(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上面視において、前記前切刃の垂線であって前記一対の前方隆起部の前記前切刃側の端部同士の中点を通る基準線に対して、前記一対の中間隆起部の傾斜角は、前記一対の前方隆起部の傾斜角よりも大きい、請求項3に記載の切削インサート。
上面視において、前記前切刃の垂線であって前記一対の前方隆起部の前記前切刃側の端部同士の中点を通る基準線に対して、前記一対の中間隆起部の傾斜角は、前記一対の前方隆起部の傾斜角よりも小さい、請求項3に記載の切削インサート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<切削インサート>
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る切削インサートについて、
図1、
図2および
図4〜
図7を用いて詳細に説明する。
【0008】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る切削インサート1を示す全体図である。
図1(a)は側面図である。
図1(b)は切削インサート1を
図1(a)における矢印D1の方向から見た平面図である。
図1(c)は切削インサート1を
図1(a)における矢印D2の方向から見た平面図である。
【0009】
図1(a)に示すように、切削インサート1(以下、単にインサート1ということがある)は、略三角板状体をなしており、略三角形の部分が横側面となる向きで用いられる。切削インサート1は、各角部に位置する3つの切削部Iと、中央に位置する装着部IIとを備えている。本実施形態のインサート1は、例えば、内径の溝入れ加工、外径の溝入れ加工、突切り加工、溝幅を広げる加工および面取り加工に使用できる。
【0010】
なお、切削インサート1の材質としては、例えば、超硬合金あるいはサーメットなどを用いることができる。超硬合金の組成として、例えば、炭化タングステン(WC)にコバルト(Co)の粉末を加えて焼結して生成されるWC−Co、WC−Co合金に炭化チタン(TiC)を添加したWC−TiC−Co、WC−TiC−Coに炭化タンタル(TaC)を添加したWC−TiC−TaC−Coが挙げられる。サーメットは、セラミック成分に金属を複合させた焼結複合材料である。サーメットとして、例えば、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)などのチタン系化合物を主成分としたものが挙げられる。
【0011】
上述の材質によって形成されたインサート1の表面に、化学蒸着(CVD)法または物理蒸着(PVD)法によって被膜をコーティングしてもよい。コーティングされる被膜の組成としては、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)、炭窒化チタン(TiCN)およびアルミナ(Al
2O
3)などが挙げられる。
【0012】
なお、インサート1の大きさは特に限定されるものではない。本実施形態においては、
図1(b)における上下方向の長さで示されるインサート1の幅方向の長さは1〜8mm、
図1(b)における左右の方向の長さで示されるインサート1の長手方向の長さは10〜15mm程度に設定される。
【0013】
図2は、
図1(a)に示す切削インサート1の切削部Iを拡大した図である。
図2(a)は上面図である。
図2(b)は前側面の側から見た側面図(正面図)である。
【0014】
本実施形態では、
図2に示すように、各切削部Iはそれぞれ、上面2と、上面2に接続されている側面4とを有する。上面2の一部はすくい面として機能し、側面4の一部は逃げ面として機能する。側面4は、正面側に位置する前側面4aと、前側面4aに隣接している一対の横側面4bとを有している。なお、前側面4aと一対の横側面4bとの間には一対のコーナー側面4cが設けられている。
【0015】
また、
図1(a)に示すように、装着部IIは、貫通穴6と、その周囲を囲む装着面26とを有している。装着部IIの装着面26は、切削部Iの横側面4bに隣接している。貫通穴6は、ねじを挿入するための穴として機能する。装着面26は、ホルダへの装着の際にホルダと接し、ホルダへ載置する載置面として機能する。
【0016】
上面2および側面4の交線部には、切刃5が位置している。本実施形態のインサート1における切刃5は、
図2に示すように、前切刃5aと、一対の横切刃5bと、曲線状の一対のコーナー切刃5cとを備えている。前切刃5aは、切削部Iの幅方向の交線部、すなわち上面2および前側面4aの交線部に位置している。一対の横切刃5bは、上面2および一対の横側面4bの交線部にそれぞれ位置している。曲線状の一対のコーナー切刃5cは、前切刃5aと一対の横切刃5bとの間にそれぞれ位置しており、前切刃5aおよび一対の横切刃5bを接続している。また、一対のコーナー切刃5cは、上面視において曲線状である。
【0017】
なお、溝入れ加工や突切り加工において、被削材は主として前切刃5aを用いて切削される。本実施形態において、前切刃5aは、
図2(b)に示すように、正面視、すなわち前側面4aの側から見たときに、直線状である。そのため、例えば溝入れ加工において被削材に形成される溝の底面の平滑性が高められる。
【0018】
上面2は、
図2に示すように、すくい面21と、隆起部22と、立ち上がり面23とを有している。すくい面21は、切刃5の内側に位置している。隆起部22は、すくい面21の上に位置している。立ち上がり面23は、少なくとも一部が隆起部22よりも前切刃5aから離れて位置しており、前切刃5aから離れるにつれて上方に傾斜している。
【0019】
上面2は、
図2に示すように、切刃5の内側にすくい面21を有している。すくい面21は、切屑を擦過させつつ排出方向に導く役割を有する。なお、すくい面21はランド部(不図示)を備えていてもよい。ここで、ランド部とは、切削部Iの上面2における切刃5に沿った部分であって、幅が略一定である細い帯状の領域のことをいう。ランド部を備えていることによって、切刃5の先端の強度が向上するので切刃5の欠損が抑制される。ランド部は、水平面に対して平行であっても良く、また、切刃5から離れるにつれて下方に傾斜してもよい。
【0020】
本実施形態においては、
図2に示すように、すくい面21は、前すくい面21aと、一対の横すくい面21bと、一対のコーナーすくい面21cとを有している。前すくい面21aは、前切刃5aと連続しており、前切刃5aから離れるにつれて下方に傾斜している。一対の横すくい面21bは、一対の横切刃5bのそれぞれに連続し、一対の横切刃5bから離れるにつれて下方に傾斜している。一対のコーナーすくい面21cは、前すくい面21aの両側に位置している。また、一対のコーナーすくい面21cは、一対のコーナー切刃5cのそれぞれに連続し、一対のコーナー切刃5cから離れるにつれて下方に傾斜している。
【0021】
なお、コーナーすくい面21cは、コーナー切刃5cの全領域においてコーナー切刃5cから離れるにつれて下方に傾斜している。
図2(a)における二等分線Mは、コーナー切刃5cおよびコーナーすくい面21cを通過している。ここで、「下方あるいは上方への傾斜」は、インサート1を水平面に載置した状態を基準にして判断するものとする。
【0022】
また、インサート1単独で水平面に載置することが難しい場合には、インサート1をホルダに装着した切削工具を水平面に載置した状態を基準にして、判断すればよい。なお、本願の
図3(b),
図5(a)および
図7(c)〜(f)などにおいて、載置する水平面と平行な水平線について符合Lを用いて示すものとする。
【0023】
本実施形態において、前すくい面21aのすくい角α1は、コーナーすくい面21cのすくい角および横すくい面21bのすくい角α2よりも大きい。前すくい面21aのすくい角α1を
図7(c)に示す。また、横すくい面21bのすくい角α2を
図5(a)に示す。また、コーナーすくい面21cのすくい角は、すくい角α2よりも大きい。例えば、すくい角α1は5〜20°、すくい角α2は0〜15°に設定される。コーナーすくい面21cのすくい角は、例えば、8〜20°に設定される。
【0024】
前すくい面21aおよびコーナーすくい面21cのすくい角は、それぞれ一定ではなく、前すくい面21aとコーナーすくい面21cとの境界部におけるすくい角がそれぞれ最も大きくなるように設定されている。そして、このすくい角は当該境界部から横すくい面21bの側に向かうにつれて小さくなるように設定されている。
【0025】
また、すくい角α2は、前切刃5aから離れるにつれて小さくなっている。そして、一対の横すくい面21bは、
図2に示すように上面視において、後方隆起部22cよりも前切刃5aの側に位置している。
【0026】
図4は、
図1に示す切削インサート1の部分を拡大した上面図である。
図4は、
図2(a)に示す領域と同じの領域を図示しており、
図2(a)において示している符号の一部は
図4において省略される。
図5は、
図4に示す切削インサート1の断面図である。
図5(a)は、
図4に示すA1−A1線における断面図である。
図5(b)は、
図4に示すB1−B1線における断面図である。
図5(c)は、
図4に示すC1−C1線における断面図である。
【0027】
上面2は、すくい面21の上に隆起部22を有している。隆起部22は、切屑を変形させる役割と、すくい面21とともに切屑を排出方向に導く役割とを有する。
【0028】
本実施形態においては、隆起部22は、
図2に示すように、一対の前方隆起部22aと、後方隆起部22cと、一対の中間隆起部22bと、一対の副隆起部22dとを有している。一対の前方隆起部22aは、上面視において、前切刃5aから離れて位置しており、前切刃5aから離れるにつれて互いの間隔が小さくなっている。
【0029】
後方隆起部22cは、上面視において、一対の前方隆起部22aよりも前切刃5aから離れて位置しており、かつ、前側面4aの側からの側面視において、一対の前方隆起部22aの間の領域に位置している。また、後方隆起部22cは、前切刃5aから離れるにつれて上方に向かって傾斜する上昇部22caを有している。一対の中間隆起部22bは、一対の前方隆起部22aおよび後方隆起部22cを接続するように位置している。そのため、一対の中間隆起部22bは、少なくとも一部が一対の前方隆起部22aと後方隆起部22cとの間に位置している。
【0030】
一対の副隆起部22dは、
図2、
図4および
図5(a)によって示すように、一対の前方隆起部22aに対して、一対の横側面4bのうち隣接する横側面4bの側に位置している。言い換えれば、一対の副隆起部22dは、一対の前方隆起部22aと一対の横側面4bとの間にそれぞれ位置している。
【0031】
そして、本実施形態において、
図4と
図5(a)によって示すように、一対の中間隆起部22bの頂部22b2はそれぞれ、一対の前方隆起部22aと後方隆起部22cとの間に位置しており、一対の前方隆起部22aの頂部22a2および後方隆起部22cの頂部22c2よりも高くに位置している。
【0032】
このように、上面2において、前切刃5aから離れるにつれて、一対の前方隆起部22a、一対の中間隆起部22bおよび後方隆起部22cが順に位置している。さらに、一対の中間隆起部22bの頂部22b2は、一対の前方隆起部22aと後方隆起部22cとの間に位置しており、一対の前方隆起部22aの頂部22a2および後方隆起部22cの頂部22c2よりも高い。
【0033】
これにより、被削材に対して溝入れ加工および突切り加工などを行なう際に、前切刃5aによって生成された切屑は、前すくい面21a上を通過しつつ各隆起部22と接触して変形する。そのため、幅広い送り量の切削条件下において切屑を安定的に外部に排出することができる。
【0034】
送り量の小さい切削条件下においては、前切刃5aによって生成される切屑の厚みは比較的薄くなる。このような条件下では、切屑における一対の前方隆起部22aに接触した部位が持ち上げられて切屑の幅方向に絞られる。そのため、切屑の剛性が高められるので、切屑が安定的に外部に排出される。
【0035】
送り量の大きい切削条件下においては、前切刃5aによって生成される切屑の厚みは比較的厚くなる。このような条件下では、切屑が一対の前方隆起部22aを超えた場合であっても、切屑が前方隆起部22aよりも高い一対の中間隆起部22bに接触することによって、切屑の剛性が高められる。さらに、一対の中間隆起部22bと、一対の中間隆起部22bよりも後方に位置する後方隆起部22cと、の3点(3面)に切屑が接触することによって、切屑の流れがコントロールされ易くなる。そのため、切屑が安定的に外部に排出される。
【0036】
この際、後方隆起部22cの頂部22c2は一対の中間隆起部22bの頂部22b2よりも低い。そのため、切屑が一対の前方隆起部22aおよび一対の中間隆起部22bに接触せず、後方隆起部22cのみに接触する可能性が小さくなる。すなわち、切屑は、後方隆起部22cを越えて後方に流れ易い。従って、一対の中間隆起部22bと後方隆起部22cとの間に切屑が詰まってしまうことが抑制され、優れた切屑排出性が発揮される。
【0037】
後方隆起部22cを越えた切屑は、さらに後方に位置している立ち上がり面23に衝突することによってカールされて排出される。前切刃5aから後方隆起部22cまでの距離と比較して、前切刃5aから立ち上がり面23までの距離が長い。そのため、前切刃5aから立ち上がり面23までの部分においては切屑をカールさせるための領域が確保されている。従って、後方隆起部22cと立ち上がり面23との間においては、切屑が安定してカールされ、切屑が詰まる可能性は小さい。
【0038】
本実施形態では、
図6に示すように、上面視において、第1垂線、第2垂線および第3垂線が、前切刃5aの一端(
図6においては左側の端部)から中央に向かって順に位置している。ここで、第1垂線は、前切刃5aの垂線のうち、一対の前方隆起部22aの頂部22a2を通る垂線(A2−A2線と重複)である。第2垂線は、前切刃5aの垂線のうち、一対の中間隆起部22bの頂部22b2を通る垂線(B2−B2線と重複)である。第3垂線は、前切刃5aの垂線のうち、後方隆起部22cの頂部22c2を通る垂線(C2−C2線と重複)である。
【0039】
これによれば、前切刃5aから離れるにつれて順に位置している各隆起部22の頂部は、正面視した場合に、前切刃5aの両端側から中央側に向かって順に位置していることから、前切刃5aから離れるにつれて切屑を効果的に絞るように変形させることができる。そのため、優れた切屑排出性を奏することが可能となる。
【0040】
さらに、
図2(b)に示すように、正面視において、一対の中間隆起部22bの頂部22b2が前切刃5aよりも高い。すなわち、生成された切屑の進行方向に対して一対の中間隆起部22bが十分な高さを確保している。そのため、例えば送り量の大きい切削条件下においても、切屑が一対の中間隆起部22bに接触しやすい。結果として、優れた切屑排出性を発揮することができる。
【0041】
本実施形態においては、一対の副隆起部22dの頂部は、前切刃5aよりも低く設定されている。そのため、
図2(b)に示すように、正面視においては、一対の副隆起部の頂部が前側面4aによって見えなくなっている。
【0042】
本実施形態において、
図2に示すように、一対の前方隆起部22aにおける中間隆起部22bから前切刃5aの側に向かって突出している部分は、前切刃5aから離れるにつれて互いの間隔が小さくなっている。そのため、前切刃5aによって生成された切屑は、前切刃5aから離れるにつれて一対の前方隆起部22aによって絞られるように変形する。これにより、優れた切屑排出性を発揮することができる。
【0043】
また、本実施形態において、一対の副隆起部22dにおける前方隆起部22aから前切刃5aの側に向かって突出している部分は、前切刃5aから離れるにつれて互いの間隔が小さくなっている。そのため、前切刃5aによって生成された切屑は、前切刃5aから離れるにつれて一対の副隆起部22dによって絞られるように変形する。
【0044】
さらに、本実施形態において、一対の中間隆起部22bにおける後隆起部22cから前切刃5aの側に向かって突出している部分は、前切刃5aから離れるにつれて互いの間隔が小さくなっている。言い換えれば、前切刃5aから離れるに従って一対の副隆起部22dの間の距離が短くなっている。そのため、前切刃5aによって生成された切屑は、前切刃5aから離れるにつれて一対の中間隆起部22bによって絞られるように変形する。
【0045】
それに加えて、
図6に示すように上面視において、前切刃5aの垂線であって一対の前方隆起部22aの前切刃5aの側の端部同士の中点を通る基準線Sに対する一対の副隆起部22dの傾斜角θ4は、一対の前方隆起部22aの傾斜角θ1よりも大きい。また、上面視において、基準線Sに対する一対の中間隆起部22bの傾斜角θ2は、一対の前方隆起部22aの傾斜角θ1よりも大きい。
【0046】
ここで、基準線Sに対する傾斜角は、各隆起部22a、22b、22dについて、底部(最も切刃5に近接しており、上方への傾斜を開始する部位)と頂部(水平面からの高さの最も高い位置)とを結ぶ直線を用いて測定するものとする。なお、上面視において、底部および頂部が、前切刃5aとの平行な方向に所定の長さを有する場合には、その中点を用いて測定すればよい。後述する、
図10においても同様にして測定できる。
【0047】
一対の前方隆起部22aは、
図7(d)に示すように、前切刃5aから離れるにつれて上昇角β1で上方に傾斜している。前切刃5aから離れるにつれて、一対の中間隆起部22bは、上昇角β2で上方に傾斜している。一対の前方隆起部22aの上昇角β1は、
図7(e)に示す一対の中間隆起部22bの上昇角β2よりも小さい。
【0048】
送り量の大きい切削条件下においては生成された切屑の厚みが比較的厚いため、一対の前方隆起部22aとの接触によって切屑が十分に変形されない場合がある。しかしながら、上昇角β2が上昇角β1よりも大きいことから、一対の前方隆起部22aよりも一対の中間隆起部22bにおいて切屑が変形し易くなる。そのため上記の切削条件下においても、一対の前方隆起部22aの後方に位置している一対の中間隆起部22bに切屑が接触することによって効果的に切屑を変形させることが可能となる。
【0049】
本実施形態における一対の前方隆起部22aは、
図2(a)に示すように、前すくい面21aと連続している。そのため、前切刃5aによって生成された切屑の排出過程において、切屑が良好に変形する。また、前すくい面21aの一端、具体的には、前すくい面21aにおける前切刃5aから最も離れた端部は、一対の前方隆起部22aよりも前切刃5aから離れた位置まで延在している。
【0050】
後方隆起部22cの上昇部22caは、
図2(a)に示すように、前すくい面21aよりも前切刃5aから離れて位置している。また、上面視において、前すくい面21aと後方隆起部22cの上昇部22caとの境界領域24は、一対の中間隆起部22bの間に位置している。また、境界領域24の少なくとも一部は、水平線に平行な面である。
【0051】
本実施形態において、一対の副隆起部22dは、一対の前方隆起部22aのうち前切刃5aの側の端部よりも前切刃5aから離れて位置している。
図6に示す一対の副隆起部22dの頂部22d2は、一対の前方隆起部22aの頂部22a2よりも低い。一対の副隆起部22dは、
図7(f)に示すように、上昇角β4で上方に傾斜している。一対の前方隆起部22aの上昇角β1は、一対の副隆起部22dの上昇角β4よりも大きい。例えば、一対の前方隆起部22aの上昇角β1は10〜15°に設定できる。また、一対の副隆起部22dの上昇角β4は5〜10°に設定できる。
【0052】
図7(c)に示すように、立ち上がり面23の傾斜角γは、後方隆起部22cの上昇部22caの上昇角β3よりも大きい。例えば、後方隆起部22cの上昇部22caの上昇角β3は20〜40°に設定される。立ち上がり面23の傾斜角γは40〜60°に設定される。
【0053】
また、一対の前方隆起部22aは、互いに向き合っている部位(内側の側面)が、平面状または凹面状に設定される。
図5(a)においては、上記の部位が平面状である。一対の中間隆起部22bも、互いに向き合っている部位(内側の側面)が、平面状または凹面状される。
図5(b)においては、上記の部位が平面状である。
【0054】
本実施形態では、
図2(a)に示すように上面視において、前切刃5aの延長線と一対の横切刃5bの延長線とにより成す角の二等分線Mの少なくとも一部は、一対の前方隆起部22aと一対の副隆起部22dとの間を通過している。
【0055】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る切削インサートについて、
図3を用いて詳細に説明する。
【0056】
なお、
図3においては、上述した
図1および
図2と同一の構成部分には同一の符号を付して説明は省略する場合がある。本実施形態の切削インサート1は、基本的な構成は第1の実施形態の切削インサート1と同一である。そのため、第1の実施形態の切削インサート1との差異を主に説明し、重複する内容については説明を省略する。
【0057】
図3(a)〜
図3(c)はそれぞれ、本発明の第2の実施形態に係る切削インサート1を示す図である。
図3(a)は上面図である。
図3(b)は幅方向の側面図である。
図3(c)は正面図(長手方向の側面図)である。
【0058】
本実施形態の切削インサート1は、略角柱状をなしている。切削インサート1の両端部(
図3(a)における左右の端部)にはそれぞれ切削部Iが位置している。これら2つの切削部Iの間には装着部IIが位置している。装着部IIは、ホルダのクランプ部材で固定される際にホルダと接する装着面26としてクランプ面を有している。本実施形態のインサート1は、溝入れ加工、突切り加工、横送り加工および面取り加工などに使用できる。上記の溝入れ加工は、内径の溝入れ加工および外径の溝入れ加工の両方を含んでいる。
【0059】
図2(a)は、上述のように、第1の実施形態に係る切削インサート1の切削部Iを拡大した平面図であるとともに、本実施形態に係る切削インサート1の切削部Iを拡大した平面図でもある。
【0060】
本実施形態では、切削部Iは、上面2と、下面3と、上面2と下面3に接続されている側面4とを有する。切削部Iにおける上面2はすくい面21として機能する。下面3はホルダへ載置するクランプ面として機能する。側面4は逃げ面として機能する。
【0061】
インサート1の大きさは特に限定されるものではないが、本実施形態においては、
図3(a)における上下方向の長さで示されるインサート1の幅方向の長さは2〜8mm、
図3(a)における左右の方向の長さで示されるインサート1の長手方向の長さは20〜30mm程度である。
図3(b)における上下方向の長さで示されるインサート1の下面3から上面2までの高さは、インサート1の幅方向の長さに応じて4〜10mmで設定される。
【0062】
その他の構成は、上述した第1の実施形態に係る切削インサート1と同様であるので、説明を省略する。
【0063】
本実施形態に係るインサート1においても、第1の実施形態に係るインサート1と同様の作用効果を発揮することができる。
【0064】
なお、本実施形態のインサート1においては、正面視において一対の副隆起部の頂部を前切刃よりも高く設定してもよい。上述の第1の実施形態のインサート1においては、正面視において一対の副隆起部の頂部が前切刃よりも低く設定されている。
【0065】
この際に、正面視における前切刃と立ち上がり面の上端との距離を大きく設定することが好ましい。これによれば、前切刃によって生成された切屑を、幅広い送り量の切削条件下において安定的に外部に排出することができる。
【0066】
すなわち、送り量の小さい切削条件下において、切屑を、一対の前方隆起部および一対の副隆起部などに衝突させることによって優れた切屑排出性を発揮させることができる。また、送り量の大きい切削条件下において、一対の中間隆起部および後方隆起部を通過した切屑を立ち上がり面に衝突させることによって優れた切屑排出性を発揮することができる。
【0067】
次に、上述の第1の実施形態および第2の実施形態に係る切削インサートに対する変形例について、図面を用いて説明する。
【0068】
(第1の変形例)
第1の変形例について、
図8を参照しつつ説明する。
【0069】
上述の第1および第2の実施形態では、上面2において、前方隆起部22aと副隆起部22dとの間に所定のすくい角を有するすくい面21が位置している。これに対して、本変形例では、
図8に示すように、前方隆起部22aと副隆起部22dの間に水平面に平行なフラット部21hが位置している。これによれば、前すくい面21aあるいはコーナーすくい面21cから流れてきた切屑は、フラット部21hへの接触によって排出の速度が低下する。そのため、前方隆起部22aと比較して高さの低い副隆起部22dでも効果的に切屑処理を行なうことが可能となる。
【0070】
本変形例では、前すくい面21aにおける前切刃5aと一対の前方隆起部22aで囲まれた領域(以下、便宜的に第2領域21a2という)での前すくい面21aの前すくい角よりも、前すくい面21aにおける前切刃5aと一対の前方隆起部22aとの間の領域(以下、便宜的に第1領域21a1という)での前すくい角が小さく設定されている。これによれば、切屑は、前切刃5aの中央で生成された部分と、両端部で生成された部分とで、排出される方向が異なる。そのため、一対の前方隆起部22aなどとの接触による変形を促進することが可能となる。
【0071】
また、上述の第1および第2の実施形態では、
図5(a)に示すように、一対の前方隆起部22aの上端面22a1が凸曲面状である。これに対して、本変形例では、一対の前方隆起部22aの上端面が平面状である。これによれば、切屑を一対の前方隆起部22aの内側の側面に接触させることによって幅方向に安定的に絞るとともに排出方向を適切にコントロールすることができる。また本変形例では、一対の前方隆起部22aの上端面同士は、互いに向き合うように、一方の前方隆起部22aの上端面が他方の前方隆起部22aに近づくにつれて下方に傾斜している。
【0072】
その他の構成は、上述した第1の実施形態に係る切削インサート1と同様であるので、説明を省略する。
【0073】
(第2の変形例)
第2の変形例について、
図9〜
図13を参照しつつ説明する。
【0074】
上述の第1および第2の実施形態では、上面視において、基準線Sに対して、一対の中間隆起部22bの傾斜角θ2は、一対の前方隆起部22aの傾斜角θ1よりも大きい。これに対して、本変形例では、上面視において、基準線Sに平行な直線Saに対して、一対の中間隆起部22bの傾斜角θ2は、一対の前方隆起部22aの傾斜角θ1よりも小さい。
【0075】
また、上述の第1および第2の実施形態では、一対の中間隆起部22bの上端面22b1が曲面状である。これに対して、本変形例では、
図12(a)に示すように一対の中間隆起部22bの上端面22b1はそれぞれ平面状である。さらに、一対の中間隆起部22bの上端面22b1は、それぞれ水平線Lに平行である。これによれば、切屑の幅が比較的広い場合であっても、切屑と一対の中間隆起部22bの上端面22b1との接触面積を大きくできる。そのため、切屑の流れが左右へずれにくくなるので排出方向が安定する。
【0076】
なお、本変形例においては、
図12(b)に示すように一対の前方隆起部22aの上端面22a1もそれぞれ水平線Lに平行となっているため、切屑の流れが左右へずれる可能性が更に小さくなり、切屑を前切刃5aの垂線方向に向かって安定的に排出することができる。
【0077】
また、上述の第1および第2の実施形態では、すくい面21のすくい角は、前すくい面21aのすくい角、コーナーすくい面21cのすくい角、および横すくい面21bのすくい角の順に小さくなっている。これに対して、本変形例では、コーナーすくい面21cのすくい角が前すくい面21aのすくい角よりも大きい。
【0078】
また、本変形例では、前すくい面21aのすくい角は、前切刃5aの中央に沿う領域における角度よりも、前切刃5aの両端部におけるすくい角が小さくなるように設定されている。これによれば、切屑は、前切刃5aの中央で生成された部分と、両端部で生成された部分とで、排出される方向が異なる。そのため、一対の前方隆起部22aなどとの接触による変形を促進することが可能となる。
【0079】
例えば、前切刃5aと一対の前方隆起部22aで囲まれた領域(以下、便宜的に第2領域21a2という)における前すくい角よりも、前切刃5aと一対の前方隆起部22aとの間の領域(以下、便宜的に第1領域21a1という)における前すくい角が小さく設定されている。例えば、第2領域21a2におけるすくい角は0〜15°に設定される。また、第1領域21a1におけるすくい角は、5〜20°に設定される。なお、本変形例では、上述の実施形態における境界領域24のような水平面がない。
【0080】
また、本変形例では、前切刃5aから離れるにつれて、一対の中間隆起部22bは上方に傾斜している。また、後方隆起部22cの上昇部22caの上昇角β3は、一対の中間隆起部22bの上昇角β2よりも小さい。なお、上昇部22caの上昇角β3を
図13(a)に示す。一対の中間隆起部22bの上昇角β2を
図13(b)に示す。そして、後方隆起部22cの上昇部22caは、
図10に示すように、中間隆起部22bの頂部22b2よりも前切刃5aから離れて位置している。
【0081】
その他の構成は、上述した第1の実施形態に係る切削インサート1あるいは第1の変形例に係る切削インサート1と同様であるので、説明を省略する。
【0082】
<切削工具>
(第1の実施形態)
次に、本発明の第1の実施形態に係る切削工具10について、
図14〜
図16を参照しつつ説明する。本実施形態の切削工具10においては、切削インサートとして、上述の第1の実施形態に係るインサート1が装着されている。
【0083】
図14は、本発明の第1の実施形態に係る切削工具10を示す図である。
図14(a)は斜視図である。
図14(b)は正面図である。
図15(a)は、
図14に示す切削工具10の上面図である。
図15(b)は、
図15(a)に示す切削工具10の要部を拡大した上面図である。
図16(a)は、
図14に示す切削工具10の側面図である。
図16(b)は、
図16(a)に示す切削工具10の要部を拡大した側面図である。
【0084】
図14に示すように、本実施形態の切削工具10は、インサート1と、インサート1を先端に保持する略角柱状のホルダ11とを備えている。インサート1は、前切刃5aの一つがホルダ11の先端から突出した状態で保持されるようにホルダ11に装着される。
【0085】
本実施形態では、ホルダ11の先端において、インサート1の貫通穴から固定部材(ねじ)12をホルダ11の対応部位まで挿し込んでいる。固定部材(ねじ)12によるインサート1の拘束力を調節し、
図15(b)に示すように、インサート1を装着面26の反対側から押え込むことによってホルダ11に拘束する方式が用いられている。拘束に際しては、インサート1の装着面26がホルダ11の載置面に当接している。
【0086】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第1の実施形態に係る切削工具10について、上述の第2の実施形態に係るインサート1を装着した切削工具を例に挙げ、
図17〜
図19を参照しつつ説明する。
【0087】
なお、
図17〜
図19においては、上述した
図14〜
図16と同一の構成部分には同一の符号を付して説明は省略する場合がある。なお、本実施形態の切削工具10において、切削インサート1の取り付け状態などの一部構成は第1の実施形態の切削工具10と同一である。そのため、第1の実施形態の切削工具10との差異を主に説明し、重複する内容については説明を省略する。
【0088】
図17は、本発明の第2の実施形態に係る切削工具10を示す図である。
図17(a)は斜視図である。
図17(b)は正面図である。
図18(a)は、
図17に示す切削工具10の上面図である。
図18(b)は、
図18(a)に示す切削工具10の要部を拡大した上面図である。
図19(a)は、
図17に示す切削工具10の側面図である。
図19(b)は、
図19(a)に示す切削工具10の要部を拡大した側面図である。
【0089】
本実施形態の切削工具10は、インサート1と、インサート1が先端にねじ留めされる略角柱状のホルダ11とを備えている。
【0090】
本実施形態では、
図17に示すように、ホルダ11の先端において固定部材(ねじ)12による拘束力を調節し、インサート1をホルダ11の先端部の上顎および下顎によって上下から挟み込んでホルダ11に拘束する「クランプオン方式」が用いられている。拘束に際しては、
図19(b)に示すように、インサート1の上面2,および下面3の装着面26(クランプ面)がホルダ11の上顎および下顎に当接している。
【0091】
その他の構成は、上述した第1の実施形態に係る切削工具10と同様であるので、説明を省略する。
【0092】
本実施形態に係る切削工具10においても、第1の実施形態に係る切削工具10と同様の作用効果を発揮することができる。
【0093】
なお、上述のような実施形態において採用されている方式に代えて別の方式を用いても良い。具体的には、例えば、インサートをホルダに拘束する他の方式として、「レバーロック方式」および「カムロック方式」などが挙げられる。レバーロック方式では、インサートに穴が開けられ、ホルダが略L字型をしたレバーを備えている。てこの作用によって、上記のレバーを利用してインサートの穴内壁からインサートをホルダに拘束できる。カムロック方式では、インサートに穴が開けられており、軸部と頭部とが偏心したピンが用いられる。インサートの穴に上記のピンを挿入することによってインサートをホルダに拘束できる。
【0094】
<切削加工物の製造方法>
(第1の実施形態)
次に、本発明の第1の実施形態に係る切削加工物の製造方法について、上述の第2の実施形態に係るインサート1を装着した切削工具10を「突切り加工」に適用する場合を例に挙げ、
図20を参照しつつ説明する。
【0095】
本実施形態の切削加工物の製造方法は、以下の(i)〜(iv)の工程を有する。
【0096】
(i)
図20(a)に示すように、被削材100を矢印E方向に回転させる工程。
【0097】
(ii)
図20(a)に示すように、切削工具10を矢印F方向に動かし、回転している被削材100に切削工具10を近接させる工程。
【0098】
本工程では、被削材100と切削工具10とが相対的に近づくようにすればよく、例えば被削材100を切削工具10に近づけるようにしてもよい。
【0099】
(iii)
図20(b)に示すように、回転している被削材100に切削工具10の切刃5を接触させて被削材100を切削する工程。
【0100】
本工程においては、溝入れ加工の際に、被削材100が分断されるまで矢印F方向に切削工具10を移動して切削が行われることによって、突切り加工が行なわれる。なお、
図20(b)においては、切刃5として前切刃を用いて被削材100を切削しているが、これに限られない。被削材100を切削するためには、切刃5として、前述の前切刃、一対の横切刃あるいは一対のコーナー切刃のいずれかを、回転している被削材100に接触させればよい。
【0101】
(iv)
図20(c)に示すように、切削工具10を矢印G方向に動かし、分断した被削材100から切削工具10を離す工程。
【0102】
本工程では、被削材100と切削工具10とが相対的に遠ざかるようにすればよく、例えば被削材100を切削工具10から遠ざけるようにしてもよい。
【0103】
以上のような(i)〜(iv)の工程を実施することによって、切削加工物が得られる。
【0104】
本実施形態によれば、上述のように、切削インサート1の上面において、前切刃から離れるにつれて、一対の前方隆起部、一対の中間隆起部および後方隆起部が順に位置している。さらに、一対の中間隆起部の頂部は、一対の前方隆起部の頂部および後方隆起部の頂部よりも高い。これにより、被削材100に対して溝入れ加工および突切り加工などを行なう際に、前切刃によって生成された切屑は、前すくい面の上を通過しつつ各隆起部と接触して変形する。そのため、幅広い送り量の切削条件下において安定的に切屑が外部に排出される。
【0105】
さらに切削加工を継続する場合には、被削材100を回転させた状態を保持したまま、被削材100の異なる箇所に切削工具10の切刃5を接触させる工程を繰り返せばよい。なお、本実施形態で用いられているインサート1は、2コーナーでの使用が可能な仕様である。したがって、使用している一方の切刃5が摩耗した際には、未使用の他方の切刃5を用いればよい。
【0106】
なお、上述のような突切り加工に代えて、被削材100に対して単なる溝入れ加工を行なう場合には、被削材100が分断されない領域まで切削工具10を当接させて切削を行なえばよい。本実施形態に係るインサート1の前切刃は前側面の側から見たときに直線状であることから、溝入れ加工において溝の底面の平滑性を高く形成することができる。
【0107】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る切削加工物の製造方法について、上述の第2の実施形態に係るインサート1を装着した切削工具10を「面取り加工」に適用する場合を例に挙げ、
図21を参照しつつ説明する。
【0108】
なお、
図21においては、上述した
図20と同一の構成部分には同一の符号を付して説明は省略する場合がある。本実施形態の切削加工物の製造方法は、一部の工程は第1の実施形態の切削加工物の製造方法と同一である。そのため、第1の実施形態の切削加工物の製造方法との差異を主に説明し、重複する内容については説明を省略する。
【0109】
本実施形態の切削加工物の製造方法は、以下の(i)〜(vii)の工程を有する。
【0110】
(i)
図21(a)に示すように、被削材100を矢印E方向に回転させる工程。
【0111】
(ii)
図21(a)に示すように、切削工具10を矢印F1方向に動かし、回転している被削材100に切削工具10を近接させる工程。
【0112】
本工程では、被削材100と切削工具10とが相対的に近づくようにすればよく、例えば被削材100を切削工具10に近づけるようにしてもよい。
【0113】
(iii)
図21(a)に示すように、切削工具10を矢印F1方向にさらに動かし、回転している被削材100に切削工具10の切刃5を接触させて被削材100を切削する工程。
【0114】
本工程においては、溝入れ加工の際には、溝を形成する切削加工が行われる。
【0115】
(iv)
図21(b)に示すように、切削工具10を矢印F2方向に動かし、回転している被削材100に切削工具10の切刃5を接触させて被削材100を切削する工程。
【0116】
本工程においては、溝入れ加工の際には、溝の幅を拡げる横送り加工が行われる。
【0117】
(v)
図21(c)に示すように、切削した被削材100から切削工具10を離す工程。
【0118】
(vi)
図21(d)に示すように、切削工具10を矢印H方向に動かし、回転している被削材100に切削工具10の切刃5を接触させて被削材100を切削する工程。
【0119】
本工程では、被削材100と切削工具10とが相対的に遠ざかるようにすればよく、例えば被削材100を切削工具10から遠ざけるようにしてもよい。
【0120】
(vii)切削工具10を矢印F方向とは逆の方向に動かし、切削した被削材100から切削工具10を離隔させる工程。
【0121】
以上のような(i)〜(vii)の工程を実施することによって、切削加工物が得られる。
【0122】
本実施形態においても、上述のように、切削インサート1の上面において、前切刃から離れるにつれて、一対の前方隆起部、一対の中間隆起部および後方隆起部が順に位置しており、且つ、一対の中間隆起部の頂部は、一対の前方隆起部の頂部および後方隆起部の頂部よりも高い。これにより、上記工程(i)〜(v)の溝入れ工程において、前切刃によって生成された切屑は、前すくい面の上を通過しつつ各隆起部と接触して変形する。そのため、幅広い送り量の切削条件下において切屑が安定的に外部に排出される。
【0123】
なお、本実施形態において、上記の工程(i)〜(v)は必須ではなく、工程(v)を終えた状態から工程(vi)および(vii)を行なうようにしてもよい。
【0124】
その他については、上述した第1の実施形態に係る切削加工物の製造方法と同様であるので、説明を省略する。
【0125】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることは言うまでもない。
【0126】
例えば、上述の実施形態においては、一対の前方隆起部22aに対して、一対の横側面4bのうち隣接する横側面4bの側に位置している一対の副隆起部22dを有する構成である。しかしながら、これに代えて、上面視において、一対の前方隆起部22aが、一対の横側面4bと上面2との交差部に連続している構成としてもよい。この際、一対の副隆起部22dを設ける必要はない。
【0127】
また、上述の実施形態における切削部Iを、一対の横側面4bに沿って立ち上がり面23の途中まで研磨などの手段で除去することによって、前切刃5aの幅が狭くなるような構成にしても良い。この場合においては、上述の実施形態と同様、上面2において、前切刃5aから離れるにつれて、一対の前方隆起部22a、一対の中間隆起部22bおよび後方隆起部22cが順に位置している。また、一対の中間隆起部22bの頂部22b2は、一対の前方隆起部22aの頂部22a2および後方隆起部22cの頂部22c2よりも高い。そのため、上述の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0128】
そして、当該構成において、切削部Iを、一対の横側面4bに沿って立ち上がり面23の途中まで研磨する際に、前切刃5aの幅を狭くするとともに立ち上がり面23の側の研磨端部が上面視で前切刃5aに対して傾斜するような構成としても良い。これによれば、被削材に対して、前切刃5aによる溝入れ加工に加えて、立ち上がり面23の側の傾斜した研磨端部による面取り加工を、一度の切削加工の工程によって行なうことが可能となる。