【文献】
吉川大和、宮崎香,「5 イオン交換クロマトグラフィー」,タンパク質実験ノート,株式会社羊土社,1996年 9月10日,上巻,P.107-114
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
モノ、ポリ、及び非ペグ化エリスロポエチンを含む溶液を提供する工程、2つの連続した陽イオン交換クロマトグラフィー工程を実施する工程、及び第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程において精製モノペグ化エリスロポエチンを回収する工程を含む、モノペグ化エリスロポエチンの精製のための方法であって、同じ型の陽イオン交換材料を両方の陽イオン交換クロマトグラフィー工程において使用すること、及び2つの連続した陽イオン交換クロマトグラフィー工程が異なる溶出方法を使用して実施されることを特徴とし、2つの連続した陽イオン交換クロマトグラフィー工程が以下の工程:
a)モノ、ポリ、非ペグ化エリスロポエチン、及び低分子量形態の混合物を含む水性緩衝溶液を、モノペグ化エリスロポエチンが第1のカラム中に含まれる陽イオン交換材料に結合するために適切な条件下で、第1の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに適用する工程、
b)モノペグ化エリスロポエチンを、通過流緩衝液のイオン強度の段階的増加を伴う段階溶出方法により第1の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから回収する工程であって、回収された溶液中のモノペグ化エリスロポエチンの割合が、適用された混合物と比較して増加する工程、
c)工程b)の回収されたモノペグ化エリスロポエチンを、前記モノペグ化エリスロポエチンが第2のカラムに含まれる陽イオン交換材料に結合するために適切な条件下で、第2の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに適用する工程であって、第2のカラムに含まれる陽イオン交換材料は第1のカラム中の陽イオン交換材料と同じ型のものである工程、
d)実質的に均質な形態の精製モノペグ化エリスロポエチンを、通過流緩衝液のイオン強度の連続増加を伴う連続溶出方法により、前記第2の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから回収する工程
を含み、
工程d)において、約50mM塩化ナトリウムを含む約pH3.0の濃度約100mMのリン酸カリウム緩衝液で開始し、そして約500mM塩化ナトリウムを含む約pH3.0の濃度約100mMのリン酸カリウム緩衝液で終了する直線勾配を適用することにより第2の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムからモノペグ化エリスロポエチンが回収され、塩化ナトリウム濃度の変化が10カラム容積にわたり直線的である、
方法。
工程b)において、ポリペグ化エリスロポエチンが通過流緩衝液の第1のイオン強度の増加後に回収され、モノペグ化エリスロポエチンが通過流緩衝液の第2のイオン強度の増加後に回収され、そして非ペグ化エリスロポエチンが通過流緩衝液の第3のイオン強度の増加後に回収されることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリペプチド、特にペグ化(PEGylated)エリスロポエチンの精製のために有用なクロマトグラフィー分離方法の分野におけるものである。
【0002】
発明の背景
タンパク質は今日の医学ポートフォリオにおいて重要な役割を果たしている。ヒトへの適用のために、全ての治療タンパク質は別個の基準を満たさなければならない。生物製剤のヒトに対する安全性を確実にするために、産生プロセスの間に蓄積する副産物を特に除去しなければならない。規制仕様を満たすために、1つ以上の精製工程を製造プロセスの後に続けなければならない。とりわけ、純度、処理量、及び収率が、適切な精製プロセスの決定において重要な役割を果たす。
【0003】
微生物タンパク質を用いるアフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインA又はプロテインGアフィニティークロマトグラフィー)、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陽イオン交換(スルホプロピル又はカルボキシメチル樹脂)、陰イオン交換(アミノエチル樹脂)及び混合モードイオン交換、チオフィリック(thiophilic)吸着(例えば、β−メルカプトエタノール及び他のSHリガンドを用いる)、疎水性相互作用又は芳香族吸着クロマトグラフィー(例えば、フェニル−セファロース、アザ−アレノフィリック(aza-arenophilic)樹脂、又はm−アミノフェニルボロン酸を用いる)、金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(例えば、Ni(II)−及びCu(II)−アフィニティー材料を用いる)、サイズ排除クロマトグラフィー、及び電気泳動方法(ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動など)のような様々な方法がタンパク質精製のために十分に確立されておりそして広く使用されている(Vijayalakshmi, M.A., Appl.Biochem.Biotech.75 (1998) 93-102)。
【0004】
例えば、ポリエチレングリコール(PEG)とインターロイキン6(EP0442724)、PEGとエリスロポエチン(WO01/02017)、エンドスタチン及び免疫グロブリンを含むキメラ分子(US2005/008649)、分泌抗体ベースの融合タンパク質(US2002/147311)、アルブミンを含む融合ポリペプチド(US2005/0100991;ヒト血清アルブミンUS5,876,969)、ペグ化ポリペプチド(US2005/0114037)、及びインターフェロン融合物のための共役が報告されている。
【0005】
Necina, R., et al.(Biotechnol. Bioeng. 60 (1998) 689-698)は、高電荷密度を示すイオン交換媒体による細胞培養上清から直接のヒトモノクローナル抗体の捕捉を報告した。WO89/05157において、細胞培養培地を陽イオン交換処理に直接的に供することによる産物免疫グロブリンの精製のための方法が報告されている。マウス腹水からのモノクローナルIgG抗体の1工程精製が、Danielsson, A., et al., J. Immun. Meth. 115 (1988), 79-88により記載されている。勾配洗浄を使用して、1つ以上の混入物から目的のポリペプチドを分離する、イオン交換クロマトグラフィーによりポリペプチドを精製するための方法が、WO2004/024866において報告されている。EP0530447において、3つのクロマトグラフィー工程の組み合わせによりIgGモノクローナル抗体を精製するためのプロセスが報告されている。モノペグ化インターロイキン1受容体アンタゴニストの容易な精製が、Yu, G., et al.によりProcess Biotechnol. 42 (2007) 971-977において報告されている。Wang et al.(Wang, H., et al., Peptides 26 (2005) 1213-1218)は、2工程陽イオン交換クロマトグラフィーによる、E.coliにおいて発現されたhTFF3の精製を報告している。Yun et al.(Yun, Q., et al., J. Biotechnol. 118 (2005) 67-74)は、2つの連続したイオン交換クロマトグラフィー工程によるペグ化rhG−CSFの精製を報告している。WO2007/039436及びWO01/087329は、ポリ(エチレングリコール)基に共有結合したエリスロポエチン及びエリスロポエチンタンパク質を含む液体医薬組成物を報告している。
【0006】
発明の概要
本発明は、モノ、ポリ、及び非ペグ化エリスロポエチンを含む溶液を提供する工程、2つの連続した陽イオン交換クロマトグラフィー工程を実施する工程、及び第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程において精製モノペグ化エリスロポエチンを回収する工程を含む、モノペグ化エリスロポエチンの精製のための方法であって、同じ型の陽イオン交換材料を両方の陽イオン交換クロマトグラフィー工程において使用する方法を含む。
【0007】
方法の一実施態様において、2つの連続した陽イオン交換クロマトグラフィー工程は異なる溶出方法を使用して実施される。別の実施態様において、2つの連続した陽イオン交換クロマトグラフィー工程は以下の工程:
a)モノ、ポリ、及び非ペグ化エリスロポエチンの混合物を含む水性緩衝溶液を、モノペグ化エリスロポエチンが第1のカラム中に含まれる陽イオン交換材料に結合するために適切な条件下で、第1の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに適用する工程、
b)モノペグ化エリスロポエチンを、通過流(through flowing)緩衝液のイオン強度の段階的増加を伴う段階溶出方法により第1の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから回収する工程であって、モノペグ化エリスロポエチンの割合が、工程a)の適用された混合物と比較して増加する工程、
c)回収されたモノペグ化エリスロポエチンを、前記モノペグ化エリスロポエチンが第2のカラムに含まれる陽イオン交換材料に結合するために適切な条件下で、第2の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに適用する工程であって、第2のカラムに含まれる陽イオン交換材料は第1のカラム中の陽イオン交換材料と同じ型のものである工程、
d)実質的に均質な形態の精製モノペグ化エリスロポエチンを、通過流緩衝液のイオン強度の連続増加を伴う連続溶出方法により、前記第2の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから回収する工程
を含む。
【0008】
方法の一実施態様において、陽イオン交換材料は強陽イオン交換材料である。好ましい実施態様において、強陽イオン交換材料はスルホプロピル陽イオン交換材料である。Toyopearl(登録商標)SP 650 Mが特に好ましい。別の実施態様において、モノペグ化エリスロポエチンは、工程d)において、95面積%超の純度の実質的に均質な形態で回収される。方法のさらなる実施態様において、方法の工程b)におけるイオン強度の段階的増加は、2段階のイオン強度の増加である。好ましくは、モノペグ化エリスロポエチンは、段階溶出方法の第2段階において、即ち、イオン強度の第2の増加後に回収される。
【0009】
本発明の別の局面は、モノペグ化エリスロポエチンの産生のための方法であって、以下の工程:
a)ペグ化試薬を使用することによりエリスロポエチンをペグ化する工程、
b)ペグ化エリスロポエチンを2つの連続した陽イオン交換クロマトグラフィー工程で精製する工程であって、第1及び第2の陽イオン交換クロマトグラフィーが同じ型の陽イオン交換材料を用いる工程、
c)モノペグ化エリスロポエチンを、第2の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから実質的に均質な形態で回収する工程
を含む。
【0010】
発明の詳細な説明
本発明は、同じ型の陽イオン交換材料を両方の陽イオン交換クロマトグラフィー工程において使用する、2つの陽イオン交換クロマトグラフィー工程を含む、モノペグ化エリスロポエチンの精製のための方法を含む。
【0011】
本出願内で使用する「イオン交換材料」という用語は、イオン交換クロマトグラフィーにおいて固定相として使用される共有結合した荷電置換基を保有する不動性高分子量マトリクスを示す。全体的な電荷中性のために、共有結合していない対イオンはそれに結合する。「イオン交換材料」は、その共有結合していない対イオンを、周囲溶液の同様に荷電したイオンと交換する能力を有する。その交換可能な対イオンの電荷に応じて、「イオン交換樹脂」は、陽イオン交換樹脂又は陰イオン交換樹脂といわれる。荷電基(置換基)の性質に応じて、「イオン交換樹脂」は、例えば、陽イオン交換樹脂の場合、スルホン酸樹脂(S)、又はスルホプロピル樹脂(SP)、又はカルボキシメチル樹脂(CM)といわれる。荷電基/置換基の化学的性質に応じて、「イオン交換樹脂」を、共有結合した荷電置換基の強度に応じて、強又は弱イオン交換樹脂としてさらに分類することができる。例えば、強陽イオン交換樹脂は、荷電置換基としてスルホン酸基、好ましくはスルホプロピル基を有し、弱陽イオン交換樹脂は、荷電置換基としてカルボン酸基、好ましくはカルボキシメチル基を有し、そして、弱陰イオン交換樹脂は、荷電置換基としてジエチルアミノエチル基を有する。
【0012】
例えば以下のような様々な型のイオン交換材料、即ち、固定相が、様々な名称の下、多数の会社から入手可能である:陽イオン交換材料Bio-Rex(登録商標)(例えば、タイプ70)、Chelex(登録商標)(例えば、タイプ100)、Macro-Prep(登録商標)(例えば、タイプCM、High S、25 S)、AG(登録商標)(例えば、タイプ50W、MP)(全てBioRad Laboratoriesから入手可能)、WCX 2(Ciphergenから入手可能)、Dowex(登録商標)MAC-3(Dow chemical companyから入手可能)、Mustang C及びMustang S(Pall Corporationから入手可能)、Cellulose CM(例えば、タイプ23、52)、hyper-D、partisphere(Whatman plc.から入手可能)、Amberlite(登録商標)IRC(例えば、タイプ76、747、748)、Amberlite(登録商標)GT 73、Toyopearl(登録商標)(例えば、タイプSP、CM、650M)(全てTosoh Bioscience GmbHから入手可能)、CM 1500及びCM 3000(BioChrom Labsから入手可能)、SP-Sepharose(商標)、CM-Sepharose(商標)(GE Healthcareから入手可能)、Poros樹脂(PerSeptive Biosystemsから入手可能)、Asahipak ES(例えば、タイプ502C)、CXpak P、IEC CM(例えば、タイプ825、2825、5025、LG)、IEC SP(例えば、タイプ420N、825)、IEC QA(例えば、タイプLG、825)(Shoko America Inc.から入手可能)、50W陽イオン交換樹脂(Eichrom Technologies Inc.から入手可能)。好ましくは、陽イオン交換材料は、Macro-Prep(登録商標)High Sもしくは25S、又はMacroCap SP、又はToyopearl(登録商標)SP 650M、又はSource S、又はSP Sepharose、又はPOLYCAT Aなどの強陽イオン交換材料である。例示的な陰イオン交換材料は、Dowex(登録商標)1(Dow chemical companyから入手可能)、AG(登録商標)(例えば、タイプ1、2、4)、Bio-Rex(登録商標)5、DEAE Bio-Gel 1、Macro-Prep(登録商標)DEAE(全てBioRad Laboratoriesから入手可能)、陰イオン交換樹脂タイプ1(Eichrom Technologies Inc.から入手可能)、Source Q、ANX Sepharose 4、DEAE Sepharose(例えば、タイプCL-6B、FF)、Q Sepharose、Capto Q、Capto S(全てGE Healthcareから入手可能)、AX-300(PerkinElmerから入手可能)、Asahipak ES-502C、AXpak WA(例えば、タイプ624、G)、IEC DEAE(全てShoko America Inc.から入手可能)、Amberlite(登録商標)IRA-96、Toyopearl(登録商標)DEAE、TSKgel DEAE(全てTosoh Bioscience GmbHから入手可能)、Mustang Q(Pall Corporationから入手可能)である。一実施態様において、陽イオン交換材料はスルホプロピル陽イオン交換材料である。
【0013】
「同じ型の陽イオン交換材料」という用語は、同一の陽イオン交換材料を用いることにより実施される2つの連続したイオン交換クロマトグラフィー工程を示す。これは、連続した陽イオン交換クロマトグラフィー工程が、第1の陽イオン交換クロマトグラフィー工程のために陽イオン交換材料の第1の部分を使用しそして第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程のために同じ陽イオン交換材料の第2の部分を使用するか、又は、両方の陽イオン交換クロマトグラフィー工程のために同じ陽イオン交換材料を使用するかのいずれかにより実施されることを意味する。一実施態様において、第2の陽イオン交換材料は、第1の陽イオン交換材料と同じ型の陽イオン交換材料であるが、同じ画分の陽イオン交換材料ではない。
【0014】
「段階溶出」及び「段階溶出方法」という用語は、本出願内で互換的に使用され、例えば、溶出、即ち、材料からの結合した化合物の溶解を引き起こす物質の濃度が、一度に、即ち、1つの値/レベルから次の値/レベルに直接上昇させられるか又は低下させられる方法を示す。この「段階溶出」において、1つ以上の条件、例えば、pH、イオン強度、塩濃度、及び/又はクロマトグラフィー流を、一度に、第1の値、例えば、開始値から、第2の値、例えば、最終値まで変化させる、即ち、条件を、直線的変化とは対照的に、増加的に、即ち、段階的に変化させる。「段階溶出方法」において、イオン強度の各々の増加後に、新たな画分を採集する。この画分は、イオン強度の対応する増加を用いてイオン交換材料から回収される化合物を含む。各々の増加の後、条件を、溶出方法における次の工程まで維持する。「段階溶出」において、1つ以上の条件を、一度に、第1の値、例えば、開始値から、第2の値、例えば、最終値まで変化させる。変化は、一実施態様において、溶出を引き起こす物質の濃度の10%以上である。即ち、この実施態様において、溶出を引き起こす物質の濃度は、第1段階において100%であり、第2段階において110%以上であり、そして第3段階において120%以上である。別の実施態様において、変化は、溶出を引き起こす物質の濃度の50%以上である。別の実施態様において、変化は、溶出を引き起こす物質の濃度の120%以上である。「段階溶出」は、条件を、直線的変化とは対照的に、増加的に、即ち、段階的に変化させることを示す。
【0015】
本出願内で互換的に使用される「連続溶出」及び「連続溶出方法」という用語は、例えば、溶出、即ち、クロマトグラフィー材料からの結合/吸着した化合物の溶解、を引き起こす物質の濃度が連続的に上昇させられるか又は低下させられる、即ち、各々が溶出を引き起こす物質の濃度の2%、好ましくは1%の変化より大きくない一連の小段階により濃度が変化する方法を示す。この「連続溶出」において、1つ以上の条件、例えば、pH、イオン強度、塩濃度、及び/又はクロマトグラフィー流を、直線的に、又は、指数関数的に、又は、漸近的に変化させてもよい。好ましくは、変化は直線的である。
【0016】
本出願内で使用する「適用」という用語及びその文法的相当語句は、精製すべき目的の物質を含む溶液を固定相と接触させる精製方法の部分的工程を示す。これは、a)その中に固定相が位置づけられたクロマトグラフィーデバイスに溶液を加えること、又は、b)固定相を溶液に加えることを示す。a)の場合、精製すべき目的の物質を含む溶液を固定相に通し、固定相と溶液中の物質との間の相互作用を可能にする。例えば、pH、伝導率、塩濃度、温度、及び/又は流速などの条件に応じて、溶液のいくらかの物質が固定相に結合し、従って溶液から除去される。他の物質は溶液中に残る。溶液中に残っている物質を素通り中に見出すことができる。「素通り」はクロマトグラフィーデバイスの通過後に得られる溶液を示し、これは目的の物質を含む適用した溶液、又は、カラムをフラッシュするため、もしくは、固定相に結合した1つ以上の物質の溶出を引き起こすために使用される緩衝液のいずれかでありうる。一実施態様において、クロマトグラフィーデバイスは、カラム、又はカセットである。目的の物質を、精製工程後に、当業者によく知られた方法、例えば、沈殿、塩析、限外ろ過、ダイアフィルトレーション、凍結乾燥、アフィニティークロマトグラフィー、又は溶媒容積減少(solvent volume reduction)などにより溶液から回収して、実質的に均質な形態の目的の物質を得ることができる。b)の場合、固定相を、例えば固体として、精製すべき目的の物質を含む溶液に加えて、固定相と溶液中の物質との間の相互作用を可能にする。相互作用後、固定相を、例えばろ過により除去し、そして、目的の物質は、固定相に結合し、そして溶液からそれと共に除去されるか、又は、固定相に結合せず、そして溶液中に残るかのいずれかである。
【0017】
本出願内で使用する「結合するために適切な条件下で」という用語及びその文法的相当語句は、目的の物質、例えば、ペグ化エリスロポエチンが、それと接触させたときに固定相、例えば、イオン交換材料に結合することを示す。これは、目的の物質の100%が結合することを必ずしも示さず、固定相に、目的の物質の本質的に100%が結合する、即ち、目的の物質の少なくとも50%が結合する、目的の物質の少なくとも75%が結合する、目的の物質の少なくとも85%が結合する、又は、目的の物質の95%超が結合する。
【0018】
本出願内で使用する「緩衝」という用語は、酸性又は塩基性物質の添加又は遊離に起因するpHの変化が緩衝物質によってならされている溶液を示す。そのような効果をもたらす任意の緩衝物質を使用できる。好ましくは、例えば、リン酸もしくはその塩、酢酸もしくはその塩、クエン酸もしくはその塩、モルホリン、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸もしくはその塩、ヒスチジンもしくはその塩、グリシンもしくはその塩、又はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)もしくはその塩のような薬学的に許容しうる緩衝物質を使用する。一実施態様において、リン酸もしくはその塩、又は酢酸もしくはその塩、又はクエン酸もしくはその塩、又はヒスチジンもしくはその塩を緩衝物質として使用する。場合により、緩衝溶液は、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、クエン酸ナトリウム、又はクエン酸カリウムなどの追加の塩を含んでよい。
【0019】
一般的なクロマトグラフィー方法及びその使用は、当業者に公知である。例えば、Chromatography, 5
th edition, Part A: Fundamentals and Techniques, Heftmann, E. (ed), Elsevier Science Publishing Company, New York, (1992);Advanced Chromatographic and Electromigration Methods in Biosciences, Deyl, Z. (ed.), Elsevier Science BV, Amsterdam, The Netherlands, (1998);Chromatography Today, Poole, C. F., and Poole, S. K., Elsevier Science Publishing Company, New York, (1991);Scopes, Protein Purification: Principles and Practice (1982);Sambrook, J., et al. (ed), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989;又はCurrent Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F. M., et al. (eds), John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照のこと。
【0020】
エリスロポエチンのペグ化は、通常、ポリペグ化エリスロポエチン、モノペグ化エリスロポエチン、非ペグ化エリスロポエチン、活性化PEGエステルの加水分解産物、例えば遊離ペグ化酸、ならびに、エリスロポエチン自体の加水分解産物などの様々な化合物の混合物をもたらす。実質的に均質な形態のモノペグ化エリスロポエチンを得るために、これらの物質を分離しなければならず、そして目的の化合物を精製しなければならない。
【0021】
それゆえ、実質的に均質な形態のモノペグ化エリスロポエチンを得るための方法であって、以下の工程:
a)分子量が20kDa〜40kDaの活性化ペグ化試薬を使用してエリスロポエチンをペグ化する工程、
b)工程a)において得られるペグ化エリスロポエチンを2つの連続した陽イオン交換クロマトグラフィー工程で精製する工程であって、第1及び第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程が同じ型の陽イオン交換材料を用いる工程、
c)モノペグ化エリスロポエチンを、第2の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから実質的に均質な形態で回収する工程
を含む方法を提供することが本発明の局面である。
【0022】
この方法は、グリコシル化された、即ち、哺乳動物細胞、好ましくはCHO細胞、HEK293細胞、BHK細胞、Per.C6(登録商標)細胞、又はHeLa細胞により産生され、その後に化学的にペグ化されたペグ化組換えポリペプチドの精製のために特に有用である。
【0023】
方法の第1工程において、エリスロポエチンをペグ化する。ペグ化反応において使用するポリ(エチレングリコール)(PEG)ポリマー分子は、分子量約20kDa〜40kDaを有する(本明細書で使用する「分子量」により、PEGの平均分子量が理解されるべきである。なぜなら、ポリマー化合物としてのPEGは、規定された分子量を有して得られず、事実、分子量分布を有するからである;「約」という用語は、前記PEG調製物において、いくらかの分子が示された分子量よりも大きく、そして、いくらかが小さいことを示し、即ち、約という用語は、その中でPEG分子の95%が示される分子量の+/−10%以内の分子量を有する分子量分布を指す。例えば、分子量30kDaは27kDa〜33kDaの範囲を示す。
【0024】
「エリスロポエチン」という用語は、配列番号1又は配列番号2の配列を有するタンパク質、又はそれと実質的に相同であるタンパク質もしくはポリペプチドを指し、その生物学的特性は赤血球産生の刺激ならびに骨髄中の方向付けられた赤血球前駆細胞(committed erythroid progenitor)の分裂及び分化の刺激に関連する。組換えエリスロポエチンを、組換えDNA技術により、又は、内因性遺伝子活性化により、真核細胞、例えば、CHO細胞、又はBHK細胞、又はHeLa細胞における発現を介して調製してもよい。例えば、エリスロポエチン糖タンパク質は、US5,733,761、US5,641,670、US5,733,746、WO93/09222、WO94/12650、WO95/31560、WO90/11354、WO91/06667、及びWO91/09955において報告されるように内因性遺伝子活性化により発現される。一実施態様において、本発明によるエリスロポエチンはヒトEPOの配列に基づく。別の実施態様において、ヒトエリスロポエチンは配列番号1又は配列番号2に示すアミノ酸配列を有し、好ましくは、ヒトエリスロポエチンは配列番号1に示すアミノ酸配列を有する。「エリスロポエチン」という用語はまた、その中で1つ以上のアミノ酸残基が変化、欠失、又は挿入されており、そして改変されていないタンパク質と同じ生物学的活性を有する、例えばEP1 064951、又はUS6,583,272において報告されるような、配列番号1又は配列番号2のタンパク質の変異体を示す。変異体は、グリコシル化のための1〜6個の付加部位を有するヒトエリスロポエチンのアミノ酸配列を有しうる。ペグ化エリスロポエチンの比活性を、当技術分野において公知の種々のアッセイにより決定できる。本発明の精製ペグ化エリスロポエチンの生物学的活性は、ヒト患者への注射によるタンパク質の投与が、非注射群又は対照群の被験体と比較して、骨髄細胞による網状赤血球及び赤血球の産生増加をもたらすようなものである。本発明に従って得られそして精製されるペグ化エリスロポエチンの生物学的活性を、Pharm. Europa Spec. Issue Erythropoietin BRP Bio 1997(2)に従う方法により試験することができる。
【0025】
本発明による「PEG」又は「PEG基」は、本質的部分としてポリ(エチレングリコール)を含む残基を意味する。そのようなPEGは、分子の化学合成から生じる結合(即ち、共役)反応のために必要であるか、又は、分子の部分の最適な距離のためのスペーサーである、さらなる化学基を含むことができる。これらのさらなる化学基は、PEGポリマー分子の分子量の算出のために使用されない。さらに、そのようなPEGは、互いに連結された1つ以上のPEG側鎖からなりうる。1を超えるPEG鎖を有するPEGは、多腕(multiarmed)又は分岐PEGと呼ばれる。分岐PEGを、例えば、ポリエチレンオキシドの、グリセロール、ペンタエリスリトール、及びソルビトールを含む種々のポリオールへの付加により調製できる。分岐PEGは、例えば、EP0473084、US5,932,462において記載されている。一実施態様において、分子量20〜35kDaを有するPEGとして、直鎖PEG分子が使用され、分子量35kDa超、特に40kDaを有するPEGポリマーとして、分岐PEGが使用される。PEG 40kDaとして、2腕(two-armed)PEGが一実施態様において使用される。
【0026】
「ペグ化」という用語は、ポリペプチドのN末端及び/又は内部リジン残基でのポリ(エチレングリコール)残基の共有結合を意味する。タンパク質のペグ化は当技術分野の技術水準において広く知られており、そして例えばVeronese, F.M., Biomaterials 22 (2001) 405-417により概説されている。PEGを、様々な官能基、及び様々な分子量を有するポリエチレングリコール、直鎖及び分岐PEGならびに様々な連結基を使用して連結できる(Francis, G.E., et al., Int. J. Hematol. 68 (1998) 1-18;Delgado, C., et al., Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Systems 9 (1992) 249-304も参照のこと)。エリスロポエチンのペグ化を、例えば、WO00/44785において記載されるようにペグ化試薬を用いて水溶液中で、一実施態様において分子量5kDa〜40kDaのNHS活性化直鎖又は分岐PEG分子を使用することにより実施できる。ペグ化を、Lu, Y., et al., Reactive Polymers 22 (1994) 221-229に従って固相で実施することもできる。ランダムにではなく、N末端がペグ化されたポリペプチドを、WO94/01451に従って産生することもできる。
【0027】
そのような方法は、リジン残基の1つ以上のεアミノ基で、そして/又は、N末端アミノ基でペグ化されたエリスロポエチンをもたらす。N末端アミノ酸での選択的ペグ化を、Felix, A. M., et al., ACS Symp. Ser. 680 (Poly(ethylene glycol)) (1997) 218-238に従って実施できる。選択的N末端ペグ化を、固相合成の間に、N
α−ペグ化アミノ酸誘導体のペプチド鎖のN−1末端アミノ酸へのカップリングにより達成できる。側鎖のペグ化を、固相合成の間に、N
ε−ペグ化リジン誘導体の成長中の鎖へのカップリングにより実施できる。N末端及び側鎖の組み合わせのペグ化は、上記のように固相合成内でか、又は、活性化PEG試薬をアミノ脱保護ペプチドに適用することによる溶液相合成によるかのいずれかで実行可能である。
【0028】
適切なPEG誘導体は、約5〜約40kDa、一実施態様において約20〜約40kDa、好ましくは約30kDa〜約35kDaの平均分子量を有する活性化PEG分子である。PEG誘導体は一実施態様において直鎖又は分岐のPEGである。PEGタンパク質及びPEGペプチド共役体の調製における使用に適切な種々のPEG誘導体を、Shearwater Polymers(Huntsville, AL, U.S.A.;www.nektar.com)から得ることができる。
【0029】
活性化PEG誘導体は当技術分野において公知であり、そして例えば、PEG−ビニルスルホンについて、Morpurgo, M., et al., J. Bioconjug. Chem. 7 (1996) 363-368において記載されている。直鎖及び分岐鎖のPEG種は、ペグ化フラグメントの調製に適切である。反応性PEG試薬の例は、ヨード−アセチル−メトキシ−PEG、又はメトキシ−PEG−ビニルスルホンである(mは好ましくは約450〜約900の整数であり、そしてRは1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のC
1−〜C
6−アルキル、例えばメチル、エチル、イソプロピルなどであり、一実施態様においてR=メチルである):
【化1】
【0030】
これらのヨード活性化物質の使用は当技術分野において公知であり、そして例えばHermanson, G. T.によりBioconjugate Techniques, Academic Press, San Diego (1996) p. 147-148において記載されている。
【0031】
一実施態様において、PEG種は活性化PEGエステル、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジルプロピオナート、又はN−ヒドロキシスクシンイミジルブタノアート、又はN−ヒドロキシスクシンイミド、例えばPEG−NHSである(Monfardini, C., et al., Bioconjugate Chem. 6 (1995) 62-69)。一実施態様において、活性化N−ヒドロキシスクシンイミドエステルは、メトキシ−PEG−N−ヒドロキシスクシンイミド(MW30000;Shearwater Polymers, Inc.)などのアルコキシ−PEG−N−ヒドロキシスクシンイミドを使用する
【化2】
[式中、R及びmは上記で定義するとおりである]である。一実施態様において、PEG種はメトキシポリ(エチレングリコール)酪酸のN−ヒドロキシスクシンイミジルエステルである。「アルコキシ」という用語はアルキルエーテル基を指し、ここで「アルキル」という用語は、最高4個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシなど、好ましくはメトキシを意味する。
【0032】
本出願内で使用する「実質的に均質な形態」という用語は、得られる、含まれる、又は使用されるペグ化エリスロポエチンが、規定された数の付着したPEG基を有するものであることを示す。一実施態様において、ペグ化エリスロポエチンはモノペグ化エリスロポエチンである。調製物は、未反応(即ち、PEG基を欠く)エリスロポエチン、ポリペグ化エリスロポエチン、ならびにペグ化反応の間に生成されるポリペプチドのフラグメントを含みうる。「実質的に均質な形態」という用語は、モノペグ化エリスロポエチンの調製物が、一実施態様において少なくとも50%(w/w)のモノペグ化エリスロポエチン、少なくとも75%のモノペグ化エリスロポエチン、少なくとも90%のモノペグ化エリスロポエチン、又は95%超のモノペグ化エリスロポエチンを含むことを示す。パーセント値は、それからモノペグ化エリスロポエチンが得られる陽イオン交換クロマトグラフィー精製に対応するクロマトグラムの面積%に基づく。
【0033】
本発明は、実質的に均質な形態のモノペグ化エリスロポエチンを得るためのモノペグ化エリスロポエチンの精製のための方法を報告する。驚くべきことに、両方が同じ型の陽イオン交換材料を用いる2つの連続した陽イオン交換クロマトグラフィー工程の組み合わせが、実質的に均質な形態のモノペグ化エリスロポエチンを提供することが見出された。それゆえ、本発明は、モノ、ポリ、及び非ペグ化エリスロポエチンを含む溶液を提供する工程、2つの連続した陽イオン交換クロマトグラフィー工程を実施する工程、及び第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程において精製モノペグ化エリスロポエチンを回収する工程を含む、モノペグ化エリスロポエチンの精製のための方法であって、同じ型の陽イオン交換材料を両方の陽イオン交換クロマトグラフィー工程において使用する方法を提供する。一実施態様において、第1の陽イオン交換クロマトグラフィー工程における回収は、第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程における回収とは異なる溶出方法による。別の実施態様において、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムは、第1の陽イオン交換クロマトグラフィー工程の後、及び、第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程の後に再生される。
【0034】
第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程における精製モノペグ化エリスロポエチンの回収は、第2の陽イオン交換クロマトグラフィー材料からモノペグ化エリスロポエチンを溶出することによる。本発明による方法の一実施態様において、用いられる溶出方法における2つの陽イオン交換クロマトグラフィー工程は異なる。第1の陽イオン交換クロマトグラフィー工程は、この実施態様において、段階溶出方法として実施され、即ち、使用される緩衝液のイオン強度は段階的に、即ち、一度に、1つのイオン強度値から次のイオン強度値に、好ましくは10%以上の変化で増加させられる。段階溶出方法は、一実施態様において、3段階溶出方法として実施される。第1の工程において、主にポリペグ化エリスロポエチンが陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから溶出される。イオン強度の第2の増加によって、基本的に、対応するサイズ排除クロマトグラムの面積に基づいて(面積%)60%超の純度でモノペグ化エリスロポエチンが溶出される。イオン強度の第3の増加によって、主に残りの非ペグ化エリスロポエチンがカラムから溶出される。
【0035】
第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程を、一実施態様において、連続溶出方法として実施し、即ち、緩衝液のイオン強度を連続的に、好ましくは5%未満の変化で増加させる。一実施態様において対応するクロマトグラムの面積に基づき0.5%未満の低分子量形態を含む、実質的に均質な形態のモノペグ化エリスロポエチンを得るために、モノペグ化エリスロポエチンを含む溶出画分を合わせる。緩衝液は、好ましくは濃度10mM〜250mM、一実施態様において50mM〜150mM、別の実施態様において約100mMで存在する。それゆえ、本発明の方法において、2つの連続した陽イオン交換クロマトグラフィー工程は以下の工程:
a)モノ、ポリ、及び非ペグ化エリスロポエチン、及び低分子量形態の混合物を含む水性緩衝溶液を、モノペグ化エリスロポエチンが第1のカラム中に含まれる陽イオン交換材料に結合するために適切な条件下で、第1の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに適用する工程、
b)モノペグ化エリスロポエチンを、通過流緩衝液のイオン強度の段階的増加を伴う段階溶出方法により第1の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから回収する工程であって、回収された溶液中のモノペグ化エリスロポエチンの相対含量が、工程a)の適用された混合物と比較して増加する工程、
c)工程b)からの回収されたモノペグ化エリスロポエチンを、前記エリスロポエチンが第2のカラムに含まれる陽イオン交換材料に結合するために適切な条件下で、第2の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに適用する工程であって、第2のカラムに含まれる陽イオン交換材料は第1のカラム中の陽イオン交換材料と同じ型のものである工程、
d)実質的に均質な形態の精製モノペグ化エリスロポエチンを、通過流緩衝液のイオン強度の連続増加を伴う連続溶出方法により、前記第2の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから回収する工程
である。
【0036】
ポリペプチドのペグ化によって、通常、均質な形態のペグ化産物は提供されない。さらに、それは、モノペグ化、ポリペグ化、及び非ペグ化産物の混合物として得られる。それゆえ、方法の工程a)において適用されるペグ化エリスロポエチンの溶液は、水性緩衝液中のモノ、ポリ、及び非ペグ化エリスロポエチン、及び低分子量形態又はフラグメントの混合物である。異なる物質の相対含量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SE−HPLC)により決定される。例示的なクロマトグラムを
図1に示す。
図1における相関するピークの面積の合計、即ち、ピーク下の面積は、サイズ排除クロマトグラムの総面積である。単一ピークの割合は、面積%として、即ち、クロマトグラムの総面積の相対的面積割合として与えられる。
【0037】
一般的なクロマトグラフィー方法、その使用、及び関連用語は、当業者に公知である。例えば、Chromatography, 5
th edition, Part A: Fundamentals and Techniques, Heftmann, E. (ed), Elsevier Science Publishing Company, New York, (1992)及び他の関連テキストを参照のこと。クロマトグラフィーの間、緩衝液が陽イオン交換クロマトグラフィーカラムを通って流れる。この「通過流緩衝液」は、クロマトグラフィー方法の工程の要件に従って調整される。それは、目的の物質を、クロマトグラフィー材料に輸送し(適用)、そしてそれから輸送する(溶出)。
【0038】
第1の陽イオン交換クロマトグラフィー工程において、モノペグ化、ポリペグ化、及び非ペグ化エリスロポエチンの混合物を、タンパク質濃度0.7〜1.5mg/ml、好ましくは約1mg/mlで、水性緩衝溶液中第1の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに適用する。一実施態様において、水性緩衝溶液は約100mMリン酸カリウム、約pH3.0を有する。本出願内で使用する「約」という用語は、所定の値の周囲10%、即ち、±10%の範囲を示す。適用前後に第1のカラムを一実施態様において同じ緩衝溶液で洗浄する。段階溶出方法における第1段階のために、緩衝液を、約100mMリン酸カリウム、約90mM塩化ナトリウムを含む約pH3.0の緩衝液に変える。この緩衝液を用いて、加水分解された活性化PEG試薬、即ち、対応するペグ化炭酸、未反応カップリング試薬、及びポリペグ化エリスロポエチンを、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから溶出する。3段階溶出方法における第2段階のために、緩衝液を、約100mMリン酸カリウム、約250mM塩化ナトリウムを含む約pH3.0の緩衝液に変える。この工程において、モノペグ化エリスロポエチンを第1の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから回収する。この溶出工程の採集された通過流緩衝液を、精製水で約1:5(v/v)〜1:8(v/v)、好ましくは1:5(v/v)希釈する。例示的な第1の陽イオン交換クロマトグラフィーを
図2に示す。3段階溶出方法における第3段階のために、緩衝液を、約100mMリン酸カリウム、約750mM塩化ナトリウムを含む約pH3.0の緩衝液に変える。この工程において、非ペグ化エリスロポエチンを第1の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから回収する。
【0039】
第1の陽イオン交換クロマトグラフィーの第2段階の採集された通過流緩衝液は、相対含量が増加したモノペグ化エリスロポエチンを含んでおり、即ち、モノペグ化エリスロポエチンの重量又は面積%での(第2段階の採集された通過流緩衝液のサイズ排除クロマトグラフィーのクロマトグラムにおける)割合が、第1の陽イオン交換クロマトグラフィー工程の前と比較した場合に増加している。一実施態様において、モノペグ化エリスロポエチンの相対含量は少なくとも60面積%である。別の実施態様において、モノペグ化エリスロポエチンの相対含量は少なくとも80面積%である。
【0040】
モノペグ化エリスロポエチンのさらなる精製のために、第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程を実施する。第2の陽イオン交換クロマトグラフィーのために、約100mMのリン酸カリウム濃度及び約pH3.0のpHに調整した第2の溶出工程の採集されそして希釈された通過流緩衝液を、第1の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムと同じ型の、陽イオン交換材料を含む第2の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに適用する。一実施態様において、第2の陽イオン交換カラム及びそれに含まれる陽イオン交換材料は、第1の陽イオン交換クロマトグラフィー工程におけるものと同じである。モノペグ化エリスロポエチンを、約50mM塩化ナトリウムを含む約pH3.0の濃度約100mMのリン酸カリウム緩衝液で開始し、そして、約500mM塩化ナトリウムを含む約pH3.0の濃度約100mMのリン酸カリウム緩衝液で終了する直線勾配を適用することにより第2の陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから回収する。塩化ナトリウム濃度の変化は、10カラム容積にわたり直線的である。通過流緩衝液を分画し、そして各画分を1Mリン酸水素二カリウムで希釈して、pH値を約pH6〜8に増加させる。例示的なクロマトグラムを
図3に示す。
【0041】
第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程後、モノペグ化エリスロポエチンが、実質的に均質な形態で、一実施態様において少なくとも95面積%の純度で得られる。
【0042】
イオン交換クロマトグラフィーの技術は当業者によく知られている。陽イオン交換材料に結合したポリペプチドの回収工程において、イオン交換カラムを通過する緩衝液/溶液のイオン強度、即ち、伝導率が増加する。これを、緩衝塩濃度の増加によるか、又は、他の塩、いわゆる溶出塩の緩衝溶液への添加によるかのいずれかにより達成できる。溶出方法に応じて、緩衝液/塩濃度を、一度に(段階溶出方法)、又は、連続的に(連続溶出方法)、濃縮された緩衝液又は溶出塩溶液の分別添加により増加させる。好ましい溶出塩は、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、リン酸カリウム、又はクエン酸もしくはリン酸の他の塩、又はこれらの成分の任意の混合物である。一実施態様において、溶出塩は、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はこれらの混合物である。
【0043】
本発明の一実施態様において、陽イオン交換材料は、好ましくはToyopearl(登録商標)SP 650 Mなどの強陽イオン交換材料である。溶出を引き起こす塩の濃度は、一実施態様において5mM〜500mMの範囲内、好ましくは5mM〜400mMの範囲内、より好ましくは5mM〜250mMの範囲内である。本発明の別の実施態様において、溶出を引き起こす塩は、同時に、緩衝物質として使用される(例えば、クエン酸もしくはその塩又はリン酸もしくはその塩など)。
【0044】
モノペグ化エリスロポエチンを、当技術分野において公知の方法により、薬学的に許容しうる担体又はビヒクルとの注射のために適切な医薬組成物中で使用してもよい。例えば、適切な組成物は、WO97/09996、WO97/40850、WO98/58660、及びWO99/07401において記載されている。本発明の産物を処方するための好ましい薬学的に許容しうる担体には、ヒト血清アルブミン、ヒト血漿タンパク質などがある。本発明の化合物を、等張化剤、例えば132mM塩化ナトリウムを含む、pH7の10mMリン酸ナトリウム/カリウム緩衝液中で処方してもよい。場合により、医薬組成物は保存剤を含んでもよい。医薬組成物は、様々な量のモノペグ化エリスロポエチン、例えば10〜1000μg/ml、例えば50μg又は400μgを含んでもよい。
【0045】
本発明のエリスロポエチン糖タンパク質産物の投与は、ヒトにおいて赤血球の形成をもたらす。それゆえ、モノペグ化エリスロポエチン糖タンパク質産物の投与によって、赤血球の産生において重要であるこのエリスロポエチンタンパク質が補充される。モノペグ化エリスロポエチン糖タンパク質産物を含む医薬組成物を、独立しているか又は状態もしくは疾患の一部としての、低いか又は欠損した赤血球産生により特徴付けられる血液障害を経験しているヒト患者に、種々の手段により投与するために有効な強度で処方しうる。医薬組成物を、皮下又は静脈内注射などの注射により投与してもよい。モノペグ化エリスロポエチン糖タンパク質産物の平均量は変動しうる。共役体の正確な量は、処置される状態の正確な型、処置される患者の状態、ならびに組成物中の他の成分などの要因に支配される優先度の問題である。例えば、0.01〜10μg/kg体重、好ましくは0.1〜1μg/kg体重を、例えば週1回投与してもよい。
【0046】
以下の実施例、配列表、及び図面は本発明の理解を助けるために提供され、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲に記載される。本発明の精神から逸脱することなく、記載した手順を改変できることが理解される。