(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記交換可能な治具フレームは、前記治具フレーム構造体の上部に配置されるアッパ治具フレームであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車体の製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、
図1は車体の製造蔵置の概略構成を示す側面図、
図2はクランプロボットを取り除いた状態にて車体の製造装置の概略構成を示す側面図、
図3は車体の製造装置の概略構成を示す正面図、
図4は
図1のIV−IV線に沿う矢視図、
図5はクランプ前におけるクランプ治具とロック機構との関係を示す説明図、
図6はクランプ時におけるクランプ治具とロック機構との関係を示す説明図、
図7はクランプ治具のロック機構とアッパ治具フレームとの関係を示す斜視図、
図8はサイド治具フレームとアッパ治具フレームとのロック機構を示す正面図、
図9,10はサイドストラクチャ等の仮組工程を示すフローチャート、
図11はクランプ時におけるクランプ治具とロック機構との関係の変形例を示す説明図である。
【0012】
図1〜4に示す車体の製造装置1は、例えば、自動車の車体のメインボディの組立ラインに設定された仮組溶接工程のステージに構成されるものである。この組立工程のステージには、例えば、下部中央構造部品としてのセンタストラクチャ101の両側にサイド構造部品としてのサイドストラクチャ102が仮置固定された車体100が床下治具5に固定載置(クランプ)されてシャトルコンベア(図示せず)等によって搬入される。
【0013】
ここで、センタストラクチャ101は、具体的には、例えば、フロントホイールエプロン、トーボード、フロントフロア、リヤホイールエプロン等で構成されている。また、サイドストラクチャ102は、具体的には、例えば、フロントピラー、センターピラー、リヤクォータピラー、サイドレール、サイドシル等で構成されている。
【0014】
この組立工程のステージには、車体100の左右のサイドストラクチャ102に対向するサイド治具フレーム6が設けられている。このサイド治具フレーム6には、床下治具5に設けられた治具基準ピン15が係合可能となっており、この治具基準ピン15によって、床下治具5がステージ上に位置決め固定(クランプ)されるようになっている。
【0015】
また、サイド治具フレーム6の一部は、左右のサイドストラクチャ102に対し、それぞれ接近離間移動自在な可動治具フレーム6aとなっている。そして、他の工程から本工程に車体100が搬入される際や、本工程から他の工程に車体100を搬出する際等には、各可動治具フレーム6aが車体100から離間方向に移動されるようになっている。一方、床下治具5が車体100とともに本工程のステージに搬入されて載置固定されると、可動治具フレーム6は、車体100への接近方向に移動され、可動治具フレーム6aに設けられたサイド基準ピン16によってサイドストラクチャ102が位置決め固定(クランプ)されるようになっている。
【0016】
また、製造装置1は、搬入された車体100の車種に応じて交換可能な治具フレームとして、複数種類のアッパ治具フレームフロント7aと、複数種類のアッパ治具フレームリア7bと、を有する。なお、
図1〜4中には複数種類の中から選択された1組のアッパ治具フレームフロント7a及びアッパ治具フレームリア7bを示しており、以下の説明において、適宜、これらを総称してアッパ治具フレーム7と称する。
【0017】
これらアッパ治具フレームフロント7a及びアッパ治具フレームリア7bは、アッパ治具搬送ロボット10によって、図示しない治具置き場から選択的に搬送可能であり、左右のサイド治具フレーム6が車体100との接近位置に位置決め固定されているとき、車体100の上方から左右のサイド治具フレーム6間にそれぞれ架設される。このため、アッパ治具フレームフロント7a及びアッパ治具フレームリア7bは、車体の上部おいて前後に延在する治具フレーム本体8と、この治具フレーム本体8の下方において左右に延在する脚部9と、を有して構成されている。そして、アッパ治具フレームフロント7a及びアッパ治具フレームリア7bは、アッパ治具搬送ロボット10に対する数値制御(NC)を通じて、各脚部9がサイド治具フレーム6上に載置され、当該サイド治具フレーム6に設けられたフレームロック機構20によって位置決め固定される。
【0018】
なお、例えば、
図8に示すように、本実施形態において、フレームロック機構20は、例えば、エアシリンダ21をアクチュエータとして動作するリンク式のロック機構であり、このフレームロック機構20のクランプ位置には、脚部9を位置決めするための位置決めピン22が突設されている。また、サイド治具フレーム6及び脚部9には、位置決めピン22によって脚部9が位置決めされた際に対向するカプラ24,25が設けられており、これらのカプラ24,25の対向に連動してエアシリンダ21が作動制御されることにより、フレームロック機構20は、サイド治具フレーム6に脚部9を固定する。
【0019】
このように構成された治具フレーム構造体2において、サイド治具フレーム6には、複数のクランプロボット30が設けられている。
図5,6に示すように、これらクランプロボット30は、仮置きされた車体100のワーク103の所定部位(要クランプ部位)をクランプするためのクランプ治具31と、このクランプ治具31を車体100に対して相対移動可能に支持する多関節アーム32と、を有して構成されている。
【0020】
図5,6に示すように、クランプ治具31は、多関節アーム32に連結するクランプ治具本体31aと、このクランプ治具本体31aに揺動可能に軸支されたクランプレバー31bと、クランプ治具本体31aに固設された固定クランプ31cと、クランプレバー31bの一端側に固設された可動クランプ31dと、を有して構成されている。そして、このクランプ治具31は、クランプレバー31bの揺動動作によって可動クランプ31dが固定クランプ31cとの近接位置まで移動することにより、ワーク103をクランプすることが可能となっている。
【0021】
さらに、本実施形態において、クランプレバー31bの他端側には、金属ブロック等からなる嵌合部材33が固設されている。本実施形態において、この嵌合部材33は、両側に傾斜面を有する山状の突起部33aを有して構成されている。
【0022】
また、アッパ治具フレーム7には、各クランプ治具31を予め設定したクランプ位置に位置決め固定するためのロック機構40がそれぞれ設けられている。
図5,6に示すように、本実施形態のロック機構40は、アッパ治具フレーム7の治具フレーム本体8に支持されたロック機構本体40aと、このロック機構本体40aに揺動自在に軸支されたロックレバー40bと、ロッド40cを介してロックレバー40bを揺動動作させるアクチュエータ40dとを有して構成されている。本実施形態において、ロックレバー40bは、ロック機構本体40aとの間に、クランプ治具本体31aの一部とクランプレバー31bの他端側とを一体的に挟み込んでロックすることが可能となっており、この挟み込みによってクランプレバー31bが揺動されることにより、クランプ治具31は、車体100のワーク103をクランプすることが可能となっている。
【0023】
ここで、車体100に予め設定したクランプ位置にクランプ治具31をガイドするため、ロック機構本体40aには、ロックレバー40bの先端部と対向する位置に、嵌合部材33と嵌合する嵌合受部材43が固設されている。本実施形態において、嵌合受部材43は、嵌合部材33の突起部33aに対応するV字状の溝部43aを有して構成されている。そして、クランプレバー31bの他端側がロックレバー40bによってロックされる際に、嵌合受部材43の溝部43aに嵌合部材33の突起部33aが嵌合することにより、クランプ治具31は車体100のクランプ位置に精度良くガイドされ、ワーク103をクランプすることが可能となっている。
【0024】
また、例えば、
図7に示すように、本実施形態のロック機構40は、アッパ治具フレーム7の治具フレーム本体8に固設されたブラケット45を介して着脱自在に連結することが可能となっている。本実施形態において、ブラケット45は、平面視略L字状をなす一対の突起部材によって構成されている。このブラケット45に連結するため、ロック機構本体40aには、下端が閉塞されたスライドレール46と、このスライドレール46の上端側に進退自在に臨まされる係止部材47と、が設けられている。このロック機構40をアッパ治具フレーム7(治具フレーム本体8)に連結する際には、ロック機構40は、図示しないロボットに支持されて、スライドレール46がブラケット45に下方から係合するように移動される。そして、ブラケット45にスライドレール46が係合された後、スライドレール46の上端側に係止部材47が臨まされることにより、スライドレール46のブラケット45からの脱落が防止され、アッパ治具フレーム7とロック機構40との連結状体が維持される。このようにロック機構40を連結支持する各ブラケット45のアッパ治具フレーム7上における取付位置及び取付角度等は、アッパ治具フレーム7毎に適宜個別に設定されており、これにより、異なる車種のアッパ治具フレーム7間でロック機構40を共用することが可能となっている。
【0025】
また、
図3,4に示すように、治具フレーム構造体2の側方の要所には、溶接ロボット50が配設されている。溶接ロボット50は、車体100に対して相対移動可能なアーム部51と、このアーム部51の先端部に支持された溶接ガン52とを備えて構成されている。溶接ガン52は、所謂、IF鋼(interstitial free steel)をスポット溶接する溶接ガンであり、アーム部51の先端部に設定した加圧軸に沿って移動可能な可動側電極52aと、可動側電極52aに対向して可動側電極52aの加圧軸上に固定され、可動側電極52aの移動により溶接部を共に挟持して所定の加圧力でスポット溶接する固定側電極52bとを備えて構成さている。
【0026】
このように構成された製造装置1の各機能部には、図示しない各種制御盤が設けられており、これらの制御盤が工程制御盤55に設定されたプログラム等によって統括制御されることにより、例えば、
図9,10に示す仮組溶接工程が実行される。
【0027】
すなわち、他の工程から本工程(仮組溶接工程)に車体100が搬入されると(ステップS101)、工程制御盤55は、ステップS102において、車体100の識別符号等を読み取り、今回搬入された車体100が前回搬入された車体100とは異なる車種であるか否かを調べる。
【0028】
そして、ステップS102において、異なる車種であると判定した場合、工程制御盤55はステップS103に進み、アッパ治具フレーム7の交換を行う。すなわち、ステップS102からステップS103に進むと、工程制御盤55は、アッパ治具搬送ロボット10を動作させ、現在アッパ治具搬送ロボット10が保持しているアッパ治具フレーム7を治具置き場に搬送し、アッパ治具搬送ロボット10からアッパ治具フレーム7を切り離させる。その後、工程制御盤55は、アッパ治具搬送ロボット10を現在の車種に対応する治具置き場へと移動させ、アッパ治具搬送ロボット10に該当する新たなアッパ治具フレーム7を連結させた後、ステップS104に進む。その際、工程制御盤55は、図示しないロボットを動作させ、前工程までのアッパ治具フレーム7からロック機構40を取り外し、取り外したロック機構40を新たなアッパ治具フレーム7に取り付ける。なお、このようなアッパ治具フレーム7の交換は、例えば、車種の相違がセダンタイプの車体とワゴンタイプの相違のみである場合には、アッパ治具フレームリア7bのみを交換するだけでよい。
【0029】
一方、ステップS102において、今回搬入された車体100の車種が前回の車種と同一であると判断した場合、工程制御盤55は、ステップS104に進む。
【0030】
ステップS102或いはステップS103からステップS104に進むと、工程制御盤55は、床下治具5に設けられた治具基準ピン15をサイド治具フレーム6側に進出動作させ、床下治具5をクランプする。
【0031】
続くステップS105において、工程制御盤55は、サイド治具フレーム6の可動治具フレーム6aをサイドストラクチャ102側に進出動作させ、サイド基準ピン16によってサイドストラクチャ102をクランプする。
【0032】
続くステップS106において、工程制御盤55は、アッパ治具搬送ロボット10を動作させ、アッパ治具フレーム7をサイド治具フレーム6の架設位置まで下降させる。
【0033】
そして、アッパ治具フレーム7の脚部9が、サイド治具フレーム6のフレームロック機構20から突出する位置決めピン22によって位置決めされ、カプラ24,25が対向されると(
図8参照)、工程制御盤55は、ステップS107において、エアシリンダ21を作動させ、フレームロック機構20によってアッパ治具フレーム6の脚部9をロックする。
【0034】
このような各工程によって車体100を支持する治具フレーム構造体2が組み立てられると、工程制御盤55は、ステップS108において、各クランプロボット30の多関節アーム32に対する数値制御(NC)を通じて各クランプ治具31を車体100上に設定された各クランプ位置まで移動させる。これにより、各クランプ治具31に設けられた嵌合部材33は、対応するロック機構40に設けられた嵌合受部材43と所定に係合する位置に配置される。
【0035】
続くステップS109において、工程制御盤55は、ロック機構40のアクチュエータ40dを動作させ、クランプ治具本体31aの一部とクランプレバー31bの他端側とを、ロック機構本体40aとロックレバー40bとの間に挟み込む(クランプ治具31をロックする)。これにより、嵌合部材33の突起部33aと嵌合受部材43の溝部43aとが嵌合され、この嵌合によってクランプ治具31は所定のクランプ位置まで高精度にガイドされるとともに、ワーク103をクランプする。
【0036】
続くステップS110において、工程制御盤55は、溶接ロボット50を動作させ、クランプ治具31によってクランプされたワーク103をスポット溶接(仮組溶接)する。
【0037】
そして、ワーク103に対するスポット溶接が終了すると、工程制御盤55は、ステップS111に進み、アクチュエータ40dを動作させ、ロック機構40によるクランプ治具31のロック状態を解除する(アンロックする)。これにより、ワーク103に対するクランプ治具31によるクランプ状態が解除される。
【0038】
続くステップS112において、工程制御盤55は、クランプロボット30の多関節アーム32に対する制御を通じて、クランプ治具31を車体100から退避させる。
【0039】
続くステップS113において、工程制御盤55は、エアシリンダ21を動作させ、フレームロック機構20による脚部9のロックを解除(アンロック)する。
【0040】
続くステップS114において、工程制御盤55は、サイド治具フレーム6の可動治具フレーム6aを動作させ、サイドストラクチャ102からサイド基準ピン16を退避させる。
【0041】
続くステップS115において、工程制御盤55は、アッパ治具搬送ロボット10を動作させ、アッパ治具フレーム7を退避位置まで上昇させる。
【0042】
続くステップS116において、工程制御盤55は、治具基準ピン15を治具フレーム6から退避させることによって床下治具5をアンクランプする。
【0043】
そして、ステップS117において、工程制御盤55は、床下治具5とともに車体100を搬出した後、ルーチンを抜ける。
【0044】
このような実施形態によれば、複数のアッパ治具フレーム7の中から車種に応じたアッパ治具フレーム7を交換可能に配置して構成される治具フレーム構造体2と、治具フレーム構造体2に支持された車体100のワーク103をクランプするためのクランプ治具31と、このクランプ治具31を車体100に対して相対移動可能に支持する多関節アーム32と、クランプ治具31に設けられた嵌合部材33と、アッパ治具フレーム7に設けられ、嵌合部材33との嵌合によってクランプ治具31を車体100に予め設定したクランプ位置にガイドする嵌合受部材43と、を備えて車体の製造装置1を構成することにより、複数種類の車体のワークを高い自由度にて精度良くクランプすることができる。
【0045】
すなわち、クランプ治具31を多関節アーム32によって支持することにより、クランプ治具31を高い自由度にて車体100のワーク103に対してアプローチさせることができる。その上で、治具フレーム構造体2を構成するアッパ治具フレーム7を車種毎に交換可能とすることにより、車種に応じた最適な位置に嵌合受部材43を配置し、クランプ治具31に固設した嵌合部材33を嵌合受部材43に嵌合させることにより、多関節アーム32を用いた場合にも、クランプ治具31を予め設定したクランプ位置に精度良く配置することができる。
【0046】
なお、本発明は、以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲内である。
【0047】
例えば、
図11に示すように、クランプ治具本体31aの一部に嵌合部材33を固設するとともに、クランプレバー31bの他端側にリンク機構31eを連結し、クランプ治具本体31aの一部をロック機構本体40aとロックレバー40bとの間に挟み込むとき、当該ロックレバー40bの先端がリンク機構31eを押圧してクランプレバー31bをクランプ動作させるよう構成することも可能である。
【解決手段】複数のアッパ治具フレーム7の中から車種に応じたアッパ治具フレーム7を交換可能に配置して構成される治具フレーム構造体2と、治具フレーム構造体2に支持された車体100のワーク103をクランプするためのクランプ治具31と、このクランプ治具31を車体100に対して相対移動可能に支持する多関節アーム32と、クランプ治具31に設けられた嵌合部材33と、アッパ治具フレーム7に設けられ、嵌合部材32との嵌合によってクランプ治具31を車体100に予め設定したクランプ位置にガイドする嵌合受部材43と、を備えて車体の製造装置1を構成する。