特許第5815844号(P5815844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジクラの特許一覧

<>
  • 特許5815844-ファイバ光学系、及び、その製造方法 図000002
  • 特許5815844-ファイバ光学系、及び、その製造方法 図000003
  • 特許5815844-ファイバ光学系、及び、その製造方法 図000004
  • 特許5815844-ファイバ光学系、及び、その製造方法 図000005
  • 特許5815844-ファイバ光学系、及び、その製造方法 図000006
  • 特許5815844-ファイバ光学系、及び、その製造方法 図000007
  • 特許5815844-ファイバ光学系、及び、その製造方法 図000008
  • 特許5815844-ファイバ光学系、及び、その製造方法 図000009
  • 特許5815844-ファイバ光学系、及び、その製造方法 図000010
  • 特許5815844-ファイバ光学系、及び、その製造方法 図000011
  • 特許5815844-ファイバ光学系、及び、その製造方法 図000012
  • 特許5815844-ファイバ光学系、及び、その製造方法 図000013
  • 特許5815844-ファイバ光学系、及び、その製造方法 図000014
  • 特許5815844-ファイバ光学系、及び、その製造方法 図000015
  • 特許5815844-ファイバ光学系、及び、その製造方法 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5815844
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月17日
(54)【発明の名称】ファイバ光学系、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/067 20060101AFI20151029BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
   H01S3/067
   G02B6/036
【請求項の数】7
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-507473(P2014-507473)
(86)(22)【出願日】2013年1月30日
(86)【国際出願番号】JP2013052022
(87)【国際公開番号】WO2013145840
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2014年7月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-75098(P2012-75098)
(32)【優先日】2012年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田谷 浩之
【審査官】 里村 利光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−251694(JP,A)
【文献】 特開2004−252057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/067
G02B 6/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を増幅するダブルクラッドファイバと、
上記ダブルクラッドファイバにて増幅された光を伝送するシングルクラッドファイバとを備え、
上記ダブルクラッドファイバと上記シングルクラッドファイバとの間に、第1クラッドの断面積が異なる複数のトリプルクラッドファイバが挿入されており、
上記複数のトリプルクラッドファイバは、各トリプルクラッドファイバの第1クラッドの断面が、該トリプルクラッドファイバの上記ダブルクラッドファイバ側と反対側に接続されるトリプルクラッドファイバの第1クラッド及び第2クラッドの双方の断面と交わりを持つように接続されている、ことを特徴とするファイバ光学系。
【請求項2】
上記ダブルクラッドファイバと上記トリプルクラッドファイバとの接続点において、上記ダブルクラッドファイバのコアの断面が上記トリプルクラッドファイバのコアと第1クラッドとからなる領域の断面に包含されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のファイバ光学系。
【請求項3】
上記ダブルクラッドファイバと上記トリプルクラッドファイバとの接続点において、上記ダブルクラッドファイバの第1クラッドの断面が上記トリプルクラッドファイバの第1クラッド及び第2クラッドの双方の断面と交わりを持つ、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のファイバ光学系。
【請求項4】
上記トリプルクラッドファイバと上記シングルクラッドファイバとの接続点において、上記トリプルクラッドファイバの第1クラッドの断面が上記シングルクラッドファイバのクラッドの断面と交わりを持つ、
ことを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載のファイバ光学系。
【請求項5】
当該ファイバ光学系は、ファイバアンプを構成している、
ことを特徴とする請求項1からまでの何れか1項に記載のファイバ光学系。
【請求項6】
当該ファイバ光学系は、ファイバレーザを構成している、
ことを特徴とする請求項1からまでの何れか1項に記載のファイバ光学系。
【請求項7】
光を増幅するダブルクラッドファイバと、上記ダブルクラッドファイバにて増幅された光を伝送するシングルクラッドファイバとの間に、トリプルクラッドファイバを挿入する挿入工程と、
上記トリプルクラッドファイバの第1クラッドの断面積と上記トリプルクラッドファイバの第2クラッドの断面積との比を、上記ダブルクラッドファイバと上記トリプルクラッドファイバとの接続点において許容される発熱量、及び、上記トリプルクラッドファイバと上記シングルクラッドファイバとの接続点において許容される発熱量に基づいて設定する設定工程とを含んでいる、
ことを特徴とするファイバ光学系の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバアンプやファイバレーザなど、増幅用ダブルクラッドファイバと伝送用シングルクラッドファイバとを含むファイバ光学系に関する。また、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
信号光を増幅するダブルクラッドファイバ(以下、「増幅用ダブルクラッドファイバ」とも記載)と、その増幅用ダブルクラッドファイバにより増幅された信号光を伝送するシングルクラッドファイバ(以下、「伝送用シングルクラッドファイバ」とも記載)とを含むファイバ光学系が広く用いられている。ファイバアンプやファイバレーザなどは、このようなファイバ光学系の代表例である。
【0003】
図13は、従来の典型的なファイバアンプ5の構成を示すブロック図である。図13に示すように、ファイバアンプ5は、複数の光ファイバにより構成されるファイバ光学系である。以下の説明においては、ファイバアンプ5を構成する光ファイバを4つの区間に分け、これら4つの区間のことを、それぞれ、第1光ファイバ51、第2光ファイバ52、第3光ファイバ53、第4光ファイバ54と記載する。また、第1光ファイバ51と第2光ファイバ52との融着点をP2、第2光ファイバ52と第3光ファイバ53との融着点をP3、第3光ファイバ53と第4光ファイバ54との融着点をP4とする。
【0004】
第1光ファイバ51は、信号光を取り込むための光ファイバであり、シングルクラッドファイバにより構成される。第1光ファイバ51の入射端P1には、信号光源(不図示)が接続される。入射端P1を介して信号光源から第1光ファイバ51に入射した信号光は、第1光ファイバ51を伝播した後、融着点P2を介して第2光ファイバ52に入射する。
【0005】
第2光ファイバ52は、励起光を取り込むための光ファイバであり、第2光ファイバ52には、1つ以上(図13に示した例では6つ)の励起光源55が接続されたポンプコンバイナ56が挿入される。第2光ファイバ52のうち、融着点P2からポンプコンバイナ56までの区間は、シングルクラッドファイバにより構成され、ポンプコンバイナ56から融着点P3までの区間は、ダブルクラッドファイバにより構成される。融着点P2を介して第1光ファイバ51から第2光ファイバ52のコアに入射した信号光は、第2光ファイバ52を伝播した後、融着点P3を介して第3光ファイバ53に入射する。一方、ポンプコンバイナ56を介して励起光源55から第2光ファイバ52の第1クラッドに入射した励起光は、第2光ファイバ52を伝播した後、融着点P3を介して第3光ファイバ53に入射する。
【0006】
第3光ファイバ53は、信号光を増幅するための光ファイバであり、ダブルクラッドファイバにより構成される。すなわち、増幅用ダブルクラッドファイバである。第3光ファイバ53は、希土類などの活性元素が添加されたコア53aと、コア53aを取り囲む第1クラッド53b1と、第1クラッド53b1を取り囲む第2クラッド53b2と、第2クラッド53b2を取り囲む被覆53cとからなる断面構造を有する(図14参照)。融着点P3を介して第2光ファイバ52から第3光ファイバ53に入射した励起光は、第3光ファイバ53の第1クラッド53b1を伝播した後、融着点P4を介して第4光ファイバ54に入射する。コア53aに添加された活性元素は、この励起光によって反転分布状態に遷移する。一方、融着点P3を介して第2光ファイバ52から第3光ファイバ53に入射した信号光は、第3光ファイバ53のコア53aを伝播した後、融着点P4を介して第4光ファイバ54に入射する。第3光ファイバ53のコア53aに添加された活性元素は、この信号光によって誘導放出を起こす。励起光によって活性元素が反転分布状態に保たれているので、活性元素から誘導放出される光子数が活性元素に吸収される光子数を上回る。すなわち、第3光ファイバ53に入射した信号光は、第3光ファイバ53のコア53aを伝播する過程で増幅される。
【0007】
第4光ファイバ54は、増幅された信号光を伝送するための光ファイバであり、シングルクラッドファイバにより構成される。すなわち、伝送用シングルクラッドファイバである。融着点P4を介して第3光ファイバ53から第4光ファイバ54に入射した信号光は、第4光ファイバ54のコア54aを伝播した後、第4光ファイバ54の出力端P5から出力される。
【0008】
このように、伝送用シングルクラッドファイバである第4光ファイバ54を増幅用ダブルクラッドファイバである第3光ファイバ53に融着する場合、融着点P4において以下のような問題を生じる。
【0009】
すなわち、融着点P4において第3光ファイバ53と第4光ファイバ54との間に軸ズレが生じた場合、第4光ファイバ54のクラッド54bには、図14に示すように、第3光ファイバ53のコア53aにて増幅された信号光La1〜La2の一部が入射する。また、第4光ファイバ54のクラッド54bには、図14に示すように、活性元素に吸収されずに残った残留励起光Lbも入射する。第4光ファイバ54のクラッド54bに入射した信号光La2及び残留励起光Lbは、第4光ファイバ54のクラッド54bを伝播する過程で被覆54cを発熱させる。この熱により、被覆54cが劣化し、最悪の場合、第4光ファイバ54の破断に至る可能性がある。特に、近年の高出力ファイバアンプにおいては、第4光ファイバ54のクラッド54bを伝播する信号光La2のパワーが数十Wレベルになるので、このような問題は深刻である。
【0010】
なお、増幅用ダブルクラッド及び伝送用シングルクラッドファイバのコア径は、通常、10μm程度である。したがって、僅かな軸ズレであっても、増幅用ダブルクラッドファイバのコアから伝送用シングルクラッドファイバのクラッドに信号光が入射してしまう。また、増幅用ダブルクラッドファイバでは、スキュー対策のためにコアの形状を多角形とし、伝送用シングルクラッドファイバでは、コアの形状を円形とすることが多い。このような場合、融着点におけるコア形状の不一致によって、増幅用ダブルクラッドファイバのコアから伝送用シングルクラッドファイバのクラッドに信号光が入射し易くなる。
【0011】
このような問題を解決するための技術としては、特許文献1〜4に記載のものが挙げられる。
【0012】
特許文献1には、ダブルクラッドファイバとシングルクラッドファイバとの融着点を高熱伝導材からなるブロックで覆い、このブロックと各ファイバとの隙間に透明樹脂を充填することによって、シングルクラッドファイバに入射した直後の残留励起光を熱に変換する技術が記載されている。この透明樹脂としては、シングルクラッドファイバのクラッドよりも屈折率が高い樹脂が用いられる。また、特許文献2にも、ダブルクラッドファイバとシングルクラッドファイバとの融着点を高屈折率樹脂で覆い、放熱板で熱に変換する技術が記載されている。
【0013】
また、特許文献3には、ダブルクラッドファイバと融着接続されたシングルクラッドファイバにガイド部材を装着することによって、シングルクラッドファイバのクラッドを伝播する残留励起光を除去する技術が記載されている。このガイド部材としては、シングルクラッドファイバのクラッドよりも屈折率が高く、シングルクラッドファイバに密着する筒状の部材が用いられている。
【0014】
また、特許文献4には、ダブルクラッド偏波保持ファイバからシングルモード偏波保持ファイバのクラッドに入射した残留漏洩光を除去するための技術が記載されている。残留漏洩光を除去するための構成としては、被覆を10cmほど除去したシングルモード偏波保持ファイバを30mm径で巻き、金属板に固定する構成が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】日本国公開特許公報「特開2008−310277号公報」(2008年12月25日公開)
【特許文献2】日本国公開特許公報「特開2007−271786号公報」(2007年10月18日公開)
【特許文献3】日本国公開特許公報「特開2008−268747号公報」(2008年11月 6日公開)
【特許文献4】日本国公開特許公報「特開2010− 56265号公報」(2010年 3月11日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1〜2に記載の技術のように、ダブルクラッドファイバとシングルクラッドファイバとの融着点を高屈折率樹脂で覆うことによって、シングルクラッドファイバのクラッドに入射した直後の残留励起光を漏出させる技術には、以下のような問題があった。
【0017】
すなわち、例えば、図14に示した融着点P4を図15に示すように高屈折率樹脂57で覆った場合、第4光ファイバ54のクラッド54bに入射した残留励起光Lbに加えて、第4光ファイバ54のクラッド54bに入射した信号光La2が第4光ファイバ54から漏出することになる。換言すれば、第4光ファイバ54のコア54aに入射した信号光La1を除き、第4光ファイバ54に入射した全ての光が融着点P4の近傍において第4光ファイバ54から漏出することになる。このため、融着点P4の近傍にて多量の熱が発生し、その処理に要する放熱機構が大掛かりにならざるを得ない。また、十分な放熱機構が設けられない場合には、第4光ファイバ54の被覆の劣化や第4光ファイバ54の破断を招きかねない。
【0018】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、大掛かりな放熱機構を設けることなく、従来よりも信頼性の高いファイバ光学系を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明に係るファイバ光学系は、光を増幅するダブルクラッドファイバと、上記ダブルクラッドファイバにて増幅された光を伝送するシングルクラッドファイバと、上記ダブルクラッドファイバと上記シングルクラッドファイバとの間に挿入されたトリプルクラッドファイバとを備えている。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るファイバ光学系の製造方法は、光を増幅するダブルクラッドファイバを、トリプルクラッドファイバの一端に接続する工程と、上記ダブルクラッドファイバにて増幅された光を伝送するシングルクラッドファイバを、上記トリプルクラッドファイバの他端に接続する工程と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、大掛かりな放熱機構を設けることなく、従来よりも信頼性の高いファイバ光学系を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るファイバアンプの全体像を示すブロック図である。
図2図1のファイバアンプが備える放熱部の構成を示す三面図である。
図3図1のファイバアンプが備える第3光ファイバ(ダブルクラッドファイバ)及び第4光ファイバ(トリプルクラッドファイバ)の構造を示す断面図である。
図4図1のファイバアンプが備える第4光ファイバ(トリプルクラッドファイバ)及び第5光ファイバ(シングルクラッドファイバ)の構造を示す断面図である。
図5】(a)は、図3の融着点近傍における信号光の伝播形態を示す模式図である。(b)は、図3の融着点近傍における励起光の伝播形態を示す模式図である。
図6】(a)は、図4の融着点近傍における信号光の伝播形態を示す模式図である。(b)は、図4の融着点近傍における励起光の伝播形態を示す模式図である。
図7図1のファイバアンプが備える第4光ファイバの構成例として、第4光ファイバが3本のトリプルクラッドファイバからなる場合を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係るファイバレーザ(前方励起型)の全体像を示すブロック図である。
図9】本発明の実施形態に係る他のファイバレーザ(双方向励起型)の全体像を示すブロック図である。
図10図9のファイバレーザが備える第3光ファイバ(ダブルクラッドファイバ)と第4光ファイバ(トリプルクラッドファイバ)との融着点近傍における信号光及び励起光の伝播態様を示す模式図である。
図11図9のファイバレーザが備える第4光ファイバ(トリプルクラッドファイバ)と第5光ファイバ(トリプルクラッドファイバ)との融着点近傍における信号光及び励起光の伝播態様を示す模式図である。
図12図9のファイバレーザが備える第5光ファイバ(トリプルクラッドファイバ)と第6光ファイバ(シングルクラッドファイバ)との融着点近傍における信号光及び励起光の伝播態様を示す模式図である。
図13】従来のファイバアンプの全体像を示すブロック図である。
図14図13のファイバアンプが備える第3光ファイバ(ダブルクラッドファイバ)と第4光ファイバ(シングルクラッドファイバ)との融着点近傍における信号光及び励起光の伝播態様を示す模式図である。ただし、当該融着点が高屈折率樹脂に埋設されていない場合に関する。
図15図13のファイバアンプが備える第3光ファイバ(ダブルクラッドファイバ)と第4光ファイバ(シングルクラッドファイバ)との融着点近傍における信号光及び励起光の伝播態様を示す模式図である。ただし、当該融着点が高屈折率樹脂に埋設されている場合に関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書においては、マルチクラッドファイバのクラッドを構成する各層を内周側から順に第1クラッド、第2クラッド、第3クラッドと記載する。すなわち、特に断らずとも、第1クラッドは、最内周のクラッドを意味し、第2クラッドは、内周側から数えて2番目のクラッドを意味し、第3クラッドは、内周側から数えて3番目のクラッドを意味する。また、特に断らずとも、第1クラッドの屈折率はコアの屈折率よりも低く、第2クラッドの屈折率は第1クラッドの屈折率よりも低く、第3クラッドの屈折率は第2クラッドの屈折率よりも低いものとする。
【0024】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態に係るファイバ光学系について、図1図7に基づいて説明すれば以下のとおりである。なお、本実施形態に係るファイバ光学系は、ファイバアンプを構成しているので、以下ではこれをファイバアンプと記載する。
【0025】
〔ファイバアンプの全体像〕
まず、本実施形態に係るファイバアンプ1の全体像について、図1を参照して説明する。図1は、ファイバアンプ1の全体像を示すブロック図である。
【0026】
ファイバアンプ1は、図1に示すように、複数の光ファイバにより構成されたファイバ光学系である。以下の説明においては、ファイバアンプ1を構成する光ファイバを5つの区間に分け、これら5つの区間のことを、それぞれ、第1光ファイバ11、第2光ファイバ12、第3光ファイバ13、第4光ファイバ14、第5光ファイバ15と記載する。また、第1光ファイバ11と第2光ファイバ12との融着点をP2、第2光ファイバ12と第3光ファイバ13との融着点をP3、第3光ファイバ13と第4光ファイバ14との融着点をP4とする。
【0027】
第1光ファイバ11は、信号光を取り込むための光ファイバであり、シングルクラッドファイバ又はダブルクラッドファイバにより構成される。第1光ファイバ11の入射端P1には、信号光源(不図示)が接続される。入射端P1を介して信号光源から第1光ファイバ11に入射した信号光は、第1光ファイバ11を伝播した後、融着点P2を介して第2光ファイバ12に入射する。
【0028】
第2光ファイバ12は、励起光を取り込むための光ファイバであり、第2光ファイバ12には、1つ以上(図1に示した例では6つ)の励起光源16が接続されたポンプコンバイナ17が挿入される。第2光ファイバ12のうち、融着点P2からポンプコンバイナ17までの区間は、シングルクラッドファイバにより構成され、ポンプコンバイナ17から融着点P3までの区間は、ダブルクラッドファイバにより構成される。融着点P2を介して第1光ファイバ11から第2光ファイバ12のコアに入射した信号光は、第2光ファイバ12を伝播した後、融着点P3を介して第3光ファイバ13に入射する。一方、ポンプコンバイナ17を介して励起光源16から第2光ファイバ12の第1クラッドに入射した励起光は、第2光ファイバ12を伝播した後、融着点P3を介して第3光ファイバ13に入射する。
【0029】
第3光ファイバ13は、信号光を増幅するための増幅用光ファイバであり、ダブルクラッドファイバにより構成される。第3光ファイバ13のコア13a(図3参照)には、希土類などの活性元素が添加される。融着点P3を介して第2光ファイバ12から第3光ファイバ13に入射した励起光は、第3光ファイバ13の第1クラッド13b1(図3参照)を伝播した後、融着点P4を介して第4光ファイバ14に入射する。コア13aに添加された活性元素は、この励起光によって反転分布状態に遷移する。一方、融着点P3を介して第2光ファイバ12から第3光ファイバ13に入射した信号光は、第3光ファイバ13のコア13aを伝播した後、融着点P4を介して第4光ファイバ14に入射する。第3光ファイバ13のコア13aに添加された活性元素は、この信号光によって誘導放出を起こす。励起光によって活性元素が反転分布状態に保たれているので、活性元素から誘導放出される光子数が活性元素に吸収される光子数を上回る。すなわち、第3光ファイバ13に入射した信号光は、第3光ファイバ13のコア13aを伝播する過程で増幅される。なお、第3光ファイバ13の構造については、参照する図面を代えて後述する。
【0030】
第4光ファイバ14及び第5光ファイバ15は、増幅された信号光を伝送するための伝送用光ファイバである。第4光ファイバ14は、トリプルクラッドファイバにより構成され、第5光ファイバ15は、シングルクラッドファイバにより構成される。すなわち、従来のファイバアンプ5においては、伝送用光ファイバとして、シングルクラッドファイバ(第4光ファイバ54)が用いられていたのに対して、本実施形態のファイバアンプ1においては、伝送用光ファイバとして、トリプルクラッドファイバ(第4光ファイバ14)とシングルクラッドファイバ(第5光ファイバ15)とが用いられている。更に別の言い方をすれば、本実施形態のファイバアンプ1においては、増幅用ダブルクラッドファイバ(第3光ファイバ13)と伝送用シングルクラッドファイバ(第5光ファイバ15)との間に、トリプルクラッドファイバ(第4光ファイバ14)が挿入されている。増幅用ダブルクラッドファイバと伝送用シングルクラッドファイバとの間にトリプルクラッドファイバを挿入するとは、トリプルクラッドファイバの一端に増幅用ダブルクラッドファイバを接続し、トリプルクラッドファイバの他端に伝送用シングルクラッドファイバを接続することに他ならない。なお、第4光ファイバ14及び第5光ファイバ15の構造については、参照する図面を代えて後述する。
【0031】
第3光ファイバ13と第4光ファイバ14との間に軸ズレがない場合、融着点P4を介して第3光ファイバ13のコア13aから第4光ファイバ14に入射した信号光は、第4光ファイバ14のコア14a(図3参照)と結合する。一方、第3光ファイバ13と第4光ファイバ14との間に軸ズレがある場合、融着点P4を介して第3光ファイバ13のコア13aから第4光ファイバ14に入射した信号光は、第4光ファイバ14のコア14a及び第1クラッド14b1(図3参照)と結合する。
【0032】
そして、第4光ファイバ14のコア14aと結合した信号光(以下、「コアモード信号光」とも記載)は、第4光ファイバ14のコア14aを伝播した後、融着点P5を介して第5光ファイバ15に入射する。このようにして第5光ファイバ15に入射したコアモード信号光は、第5光ファイバ15のコア15a(図4参照)と結合する。そして、第5光ファイバ15のコア15aと結合したコアモード信号光は、第5光ファイバ15のコア15aを伝播した後、出力端P6から外部に出力される。
【0033】
一方、第4光ファイバ14の第1クラッド14b1と結合した信号光(以下、「クラッドモード信号光」とも記載)は、第4光ファイバ14の第1クラッド14b1を伝搬した後、融着点P5を介して第5光ファイバ15に入射する。このようにして第5光ファイバ15に入射したクラッドモード信号光は、第5光ファイバ15のクラッド15b(図4参照)と結合する。そして、第5光ファイバ15のクラッド15bと結合したクラッドモード信号光は、融着点P5の近傍において第5光ファイバ15の外部に漏出する。第5光ファイバ15から漏出したクラッドモード信号光は、放熱部19によって熱に変換される。
【0034】
融着点P4を介して第3光ファイバ13の第1クラッド13b1から第4光ファイバ14に入射した残留励起光(第3光ファイバ13において活性元素に吸収されずに残った励起光)は、第4光ファイバ14の第1クラッド14b1及び第2クラッド14b2と結合する。
【0035】
第4光ファイバ14の第1クラッド14b1と結合した残留励起光は、第4光ファイバ14の第1クラッド14b1を伝搬した後、融着点P5を介して第5光ファイバ15に入射する。このようにして第5光ファイバ15に入射した残留励起光は、第5光ファイバ15のクラッド15bと結合する。そして、第5光ファイバ15のクラッド15bと結合した残留励起光は、融着点P5の近傍において第5光ファイバ15の外部に漏出する。第5光ファイバ15から漏出した残留励起光は、放熱部19によって熱に変換される。
【0036】
一方、第4光ファイバ14の第2クラッド14b2と結合した残留励起光は、融着点P4の近傍において第4光ファイバ14の外部に漏出する。融着点P4の近傍において第4光ファイバ14から漏出した残留励起光は、放熱部18によって熱に変換される。放熱部18の構成例については、参照する図面を代えて後述する。
【0037】
このように、本実施形態のファイバアンプ1においては、残留励起光の一部を放熱部18において熱に変換し、残りの残留励起光とクラッドモード信号光とを放熱部19において熱に変換する構成が採られている。これにより、残留励起光とクラッドモード信号光とを単一の放熱部において熱に変換する構成と比べて、放熱部18〜19の各々における発熱量を抑えることができる。
【0038】
〔放熱部の構成例〕
次に、融着点P4に設けられる放熱部18の構成例について、図2を参照して説明する。図2は、この放熱部18の構成例を示す三面図である。
【0039】
放熱部18は、図2に示すように、金属板18aと高屈折率樹脂18bとにより構成される。金属板18aの上面には、一方の端面から他方の端面に到る、長手軸と平行な溝が形成されている。第3光ファイバ13及び第4光ファイバ14は、この溝に嵌め込まれる。そして、第4光ファイバ14の融着点P4近傍は、第2クラッド14b2に入射したクラッドモード信号光を漏出させるべく、図2に示すように、この溝に充填された高屈折率樹脂18bに埋設される。ここで、放熱部18の高屈折率樹脂18bとしては、屈折率が第4光ファイバ14の第2クラッド14b2よりも高いものが用いられる。一方、第3光ファイバ13の融着点P4近傍は、第1クラッド13b1を伝播する残留励起光の漏出を避けるべく、図2に示すように、空気(第1クラッド13b1よりも屈折率が低い)中に置かれる。なお、第3光ファイバ13の融着点P4近傍を、上記の溝に充填された低屈折率樹脂(第3光ファイバ13の第1クラッド13b1よりも屈折率が低い樹脂)に埋設する構成を採用してもよい。
【0040】
第4光ファイバ14は、融着点P4の近傍において、被覆14c及び第3クラッド14b3が除去されており、第2クラッド14b2が露出している。このため、融着点P4を介して第4光ファイバ14の第2クラッド14b2に入射した残留励起光は、融着点P4の近傍において高屈折率樹脂18bに漏出し、金属板18aにおいて熱に変換される。金属板18aの下面にヒートシンク等を接触させておけば、より効率的な放熱が実現される。
【0041】
なお、融着点P5に設けられる放熱部19についても、融着点P4に設けられる放熱部18と同様に構成することができる。放熱部19の高屈折率樹脂19bとしては、屈折率が第5光ファイバ15のクラッド15bよりも高いものを用いればよい。なお、第4光ファイバ14の第2クラッド14b2からは既に残留励起光が除去されているので、放熱部19においては、第5光ファイバ15の融着点P5近傍のみならず、第4光ファイバ14の融着点P5近傍をも、高屈折率樹脂19bに埋設する構成を採用して構わない。
【0042】
〔第3光ファイバ及び第4光ファイバの構造〕
次に、第3光ファイバ13及び第4光ファイバ14の構造と、融着点P4の近傍における信号光及び励起光の伝播態様とについて、図3及び図5を参照して説明する。図3は、第3光ファイバ13及び第4光ファイバ14の構造を示す断面図であり、図5は、融着点P4の近傍における信号光及び励起光の伝播形態を示す模式図である。なお、図3においては、第3光ファイバ13及び第4光ファイバ14の縦断面(長手軸に平行な断面)及び横断面(長手軸に垂直な断面)に加え、第3光ファイバ13及び第4光ファイバ14の屈折率分布も示している。
【0043】
第3光ファイバ13は、上述したようにダブルクラッドファイバであり、その横断面は、(1)円板(直径D0)状のコア13aと、(2)コア13aを取り囲む円環(外径D1)状の第1クラッド13b1と、(3)第1クラッド13b1を取り囲む円環(外径D2)状の第2クラッド13b2と、(4)第2クラッド13b2を取り囲む円環状の被覆13cとからなる4層構造を有する。コア13a及び第1クラッド13b1は、ガラスにより構成され、第2クラッド13b2及び被覆13cは、樹脂(例えば、ポリマー樹脂)により構成される。融着点P4の近傍においては、樹脂製の第2クラッド13b2及び被覆13cを除去し、ガラス製の第1クラッド13b1を露出させる構成が採られる。
【0044】
第3光ファイバ13において、第1クラッド13b1の屈折率は、コア13aの屈折率よりも低い。これにより、コア13aへの光の閉じ込めが実現される。また、第3光ファイバ13において、第2クラッド13b2の屈折率は、第1クラッド13b1の屈折率よりも低い。これにより、第1クラッド13b1への光の閉じ込めが実現される。なお、第3光ファイバ13において、被覆13cは、不透明であるか、或いは、透明であるとしても屈折率が第2クラッド13b2よりも高い。したがって、被覆13cは、第2クラッド13b2への光の閉じ込めを実現するものではなく、この意味で第3クラッドとは見做し得ないものである。
【0045】
第4光ファイバ14は、上述したようにトリプルクラッドファイバであり、その横断面は、(1)円板(直径T0)状のコア14aと、(2)コア14aを取り囲む円環(外径T1)状の第1クラッド14b1と、(3)第1クラッド14b1を取り囲む円環(外径T2)状の第2クラッド14b2と、(4)第2クラッド14b2を取り囲む円環(外径T3)状の第3クラッド14b3と、(5)第3クラッド14b3を取り囲む円環状の被覆14cとからなる5層構造を有している。コア14a、第1クラッド14b1、及び第2クラッド14b2は、ガラスにより構成され、第3クラッド14b3及び被覆14cは、樹脂(例えば、ポリマー樹脂)により構成される。融着点P4の近傍においては、樹脂製の第3クラッド14b3と被覆14cとを除去し、ガラス製の第2クラッド14b2を露出させる構成が採られる。
【0046】
第4光ファイバ14において、第1クラッド14b1の屈折率は、コア14aの屈折率よりも低い。これにより、コア14aへの光の閉じ込めが実現される。また、第4光ファイバ14において、第2クラッド14b2の屈折率は、第1クラッド14b1の屈折率よりも低い。これにより、第1クラッド14b1への光の閉じ込めが実現される。さらに、第4光ファイバ14において、第3クラッド14b3の屈折率は、第2クラッド13b2の屈折率よりも低い。これにより、第2クラッド14b2への光の閉じ込めが実現される。なお、被覆14cは、不透明であるか、或いは、透明であるとしても屈折率が第3クラッド14b3よりも高い。したがって、被覆14cは、第3クラッド14b3への光の閉じ込めを実現するものではなく、この意味で第4クラッドとは見做し得ないものである。
【0047】
本実施形態においては、図3に示すように、第3光ファイバ13のコア径(コア13aの直径と同義)D0と第4光ファイバ14のコア径(コア14aの直径と同義)T0とを一致させ、かつ、第3光ファイバ13の第1クラッド径(第1クラッド13b1の外径と同義)D1と第4光ファイバ14の第2クラッド径(第2クラッド14b2の外径と同義)T2とを一致させる構成を採用している。このため、第3光ファイバ13のコア径D0と、第3光ファイバ13の第1クラッド径D1と、第4光ファイバ14の第1クラッド径T1との間には、不等式D0<T1<D1が成立する。
【0048】
ここで、不等式D0<T1は、融着点P4において、第3光ファイバ13のコア13aが第4光ファイバ14のコア14aと第1クラッド14b1とからなる領域に包含され、第4光ファイバ14の第2クラッド14b2と交わり(重なり)を持たないことを意味する。この包含関係によって、融着点P4を介して第3光ファイバ13のコア13aから第4光ファイバ14に入射する信号光が、第4光ファイバ14のコア14a又は第1クラッド14b1の何れかと結合することが保証される。すなわち、第4光ファイバ14の第2クラッド14b2と結合しないことが保証される。
【0049】
このため、図5(a)に示すように、第3光ファイバ13のコア13aから第4光ファイバ14に入射する信号光La1〜La2は、その一部分が第4光ファイバ14のコア14aに入射し、残りの部分が第4光ファイバ14の第1クラッド14b1に入射する。第4光ファイバ14のコア14aに入射した信号光La1は、第4光ファイバ14のコア14aを伝播するコアモード信号光となり、第4光ファイバ14の第1クラッド14b1に入射した信号光La2は、第4光ファイバ14の第1クラッド14b1を伝播するクラッドモード信号光となる。すなわち、第3光ファイバ13のコア13aから第4光ファイバ14に入射する信号光La1〜La2は、第4光ファイバ14の第2クラッド14b2に入射することも、融着点P4の近傍において第4光ファイバ14から漏出することもない。
【0050】
また、不等式T1<D1は、融着点P4において、第3光ファイバ13の第1クラッド13b1が、第4光ファイバ14の第1クラッド14b1に包含されず、第4光ファイバ14の第1クラッド14b1及び第2クラッド14b2の双方と交わり(重なり)を持つことを意味する。この包含関係によって、融着点P4を介して第3光ファイバ13の第1クラッド13b1から第4光ファイバ14に入射する残留励起光が、第4光ファイバの第1クラッド14b1及び第2クラッド14b2の双方と結合することが保証される。
【0051】
このため、図5(b)に示すように、第3光ファイバ13の第1クラッド13b1から第4光ファイバ14に入射する残留励起光Lb1〜Lb2は、その一部分が第4光ファイバ14の第1クラッド14b1に入射し、残りの部分が第4光ファイバ14の第2クラッド14b2に入射する。第4光ファイバ14の第1クラッド14b1に入射した残留励起光Lb1が、第4光ファイバ14の第1クラッド14b1を伝播するのに対し、第4光ファイバ14の第2クラッド14b2に入射した残留励起光Lb2は、第4光ファイバ14から高屈折率樹脂18bに漏出する。そして、第4光ファイバ14から高屈折率樹脂18bに漏出した残留励起光Lb2は、高屈折率樹脂18bと共に放熱部18を構成する金属板18aにおいて熱に変換される。
【0052】
なお、本実施形態のように、融着点P4において第3光ファイバ13のコア13aが第4光ファイバ14のコア14aに包含されている場合、以下のことが言える。すなわち、第3光ファイバ13と第4光ファイバ14との間に軸ズレがなければ、融着点P4を介して第3光ファイバ13のコア13aから第4光ファイバ14に入射する信号光は、全て第4光ファイバ14のコア14aと結合する。したがって、この場合、第4光ファイバ14の第1クラッド14b1と結合する信号光は、第3光ファイバ13と第4光ファイバ14との間の軸ズレによって生じるものと見做すことができる。図1に関する説明において、クラッドモード信号光を、第3光ファイバ13と第4光ファイバ14との間の軸ズレに起因するものとして説明したのは、このためである。
【0053】
〔第4光ファイバ及び第5光ファイバの構造〕
次に、第4光ファイバ14及び第5光ファイバ15の構造と、融着点P5の近傍における信号光及び励起光の伝播態様とについて、図4及び図6を参照して説明する。図4は、第4光ファイバ14及び第5光ファイバ15の構造を示す断面図であり、図6は、融着点P5の近傍における信号光及び励起光の伝播形態を示す模式図である。なお、図4においては、第4光ファイバ14及び第5光ファイバ15の縦断面(長手軸に平行な断面)及び横断面(長手軸に垂直な断面)に加え、第4光ファイバ14及び第5光ファイバ15の屈折率分布も示している。
【0054】
第4光ファイバ14の構造については、図3を参照して既に説明したとおりなので、ここでは、その説明を繰り返さない。なお、融着点P5の近傍においても、樹脂製の第3クラッド14b3と被覆14cとを除去し、ガラス製の第2クラッド14b2を露出させる構成が採られる。
【0055】
第5光ファイバ15は、上述したようにシングルクラッドファイバであり、その横断面は、(1)円板(直径S0)状のコア15aと、(2)コア15aを取り囲む円環(外径S1)状のクラッド15bと、(3)クラッド15bを取り囲む円環状の被覆15cとからなる3層構造を有している。コア15a及びクラッド15bは、ガラスにより構成され、被覆15cは、樹脂(例えば、ポリマー樹脂)により構成される。融着点P5の近傍においては、樹脂製の被覆15cを除去し、クラッド15bを露出させる構成が採られる。
【0056】
第5光ファイバ15において、クラッド15bの屈折率は、コア15aの屈折率よりも低い。これにより、コア15aへの光の閉じ込めが実現される。なお、被覆15cは、不透明であるか、或いは、透明であるとしても屈折率がクラッド15bよりも高い。したがって、被覆15cは、クラッド15bへの光の閉じ込めを実現するものではなく、この意味で第2クラッドとは見做し得ないものである。
【0057】
本実施形態においては、図4に示すように、(a)第4光ファイバ14のコア径T0と第5光ファイバ15のコア径(コア15aの直径と同義)S0とを一致させ、(b)第4光ファイバ14の第2クラッド径T2と第5光ファイバ15のクラッド径(クラッド15bの外径と同義)S1とを一致させる構成を採用している。このため、第4光ファイバ14のコア径T0及び第1クラッド径T1と、第5光ファイバ15のコア径S0との間には、不等式T0≦S0<T1が成り立つ。
【0058】
ここで、不等式T0≦S0は、融着点P5において、第4光ファイバ14のコア14aが第5光ファイバ15のコア15aに包含され、第5光ファイバ15のクラッド15bと交わりを持たないことを意味する。この包含関係によって、第4光ファイバ14と第5光ファイバ15との間に軸ズレが生じない限り、融着点P5を介して第4光ファイバ14のコア14aから第5光ファイバ15に入射する信号光が、第5光ファイバ15のコア15aと結合することが保証される。すなわち、第5光ファイバ15のクラッド15bと結合しないことが保証される。
【0059】
このため、図6(a)に示すように、第4光ファイバ14のコア14aを伝播したコアモード信号光La1は、第5光ファイバ15のコア15aに入射する。すなわち、第4光ファイバ14のコア14aを伝播したコアモード信号光La1は、第5光ファイバ15のクラッド15bに入射することも、融着点P5の近傍において第4光ファイバ14から漏出することもない。
【0060】
また、不等式S0<T1は、融着点P5において、第4光ファイバ14の第1クラッド14b1が、第5光ファイバ15のコア15aに包含されることなく、第5光ファイバ15のクラッド15bと交わり(重なり)を持つことを意味している。この包含関係によって、融着点P5を介して第4光ファイバ14の第1クラッド14b1から第5光ファイバ15に入射する信号光及び残留励起光が、第5光ファイバ15のクラッド15bと結合することが保証される。
【0061】
このため、図6(a)に示すように、第4光ファイバ14の第1クラッド14b1を伝播したクラッドモード信号光La2は、第5光ファイバ15のクラッド15bに入射する。そして、第5光ファイバ15のクラッド15bに入射したクラッドモード信号光La2は、第5光ファイバ15から高屈折率樹脂19bに漏出し、この高屈折率樹脂19bと共に放熱部19を構成する金属板において熱に変換される。
【0062】
同様に、図6(b)に示すように、第4光ファイバ14の第1クラッド14b1を伝播した残留励起光Lb1は、第5光ファイバ15のクラッド15bに入射する。そして、第5光ファイバ15のクラッド15bに入射した残留励起光Lb1は、第5光ファイバ15から高屈折率樹脂19bに漏出し、この高屈折率樹脂19bと共に放熱部19を構成する金属板において熱に変換される。
【0063】
なお、軸ズレによって第4光ファイバ14のコア14aと第5光ファイバ15のクラッド15bとの間に交わりが生じた場合、第4光ファイバ14のコア14aを伝播したコアモード信号光La1の一部が、第5光ファイバ15のクラッド15bに入射することになる。この場合、第5光ファイバ15のクラッド15bに入射したコアモード信号光La1は、第5光ファイバ15のクラッド15bに入射したクラッドモード信号光La2及び残留励起光Lb1と同様、第5光ファイバ15から高屈折率樹脂19bに漏出し、この高屈折率樹脂19bと共に放熱部19を構成する金属板において熱に変換されることになる。
【0064】
〔残留励起光による発熱量の配分〕
放熱部19及び放熱部18においては、それぞれ、残留励起光Lb1及び残留励起光Lb2に応じた発熱がある。したがって、残留励起光Lb1のパワーp1と残留励起光Lb2のパワーp2との比p1:p2を変更すれば、放熱部19での発熱量q1と放熱部18での発熱量q2との比q1:q2を変更することができる。ここで、残留励起光Lb1は、第4光ファイバ14に入射する残留励起光のうちで第1クラッド14b1に入射するものを指し、残留励起光Lb2は、第4光ファイバ14に入射する残留励起光のうちで第2クラッド14b2に入射するものを指す。
【0065】
ところで、残留励起光Lb1と残留励起光Lb2とのパワー比p1/p2は、概ね、第4光ファイバ14の第1クラッド14b1と第2クラッド14b2との断面積比s1/s2に比例する。例えば、第1クラッド14b1の断面積s1が第2クラッド14b2の断面積s2の1/2であれば、残留励起光Lb1のパワーp1も残留励起光Lb2のパワーp2の約1/2になり、放熱部19での発熱量q1も放熱部18での発熱量q2の約1/2になる。したがって、ファイバアンプ1の製造に際し、断面積比s1/s2を放熱部18及び放熱部19において許容される発熱量に基づいて設定すれば、信頼性の高いファイバアンプ1を実現することができる。
【0066】
なお、パワー比p1/p2は、厳密に言うと、断面積比s1/s2に比例しない。何故なら、パワー比p1/p2は、残留励起光の伝搬角分布にも依存するからである(例えば、伝搬角が大きい残留励起光は、第1クラッド14b1に入射しても、第1クラッド14b1と第2クラッド14b2との境界面において全反射せず、第2クラッド14b2に漏出する)。ただし、残留励起光の伝搬角分布がパワー比p1/p2に与える影響は、断面積比s1/s2がパワー比p1/p2に与える影響に比べて十分に小さい。したがって、放熱設計に際しては、パワー比p1/p2が断面積比s1/s2に比例すると仮定しても差し支えない。
【0067】
なお、第4光ファイバ14を、第1クラッドの断面積が異なる(より具体的には、第1クラッド径が次第に低下する)複数のトリプルクラッドファイバにより構成した場合、第4光ファイバ14に入射した残留励起光を更に段階的に除去することが可能になる。
【0068】
例えば、図7に示すように、第4光ファイバ14を3本のトリプルクラッドファイバTCF1〜TCF3により構成した場合、融着点P4及び融着点P5に加えて、融着点Q1及び融着点Q2においても残留励起光の除去が可能になる。ここで、融着点Q1は、第1トリプルクラッドファイバTCF1と第2トリプルクラッドファイバTCF2とが融着接続された点であり、融着点Q1において、第1トリプルクラッドファイバTCF1の第1クラッドの横断面は、第2トリプルクラッドファイバTCF2の第1クラッド及び第2クラッドの双方の横断面と交わりを持つ。また、融着点Q2は、第2トリプルクラッドファイバTCF2と第3トリプルクラッドファイバTCF3とが融着接続された点であり、融着点Q2において、第2トリプルクラッドファイバTCF2の第1クラッドの横断面は、第3トリプルクラッドファイバTCF3の第1クラッド及び第2クラッドの双方の横断面と交わりを持つ。
【0069】
なお、図7においては、トリプルクラッドファイバTCF1〜TCF3の黒塗部分が第1クラッドを示している。また、融着点Q1は、第2トリプルクラッドファイバTCF2の第2クラッドよりも屈折率の高い高屈折率樹脂(不図示)に埋設され、融着点Q2は、第3トリプルクラッドファイバTCF3の第2クラッドよりも屈折率の高い高屈折率樹脂(不図示)に埋設されているものとする。
【0070】
第1トリプルクラッドファイバTCF1における第1クラッドの断面積をA1、第2トリプルクラッドファイバTCF2における第1クラッドの断面積をA2、第3トリプルクラッドファイバTCF3における第1クラッドの断面積をA3とすると、第1トリプルクラッドファイバTCF1の第1クラッドに入射した残留励起光の(A1−A2)/A1が融着点Q1にて除去され、第2トリプルクラッドファイバTCF2の第1クラッドに入射した残留励起光の(A2−A3)/A2が融着点Q1にて除去されることになる。
【0071】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態に係るファイバ光学系について、図8に基づいて説明すれば以下のとおりである。なお、本実施形態に係るファイバ光学系は、ファイバレーザを構成しているので、以下ではこれをファイバレーザと記載する。
【0072】
図8は、本実施形態に係るファイバレーザ2の構成を示すブロック図である。ファイバレーザ2は、図8に示すように、光ファイバ21〜25により構成された前方励起ファイバレーザである。
【0073】
ファイバレーザ2を構成する第1光ファイバ21(シングルクラッドファイバ又はダブルクラッドファイバ)、第2光ファイバ22(シングルクラッドファイバ及びダブルクラッドファイバ)、第3光ファイバ23(ダブルクラッドファイバ)、第4光ファイバ24(トリプルクラッドファイバ)、及び第5光ファイバ25(シングルクラッドファイバ)は、それぞれ、先に説明したファイバアンプ1を構成する第1光ファイバ11、第2光ファイバ12、第3光ファイバ13、第4光ファイバ14、及び第5光ファイバ15に対応する。
【0074】
ファイバレーザ2がファイバアンプ1と相違する点は、第1光ファイバ21にファイバブラッググレーティング20aが挿入されている点、及び、第4光ファイバ24にファイバブラッググレーティング20bが挿入されている点である。ファイバレーザ2において、ファイバブラッググレーティング20aはミラーとして機能し、ファイバブラッググレーティング20bはハーフミラーとして機能する。これにより、特定の波長を有する信号光が2つのファイバブラッググレーティング20a〜20bの間で再帰的に増幅されるようになり、レーザ発振が実現される。
【0075】
第3光ファイバ23と第4光ファイバ24との融着点P4において、残留励起光の一部が第4光ファイバ24から漏出し、放熱部28にて熱に変換される点は、ファイバアンプ1と同様である。また、第4光ファイバ24と第5光ファイバ25との融着点P5において、残りの残留励起光とクラッドモード信号光が第5光ファイバ25から漏出し、放熱部29にて熱に変換される点も、ファイバアンプ1と同様である。すなわち、本実施形態のファイバレーザ2においても、残留励起光の一部を放熱部28において熱に変換し、残りの残留励起光とクラッドモード信号光とを放熱部29において熱に変換する構成が採られている。
【0076】
上記の構成を採用した場合、300Wのレーザ出力時に、放熱部28の温度を約55℃、放熱部29の温度を約45℃に抑え得ることが実験により確かめられた。対照のために行った実験によれば、クラッドモード信号光と残留励起光とを単一の放熱部にて熱に変換すると、その放熱部の温度が100℃近くまで上昇する。すなわち、上記の構成によれば、2つの放熱部28〜29の温度を上記単一の放熱部の温度よりも低く抑え得ることが実験により確かめられた。
2つのファイバブラッググレーティング20a〜20bに挟まれた区間において、外部に漏出する光は残留励起光のみなので、トリプルクラッドファイバである第4光ファイバ24の導入により、ファイバレーザ2の効率が低下したり、発振する信号光の品質が低下したりする虞はない。
【0077】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態に係るファイバ光学系について、図9図12に基づいて説明すれば以下のとおりである。なお、本実施形態に係るファイバ光学系は、ファイバレーザを構成しているので、以下ではこれをファイバレーザと記載する。
【0078】
〔ファイバレーザの構成〕
まず、本実施形態に係るファイバレーザ3の構成について、図9を参照して説明する。図9は、本実施形態に係るファイバレーザ3の構成を示すブロック図である。
【0079】
ファイバレーザ3は、図9に示すように、複数の光ファイバにより構成された双方向励起ファイバレーザである。以下の説明においては、ファイバレーザ3を構成する光ファイバを7つの区間に分け、これら7つの区間のことを、それぞれ、第1光ファイバ31、第2光ファイバ32、第3光ファイバ33、第4光ファイバ34、第5光ファイバ35、第6光ファイバ36、第7光ファイバ37と記載する。また、第1光ファイバ31と第2光ファイバ32との融着点をP2、第2光ファイバ32と第3光ファイバ33との融着点をP3、第3光ファイバ33と第4光ファイバ34との融着点をP4、第4光ファイバ34と第5光ファイバ35との融着点をP5、第5光ファイバ35と第6光ファイバ36との融着点をP6、第6光ファイバ36と第7光ファイバ37との融着点をP7とする。
【0080】
ファイバレーザ3においては、第2光ファイバ32に挿入されたファイバブラッググレーティング32x(高反射ミラーとして機能する)と、第6光ファイバ36に挿入されたファイバブラッググレーティング36x(低反射ミラーとして機能する)との間の区間(増幅用ファイバとして機能する第4光ファイバ34を含む)が、ファブリペロー共振器を構成する。このファブリペロー共振器にて発振した信号光について、その大部分は、ファイバブラッググレーティング36xを透過した後、出射点P8に向かって伝送されるが、その一部分は、ファイバブラッググレーティング32xを透過した後、終端点P1に向かって伝送される。後者の信号光(以下「後進信号光」とも記載)の強度は、前者の信号光(以下「前進信号光」とも記載)の強度よりも小さいが、ファイバレーザ3の高出力化を進めると、後進信号光による発熱も無視でないものとなる。そこで、本実施形態においては、出射点P8に向かって伝送される前進信号光、及び、終端点P1に向かって伝送される後進信号光の双方について、本発明を適用することによって放熱箇所を分散させる。残留励起光の放熱についても同様である。
【0081】
第1光ファイバ31は、シングルクラッドファイバであり、第4光ファイバ34にて増幅された後進信号光を伝送するために利用される。融着点P2を介して第2光ファイバ32から第1光ファイバ31に入射した後進信号光は、第1光ファイバ31を伝播した後、終端点P1から外部に出力される。
【0082】
第2光ファイバ32は、トリプルクラッドファイバであり、第1光ファイバ31と共に、第4光ファイバ34にて増幅された後進信号光を伝送するために利用される。第2光ファイバ32には、高反射ミラーとして機能するファイバブラッググレーティング32xが挿入される。融着点P3を介して第3光ファイバ33から第2光ファイバ32のコアに入射した後進信号光の一部は、ファイバブラッググレーティング32xを透過した後、融着点P2を介して第1光ファイバ31に入射する。一方、融着点P3を介して第3光ファイバ33から第2光ファイバ32のコアに入射した後進信号光の残りの部分は、ファイバブラッググレーティング32xにて反射された後、融着点P3を介して第3光ファイバ33に入射する。
【0083】
第3光ファイバ33は、トリプルクラッドファイバであり、第1光ファイバ31及び第2光ファイバ32と共に、第4光ファイバ34にて増幅された後進信号光を伝送するために利用される。融着点P4を介して第4光ファイバ34から第3光ファイバ33に入射した後進信号光は、第3光ファイバ33のコアを伝播した後、融着点P3を介して第2光ファイバ32に入射する。この第3光ファイバ33には、1つ以上(図9に示した例では6つ)の励起光源33yが接続されたポンプコンバイナ33xが挿入される。ポンプコンバイナ33xを介して励起光源33yから第3光ファイバ33に入射した励起光は、第3光ファイバ33を伝播した後、融着点P4を介して第4光ファイバ34に入射する。
【0084】
第4光ファイバ34は、ダブルクラッドファイバであり、そのコア34a(図10参照)には、希土類などの活性元素が添加されている。融着点P4を介して第3光ファイバ33から第4光ファイバ34に入射した励起光は、第4光ファイバ34の第1クラッド34b1(図10参照)を伝播した後、融着点P5を介して第5光ファイバ35に入射する。コア35aに添加された活性元素は、この励起光によって反転分布状態に遷移する。反転分布状態に遷移した活性元素は、自然放出光によって連鎖的な誘導放出を起こす。すなわち、第4光ファイバ34において、自然放出光の一部が信号光となり、この信号光が、第4光ファイバ34のコア34aを伝播する過程で増幅される。
【0085】
第5光ファイバ35は、トリプルクラッドファイバであり、第4光ファイバ34にて増幅された前進信号光を伝送するために利用される。融着点P5を介して第4光ファイバ34から第5光ファイバ35に入射した前進信号光は、第5光ファイバ35のコア35a(図10参照)を伝播した後、融着点P6を介して第6光ファイバ36に入射する。この第5光ファイバ35には、1つ以上(図9に示した例では6つ)の励起光源35yが接続されたポンプコンバイナ35xが挿入される。ポンプコンバイナ35xを介して励起光源35yから第5光ファイバ35に入射した励起光は、第5光ファイバ35を伝播した後、融着点P5を介して逆方向から第4光ファイバ34に入射する。なお、クラッドモード信号光及び残留励起光の伝播態様については、参照する図面を代えて後述する。
【0086】
第6光ファイバ36は、トリプルクラッドファイバであり、第5光ファイバ35と共に、第4光ファイバ34にて増幅された前進信号光を伝送するために利用される。第6光ファイバ36には、低反射ミラーとして機能するファイバブラッググレーティング36xが挿入される。したがって、融着点P6を介して第5光ファイバ35から第6光ファイバ36のコア36a(図11参照)に入射した前進信号光の一部は、ファイバブラッググレーティング36xを透過した後、融着点P7を介して第7光ファイバ37に入射する。一方、融着点P6を介して第5光ファイバ35から第6光ファイバ36のコア36aに入射した前進信号光の残りの部分は、ファイバブラッググレーティング36xにて反射された後、融着点P6を介して逆方向から第5光ファイバ35に入射する。なお、クラッドモード信号光及び残留励起光の伝播態様については、参照する図面を代えて後述する。
【0087】
第7光ファイバ37は、シングルクラッドファイバであり、第5光ファイバ35及び第6光ファイバ36と共に、第4光ファイバ34にて増幅された前進信号光を伝送するために利用される。融着点P7を介して第6光ファイバ36から第7光ファイバ37に入射した前進信号光は、第7光ファイバ37のコア37a(図12参照)を伝播した後、出射点P8から外部に出力される。なお、クラッドモード信号光及び残留励起光の伝播態様については、参照する図面を代えて後述する。
【0088】
なお、融着点P6、P7、P3、P2には、それぞれ、放熱部38、39、40、41が設けられている。これらの放熱部38〜41の構成は、何れも、図2に示した放熱部18の構成と同様である。これらの放熱部38〜41が担う機能については、参照する図面を代えて後述する。
【0089】
〔信号光及び励起光の伝播態様〕
次に、信号光及び励起光の伝播態様について、図10図12を参照して説明する。なお、以下では、第4光ファイバ34から出射点P8に向かって伝播する前進信号光及び前進励起光について説明するが、第4光ファイバ34から終端点P1に向かって伝播する後進信号光及び後進励起光についても同様のことが言える。
【0090】
図10は、第4光ファイバ34と第5光ファイバ35との融着点P5近傍における信号光及び励起光の伝播態様を示す模式図である。(a)は、信号光に関するものであり、(b)は、励起光に関するものである。
【0091】
第4光ファイバ34は、ダブルクラッドファイバであり、その横断面は、図10に示すように、(1)コア34aと、(2)コア34aを取り囲む第1クラッド34b1と、(3)第1クラッド34b1を取り囲む第2クラッド34b2と、(4)第2クラッド34b2を取り囲む被覆34cとからなる4層構造を有する。コア34a及び第1クラッド34b1は、ガラスにより構成され、第2クラッド34b2及び被覆34cは、樹脂(例えば、ポリマー樹脂)により構成される。融着点P5の近傍においては、樹脂製の第2クラッド34b2及び被覆34cを除去し、ガラス製の第1クラッド34b1を露出させる構成が採られる。
【0092】
一方、第5光ファイバ35は、トリプルクラッドファイバであり、その横断面は、図10に示すように、(1)コア35aと、(2)コア35aを取り囲む第1クラッド35b1と、(3)第1クラッド35b1を取り囲む第2クラッド35b2と、(4)第2クラッド35b2を取り囲む第3クラッド35b3と、(5)第3クラッド35b3を取り囲む被覆35cとからなる5層構造を有している。コア35a、第1クラッド35b1、及び第2クラッド35b2は、ガラスにより構成され、第3クラッド35b3及び被覆35cは、樹脂(例えば、ポリマー樹脂)により構成される。融着点P5の近傍においては、樹脂製の第3クラッド35b3と被覆35cとを除去し、ガラス製の第2クラッド35b2を露出させる構成が採られる。
【0093】
第4光ファイバ34のコア34aを伝播した信号光La1〜La2は、図10(a)に示すように、第4光ファイバ34と第5光ファイバ35との間に軸ズレが生じている場合、その一部分(La1)が第5光ファイバ35のコア35aに入射し、残りの部分(La2)が第5光ファイバ35の第1クラッド35b1に入射する。このように、信号光La1〜La2が第5光ファイバ35の第2クラッド35b2に入射しないのは、融着点P5において、第4光ファイバ34のコア34aの横断面が、第5光ファイバ35のコア35a及び第1クラッド35b1からなる領域の横断面に包含されているためである。
【0094】
第5光ファイバ35のコア3aに入射した信号光La1は、第5光ファイバ35のコア35aを伝播するコアモード信号光となり、第5光ファイバ35の第1クラッド35b1に入射した信号光La2は、第5光ファイバ35の第1クラッド35b1を伝播するクラッドモード信号光となる。
【0095】
一方、第4光ファイバ34の第1クラッド34b1を伝播した残留励起光Lb1〜Lb2は、図10(b)に示すように、その一部分(Lb1)が第5光ファイバ35の第1クラッド35b1に入射し、残りの部分(Lb2)が第5光ファイバ35の第2クラッド35b2に入射する。このように、残留励起光Lb1〜Lb2が第5光ファイバ35の第1クラッド35b1及び第2クラッド35b2の双方に入射するのは、融着点P5において、第4光ファイバ34の第1クラッド34b1の横断面が、第5光ファイバ35の第1クラッド35b1及び第2クラッド35b2の双方の横断面と交わり(重なり)を持っているからである。
【0096】
第5光ファイバ35の第1クラッド35b1に入射した残留励起光Lb1は、第5光ファイバ35の第1クラッド35b1を伝播し、第5光ファイバ35の第2クラッド35b2に入射した残留励起光Lb2は、第5光ファイバ35の第2クラッド35b2を伝播する。ここで、第5光ファイバ35の第2クラッド35b2に入射した残留励起光Lb2が第5光ファイバ35から漏出しないのは、融着点P5が高屈折率樹脂に埋設されておらず、融着点P5が第5光ファイバ35の第2クラッド35b2よりも屈折率の低い空気に取り囲まれているためである。また、融着点P5が高屈折率樹脂に埋設しない理由は、第5光ファイバ35の第2クラッド35b2には、ポンプコンバイナ35xを介して励起光源35yから励起光が入射しており、融着点P5を高屈折率樹脂に埋設してしまうと、この励起光が漏出してしまうからである。
【0097】
なお、第4光ファイバ34と第3光ファイバ33との融着点P4近傍における信号光及び励起光の伝播態様も、その伝播方向が逆になるだけで、ここで説明したものと同様である。
【0098】
図11は、第5光ファイバ35と第6光ファイバ36との融着点P6近傍における信号光及び励起光の伝播態様を示す模式図である。(a)は、信号光に関するものであり、(b)は、励起光に関するものである。
【0099】
第6光ファイバ36は、トリプルクラッドファイバであり、その横断面は、図11に示すように、(1)コア36aと、(2)コア36aを取り囲む第1クラッド36b1と、(3)第1クラッド36b1を取り囲む第2クラッド36b2と、(4)第2クラッド36b2を取り囲む第3クラッド36b3と、(5)第3クラッド36b3を取り囲む被覆36cとからなる5層構造を有している。コア36a、第1クラッド36b1、及び第2クラッド36b2は、ガラスにより構成され、第3クラッド36b3及び被覆36cは、樹脂(例えば、ポリマー樹脂)により構成される。融着点P5の近傍においては、樹脂製の第3クラッド36b3と被覆36cとを除去し、ガラス製の第2クラッド36b2を露出させる構成が採られる。第6光ファイバ36のコア径、第1クラッド径、及び第2クラッド径は、それぞれ、第5光ファイバ35のコア径、第1クラッド径、及び第2クラッド径と同一である。
【0100】
第5光ファイバ35のコア35aを伝播したコアモード信号光La1は、図11(a)に示すように、そのまま、第6光ファイバ36のコア36aに入射する。これは、第5光ファイバ35のコア径と第6光ファイバ36のコア径とが同一だからである。また、第5光ファイバ35の第1クラッド35b1を伝播したクラッドモード信号光La2は、図11(a)に示すように、そのまま、第6光ファイバ36の第1クラッド36b1に入射する。これは、第5光ファイバ35の第1クラッド径と第6光ファイバ36の第1クラッド径とが同一だからである。このように、第5光ファイバ35を伝播した信号光La1〜La2は、第6光ファイバ36から漏出することなく第6光ファイバ36を伝播する。
【0101】
なお、第5光ファイバ35と第6光ファイバ36との間に軸ズレが生じた場合、第5光ファイバ35のコア35aを伝播したコアモード信号光La1は、第6光ファイバ36の第1クラッド36b1にも入射する。ただし、この場合でも、第5光ファイバ35のコア35aを伝播したコアモード信号光La1は、第6光ファイバ36の第2クラッド36b2には入射しない。これは、第5光ファイバ35のコア35aの横断面が、十分なマージンをもって第6光ファイバ36のコア36a及び第1クラッド36b1からなる領域の横断面に包含されているためである。したがって、第5光ファイバ35と第6光ファイバ36との間に軸ズレが生じても、第5光ファイバ35のコア35aを伝播したコアモード信号光La1が、融着点P6の近傍において第6光ファイバ36から漏出することはない。
【0102】
一方、第5光ファイバ35と第6光ファイバ36との間に軸ズレが生じた場合、第5光ファイバ35の第1クラッド35b1を伝播したクラッドモード信号光La2は、第6光ファイバ36の第2クラッド36b2にも入射する。したがって、この場合、第5光ファイバ35の第1クラッド35b1を伝播したクラッドモード信号光La2が、融着点P6の近傍において第6光ファイバ36から漏出する虞がある。高出力ファイバでは、この漏出による発熱が問題となることがある。ただし、この漏出は、第6光ファイバ36の第1クラッド径を第5光ファイバ35の第1クラッド径よりも大きくすることによって、回避可能である。換言すれば、融着点P6において、第5光ファイバ35の第1クラッド35b1の横断面が、十分なマージンをもって第6光ファイバ36のコア36a及び第1クラッド36b1からなる領域の横断面に包含されるようにすることによって、回避可能である。
【0103】
第5光ファイバ35の第1クラッド35b1を伝播した残留励起光Lb1は、図11(b)に示すように、そのまま、第6光ファイバ36の第1クラッド36b1に入射する。これは、第5光ファイバ35の第1クラッド径と第6光ファイバ36の第1クラッド径とが同一だからである。また、第5光ファイバ35の第2クラッド35b2を伝播した残留励起光Lb2は、図11(b)に示すように、そのまま、第6光ファイバ36の第2クラッド36b2に入射する。これは、第5光ファイバ35の第2クラッド径と第6光ファイバ36の第2クラッド径とが同一だからである。そして、第6光ファイバ36の第2クラッド36b2に入射した残留励起光Lb2は、第6光ファイバ36の第2クラッド36b2よりも屈折率の高い高屈折率樹脂38bに漏出し、高屈折率樹脂38bと共に放熱部38を構成する金属板において熱に変換される。
【0104】
なお、第3光ファイバ33と第2光ファイバ32との融着点P3近傍における信号光及び励起光の伝播態様も、その伝播方向が逆になるだけで、ここで説明したものと同様である。
【0105】
図12は、第6光ファイバ36と第7光ファイバ37との融着点P7の近傍における信号光及び励起光の伝播態様を示す模式図である。(a)は、信号光に関するものであり、(b)は、励起光に関するものである。
【0106】
第7光ファイバ37は、シングルクラッドファイバであり、その横断面は、(1)コア37aと、(2)コア37aを取り囲むクラッド37bと、(3)クラッド37bを取り囲む被覆37cとからなる3層構造を有している。コア37a及びクラッド37bは、ガラスにより構成され、被覆37cは、樹脂(例えば、ポリマー樹脂)により構成される。融着点P7の近傍においては、樹脂製の被覆37cを除去し、クラッド37bを露出させる構成が採られる。
【0107】
第6光ファイバ36のコア36aを伝播したコアモード信号光La1は、図12(a)に示すように、第7光ファイバ37のコア37aに入射する。すなわち、第6光ファイバ36のコア36aを伝播したコアモード信号光La1は、第7光ファイバ37のクラッド37bに入射することも、融着点P7の近傍において第7光ファイバ37から漏出することもない。これは、融着点P7において、第6光ファイバ36のコア36aが第7光ファイバ37のコア37aに包含され、第7光ファイバ37のクラッド37bと交わりを持たないからである。
【0108】
一方、第6光ファイバ36の第1クラッド36b1を伝播したクラッドモード信号光La2は、図12(a)に示すように、第7光ファイバ37のクラッド37bに入射する。そして、第7光ファイバ37のクラッド37bに入射したクラッドモード信号光La2は、第7光ファイバ37のクラッド37bよりも屈折率の高い高屈折率樹脂39bに漏出し、高屈折率樹脂39bと共に放熱部39を構成する金属板において熱に変換される。
【0109】
同様に、第6光ファイバ36の第1クラッド36b1を伝播した残留励起光Lb1は、図12(b)に示すように、第7光ファイバ37のクラッド37bに入射する。そして、第7光ファイバ37のクラッド37bに入射した残留励起光Lb1は、第7光ファイバ37のクラッド37bよりも屈折率の高い高屈折率樹脂39bに漏出し、高屈折率樹脂39bと共に放熱部39を構成する金属板において熱に変換される。
【0110】
なお、軸ズレによって第6光ファイバ36のコア36aと第7光ファイバ37のクラッド37bとの間に交わりが生じた場合、第6光ファイバ36のコア36aを伝播したコアモード信号光La1の一部が、第7光ファイバ37のクラッド37bに入射することになる。この場合、第7光ファイバ37のクラッド37bに入射したコアモード信号光La1は、第7光ファイバ37のクラッド37bに入射したクラッドモード信号光La2及び残留励起光Lb1と同様、第7光ファイバ37から高屈折率樹脂39bに漏出し、この高屈折率樹脂39bと共に放熱部39を構成する金属板において熱に変換されることになる。
【0111】
また、第2光ファイバ32と第1光ファイバ31との融着点P2近傍における信号光及び励起光の伝播態様も、その伝播方向が逆になるだけで、ここで説明したものと同様である。
【0112】
以上のように、本実施形態のファイバレーザ3においては、残留励起光の一部を放熱部38及び放熱部40において熱に変換し、残りの残留励起光とクラッドモード信号光とを放熱部39及び放熱部41において熱に変換する構成が採られている。これにより、残留励起光とクラッドモード信号光とを単一の放熱部において熱に変換する構成と比べて、4つの放熱部38〜41の各々における発熱量を抑えることができる。
【0113】
<まとめ>
以上のように、上記各実施形態に係るファイバ光学系は、光を増幅するダブルクラッドファイバと、上記ダブルクラッドファイバにて増幅された光を伝送するシングルクラッドファイバとを備え、上記ダブルクラッドファイバと上記シングルクラッドファイバとの間にトリプルクラッドファイバが挿入されている、ことを特徴としている。
【0114】
上記構成によれば、上記ダブルクラッドファイバにて増幅された光(例えば、信号光)や上記ダブルクラッドファイバにて光(例えば、信号光)を増幅するために用いた光(例えば、励起光)の一部を、上記トリプルクラッドファイバの第1クラッドに入射させることができる。上記トリプルクラッドファイバの第1クラッドに入射した光は、上記ダブルクラッドファイバと上記トリプルクラッドファイバとの接続点近傍において上記トリプルクラッドファイバの第3クラッドが除去されていたとしても、上記トリプルクラッドファイバから漏出することなく、上記トリプルクラッドファイバの第1クラッドを伝搬した後、上記シングルクラッドファイバに入射する。したがって、上記構成によれば、上記トリプルクラッドファイバに入射した光の全てが上記ダブルクラッドファイバとの接続点近傍において上記トリプルクラッドファイバから漏出することを回避できる。したがって、当該ファイバ光学系における光の漏出箇所を分散させ、各漏出箇所における発熱量を小さく抑えることができる。これにより、従来よりも信頼性の高いファイバ光学系を実現することができる。
【0115】
上記ファイバ光学系では、上記ダブルクラッドファイバと上記トリプルクラッドファイバとの接続点において、上記ダブルクラッドファイバのコアの断面が上記トリプルクラッドファイバのコアと第1クラッドとからなる領域の断面に包含されている、ことが好ましい。ここで、「断面」とは、上記ダブルクラッドファイバと上記トリプルクラッドファイバとの境界面となる断面(例えば、横断面)のことを指す。
【0116】
上記の構成によれば、上記ダブルクラッドファイバのコアを伝播した光を、上記トリプルクラッドファイバのコア又は第1クラッドの何れかに入射させることができる。したがって、上記ダブルクラッドファイバのコアから上記トリプルクラッドファイバに入射した光が、上記ダブルクラッドファイバとの接続点近傍において上記トリプルクラッドファイバから漏出することを回避できる。
【0117】
上記ファイバ光学系では、上記ダブルクラッドファイバと上記トリプルクラッドファイバとの接続点において、上記ダブルクラッドファイバの第1クラッドの断面が上記トリプルクラッドファイバの第1クラッド及び第2クラッドの双方の断面と交わりを持つ、ことが好ましい。ここで、「断面」とは、上記ダブルクラッドファイバと上記トリプルクラッドファイバとの境界面となる断面(例えば、横断面)のことを指す。
【0118】
上記の構成によれば、上記ダブルクラッドファイバの第1クラッドを伝播した光を、上記トリプルクラッドファイバの第1クラッド及び第2クラッドの双方に入射させることができる。上記トリプルクラッドファイバの第1クラッドに入射した光は、上記ダブルクラッドファイバとの接続点近傍において上記トリプルクラッドファイバから漏出することなく、上記トリプルクラッドファイバの第1クラッドを伝播した後、上記シングルクラッドファイバに入射する。一方、上記トリプルクラッドファイバの第2クラッドに入射した光は、上記ダブルクラッドファイバとの接続点近傍において上記トリプルクラッドファイバから漏出する。したがって、上記の構成によれば、上記ダブルクラッドファイバのクラッドを伝播した光を、上記ダブルクラッドファイバと上記トリプルクラッドファイバとの接続点、及び、上記トリプルクラッドファイバと上記シングルクラッドファイバとの接続点において分散して漏出させることができる。なお、上記の構成は、パワーの大きい励起光が上記ダブルクラッドファイバの第1クラッドを伝播する場合に特に有効である。
【0119】
上記ファイバ光学系では、上記トリプルクラッドファイバと上記シングルクラッドファイバとの接続点において、上記トリプルクラッドファイバの第1クラッドの断面が上記シングルクラッドファイバのクラッドの断面と交わりを持つ、ことが好ましい。ここで、「断面」とは、上記トリプルクラッドファイバと上記シングルクラッドファイバとの境界面となる断面(例えば、横断面)のことを指す。
【0120】
上記の構成によれば、上記トリプルクラッドファイバの第1クラッドを伝播した光を、上記シングルクラッドファイバのクラッドに入射させることができる。上記シングルクラッドファイバのクラッドに入射した光は、上記トリプルクラッドファイバとの接続点近傍において、上記シングルクラッドファイバから漏出する。したがって、上記の構成によれば、上記トリプルクラッドファイバの第1クラッドを伝搬した光を、上記トリプルクラッドファイバとの接続点近傍において上記シングルクラッドファイバから漏出させることができる。なお、上記の構成は、上記ダブルクラッドファイバにて増幅された光(例えば、信号光)が上記トリプルクラッドファイバの第1クラッドを伝播する場合に特に有効である。何故なら、上記トリプルクラッドファイバの第1クラッドを伝播した光は、上記トリプルクラッドファイバのコアを伝播した光の品質(例えば、信号品質)を低下させる虞があり、上記シングルクラッドファイバの出力端から出力される前に除去するのが好ましいからである。
【0121】
上記ファイバ光学系では、上記ダブルクラッドファイバと上記シングルクラッドファイバとの間に、第1クラッドの断面積が異なる複数のトリプルクラッドファイバが挿入されており、上記複数のトリプルクラッドファイバは、各トリプルクラッドファイバの第1クラッドの断面が、該トリプルクラッドファイバの上記ダブルクラッドファイバ側と反対側に接続されるトリプルクラッドファイバの第1クラッド及び第2クラッドの双方の断面と交わりを持つように接続されている、ことが好ましい。ここで、「断面」とは、上記トリプルクラッドファイバ同士の境界面となる断面(例えば、横断面)のことを指す。
【0122】
上記の構成によれば、上記複数のトリプルクラッドファイバのうち、最も上記ダブルクラッドファイバに近いトリプルクラッドファイバに入射した光を、上記複数のトリプルクラッド間の各接続点において段階的に除去することができる。
【0123】
上記ファイバ光学系は、例えば、ファイバアンプを構成することができる。あるいは、ファイバレーザを構成することができる。これらの装置は、従来よりも信頼性の高いものとなる。
【0124】
また、上記各実施形態に係るファイバ光学系の製造方法は、光を増幅するダブルクラッドファイバと、上記ダブルクラッドファイバにて増幅された光を伝送するシングルクラッドファイバとの間に、トリプルクラッドファイバが挿入する挿入工程を含んでいる、ことを特徴としている。
【0125】
上記の構成によれば、従来よりも信頼性の高いファイバ光学系を製造することができる。
【0126】
上記ファイバ光学系の製造方法は、上記トリプルクラッドファイバの第1クラッドの断面積と上記トリプルクラッドファイバの第2クラッドの断面積との比を、上記ダブルクラッドファイバと上記トリプルクラッドファイバとの接続点において許容される発熱量、及び、上記トリプルクラッドファイバと上記シングルクラッドファイバとの接続点において許容される発熱量に基づいて設定する設定工程を更に含んでいる、ことが好ましい。
【0127】
上記の構成によれば、上記ダブルクラッドファイバと上記トリプルクラッドファイバとの接続点における発熱量、及び、上記トリプルクラッドファイバと上記シングルクラッドファイバとの接続点における発熱量を、容易に許容量以下に抑えることができる。
【0128】
<付記事項>
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、上述した実施形態においては、コア及びクラッド各層の外周は円形であるものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、コア及びクラッド各層の外周が円形以外の形状、例えば、多角形のものも、当然、本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、ファイバアンプやファイバレーザなど、増幅用ダブルクラッドファイバと伝送用シングルクラッドファイバとを備えたファイバ光学系に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0130】
1 ファイバアンプ
11 第1光ファイバ
12 第2光ファイバ
13 第3光ファイバ(ダブルクラッドファイバ)
14 第4光ファイバ(トリプルクラッドファイバ)
15 第5光ファイバ(シングルクラッドファイバ)
16 励起光源
17 ポンプコンバイナ
18 放熱部
19 放熱部
2 ファイバレーザ(前方励起)
21 第1光ファイバ
22 第2光ファイバ
23 第3光ファイバ(ダブルクラッドファイバ)
24 第4光ファイバ(トリプルクラッドファイバ)
25 第5光ファイバ(シングルクラッドファイバ)
26 励起光源
27 ポンプコンバイナ
28 放熱部
29 放熱部
20a ファイバブラッググレーティング
20b ファイバブラッググレーティング
3 ファイバアンプ(双方向励起)
31 第1光ファイバ(シングルクラッドファイバ)
32 第2光ファイバ(トリプルクラッドファイバ)
33 第3光ファイバ(トリプルクラッドファイバ)
34 第4光ファイバ(ダブルクラッドファイバ)
35 第5光ファイバ(トリプルクラッドファイバ)
36 第6光ファイバ(トリプルクラッドファイバ)
37 第7光ファイバ(シングルクラッドファイバ)
38〜41 放熱部
33x,35x ポンプコンバイナ
33y,35y 励起光源
32x,36x ファイバブラッググレーティング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15