgKOH/g、数平均分子量1,200、カテコール骨格単位は15%である。
エポキシ樹脂(a1)のエポキシ基のモル数/フェノール性水酸基含有化合物(a2)のフェノール性水酸基のモル数=2.0である。
【0074】
製造例6 基体樹脂No.6溶液の製造例
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに、jER828EL(注1)1140部、ビスフェノールA 456部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、120℃でエポキシ当量1965になるまで反応させた。次にエチレングリコールモノブチルエーテル110部を加え、反応温度を100℃にした。
次に、ジエタノールアミン158部及びジエチレントリアミンのケチミン化物95部(純度84%、メチルイソブチルケトン溶液)を加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテル211部を加え、樹脂固形分80質量%の基体樹脂No.6溶液を得た。基体樹脂No.6は、アミン価66mgKOH/g、数平均分子量1,800、カテコール骨格単位は0%である。
エポキシ樹脂(a1)のエポキシ基のモル数/フェノール性水酸基含有化合物(a2)のフェノール性水酸基のモル数=1.5である。
【0075】
製造例7 基体樹脂No.7溶液の製造例
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに、jER828EL(注1)684部、tert−ブチルカテコール133部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、120℃でエポキシ当量418になるまで反応させた。次にエチレングリコールモノブチルエーテル110部を加え、反応温度を100℃にした。 次に、ジエタノールアミン158部及びジエチレントリアミンのケチミン化物95部(純度84%、メチルイソブチルケトン溶液)を加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテル78部を加え、樹脂固形分80質量%の基体樹脂No.7溶液を得た。基体樹脂No.7は、アミン価117mgKOH/g、数平均分子量1,200、カテコール骨格単位は13%である。 エポキシ樹脂(a1)のエポキシ基のモル数/フェノール性水酸基含有化合物(a2)のフェノール性水酸基のモル数=2.3である。
【0076】
製造例8 基体樹脂No.8溶液の製造例
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに、jER828EL(注1)2280部、tert−ブチルカテコール580部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、120℃でエポキシ当量1965になるまで反応させた。次にエチレングリコールモノブチルエーテル110部を加え、反応温度を100℃にした。 次に、ジエタノールアミン158部及びジエチレントリアミンのケチミン化物95部(純度84%、メチルイソブチルケトン溶液)を加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテル588部を加え、樹脂固形分80質量%の基体樹脂No.8溶液を得た。基体樹脂No.8は、アミン価39mgKOH/g、数平均分子量2,500、カテコール骨格単位は19%である。 エポキシ樹脂(a1)のエポキシ基のモル数/フェノール性水酸基含有化合物(a2)のフェノール性水酸基のモル数=1.2である。
【0077】
製造例1〜8の内容について、下記表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
ブロック化ポリイソシアネート(B)の製造
製造例9 硬化剤の製造例
反応容器中に、コスモネートM−200(注3)270部及びメチルイソブチルケトン127部を加え70℃に昇温した。この中にエチレングリコールモノブチルエーテル236部を1時間かけて滴下して加え、その後、100℃に昇温し、この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアナト基の吸収がなくなったことを確認し、樹脂固形分80%の硬化剤を得た。
(注3)コスモネートM−200:商品名、三井化学社製、クルードMDI。
【0080】
製造例10 顔料分散用樹脂の製造例
jER828EL(注1参照)1,010部に、ビスフェノールAを390部、プラクセル212(注4)240部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が約1,090になるまで反応させた。
次に、ジメチルエタノールアミン134部及び90%の乳酸水溶液150部を加え、120℃で4時間反応させた。次いで、メチルイソブチルケトンを加えて固形分を調整し、固形分60%のアンモニウム塩型樹脂系の顔料分散用樹脂を得た。上記分散用樹脂のアンモニウム塩濃度は、0.78mmol/gであった。
(注4)プラクセル212:ポリカプロラクトンジオール、ダイセル化学工業株式会社製、商品名、重量平均分子量約1,250。
【0081】
製造例11 顔料分散ペーストの製造例
製造例10で得た固形分60%の顔料分散用樹脂8.3部(固形分5部)、酸化チタン14.5部、精製クレー7.0部、カーボンブラック0.3部、ジオクチル錫オキサイド1部、水酸化ビスマス1部及び脱イオン水20.3部を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分55%の顔料分散ペーストを得た。
【0082】
エマルションの製造
製造例12 エマルションNo.1の製造例
製造例1で得られた基体樹脂No.1を87.5部(固形分70部)、製造例9で得られた硬化剤を37.5部(固形分30部)を混合し、さらに10%蟻酸12.1部を配合して均一に攪拌した後、脱イオン水156.9部を強く攪拌しながら約15分間を要して滴下して、固形分34%のエマルションNo.1を得た。
【0083】
製造例13〜19 エマルションNo.2〜No.8製造例
表2の配合内容とする以外は、製造例12と同様にして、エマルションNo.2〜No.8を得た。
【0084】
【表2】
【0085】
カチオン電着塗料組成物の製造
実施例1
製造例12で得たエマルションNo.1を294部(固形分100部)、製造例11で得た55%の顔料分散ペーストを52.4部(固形分28.8部)、脱イオン水297.6部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料No.1を製造した。
【0086】
実施例2〜5、比較例1〜3
実施例1と同様にして、表3で示されるような配合内容にて、カチオン電着塗料No.2〜No.8を製造した。
【0087】
【表3】
【0088】
カチオン電着塗装板の作成
化成処理を施した冷延鋼板(70mm×150mm×0.8mm)を「被塗物」として、各カチオン電着塗料No.1〜No.8の浴を28℃に調整し、250Vで通電時間を調整して電着塗装し、その後170℃で20分間焼付けして、乾燥膜厚10μm、及び乾燥膜厚20μmの各試験板を得た。各試験板の評価は、下記の条件に従って行った。結果を表4に結果を示す。
【0089】
【表4】
【0090】
(注5)つきまわり性:直径8mmの穴を空け、4枚の鋼板を2cm間隔で設置した「4枚ボックス法つきまわり性試験の治具」(
図1参照)を、
図2のように配線した。
図2の4枚の鋼板のうち、最も左側の鋼板に向かって左側の面を「A面」、向かって右側の面を「B面」とする。同様に、左から2番目の鋼板左右の面を、それぞれ、「C面」及び「D面」、左から3番目の鋼板左右の面を、それぞれ、「E面」及び「F面」、そして最も右側の鋼板左右の面が、それぞれ、「G面」と「H面」となる。この中で、A面が「外板」であり、G面が「内板」となる。
【0091】
図2の装置において、塗装浴温28℃、A面と電極との極間距離10cm、通電時間3分間にて、外板乾燥膜厚15μmとなる電圧にて電着塗装した。つきまわり性は、外板乾燥膜厚、内板乾燥膜厚及びつきまわり性(%)(=内板乾燥膜厚/外板乾燥膜厚×100)で評価した。
【0092】
(注6) 仕上り性:各実施例、比較例で得た電着塗膜(乾燥膜厚10μm、乾燥膜厚20μm)を、JIS B 0601(表面粗さの定義と表示、1982年)に基づいて、サーフコム301(株式会社 ミツトヨ社製、商品名、表面粗さ測定機)を用いて中心線平均粗さ(Ra)を測定した。なお電着塗膜の「中心線平均粗さ(Ra)」については、
Sは、Ra値が0.25未満
Aは、Ra値が0.25以上で、かつ0.30未満
Bは、Ra値が0.30以上で、かつ0.40未満
Cは、Ra値が0.40以上、をそれぞれ示す。
【0093】
(注7)防食性:各実施例、比較例で得た乾燥膜厚10μm、及び乾燥膜厚20μmのカチオン電着塗膜の素地に達するように、塗膜にカッターナイフでクロスカット傷を入れ、これをJIS Z−2371に準じて、35℃ソルトスプレー試験を480時間(乾燥膜厚10μm)、及び840時間(乾燥膜厚20μm)行い、カット部からの傷、フクレ幅によって以下の基準で評価した:
Sは、錆、フクレの最大幅がカット部より2.0mm以下(片側)
Aは、錆、フクレの最大幅がカット部より2.0mmを超え、かつ3.0mm以下(片側)
Bは、錆、フクレの最大幅がカット部より3.0mmを超え、かつ3.5mm以下(片側)
Cは、錆、フクレの最大幅がカット部より3.5mmを超える。
【0094】
(注8)総合評価
本発明が属するカチオン電着塗装の分野においては、つきまわり性、ならびに得られる塗膜の仕上り性及び防食性がいずれも優れていることが所望される。従って、以下の基準に従い、カチオン電着塗料の総合評価を行った:
S:付きまわり性が60%以上であり、かつ仕上り性(乾燥膜厚10μm)、仕上り性(乾燥膜厚20μm)、防食性(乾燥膜厚10μm)及び防食性(乾燥膜厚20μm)が全てS又はAであり、かつ少なくとも1つがSである
A:付きまわり性が60%以上であり、かつ仕上り性(乾燥膜厚10μm)、仕上り性(乾燥膜厚20μm)、防食性(乾燥膜厚10μm)及び防食性(乾燥膜厚20μm)が全てAである
B:付きまわり性が60%以上であり、かつ仕上り性(乾燥膜厚10μm)、仕上り性(乾燥膜厚20μm)、防食性(乾燥膜厚10μm)及び防食性(乾燥膜厚20μm)が全てS、A又はBであり、かつ少なくとも1つがBである
C:付きまわり性が60%未満であるか、又は仕上り性(乾燥膜厚10μm)、仕上り性(乾燥膜厚20μm)、防食性(乾燥膜厚10μm)及び防食性(乾燥膜厚20μm)のうち少なくとも1つがCである。