特許第5815612号(P5815612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5815612
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月17日
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H04M 1/02 20060101AFI20151029BHJP
【FI】
   H04M1/02 C
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-157094(P2013-157094)
(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-27061(P2015-27061A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2014年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金巻 泰仁
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 允彦
【審査官】 中木 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−200729(JP,A)
【文献】 特開2003−271074(JP,A)
【文献】 特開2000−152385(JP,A)
【文献】 特開2006−135858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 1/02− 1/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に露出した外装部と、
前記外装部の内部に位置する透明な圧電振動素子と、
前記圧電振動素子を主面に有し、音声を発生させるために前記圧電振動素子により振動する透明な振動部と、
前記圧電振動素子よりも前記外装部の内側であって、平面視したときに前記圧電振動素子と重なるように位置し、前記振動部を通して画像または映像を表示する表示部と、
前記振動部の前記主面上に位置し、前記表示部からの画像または映像を通し、前記主面とともに前記圧電振動素子の周囲を囲む、接近検出部と、
を備える、電子機器。
【請求項2】
前記圧電振動素子は、樹脂製の圧電材料から構成させる請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記振動部のうち前記圧電振動素子の上に位置する領域へのタッチ操作が可能である、請求項1または2記載の電子機器
【請求項4】
前記振動部は、気導音と人体の一部を振動させて伝える振動音とを発生させる請求項1乃至3のいずれかに記載の電子機器。
【請求項5】
前記接近検出部は、平面視したときに前記圧電振動素子と重なるように位置する請求項1乃至4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項6】
前記圧電振動素子は、前記接近検出部の内部に含まれるように位置する請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
音声を発生させるアプリケーションが起動しているとき、音が聞き取りやすい場所を知らせる画像を前記表示部が表示し、
前記画像は、平面視したときに前記圧電振動素子と重なる位置に表示される請求項1乃至6のいずれかに記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者に音を伝達する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電子機器に関して様々な技術が提案されている。例えば特許文献1には、携帯電話機や固定電話機などの電話機のカバーパネルに対して圧電振動素子を取り付け、当該圧電振動素子を振動させることによって、当該電話機のユーザに対して音を伝達する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−131987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子機器は、画像または映像の表示領域の拡大が求められている。しかし、例えば特許文献1の場合では、液晶表示パネルからの映像や画像を妨げないように、圧電振動素子を液晶表示パネルの領域からずらして配置する必要があった。そのため、これまで、十分な表示領域を有する、圧電振動素子を具備する電子機器は存在していなかった。
【0005】
本発明はかかる実情に鑑みて創案されたもので、その目的は、表示領域を拡大させた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一例である電子機器は、外部に露出した外装部と、前記外装部の内部に位置する透明な圧電振動素子と、前記圧電振動素子を主面に有し、音声を発生させるために前記圧電振動素子により振動する透明な振動部と、前記圧電振動素子よりも前記外装部の内側であって、平面視したときに前記圧電振動素子と重なるように位置する表示部と、を備える。
【0007】
前記圧電振動素子は、樹脂製の圧電材料から構成させてもよい。
【0008】
前記振動部は外部に露出して位置し、表示部からの画像または映像を透過させてもよい。
【0009】
前記振動部は、気導音と人体の一部を振動させて伝える振動音とを発生させてもよい。
【0010】
平面視したときに前記圧電振動素子と重なるように位置する接近検出部をさらに有してもよい。
【0011】
前記圧電振動素子は、前記接近検出部の内部に含まれるように位置してもよい。
【0012】
音声を発生させるアプリケーションを起動させたとき、音が聞き取りやすい場所を知らせる画像を前記表示部が表示し、前記画像は、平面視したときに前記圧電振動素子と重なってもよい。
【発明の効果】
【0013】
前述のように、圧電振動素子と振動部とが透明であることにより、それらを表示部からずらして配置する必要がなくなり、電子機器の表示領域を拡大させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】電子機器の外観を示す前面図である。
図2】電子機器の外観を示す裏面図である。
図3】電子機器の電気的構成を示すブロック図である。
図4】圧電振動素子を示す平面図である。
図5】圧電振動素子を示す側面図である。
図6】圧電振動素子が撓む様子を示す図である。
図7】圧電振動素子が撓む様子を示す図である。
図8】気導音及び伝導音を説明するための図である。
図9】(a)は電子機器の断面図である。(b)は(a)を方向Aから平面視したときのカバーパネル1、表示パネル52、タッチパネル53および圧電振動素子55を示す図である。
図10】電子機器の表示画面1aを示す平面図である。
図11】(a)および(b)は電子機器の断面図である。
図12】(a)は電子機器の断面図である。(b)は(a)を方向Bから平面視した電子機器のタッチパネル53および圧電振動素子55を示す図である。
図13】電子機器の通話中の画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<電子機器の外観>
図面に示す本実施の形態に係る電子機器100は、例えば携帯電話機である。
【0016】
図1に示されるように、電子機器100は、振動部としてのカバーパネル1と外装部としてのケース部分2を備えており、カバーパネル1とケース部分2とが組み合わされることによって、平面視で略長方形の板状を成す機器ケース3が構成されている。
【0017】
カバーパネル1は、平面視において略長方形を成しており、電子機器100の前面部分における、周縁部分以外の部分を構成している。
【0018】
カバーパネル1は透明であり、例えば、ガラス、アクリル樹脂、サファイア結晶などで形成されている。ここで、透明とは、可視光に対する透過率が70%〜100%であることをいう。また、前述のサファイア結晶とは、酸化アルミニウム(AlO)結晶からなり、工業的に製造されたものをいう。
【0019】
ケース部分2は、電子機器100の前面部分の周縁部分、側面部分及び裏面部分を構成している。ケース部分2は、例えばポリカーボネート樹脂で形成されている。筐体3を形成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂あるいはナイロン系樹脂が採用される。ケース部分2は、1つの部材のみで構成されても良いし、複数の部材が組み合わされて構成されても良い。
【0020】
カバーパネル1には、文字、記号、図形等の各種情報が表示される表示部分1aが設けられている。表示部分1aは例えば平面視で長方形を成している。カバーパネル1における、表示部分1aを取り囲む周縁部分1bは、例えばフィルム等が貼られることによって黒色となっており、情報が表示されない非表示部分となっている。カバーパネル1の内側主面には後述するタッチパネル53が貼り付けられており、使用者は、カバーパネル1の表示部分1aを指等で操作することによって、電子機器100に対して各種指示を与えることができる。
【0021】
機器ケース3の内部には、操作ボタンなどの操作部54が設けられている。操作ボタンは、いわゆる「ハードキー」である。操作ボタンの表面が、カバーパネル1の外側主面10の下側端部から露出している。なお、操作部54は複数であってもよい。
【0022】
図1に示されるように、機器ケース3の内部には、後述する圧電振動素子55が設けられている。
【0023】
図1に示されるように、機器ケース3には、マイク穴20が設けられている。
【0024】
図2に示されるように、電子機器100の裏面101、言い換えれば機器ケース3の裏面には、スピーカ穴21が設けられている。また電子機器100の裏面101からは、後述する撮像部58が有する撮像レンズ58aが露出している。
【0025】
なお、図2の例として、スピーカの音を出すためにスピーカ穴21が示されているが、スピーカとして圧電振動素子を設けたフィルムスピーカなどを採用した場合は、スピーカ穴21を設けなくてもよい。
【0026】
また、図1の例では、マイクに音を集めるためにマイク穴20を設けていたが、穴を設けずとも音を電気信号に変換できるのであれば、マイク穴21を設ける必要はない。
【0027】
<電子機器の電気的構成>
図3は電子機器100の電気的構成を示すブロック図である。図3に示されるように、電子機器100は、制御部50、無線通信部51、表示部としての表示パネル52、接近検出部としてのタッチパネル53、操作部54、圧電振動素子55、外部スピーカ56、マイク57、撮像部58及び電池59を備えており、これらの構成要素は、機器ケース3内に収められている。
【0028】
制御部50は、CPU50a及び記憶部50b等を備えており、電子機器100の他の構成要素を制御することによって、電子機器100の動作を統括的に管理する。記憶部50bは、ROM及びRAM等で構成されている。制御部50には、CPU50aが記憶部50b内の各種プログラムを実行することによって、様々な機能ブロックが形成される。
【0029】
無線通信部51は、電子機器100とは別の携帯電話機あるいはインターネットに接続されたウェブサーバ等の通信装置からの信号を、基地局を介してアンテナ51aで受信する。無線通信部51は、受信信号に対して増幅処理及びダウンコンバートを行って制御部50に出力する。制御部50は、入力される受信信号に対して復調処理等を行って、当該受信信号に含まれる、音声や音楽などを示す音信号などを取得する。また無線通信部51は、制御部50で生成された、音信号等を含む送信信号に対してアップコンバート及び増幅処理を行って、処理後の送信信号をアンテナ51aから無線送信する。アンテナ51aからの送信信号は、基地局を通じて、電子機器100とは別の携帯電話機あるいはインターネットに接続された通信装置で受信される。
【0030】
表示部としての表示パネル52は、例えば、液晶表示パネルあるいは有機ELパネルであって、制御部50によって制御されることによって、文字、記号、図形などの各種情報を表示する。表示パネル52に表示される情報は、カバーパネル1の表示部分1aに表示されることによって、当該情報は電子機器100の使用者に視認可能となる。
【0031】
接近検出部としてのタッチパネル53は、例えば、投影型静電量容量方式のタッチパネルであって、カバーパネル1の表示部分1aに対する使用者の操作を検出する。タッチパ
ネル53は、カバーパネル1の内側主面に貼り付けられており、互いに対向配置されたシート状の2つの電極センサーを備えている。2つの電極センサーは透明粘着性シートによって貼り合わされている。
【0032】
一方の電極センサーには、それぞれがX軸方向(例えば電子機器100の左右方向)に沿って延在し、かつ互いに平行に配置された複数の細長いX電極が形成されている。他方の電極センサーには、それぞれがY軸方向(例えば電子機器100の上下方向)に沿って延在し、かつ互いに平行に配置された複数の細長いY電極が形成されている。カバーパネル1の表示部分1aに対して使用者の指が接触すると、その接触箇所の下にあるX電極及びY電極の間の静電容量が変化することによって、タッチパネル53においてカバーパネル1の表示部分1aに対する操作が検出される。タッチパネル53において生じる、X電極及びY電極の間の静電容量変化は制御部50に伝達され、制御部50は当該静電容量変化に基づいてカバーパネル1の表示部分1aに対して行われた操作の内容を特定し、それに応じた動作を行う。
【0033】
なお、接近検出部として、前述のようにタッチパネルを挙げたが、本実施の形態はそれに限定されない。例えば、タッチパネルのように接触を検知するものに限定されず、接触しなくても接近していることを検知するものも接近検出部に含む。例えば、近接センサーなどが挙げられる。他に、静電容量式タッチパネルよりも静電容量の変化をより敏感に受信できる静電容量式の接近検出装置であってもよい。
【0034】
操作部54は、操作ボタンが使用者によって押下されると、操作ボタンが押下されたことを示す操作信号を制御部50に出力する。制御部50は、入力される操作信号に基づいて、操作ボタンが操作されたかを特定し、操作された操作ボタンに応じた動作を行う。
【0035】
圧電振動素子55は、受話音を電子機器100の使用者に伝えるためのものである。圧電振動素子55は、制御部50から与えられる駆動電圧によって振動させられる。制御部50は、受話音を示す音信号に基づいて駆動電圧を生成し、当該駆動電圧を圧電振動素子55に印加する。圧電振動素子55が、制御部50によって受話音を示す音信号に基づいて振動させられることによって、電子機器100の使用者には受話音が伝達される。このように、制御部50は、音信号に基づいて圧電振動素子55を振動させる駆動部として機能する。圧電振動素子55については後で詳細に説明する。
【0036】
外部スピーカ56は、制御部50からの電気的な音信号を音に変換して出力する。外部スピーカ56から出力される音は、電子機器100の裏面101に設けられたスピーカ穴20から外部に出力される。
【0037】
マイク57は、電子機器100の外部から入力される音を電気的な音信号に変換して制御部50に出力する。電子機器100の外部からの音は、当該電子機器100の裏面101に設けられたマイク穴21から当該電子機器100の内部に取り込まれて、マイク57に入力される。
【0038】
撮像部58は、撮像レンズ58a及び撮像素子などで構成されており、制御部50による制御に基づいて、静止画像及び動画像を撮像する。
【0039】
電池59は、電子機器100の電源を出力する。電池59から出力された電源は、電子機器100が備える制御部50や無線通信部51などに含まれる各電子部品に対して供給される。
【0040】
<圧電振動素子の詳細>
図4,5は、それぞれ、圧電振動素子55の構造を示す上面図及び側面図である。図4,5に示されるように、圧電振動素子55は一方向に長い形状を成している。具体的には、圧電振動素子55は、平面視で長方形の細長い板状を成している。
【0041】
圧電振動素子55の厚みは0.5〜0.8mmである。また、圧電振動素子55を平面視したとき、長辺の長さは10〜20mm、短辺の長さは2〜5mmである。
【0042】
圧電振動素子55は、例えばバイモルフ構造を有しており、シム材55cを介して互いに貼り合わされた第1圧電板55a及び第2圧電板55bを備えている。
【0043】
圧電振動素子55では、第1圧電板55aに対して正の電圧を印加し、第2圧電板55bに対して負の電圧を印加すると、第1圧電板55aは長手方向に沿って伸び、第2圧電板55bは長手方向に沿って縮むようになる。これにより、図6に示されるように、圧電振動素子55は、第1圧電板55aを外側にして山状に撓むようになる。
【0044】
一方で、圧電振動素子55では、第1圧電板55aに対して負の電圧を印加し、第2圧電板55bに対して正の電圧を印加すると、第1圧電板55aは長手方向に沿って縮み、第2圧電板55bは長手方向に沿って伸びるようになる。これにより、図7に示されるように、圧電振動素子55は、第2圧電板55bを外側にして山状に撓むようになる。
【0045】
圧電振動素子55は、図6の状態と図7の状態とを交互にとることによって、撓み振動を行う。制御部50は、第1圧電板55aと第2圧電板55bとの間に、正の電圧と負の電圧とが交互に現れる交流電圧を印加することによって、圧電振動素子55を撓み振動させる。
【0046】
なお、図5〜7に示される圧電振動素子55では、シム材55cを間に挟んで貼り合わされた第1圧電板55a及び第2圧電板55bから成る構造が一つだけ設けられていたが、複数の当該構造を積層させても良い。
【0047】
<圧電振動素子の振動による受話音の発生について>
本実施の形態では、圧電振動素子55がカバーパネル1を振動させることによって、当該カバーパネル1から気導音及び伝導音が使用者に伝達されるようになっている。言い換えれば、圧電振動素子55自身の振動がカバーパネル1などの振動部に伝わることにより、当該カバーパネル1から気導音及び伝導音が使用者に伝達されるようになっている。
【0048】
ここで、気導音とは、外耳道孔(いわゆる「耳の穴」)に入った音波(空気振動)が鼓膜を振動させることによって、人の脳で認識される音である。一方で、伝導音とは、耳介軟骨が振動させられ、その耳介軟骨の振動が鼓膜に伝わって当該鼓膜が振動することによって、人の脳で認識される音である。以下に、気導音及び伝導音について詳細に説明する。
【0049】
図8は気導音及び伝導音を説明するための図である。図8には、電子機器100の使用者の耳の構造が示されている。図8においては、波線400は気導音が脳で認識される際の音信号(音情報)の伝導経路を示しており、実線410が、伝導音が脳で認識される際の音信号の伝導経路を示している。
【0050】
カバーパネル1に取り付けられた圧電振動素子55が、受話音を示す電気的な音信号に基づいて振動させられると、カバーパネル1が振動して、当該カバーパネル1から音波が出力される。使用者が、電子機器100を手に持って、当該電子機器100のカバーパネル1を当該使用者の耳介200に近づけると、あるいは当該電子機器100のカバーパネ
ル1を当該使用者の耳介200に当てると、当該カバーパネル1から出力される音波が外耳道孔210に入る。カバーパネル1からの音波は、外耳道孔210内を進み、鼓膜220を振動させる。鼓膜220の振動は耳小骨230に伝わり、耳小骨230が振動する。そして、耳小骨230の振動は蝸牛240に伝わって、蝸牛240において電気信号に変換される。この電気信号は、聴神経250を通って脳に伝達され、脳において受話音が認識される。このようにして、カバーパネル1から使用者に対して気導音が伝達される。
【0051】
また、使用者が、電子機器100を手に持って、当該電子機器100のカバーパネル1を当該使用者の耳介200に当てると、耳介軟骨200aが、圧電振動素子55によって振動させられているカバーパネル1によって振動させられる。耳介軟骨200aの振動は鼓膜220に伝わり、鼓膜220が振動する。鼓膜220の振動は耳小骨230に伝わり、耳小骨230が振動する。そして、耳小骨230の振動は蝸牛240に伝わり、蝸牛240において電気信号に変換される。この電気信号は、聴神経250を通って脳に伝達され、脳において受話音が認識される。このようにして、カバーパネル1から使用者に対して伝導音が伝達される。
【0052】
なお、ここでの伝導音は、骨導音(「骨伝導音」とも呼ばれる)とは異なるものである。骨導音は、頭蓋骨を振動させて、頭蓋骨の振動が直接蝸牛などの内耳を刺激することによって、人の脳で認識される音である。図8においては、例えば下顎骨300を振動させた場合において、骨伝導音が脳で認識される際の音信号の伝達経路を複数の円弧420で示している。
【0053】
このように、本実施の形態に係る電子機器100では、圧電振動素子55が前面のカバーパネル1を適切に振動させることによって、言い換えれば圧電振動素子55自身の振動を前面のカバーパネル1に適切に伝えることによって、カバーパネル1から電子機器100の使用者に対して気導音及び伝導音を伝えることができる。本実施の形態に係る圧電振動素子55では、使用者に対して適切に気導音及び伝導音を伝達できるように、その構造が工夫されている。使用者に対して気導音及び伝導音を伝えることができるように電子機器100を構成することによって様々なメリットが発生する。
【0054】
また、使用者は、周囲の騒音が大きい場合には、耳をカバーパネル1に強く押し当てることによって、伝導音の音量を大きくしつつ、周囲の騒音を聞こえにくくすることができる。よって、使用者は、周囲の騒音が大きい場合であっても、適切に通話を行うことができる。
【0055】
また、使用者は、耳栓やイヤホンを耳に取り付けた状態であっても、カバーパネル1を耳(より詳細には耳介)に当てることによって、電子機器100からの受話音を認識することができる。また、使用者は、耳にヘッドホンを取り付けた状態であっても、当該ヘッドホンにカバーパネル1を当てることによって、電子機器100からの受話音を認識することができる。
【0056】
<圧電振動素子の配置>
図9(a)は電子機器100の上下方向(長手方向)における断面構造を示す図である。また図9(b)は、振動部としてのカバーパネル1および表示部としての表示パネル52を、カバーパネル1の裏面側から見た際の(方向Aからの平面視)平面図である。なお、点線部は、実際に見えていない部分を透過視したことを示している。カバーパネルの裏面には、当該カバーパネル1の表示部分1a(図1参照)と対向するように、接近検出部としてのタッチパネル53が貼り付けられている。そして、表示パネル52は、カバーパネル1及びタッチパネル53に対向するように配置されている。カバーパネル1の表面では、平面視したときに表示パネル52と重なる箇所が表示部分1a(図1、2参照)とな
る。
【0057】
本実施の形態では、圧電振動素子55は透明である。透明な圧電振動素子55としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリ乳酸などの有機圧電材料などから構成される。具体的には、例えば、ポリ乳酸フィルムを第1圧電板55aおよび第2圧電板55bとして用い、それらを積層させている。なお、電極も例えばITO(Indium−Tin−Oxide、すなわちインジウム錫酸化物)など透明電極が用いられる。透明な圧電振動素子55を用いることにより、図9(b)に示すように、方向Aから平面視したときに、圧電振動素子55の位置を表示パネル52と重なる位置にすることが可能となる(図9(b)において、圧電振動素子55およびタッチパネル53は、実際は方向Aから見えていないため点線で示す)。そのため、例えば、図1のように、表示部分1aの上側にも存在していた周縁部分1bを小さくすることができ(実際に図1の場合は、表示部分1aの上側にも存在していた周縁部分1bを無くしている)表示領域をより広くすることができる。よって、図10のように、画像などを圧電振動素子55と対応する表示部分1aにも表示することが可能となり、画面いっぱいに画像や映像を表示することができる。
【0058】
タッチパネル53は、表示パネル52との間に隙間を有していてもよく、また、表示パネル52と接触していてもよい。本実施の形態のように、タッチパネル53と表示パネル52との間に隙間を設ける場合には、カバーパネル1が使用者によって指等で押されて、当該カバーパネル1が表示パネル52側に撓み、当該カバーパネル1が表示パネル52に当たって(より正確にはタッチパネルが表示パネル52に当たって)当該表示パネル52の表示が乱れることを抑制することができる。
【0059】
機器ケース3の内部には、CPU50a及びマイク57などの各種部品が搭載されるプリント基板が設けられている(不図示)。プリント基板は、電子機器1の内部において表示パネル52と対向するように配置されている。
【0060】
圧電振動素子55は、両面テープ、接着剤などの部材によって、カバーパネル1の裏面に貼り付けられている。
【0061】
これまで、圧電振動素子55は、表示パネル52と平面視したときに重ならないように配置されてきた。これは、圧電振動素子55を表示パネル52と重なるように配置させた場合、圧電振動素子55が、表示パネル52が出力する画像や映像の表示を邪魔することになるためである。しかし、本実施の形態に示されるように、透明な圧電振動素子55をカバーパネル1の上側に配置させることにより、前記圧電振動素子55は表示パネル5による表示を透過するため、結果として表示領域を広くすることができる。ここで、透明とは、可視光に対する透過率が70%〜100%であることをいう。
【0062】
図11には、本実施の形態の他の実施形態を示す。図11の場合、圧電振動素子55は、直接カバーパネル1に配置されておらず、カバーパネル1とは別の振動パネル4に配置され、その振動パネル4を介してカバーパネル1に配置されている。このように、本発明においては、振動部はカバーパネルに限定されない。振動パネル4としては、透明であるとともに、樹脂製パネル、樹脂製フィルム、ガラスパネル、ガラスフィルムなどが挙げられ、圧電振動素子55により発生した振動を、カバーパネル1に十分に伝えることができればよい。接着材や両面テープで貼着させる際に接着力が高いことから、振動パネル4として樹脂素材を用い、圧電振動素子55としても樹脂素材を用いることが好適である。
【0063】
なお、図11(a)には、カバーパネル1の裏面全面に振動パネル4を設けた例を示す。また、図11(b)には、圧電振動素子55に対応する一部にだけ振動パネル4を設けた例を示す。図11(a)の場合、カバーパネル1全面に振動パネル4からの振動が伝わ
るため、カバーパネル1のどの部分でもユーザは耳を近づけることで音声を聞くことが可能となる。また、図11(b)の場合、カバーパネル1の裏面の一部であって、圧電振動素子55に対応する場所に設けられた振動パネル4によって、振動が振動パネル4付近に集中して伝わるため、ユーザは圧電振動素子55付近に耳を近づけることにより、十分に音声を聞くことが可能となる。
【0064】
図12には、本実施の形態の他の実施形態を示す。図12では、圧電振動素子55がタッチパネル53内部に含まれるように位置している。具体的には、図12の場合、タッチパネル53の表面に凹部を設け、その凹部内に圧電振動素子55が配置されている。そして、圧電振動素子55とタッチパネル53とが、接着材や両面テープによりカバーパネル1の裏面に配置されている。図12(b)は、図12(a)におけるカバーパネル1を除いた状態で方向Bからタッチパネル53と圧電振動素子55とを平面視した図である。
【0065】
図12に示す電子機器の表面のうち圧電振動素子55の直上のカバーパネル1上に、ユーザの指が近づいてきたときの例を以下に示す。圧電振動素子1が設けられたタッチパネル53の凹部53aに接近を検出するための部位が設けられていない場合、凹部53aだけでは、その位置情報は検出できない。しかし、タッチパネル53における凹部53aの周囲部にて得た情報から、その位置情報を推測することができる。
【0066】
なお、上記では凹部53aに、接近検出するための部位が設けられていない場合を記載したが、本実施の形態はこれに限定されない。例えば、圧電振動素子55そのものが位置を検出する機能を有していてもよい。
【0067】
また、図12では、圧電振動素子55の周囲がタッチパネル53の凹部53aで囲まれている。この構造を採ることで、カバーパネル1において、凹部53aと対向する領域は、タッチパネル53に貼り付けられていないため、十分な振動領域を得ることができる。凹部53aの開口の面積は、振動領域が大きく、かつ、圧電振動素子55の上方のカバーパネル1のタッチ操作が十分に検出できればよい。
【0068】
図12の例では、タッチパネル53の凹部53aを設けてその中に圧電振動素子55を配置する例を示したが、本実施の形態はこれに限定されない。例えば、圧電振動素子55からカバーパネル1に振動を伝えることができるのであれば、タッチパネル53の内部に圧電振動素子55を配置してもよい。
【0069】
図13には、音声発生に関するアプリケーションとして、着信があった後に通話を開始したときの表示画面を示す。画像60は、ユーザに音が聞き取りやすい場所を知らせるための画像である。圧電振動素子55の直上が最も音声を聞き取りやすいため、画像60は、カバーパネル1側から平面視したときに圧電振動素子55と重なる位置に表示される。
【0070】
なお、図13の例では、音声発生に関するアプリケーションとして、音声通話を挙げたが、本実施の態様ではこのアプリケーションに限定されず、例えば、音楽再生、動画再生など音声を発生させるものであればよい。
【0071】
<受話口の穴(レシーバ用の穴)について>
携帯電話機などの電子機器では、当該電子機器の内部に設けられたレシーバ(受話用スピーカ)から出力される音を当該電子機器の外部に取り出すために、前面のカバーパネル1に受話口の穴があけられることがある。
【0072】
本実施の形態に係る電子機器100では、音を出力するカバーパネル1には、受話口の
穴(レシーバ用の穴)があけられていない。つまり、電子機器100の表面においては受話口の穴が設けられていない。したがって、カバーパネル1に受話口の穴をあける加工が不要となる。その結果、電子機器100の製造コストを低減することができ、電子機器100のコストダウンを図ることが可能となる。特に、カバーパネル1がガラス、サファイアなどで形成されている場合には、カバーパネル1に対する穴加工は困難であることから、カバーパネル1に受話口の穴をあけないことによって、電子機器100の製造コストをさらに低減することができる。また、カバーパネル1に受話口の穴をあけないことによって、カバーパネル1の強度を向上することができる。また、カバーパネル1に受話口の穴をあけないことによって、カバーパネル1の前面のデザイン性の自由度が向上する。特に、本実施の形態のように、電子機器100の前面の大部分をカバーパネル1が占める場合には、カバーパネル1に受話口の穴を設けないことはデザイン性の観点から非常に有効である。また、本実施の形態では、電子機器100の表面に受話口の穴がないことから、受話口の穴から水やほこり等が入るといった問題が発生しない。よって、電子機器100では、この問題に対する防水構造や防塵構造が不要となり、電子機器100のさらなるコストダウンを図ることができる。
【0073】
なお、本実施の形態では、カバーパネル1が振動することによって受話音が発生することから、電子機器100に受話口の穴が無くても、受話音を適切に使用者に伝えることができる。
【0074】
また、本実施の形態に係るカバーパネル1には、操作ボタン54aを露出させる穴12があけられているが、操作ボタン54aを露出させる穴をケース部分2にあけて、カバーパネル1に穴12を設けなくても良い。また、操作ボタン54aを無くして、カバーパネル1に穴12を設けなくても良い。これにより、カバーパネル1には穴が全く存在しなくなり、電子機器100のさらなるコストダウンとカバーパネル1の前面のデザイン性の自由度のさらなる向上が可能となる。
【0075】
なお、上述の例では、本願発明を携帯電話機に適用する場合を例にあげて説明したが、本願発明は携帯電話機以外の電子機器にも適用することができる。例えば、本願発明は、ゲーム機、ノートパソコン、ポータブルナビゲーションシステムなどに適用することができる。
【0076】
また、上述の例では、電子機器100としてタッチパネル53を有する携帯電話機を示したが、本実施の態様ではこれに限定されず、タッチパネル53を設けずに、ハードキーだけで入力できる電子機器100に対して入力を行っても良い。
【符号の説明】
【0077】
1 カバーパネル
2 ケース部分
50 制御部
52 表示パネル
53 タッチパネル
55 圧電振動素子
100 電子機器
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