(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
抗体の一価形態が10nM以下又はそれより良い親和性でヒトヘプシンに結合し、抗体の一価形態が330nM以下の親和性でマウスヘプシンに結合し、ヘプシンとヒトヘプシンS1サブサイトに結合するセリンプロテアーゼ阻害剤を含む複合体として存在しているヘプシンに結合する、請求項1に記載の抗体。
【発明を実施するための形態】
【0071】
ここでの発明は、例えばヘプシンの発現及び/又は活性、例えば増加した発現及び/又は活性又は望まれない発現及び/又は活性に関連した疾患状態の治療又は予防に有用である抗ヘプシン抗体を提供する。幾つかの実施態様では、本発明の抗体、腫瘍、癌、及び/又は細胞増殖性疾患を治療するために使用される。
【0072】
他の態様では、本発明の抗ヘプシン抗体は、ヘプシンの検出及び/又は単離、例えば様々な組織及び細胞タイプにおけるヘプシンの検出のための試薬としての有用性が見出される。
【0073】
本発明は抗ヘプシン抗体及び抗ヘプシン抗体をコードするポリヌクレオチドを作製し使用する方法を更に提供する。
【0074】
一般技術
ここに記載され又は引用される技術及び手順は、一般に十分に理解されるものであり、例えば、Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3版 (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY (F. M. Ausubel等編, (2003));シリーズMETHODS IN ENZYMOLOGY (Academic Press, Inc.): PCR 2: A PRACTICAL APPROACH (M. J. MacPherson, B. D. Hames及びG. R. Taylor編(1995)), Harlow及びLane編 (1988) ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL, and ANIMAL CELL CULTURE (R. I. Freshney編(1987))に記載された広く利用されている方法論のような常套的方法論を使用して当業者によく用いられるものである。
【0075】
定義
「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたものである。その自然環境の汚染成分とは、抗体の診断又は治療的な使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様では、抗体は、(1)ローリー法で測定して95重量%を越え、最も好ましくは99重量%を越えるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに充分な程度まで、あるいは、(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を使用する非還元あるいは還元条件下でのSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)により均一になるまで精製される。抗体の自然環境の少なくとも一の成分が存在しないため、単離された抗体には、組換え細胞内のインサイツでの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも一の精製工程により調製される。
【0076】
「単離された」核酸分子は、核酸の天然源に通常は伴う少なくとも一種の汚染核酸分子から同定され分離される核酸分子である。単離された核酸分子は、それが天然に見出される形態又は設定以外のものである。従って、単離された核酸分子は、それが天然細胞中に存在している核酸分子とは区別される。しかしながら、単離された核酸分子は、例えば、核酸分子が天然細胞の位置とは異なる染色体位置にある核酸(例えば抗体をコードする核酸)を通常は発現する細胞中に含まれる核酸分子を含む。
【0077】
「カバットにおける可変ドメイン残基番号付け」又は「カバットにおけるアミノ酸位置番号付け」なる用語とその変形は、カバット等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)における抗体の編集の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインについて使用される番号付けシステムを意味する。この番号付けシステムを使用すると、実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はCDRを短くするか、又はそこに挿入される対応のより少ないか又は付加的なアミノ酸を含みうる。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入物(カバットに従い残基52a)と、重鎖FR残基82の後に挿入残基(例えば、カバットに従い残基82a、82b、及び82c等)を含む。残基のカバット番号付けは、「標準」カバット番号の配列を有する抗体の配列を相同領域で整列させることにより、与えられた抗体について決定されうる。
【0078】
ここで使用される「実質的に類似する」、又は「実質的に同じ」なる語句は、当業者が2つの数値の間の差が、該値(例えばKd値)によって測定される生物学的特性の文脈内でわずかに又は全く生物学的及び/又は統計学的有意ではないと認めるほど、2つの数値(一般には本発明の抗体に関連するものと、参照/比較抗体に関連する他のもの)間の十分に高い度合いの類似性を示している。上記2つの値間の差は、参照/比較抗体の値の関数として好ましくは約50%未満、好ましくは約40%未満、好ましくは約30%未満、好ましくは約20%未満、好ましくは約10%未満である。
【0079】
「結合親和性」は、一般には分子(例えば抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有的相互作用の合計の強度を意味する。特に示さない限り、ここで使用される場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば抗体と抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を意味する。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に解離定数(Kd)により表すことができる。望ましくは、Kdは1×10
−7、1×10
−8、5×10
−8、1×10
−9、3×10
−9、5×10
−9、又は1×10
−10又はより強い。親和性は、ここに開示されたものを含む、当該技術分野で知られている一般的な方法により測定することができる。低親和性抗体は一般に抗原にゆっくりと結合し、容易に解離する傾向がある一方、高親和性抗体は一般により素早く抗原に結合し、より長く結合したまま残る傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当該技術分野で知られており、その何れかを本発明の目的に使用することができる。特定の例示的実施態様を以下に記載する。
【0080】
一実施態様では、この発明による「Kd」又は「Kd値」は、所定の滴定シリーズの非標識抗原の存在下で最小濃度の(
125I)標識抗原でFabを平衡にし、ついで抗Fab抗体被覆プレートと結合した抗原を捕獲することによって抗原に対するFabの溶液結合親和性を測定する次のアッセイで記載される(Chen等, (1999) J. Mol Biol 293:865-881)、対象抗体のFab型とその抗原を用いて実施される放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。アッセイの条件を樹立するために、マイクロタイタープレート(Dynex)を5μg/mlの捕獲抗Fab抗体(Cappel Labs)を含む50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)で一晩被覆し、ついでPBS中2%(w/v)のウシ血清アルブミンで室温(およそ23℃)で2から5時間、ブロックする。非吸着プレート(Nunc#269620)に、100pM又は26pMの[
125I]抗原を段階希釈した対象Fabと混合する(例えば、Presta等, (1997) Cancer Res. 57: 4593-4599の抗VEGF抗体、Fab-12の評価と一致)。ついで対象Fabを一晩インキュベートする;しかし、インキュベーションは平衡状態に達することを担保するために長時間(例えば65時間)継続する場合がある。その後、混合物を捕獲プレートに移し、室温で(例えば1時間)インキュベートする。ついで、溶液を取り除き、プレートをPBS中0.1%のTween20で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルの閃光物質(MicroScint-20; Packard)を加え、プレートをTopcountγカウンター(Packard)で10分間計数する。最大結合の20%以下となる濃度の各Fabを選択して競合結合アッセイに用いる。他の実施態様によると、〜10応答単位(RU)の固定抗原CM5チップを用いて25℃でBIAcore
TM-2000又はBIAcore
TM-3000(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)を使用して表面プラズモン共鳴アッセイを用いてKd又はKd値を測定する。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5, BIAcore Inc.)を、供給者の指示書に従ってN-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化させる。抗原を10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(〜0.2μM)に希釈した後、結合したタンパク質の応答単位(RU)がおよそ10になるように5μl/分の流量で注入する。抗原の注入後、未反応群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入する。動態測定のために、2倍の段階希釈したFab(0.78nMから500nM)を25℃、およそ25μl/分の流量で0.05%のTween20(PBST)を含むPBSに注入する。幾つかの実施態様では、次の変更を表面プラズモン共鳴アッセイ法に使用する:抗体をCM5バイオセンサーチップに固定して、およそ400RUを達成し、動態測定のために、2倍の段階希釈の標的タンパク質(例えば ヘプシン-IIIb又は-IIIc)(67nMから開始)を約30ul/分の流量で25℃でPBSTバッファーで注入する。結合速度(K
on)と解離速度(K
off)は、会合及び解離のセンサーグラムを同時フィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(BIAcore評価ソフトウェアバージョン3.2)を使用して計算する。平衡解離定数(Kd)をK
off/K
on比として算出する。例えば、Chen, Y等, (1999) J. Mol Biol 293:865-881を参照。上記の表面プラスモン共鳴アッセイによる結合速度が10
6M
−1S
−1を上回る場合、結合速度は、分光計、例えば、ストップフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される、増加濃度の抗原の存在下で、PBS(pH7.2)、25℃で、20nMの抗抗原抗体(Fab型)の蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、帯域通過=16nm)における増加又は減少を測定する蛍光消光技術を用いて決定されうる。
【0081】
また、この発明による「結合速度」又は「会合の速度」又は「会合速度」又は「k
on」は、〜10応答単位(RU)の固定した抗原CM5チップを用いて25℃のBIAcore
TM-2000又はBIAcore
TM-3000(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)を用いた前述と同じ表面プラズモン共鳴アッセイにて測定される。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5, BIAcore Inc.)を、供給者の指示書に従ってN-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化させる。抗原を10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(〜0.2μM)に希釈した後、結合したタンパク質の応答単位(RU)がおよそ10になるように5μl/分の流量で注入する。抗原の注入後、未反応群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入する。動態測定のために、2倍の段階希釈したFab(0.78nMから500nM)を25℃、およそ25μl/分の流量で0.05%のTween20(PBST)を含むPBSに注入する。幾つかの実施態様では、次の変更を表面プラズモン共鳴アッセイ法に使用する:抗体をCM5バイオセンサーチップに固定して、およそ400RUを達成し、動態測定のために、2倍の段階希釈の標的タンパク質(例えば ヘプシン-IIIb又は-IIIc)(67nMから開始)を約30ul/分の流量で25℃でPBSTバッファーで注入する。結合速度(K
on)と解離速度(K
off)は、会合及び解離のセンサーグラムを同時フィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(BIAcore評価ソフトウェアバージョン3.2)を使用して計算する。平衡解離定数(Kd)をK
off/K
on比として算出した。例えば、Chen, Y等, (1999) J. Mol Biol 293:865-881を参照。しかしながら、上記の表面プラスモン共鳴アッセイによる結合速度が10
6M
−1S
−1を上回る場合、結合速度は、分光計、例えば、ストップフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される、増加濃度の抗原の存在下で、PBS(pH7.2)、25℃で、20nMの抗抗原抗体(Fab型)の蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、帯域通過=16nm)における増加又は減少を測定する蛍光消光技術を用いて決定されうる。
【0082】
ここで使用される「ベクター」なる用語は、それが結合している他の核酸を輸送することのできる核酸分子を意味するものである。一つのタイプのベクターは「プラスミド」であり、これは付加的なDNAセグメントが結合されうる円形の二重鎖DNAループを意味する。他の型のベクターはファージベクターである。他の型のベクターはウイルスベクターであり、付加的なDNAセグメントがウイルスゲノムへ結合されうる。所定のベクターは、それらが導入される宿主細胞内において自己複製することができる(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクターとエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、宿主ゲノムと共に複製する。更に、所定のベクターは、それらが作用可能に結合している遺伝子の発現を指令し得る。このようなベクターはここでは「組換え発現ベクター」(又は単に「組換えベクター」)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターはしばしばプラスミドの形をとる。本明細書では、プラスミドが最も広く使用されているベクターの形態であるので、「プラスミド」と「ベクター」を相互交換可能に使用する場合がある。
【0083】
ここで交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを意味し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらのアナログ、又はDNAもしくはRNAポリメラーゼにより、もしくは合成反応によりポリマー中に取り込まれうる任意の基質でありうる。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びそれらのアナログを含みうる。存在するならば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの組み立ての前又は後になされ得る。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断されうる。ポリヌクレオチドは合成後に、例えば標識との結合により、更に修飾されうる。他のタイプの修飾には、例えば「キャップ(caps)」、アナログとの自然に生じたヌクレオチドの一又は複数の置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電連結(例えばホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメート等)及び荷電連結(ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)を有するもの、ペンダント部分を含むもの、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply-L-リジン等)、インターカレータを有するもの(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤を含むもの(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属等)、アルキル化剤を含むもの、修飾された連結を含むもの(例えばアルファアノマー核酸等)、並びにポリヌクレオチドの未修飾形態が含まれる。更に、糖類中に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えばホスホナート基、ホスフェート基で置き換えられ、標準的な保護基で保護され、又は付加的なヌクレオチドへの更なる連結を調製するように活性化され得、もしくは固体又は半固体支持体にコンジュゲートされうる。5'及び3'末端OHはホスホリル化され得、又はアミンもしくは1から20の炭素原子の有機キャップ基部分で置換されうる。また他のヒドロキシルは標準的な保護基に誘導体化されうる。ポリヌクレオチドはまた当該技術分野で一般的に知られているリボース又はデオキシリボース糖類の類似形態をまた含み、これらには例えば2'-O-メチル-、2'-O-アリル、2'-フルオロ-又は2'-アジド-リボース、炭素環式糖アナログ、アルファ-アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロース類又はリキソース類、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式アナログ、及び非塩基性ヌクレオシドアナログ、例えばメチルリボシドが含まれる。一又は複数のホスホジエステル結合は代替の連結基で置き換えることができる。これらの代替の連結基には、限定されるものではないが、ホスフェートがP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、「(O)NR
2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR'、CO又はCH
2(「ホルムアセタール」)と置き換えられた実施態様が含まれ、ここでそれぞれのR及びR'は、独立してH又は、エーテル(-O-)結合を含んでいてもよい置換もしくは未置換のアルキル(1-20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルジルである。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。先の記述は、RNA及びDNAを含むここで言及される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0084】
ここで使用される「オリゴヌクレオチド」は、短く、一般的に単鎖であり、また必ずしもそうではないが、一般的に約200未満のヌクレオチド長の、一般的に合成のポリヌクレオチドを意味する。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」なる用語は、相互に排他的なものではない。ポリヌクレオチドについての上述の記載はオリゴヌクレオチドに対して等しく完全に当てはまる。
【0085】
ペプチド又はポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」とは、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないで、配列を整列させ、最大パーセントの配列同一性を達成するために必要なら間隙を導入した後の、特定のペプチド又はポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある様々な方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用することによって得られ、ここで、ALIGN-2プログラムの完全なソースコードは以下の表Aに提供される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社により著作され、ソースコードはユーザードキュメンテーションと共に米国著作権庁(Washington D.C., 20559)に提出されており、そこで米国著作権登録番号第TXU510087号として登録されている。ALIGN-2プログラムは、ジェネンテック社(South San Francisco, California)により公に入手可能であり、又は例えば国際公開第2007/001851号に提供されたソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、UNIXオペレーションシステム、好ましくはデジタルUNIX V4.0Dでの使用に対してコンパイルされなければならない。全ての配列比較パラメータはALIGN-2によって設定されており、変動しない。
【0086】
アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、又はそれに対し、ある程度の%アミノ酸配列同一性を持つか又は含む所与のアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2のA及びBのプログラムアラインメントによって同一であるとスコアリングされたアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと同一ではない場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは等しくないことが理解されるであろう。
【0087】
幾つかの実施態様では、二以上のアミノ酸配列が少なくとも50%、60%、70%、80%、又は90%同一である。幾つかの実施態様では、二以上のアミノ酸配列が少なくとも95%、97%、98%、99%、又は100%でさえ同一である。別段の記載が特にない場合、ここで使用される全ての%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して直前の段落に記載したようにして得られる。
【0088】
ここで使用される「ヘプシン」なる用語は、特に又は文脈的に他の定義を示すものでない限り、任意の天然又は変異体ヘプシンポリペプチドを意味する。「天然配列」なる用語は、天然に生じる切断型(例えば細胞外ドメイン配列又は膜貫通サブユニット配列)、天然に生じる変異体型(例えば、選択的スプライシング型)及び天然に生じる対立遺伝子変異体を特に包含する。「野生型ヘプシン」なる用語は、天然に生じるヘプシンタンパク質のアミノ酸配列を含むポリペプチドを一般に意味する。「野生型ヘプシン配列」なる用語は天然に生じるヘプシンに見出されるアミノ酸配列を一般に意味する。一実施態様では、天然配列ヘプシンポリペプチドは配列番号46のアミノ酸配列を含む(
図7を参照)。一実施態様では、天然配列ヘプシンポリペプチドは配列番号47のアミノ酸配列を含む(
図8を参照)。
【0089】
「ヘプシンポリペプチド変異体」又はその変形は、ここに開示された天然配列ヘプシンポリペプチド配列の何れかと少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するとここに定義されたヘプシンポリペプチド、一般には活性ヘプシンポリペプチドを意味する。このようなヘプシンポリペプチド変異体には、例えば、天然アミノ酸配列のN又はC端で、一又は複数のアミノ酸残基が付加、又は欠失されたヘプシンポリペプチドが含まれる。通常、ヘプシンポリペプチド変異体は、ここに開示された天然配列ヘプシンポリペプチド配列に対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のアミノ酸配列同一性を有するであろう。通常、ヘプシン変異体ポリペプチドは、少なくとも約10のアミノ酸長、あるいは少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600のアミノ酸長又はそれ以上である。場合によっては、ヘプシン変異体ポリペプチドは、天然ヘプシンポリペプチド配列と比較して1以下の保存アミノ酸置換、あるいは天然ヘプシンポリペプチド配列と比較して2、3、4、5、6、7、8、9又は10以下の保存アミノ酸置換を有するであろう。
【0090】
「チロシンキナーゼ阻害剤」は、ヘプシンレセプターなどのチロシンキナーゼのチロシンキナーゼ活性を有る程度阻害する分子である。
【0091】
「阻害する」ことは、参照物質と比較して、活性、機能及び/又は量を減少させるか又は低減させることである。
【0092】
タンパク質「発現」は、遺伝子にコード化される情報のメッセンジャーRNA(mRNA)への転換と、ついでタンパク質への転換を意味する。
【0093】
ここで、対象のタンパク質(例えばヘプシン)を「発現する」試料又は細胞は、タンパク質をコード化しているmRNA又はその断片を含むタンパク質が試料又は細胞に存在することが決定されるものである。
【0094】
「イムノコンジュゲート」(「抗体-薬剤コンジュゲート」又は「ADC」と交換可能に称される)は、一又は複数の細胞傷害剤、例えば化学療法剤、薬剤、増殖阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、又は動物由来の酵素的に活性な毒素、又はその断片)、又は放射性同位元素(すなわち、放射性コンジュゲート)にコンジュゲートした抗体を意味する。
【0095】
「阻止(ブロック)」抗体又は抗体「アンタゴニスト」とは、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害するか又は低下させるものである。好ましい阻止抗体又はアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を完全に阻害する。
【0096】
「ネイキッド抗体」は、細胞傷害性部分又は放射標識のような異種性分子にコンジュゲートしていない抗体である。
【0097】
指定された抗体の「生物学的特性」を有する抗体は、同じ抗原に結合する他の抗体からそれを区別するその抗体の生物学的特性の一又は複数を保有するものである。
【0098】
対象の抗体が結合する抗原上のエピトープに結合する抗体をスクリーニングするためには、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Harlow及びDavid Lane編 (1988)に記載されたもののような常套的な交差ブロックアッセイ法を実施することができる。
【0099】
この発明のアミノ酸配列を含む抗体又はポリペプチドの半減期を増大させるために、例えば米国特許第5739277号に記載のように、抗体(特に抗体断片)へサルベージレセプター結合エピトープ接着させることができる。例えば、サルベージレセプター結合エピトープをコードする核酸分子は、操作した核酸分子によって発現される融合タンパク質がこの発明のポリペプチド配列とサルベージレセプター結合エピトープを含むように、この発明のポリペプチド配列をコードする核酸にインフレームで連結させることができる。ここで使用される場合、「サルベージレセプター結合エピトープ」なる用語は、IgG分子のインビボ血清半減期を増加させる原因であるIgG分子(例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3又はIgG
4)のFc領域のエピトープを意味する(例えば、Ghetie, V等, (2000) Ann. Rev. Immunol. 18:739-766, 表1)。Fc領域内に置換を有し血清半減期が増大した抗体については、国際公開第00/42072号、国際公開第02/060919号; Shields等, JBC 276(9):6591-6604(2001);Hinton, JBC 279(8):6213-6216(2004))にも記載されている。他の実施態様では、例えば他のポリペプチド配列に接着させることによっても血清半減期が増大しうる。例えば、本発明の方法に有用な抗体又は他のポリペプチドを、血清アルブミンが抗体又はポリペプチドに結合するように、FcRnレセプター又は血清アルブミン結合ペプチドに結合する血清アルブミン又は血清アルブミンの一部に接着させることができ、例えば、そのようなポリペプチド配列は国際公開第01/45746号に開示されている。好ましい一実施態様では、接着される血清アルブミンペプチドはDICLPRWGCLW(配列番号13)のアミノ酸配列を含む。他の実施態様では、Fabの半減期はこれらの方法によって増大する。血清アルブミン結合ペプチド配列については、Dennis等, JBC 277(38):35035-35043(2002)も参照のこと。
【0100】
「断片」とは、好ましくは、参照核酸分子又はポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又はそれ以上を含むポリペプチド又は核酸分子の一部を意味する。断片は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100、200、300、400、500、600又はそれ以上のヌクレオチド、あるいは10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、190、200のアミノ酸又はそれ以上を含みうる。
【0101】
「抗体」及び「免疫グロブリン」なる用語は、最も広い意味で交換可能に使用され、モノクローナル抗体(例えば全長又はインタクトなモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、多価抗体、多重特異性抗体(例えば、所望の生物学的活性を示す限りにおいて二重特異性抗体)を含み、またある種の抗体断片(ここにより詳細に記載)もまた含む。抗体は、ヒト、ヒト化及び/又は親和性成熟でありうる。
【0102】
「可変」なる用語は、可変ドメインのある部分が、抗体間で配列が広範囲に相違しているという事実を意味し、それぞれの特定の抗体のその特定の抗原への結合性及び特異性において使用される。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメインにわたって均一に分布しているのではない。それは、軽鎖及び重鎖可変ドメインの双方において、相補性決定領域(CDR)又は高頻度可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存されている部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を連結し、ある場合にはその一部を形成するループを形成する、3つのCDRによって連結された、βシート配置を大部分は採る4つのFR領域をそれぞれ含む。各鎖のCDRはFR領域により、また他の鎖からのCDRと共に極近傍に一緒に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5版, National Institutes of Health, Bethesda, MD(1991)を参照)。定常ドメインは抗体の抗原への結合に直接は関与しないが、様々なエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞傷害性への抗体の関与を示す。
【0103】
抗体のパパイン消化は、各々が単一の抗原結合部位を持つ「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片と、その名前が直ぐに結晶化するその能力を反映する残留「Fc」断片を生じる。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を持ち、尚も抗原に交差結合することができるF(ab')
2断片を生じる。
【0104】
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小抗体断片である。二本鎖Fv種では、この領域は緊密に非共有的に結合した一つの重鎖と一つの軽鎖の二量体からなる。単鎖Fv(scFv)種では、一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインが、軽鎖及び重鎖が二本鎖Fv種におけるものに類似した「二量体」構造で結合できるように可撓性ペプチドリンカーによって共有的に結合されうる。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用してVH−VL二量体の表面に抗原結合部位を定めるのはこの配置においてである。まとめると、6つのCDRが抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRしか含まないFvの半分)でさえも抗原を認識しそれに結合する能力を持つが、結合部位全体よりは低い親和性でである。
【0105】
Fab断片はまた軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常ドメイン(CH1)を含む。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数残基が付加されている点でFab断片と相違する。Fab'-SHは、ここでは定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を持つFab'を示すものである。F(ab')
2抗体断片は、元々は、その間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生成された。抗体断片の他の化学的結合もまた知られている。
【0106】
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つを割り当てることができる。
【0107】
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体には異なるクラスが割り当てられる。免疫グロブリンの5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらの幾つかは更に例えばIgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1、及びIgA
2等のサブクラス(アイソタイプ)に分かれる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体構造はよく知られている。「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部のみを含み、その部分は、インタクトな抗体中に存在する場合にその部分に通常伴う機能の少なくとも一、好ましくは殆ど又は全てを保持する。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab')2、及びFv断片;ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。一実施態様では、抗体断片は、インタクトな抗体の抗原結合部位を含み、よって抗原結合能を保持する。他の実施態様では、抗体断片、例えばFc領域を含むものは、インタクトな抗体に存在する場合Fc領域に通常伴う少なくとも一の生物学的機能、例えばFcRn結合、抗体半減期調節、ADCC機能及び補体結合を保持する。一実施態様では、抗体断片は、インタクトな抗体と実質的に同じインビボ半減期を有する一価抗体である。例えばそのような抗体断片は、該断片にインビボ安定性を付与し得るFc配列に結合した抗原結合アーム上に含みうる。
【0108】
ここで使用される「高頻度可変領域」、「HVR」、又は「HV」なる用語は、配列において高頻度可変であり、及び/又は構造的に定まったループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は6つの高頻度可変領域を含み;VHに3つ(H1、H2、H3)、VLに3つ(L1、L2、L3)である。多数の高頻度可変領域の描写が使用され、ここに包含される。カバット相補性決定領域(CDR)は配列可変性に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。Chothiaは、代わりに構造的ループの位置に言及している(Chothia 及びLesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。AbM高頻度可変領域は、カバットCDRとChothia構造的ループの間の妥協を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「接触」高頻度可変領域は、利用できる複合体結晶構造の解析に基づく。これらの高頻度可変領域のそれぞれからの残基を以下に示す。
ループ カバット AbM Chothia 接触
---- ----- --- ------- -------
L1 L24-L34 L24-L34 L26-L32 L30-L36
L2 L50-L56 L50-L56 L50-L52 L46-L55
L3 L89-L97 L89-L97 L91-L96 L89-L96
H1 H31-H35B H26-H35B H26-H32 H30-H35B
(Kabat番号付け)
H1 H31-H35 H26-H35 H26-H32 H30-H35
(Chothia番号付け)
H2 H50-H65 H50-H58 H53-H55 H47-H58
H3 H95-H102 H95-H102 H96-H101 H93-H101
【0109】
高頻度可変領域は、次のような「拡大高頻度可変領域」を含みうる:VLの24−36又は24−34(L1)、46−56又は50−56(L2)及び89−97又は89−96(L3)、及びVHの26−35又は26−35A(H1)、50−65又は49−65(H2)及び93−102、94−102、又は95−102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、上掲のKabat等に従って番号が付されている。
【0110】
「フレームワーク」又は「FR」残基は、ここに定義される高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0111】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいは実質的に全てのFRが、ヒト免疫グロブリン配列のものである少なくとも一又は典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含むであろう。更なる詳細については、Jones等, Nature 321:522-525(1986);Riechmann等, Nature 332:323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596(1992)を参照のこと。また次の概説論文とそこに引用された文献を参照のこと:Vaswani及びHamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995);Hurle及びGross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994)。
【0112】
「キメラ」抗体(免疫グロブリン)は特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応配列に一致するか又は相同の重鎖及び/又は軽鎖の一部を有するものであり、残りの鎖は、他の種由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応配列に一致するか又は相同であるもの、並びに所望の生物学的活性を示す限り、該抗体の断片である(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。ここで用いられるヒト化抗体はキメラ抗体のサブセットである。
【0113】
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般に、scFvポリペプチドはscFvが抗原結合に望ましい構造を形成するのを可能にするポリペプチドリンカーをVH及びVLドメイン間に更に含む。scFvの概説については、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照のこと。
【0114】
「抗原」は、抗体が選択的に結合することができる予め定まった抗原である。標的抗原は、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、ハプテン、又は他の天然に生じるか又は合成の化合物でありうる。好ましくは、標的抗原はポリペプチドである。
【0115】
「ダイアボディ」なる用語は、二つの抗原結合部位を持つ小さい抗体断片を意味し、その断片は同一のポリペプチド鎖(VH-VL)内で軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)が結合してなる。非常に短いために同一鎖上で二つのドメインの対形成が不可能なリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、二つの抗原結合部位を創製する。ダイアボディは、例えば、欧州特許出願公開第404097号;国際公開第93/11161号;及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448(1993)に更に十分に記載されている。
【0116】
「ヒト抗体」は、ヒトによって生産される抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有しており、及び/又はここにおいて開示されたヒト抗体を作製する任意の技術を使用して製造されたものである。ヒト抗体のこの定義は非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に排除する。
【0117】
「親和成熟」抗体とは、その改変を有していない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性に改良を生じさせる、その一又は複数のCDRにおいて一又は複数の改変を持つものである。好ましい親和成熟抗体は、標的抗原に対してナノモル又はピコモルの親和性を有する。親和成熟抗体は、当該技術分野において知られている手順によって生産される。Marks等, Bio/Technology, 10:779-783(1992)は、VH及びVLドメインシャッフリングによる親和成熟について記載している。CDR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発は、Barbas等, Proc Nat Acad. Sci, USA 91:3809-3813(1994);Schier等, Gene, 169:147-155(1995);Yelton等, J. Immunol.155:1994-2004(1995);Jackson等, J. Immunol.154(7):3310-9(1995);及びHawkins等, J. Mol. Biol.226:889-896(1992)に記載されている。
【0118】
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰する生物学的活性を意味し、抗体のアイソタイプにより変わる。抗体のエフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞傷害活性(CDC);Fcレセプター結合性;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害活性(ADCC);貪食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター)のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化が含まれる。
【0119】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性」又は「ADCC」は、ある種の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcRs)に結合した分泌Igが、これらの細胞傷害性エフェクター細胞を、抗原担持標的細胞に特異的に結合せしめ、ついで細胞毒で標的細胞を殺すという細胞傷害性の形態を意味する。抗体は細胞傷害性細胞を「備え」ており、そのような死滅化に絶対に必要とされる。ADCCを媒介する一次細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現する一方、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血性細胞でのFcRの発現は、Ravetch及びKinet, Annu.Rev.Immunol., 9:457-92(1991)の464頁の表3に要約されている。関心ある分子のADCC活性を評価するためには、米国特許第5500362号又は同5821337号、又は米国特許第6737056号(Presta)に記載されているもののようなインビトロADCCアッセイが実施されうる。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。あるいは、又は付加的に、関心ある分子のADCC活性は、例えばClynes等, Proc. Natl. Acad. Sci.(USA), 95:652-656(1998)に開示されたもののような動物モデルにおいてインビボで評価されうる。
【0120】
「ヒトエフェクター細胞」は、一又は複数のFcRsを発現し、エフェクター機能を実施する白血球である。好ましくは、細胞は少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実施する。ADCCを媒介するヒト白血球の例は、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、及び好中球を含み;PBMC及びNK細胞が好ましい。エフェクター細胞は、天然源、例えば血液から単離することができる。
【0121】
「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを記述する。好ましいFcRは天然配列ヒトFcRである。更に、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマレセプター)に結合し、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含むものであり、これらのレセプターの対立遺伝子変異体及び選択的スプライシング型を含む。FcγRIIレセプターは、FcγRIIA(「活性化レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害レセプター」)を含み、それらは、主としてその細胞質ドメインが異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化レセプターFcγRIIAは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン−ベース活性化モチーフ(ITAM)を有する。阻害レセプターFcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫レセプターチロシン−ベース阻害モチーフ(ITIM)を有する。(例えばM. Daeron, Annu. Rev. Immunol., 15:203-234(1997)を参照)。FcRはRavetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991);Capel等, Immunomethods 4:25-34 (1994);及びde Haas等, J. Lab. Clin. Med. 126:330-41(1995)に概説されている。将来同定されるものも含む他のFcRが、ここにおける用語「FcR」に包含される。該用語はまた胎児への母のIgGの移動(Guyer等, J. Immunol. 117:587(1976)及びKim等, J. Immunol. 24:249(1994))、及び免疫グロブリンの恒常性維持の調節の原因となる、新生児レセプターFcRnを含む。国際公開第00/42072号(Presta)はFcRへの結合が改善され又は減少された抗体変異体を記述している。その特許公報の内容は出典明示により特にここに援用する。またShields等, J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)を参照のこと。
【0122】
FcRnへの結合性を測定する方法は知られている(例えば、Ghetie 1997, Hinton 2004を参照)。インビボでのヒトFcRnへの結合及びヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清半減期は、例えば、ヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウス又は形質移入ヒト細胞株において、又はFc変異体ポリペプチドを投与した霊長類においてアッセイすることができる。
【0123】
「補体依存性細胞傷害性」もしくは「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を意味する。古典的な補体経路の活性化は、補体系(Clq)の第1成分が、その同族抗原と結合した抗体(適切なサブクラスのもの)に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163(1996)に記載されているように実施することができる。
【0124】
Fc領域アミノ酸配列が改変され、C1q結合能力が増加又は低下させられたポリペプチド変異体は、米国特許第6194551号及び国際公開第1999/51642号に記載されている。また、Idusogie等, J. Immunol. 164:4178-4184(2000)を参照。
【0125】
「Fc領域含有ポリペプチド」なる用語は、Fc領域を含む抗体もしくはイムノアドヘンシンのようなポリペプチドを指す。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムに従うと残基447)は、例えば、ポリペプチドの精製中又はポリペプチドをコードする核酸を組換え操作することによって除去してもよい。従って、この発明のFc領域を有するポリペプチドを含んでなる組成物は、K447を有するポリペプチド、全てのK447が除去されたポリペプチド、又はK447残基を有するポリペプチドとK447残基を有さないポリペプチドの混合物を含みうる。
【0126】
ここでの目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークから誘導されるVL又はVHフレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「から誘導される」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含むか、又は既存のアミノ酸配列変化を含んでいてもよい。既存のアミノ酸変化が存在する場合、好ましくは5以下、好ましくは4以下、又は3以下の既存のアミノ酸変化が存在する。既存のアミノ酸変化がVH中に存在する場合、好ましくは、それらの変化は位置71H、73H及び78Hの内の3つ、2つ又は1つのみである;例えば、それらの位置のアミノ酸残基は、71A、73T及び/又は78Aでありうる。一実施態様では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
【0127】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選別において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選別は、可変ドメイン配列のサブグループからする。一般に、配列のサブグループはKabat等におけるようなサブグループである。一実施態様では、VLについて、サブグループはKabat等におけるようなサブグループκIである。一実施態様では、VHについて、サブグループは上掲のKabat等におけるようなサブグループIIIである。
【0128】
「VHサブグループIIIコンセンサスフレームワーク」は、Kabat等の可変重鎖サブグループIIIのアミノ酸配列から得られるコンセンサス配列を含む。一実施態様では、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークアミノ酸配列は次の配列のそれぞれの少なくとも一部又は全てを含む:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号14)−H1−WVRQAPGKGLEWV(配列番号15)−H2−RFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYC(配列番号43)−H3−WGQGTLVTVSS(配列番号16)。
【0129】
「VLサブグループIコンセンサスフレームワーク」は、Kabat等の可変軽鎖カッパサブグループIのアミノ酸配列から得られるコンセンサス配列を含む。一実施態様では、VHサブグループIコンセンサスフレームワーク アミノ酸配列は次の配列のそれぞれの少なくとも一部又は全てを含む:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号17)−L1−WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号18)−L2−GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号19)−L3−FGQGTKVEIK(配列番号20)。
【0130】
ここで使用される場合、「抗体突然変異体」又は「抗体変異体」は、種依存性抗体のアミノ酸配列変異体を称し、ここで種依存性抗体の一又は複数のアミノ酸残基は修飾されている。このような変異体は、種依存性抗体と100%の配列同一性又は類似性を有する必要はない。一実施態様では、抗体突然変異体は、種依存性抗体の重鎖又は軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列と、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、更に好ましくは少なくとも85%、また更に好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性又は類似性を有するアミノ酸配列を含むであろう。この配列に関する同一性又は類似性は、最大パーセント配列同一性を達成するために、必要であるならば、配列を整列させ、間隙を導入した後に、種依存性抗体残基と同一(すなわち同じ残基)又は類似(すなわち、共通の側鎖特性に基づく同じ群からのアミノ酸残基、以下参照)である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。可変ドメインの外側への抗体配列へのN末端、C末端、又は内部の伸長、欠失又は挿入は、配列の同一性又は類似性に影響を与える場合に構築されない。
【0131】
「疾病」又は「疾患」は、本発明の物質/分子又は方法を用いた治療によって利益を得る任意の症状である。これには、問題とする疾患に哺乳動物がかかりやすくなる病理学的症状を含む慢性及び急性の疾病又は疾患を含む。ここで治療される疾患の非限定的な例には、悪性及び良性の腫瘍;癌腫、芽細胞腫及び肉腫が含まれる。
【0132】
「治療」は、治療的処置及び予防的又は防止的な処置を指す。治療を必要とするものには、既に良性、前癌性、又は非転移性の腫瘍を有するもの、並びに癌の発生又は再発を予防すべきものが含まれる。
【0133】
「治療的有効量」という用語は、哺乳動物の疾患又は疾病を治療又は予防するための治療剤の量を指す。癌の場合、治療的に有効量の治療剤は、癌細胞の数を減じ;原発腫瘍の大きさを減じ;末梢器官への癌細胞の浸潤を阻害(すなわち、ある程度まで減速、好ましくは停止)し;腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度まで減速及び好ましくは停止)し;腫瘍増殖をある程度まで阻害し;及び/又は疾病に関連する一又は複数の症状をある程度まで緩和する。既存の癌細胞の増殖を妨げ及び/又は死滅させる程度まで、薬剤は、細胞分裂停止及び/又は細胞傷害性であり得る。癌治療の場合、インビボでの効能は、生存期間、無増悪期間(TTP)、奏効率(RR)、奏効期間、及び/又は生活の質を評価することにより測定することができる。
【0134】
「癌」及び「癌性」なる用語は、典型的には調節されない細胞増殖を特徴とする哺乳動物の生理学的状態を指すか又は記述する。この定義には、良性及び悪性の癌が含まれる。「初期癌」又は「初期腫瘍」とは、侵襲性又は転移性でない癌を意味するか、あるいはステージ0、I、又はIIとして分類される癌を意味する。癌の例には、限定するものではないが、細胞腫、リンパ腫、芽細胞腫(髄芽腫及び網膜芽細胞腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫及び滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリン産生腫瘍、及び島細胞癌を含む)、中皮腫、シュワン腫(聴神経腫瘍を含む)、髄膜腫、腺癌、メラノーマ、及び白血病又はリンパ性悪性腫瘍が含まれる。このような癌のより具体的な例には、扁平上皮癌(例えば上皮の扁平細胞癌)、小細胞肺癌(SCLC)を含む肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞性癌、胃腸癌を含む胃(gastric、stomach)癌、膵癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌(転移性乳癌を含む)、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮細胞腫、唾液腺細胞腫、腎臓癌又は腎癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝細胞腫、肛門癌、陰茎細胞腫、精巣癌、食道癌、胆道癌、並びに頭頚部癌及び多発性骨髄腫が含まれる。
【0135】
「前癌性」は、典型的には癌に先行又は進行する状態又は増殖を指す。「前癌性」の増殖は、異常な細胞周期制御、増殖、又は分化を特徴とする細胞を有し、細胞周期制御、細胞増殖、又は分化のマーカーにより決定することができる。
【0136】
「異形成」とは、組織、器官、又は細胞のあらゆる異常な増殖又は発達を意味する。好ましくは、異形成は高悪性度又は前癌性である。
【0137】
「転移」とは、癌が原発部位から身体の他の場所へ広がることを意味する。癌細胞は、原発腫瘍を離れてリンパ管及び血管に侵入し、血流により循環し、身体の他の部分の正常組織中の遠隔病巣内で増殖(転移)しうる。転移は、局所性又は遠隔でありうる。転移は、連続的プロセスであり、原発腫瘍を離れた腫瘍細胞に随伴性であり、血流によって移動し、遠隔部位で停止する。新規部位において、細胞は血液供給を確立し、成長して致命的な腫瘤を形成しうる。
【0138】
腫瘍細胞内部の刺激性及び抑制性の分子経路は共にこのような挙動を制御し、遠隔部位における腫瘍細胞と宿主細胞との間の相互作用もまた顕著である。
【0139】
「非転移性」とは、良性である癌又は原発部位に留まっており、リンパ管又は血管に、あるいは原発部位以外の組織中に浸潤していない癌を意味する。一般に、非転移性癌は、ステージ0、I、又はIIの何れかの癌であり、希にステージIIIの癌である。
【0140】
「原発腫瘍」又は「原発癌」とは、最初の癌を意味し、患者の身体の別の組織、器官、又は位置にある転移性の病変を意味しない。
【0141】
「良性腫瘍」又は「良性癌」とは、最初の部位に局在性に留まり、遠隔部位に湿潤、浸潤、又は転移する能力を持たない腫瘍を意味する。
【0142】
「腫瘍組織量」とは、身体における癌細胞の数、腫瘍の大きさ、又は癌の量を意味する。腫瘍組織量(tumor burden)は腫瘍量(tumor load)とも呼ばれる。
【0144】
「被検体」とは、限定しないが、ヒト又は非ヒト哺乳動物、例えばウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、又はネコを含む哺乳動物を意味する。好ましくは、被検体はヒトである。
【0145】
「抗癌治療」は、癌の治療に有用な治療法を指す。抗癌治療剤の例には、限定しないが、例えば、化学療法剤、増殖阻害剤、細胞傷害剤、放射線治療に使用される薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、及び癌を治療するための他の薬剤、抗CD20抗体、血小板由来増殖因子阻害剤(例えば、グリベック
TM(イマチニブメシル酸塩))、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、次の標的ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR−β、BlyS、APRIL、BCMA又はVEGFレセプター、TRAIL/Apo2、及びその他の生理活性有機化学薬品などのうちの一又は複数に結合するアンタゴニスト(例えば、中和抗体)が含まれる。これらの組み合わせも本発明にまた含まれる。
【0146】
ここで用いられる「細胞傷害剤」なる用語は、細胞の機能を阻害又は抑制し、及び/又は細胞破壊を生じさせる物質を意味する。この用語は、放射性同位元素(例えば、I
131、I
125、Y
90及びRe
186)、化学治療薬、及び細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素又はその断片を意味する。
【0147】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学化合物である。化学療法剤の例には、癌の治療に有用な化学化合物が含まれる。化学療法剤の例には、チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロスホスファミドのようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(acetogenins)(特にブラタシン(bullatacin)及びブラタシノン(bullatacinone));カンプトセシン(合成類似体トポテカン(topotecan)を含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)及びバイゼレシン(bizelesin)合成アナログを含む);クリプトフィシン(cryptophycin)(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin);デュオカルマイシン(duocarmycin )(合成アナログ、KW-2189及びCBI-TM1を含む);エリュテロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコディクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード、例えばクロランブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、クロロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード;ニトロスレア(nitrosureas)、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン、及びラニムスチン;エネジイン(enediyne) 抗生物質等の抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンガンマ1I及びカリケアマイシンオメガI1、例えば、Agnew Chem Intl. Ed. Engl., 33:183-186(1994)を参照;ダイネミシンA(dynemicinA)を含むダイネミシン(dynemicin);クロドロネート(clodronate)などのビスホスホネート(bisphosphonates);エスペラマイシン(esperamicin);並びにネオカルチノスタチン発光団及び関連色素蛋白エネジイン(enediyne) 抗生物質発光団)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン (モルフォリノ-ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCなどのマイトマイシン(mitomycins)、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)のような抗代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸アナログ;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)のようなピリミジンアナログ;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル(eniluracil);アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシン(maytansine)及びアンサマイトシン(ansamitocin)のようなメイタンシノイド(maytansinoid);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ラソキサントロン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecenes)(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリデンA(roridin A)及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばタキソール(登録商標)パクリタキセル、(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、ABRAXANE(登録商標)クレモフォール(Cremophor)を含まない、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Illinois)及びタキソテア(登録商標)ドキセタキセル、(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)ゲンシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチンのようなプラチナアナログ;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン(novantrone);テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロネート(ibandronate);イリノテカン(Camptosar、CPT-11)(5-FUとロイコボリンを用いたイリノテカンの治療レジメを含む);トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド類;カペシタビン(capecitabine);コンブレタスタチン;ロイコボリン(LV);オキサリプラチン治療レジメン(FOLFOX)を含むオキサリプラチン;ラパチニブ(Tykerb(登録商標));例えばPKC-α、Raf、H-Ras、EGFR(例えば、エルロチニブ(タルセバ(商標))及び細胞増殖を低減するVEGF-A及び上述したものの薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体が含まれる。
【0148】
また、この定義に含まれるものは、腫瘍に対するホルモン作用を調節し又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節物質(SERM)であり、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(raloxifene)、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)、及びFARESTON・トレミフェン;副腎のエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、フォルメスタン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾール;及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;並びにトロキサシタビン(troxacitabine)(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常な細胞増殖に関連したシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えばPKC-α、Ralf、及びH-Ras;リボザイム、例えばVEGF発現阻害剤(例えば、ANZIOZYME(登録商標)リボザイム)及びHER2発現阻害剤;遺伝子治療ワクチン等のワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(商品名)ワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼI阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ビノレルビン(Vinorelbine)及びエスペラミシン(Esperamicins)(米国特許第4675187号を参照)、及び上記のものの何れかの薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体である。
【0149】
この出願において使用される「プロドラッグ」なる用語は、親薬剤と比較して腫瘍細胞にそれほど細胞傷害性でなく、酵素的に活性化され得るか又はより活性な親形態に変換され得る薬学的に活性な物質の前駆体又は誘導体形態を意味する。例えば、Wilman, “Prodrugs in Cancer Chemotherapy” Biochemical Society Transactions, 14, pp. 375-382, 615th Meeting Belfast (1986)及びStella等, “Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery,” Directed Drug Delivery, Borchardt等(編.), pp. 247-267, Humana Press (1985)を参照のこと。本発明のプロドラッグとしては、限定しないが、ホスフェート含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、サルフェート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D−アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、置換されていてもよいフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は置換されていてもよいフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性な細胞傷害性の遊離薬物に転換され得る5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグが挙げられる。本発明において使用されるプロドラッグ形態に誘導体化され得る細胞傷害性薬物の例としては、上述の化学療法剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
「放射線治療」とは、定方向γ線又はβ線を使用して細胞に十分な損傷を誘発することにより、細胞の正常に機能する能力を制限すること、又は細胞全体を破壊することを意味する。この治療の線量及び継続期間を決定する多数の方法が当該技術分野で知られている。典型的な治療は、一回の照射で行われ、典型的な線量範囲は一日当たり10から200単位(Grays)である。
【0151】
「生物学的試料」(「試料」又は「組織又は細胞試料」と交換可能に呼ばれる)は、個体から得られた様々な試料タイプを包含し、診断又はモニタリングアッセイに使用されうる。該定義は、血液及び生物学的由来の他の液体試料、固形組織試料、例えばバイオプシー標本又は組織培養物又はそれから誘導される細胞、及びその子孫を包含する。該定義はまた、例えば試薬での処理、可溶化、又はタンパク質又はポリヌクレオチドのようなある種の成分の濃縮、又は切片化目的のための半個体又は個体マトリックスへの包埋など、その獲得後に何らかの形で操作されている試料を含む。「生物学的試料」なる用語は臨床試料を包含し、また培養中の細胞、細胞上清、細胞可溶化物、血清、血漿、生物学的体液及び組織試料を包含する。生体試料の供給源は、新鮮な、凍結及び/又は保存された器官又は組織試料又はバイオプシー又は吸引物;血液又はあらゆる血液成分;生体体液、例えば脳脊髄液、羊水、腹膜体液又は間質液;個体の妊娠又は発生の任意の時期からの細胞でありうる。幾つかの実施態様では、生体試料は、原発性又は転移性の腫瘍から得られる。生物学的試料は、例えば保存料、抗凝固剤、バッファー、固定液、栄養分、抗生物質等の天然には組織と混合されない化合物を含みうる。
【0152】
ここでの目的に対して、組織試料の「切片」は、組織試料の一部又は断片、例えば、組織試料から切断された組織の薄片又は細胞を意味する。組織試料の複数の切片を得て、本発明に係る分析に供することができることが理解される。幾つかの実施態様では、組織試料の同じ切片が形態学的及び分子レベルの双方で分析され、あるいはタンパク質及び核酸の両方に関して分析される。
【0153】
「標識」なる語は、ここで使用される場合、例えば核酸プローブ又は抗体のような試薬に直接的に又は間接的にコンジュゲート又は融合され、それがコンジュゲートされ又は融合される試薬の検出を容易にする化合物又は組成物を意味する。標識はそれ自身が検出可能でもよく(例えば、放射性同位体標識又は蛍光標識)、あるいは、酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物又は組成物の化学的変化を触媒してもよい。
【0154】
本発明の組成物及びこれを作製し使用する方法
この発明は、抗ヘプシン抗体を含有する、薬学的組成物を含む組成物;及び抗ヘプシン抗体をコードする配列を含むポリヌクレオチドを包含する。ここで使用される場合、組成物は、ヘプシンに結合する一又は複数の抗体、及び/又はヘプシンに結合する一又は複数の抗体をコードする配列を含む一又は複数のポリヌクレオチドを含む。これらの組成物は適切な担体、例えば、当該技術分野でよく知られている薬学的に許容可能な賦形剤を更に含有しうる。
【0155】
本発明はまた単離された抗体及びポリヌクレオチドの実施態様を包含する。本発明はまた実質的に純粋な抗体及びポリヌクレオチドの実施態様を包含する。
【0156】
本発明はまた(ここに記載された又は当該技術分野で知られている)抗ヘプシン抗体を使用して、例えば前立腺癌のような疾患を治療する方法を包含する。
【0157】
組成物
本発明の抗ヘプシン抗体は好ましくはモノクローナルである。また、本発明の範囲にまた包含されるのはここに提供された抗ヘプシン抗体のFab、Fab'、Fab'-SH及びF(ab')
2断片である。これらの抗体断片は、伝統的な手段、例えば酵素消化により作製されるか、又は組換え技術により産生されうる。このような抗体断片は、キメラでもよいし、ヒト化のものでもよい。これらの断片は、以下に記載の診断目的及び治療目的のために有用である。
【0158】
モノクローナル抗体は実質的に相同の抗体の集団から得られる、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、僅かな量で存在しうる天然に生じる可能な突然変異を除いて同一のものである。よって、「モノクローナル」との修飾詞は、別個の抗体の混合物ではなく、抗体の特性を示すものである。
【0159】
本発明の抗ヘプシンモノクローナル抗体は、Kohler等, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を使用して作製でき、又は組換えDNA法(米国特許第4816567号)によって作製することができる。
【0160】
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスターを免疫化し、免疫化に用いられるタンパク質と特異的に結合する抗体を生産するか又は生産することのできるリンパ球を誘導する。ヘプシンに対する抗体は、ヘプシンとアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)に注射することにより動物内に生じせしめうる。ヘプシンは当該技術分野でよく知られている方法を用いて調製され得、その方法の幾つかはここに更に記載される。例えば、ヒト及びマウスヘプシンの組換え産生は以下に記載される。一実施態様では、動物を、免疫グロブリン重鎖のFc部位に融合したヘプシンで免疫化する。好ましい実施態様では、動物を、ヘプシン-IgG1融合タンパク質で免疫化する。通常、動物は、一リン酸化リピドA(MPL)/トレハロースジクリノミコレート(trehalose dicrynomycolate)(TDM) (Ribi Immunochem. Research, Inc., Hamilton, MT)によりヘプシンの免疫原性コンジュゲート又は誘導体に対して免疫化され、該溶液は複数部位に皮内的に注射される。2週後に、動物を追加免役する。7から14日後、動物から採血して、血清を抗ヘプシン力価について検定する。力価がプラトーになるまで動物を追加免役する。
【0161】
別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,59-103頁(Academic Press, 1986))。
【0162】
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親の骨髄腫細胞の増殖又は生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有するであろう(HAT培地)。
【0163】
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの生産を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である細胞である。これらの中でも、好ましい骨髄腫株化細胞は、マウス骨髄腫系、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター、San Diego, California USAから入手し得るMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍から誘導されたもの、及びアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション, Rockville, Maryland USAから入手し得るSP-2又はX63-Ag8-653細胞である。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫株化細胞もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51-63頁(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
【0164】
ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、ヘプシンに対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
【0165】
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson等, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード分析法によって測定することができる。
【0166】
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。この目的に対して好適な培地には、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が含まれる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
【0167】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーのような常套的な免疫グロブリン精製法により、培地、腹水、又は血清から好適に分離される。
【0168】
本発明の抗ヘプシン抗体は、所望される活性を有する合成抗体クローンをスクリーニングするために、コンビナトリアルライブラリーを用いて同定することができる。原理的には、合成抗体クローンを、ファージコートタンパク質と融合した抗体可変領域(Fv)の様々な断片をディスプレイするファージを含むファージライブラリーをスクリーニングすることによって選択される。このようなファージライブラリーは、所望される抗原に対するアフィニティークロマトグラフィーによってパニングされる。所望される抗原と結合することができるFv断片を発現するクローンが抗原に吸着され、よって、ライブラリーの非結合クローンから分離される。ついで、結合クローンは、抗原から溶出させられ、抗原吸着/溶出の更なるサイクルによって更に濃縮されうる。本発明の抗ヘプシン抗体の任意のものは、対象のファージクローンを選択するために適切な抗原スクリーニング手法を設計し、続いて対象のファージクローンからのFv配列、及びKabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), vols. 1-3に記載の適切な定常領域(Fc)配列を用いて全長抗ヘプシン抗体クローンを構築することによって得ることができる。抗ヘプシン抗体の産生の例示的な方法は実施例に開示する。
【0169】
抗体の抗原結合ドメインは、約110アミノ酸の2つの可変(V)領域で、それぞれ一つが軽鎖(VL)及び重(VH)鎖からのもので、双方が3つの超可変ループ又は相補性決定領域(CDR)を提示するものから形成される。可変ドメインは、Winter等,Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455(1994)に記載のように、VH及びVLが短くて柔軟なペプチドを介して共有結合している一本鎖Fv(scFv)断片として、又は定常ドメインと融合して非共有的に相互作用しているFab断片の何れかとしてファージ上に機能的にディスプレイされうる。ここで使用される場合、scFvコード化ファージクローン及びFabコード化ファージクローンは、総称して「Fvファージクローン」又は「Fvクローン」と呼ぶ。
【0170】
VH及びVL遺伝子のレパートリーを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別個にクローニングし、ファージライブラリーでランダムに組換えることが可能であり、それは、ついで、Winter等,Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455(1994)に記載のように抗原結合クローンについて探索されうる。免疫化した供給源からのライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要がなく、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。あるいは、ナイーブなレパートリーをクローニングして、Griffiths等,EMBO J, 12: 725-734(1993)に記載のように如何なる免疫化もなしに、幅広い非自己及びまた自己抗原に対するヒト抗体の単一源を提供することができる。最後に、天然ライブラリーは、また、Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol. 227: 381-388(1992)に記載のように、幹細胞からの未再配列V遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含むPCRプライマーを使用して高度に可変性のCDR3領域をコードし、インビトロでの再配列を達成させることによって合成的に作製することができる。
【0171】
繊維状ファージは、マイナーコートタンパク質pIIIへの融合によって、抗体断片をディスプレイするのに使用される。抗体断片は、例えばMarks等,J. Mol. Biol. 222: 581-597(1991)に記載のように、VH及びVLドメインが柔軟なポリペプチドスペーサーによって同じポリペプチド鎖上に連結されている一本鎖Fv断片として、又は例えば、Hoogenboom等, Nucl. Acids. Res., 19: 4133-4137(1991)に記載のような、一つの鎖がpIIIと融合し、他方が細菌宿主細胞のペリプラズムへ分泌されるFab断片としてディスプレイされ得、Fabコートタンパク質構造のアセンブリーが幾つかの野生型コートタンパク質を置換することによってファージ表面上にディスプレイされるようになる。
【0172】
一般に、抗体遺伝子断片をコードする核酸は、ヒト又は動物から収集した免疫細胞から得られる。抗ヘプシンクローンに有利になるように偏ったライブラリーが望ましい場合には、個体をヘプシンで免疫化して抗体応答を生成させ、脾臓細胞及び/又は他の末梢血リンパ球(PBL)である循環B細胞を、ライブラリー構築のために回収する。好ましい実施態様では、ヘプシン免疫化により、ヘプシンに対するヒト抗体を産生するB細胞が生成するように、抗ヘプシンクローンに有利になるように偏ったヒト抗体遺伝子断片ライブラリーが、機能的ヒト免疫グロブリン遺伝子アレイを有する(及び機能的な内因性抗体産生系を欠く)トランスジェニックマウスにおける抗ヘプシン抗体応答を生成することによって得られる。ヒト抗体産生トランスジェニックマウスの作製は以下に記載する。
【0173】
抗ヘプシン反応性細胞集団の更なる濃縮は、適切なスクリーニング手法を使用してヘプシン特異的膜結合抗体を発現するB細胞を、例えば、ヘプシンアフィニティクロマトグラフィーによる細胞分離、又は蛍光色素標識ヘプシンへの細胞の吸着とその後の蛍光標示式細胞分取器(FACS)によって単離することによって得ることができる。
【0174】
あるいは、非免疫化ドナーからの脾臓細胞及び/又はB細胞又は他のPBLの使用によって可能な抗体レパートリーのより良い提示が提供され、またヘプシンが免疫原ではない任意の動物(ヒト又は非ヒト)種を利用した抗体ライブラリーの構築が可能となる。インビトロの抗体遺伝子コンストラクトを取り込むライブラリーに関しては、幹細胞を個体から収集して非再配列の抗体遺伝子セグメントをコードする核酸を提供する。対象の免疫細胞は、様々な動物種、例えばヒト、マウス、ラット、ウサギ目、オオカミ、犬科、ネコ科、ブタ、ウシ、ウマ、及びトリ種等から得ることができる。
【0175】
抗体可変遺伝子セグメント(VH及びVLセグメントを含む)をコードする核酸を、対象の細胞から回収して増幅させる。再配列したVH及びVL遺伝子ライブラリーの場合では、その所望するDNAは、Orlandi等,Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 86: 3833-3837 (1989)に記載されているように、リンパ球からのゲノムDNA又はmRNAを単離し、再配列したVH及びVL遺伝子の5'及び3'末端と一致するプライマーによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことによって得ることが可能であり、よって発現のための多様なV遺伝子レパートリーを作製することができる。V遺伝子は、Orlandi等, (1989)及びWard等, Nature, 341: 544-546(1989)に記載のように、成熟Vドメインをコードするエクソンの5'末端のバックプライマーとJセグメントに基づいた順方向プライマーにより、cDNA及びゲノムDNAから増幅させることができる。しかしながら、cDNAからの増幅のためには、バックプライマーは、また、Jones等, Biotechnol., 9:88-89(1991)に記載のようにリーダーエクソンに、前方向プライマーは、Sastry等, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 86:5728-5732(1989)に記載のように定常領域内に基づくことが可能である。相補性を最大にするために、Orlandi等(1989)又はSastry等(1989)に記載のように、縮重をプライマーへ取り込むことが可能である。好ましくは、例えば、Marks等, J. Mol. Biol., 222: 581-597(1991)の方法に記載のように、又はOrum等, Nucleic Acids Res., 21: 4491-4498(1993)の方法に記載のように、免疫細胞の核酸試料に存在する全ての入手可能なVH及びVL配列を増幅するために、各V遺伝子ファミリーを標的にしたPCRプライマーを用いて、そのライブラリーの多様性を最大にする。発現ベクターへの増幅DNAのクローニングに関しては、希な制限部位を、Orlandi等(1989)に記載のように、又はClackson等, Nature, 352: 624-628(1991)に記載のようにタグ付加したプライマーによる更なるPCR増幅によって、PCRプライマー内の1つの末端へタグとして導入することができる。
【0176】
合成的に再配列したV遺伝子のレパートリーは、V遺伝子セグメントからインビトロで誘導することができる。殆どのヒトVH遺伝子セグメントはクローニングされ配列決定されており(Tomlinson等, J. Mol. Biol. 227: 776-798(1992)に報告されている)、マッピングがされている(Matsuda等, Nature Genet., 3: 88-94(1993));これらクローニングされたセグメント(H1及びH2ループの全ての主要なコンホメーションを含む)は、Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol. 227: 381-388(1992)に記載のように、多様な配列と長さのH3ループをコードするPCRプライマーによる多様なVH遺伝子レパートリーを作製するのに用いられる。VHレパートリーは、また、Barbas等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 4457-4461(1992)に記載されているように、単一の長さの長いH3ループに焦点を合わせた全ての配列多様性を伴って作製することができる。ヒトVκ及びVλセグメントはクローニングされ、配列決定がなされ(Williams及びWinter, Eur. J. Immunol., 23: 1456-1461(1993)に報告されている)、合成軽鎖レパートリーを作製するのに使用されうる。VH及びVLフォールドの範囲及びL3及びH3の長さに基づく合成的V遺伝子レパートリーは、相当に構造的多様性を有する抗体をコードする。DNAをコードするV遺伝子の増幅に続いて、生殖系のV遺伝子セグメントを、Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol. 227: 381-388(1992)の方法に従ってインビトロで再配列させることができる。
【0177】
抗体断片のレパートリーは、幾つかの方法でVH及びVL遺伝子レパートリーを共に組み合わせることによって構築することができる。各レパートリーを異なるベクターで作製し、そのベクターを、例えばHogrefe等, Gene, 128: 119-126(1993)に記載のようにインビトロで、又はコンビナトリアル・インフェクション、例えばWaterhouse等, Nucl. Acids Res., 21: 2265-2266(1993)に記載のloxP系によってインビボで作製することが可能である。このインビボの組換え手法では、大腸菌の形質転換効率によって強いられるライブラリーの大きさの限界を克服するために、二本鎖種のFab断片を利用する。ナイーブなVH及びVLレパートリーは、1つはファージミドへ、他はファージベクターへと別個にクローニングされる。この2つのライブラリーは、その後、各細胞が異なる組み合わせを含み、そのライブラリーの大きさが、存在する細胞の数(約10
12クローン)によってのみ限定されるように、ファージミド含有細菌のファージ感染によって組合わせられる。双方のベクターは、VH及びVL遺伝子が単一のレプリコンへ組換えられ、ファージビリオンへ共にパッケージされるように、インビボの組換えシグナルを含む。これら巨大なライブラリーは、良好な親和性(約10
−8MのK
d−1)の多数の多様な抗体を提供する。
【0178】
別法として、該レパートリーは、例えばBarbas等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 7978-7982(1991)に記載のように同じベクターへ連続してクローニングされ得、又は例えばClakson等, Nature, 352: 624-628(1991)に記載のようにPCRによって一緒に組み立てられ、ついでクローニングされる。PCRアセンブリーは、また柔軟なペプチドスペーサーをコードしているDNAとVH及びVL DNAを連結させて、単鎖のFv(scFv)レパートリーを形成することに利用することができる。更に他の技術では、「細胞内でのPCRアセンブリー」は、Embleton等, Nucl. Acids Res., 20: 3831-3837(1992)に記載のように、PCRによってリンパ球内のVH及びVL遺伝子を組合わせ、その後、連結した遺伝子のレパートリーをクローニングするのに利用される。
【0179】
ナイーブのライブラリー(天然又は合成の何れか)によって産生された抗体は中度の親和性(約10
6から10
7M
−1のK
d−1)でありうるが、上掲のWinter等(1994)に記載のように第二番目のライブラリーから構築し再選択することによって、親和性成熟をもインビトロで模倣することが可能である。例えば、Hawkins等, J. Mol. Biol. 226: 889-896(1992)の方法、又はGram等, Proc. Natl. Acad. Sci USA, 89: 3576-3580(1992)の方法においてエラー・プローンポリメラーゼ(Leung等, Technique, 1:11-15(1989)で報告されている)を利用することによって、突然変異をインビトロでランダムに導入することができる。加えて、一又は複数のCDRをランダムに変異させることによって、例えば、選択した個々のFvクローンにおいて、対象のCDRまで及ぶランダム配列を有するプライマーによるPCRを利用して、より高い親和性クローンをスクリーニングすることで親和性成熟を行うことが可能である。国際公開第9607754号(1996年3月14日に公開)は、免疫グロブリン軽鎖の相補性決定領域へ突然変異誘発を誘導して軽鎖遺伝子のライブラリーを作製する方法を記載している。その他の効果的な手法は、Marks等, Biotechnol. 10: 779-783(1992)に記載のように、非免疫化ドナーから得られた天然に生じるVドメイン変異体のレパートリーによるファージディスプレイによって選択されたVH又はVLドメインを組換え、数回の鎖再シャッフリングでより高い親和性についてスクリーニングするものである。この技術は、10
−9Mの範囲の親和性の抗体及び抗体断片の産生を可能にする。
【0180】
ヘプシン核酸及びアミノ酸配列は当該技術分野で知られている。ヘプシンをコードする核酸配列は、ヘプシンの所望の領域のアミノ酸配列を使用して設計することができる。当該技術分野でよく知られているように、ヘプシンの二つの主要なスプライスアイソフォーム、ヘプシンIIIb及びヘプシンIIIcが存在する。ヘプシン配列は当該技術分野でよく知られており、
図7及び8に示される配列を含みうる。
【0181】
ヘプシンをコードする核酸は当該技術分野で知られている様々な方法によって調製することができる。これらの方法は、限定しないが、Engels等, Agnew. Chem. Int. Ed. Engl., 28: 716-734 (1989)に記載された方法の何れかによる化学的合成、例えばトリエステル、亜リン酸エステル、ホスホラミダイト及びH-ホスホナート法を含む。一実施態様では、発現宿主細胞によって好まれるコドンがヘプシンコートDNAの設計において使用される。あるいは、ヘプシンをコードするDNAはゲノム又はcDNAライブラリーから単離することができる。
【0182】
ヘプシンをコードするDNA分子の構築に続いて、そのDNA分子は、プラスミド等の発現ベクターの発現コントロール配列に作用可能に連結され、ここで、コントロール配列は、そのベクターで形質転換される宿主細胞によって認識される。一般に、プラスミドベクターは、宿主細胞と適合性のある種から誘導される複製及びコントロール配列を含む。該ベクターは、通常は、形質転換細胞において表現型の選択を提供することが可能なタンパク質をコードする配列だけでなく複製部位を有する。原核宿主細胞及び真核宿主細胞での発現に好適なベクターは当該技術分野で知られており、幾つかが更にここに記載される。酵母菌などの原核生物、又は哺乳動物などの多細胞生物由来の細胞が使用されうる。
【0183】
場合によっては、ヘプシンをコードしているDNAは宿主細胞によって培地中への発現産物の分泌を生じさせる分泌リーダー配列に作用可能に連結される。分泌リーダー配列の例には、stII、エコチン、lamB、ヘルペスGD、lpp、アルカリホスファターゼ、インベルターゼ、及びアルファ因子が含まれる。ここでの使用にまた適しているのはプロテインAの36アミノ酸リーダー配列である(Abrahmsen等, EMBO J., 4:3901(1985))。
【0184】
宿主細胞はこの発明の上述の発現又はクローニングベクターでトランスフェクトされ、好ましくは形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適するように変性された常套的な栄養培地で培養される。
【0185】
トランスフェクションとは、実際に任意のコード化配列が発現されようとされまいと、宿主細胞による発現ベクターに取り込まれることを意味する。トランスフェクションの多くの方法は、当業者に知られており、例えば、CaPO
4沈降法及び電気穿孔法がある。一般に成功したトランスフェクションは、宿主細胞内で該ベクターの働きの兆候が現れたときに認識される。トランスフェクションの方法は当該技術分野でよく知られており、その幾つかをここに更に記載する。
【0186】
形質転換とは、DNAが染色体外成分として又は染色体組み込みによっての何れかで複製可能となるように、生物にDNAを導入することを意味する。使用される宿主細胞によって、その細胞に適した標準的な技術を用いて形質転換は行われる。形質転換法は当該技術分野でよく知られおり、その幾つかをここに更に記載する。
【0187】
ヘプシンを産生するために用いる原核生物宿主細胞は、一般に上掲のSambrook等に記載のようにして培養されうる。
【0188】
ヘプシンを産生するために使用される哺乳動物宿主細胞は、様々な培地で培養することができ、その培地は当該技術分野でよく知られおり、その幾つかをここに記載する。
【0189】
この開示で言及している宿主細胞には、インビトロ培養物の細胞並びに宿主動物内にある細胞が含まれる。
【0190】
ヘプシンの精製は、当分野で認識される方法を用いて実施され、その幾つかをここに記載する。
【0191】
ファージディスプレイクローンのアフィニティークロマトグラフィー分離での利用のために、例えば、アガロースビーズ、アクリルアミドビーズ、ガラスビーズ、セルロース、様々なアクリルコポリマー、ヒドロキシルメタクリレートゲル、ポリアクリル及びポリメタクリルコポリマー、ナイロン、中性及びイオン性担体等の適切な基質へ精製ヘプシンを付着させることが可能である。基質へのヘプシンタンパク質の付着は、Methods in Enzymology, 44巻(1976)に記載されている方法によって達成することができる。アガロース、デキストラン又はセルロース等の多糖類基質へタンパク質リガンドを付着させるために一般に用いられている技術には、ハロゲン化シアンによる担体の活性化、それに続く、活性化基質へのペプチドリガンドの第1級脂肪族又は芳香族アミンのカップリングが含まれる。
【0192】
あるいは、ヘプシンは、吸着プレートのウェルをコーティングするために使用し、吸収プレートへ付着させた宿主細胞上で発現させ、又はセルソーティングで使用し、又はストレプトアビジン被覆ビーズでの捕獲のためにビオチンにコンジュゲートさせ、又はファージディスプレイライブラリーをパニングするための任意の他の当該技術分野で既知の方法に使用することができる。
【0193】
吸着剤とのファージ粒子の少なくとも一部分の結合に適した条件下で、ファージライブラリーの試料を固定化ヘプシンと接触させる。通常は、pH、イオン強度、温度等を含む条件を選択して、生理学的条件を模倣する。固相と結合したファージを洗浄した後、例えばBarbas等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88: 7978-7982(1991)に記載されているように酸で、又は例えばMarks等, J. Mol. Biol. 222: 581-597(1991)に記載にされているようにアルカリで、又は例えばClackson等, Nature, 352: 624-628(1991)の抗原競合法に類似の手法においてヘプシン抗原競合によって、溶出させる。ファージは、1回目の選択で20−1000倍に濃縮することが可能である。更に、濃縮ファージを細菌培養液で増殖させ、更なる回の選択に供することが可能である。
【0194】
選択の効率は、洗浄間の解離の動態、単一ファージ上の複数の抗体断片が同時に抗原と関われるかどうかを含む多くの要因に依存する。速い解離動態(及び弱い結合親和性)を有する抗体は、短い洗浄、多価ファージディスプレイ及び固相抗原の高い被覆密度の使用によって保持することが可能である。高密度は、多価相互作用を介してファージを安定化するだけでなく、解離したファージの再結合に有利に作用する。遅い解離動態(及び良好な結合親和性)を有する抗体の選択は、Bass等, Proteins, 8: 309-314(1990)及び国際公開第92/09690号に記載されているような長い洗浄と単価ファージディスプレイの使用と、Marks等, Biotechnol., 10: 779-783(1992)に記載されているような抗原の低被覆密度によって促進することが可能である。
【0195】
親和性に僅かな違いがあったとしても、ヘプシンに対する異なる親和性のファージ抗体の中で選択することは可能である。しかしながら、選択した抗体のランダム変異(例えば、上記の幾つかの親和性成熟の技術で行われているような)は、多くの変異を生じやすく、その殆どが抗原と結合し、僅かがより高い親和性である。ヘプシンに限定すると、希な高い親和性のファージが競合して除かれることが可能である。全てのより高い親和性の変異を保持するために、ファージは、過剰のビオチン化ヘプシンと共にインキュベートすることが可能であるが、ヘプシンに対する標的モル濃度親和定数よりも低いモル濃度のビオチン化ヘプシンとインキュベートできる。ついで、高親和性結合ファージをストレプトアビジン被覆常磁性体ビーズによって捕獲することが可能である。そのような「平衡捕獲」は、結合の親和性に従い、親和性の低い過度のファージから、僅かに2倍高い親和性の変異体クローンの単離を可能にする感度で抗体を選択することを可能にする。固相と結合したファージを洗浄するのに用いる条件をまた操作して、解離定数を元に識別することも可能である。
【0196】
ヘプシンクローンは活性選択されうる。そのようなヘプシン抗体に対応するFvクローンは、(1)上述のようなファージライブラリーからヘプシンクローンを単離し、適切な細菌宿主において集団を生育させることによりファージクローンの単離集団を場合によっては増幅させることにより;(2)ブロック及び非ブロック活性がそれぞれ望まれるヘプシンと第二タンパク質を選択することにより;(3)固定されたヘプシンに抗ヘプシンファージクローンを吸着させることにより;(4)過剰の第二タンパク質を使用して、第二タンパク質の結合決定基にオーバーラップし又はそれと共有されるヘプシン結合決定基を認識する任意の望まれないクローンを溶出させることにより;及び(5)工程(4)の後に吸着されて残っているクローンを溶出させることにより、選択することができる。場合によっては、所望のブロック/非ブロック特性を有するクローンは、ここに記載された選択手順を一又は複数回繰り返すことにより更に濃縮することができる。
【0197】
本発明のハイブリドーマ由来のモノクローナル抗体をコードするDNA又はファージディスプレイFvクローンは、常法を用いて(例えば、ハイブリドーマの対象の領域をコードする重鎖及び軽鎖又はファージDNA鋳型を特異的に増幅するように設定したオリゴヌクレオチドプライマーを用いることにより)即座に分離され、配列決定される。ひとたび分離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、その状況以外では免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞中に形質移入し、組換え宿主細胞における所望のモノクローナル抗体の合成を達成することができる。抗体コードDNAの細菌中での組換え発現に関する概説論文には、Skerra等, Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262(1993)及びPluckthun, Immunol. Revs. 130: 151-188(1992)が含まれる。
【0198】
本発明のFvクローンをコードするDNAは、重鎖及び/又は軽鎖定常領域をコードする既知のDNA配列(例えば好適なDNA配列は上掲のKabat等から得ることができる)と組み合わせて、完全長又は部分長の重鎖及び/又は軽鎖をコードするクローンを形成できる。このために、何れかのアイソタイプの定常領域、例えばIgG、IgM、IgA、IgD及びIgE定常領域を用いることができることが理解され、このような定常領域は任意のヒト又は動物種から得ることができる。ある動物(例えばヒト)種の可変ドメインDNAから得て、ついで「ハイブリッド」である完全長重鎖及び/又は軽鎖のコード配列を形成するために他の動物種の定常領域DNAに融合したFvクローンは、ここで使用される「キメラ」及び「ハイブリッド」抗体の定義に含まれる。好ましい実施態様では、ヒト可変DNAから得たFvクローンをヒト定常領域DNAに融合して、全てのヒト、完全長又は部分長の重鎖及び/又は軽鎖のコード配列を形成する。
【0199】
また、本発明のハイブリドーマ由来の抗ヘプシン抗体をコードするDNAは、例えば、ハイブリドーマクローン由来の相同的マウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード化配列を置換すること(例えばMorrison等, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 81:6851(1984)の方法)によって修飾することができる。ハイブリドーマ又はFvクローン由来の抗体又は断片をコードするDNAは、免疫グロブリンコード化配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード化配列の全て又は一部を共有結合させることによって更に修飾することができる。このように、「キメラ」又は「ハイブリッド」抗体は、本発明のFvクローン又はハイブリドーマクローン由来の抗体の結合特異性を有するように調製される。
【0200】
抗体断片
本発明は抗体断片を包含する。所定の状況では、全抗体よりも抗体断片の利用に利点がある。より小さいサイズの断片によりクリアランスが速くなり、固形腫瘍へのアクセスが改善されうる。
【0201】
抗体断片を生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク分解性消化を介して誘導されていた(例えば、Morimoto等, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992);及びBrennan等, Science, 229:81(1985)を参照)。しかし、これらの断片は現在は組換え宿主細胞により直接生産することができる。Fab、Fv及びScFv抗体断片は全て大腸菌で発現され、分泌されるため、これらの断片の大規模産生が可能になる。抗体断片は上で検討した抗体ファージライブラリーから単離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合してF(ab')
2断片を形成することができる(Carter等, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法では、F(ab')
2断片を組換え宿主細胞培養から直接単離することができる。サルベージレセプター結合エピトープ残基を含有する、インビボ半減期が増加したFab及びF(ab')
2断片は米国特許第5869046号に記載されている。抗体断片の生産のための他の方法は当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択抗体は単鎖Fv断片(scFV)である(国際公開93/16185;米国特許第5571894号;及び米国特許第5587458号を参照のこと)。Fv及びsFvは、定常領域が欠けている完全な結合部を有する唯一の種である;よって、それらは、インビボでの使用の間の非特異的結合を減らすために適する。sFv融合タンパク質は、sFvのアミノ末端又はカルボキシ末端の何れかで、エフェクタータンパク質の融合物を得るために構築されうる。上掲のAntibody Engineering, ed. Borrebaeckを参照。また、抗体断片は、例えば米国特許第5641870号に記載されているような「線状抗体」であってもよい。このような直線状の断片は単一特異的又は二重特異的でありうる。
【0202】
ヒト化抗体
本発明はヒト化抗体を包含する。非ヒト抗体をヒト化する様々な方法は従来からよく知られている。例えば、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれる。ヒト化は、本質的にはヒト抗体の該当する高頻度可変領域配列を置換することにより、ウィンターと共同研究者の方法(Jones等(1986) Nature, 321:522-525;Riechmann等(1988) Nature, 332:323-327;Verhoeyen等(1988) Science, 239:1534-1536)に従って実施することができる。従って、このような「ヒト化」抗体は、完全なヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の該当する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的には幾つかの高頻度可変領域残基と場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
【0203】
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を作製する際に使用されるヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。「ベストフィット法」によれば、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク領域として受け入れる(Sims等(1993) J. Immunol., 151:2296 ;Chothia等(1987) J. Mol. Biol., 196:901)。他の方法では、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークを数種の異なるヒト化抗体に使用できる(Carter等(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 ;Presta等(1993) J. Immunol., 151:2623)。
【0204】
更に、抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、一方法によれば、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これらの表示を調べることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する増加した親和性のような、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般に、高頻度可変領域残基は、直接的かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
【0205】
ヒト抗体
本発明のヒト抗ヘプシン抗体は、上記のように、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択したFvクローン可変ドメイン配列を既知のヒト定常ドメイン配列と結合することによって構築することができる。あるいは、本発明のヒトモノクローナル抗ヘプシン抗体は、ハイブリドーマ法によって作製することができる。ヒトモノクローナル抗体の生産のためのヒトミエローマ及びマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞株は、例えばKozbor, J. Immunol. 133, 3001(1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51-63(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);及びBoerner 等, J. Immunol., 147: 86 (1991)によって記載されている。
【0206】
免疫化することで、内因性免疫グロブリンの生産なしに、ヒト抗体の完全なレパートリーを生産することが可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)を生産することが現在は可能である。例えば、キメラ及び生殖細胞系変異体マウスでの抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合体欠失は、内因性抗体の生産の完全な阻害をもたらすことが記載されている。そのような生殖細胞系変異体マウスでのヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子配列の転移は、抗原の投与によってヒト抗体の生産を生じる。例えば、Jakobovits等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 2551-255(1993);Jakobovits等, Nature 362, 255-258(1993)を参照のこと。
【0207】
また、遺伝子シャフリングは、ヒト抗体が開始非ヒト抗体と類似した親和性及び特性を有している場合、非ヒト、例えば齧歯類抗体からヒト抗体を得るために使用することもできる。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法により、上記のファージディスプレイ技術により得られた非ヒト抗体断片の重鎖可変領域遺伝子又は軽鎖可変領域遺伝子の何れかをヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置換し、非ヒト鎖/ヒト鎖scFv又はFabキメラの集団を作製する。抗原を選択することにより、ヒト鎖が初めのファージディスプレイクローンにおいて一致した非ヒト鎖の除去により破壊された抗原結合部位を回復する、非ヒト鎖/ヒト鎖キメラscFvないしFabが単離される、つまり、エピトープがヒト鎖のパートナーの選択をつかさどる(インプリントする)。残りの非ヒト鎖を置換するためにこの工程を繰り返すと、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日公開のPCT国際公開第93/06213を参照)。伝統的なCDR移植による非ヒト抗体のヒト化と異なり、この技術により、非ヒト起源のFR又はCDR残基を全く持たない完全なヒト抗体が得られる。
【0208】
二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒト抗体ないしヒト化抗体である。この場合、結合特異性の一つはヘプシンに対するものであり、他方は任意の他の抗原に対するものである。例示的な二重特異性抗体は、ヘプシンの2つの異なるエピトープに結合しうる。また、二重特異性抗体はヘプシンを発現する細胞に細胞傷害剤を局在化するためにも使用されうる。これらの抗体はヘプシン結合アーム及び細胞傷害剤(例えば、サポリン、抗インターフェロン−α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセート又は放射性同位体ハプテン)と結合するアームを有する。二重特異性抗体は完全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab')
2二重特異性抗体)として調製することができる。
【0209】
二重特異性抗体を作製する方法は当該技術分野で知られている。伝統的には、二重特異性抗体の組換え産生は二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づき、ここで二つの重鎖は異なる特異性を持っている(Millstein等, Nature, 305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の可能性ある混合物を産生し、そのうちただ一つが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティークロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は、かなり煩わしく、生成物収率は低い。同様の方法が1993年5月13日に公開の国際公開第93/08829号及びTraunecker等, EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。
【0210】
異なった更に好適なアプローチ法では、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原−抗体結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。該融合は好ましくは、少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を、融合の少なくとも一つに存在させることが望ましい。免疫グロブリン重鎖の融合体と、望まれるならば免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。これにより、構築に使用される三つのポリペプチド鎖の等しくない比率が最適な収率をもたらす態様において、三つのポリペプチド断片の相互の割合の調節に大きな融通性が与えられる。しかし、少なくとも二つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらすとき、又はその比率が特に重要性を持たないときは、2又は3個全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0211】
このアプローチ法の好適な実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第二の結合特異性をもたらす)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、国際公開第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体を産生する更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照のこと。
【0212】
他のアプローチ法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体のパーセントを最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインのC
H3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモ二量体のような不要の他の最終産物に対してヘテロ二量体の収量を増大させるメカニズムが提供される。
【0213】
二特異性抗体は架橋又は「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートの一方の抗体がアビジンと結合され得、他方がビオチンと結合されうる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため(米国特許第4676980号)及びHIV感染の治療のため(国際公報91/00360、国際公報92/00373及び欧州特許第03089号)に提案されている。ヘテロコンジュゲート抗体は任意の簡便な架橋方法によって作製することができる。適切な架橋剤は当該技術分野でよく知られており、多くの架橋法と共に米国特許第4676980号に開示されている。
【0214】
抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennan等, Science, 229:81 (1985) はインタクトな抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')
2断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルヒド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再転換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
【0215】
最近の進歩により大腸菌からFab'-SH断片を直接回収することが容易となっており、これにより化学的にカップリングされて二重特異性抗体にを形成する。Shalaby 等, J. Exp. Med., 175: 217-225 (1992)は、完全なヒト化二重特異性抗体F(ab')
2分子の産生について記述している。各々のFab'断片は大腸菌から別々に分泌されて、インビトロで化学的にカップリングされて、二重特異性抗体を形成する。よって、形成された二重特異性抗体は、HER2レセプターを過剰発現する細胞及び正常ヒトT細胞に結合するだけでなく、ヒト乳癌の標的に対するヒト細胞毒性リンパ球の溶解活性を引き起こすことができた。
【0216】
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作製し分離する様々な方法もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産された。Kostelny等, J.Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させられた。抗体ホモ二量体はヒンジ領域で還元されてモノマーを形成し、ついで再酸化させて抗体ヘテロ二量体を形成する。この方法はまた抗体ホモ二量体の生産に対して使用することができる。Hollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするのに十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)を結合してなる。従って、一つの断片のVH及びVLドメインは他の断片の相補的VL及びVHドメインと強制的に対形成させられ、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)二量体を使用する他の二重特異性抗体断片製造方策もまた報告されている。Gruber等, J.Immunol., 152:5368 (1994)を参照のこと。
【0217】
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tutt等, J.Immunol. 147:60(1991)。
【0218】
多価抗体
多価抗体は、抗体が結合する抗原を発現する細胞により、二価抗体よりも早く内部移行(及び/又は異化)されうる。本発明の抗体は、3又はそれ以上の結合部位を有する多価抗体(IgMクラス以外のもの)であり得(例えば四価抗体)、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現により容易に生成することができる。多価抗体は二量化ドメインと3又はそれ以上の抗原結合部位を有する。好ましい二量化ドメインはFc領域又はヒンジ領域を有する(又はそれらからなる)。このシナリオにおいて、抗体はFc領域と、Fc領域のアミノ末端に3又はそれ以上の抗原結合部位を有しているであろう。ここで、好ましい多価抗体は3から約8、しかし好ましくは4の抗原結合部位を有する(又はそれらからなる)。多価抗体は少なくとも1つのポリペプチド鎖(好ましくは2つのポリペプチド鎖)を有し、ポリペプチド鎖(類)は2又はそれ以上の可変ドメインを有する。例えば、ポリペプチド鎖(類)はVD1-(X1)n-VD2-(X2)n-Fcを有し、ここでVD1は第1の可変ドメインであり、VD2は第2の可変ドメインであり、FcはFc領域のポリペプチド鎖の一つであり、X1及びX2はアミノ酸又はポリペプチドを表し、nは0又は1である。例えば、ポリペプチド鎖(類)は:VH-CH1-柔軟なリンカー-VH-CH1-Fc領域鎖;又はVH-CH1-VH-CH1-Fc領域鎖を有し得る。ここで多価抗体は、好ましくは少なくとも2つ(好ましくは4つ)の軽鎖可変ドメインポリペプチドをさらに有する。ここで多価抗体は、例えば約2から約8の軽鎖可変ドメインポリペプチドを有する。ここで考察される軽鎖可変ドメインポリペプチドは軽鎖可変ドメインを有し、場合によってはCLドメインを更に有する。
【0219】
抗体変異体
幾つかの実施態様では、ここに開示される抗体のアミノ酸配列の修飾を考える。例えば、抗体の結合親和性及び/又は生物学的特性を向上することができれば望ましい。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体の核酸に適切なヌクレオチド変化を導入して、又はペプチド合成により調製される。そのような修飾は、抗体のアミノ酸配列内の残基の、例えば、欠失、及び/又は挿入及び/又は置換を含む。最終コンストラクトが所望する特徴を有していれば、欠失、挿入又は置換をどのように組合せてもよい。アミノ酸変化は、配列が作製される時点で対象の抗体アミノ酸配列に導入されうる。
【0220】
突然変異誘発に好ましい位置である抗体の特定の残基又は領域の同定に有益な方法は、Cunningham及びWells(1989) Science, 244:1081-1085 (1989年)に開示されているように、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、標的となる残基又は残基の組が同定され(例えば、arg、asp、his、lys、及びgluなどの荷電した残基)、中性の、又は負に荷電したアミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリアラニン)で置換され、アミノ酸の抗原との相互作用に影響を与える。ついで、置換に対する機能的感受性を示しているそれらアミノ酸位置を、置換の部位において、又は置換の部位のために、更なる又は他の変異体を導入することにより精製する。このように、アミノ酸配列変異体を導入する部位は予め決定されるが、突然変異自体の性質は予め決定する必要はない。例えば、任意の部位における突然変異の機能を分析するために、標的コドン又は領域においてalaスキャンニング又はランダム突然変異誘発を実行し、発現した免疫グロブリンを所望の活性についてスクリーニングする。
【0221】
アミノ酸配列挿入には、1残基から100以上の残基を有するポリペプチドまでの長さにわたるアミノ末端融合及び/又はカルボキシ末端融合、並びに単一又は多重アミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を持つ抗体、又は細胞傷害性ポリペプチドに融合した抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体には、抗体の血清半減期を増加させるポリペプチド又は(例えばADEPTのための)酵素の抗体のN末端又はC末端への融合が含まれる。
【0222】
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合又はO結合の何れかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を意味する。アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸)のトリペプチド配列は、アスパラギン側鎖への糖鎖部分の酵素的結合のための認識配列である。従って、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列の何れかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が作製される。O結合グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンに、糖類N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースの一つが結合することを意味するが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンもまた用いられる。
【0223】
抗体へのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を、それが一又は複数の上述したトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位のもの)を含むように変化させることによって簡便に達成される。該変化は、元の抗体の配列への一又は複数のセリン又はスレオニン残基の付加、又はこれによる置換によってもなされる(O結合グリコシル化部位の場合)。
【0224】
抗体がFc領域を含有する場合、それに接着する炭水化物を変更してもよい。例えば、抗体のFc領域に接着するフコースを欠損する成熟炭水化物構造の抗体は、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta, L.)に記載される。米国特許出願公開第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd.)も参照のこと。抗体のFc領域に接着した炭水化物内のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を二分する抗体は、国際公開第03/011878号,Jean-Mairet等、及び米国特許第6602684号,Umana 等が参照される。抗体のFc領域に接着するオリゴサッカライド内の少なくとも一のガラクトース残基を有する抗体は、国際公開第97/30087号,Patel等に報告されている。また、抗体のFc領域に接着する変更された炭水化物を有する抗体については、国際公開第98/58964号(Raju, S.)及び国際公開第99/22764号(Raju, S.)も参照のこと。また、修飾されたグリコシル化を有する抗原結合分子については、米国特許出願公開第2005/0123546号(Umana 等)を参照のこと。
【0225】
ここでの好ましいグリコシル化変異体はFc領域を含み、Fc領域に結合された炭水化物構造がフコースを欠いている。このような変異体は改善されたADCC機能を有する。場合によって、Fc領域は、更にADCCを改善する一つ以上のアミノ酸置換、例えばFc領域の位置298、333及び/又は334の置換(Eu残基番号付け)を更に含む。「脱フコース化」又は「フコース欠失」抗体に関する文献の例には以下のものを含む:米国特許出願公開第2003/0157108号;国際公開第2000/61739号;国際公開第2001/29246号;米国特許出願公開第2003/0115614号;米国特許出願公開第2002/0164328号;米国特許出願公開第2004/0093621号;米国特許出願公開第2004/0132140号;米国特許出願公開第2004/0110704号;米国特許出願公開第2004/0110282号;米国特許出願公開第2004/0109865号;国際公開第2003/085119号;国際公開第2003/084570号;国際公開第2005/035586号;国際公開第2005/035778号;国際公開第2005/053742号;Okazaki 等 J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004);Yamane-Ohnuki 等 Biotech. Bioeng.87: 614 (2004)。脱フコース化抗体を産生する細胞株の例として、タンパク質フコース化欠失Lec13 CHO細胞(Ripka 等 Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);米国特許出願公開第2003/0157108, Presta, L;及び国際公開第2004/056312号, Adams 等、特に実施例11)、及びノックアウト細胞株、例としてα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8ノックアウトCHO細胞(Yamane-Ohnuki 等 Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004))などがある。
【0226】
他の型の変異体はアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、抗体分子において少なくとも一つ(少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ以上)のアミノ酸残基に異なる残基が挿入されている。置換突然変異誘発について最も関心ある部位は高度可変領域を含むが、FR改変も考慮される。保存的置換は、「好ましい置換」と題して表Aに示す。このような置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表Aに「例示的置換」と名前を付けた又はアミノ酸の分類を参照して以下に更に記載するような、より実質的な変化を導入して、生成物をスクリーニングしてもよい。
【0227】
表A
抗体の生物学的性質における実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又は螺旋配置、(b)標的部位の分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持するそれらの効果において顕著に異なる置換を選択することにより達成される。天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいて群に分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性の親水性:cys、ser、thr、asn、gln;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:his、lys、arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly、pro;及び
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。
【0228】
あるタイプの置換変異体は、親抗体(例えば、ヒト化又はヒト抗体)の一又は複数の高頻度可変領域残基の置換を含む。一般に、更なる発展のために選択され、得られた変異体は、それらが作製された親抗体と比較して向上した生物学的特性を有している。そのような置換変異体を作製する簡便な方法は、ファージディスプレイを使用する親和性突然変異を含む。簡潔に言えば、幾つかの高頻度可変領域部位(例えば6−7部位)を突然変異させて各部位における全ての可能なアミノ酸置換を生成させる。このように生成された多価抗体は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内に充填されたM13の遺伝子III産物への融合物としてディスプレイされる。ファージディスプレイ変異体は、ついで、ここに開示されるようなそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補となる高頻度可変領域部位を同定するために、アラニンスキャンニング突然変異誘発を実施し、抗原結合に有意に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。別法として、又はそれに加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して抗体と抗原の接点を特定するのが有利である場合もある。このような接触残基及び隣接残基は、ここに述べた技術に従う置換の候補である。そのような変異体が生成されると、変異体のパネルにここに記載するようなスクリーニングを施し、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ抗体を更なる開発のために選択する。
【0229】
抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、この分野で知られた様々な方法によって調製される。これらの方法は、限定するものではないが、天然源からの単離(天然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)又は初期に調製された抗体の変異体又は非変異体のオリゴヌクレオチド媒介(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及びカセット突然変異誘発による調製を含む。
【0230】
本発明の免疫グロブリンポリペプチドのFc領域内に一又は複数のアミノ酸修飾を導入してFc領域変異型を生成することが望ましい。Fc領域変異体は、ヒンジシステイン修飾を含む、一以上のアミノ酸位置でのアミノ酸修飾(例えば、置換)を有するヒトFc領域配列(例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4 Fc領域)を含みうる。
【0231】
この明細書と当該技術分野での教示に従って、幾つかの実施態様では、本発明の方法で使用される抗体は野生型の対応抗体と比較して例えばFc領域内に一又は複数の変異を有しうることが考えられる。にもかかわらず、この抗体はその野生型対応物と比較して治療的有用性を示す実質的に同じ特徴を維持している。例えば国際公開第99/51642号に記載のように、C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害性(CDC)を変更する(すなわち改良又は減少する)結果となる所定の改変をFc領域内に生じさせることが考えられる。また、Fc領域変異型の他の例に関するDuncan及びWinter Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5648260号;米国特許第5624821号;及び国際公開第94/29351号を参照。国際公開第00/42072号(Presta)及び国際公開第2004/056312号(Lowman)は、FcRへの結合が改善したか、減退した抗体変異体を開示している。これらの特許文献の内容は出典明示によってここに特に援用される。また、Shields 等 J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)を参照のこと。胎児への母性IgGの移送を担う(Guyer 等, J. Immunol. 117:587 (1976)及びKim 等, J. Immunol. 24:249 (1994))増加した半減期と改善した新生児Fcレセプター(FcRn)への結合性を有する抗体は米国特許出願公開第2005/0014934A1号(Hinton等)に記載されている。これらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を向上させる一又は複数の置換を有するFc領域を含んでなる。Fc領域アミノ酸配列が変更されてC1q結合能力が増加したか減少したポリペプチド変異体は、米国特許第6194551B1号、国際公開第99/51642に記載されている。その特許文献の内容は出典明示によって特にここに援用される。また、Idusogie 等, J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)を参照のこと。
【0232】
抗体誘導体
抗体は当該分野において知られ直ぐに利用できる更なる非タンパク質性部分を含むように更に修飾することができる。好ましくは、抗体の誘導体化に適した部分は水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例には、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーかランダムコポリマー)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物が含まれる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは水中におけるその安定性のために製造の際に有利であろう。ポリマーは任意の分子量であってよく、分枝状でも非分枝状でもよい。抗体に結合するポリマーの数は変化してもよく、一を超えるポリマーが結合する場合、それらは同じでも異なった分子でもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又はタイプは、限定されるものではないが、その抗体誘導体が定まった条件下での治療に使用されるかどうか、改善される抗体の特定の性質又は機能を含む考慮事項に基づいて決定することができる。
【0233】
所望の特性を有する抗体のスクリーニング
本発明の抗体は当該技術分野で知られている様々なアッセイによってその物理的/化学的性質及び生物学的機能について特徴付けることができる。幾つかの実施態様では、抗体は、ヘプシン結合、ヘプシン活性の低減又は遮断、ヘプシン及び/又はヘプシン基質(例えばプロ−MSP、プロ−uPA、VII因子、プロ−HGF)下流分子のシグナル伝達の低減又は遮断、及び/又は腫瘍、細胞増殖性疾患又は癌の治療及び/又は予防;及び/又はヘプシンの発現及び/又は活性(例えばヘプシン発現及び/又は活性の増加)と関連する疾患の治療又は予防の何れか一又は複数に特徴がある。
【0234】
幾つかの実施態様では、ヘプシン活性ヘプシン酵素活性である。一実施態様では、酵素活性はヘプシンのポリペプチド基質の切断を含む。一実施態様では、ヘプシンのポリペプチド基質はプロ−マクロファージ刺激タンパク質(プロ−MSP)、プロ−uPA、VII因子及びプロ−HGFの一又は複数である。プロ−MSPのヘプシン活性は、2009年10月22日出願の同時継続で共有に係る米国仮特許出願第61/253990号に記載されている。一実施態様では、酵素活性はヘプシンの合成基質の切断を含む。幾つかの実施態様では、ヘプシン合成基質は表1に示した基質である。
【0235】
精製された抗体は、限定されるものではないが、N末端シークエンシング、アミノ酸解析、非変性サイズ排除高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析、イオン交換クロマトグラフィー及びパパイン消化を含む一連のアッセイによって更に特徴付けることができる。
【0236】
本発明の所定の実施態様では、ここで生産された抗体がその生物学的活性について分析される。幾つかの実施態様では、本発明の抗体はその抗原結合活性について試験される。当該分野で知られ、ここで使用することができる抗原結合アッセイには、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、「サンドウィッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、蛍光イムノアッセイ、及びプロテインAイムノアッセイのような技術を用いた任意の直接的又は競合的結合アッセイが制限なく含まれる。例示的抗原結合及び他のアッセイは以下の実施例セクションに提供される。
【0237】
細胞増殖を阻害する抗ヘプシン抗体が望まれる場合、候補抗体を、細胞増殖の阻害を測定するインビトロ及び/又はインビボアッセイで試験することができる。癌細胞の成長及び/又は増殖を検査する方法は当該技術分野でよく知られている。細胞成長及び/又は増殖及び/又はアポトーシスを決定するための例示的方法は、例えばBrdU取り込みアッセイ、MTT、[3H]−チミジン取り込み(例えばTopCountアッセイ(PerkinElmer))、細胞生存率アッセイ(例えばCellTiter−Glo(Promega))等を含む。
【0238】
一実施態様では、本発明は抗体は、エフェクター機能を有する抗体を考える。所定の実施態様では、抗体のFc活性が測定される。インビボ及び/又はインビトロ細胞傷害アッセイを実施して、CDC及び/又はADCC活性の減少/枯渇を確認することができる。例えば、Fcレセプター(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠損している(よってADCC活性を欠損している可能性がある)が、FcRn結合能を保持していることを確認することができる。ADCCを媒介する主要細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現する一方、単核細胞はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血系細胞でのFcR発現については、Ravetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991)の464頁の表3に要約されている。対象とする分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの例は、米国特許第5500362号又は同第5821337号に記載されている。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、又は加えて、対象とする分子のADCC活性は、例えばClynes等 PNAS (USA) 95:652-656 (1998)に開示されているような動物モデル内でインビボで評価することができる。また、C1q結合アッセイを行って、抗体がC1qに結合できず、よってCDC活性を欠損していることを確認することもできる。補体活性化を評価するために、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載のようなCDCアッセイを実施してもよい。また、FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期の測定を、当該技術分野で知られている方法を使用して実施することができる。
【0239】
ベクター、宿主細胞及び組換え方法
抗体の組換え生産のためには、それをコードする核酸を単離し、更なるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製ベクターに挿入する。抗体をコードするDNAは一般的な手順で直ぐに単離し、配列決定される(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)。多くのベクターが利用可能である。使用される宿主細胞に部分的に依存してベクターを選択する。一般に、好適な宿主細胞は原核生物又は真核生物(一般的に哺乳動物)由来の細胞である。IgG、IgM、IgA、IgD及びIgE定常領域を含む、任意のアイソタイプの定常領域をこの目的のために使用することができ、このような定常領域は任意のヒト又は動物種から得られうることは理解されるであろう。
【0240】
原核生物宿主細胞を使用する抗体の産生
i.ベクター構築
本発明の抗体のポリペプチド成分をコードしているポリヌクレオチド配列は標準的な組換え技術を使用して得ることができる。所望のポリヌクレオチド配列はハイブリドーマ細胞のような抗体産生細胞から単離し配列決定することができる。あるいは、ポリヌクレオチドはヌクレオチド合成機又はPCR法を使用して合成することができる。ひとたび得られると、ポリペプチドをコードしている配列は原核生物宿主中で異種ポリヌクレオチドを複製し、発現することが可能な組換えベクター中に挿入される。当該技術分野において入手でき、知られている多くのベクターを本発明の目的のために使用することができる。適切なベクターの選択は、主として、ベクターに挿入される核酸のサイズとベクターで形質転換される特定の宿主に依存する。各ベクターは、機能(異種性ポリヌクレオチドの増幅又は発現あるいはその両方)及び属する特定の宿主細胞への適合性に応じて、様々な成分を含む。一般的に、限定するものではないが、ベクター成分には複製起源、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボゾーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種性核酸挿入及び転写終結配列が含まれる。
【0241】
一般には、レプリコン及び宿主細胞と適合性のある種に由来するコントロール配列を含んでいるプラスミドベクターが、これら宿主と関連して使用される。ベクターは、通常、複製開始点並びに形質転換細胞において表現型の選択を提供可能なマーキング配列を有する。例えば、大腸菌は、典型的には、大腸菌種由来のプラスミドであるpBR322を用いて形質転換される。pBR322はアンピシリン(Amp)及びテトラサイクリン(Tet)耐性のコード遺伝子を含んでいるため、形質転換細胞を同定するための容易な手段を提供する。pBR322、その誘導体又は他の微生物プラスミド又はバクテリオファージも外来性タンパク質を発現する微生物によって使用可能なプロモータを含むか、含むように変更される。特定の抗体の発現に使用されるpBR322誘導体の例はCarter等の米国特許第5648237号に詳細に記載されている。
【0242】
また、レプリコン及び宿主微生物と適合性のあるコントロール配列を含んでいるファージベクターを、これらの宿主との関連でトランスフォーミングベクターとして使用することができる。例えば、λGEM.TM.-11のようなバクテリオファージを、大腸菌LE392のような感受性の宿主細胞を形質転換するために使用できる組換えベクターを作製する際に利用することができる。
【0243】
本発明の発現ベクターは各ポリペプチド成分をコードする2又はそれ以上のプロモータ−シストロン対を含みうる。プロモーターはその発現を調節するシストロンの上流(5')に位置している非翻訳配列である。原核生物のプロモーターは典型的には誘導性と構成的との二つのクラスのものがある。誘導性プロモーターは、例えば栄養分の有無又は温度の変化のような、培養条件の変化に応答してその調節下でシストロンの転写レベルを増大させるように誘導するプロモーターである。
【0244】
様々な潜在的宿主細胞によって認識される非常に多くのプロモーターがよく知られている。選択したプロモーターを、制限酵素消化によって供給源DNAからプロモータを除去し、本発明のベクター内に単離したプロモータを挿入することによって、軽鎖又は重鎖をコードするシストロンDNAに作用可能に連結することができる。天然プロモーター配列と多くの異種プロモーターの双方を、標的遺伝子の増幅及び/又は発現を生じさせるために使用することができる。幾つかの実施態様では、天然の標的ポリペプチドプロモーターと比較して、一般的に発現される標的遺伝子をより多く転写させ、収率をよくするので、異種プロモーターが有用である。
【0245】
原核生物宿主での使用に好適なプロモーターには、PhoAプロモーター、βガラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系及びハイブリッドプロモーター、例えばtac又はtrcプロモーターが含まれる。しかし、細菌中で機能性である他のプロモーター(例えば他の既知の細菌又はファージプロモーター)も好適である。そのヌクレオチド配列は刊行されており、よって当業者は、任意の必要とされる制限部位を供給するリンカー又はアダプターを使用して標的軽鎖及び重鎖をコードするシストロンにそれらを作用可能に結合させることができる(Siebenlist等 (1980) Cell 20:269)。
【0246】
本発明の一態様では、組換えベクター内の各シストロンは、膜を貫通して発現されるポリペプチドの転写を誘導する分泌シグナル配列成分を含む。一般に、シグナル配列はベクターの成分でありうるか、又はベクター中に挿入される標的ポリペプチドDNAの一部でありうる。この発明の目的のために選択されるシグナル配列は宿主細胞によって認識されプロセシングされる(つまりシグナルペプチダーゼにより切断される)ものでなければならない。異種ポリペプチドに天然のシグナル配列を認識せずプロセシングする原核生物宿主細胞に対しては、シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ippあるいは熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA及びMBPからなる群から選択される原核生物シグナル配列によって置換される。本発明の一実施態様では、発現系の双方のシストロンに使用されるシグナル配列はSTIIシグナル配列又はその変異体である。
【0247】
他の態様では、本発明に係る免疫グロブリンの生産は宿主細胞の細胞質内で起こりうるので、各シストロン内に分泌シグナル配列の存在は必要としない。この点において、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖が発現され、折り畳まれ、集合して細胞質内に機能的免疫グロブリンを形成する。ある種の宿主株(例えば大腸菌trxB株)はジスルフィド結合形成に好ましい細胞質条件を提供し、それによって発現したタンパク質サブユニットの適切な折り畳み及び組み立てを可能にする。Proba及びPluckthun Gene, 159:203 (1995)。
【0248】
本発明の抗体を発現するのに適した原核生物宿主細胞には、古細菌及び真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物が含まれる。有用な細菌の例には、エシェリキア属(例えば大腸菌)、バシラス属(例えば枯草菌)、エンテロバクター属、シュードモナス種(例えば緑膿菌)、ネズミチフス菌、霊菌(Serratia marcescans)、クレブシエラ属、プロテウス属、赤痢菌、根粒菌、ビトレオシラ(Vitreoscilla)又はパラコッカス(Paracoccus)が含まれる。一実施態様では、グラム陰性菌が使用される。一実施態様では、大腸菌細胞が本発明の宿主として使用される。大腸菌株の例として、遺伝子型W3110 ΔfhuA (ΔtonA) ptr3 lac Iq lacL8 ΔompTΔ(nmpc-fepE) degP41 kanR を有する33D3株(米国特許第5639635号)を含むW3110株(Bachmann, Cellular and Molecular Biology, vol. 2 (Washington, D.C.: American Society for Microbiology, 1987), 1190-1219頁;ATCC寄託番号27325)及びその誘導体が含まれる。また、大腸菌294(ATCC31446)、大腸菌B、大腸菌λ1776(ATCC31537)及び大腸菌RV308(ATCC31608)など、他の株及びその誘導体も好適である。この例は限定的なものでなく例示的なものである。定義された遺伝子型を有する上述の細菌の何れかの誘導体を構築する方法は当該技術分野で知られており、例えばBass等, Proteins, 8:309-314 (1990)に記載されている。一般的に、細菌細胞中でのレプリコンの複製能を考慮して適した細菌を選択することが必要である。pBR322、pBR325、pACYC177、又はpKN410のようなよく知られたプラスミドを使用してレプリコンを供給する場合、例えば大腸菌、セラシア属、又はサルモネラ種を宿主として好適に用いることができる。典型的には、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌しなければならず、望ましくは更なるプロテアーゼインヒビターを細胞培養中に導入することができる。
【0249】
ii.抗体産生
上述した発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適するように修飾された一般的栄養培地中で培養する。
【0250】
形質転換とは、DNAを原核生物宿主中に導入し、そのDNAを染色体外要素として、又は染色体組込みによって複製可能にすることを意味する。使用される宿主細胞に応じて、形質転換はそのような細胞に適した標準的技術を使用してなされる。塩化カルシウムを用いるカルシウム処理は実質的な細胞壁障害を含む細菌細胞のために一般に使用される。形質転換のための他の方法はポリエチレングリコール/DMSOを用いる。使用される更に別の方法はエレクトロポレーションである。
【0251】
本発明のポリペプチドを生産するために使用される原核生物細胞は当該分野で知られ、選択された宿主細胞の培養に適した培地中で増殖させられる。好適な培地の例には、ルリア培地(LB)プラス必須栄養分サプリメントが含まれる。幾つかの実施態様では、培地は発現ベクターを含む原核生物細胞の増殖を選択的に可能にするために、発現ベクターの構成に基づいて選択される選択剤をまた含む。例えば、アンピシリンがアンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の増殖用培地に加えられる。
【0252】
炭素、窒素及び無機リン酸源の他に任意の必要なサプリメントを、単独で、又は複合窒素源のような他のサプリメント又は培地との混合物として導入される適切な濃度で含めさせうる。場合によっては、培養培地はグルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリトリトール及びジチオトレイトールからなる群から選択される一又は複数の還元剤を含みうる。
【0253】
原核生物宿主細胞は適切な温度で培養される。例えば、大腸菌の増殖に対しては、好適な温度は約20℃から約39℃、より好ましくは約25℃から約37℃の範囲、更により好ましくは約30℃である。培地のpHは、主として宿主生物に応じて、約5から約9の範囲の任意のpHでありうる。大腸菌に対しては、pHは好ましくは約6.8から約7.4、より好ましくは約7.0である。
【0254】
本発明の発現ベクターに誘導性プロモータが用いられる場合、プロモータの活性に適する条件下でタンパク質発現を誘導する。本発明の一態様では、ポリペプチドの転写制御のためにPhoAプロモータが用いられる。従って、形質転換した宿主細胞を誘導のためにリン酸制限培地で培養する。好ましくは、リン酸制限培地はC.R.A.P培地である(例えば、Simmons等, J. Immunol. Methods (2002), 263:133-147を参照)。当該技術分野で知られているように、様々な他の誘導因子を、用いるベクターコンストラクトに応じて使用してもよい。
【0255】
一実施態様では、本発明の発現されたポリペプチドは宿主細胞の周辺質に分泌され、そこから回収される。タンパク質の回収は、一般的には浸透圧ショック、超音波処理又は溶解のような手段によって、典型的には微生物を破壊することを含む。ひとたび細胞が破壊されると、細胞片又は全細胞を遠心分離又は濾過によって除去することができる。タンパク質は、例えばアフィニティー樹脂クロマトグラフィーによって更に精製することができる。あるいは、タンパク質は培養培地に輸送しそこで分離することができる。細胞を培養物から除去することができ、培養上清は濾過され、生成したタンパク質の更なる精製のために濃縮される。発現されたポリペプチドを更に単離し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)及びウェスタンブロットアッセイ法のような一般的に知られている方法を使用して同定することができる。
【0256】
本発明の一態様では、抗体産生は発酵法によって多量に実施される。組換えタンパク質の生産には様々な大規模流加発酵法を利用することができる。大規模発酵は少なくとも1000リットルの容量、好ましくは約1000から100000リットルの容量である。これらの発酵槽は、酸素と栄養分、特にグルコース(好ましい炭素/エネルギー源)を分散させる撹拌翼を使用する。小規模発酵とは一般におよそ100リットル以下の容積で、約1リットルから約100リットルの範囲でありうる発酵槽での発酵を意味する。
【0257】
発酵法では、タンパク質の発現の誘導は、典型的には、細胞が適切な条件下で、初期定常期に細胞があるステージで、所望の密度、例えば約180−220のOD550まで増殖したところで開始される。当該技術分野で知られ上述されたように、用いられるベクターコンストラクトに応じて、様々な誘導因子を使用することができる。細胞を誘導前の短い時間の間、増殖させうる。細胞は通常約12−50時間の間、誘導されるが、更に長い又は短い誘導時間としてもよい。
【0258】
本発明のポリペプチドの生産収量と品質を改善するために、様々な発酵条件を変更することができる。例えば、分泌される抗体ポリペプチドの適切な組立てと折り畳みを改善するために、例えばDsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD及び/又はDsbG)又はFkpA(シャペロン活性を持つペプチジルプロピルシス、トランス−イソメラーゼ)のようなシャペロンタンパク質を過剰発現する更なるベクターを使用して宿主原核細胞を同時形質転換させることができる。シャペロンタンパク質は細菌宿主細胞中で生産される異種性タンパク質の適切な折り畳みと溶解性を容易にすることが実証されている。Chen等 (1999) J Bio Chem 274:19601-19605;Georgiou等, 米国特許第6083715号;Georgiou等, 米国特許第6027888号;Bothmann及びPluckthun (2000) J. Biol. Chem. 275:17100-17105;Ramm及びPluckthun (2000) J. Biol. Chem. 275:17106-17113;Arie等 (2001) Mol. Microbiol. 39:199-210。
【0259】
発現された異種タンパク質(特にタンパク分解を受けやすいもの)のタンパク質分解を最小にするために、タンパク質分解酵素を欠くある種の宿主株を本発明に用いることができる。例えば、宿主細胞株を改変して、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVI、及びその組合せのような既知の細菌プロテアーゼをコードしている遺伝子に遺伝子突然変異を生じさせることができる。幾つかの大腸菌プロテアーゼ欠損株が利用でき、例えば、上掲のJoly等 (1998);Georgiou等, 米国特許第5264365号;Georgiou等, 米国特許第5508192号;Hara等, Microbial Drug Resistance 2:63-72 (1996)に記載されている。
【0260】
一実施態様では、タンパク質溶解性酵素を欠損し、一又は複数のシャペロンタンパク質を過剰発現するプラスミドで形質転換した大腸菌株を本発明の発現系の宿主細胞として使用する。
【0261】
iii.抗体精製
当該技術分野で知られている標準的なタンパク質精製方法を用いることができる。以下の方法は適切な精製手順の例である:免疫親和性又はイオン交換カラムによる分画、エタノール沈降法、逆相HPLC、シリカ又はDEAEなどの陽性交換樹脂によるクロマトグラフィ、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈降法及び例えばSephadex G-75を用いたゲル濾過法。
【0262】
一態様では、固相に固定したプロテインAを本発明の完全長抗体産物の免疫親和性精製に使用する。プロテインAは抗体のFc領域に高い親和性で結合する黄色ブドウ球菌からの41kDの細胞壁タンパク質である。Lindmark等, J. Immunol. Meth. 62:1-13 (1983)。プロテインAを固定した固相は、ガラス又はシリカ表面、より好ましくは孔を調節したガラスカラム又はケイ酸カラムを含むカラムが好ましい。ある応用では、カラムは非特異的な混入物の接着を防ぐためにグリセロールなどの試薬でコートされている。
【0263】
精製の最初の工程として、上に記載のように細胞培養物から誘導された調製物をプロテインA固定固相に適応し、プロテインAに対象の抗体を特異的に結合させる。ついで、固相を洗浄して、固相に非特異的に結合した混入物を除去する。最後に、対象とする抗体を溶出により固相から除去する。
【0264】
b.真核生物の宿主細胞を用いた抗体の産生
一般的に、ベクターは、限定するものではないが、次の一又は複数を含む:シグナル配列、複製起点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサー因子、プロモーター、及び転写終結因子。
【0265】
(i)シグナル配列成分
真核生物宿主細胞に用いるベクターは、シグナル配列あるいは成熟タンパク質あるいは対象とするポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドを含んでいてもよい。好ましく選択された異種シグナル配列は宿主細胞によって認識され加工される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。哺乳動物細胞での発現においては、哺乳動物のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが利用できる。
このような前駆体領域のDNAは、抗体をコードするDNAに読み枠を一致させて結合される。
【0266】
(ii)複製開始点
一般には、哺乳動物の発現ベクターには複製開始点成分は不要である。例えば、SV40開始点は典型的にはただ初期プロモーターを有しているために用いられる。
【0267】
(iii)選択遺伝子成分
発現及びクローニングベクターは、選択可能マーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)関連がある場合は栄養要求性欠陥を補い、又は(c)複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
【0268】
選択方法の一例では、宿主細胞の成長を抑止する薬物が用いられる。異種性遺伝子で首尾よく形質転換した細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を生産し、よって選択工程を生存する。このような優性選択の例は、薬剤ネオマイシン、ミコフェノール酸及びハイグロマイシンを使用する。
【0269】
哺乳動物細胞に適切な選択可能なマーカーの他の例は、抗体核酸を捕捉することのできる細胞成分を同定することを可能にするもの、例えばDHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネインI及びII、好ましくは、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等々である。
【0270】
例えば、DHFR選択遺伝子によって形質転換された細胞は、先ず、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトリキセート(Mtx)を含む培地において形質転換物の全てを培養することで同定される。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、DHFR活性に欠陥のあるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)株化細胞である(例えば、ATCC CRL-9096)。
【0271】
あるいは、抗体をコードするDNA配列、野生型DHFRタンパク質、及びアミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH)のような他の選択可能マーカーで形質転換あるいは同時形質転換した宿主細胞(特に、内在性DHFRを含む野生型宿主)は、カナマイシン、ネオマイシンあるいはG418のようなアミノグリコシド抗生物質のような選択可能マーカーの選択剤を含む培地中での細胞増殖により選択することができる。米国特許第4965199号を参照のこと。
【0272】
(iv)プロモーター成分
発現及びクローニングベクターは通常は宿主生物によって認識され抗体ポリペプチド核酸に作用可能に結合しているプロモーターを含む。真核生物のプロモーター配列が知られている。実質的に全ての真核生物の遺伝子が、転写開始部位からおよそ25ないし30塩基上流に見出されるATリッチ領域を有している。多数の遺伝子の転写開始位置から70ないし80塩基上流に見出される他の配列は、Nが任意のヌクレオチドであるCNCAAT領域である。大部分の真核生物遺伝子の3'末端には、コード配列の3'末端へのポリA尾部の付加に対するシグナルであるAATAAA配列がある。これらの配列は全て真核生物の発現ベクターに適切に挿入される。
【0273】
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからの抗体ポリペプチドの転写は、例えば、ポリオーマウイルス、伝染性上皮腫ウイルス、アデノウイルス(例えばアデノウイルス2)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及びサルウイルス40(SV40)のようなウイルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り、調節される。
【0274】
SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製起点を更に含むSV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIIIE制限断片として簡便に得られる。ベクターとしてウシ乳頭腫ウイルスを用いて哺乳動物宿主中でDNAを発現させる系が、米国特許第4419446号に開示されている。この系の変形例は米国特許第4601978号に開示されている。あるいは、ラウス肉腫ウイルス長末端反復をプロモーターとして使用することができる。
【0275】
(v)エンハンサーエレメント成分
より高等の真核生物によるこの発明の抗体ポリペプチドをコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによってしばしば増強される。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100−270塩基対)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウイルスエンハンサーが含まれる。真核生物プロモーターの活性化のための増強要素については、Yaniv, Nature, 297:17-18 (1982)もまた参照のこと。エンハンサーは、抗体ポリペプチドコード配列の5'又は3'位でベクター中にスプライシングされうるが、好ましくはプロモーターから5'位に位置している。
【0276】
(vi)転写終結成分
また、真核生物宿主細胞に用いられる発現ベクターは、典型的には、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列を含む。このような配列は、真核生物又はウイルスのDNA又はcDNAの5'、時には3'の非翻訳領域から一般に取得できる。これらの領域は、抗体をコードしているmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。一つの有用な転写終結成分はウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号とそこに開示された発現ベクターを参照のこと。
【0277】
(vii)宿主細胞の選択及び形質転換
ここに記載のベクター中のDNAをクローニングあるいは発現させるために適切な宿主細胞は、脊椎動物の宿主細胞を含む本明細書中に記載の高等真核生物細胞を含む。培養(組織培養)中での脊椎動物細胞の増殖は常套的な手順になっている。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7, ATCC CRL1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));ハムスター乳児腎細胞(BHK, ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サルの腎細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザルの腎細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA, ATCC CCL2);イヌ腎細胞(MDCK, ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞(BRL3A, ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138, ATCC CCL75);ヒト肝細胞(Hep G2, HB8065);マウス乳房腫瘍細胞(MMT060562, ATCC CCL51);TRI細胞(Mather等, Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌株(HepG2)である。
【0278】
宿主細胞は、抗体生産のために上述の発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードしている遺伝子を増幅するために適切に修飾された常套的栄養培地で培養される。
【0279】
(viii)宿主細胞の培養
この発明の抗体を産生するために用いられる宿主細胞は様々な培地において培養することができる。市販培地、例えばハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地((MEM),(シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM),シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。また、Ham等, Meth. Enz. 58:44 (1979), Barnes等, Anal. Biochem. 102:255 (1980)、米国特許第4767704号;同第4657866号;同第4927762号;同第4560655号;又は同第5122469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国再発行特許第30985号に記載された何れの培地も宿主細胞に対する培地として使用できる。これらの培地には何れもホルモン及び/又は他の増殖因子(例えばインシュリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCIN
TM薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は等価なエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について過去に用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0280】
(ix)抗体の精製
組換え技術を用いる場合、抗体は細胞内で生成され、又は培地内に直接分泌される。抗体が細胞内に生成された場合、第1の工程として、宿主細胞か溶解された断片の何れにしても、粒子状の細片が、例えば遠心分離又は限外濾過によって除去される。抗体が培地に分泌された場合は、そのような発現系からの上清を、一般的には先ず市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はMillipore Pellicon限外濾過装置を用いて濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記の任意の工程に含めて、タンパク質分解を阻害してもよく、また抗生物質を含めて外来性の汚染物の成長を防止してもよい。
【0281】
細胞から調製した抗体組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製でき、アフィニティクロマトグラフィーが好ましい精製技術である。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する免疫グロブリンFc領域の種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に用いることができる(Lindmark等, J. immunol. Meth. 62: 1-13 (1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨されている(Guss等, EMBO J. 5: 16571575 (1986))。アフィニティーリガンドが結合されるマトリクスはアガロースであることが最も多いが、他の材料も使用可能である。孔制御ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリクスは、アガロースで達成できるものより早い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX
TM樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンでのクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂でのSEPHAROSE
TMクロマトグラフィー(ポリアスパラギン酸カラム)、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿法も、回収される多価抗体に応じて利用可能である。
【0282】
予備的精製工程に続いて、目的の抗体及び混入物を含む混合液をpH約2.5−4.5、好ましくは低塩濃度(例えば、約0−0.25M塩)の溶出緩衝液を用いて低pH疎水性作用クロマトグラフィーを行う。
【0283】
イムノコンジュゲート
また、本発明は、化学療法剤、薬剤、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌、糸状菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素、又はその断片)、又は放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)などの細胞毒性剤にコンジュゲートしたここに記載の抗ヘプシン抗体を含む、イムノコンジュゲート(「抗体−薬剤コンジュゲート」又は「ADC」と交換可能に称される)を考慮する。
【0284】
細胞傷害性又は細胞分裂停止性の薬剤、すなわち癌治療における腫瘍細胞を殺す又は阻害するための薬剤の局所的送達に抗体−薬剤コンジュゲートを用いると(Syrigos及びEpenetos (1999) Anticancer Research 19:605-614; Niculescu-Duvaz and Springer (1997) Adv. Drg Del. Rev. 26:151-172;米国特許第4975278号)、腫瘍への薬剤成分の標的とする運搬とそこでの細胞内集積が可能となるものであり、ここで、これら非コンジュゲート薬物作用剤の全身性投与は正常細胞並びに除去しようとする腫瘍細胞への毒性が容認できないレベルとなりうる(Baldwin等, (1986) Lancet pp. (Mar. 15, 1986):603-05; Thorpe, (1985) 「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review,」 in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, A. Pinchera等編, pp. 475-506)。これによって、最小限の毒性で最大限の効果が求められる。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体は共にこの方策に有用であるとして報告されている(Rowland等, (1986) Cancer Immunol. Immunother., 21:183-87)。この方法に用いる薬物には、ダウノマイシン、ドキソルビジン、メトトレキサート及びビンデジンが含まれる(Rowland等, (1986)、上掲)。抗体−毒素コンジュゲートに用いる毒素には、ジフテリア毒素などの細菌性毒素、ゲルダナマイシン(Mandler等(2000) Jour. of the Nat. Cancer Inst. 92(19):1573-1581;Mandler等(2000) Bioorganic & Med. Chem. Letters 10:1025-1028;Mandler等(2002) Bioconjugate Chem. 13:786-791)、メイタンシノイド(欧州特許出願公開第1391213号;Liu等, (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623)、及びカリケアマイシン(Lode等, (1998) Cancer Res. 58:2928;Hinman等, (1993) Cancer Res. 53:3336-3342)などのリシン、小分子毒素などの植物毒が含まれる。該毒素は、チューブリン結合、DNA結合又はトポイソメラーゼ阻害を含む機能によりその細胞傷害性及び細胞分裂停止性の効果に影響しうる。ある種の細胞傷害薬は、大きな抗体又はタンパク質レセプターリガンドにコンジュゲートした場合に、不活性又は活性が低減する傾向がある。
【0285】
ゼバリン(ZEVALIN)(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン, Biogen/Idec)は正常及び悪性のBリンパ球の細胞表面上にみられるCD20抗原に対するマウスIgG1κモノクローナル抗体と
111In又は
90Y放射性同位体とがチオウレアリンカーキレート剤によって結合させられた抗体−放射性同位体コンジュゲートである(Wiseman等, (2000) Eur. Jour. Nucl. Med. 27(7):766-77;Wiseman等, (2002) Blood 99(12):4336-42;Witzig等, (2002) J. Clin. Oncol. 20(10):2453-63;Witzig等, (2002) J. Clin. Oncol. 20(15):3262-69)。ゼバリンはB細胞非ホジキン性リンパ球(NHL)に対して活性を有するが、投与によって殆どの患者に重症で長期の血球減少を引き起こす。カリケアマイシンに連結したhuCD33抗体からなる抗体薬剤コンジュゲートであるマイロターグ(MYLOTARG)(登録商標)(ゲムツズマブオゾガミシン(gemtuzumab ozogamicin), Wyeth Pharmaceuticals)は、急性骨髄性白血病の治療用注射剤として2000年に認可された(Drugs of the Future (2000) 25(7):686;米国特許第4970198号;同第5079233号;同第5585089号;同第5606040号;同第5693762号;同第5739116号;同第5767285号;同第5773001号)。ジスルフィドリンカーSPPを介してメイタンシノイド薬剤分子DM1と連結しているhuC242抗体からなる抗体薬剤コンジュゲートであるカンツズマブメルタンシン(Cantuzumab mertansine)(Immunogen, Inc.)は、CanAgを発現する癌、例として大腸、膵臓、胃などの治療用に第II相治験へと進んでいる。メイタンシノイド薬剤分子DM1と連結している抗前立腺特異的膜抗原(PSMA)モノクローナル抗体からなる抗体薬剤コンジュゲートであるMLN−2704(Millennium Pharm., BZL Biologics, Immunogen Inc.)は、前立腺癌の潜在的治療の開発段階にある。オーリスタチンペプチド、オーリスタチンE(AE)及びモノメチルオーリスタチン(MMAE)、ドラスタチンの合成アナログは、キメラモノクローナル抗体cBR96(癌細胞上のルイスYに特異的)及びcAC10(血液系悪性腫瘍上のCD30に特異的)(Doronina等, (2003) Nature Biotechnology 21(7):778-784)にコンジュゲートしており、治療的開発段階にある。
【0286】
イムノコンジュゲートの生成に有用な化学療法剤はここに(例えば上記)記載されている。使用することのできる酵素活性毒素及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)が含まれる。例えば1993年10月28日に公開の国際公開第93/21232を参照のこと。放射性コンジュゲート抗体の生成には、様々な放射性ヌクレオチドが利用可能である。例としては、
212Bi、
131I、
131In、
90Y及び
186Reが含まれる。抗体及び細胞傷害性薬のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トリエン2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて作成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238: 1098 (1987)に記載されているように調製することができる。カーボン-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲーションのためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照。
【0287】
抗体と一又は複数の小分子毒素、例えばカリケアマイシン、メイタンシノイド、ドラスタチン、オーロスタチン(aurostatins)、トリコテシン及びCC1065、及び毒性活性を有するこれらの毒素の誘導体のコンジュゲートがまたここで考察される。
【0288】
i.メイタンシン及びメイタンシノイド
幾つかの実施態様では、イムノコンジュゲートは一又は複数のメイタンシノイド分子とコンジュゲートされた抗体(完全長又は断片)を含んでなる。
【0289】
メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害することにより作用する分裂阻害剤である。メイタンシンは、最初、東アフリカシラブMaytenus serrataから単離された(米国特許第3896111号)。その後、ある種の微生物がまたメイタンシノイド類、例えばメイタンシノール及びC-3メイタンシノールエステルを生成することが発見された(米国特許第4151042号)。合成メイタンシノール及びその誘導体及びアナログは、例えば米国特許第4137230号;同4248870号;同4256746号;同4260608号;同4265814号;同4294757号;同4307016号;同4308268号;同4308269号;同4309428号;同4313946号;同4315929号;同4317821号;同4322348号;同4331598号;同4361650号;同4364866号;同4424219号;同4450254号;同4362663号;及び同4371533号に開示されている。
【0290】
メイタンシノイド薬剤部分は、(i)発酵又は化学修飾、発酵産物の誘導体化による調製が相対的に利用可能であり、(ii)抗体に対する非ジスルフィドリンカーによるコンジュゲーションに適した官能基を用いた誘導体化に受け入れられ、(iii)血漿中で安定であり、(iv)様々な腫瘍細胞株に対して効果的であるため、抗体薬剤コンジュゲートの魅力的な薬剤成分である。
【0291】
メイタンシノイドを含むイムノコンジュゲート、その製造方法、及びその治療用途は、例えば米国特許第5208020号、同5416064号、欧州特許第0425235B1号に開示されており、その開示は出典明示により明示的にここに援用される。Liu等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623(1996)には、ヒト結腸直腸癌に対するモノクローナル抗体C242に結合したDM1と命名されたメイタンシノイドを含むイムノコンジュゲートが記載されている。該コンジュゲートは培養された結腸癌細胞に対して高い細胞傷害性を有することが見出されており、インビボ腫瘍増殖アッセイにおいて抗腫瘍活性を示した。Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992)には、メイタンシノイドが、ジスルフィドリンカーを介して、ヒト結腸癌株化細胞上の抗原に結合するマウス抗体A7、又はHER-2/neuオンコジーンに結合する他のマウスモノクローナル抗体TA.1に結合しているイムノコンジュゲートが記載されている。TA.1-メイタンシノイドコンジュゲートの細胞傷害性は、細胞当たり3×10
5のHER-2表面抗原を発現するヒト乳癌株化細胞SK-BR-3におけるインビトロで試験した。薬剤コンジュゲートにより、遊離のメイタンシノイド剤に類似した細胞傷害度が達成され、これが、抗体分子当たりのメイタンシノイド分子の数を増加させることにより増加させられうる。A7-メイタンシノイドコンジュゲートはマウスにおいては低い全身性細胞傷害性を示した。
【0292】
抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、抗体又はメイタンシノイド分子の何れの生物学的活性も有意には低減することなく、メイタンシノイド分子に抗体を化学的に結合させることにより調製される。例えば、米国特許第5208020号(この開示内容は出典明示により明示的にここに援用される)を参照。毒素/抗体のたとえ一分子でも、ネイキッド抗体の使用に対して細胞傷害性を高めることが予想されるが、抗体分子当たり平均3−4のメイタンシノイド分子が結合したものは、抗体の機能又は溶解性に悪影響を与えることなく、標的細胞に対する細胞傷害性を向上させる効力を示す。メイタンシノイドは当該技術分野でよく知られており、既知の技術で合成することも、天然源から単離することもできる。適切なメイタンシノイドは、例えば米国特許第5208020号及び他の特許及び上述した非特許刊行物に開示されている。好ましいメイタンシノイドは、メイタンシノール、及び種々のメイタンシノールエステル等の、メイタンシノール分子の芳香環又は他の位置が修飾されたメイタンシノールアナログである。
【0293】
例えば、米国特許第5208020号又は欧州特許第0425235B1号、Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992)、及び2004年10月8日に出願の米国特許出願番号10/960602(これらの開示内容は出典明示によりここに明示的に援用される)に開示されているもの等を含め、抗体−メイタンシノイドコンジュゲートを作製するために、当該技術分野で知られている多くの結合基がある。リンカー成分SMCCを含んでなる抗体−メイタンシノイドコンジュゲートは、2004年10月8日に出願の米国特許出願第10/960602号に開示されるようにして調製されうる。結合基には、上述した特許に開示されているような、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチターゼ不安定性基、又はエステラーゼ不安定性基が含まれるが、ジスルフィド及びチオエーテル基が好ましい。更なる結合基をここに記載し、例証する。
【0294】
抗体とメイタンシノイドとのコンジュゲートは、様々な二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミデートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート類(例えば、トルエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。特に好ましいカップリング剤には、ジスルフィド結合により提供されるN-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノアート(SPP)及びN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)(Carlsson等, Biochem. J. 173:723-737(1978))が含まれる。
【0295】
リンカーは結合のタイプに応じて、様々な位置でメイタンシノイド分子に結合されうる。例えば、一般的なカップリング技術を使用してヒドロキシル基との反応によりエステル結合を形成することができる。反応はヒドロキシル基を有するC-3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC-14位、ヒドロキシル基で修飾されたC-15位、及びヒドロキシル基を有するC-20位で生じうる。好ましい実施態様では、結合はメイタンシノール又はメイタンシノールアナログのC-3位に形成される。
【0296】
ii.オーリスタチン類及びドラスタチン類
幾つかの実施態様では、イムノコンジュゲートは、ドラスタチン又はドロスタチンペプチジルアナログ及び誘導体、オーリスタチン(米国特許第5635483号及び同第5780588号)にコンジュゲートした本発明の抗体を含んでなる。ドラスタチン及びオーリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解及び核と細胞の分割を妨げ(Woyke 等 (2001) Antimicrob. Agents and Chemother. 45(12): 3580-3584)、抗癌活性(米国特許第5663149号)及び抗真菌性活性(Pettit 等 (1998) Antimicrob. Agents Chemother. 42:2961-2965)を有することが示されている。ドラスタチン又はオーリスタチン薬剤部分は、ペプチド薬剤部分のN(アミノ)末端又はC(カルボキシル)末端を介して抗体に結合されうる(国際公開第02/088172号)。
【0297】
例示的なオーリスタチンの実施態様は、2004年11月5日に出願された"Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands"、米国特許出願第10/983340号に開示されたN末端連結モノメチルオーリスタチン薬剤部分DE及びDFを含み、この開示は出典明示によってその全体が明示的に援用される。
【0298】
典型的には、ペプチドベースの薬剤部分は、2以上のアミノ酸及び/又はペプチド断片間にペプチド結合を形成することによって調製されうる。このようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野においてよく知られている液相合成方法に従って調製することができる(E. Schroder及びK. Lubke, "The Peptides", volume 1, pp 76-136, 1965, Academic Pressを参照)。オーリスタチン/ドラスタチン薬剤部分は、米国特許第5635483号;同第5780588号;Pettit 等 (1989) J. Am. Chem. Soc. 111: 5463-5465;Pettit 等 (1998) Anti-Cancer Drug Design 13:243-277;Pettit, G.R., 等 Synthesis, 1996, 719-725;及びPettit 等 (1996) J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 5:859-863の方法に従って調製されうる。また、出典明示によってその全体がここに援用されるDoronina (2003) Nat Biotechnol 21(7): 778-784;"Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands", 2004年11月5日に出願の米国特許出願第10/983340号(例えば、リンカー及びリンカーにコンジュゲートされたMMAE及びMMAFのようなモノメチルバリン化合物を調製する方法を開示している)も参照のこと。
【0299】
iii.カリケアマイシン
他の実施態様では、イムノコンジュゲートは、一又は複数のカリケアマイシン分子と結合した本発明の抗体を含んでなる。抗生物質のカリケアマイシンファミリーはサブ-ピコモルの濃度で二重鎖DNA破壊を生じせしめることができる。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製については、米国特許第5712374号、同5714586号、同5739116号、同5767285号、同5770701号、同5770710号、同5773001号、同5877296号(全て、American Cyanamid Company)を参照のこと。使用されうるカリケアマイシンの構造アナログには、限定するものではないが、γ
1I、α
2I、α
3I、N-アセチル-γ
1I、PSAG及びθ
I1(Hinman等, Cancer Research, 53:3336-3342(1993)、Lode等 Cancer Research, 58:2925-2928(1998)及び上述したAmerican Cyanamidの米国特許)が含まれる。抗体がコンジュゲートされうる他の抗腫瘍薬は、葉酸代謝拮抗薬であるQFAである。カリケアマイシン及びQFAは双方共、細胞内に作用部位を有し、細胞膜を容易には通過しない。従って、抗体媒介性インターナリゼーションによるこれらの薬剤の細胞への取込により、その細胞傷害効果が大きく向上させられる。
【0300】
iv.他の細胞傷害剤
本発明の抗体にコンジュゲートされうる他の抗腫瘍剤には、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン及び5-フルオロウラシル、米国特許第5053394号、同5770710号に記載されており、集合的にLL-E33288複合体として知られている薬剤ファミリー、並びにエスペラマイシン(米国特許第5877296号)が含まれる。
【0301】
使用されうる酵素活性毒及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。
【0302】
本発明は、抗体と核酸分解活性を有する化合物(例えばリボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNアーゼ)との間に形成されるイムノコンジュゲートを更に考察する。
【0303】
腫瘍の選択的な破壊のために、抗体は高い放射性を有する原子を含んでいてもよい。放射性コンジュゲート抗体の生産には様々な放射性同位体が利用される。例には、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212及びLuの放射性同位体が含まれる。コンジュゲートが検出に使用される場合、それはシンチグラフィー研究用の放射性原子、例えばtc
99m又はI
123、又は核磁気共鳴(NMR)映像(磁気共鳴映像、mriとしても知られている)用のスピン標識、例えばヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含みうる。
【0304】
放射-又は他の標識が、既知の方法でコンジュゲートに導入されうる。例えば、ペプチドが生合成されうるか、又は水素の代わりに例えばフッ素-19を含む適切なアミノ酸前駆体を使用する化学的なアミノ酸合成により合成されうる。標識、例えばtc
99m又はI
123、Re
186、Re
188及びIn
111は、ペプチドのシステイン残基を介して結合されうる。イットリウム-90はリジン残基を介して結合されうる。IODOGEN法(Fraker等(1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80:49-57)は、ヨウ素-123の導入に使用することができる。他の方法の詳細は、「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal, CRC Press 1989)に記載されている。
【0305】
抗体と細胞傷害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)が抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照のこと。リンカーは細胞中の細胞傷害剤の放出を容易にする「切断可能リンカー」でありうる。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ過敏性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカーを使用しうる(Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992);米国特許第5208020号)。
【0306】
本発明の化合物は、限定するものではないが、架橋剤:(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aより)市販されているBMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCC、及びスルホ−SMPB、及びSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)を用いて調製されるADCが明示的に考えられる。2003-2004 Applications Handbook and Catalogの467−498頁を参照。
【0307】
v.抗体薬剤コンジュゲートの調製
本発明の抗体薬剤コンジュゲート(ADC)において、抗体(Ab)を、リンカー(L)を介して、一又は複数の薬剤部分(D)、例えば抗体につき約1から約20の薬剤部分にコンジュゲートさせる。式IのADCは、(1)抗体の求核基を二価リンカー試薬と反応せ、共有結合を介してAb−Lを形成し、ついで薬剤部分Dと反応させること;及び(2)薬剤部分の求核基を二価のリンカー試薬と反応させ、共有結合を介してD−Lを形成し、ついで抗体の求核基と反応させることを含む、当業者に知られている有機化学反応、条件、及び試薬を用いて、幾つかの経路によって調製されうる。ADCを調製するための更なる方法はここに記載される。
Ab−(L−D)
p I
リンカーは一又は複数のリンカー成分からなりうる。例示的なリンカー成分は、6-マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、バリン-シトルリン(「val-cit」)、アラニン-フェニルアラニン(「ala-phe」)、p-アミノベンジルオキシカルボンイル(「PAB」)、N-スクシンイミジル4(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(「SPP」)、N-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシレート(「SMCC」)、及びN-スクシンイミジル(4-イオド-アセチル)アミノ安息香酸エステル(「SIAB」)を含む。更なるリンカー成分は当該技術分野で知られており、その幾つかはここに記載される。また、その内容が出典明示によりここに援用される"Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands"、2004年11月5日に出願した米国出願第10/983340号を参照のこと。
【0308】
幾つかの実施態様では、リンカーはアミノ酸残基を含みうる。例示的なアミノ酸リンカー成分は、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド又はペンタペプチドなどがある。例示的なジペプチドは、バリン-シトルリン(vc又はval-cit)、アラニン-フェニルアラニン(af又はala-phe)を含む。例示的なトリペプチドは、グリシン-バリン-シトルリン(gly-val-cit)及びグリシン-グリシン-グリシン(gly-gly-gly)を含む。アミノ酸リンカー成分を含んでなるアミノ酸残基は、天然に生じるもの、並びに微量のアミノ酸及び非天然に生じるアミノ酸アナログ、例えばシトルリンを含む。アミノ酸リンカー成分は設計され得、特定の酵素、例えば腫瘍関連プロテアーゼ、カテプシンB、C及びD又はプラスミンプロテアーゼによる酵素的切断の選択性に最適化されうる。
【0309】
抗体上の求核基には、限定するものでなく、以下のものを含む:(i)N末端アミン基、(ii)側鎖アミン基、例えばリシン、(iii)側鎖チオール基、例えばシステイン、及び(iv)抗体がグリコシル化される糖ヒドロキシル又はアミノ基。アミン、チオール及びヒドロキシル基は求核性であり、反応して、(i)活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメート、及び酸ハロゲン化物;(ii)アルキル及びベンジルハロゲン化物、例えばハロアセトアミド;(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル及びマレイミド基を含むリンカー試薬及びリンカー部分上の求電子基と共有結合を形成することができる。所定の抗体は、還元性鎖間ジスルフィド、すなわちシステイン架橋を有する。抗体は、還元剤、例えばDTT(ジチオトレイトール)での処理によって、リンカー試薬を用いたコンジュゲーションに反応性にせしめうる。よって、各システイン架橋は、理論的には、2の反応性のチオール求核基を形成する。更なる求核基を2-イミノチオラン(トラウト試薬)とリジンの反応を介して抗体に導入し、チオールにアミンを転換させうる。反応性チオール基は、1、2、3、4又はそれ以上のシステイン残基を導入する(例えば、一又は複数の非天然のシステインアミノ酸残基を含む変異体抗体を調製する)ことによって抗体に導入されうる。
【0310】
また、本発明の抗体薬剤コンジュゲートは、抗体を修飾して、リンカー試薬又は薬剤上の求核置換基と反応させることができる求電子部分を導入することによって生成してもよい。グリコシル化された抗体の糖を、例えば過ヨウ素酸塩酸化剤を用いて酸化し、リンカー試薬又は薬剤部分のアミン基と反応しうるアルデヒド又はケトン基を形成させてもよい。生じたイミンシッフ塩基群が安定な結合を形成するか、又は例えば安定アミン結合を形成させるホウ化水素試薬によって、還元されうる。一実施態様では、ガラクトースオキシダーゼ又はナトリウムメタ過ヨウ素酸塩の何れかによるグリコシル化抗体の炭水化物部分の反応により、薬剤(Hermanson, Bioconjugate Techniques)上の適当な基と反応することができるタンパク質のカルボニル(アルデヒド及びケトン)基が生じうる。他の実施態様では、N末端セリン又はスレオニン残基を含むタンパク質がナトリウムメタ過ヨウ素酸塩と反応して、第一アミノ酸の代わりにアルデヒドの生産を生じる(Geoghegan及びStroh, (1992) Bioconjugate Chem. 3:138-146;米国特許第5362852号)。このようなアルデヒドは、薬剤部分又はリンカー求核基と反応しうる。
【0311】
同様に、薬剤部分上の求核基には、限定するものではないが、反応して、(i)活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメート、及び酸ハロゲン化物;(ii)アルキル及びベンジルハロゲン化物、例えばハロアセトアミド;(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル及びマレイミド基を含むリンカー試薬及びリンカー部分上の求電子基と共有結合を形成することができるアミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボン酸エステル及びアリールヒドラジド基を含む。
【0312】
別法として、抗体及び細胞傷害剤を含有する融合タンパク質は、例えば組換え技術又はペプチド合成により作製されうる。DNAの長さは、コンジュゲートの所望する特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により離間しているか、又は互いに隣接しているコンジュゲートの2つの部分をコードするそれぞれの領域を含みうる。
【0313】
更に他の実施態様では、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために抗体を「レセプター」(例えばストレプトアビジン)にコンジュゲートされ得、ここで抗体-レセプターコンジュゲートが個体に投与され、続いて清澄剤を使用し、循環から非結合コンジュゲートが除去され、細胞傷害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートされる「リガンド」(例えばアビジン)が投与される。
【0314】
抗ヘプシン抗体を使用する方法
本発明は、該治療剤の活性から有益な効果をもたらすことが意図される特定の治療レジメンの一部としてヘプシン抗体の使用を特徴とする。本発明は、様々なステージの様々なタイプの癌を治療するのに特に有用である。
【0315】
癌なる用語は、増殖異常の集合を包含し、限定しないが、前癌性の増殖、良性腫瘍、及び悪性腫瘍を含んでいる。良性腫瘍は、原発部位に局在したままであり、遠隔部位への浸潤能、侵入能、又は転移能を有していない。悪性腫瘍は周辺の他の組織に侵入してそれらの組織を損傷する。悪性腫瘍はまた通常は血流を介して又はリンパ節が位置するリンパ系を介して、原発部位を離れて身体の他の部分へ広がる(転移する)能力を獲得しうる。原発腫瘍は、腫瘍が生じた組織の種類により分類され、転移性腫瘍は、癌細胞が由来する組織タイプによって分類される。時間の経過に伴い、悪性腫瘍の細胞はより異常になって、正常細胞とは外観を異にする。このような癌細胞の外観の変化は腫瘍悪性度と呼ばれ、癌細胞は、高分化型(低悪性度)、中程度に分化型、低分化型、又は未分化型(高悪性度)と記述される。高分化型細胞は、極めて正常な外観を有し、それらの細胞の起源である正常細胞に類似している。未分化細胞は、異常性が高いためにもはやそれら細胞の起源を決定することができない細胞である。
【0316】
癌ステージ分類システムは、解剖学的に癌が如何に遠くまで広がっているかを記述し、同じステージ群において患者に類似の予後及び治療を付与しようとするものである。幾つかの試験を実施することにより、胸部x線、マンモグラフィー、骨スキャン、CTスキャン、及びMRIスキャンのような所定の画像処理試験及び組織診を含む癌のステージ分類を補助することができる。患者の全体的な健康状態を評価し、癌が特定の器官に広がっているかどうかを検出するために、血液検査及び臨床評価もまた使用される。
【0317】
癌のステージ分類を行うために、アメリカ癌合同委員会(American Joint Committee on Cancer)は、最初に癌、特に固形腫瘍を、TNM分類システムを用いて文字により分類している。癌は、文字T(腫瘍の大きさ)、N(触知可能なリンパ節)、及び/又はM(転移)で標記される。T1、T2、T3、及びT4は、原発病巣の増加サイズを記述し;N0、N1、N2、N3は、進行的にリンパ節関与が進んでいることを示し;M0及びM1は遠隔転移の有無を反映させている。
【0318】
全病期分類(Overall Stage Grouping)又はローマ数字式分類(Roman Numeral Staging)としても知られている第2のステージ分類法では、原発病巣の大きさとリンパ節への伝播と遠隔転移の存在を組み合わせて、癌を段階0からIVに分類するものである。このシステムでは、症例は、ローマ数字IからIVにより示される4つのステージにグループ分けされるか、又は「再発性」と分類される。乳癌の腺管上皮内癌又は非浸潤性小葉癌といった幾つかの症例の場合、ステージ0は「上皮内」又は「Tis」と呼ばれる。高悪性度の腺腫もステージ0に分類される。一般に、ステージIの癌は通常は治癒可能である小さく局在化した癌であるが、ステージIVは、通常、手術不可能な癌又は転移性の癌を表わす。ステージII及びIIIの癌は、通常、局所的に進行しており、及び/又は局所的リンパ節の関与を示す。一般に、ステージの番号が大きい程、腫瘍の大きさ、及び/又は近くのリンパ節及び/又は原発腫瘍に隣接する器官への伝播を含め、疾病が広範囲に亘ることを示す。これらのステージは正確に定義されるが、定義は、各種の癌によって異なっており、当業者に知られている。
【0319】
NCIの監視、疫学、及び遠隔成績プログラム(SEER)のような多くの癌の記録では、略式のステージ分類を使用する。このシステムは、全ての種類の癌に使用されている。これは、癌の症例を以下の5つの主要なカテゴリにグループ分けするものである。
上皮内は、それが生じた細胞の層にのみ存在する早期癌である。
限局は、転移の証拠は無く、それが生じた器官に限定されている癌である。
隣接転移は、最初の(原発)部位を越えて近くのリンパ節又は器官及び組織に広がった癌である。
遠隔転移は、原発部位から遠隔器官又は遠隔リンパ節に広がった癌である。
不明は、ステージを示す十分な情報がない症例を記述するために使用される。
【0320】
加えて、原発腫瘍が除去されてから数か月又は数年後に、癌が再発することは珍しくない。可視の腫瘍が全て根絶された後に再発する癌は、再発性癌と呼ばれる。原発腫瘍の領域に再発する疾病は、局所的に再発性であり、転移として再発する癌は遠隔再発と呼ばれる。
【0321】
腫瘍は固形腫瘍であるか、あるいは非固形腫瘍又は軟組織腫瘍でありうる。軟組織腫瘍の例には、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、成人急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、成熟B細胞急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、前リンパ球性白血病、又はヘアリーセル白血病)、あるいはリンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、又はホジキン病)が含まれる。固形腫瘍には、血液、骨髄、又はリンパ系以外の身体組織のあらゆる癌が含まれる。固形腫瘍は、更に、上皮細胞を起源とするものと、非上皮細胞を起源とするものとに分けられる。上皮細胞固形腫瘍の例には、胃腸管、結腸、乳房、前立腺、肺、腎臓、肝臓、膵臓、卵巣、頭頚部、口腔、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門、胆嚢、大陰唇、上咽頭、皮膚、子宮、雄性生殖器、尿路、膀胱、及び皮膚の腫瘍が含まれる。非上皮起源の固形腫瘍には、肉腫、脳腫瘍、及び骨腫瘍が含まれる。腫瘍の他の例は定義のセクションに記載する。
【0322】
幾つかの実施態様では、ここでの患者に対し、例えば治療前、及び/又は治療中、及び治療後に診断検査を行う。一般に、診断検査が実施される場合、治療を必要とする患者から試料を採取することができる。被験者が癌に罹患している場合、試料は腫瘍試料、又はその他の生物学的試料であり得、例えば、限定しないが、血液、尿、唾液、腹水、又は血清及び血漿のような派生物などを含む生物学的流体である。
【0323】
ここにおける生物学的試料は、固定試料、例えばホルマリン固定されパラフィン包埋された(FFPE)試料であるか、又は凍結試料である。
【0324】
mRNA又はタンパク質の発現を決定するための様々な方法は、限定しないが、遺伝子発現プロファイリング、定量的リアルタイムPCR(qRT−PCR)を含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、マイクロアレイ分析、遺伝子発現の連続分析法(SAGE)、MassARRAY、大規模並行シグネチャー配列決定(MPSS)による遺伝子発現解析、プロテオミクス、免疫組織化学(IHC)などを含む。好ましくは、mRNAが定量される。このようなmRNA分析は、好ましくは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の技術を使用して、又はマイクロアレイ分析により実施される。PCRが用いられる場合、PCRの好ましい形態は定量的リアルタイムPcR(qRT−PCR)である。一実施態様では、上記遺伝子のうちの一又は複数の発現は、例えば同じ腫瘍種類の他の試料と比較して、中央値以上である場合に陽性発現とみなされる。中央値発現レベルは、遺伝子発現の測定と本質的に同時に決定することができるか、又は事前に決定されていてもよい。
【0325】
RNA源として固定パラフィン包埋組織を使用する遺伝子発現のプロファイリングの代表的なプロトコールのステップは、mRNAの単離、精製、プライマーの伸張、及び増幅を含み、様々な出版されたジャーナル記事に記載されている(例えば、Godfrey等 J. Molec. Diagnostics 2: 84-91 (2000);Specht等, Am. J. Pathol. 158: 419-29 (2001))。簡単に説明すると、代表的なプロセスは、厚さ約10マイクログラムのパラフィン包埋腫瘍組織の試料を切断することで開始される。ついでRNAを抽出し、タンパク質及びDNAを除去する。RNA濃度の分析後、必要に応じてRNA修復ステップ及び/又は増幅ステップを含ませ、遺伝子特異的プロモーターを用いてRNAを逆転写し、その後PCRを行う。最後に、データを分析することにより、試験した腫瘍試料において特定された特徴的な遺伝子発現パターンに基づいて患者が受けることができる最善の治療オプションを特定する。
【0326】
遺伝子又はタンパク質発現の検出は、直接的に又は間接的に決定することができる。
(直接的に又は間接的に)癌におけるヘプシンの発現又は増幅を決定することができる。様々な診断/予後判定アッセイが、このために利用可能である。一実施態様では、ヘプシン過剰発現は、IHCによって分析することができる。腫瘍生検由来のパラフィン包埋組織切片に対してIHCアッセイを行い、次のようなヘプシンタンパク質染色強度基準と合致させてもよい:
スコア0:染色が観察されないか、又は膜染色が腫瘍細胞の10%未満で観察される。
スコア1+:僅かに/弱く認知できる程度の膜染色が10%を上回る腫瘍細胞に検出される。細胞はその膜の一部においてのみ染色される。
スコア2+:弱いないしは中程度の完全な膜染色が腫瘍細胞の10%を越えて観察される。
スコア3+:中程度から強い完全な膜染色が10%を上回る腫瘍細胞に観察される。
【0327】
幾つかの実施態様では、ヘプシンの過剰発現に関して0又は1+スコアを呈する腫瘍は、ヘプシンを過剰発現しないことを特徴としうるものであるのに対し、2+又は3+スコアを呈する腫瘍は、ヘプシンの過剰発現を特徴としうる。
【0328】
あるいは、又は加えて、FISHアッセイを、ホルマリン固定、パラフィン包埋腫瘍組織について実施し、腫瘍における(ある場合には)ヘプシン増幅の存在及び/又は範囲を決定することができる。
【0329】
ヘプシン活性化は、直接的に(例えば、ホスホ−ELISA試験、又はリン酸化レセプターを検出する他の手段により)、あるいは間接的に(例えば、活性化した下流のシグナル伝達経路成分の検出、レセプター二量体(例えば、ホモ二量体、ヘテロ二量体)の検出、遺伝子発現プロファイルの検出等により、決定することができる。
【0330】
核酸突然変異の検出のための方法は当該技術分野でよく知られている。しばしば、必ずしもそうではないが、突然変異が存在するかどうかの決定のために望ましい量の材料を得るために、試料中の標的核酸が増幅される。増幅技術は当該技術分野でよく知られている。例えば、増幅産物が突然変異があると疑われる特定のアミノ酸配列位置/核酸配列位置を含む限り、対象とするタンパク質をコードする全ての核酸配列を包含してもよいし、包含しなくてもよい。
【0331】
標的核酸を含有する試料は、当該分野でよく知られており、腫瘍の特定のタイプ及び位置に適した方法により、得ることができる。組織バイオプシーはしばしば腫瘍組織の代表的な一片を得るために使用される。あるいは、腫瘍細胞は、関心ある腫瘍細胞を含むことが知られ又は含むと思われる組織/液体の形態で間接的に得ることができる。例えば、肺癌病変の試料は、切除、気管支鏡検査、穿刺吸引、気管支ブラッシングにより、又は痰、胸水又は血液から得ることができる。変異遺伝子又は遺伝子産物は、腫瘍、又は他の体試料、例えば尿、痰又は血清から検出することができる。腫瘍試料における変異標的遺伝子又は遺伝子産物の検出について、上で検討したものと同じ技術を他の体試料に適用することができる。癌細胞は腫瘍から脱落させられ、このような体試料に現れる。このような体試料をスクリーニングすることにより、癌等の疾患に対する簡単な初期診断が達成可能である。また、治療の進行を、変異標的遺伝子又は遺伝子産物についてこのような体試料を検査することにより、更に容易にモニターすることができる。
【0332】
腫瘍細胞に対して組織調製物を富ませる手段は、当該技術分野で知られている。例えば、組織はパラフィン又はクリオスタット切片から単離することができる。また、癌細胞は、フローサイトメトリー又はレーザーキャプチャーマイクロダイセクションにより、正常細胞から分離することができる。これら、並びに正常細胞から腫瘍を分離するための他の技術は、当該技術分野でよく知られている。腫瘍組織が正常細胞で高度に汚染されているならば、変異の検出はより困難でありうるが、但し、混入及び/又は偽のポジティブ/ネガティブな結果を最小にするための技術が知られており、その幾つかは以下に記載される。例えば、試料は、関心ある腫瘍細胞に結合するが、対応する正常細胞には結合しない、又はその逆であることが知られているバイオマーカー(変異を含む)の存在を評価することができる。
【0333】
場合によっては、癌はヘプシンを過剰発現するか又はしない。ヘプシン過剰発現は、(例えば免疫組織化学アッセイ;IHCにより)細胞上に存在するヘプシンのレベルの上昇を評価することにより、診断又は予後判定アッセイにおいて決定することができる。あるいは又は加えて、例えば蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH、1998年10月に公開の国際公開第98/45479号参照)、サザンブロッティング、又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術、例えばリアルタイム定量的PCR(RT-PCR)によって、細胞内のヘプシンコード核酸のレベルを測定することができる。上記のアッセイとは別に、様々なインビボアッセイを熟練技師は利用できる。例えば、場合によっては検出可能な標識、例えば放射性同位体で標識した抗体に患者の体内の細胞を曝し、例えば放射能の外的スキャンによって、又は前もって抗体に曝される患者から採取した生検を分析することによって、患者の細胞に対する抗体の結合を評価してもよい。
【0334】
化学療法剤
本発明の併用療法は、更に、一又は複数の化学療法剤を含みうる。併用投与は、別個の製剤又は単一の医薬的製剤を用いた同時投与又は同時発生的投与と、好ましくは両方(又は全て)の活性剤の生物学的活性が同時に発揮される期間を提供する、何れかの順序での継続的投与とを含む。
【0335】
投与される場合、化学療法剤は、通常、そのような薬剤に既知の用量で投与されるか、又は場合によっては薬剤の併用作用又は代謝拮抗性の化学療法剤の投与に起因する有害な副作用により用量が低減される。このような化学療法剤の調製及び投与計画は、製造者の指示に従って、又は熟練した医師により経験的に決定された通りに、使用されうる。
併用可能な様々な化学療法剤はここに開示される。
【0336】
製剤、投薬量及び投与
本発明で使用される治療剤は、良好な医療行為と一致した様式で、処方され、用量決定され、投与されるであろう。この文脈で考慮される要因には、治療される特定の疾患、治療される特定の被験者、個々の患者の臨床状態、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、組合せられる薬剤の薬物-薬物相互作用、及び医師に知られている他の要因が含まれる。
【0337】
治療用製剤は、任意成分の生理学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定剤と、所望の純度を有する活性成分を混合することにより、当該技術分野で知られている標準的な方法を使用して調製される(Remington's Pharmaceutical Sciences(第20版), A. Gennaro編, 2000, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, PA)。許容可能な担体は、生理食塩水、又はバッファー、例えばホスフェート、シトレート及び他の有機酸;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭化水素;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトール又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばトゥイーン(TWEEN)
TM、プルロニクス(PLURONICS)
TM又はPEGを含む。
【0338】
場合によっては、しかし好ましくは、製剤は薬学的に許容可能な塩、好ましくは塩化ナトリウムを、好ましくはおよそ生理学的濃度で含む。場合によっては、本発明の製剤は、薬学的に許容可能な保存料を含みうる。幾つかの実施態様では、保存料濃度は、典型的にはv/vで0.1〜2.0%の範囲である。適切な保存料には、製薬技術分野でよく知られているものが含まれる。ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、メチルパラベン、及びプロピルパラベンが、好ましい保存料である。場合によっては、本発明の製剤は0.005から0.02%の濃度で薬学的に許容可能な界面活性剤を含むことができる。
【0339】
ここでの製剤は、治療される特定の徴候に応じて、必要ならば一を越える活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものをまた含みうる。このような分子は、意図される目的に対して効果的な量で組み合わされて適切に存在する。
【0340】
また、活性成分は、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中又はマクロエマルションにおいて、例えばコアセルベーション技術により、又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに包括されていてもよい。このような技術は、上掲のRemington's Pharmaceutical Sciencesに開示されている。
【0341】
徐放性調製物を調製することもできる。徐放性調製物の適切な例には、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが含まれ、このマトリクスは、例えばフィルム又はマイクロカプセル等の成形品の形態である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能なミクロスフェア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸等のポリマーは分子を100日に渡って放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短時間でタンパク質を放出する。カプセル化された抗体が身体内に長時間残ると、それらは37℃の水分に露出されることにより変性又は凝集し、その結果、生物活性の喪失及び起こりうる免疫原性の変化をもたらす。合理的な方法は、関与する機構に応じて安定化について工夫することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換を通した分子間S-S結合形成であると発見された場合、安定化はスルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適切な添加剤の使用、及び特定のポリマーマトリクス組成物の開発によって達成されうる。
【0342】
本発明の治療剤は、既知の方法、例えばボーラス、もしくは一定時間にわたる連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液包内、くも膜下腔内、経口、局所的、又は吸入経路により、ヒトの患者に投与される。エクスビボストラテジーを治療用途に使用することもできる。エクスビボストラテジーは患者から得られた細胞を、ヘプシンアンタゴニストをコードするポリヌクレオチドで形質移入又は形質導入することを含む。形質移入又は形質導入された細胞はついで患者に戻される。細胞は、広範なタイプの何れも可能であり、造血性細胞(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、T細胞又はB細胞)、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、又は筋細胞を含むが、これに限定されない。
【0343】
例えば、ヘプシンアンタゴニストが抗体である場合、抗体は、非経口、皮下、腹腔内、肺内、及び鼻腔内、及び局所免疫抑制治療が望まれるならば、病巣内投与を含む任意の適切な手段によって投与される。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与を含む。また、抗体は、パルス注入によって、特に減少用量の抗体で適切に投与される。好ましくは、投薬は、投与が短期か慢性であるかどうかに部分的に依存して、最も好ましくは静脈内又は皮下注射のような、注射により与えられる。
【0344】
他の例では、ヘプシンアンタゴニスト化合物は、局所的、例えば疾患又は腫瘍の位置が可能であるならば、直接注射により投与され、注射は定期的に繰り返すことができる。また、局所的な再発又は変異を防止又は低減するために、ヘプシンアンタゴニストは、被験者に全身的に、又は腫瘍細胞、例えば腫瘍の外科的切除後の腫瘍又は腫瘍床に直接、送達させることができる。
【0345】
典型的には組合せられる治療剤の投与は、定められた期間(通常は、選択された組合せに応じて、数分、数時間、数日又は数週間)にわたって実施される。併用療法は、逐次的方法における、これらの治療剤の投与を包含することが意図されており、つまり、各治療剤が異なる時間で投与され、並びにこれらの治療剤、又は少なくとも2の治療剤の同時方法での投与がなされる。
【0346】
治療剤は、同じ経路又は異なる経路で投与することができる。例えば、組合せにおいて、抗ヘプシン抗体は静脈注射により投与されうるが、組合せにおける化学療法剤は経口的に投与されうる。あるいは、特定の治療剤に応じて、例えば、双方の治療剤が経口的に投与され得、又は双方の治療剤が静脈注射により投与されうる。また、治療剤が投与される順序は、特定の薬剤に応じて変化する。
【0347】
例えば、一又は複数の別個の投与を行うか、又は連続注入を行うかに関係なく、疾病の種類及び重症度に応じて、約1μg/kgから100mg/kgの各治療剤が患者に投与される初回の候補用量である。典型的な一日当たりの用量は、上述の要素に応じて、約1μg/kgから約100mg/kg又はそれ以上の範囲であるかもしれない。数日間以上に亘って反復投与する場合、状態に応じて、上述の方法によって測定した場合に癌が治療されるまで、治療を持続する。しかしながら、他の投与計画も有用でありうる。
【0348】
本出願は、遺伝子治療によるヘプシン抗体の投与を考慮する。例えば、細胞内抗体を生じせしめるための遺伝子治療の使用に関して、1996年3月14日に公開された国際公開第96/07321号を参照。
【0349】
製造品
本発明の他の態様では、上述の疾患の治療、予防及び/又は診断に有用な物質を含む製造品が提供される。該製造品は容器と容器上又は容器に付随したラベル又はパッケージ挿入物を含む。適切な容器は、例えばビン、バイアル、シリンジ等を含む。容器は、ガラス又はプラスチックのような様々な材料から形成されうる。容器は、症状の治療、予防及び/又は診断に効果的な、それ自身であるか又は他の組成物と併用される組成物を収容し、滅菌のアクセスポートを有しうる(例えば容器は皮下注射針が突き通すことが可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルでありうる)。組成物中の少なくとも一種の活性剤は本発明の抗体である。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が、例えば癌のような選択した症状の治療のために使用されることを示す。更に、製造品は、(a)組成物をそこに収容し、その組成物が本発明の抗体を含む第一の容器と;(b)組成物をそこに収容し、その組成物が更なる細胞傷害性薬剤を含む第二の容器とを含みうる。本発明のこの実施態様における製造品は、第一及び第二の抗体組成物を特定の症状、例えば癌を治療するのに使用することができることを示しているパッケージ挿入物を更に含みうる。あるいは、もしくは付加的に、製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を含む第二の(又は第三の)容器を更に含んでいてもよい。更に、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジを含む、商業上及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
【0350】
次は本発明の方法及び組成物の実施例である。一般的な説明を上に与えたので、様々な他の実施態様を実施することができることが理解される。
【実施例】
【0351】
材料及び方法
試薬及びタンパク質: 合成パラ−ニトロアニリド基質S2765(=DiaPharma FXa 基質)、S2266、S2288、S2366、S2444はDiaPharma (Westchester, OH)から、クロモザイムTHはRoche Diagnostics(Indianapolis, IN)から、スペクトロザイムfIXa(登録商標)(#299)及びスペクトロザイム(登録商標)FVIIaはAmerican Diagnostica (Greenwich, CT)から得た。3,4−ジクロロ−イソクマリン、BSA及びTween−20はSigma-Aldrichから得た。
【0352】
プラスミン及びXIa因子は、Haematologic Technologies Inc.(Essex Junction, VT)から、血漿カリクレンはCalbiochem(La Jolla, CA)から、VII因子及びXIIa因子はEnzyme Research(South Bend, IN)から、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)はAmerican Diagnosticaから、プロ−uPAはFitzgerald Industries Int.(Concord, MA)から得た。ラットラミニンはMillipore (Temecula, CA)から得た。ヘプシン(ヒト)、マトリプリターゼ、マラプシン、肝細胞増殖因子活性化因子(HGFA)、プロ肝細胞増殖因子(プロ−HGF)、HGFA−インヒビター−1(HAI−1)及びHAI−2から誘導されるKunitzドメインインヒビター−1(KD1)は過去に記載されているようにして組換え的に発現させ、精製した(Kirchhofer等, 2003;Kirchhofer等, 2005;Li等, 2009;Moran等, 2006;Peek等, 2002;Shia等, 2005)。コントロール抗体として我々は抗体ファージディスプレイから産生させた抗HGFA Fab又はIgG(Fab40、Fab58、Fab75、IgG75)を使用した(Ganesan等, 2009;Wu等, 2007)。
【0353】
M13−KO7ヘルパーファージはNew England Biolabsから得た。マキシソープイムノプレートのプレートはNalgen NUNC International (Naperville, IL)から得た。Dynabeads(登録商標)MyOneストレプトアビジンはInvitrogen (Carlsbad, CA)から得た。3,3’,5,5’-テトラメチル-ベンジジン/H
2O
2(TMB)ペルオキシダーゼ基質はKirkegaard and Perry Laboratories, Incから、ニュートラアビジン及びストレプトアビジンはPierce Biotechnology, Incから得た。
【0354】
プロスタシンのクローニング、発現、及び精製: C末端フラッグ−タグを有するヒトプロスタシン(Ala
33−Leu
321)の細胞外ドメインをT.ni細胞を用いたバキュロウイルス発現系を使用して発現させた。72時間のインキュベーション後、上清を集め、清澄にした培地を抗Flag M2抗体−アガロースカラム(Sigma)に充填した。結合したタンパク質を100mMのグリシン,pH3.0で溶離させ、1MのTris,pH8.0で直ぐに中和させた。プロスタシンの得られたチモーゲン型を室温で16時間、組換えマトリプリターゼを用いて活性化させた。その後、活性化された二本鎖プロスタシンを、Ni−NTAカラムで(His)
8−タグ(配列番号59として開示された「His8」)マトリプリターゼを除去することにより精製した。プロスタシンは、S−200カラムを使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって更に精製した。
【0355】
ヘプシンのクローニング、発現、及び精製: C末端His−タグを有するマウスヘプシン(Ser
45−Pro
416)の細胞外ドメインを、ヒトヘプシン(Moran等, 2006)と同様の条件下で、T.ni細胞を用いたバキュロウイルス発現系を使用して発現させた。72時間のインキュベーション後、上清を集め、清澄にした培地をNi−NTAカラム(Qiagen)に充填し、これを、50mMのTris−HCl,pH8.0、300mMのNaClを具くむバッファーで事前平衡化させた。結合したタンパク質を、50mMのTris−HCl,pH8.0、300mMのNaCl及び250mMのイミダゾールを含むバッファーで溶離させた。
【0356】
MSP及びKD1のクローニング、発現、及び精製: 組換えMSPは、記載されたようにして(Wahl等, 1997)チャイニーズハムスター卵巣細胞で発現させた。KD1は、記載されたようにして(Shia等, 2005)発現させ、精製した。
【0357】
Fabファージディスプレイのためのライブラリー構築: YSGXライブラリーと命名したライブラリーを、Fab−ファージディスプレイ(pF1359)のファージミドを使用して過去に記載されているようにして((Fellouse等, 2007)のLib D )構築した。ライブラリーの多様性はおよそ2×10
10である。
【0358】
ファージディスプレイ抗ヘプシンFabsの選択及び特徴付け: ファージディスプレイ実験に対して、我々は、ビオチン化ヘプシン(=ビオチン−ヘプシン)及び3,4−ジクロロ−イソクマリン(DCI)との複合体としてビオチン化ヘプシン(=ビオチン−ヘプシン:DCI)を使用した。ヘプシンは、製造者の指示書に従ってスルホ−NHS−LC−ビオチンキット(Pierce, カタログ#21327)を使用してビオチン化した。ビオチン化ヘプシンの幾つかを使用して、100μMのDCIと共にインキュベーションし、次のパニング実験中にこのDCI濃度を維持することによってビオチン−ヘプシン:DCI複合体を形成した。DCIを用いた前の実験では、25−50μMのDCIへのヘプシンの40分の曝露が、S2765基質を用いた酵素アッセイにおいてヘプシン活性を完全に阻害したことが示されていた。パニングの最初の実験では、10μgのビオチン−ヘプシン又はビオチン−ヘプシン:DCIを、それぞれ100μMのDCIの不存在下又は存在下で4℃で1.5時間、1×10
13pfu/mlの濃度で1mlのYSGXライブラリーと共にインキュベートした。標的に結合したファージを、100μlのDynabeads(登録商標)MyOneストレプトアビジンを用いて15分間捕捉した。結合したファージを0.1MのHClで溶離させ、直ぐに中和し、ついで標準的なプロトコール(Sidhu等, 2000)に従って増幅させた。第二回の実験から先は、2μgのビオチン−ヘプシン又はビオチン−ヘプシン:DCIを、それぞれ100μMのDCIを伴わないで又はこれを伴って、400μlの増幅ファージと共に4℃で1.5時間インキュベートした。ビオチン−ヘプシン又はビオチン−ヘプシン:DCIに結合したファージを、ニュートラアビジン又はストレプトアビジン(実験間で交互)を被覆したマキシソープイムノプレート(NUNC)で15分間捕捉し、ブロッキングバッファー(PBS,0.5%(w/v)BSA)でブロックした。5回の選択後、96ウェル形式で増殖させた個々のクローンからファージを製造し、培養上清をPBS、0.5%(w/v)のBSA、0.1%(v/v)のTween20(PBTバッファー)で3倍に希釈した。希釈したファージ上清を、ニュートラアビジン被覆384ウェルマキシソープイムノプレート(NUNC)で固定したビオチン−ヘプシン又はビオチン−ヘプシン:DCIと共に1時間インキュベートした。TプレートをPBS、0.05%(v/v)Tween20(PTバッファー)で6回洗浄し、西洋わさびペルオキシダーゼ/抗M13抗体コンジュゲート(PBTバッファー中1:5000希釈)(Pharmacia)と共に30分インキュベートした。プレートをPTバッファーで6回、PBSで2回洗浄し、3,3’,5,5’−テトラメチル−ベンジジン/H
2O
2ペルオキシダーゼ基質(Kirkegaard & Perry Laboratories)で15分展開させ、1.0MのH
3PO
4でクエンチし、吸光度を450nmで分光光度的に測定した。
【0359】
単一ポイントファージ競合ELISAを使用して、KD1が結合するヘプシンの同じエピトープに結合するファージディスプレイFabを同定した。個々のクローンを96ウェル形式で増殖させ、培養上清を、200nMのKD1と共に又はこれなしでPBTバッファーで5倍に希釈し、ニュートラアビジン被覆384ウェルマキシソープイムノプレート(NUNC)に固定したビオチン−ヘプシンと共に1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、結合したファージを、上述のようにして抗M13−HRPによって検出した。各クローンについて、200nMのKD1の不在下又は存在下でのA
450の比を計算した。2を越える比を持つあらゆるクローンをKDIと同様のエピトープへのターゲティングとして考慮した。そのようなクローンをKD1を用いた綿密なファージ競合ELISAに供し、一連の濃度のKD1(10μMから開始,1:3段階希釈)を使用してヘプシンへ結合したファージディスプレイFabと競合させた。
【0360】
抗ヘプシンFab25及びIgG25発現及び精製: 一般に、この出願を通して、抗体25のIgG型は接頭辞Abで示され、抗体25のFab型は接頭辞Fabで示される。停止コドンをFab25をコードするファージミド上の遺伝子3と重鎖の間に導入した。得られたファージミドを大腸菌株34B8に形質転換した。単一コロニーを、50μg/mlのカルベニシリンを補填した30mlのLB培地中で37℃で一晩増殖させた。5mlの培養物を、カルベニシリン(50μg/ml)を補填した500mlの完全C.R.A.P.培地(1リットルにする:3.57g(NH
4)
2SO
4、0.71gのクエン酸Na-2H
2O、1.07gのKCl、5.36gの酵母抽出物、5.36gのHycase SF。872mlまで脱イオン水を加える。pHをKOHで7.3に調整。オートクレーブ。55℃に冷却し、110mlの1MのMOPS(pH7.3)、11mlの50%グルコース及び7mlの1MのMgSO
4)に播種し、30℃で24時間増殖させた。Fab25タンパク質を、プロテインAアガロース樹脂を使用して精製した。
【0361】
選択されたFabの軽鎖及び重鎖の可変ドメインを、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞における一過性発現のためにヒト軽鎖又は重鎖(ヒトIgG1)定常ドメインを含むpRK5ベースプラスミド中にクローニングした。IgG25タンパク質をプロテインAアガロースクロマトグラフィーの使用によって精製した。
【0362】
合成基質での酵素アッセイ: Fab25、IgG25、コントロールFab、又はコントロールIgGを、室温で40分間、Hepesバッファー(20mMのHepes,pH7.5,150mMのNaCl、5mMのCaCl
2、0.01%のTriton X−100)中でヘプシン(ヒトヘプシンに対して1nM、マウスヘプシンに対して2nM)と共にインキュベートした。3,4−ジクロロ−イソクマリン(DCI)を用いた実験では、ヘプシン(1nM)を、0.5%のDMSOを含むHepesバッファー中でDCIと共に40分間、インキュベートした。S2765を加え(0.2mMの最終濃度)、405nmでの吸光度の増加の線形速度を動態マイクロプレートリーダー(Versamax, Molecular Devices, Sunnyvale, CA)で測定した。データは酵素活性比(v
i/v
o)として表し、4パラメータ回帰曲線フィッティングプログラム(Kaleidagraph バージョン3.6, Synergy Software)にフィットさせてIC
50値を決定した。値は3回の独立した実験の平均±SDである。Fab25及びIgG25に対するK
iapp値は、データを密接結合阻害システムの式にデータをフィットさせて計算した(Morrison, 1969;Olivero等, 2005)。
【0363】
Fab25特異性を調べるために、9のトリプシン様セリンプロテアーゼのパネルを、Hepesバッファー中で40分間、1μMのFab25と共にインキュベートした。適切な発色性基質を加え、405nmでの吸光度の増加の線形速度を動態マイクロプレートリーダーで測定した。使用された各酵素と発色性基質の濃度は次の通りであった:1nMのヘプシン−0.5mMのS2765、0.5nMのマトリプリターゼ−0.5mMのS2765、5nMのプロスタシン−0.5mMのS2765、2nMのプラスミン−0.5mMのS2366、2nMの血漿カリクレイン−0.5mMのS2366、0.5nMのXIa因子−0.5mMのS2366、5nMのFXIIa−0.5mMのS2288、5nMのuPA−0.5mMのS2444、50nMのマラプシン−0.2mMのSpectrozyme(登録商標)FVIIa、10nMのHGFA−0.2mMのSpectrozyme(登録商標)FVIIa。データは酵素活性比(v
i/v
o)として表し、3回の独立した実験の平均±SDとした。
【0364】
全てP1 Arg残基を有する市販のpNA基質のパネルを使用して、Fab25によるヘプシン阻害を調べた。8つの基質はS2765、S2266、S2288、S2366、S2444、Chromozym TH、Spectrozyme fIXa及びSpectrozyme FVIIaであった。Fab25及びコントロールFabの濃度を100nMに固定したことを除いて、アッセイを上述のようにして実施した。基質の濃度は0.5mMであった。データは未阻害活性(Fabなし)の阻害パーセントとして表し、4回の独立した実験の平均±SDである。
【0365】
高分子基質を用いた酵素アッセイ:ヘプシン媒介プロ−uPA活性化を測定するために、Fab25をHBSAバッファー(20mMのHepes,pH7.5、150nMのNaCl、5mMのCaCl
2、0.5mg/mlのBSA)で段階希釈し、室温で35分間、ヘプシンと共にインキュベートした。酵素反応はプロ−uPAの添加により開始させた。反応混合物中のヘプシン及びプロ−uPAの濃度はそれぞれ0.5nM及び100nMであった。45秒間隔で、50μlのアリコートを、150μl/ウェルの停止試薬HAI−2(667nM)を含む96ウェルプレートに移した。S2444(0.5mM)の添加後、405nmでの吸光度の増加の線形速度を動態マイクロプレートリーダーで測定した。データは酵素活性比(v
i/v
o)として表し、4パラメータ回帰曲線フィッティングプログラム(Kaleidagraph)にフィットさせてIC
50値を決定した。
【0366】
VII因子活性化アッセイでは、ヘプシンをHepesバッファー中で5分間Fab25又はコントロールFabと共にインキュベートした後、VII因子を添加した。反応混合物中の濃度は、50nMのヘプシン、500nMのFab及び8μMのVII因子。37℃での0.5時間及び2時間のインキュベーション後、アリコートを取り、還元条件下でSDS−PAGE(4−20%勾配のゲル,InVitrogen)により分析した。ゲルをSimplyBlue
TM(InVitrogen)で染色した。
【0367】
ヘプシンによるFab25のインビトロタンパク分解プロセシング: Fab25(3μM)を、低pHバッファー(100mMのMes(pH6.0)、150mMのNaCl)又は高pHバッファー(50mMのTris−HCl(pH8.0)、150mMのNaCl)の何れかにおいて室温で24時間、10nMのヘプシンと共にインキュベートした。反応は、20uLの2X−試料バッファー(β−メルカプトエタノールを伴うか伴わないで)の添加により停止させ、95℃で5分間、煮沸させた。タンパク質分解は、クーマシーブリリアントブルーで染色した4−20%(w/v)のポリアクリルアミド勾配ゲルでのゲル移動度シフトによってモニターした。
【0368】
細胞遊走アッセイ: 細胞遊走アッセイを、24ウェル、8.0μm孔径のFluoroBlok(商標)透過性支持体(BD Biosciences, Bedford, MA)を使用して、過去に記載されたようにして(Tripathi等, 2008)実施した。フィルターの下側に未処理又は処理したラットラミニン(1μg/ml)を被覆した。ラミニンをヘプシン又はヘプシン−Fab25複合体又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)と共に4℃で一晩、共インキュベートした。ついで、インサートをスーパーブロックバッファーで1時間ブロックした。DU145ヒト前立腺癌細胞をトリプシン処理し、無血清培地に再懸濁させ、無血清培地で2回洗浄し、細胞(20000)をインサートの上部チャンバーに播種した。5%のCO
2及び37℃での5時間のインキュベーション後、上部フィルターに残っている細胞を綿棒を使用して優しく拭い取り、インサートをPBSで優しく洗浄した。下方チャンバーに遊走した細胞を500μlのメタノールで30分間固定し、20分空気乾燥させ、500μlの10μMのYO−PRO−I(Invitrogen, Carlsbad, CA)で10分間染色した。プレートをPBSで洗浄し、蛍光を、485nmの励起波長と555nmの発光波長を使用してプレートリーダー(Spectramax M5, Molecular Devices, Sunnyvale, CA)で測定した。ついで、プレートを、10×の対物レンズを備えたCCDカメラに連結した倒立顕微鏡(IX81, Olympus)を用いて画像化した。
【0369】
ヘプシンに対するFab25結合: ストレプトアビジンSBCバイオセンサーチップを備えたOctet−REDシステムをForteBio(Menlo Park, CA)から購入した。実験開始前に、センサーチップを、50mMのHepes(pH7.5)、150mMのNaCl及び0.05%のtween−20を含むバッファー中において25℃で15分間、予め湿潤させた。ビオチン化ヘプシン(7.5μg/ml)を、1000rpmで撹拌しながらストレプトアビジンセンサーに5分間捕捉させた。センサーをバッファーで簡単に洗浄した後、Fab25(200nMから始めて2倍段階希釈)とバッファーコントロールを含む試料ウェルにそれらを浸漬した。会合を10分間モニターし、次に解離を30分続けた。データは、Octet−RED解析ソフトウェアを使用して1:1結合モデルにフィットさせた。
【0370】
LnCap細胞における細胞表面発現ヘプシンによるプロ−MSP活性化: LnCaP−34細胞を記載されたようにして(Moran等, 2006)生成し、ヘプシンを安定に過剰発現させ、親LnCaP細胞と匹敵する比較的低いレベルで内因性ヘプシンのみを発現するLnCaP−17細胞と比較して、5倍の増加したヘプシン細胞表面発現及び3倍の増加したヘプシン酵素活性を生じた。24ウェルプレートで培養された集密的なLnCaP−17及びLnCap−34細胞を無血清RPMI−1640培地で洗浄し、無血清RPMI−1640培地中において37℃で15分間、単独の又は異なった抗ヘプシン阻害剤(1μMの抗ヘプシン抗体Fab25/1μMのKD1/1μMのAc−KQLR−cmk(配列番号12として開示した「KQLR」))と共にインキュベートした後、
125I−標識プロ−MSP(25μg/ml)を添加した。37℃で3時間のインキュベーション後、アリコートを取り除き、SDS−PAGE(4−20%の勾配ゲル)(Invitrogen, Carlsbad, CA)によって分析し、ついでX線フィルムに露光した。
【0371】
LnCap細胞における細胞表面発現ヘプシンによるプロ−HGF活性化: 24ウェルプレートで培養された集密的なLnCap−34細胞を無血清RPMI−1640培地で洗浄し、無血清RPMI−1640培地中において37℃で15分間、単独の又は組換えヘプシン(10nM)と共に又は異なった濃度のFab25(20nM−0.15nM)と共にインキュベートした後、
125I−標識プロ−HGF(25μg/ml)を添加した。37℃で3時間のインキュベーション後、アリコートを取り除き、SDS−PAGE(4−20%の勾配ゲル)(Invitrogen, Carlsbad, CA)によって分析し、ついでX線フィルムに露光した。
【0372】
表面プラズモン共鳴によるヘプシンへのAb25の結合: 表面プラズモン共鳴測定をBIAcore(商標)−3000機器(GE Health Care, NJ)で実施して、Ab25の結合親和性を決定した。ウサギ抗ヒトIgGをCM5バイオセンサーチップに化学的に固定し(アミンカップリング)、Ab25を捕捉しておよそ350応答単位(RU)を与えた。動態測定では、活性ヘプシンの2倍段階希釈物(1nMから500nM)を30μl/分の流量で25℃でHBS−Pバッファーで注入した。結合速度(k
a)及び解離速度(k
d)を、単純一対一ラングミュア結合モデル(BIA-Evaluation)を使用して得て、平衡解離定数(K
D)を計算した(k
d/k
a)。速い動態のため、定常状態測定を使用して、Ab25とのプロ−ヘプシンの親和性を決定した。プロ−ヘプシンの2倍段階希釈物(195nMから100mM)を捕捉抗体(Ab25)センサーチップに注入し、最大結合(R
max)を達成し、定常状態平衡に到達させた。R
eqの値はBIA−Evaluationを使用して計算して、C(プロ−ヘプシン濃度)に対して個々にプロットし、K
Dを決定した。
【0373】
等温滴定熱量測定: TC実験をITC
200機器(GE healthcare)で実施した。Fab25及びヘプシンを、50mMのHEPES(pH7.5)及び150mMのNaClを含むバッファーを使用して、サイズ排除クロマトグラフィーカラム(Superdex S200, GE healthcare)で別個に精製した。試料細胞(204μl)にヘプシン(14μM)を充填し、シリンジ中のFab25濃度は138μMであった。滴定実験は、典型的には、それぞれ2μL体積と180秒期間の20の注入からなり、添加間に3分の間隔がある。撹拌速度は1000rpmであった。生データを統合し、非特異的熱に対して修正し、濃度に対して正規化し、単一セットの同一の結合部位を仮定する1:1結合モデルに従って分析した。(等温滴定曲線を登録し、ITC機器と共に提供されたORIGINソフトウェアを使用して分析した。データを統合して滴定曲線を提供し;非線形最小二乗フィットを使用して、結合定K
A、結合熱(ΔH)、及び結合の化学量論を曲線から抽出した。
【0374】
結果/考察
ヘプシン酵素活性をブロックする抗ヘプシン抗体を同定するために、我々は、阻害剤なしでのビオチン化ヘプシンに対して(ビオチン−ヘプシン)、またDCIと複合体化されたビオチン化ヘプシン(ビオチン−ヘプシン:DCI)に対して溶液ソーティングを用いた。DCIは、触媒性Ser195及びHis57(キモトリプシノーゲン番号付け)と共有的モノアシル又はジアシル付加物を形成することによりS1ポケットを占有するメカニズムベースのセリンプロテアーゼ阻害剤である(
図9A)(Powers等, 1989)。D因子:DCI複合体(PDBコード1DIC)の結晶構造に基づくヘプシン:DCI複合体の分子モデル(Cole等, 1998)は、DCI阻害剤の芳香環がS1ポケットを占有するであろうことを示していた。我々の過去の知見(Wu等, 2007)は、我々のFabファージディスプレイライブラリーから誘導された機能遮断抗HGFA抗体がS1ポケットを占有しないことを示していた。従って、ヘプシン結合DCIは抗体結合を妨害しない場合があるが、活性部位立体構造に対して有益な影響を与え、抗体との相互作用に好ましいものとなる。トリプシン様セリンプロテアーゼの活性部位は幾つかの本来的に移動性のループ(「活性化ドメイン」)(Huber及びBode, 1978)によって形成される。特に、220−ループがS1ポケットの一部を形成し、幾つかのセリンプロテアーゼで様々な立体構造状態を採用しうる(Johnson等, 2005;Shia等, 2005;Spraggon等, 2009;Wilken等, 2004)。アポ構造のみがそのような希なループ立体構造を明らかにしたのに対して、活性部位阻害剤との共結晶構造が、最もありそうには阻害剤により与えられる安定化力のために適切に形成された活性部位を示した(Arni等, 1994;Shia等, 2005;Spraggon等, 2009)。ヘプシンアポ構造は知られておらず、全ての発表されたヘプシン構造は活性部位阻害剤を含む共結晶構造である(Herter等, 2005;Somoza等, 2003)。従って、我々は、DCIによるS1ポケットの占有が潜在的なループの可撓性に安定化力を与え、抗体認識に好ましいものとしうる。酵素アッセイは、20μMを越えるDCI濃度が40分のインキュベーション時間後に完全なヘプシン阻害を示した(
図9)。従って、ビオチン化ヘプシン:DCI複合体に対するファージソーティング実験を100μMのDCIの存在下で実施した。
【0375】
YSGXライブラリー(Fellhouse等, 2007)と命名された相補性決定領域(CDR)に限られた化学的多様性を有する必要最低限度の合成抗体ライブラリーを使用して、溶液ソーティングによりヘプシンに対する阻害性抗体を検索し、そこでは、ビオチン−ヘプシン又はビオチン−ヘプシン:DCI複合体をファージディスプレイFabライブラリーと共にインキュベートした。ビオチン−ヘプシン:DCIに対するパニングは、HpsFab25(「Fab25」とも呼ばれる)と命名された一つのヘプシン結合クローンを生じ、これが5回の選択後に優性になった。Fab25のHVR配列を
図1に示す。HpsFab25のCDR−H3は非常に長く(21残基)、HpsFab25は3つのLys残基を含んでいた。
【0376】
Fab25結合が、ヘプシン活性部位に結合するヘプシン阻害剤であるKD1によって阻害されたかどうかを試験するためにElisa実験を実施した。
図10に示されるように、KD1が濃度依存的な形でヘプシンへのFab25−ファージ結合を阻害しており、Fab25がヘプシンの活性部位領域又はその近くに結合し、よって酵素活性を妨害しうることを示唆している。
【0377】
ヒト及びマウス活性を阻害するFab25の能力を、合成ヘプシン基質S2765を使用して試験した。
図11に示されるように、Fab25は濃度依存的な形でヒト及びマウスヘプシン活性を阻害し、試験した最も高い濃度で完全な阻害に達した。計算されたK
iappはヒトヘプシンに対して4.1±1.0nM(n=3)、マウスヘプシンに対して329±51nM(n=3)であった。IgG25での更なる実験は、それがヒトヘプシンを11.3±1.7nM(n=3)のK
iappで阻害する一方、コントロールIgGは効果がなかった(データは示さず)ことを示している。その結果は、Fab25がマウスヘプシンよりも葯0倍より強力にヒトヘプシンを阻害したことを示している。これは、抗体結合部位がマウスヘプシンに完全には保存されていないことを示唆している。マウスヘプシンのプロテアーゼドメインがヒトヘプシンと比較して挿入も欠失も有していないので、Fab25の減少した効力は、おそらくFab25との相互作用に重要であるアミノ酸変化のためであった。
【0378】
ヒトヘプシンに対するFab25の結合親和性はOctet RED分析を使用して決定した。Kdは2.55+/−0.45nMであった。
【0379】
Fab25の特異性は、それがトリプシン様セリンプロテアーゼのパネルの酵素活性を阻害したかどうかを問うことによって調べた。トリプシン様セリンプロテアーゼのパネルはヘプシンの最も近いプロテアーゼドメインホモログの幾つか、例えば血漿カリクレイン、プロスタシン、マラプシン及びプラスミンを含んでいた。結果(
図12)は、Fab25が、ヘプシンに対して決定されたK
iapp値よりも250倍大きい濃度で調べたセリンプロテアーゼの酵素活性に影響を及ぼさなかったので、ヘプシンに対して排他的な特異性を有していたことを証明している。
【0380】
プロ−uPA及びVIII因子のヘプシン媒介プロセシングに対するFab25の効果を測定した。
図13Aに示されるように、Fab25は、pNAアッセイにおけるその効力に匹敵した3.3±0.4nM(n=3)のIC
50値でプロ−uPAに対するヘプシン活性を阻害した。100nMを越えるFab濃度では、阻害は完全で、VII因子活性化アッセイでの強い阻害に匹敵した(
図13B)。VII因子はヘプシンには比較的不良な基質で、アッセイでは高ヘプシン濃度を必要とする(50nM)。従って、たとえFab25を500nMで使用したとしても、これは、プロ−uPA活性化実験(600:1までの比)と比較して比較的低いFab25:ヘプシン比(10:1)を生じたが、これは拡張された2時間の実験中の阻害が完全ではなかったことを説明しうる。
【0381】
ヘプシンはP1 Arg後で基質を優先的に切断するが(Herter等, 2005)、P1 Lysで基質をまた認識する(Moran等, 2006)。従って、我々は、ヘプシンが、3つのLys残基を含んでおり通常は長いFab CDR−H3ループを切断しうる可能性を考えた。抗マトリプリターゼ抗体E2での最近の研究から先行例があり、これは、長いCDR−H3ループにおいてP1−Arg残基後のマトリプリターゼにより切断を受けた(Farady等, 2008)。従って、Fab25を異なったpH条件下で長い期間ヘプシンに曝露させた。Fab25は非還元下で50kDaバンドとして、還元条件下で25kDaバンドとして遊走し、低分子量分解産物は特定されなかった(
図14)。従って、Fab25は、長い期間ヘプシンに曝露されたときヘプシンタンパク質分解に耐性があった。この結論は、ビオチン−ヘプシン:DCI複合体がS1ポケットの外側に結合するファージディスプレイFabの選択を支持するという我々の仮定と一致している。
【0382】
ラミニンはヘプシンに対する基質であることが最近樹立された(Tripathi等)。その研究はまたヘプシンによるラミニンの開裂が前立腺癌細胞株DU145の遊走を生理学的に亢進させうることを示唆していた。我々はFabがDU145細胞のラミニン依存性遊走を阻害するかどうかを調べた。この実験の結果(
図15)は、Fab25がヘプシンのタンパク分解性活性を効果的に中和し、よってその基質ラミニンのプロセシングを阻止することを証明した。
【0383】
我々はまた合成基質のパネルに対してヘプシン活性を阻害するFabの能力を試験した。表1に示された結果は、Fab25が全てのpNA基質のヘプシン媒介開裂を>90%阻害したことを証明した。pNA基質がヘプシンのS1−S3サブサイトを占有するので、抗体がこれらのサブサイトでの基質相互作用を強く妨害したと結論付けることができる。pNA基質のP2及びP3位置の化学的多様性にかかわらず、全ての基質に対して阻害が>90%であったという知見は、これらの部位における僅かな影響よりもS2及び/又はS3部位での強い抗体効果が主張される。これらの効果が性質的にアロステリックであるか又は直接の立体障害があるかないかがまだ解明される必要がある。更に、Fab25をDCI阻害ヘプシンに対して選択したので、FabがS1ポケットを直接占有することによってヘプシンを阻害する可能性は低い。
【0384】
表1.合成基質パネルに対するヘプシン活性のFab25による阻害。ヘプシンを100nMのFab25又はコントロールFabと共に40分インキュベートした後、8の異なったpNA基質を添加した。初期の線形速度を動態マイクロプレートリーダーで測定し、酵素活性を、Fabを伴わないヘプシン活性の割合として表した。
【0385】
Fab25は、様々な合成及び巨大分子基質を使用する全ての機能的アッセイにおいて一貫してヘプシン活性を>90%阻害することを示した。
細胞表面上の自然に発現されたヘプシンによるプロ−MSPのタンパク分解プロセシングをLnCap−34細胞株(Moran等, 2006)でモニターした。ヘプシンを発現するLnCap−34細胞は
125I−プロ−MSPをプロセシングすることができた(
図16)。3種全てのヘプシン阻害剤(Ac−KQLR−クロロメチルケトン(配列番号12として開示された「KQLR」)、KD1及びFab25)がタンパク分解開裂を効果的にブロックしたので、プロ−MSPプロセシングのタンパク分解活性は主としてヘプシンのためであった。
【0386】
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【0387】
上記発明は理解を明瞭にする目的から例示と実施例によってある程度詳細に説明したが、明細書と実施例は本発明の範囲を限定するものと解してはならない。