(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水酸基を有する多官能アクリレートの分子中の水酸基数が1つであり、アクリロイル基数が3〜5の範囲にある請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
前記重合性ウレタンアクリレート化合物(A)の重量平均分子量が500以上〜3,000未満の範囲であり、かつ粘度が25℃において200,000ミリパスカル秒(mPa・s)未満である請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
前記水酸基を有する多官能アクリレートがペンタエリスリトールトリアクリレートである請求項1〜4の何れか1つに記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物は、全量の5〜60重量%である芳香環構造または脂環式構造を有する重量平均分子量140〜300の範囲にあるジイソシアナート化合物と水酸基を有する多官能アクリレートを反応させてなる重合性ウレタンアクリレート化合物(A)、及び前記以外の重合性アクリレートモノマー(B)を含有することで目的とする本発明の効果を奏するものである。
【0018】
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物は、基材に印刷後、活性エネルギー線を照射することで硬化皮膜とすることができる。この活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。これらのなかでも特に、硬化性および利便性の点から紫外線(UV)が好ましい。
【0019】
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、上記の通り、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線であるが、具体的なエネルギー源又は硬化装置としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、紫外線発光ダイオード(UV−LED)、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等を光源とする紫外線、又は走査型、カーテン型電子線加速器による電子線等が挙げられる。
【0020】
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物を硬化させる活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、インキ硬化剤として公知公用の光重合開始剤組成物を利用することが可能であり、分子内開裂型光重合開始剤及び水素引き抜き型光重合開始剤が挙げられる。分子内開裂型光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のアセトフェノン系化合物;1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシム系化合物、3,6−ビス(2−メチル−2−モルフォリノプロパノニル)−9−ブチルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物;
【0021】
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ((4−メチルチオ)フェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアミノアルキルフェノン系化合物;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル等が挙げられる。
【0022】
一方、水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;その他10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。これらのなかでも特に硬化性に優れる点からアミノアルキルフェノン系化合物が好ましく、また、特に発光ピーク波長が350〜420nmの範囲の紫外線を発生する紫外線発光ダイオード(UV−LED)光源を活性エネルギー線源として用いた場合には、アミノアルキルフェノン系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、及びアミノベンゾフェノン系化合物を併用することが硬化性に優れる点から好ましい。
【0023】
これらの光重合開始剤組成物の使用量は、本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物中の不揮発成分100重量%に対し、その合計使用量として1〜20重量%となる範囲であることが好ましい。即ち、重合開始剤の合計使用量が1重量%以上の場合は良好な硬化性を得ることができ、また20重量%以下の場合は、未反応の重合開始剤が硬化物中に残存することによるマイグレーション、耐溶剤性、耐候性等の物性低下といった問題を回避できる。これらの性能バランスがより良好なものとなる点から、特に、本発明の活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の不揮発成分100重量%に対し、その合計使用量が3〜15重量%となる範囲であることがより好ましい。ただし活性エネルギー線として電子線を用いる場合には、原理的にこれら光重合開始剤の使用は必須ではない。
【0024】
また、前記した重合開始剤の他に、光増感剤を利用することで硬化性を一層向上させることが可能である。斯かる光増感剤は、例えば、脂肪族アミン等のアミン化合物、o−トリルチオ尿素等の尿素類、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。これら光増感剤の使用量は、硬化性向上の効果が良好なものとなる点から本発明の活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の不揮発成分100重量%に対し、その合計使用量として1〜20重量%となる範囲であることが好ましい。
【0025】
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物の必須成分として、組成物全量の5〜60重量%である芳香環構造または脂環式構造を有する重量平均分子量140〜300の範囲にあるジイソシアナート化合物と水酸基を有する多官能アクリレートを反応させてなる重合性ウレタンアクリレート化合物(A)が挙げられる。
前記重合性ウレタンアクリレート化合物(A)の含有量は組成物全量の5〜60重量%の範囲にあることが好ましく、5重量%未満であると良好な硬化性を得ることができず、また60重量%を超えるとオフセットインキの粘度を適切な範囲内に収めることが困難になるため好ましくない。前記重合性ウレタンアクリレート化合物(A)の構成成分である前記ジイソシアナート化合物は芳香環構造または脂環式構造を有することが良好な硬化性を得る目的で好ましい。
【0026】
前記芳香環構造または脂環式構造を有するジイソシアナート化合物の重量平均分子量は140〜300の範囲にあることが好ましい。分子量が300を超えるジイソシアナート化合物を用いた場合、重合性ウレタンアクリレート化合物の硬化性が低下することから好ましくない。前記重合性ウレタンアクリレート化合物(A)を構成する芳香環構造を有する重量平均分子量140〜300の範囲にあるジイソシアナート化合物としては、例えば、2,4−トルエンジイソシアナート、2,6−トルエンジイソシアナート、3,4−トルエンジイソシアナート(何れも重量平均分子量:174)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(何れも重量平均分子量:250)、1,3−キシリレンジイソシアナート(重量平均分子量:188)等が挙げられる。
【0027】
前記水酸基を有する多官能アクリレートの分子中の水酸基数は1つであり、かつアクリロイル基数としては、3〜5の範囲にあることが好ましい。水酸基数が2以上の場合は、アクリレートが架橋成分となり分子量が過度に増大することに起因する粘度上昇や反応性の低下、ゲル化をもたらす傾向があり、加えて未反応の水酸基の残存量が多くなりオフセット印刷適性の低下をもたらす傾向にある。またアクリロイル基数が2以下の場合は硬化性が低下し、6以上の場合はインキ硬化皮膜の柔軟性が損なわれる傾向にある。
【0028】
更に前記水酸基を有する多官能アクリレートを反応させてなる重合性ウレタンアクリレート化合物(A)を構成する脂環式構造を有する重量平均分子量140〜300の範囲にあるジイソシアナート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアナート(重量平均分子量:222)、1,4−シクロヘキシレンジイソシアナート(重量平均分子量:166)、4,4‘−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアナート(重量平均分子量:262)等が挙げられる。一方、ヘキサメチレンジイソシアナート(重量平均分子量:168)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(重量平均分子量:210)のような脂肪族ジイソシアナート化合物を用いた場合は、重合性ウレタンアクリレート化合物の硬化皮膜が柔軟になりすぎ硬化性が低下することから好ましくない。
【0029】
前記芳香環構造または脂環式構造を有する分子量140〜300の範囲にあるジイソシアナート化合物の中でも、芳香環構造がより好ましく、2,4−トルエンジイソシアナート、2,6−トルエンジイソシアナート(何れも重量平均分子量:174)が特に好ましい。
【0030】
前記重合性ウレタンアクリレート化合物(A)は前記ジイソシアナート化合物と水酸基を有する多官能アクリレートをウレタン化反応させることで得られるが、水酸基を有する多官能アクリレートとして、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びこれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフランあるいはεカプロラクトンを付加重合した化合物等を挙げることが出来るが、3官能アクリレートであるペンタエリスリトールトリアクリレートや5官能であるジペンタエリスリトールペンタアクリレートが好ましく、ペンタエリスリトールトリアクリレートが特に好ましい。
【0031】
前記重合性ウレタンアクリレート化合物(A)は重量平均分子量が500以上〜3,000未満の範囲にあり、かつ粘度が25℃において200,000ミリパスカル秒(mPa・s)未満であることが好ましく、重量平均分子量が700以上〜1,400未満の範囲にあることが特に好ましい。分子量が3,000以上の場合は分子の運動性能が低下するためオフセット印刷の活性エネルギー線照射条件において良好な硬化性を得ることが困難であり、粘度が200,000ミリパスカル秒以上の場合は、オフセットインキ組成物の粘度を好適な範囲に収めることが困難となる。
【0032】
また、前記重合性ウレタンアクリレート化合物(A)は前記ジイソシアナート化合物と前記水酸基を有する多官能アクリレートをウレタン化反応させることで得られるが、具体的には、両者を混合し90℃で5時間程度反応させることで得ることが可能である。優れた硬化性およびオフセット印刷適性を得る目的で、イソシアナート基は出来る限り水酸基とウレタン化反応させることが好ましく、例えば未反応イソシアナート基の割合を10%未満とすることが好ましい。
【0033】
前記重合性ウレタンアクリレート化合物(A)は、合成時の熱重合の防止や貯蔵安定性を保つために、熱重合防止剤を配合することができる。熱重合防止剤として代表的なものを例示すれば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、p−ベンゾキノン、2,5−t−ブチルハイドロキノン、フェノチアジン、N‐ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、ジエチルジチオカルバミン酸銅、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等が挙げられる。その配合量はウレタンアクリレート化合物(A)に対し0.01〜1重量%の範囲にあることが好ましい。
【0034】
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物の必須成分である前記重合性ウレタンアクリレート化合物(A)の具体例として、2,4−トルエンジイソシアナート1分子とペンタエリスリトールトリアクリレート2分子を反応させた化合物の化学構造を式(1)に、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート1分子とペンタエリスリトールトリアクリレート2分子を反応させた化合物の化学構造を式(2)に示す。
【0037】
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物の硬化性を向上させる手段としては組成物中の重合基(アクリル基)の濃度を高めることが有効であり、この目的において分子内に5〜6つの重合基を高密度に有する例えばジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)もしくはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を用いることは有効であるが、重合基同士が反応・結合する際に分子間距離が縮まる影響でインキ硬化皮膜が堅く収縮した状態となり柔軟性が損なわれる傾向にある。一方、本発明で述べる重合性ウレタンアクリレート化合物(A)は、分子内に複数の重合基を有する一方、柔軟なウレタン結合と強固な芳香族骨格ないし脂環式骨格の双方を有することから、硬化性と柔軟性のバランスに優れているものと推察される。さらに低粘度モノマーと併用することでインキ組成物中のウレタンアクリレート化合物(A)の配合濃度を高めることができ、更に効果的に硬化性能を向上させることができる。
【0038】
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物に使用する重合性ウレタンアクリレート化合物(A)以外の重合性アクリレートモノマー(B)としては公知公用のアクリレートモノマーを挙げることができ、例えば、単官能アクリレートモノマーとしては、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニロキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0039】
また2官能以上のアクリレートモノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジアクリレート、2−ブチルー2−エチルー1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等の2価アルコールのジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールのポリアクリレート等の3価以上の多価アルコールのポリアクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに2モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレート、グリセリン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリアクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリアクリレート、ビスフェノールA1モルに2モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレート等のポリオキシアルキレンポリオールのポリアクリレート等が挙げられる。
【0040】
ただし本発明において前記重合性ウレタンアクリレート化合物(A)と組み合わせることにより好適な硬化性、柔軟性、オフセット印刷適性、および印刷機ゴムローラ適性を得る目的においては、重合性アクリレートモノマー(B)は分子中のアクリロイル基数が2以上であり、疎水性であり、重量平均分子量が200〜600の範囲にあり、25℃における粘度が1ミリパスカル秒以上〜150ミリパスカル秒(mPa・s)未満であることが好ましく、これらの要件を満たす具体例として、EO3TMPTA(エチレンオキサイド平均3モル変性トリメチロールプロパントリアクリレート、粘度50〜70mPa・s、重量平均分子量428)、DPGDA(ジプロピレングリコールジアクリレート、粘度5〜30mPa・s、重量平均分子量240)、HDDA(ヘキサンジオールジアクリレート、粘度5〜15mPa・s、重量平均分子量226)、TMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート、粘度80〜120mPa・s、重量平均分子量296)、GPTA(プロピレンオキサイド平均3モル変性グリセリントリアクリレート、粘度80〜120mPa・s、重量平均分子量428)、PO3TMPTA(プロピレンオキサイド平均3モル変性トリメチロールプロパントリアクリレート、粘度70〜100mPa・s、重量平均分子量470)等が挙げられるが、特に、これらの中でも、重量平均分子量300〜600の範囲にあるエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレートは低粘度かつ硬化性に優れ、オフセット印刷適性も良好である点において好ましい。これら重合性アクリレートモノマー(B)は単独で用いてもいずれか1種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
本発明の活性エネルギー硬化型オフセットインキ組成物では、硬化性を向上させる目的でワックスを添加することができる。前記ワックスとしては、パラフィンワックス、カルナバワックス、みつろう、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、アマイドワックスなどのワックス、ヤシ油脂肪酸や大豆油脂肪酸などのC8〜C18程度の範囲にある脂肪酸等を挙げることができる。中でもポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックスに代表されるパウダータイプ又は粒子タイプのポリオレフィンワックスは良好なインキ流動性と硬化性が得られるため好ましく、さらに前記ポリオレフィンワックスの融点が90〜130℃の範囲にありかつ平均粒子径D50が1〜10マイクロメートルの範囲にあるポリオレフィンワックスであればより好ましい。平均粒子径D50が1マイクロメートル未満の場合は硬化性を向上させることが難しく、10マイクロメートルを超える場合は印刷機上のインキ転移性が著しく低下しオフセット印刷適性を損なうことから好ましくない。また本発明の活性エネルギー線硬化型組成物中の不揮発成分100重量%に対し、ワックスの総使用量が0.1〜5重量%となる範囲であることが好ましい。
【0042】
尚、前記平均粒径の測定法としては、日立製作所操作型電子顕微鏡S−3400Nで測定した度数分布の状況から算出したものである。
【0043】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物に用いる顔料としては、公知公用の着色用有機顔料を挙げることができ、例えば「有機顔料ハンドブック(著者:橋本勲、発行所:カラーオフィス、2006年初版)」に掲載される印刷インキ用有機顔料等が挙げられ、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、金属フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン顔料、金属錯体顔料、ジケトピロロピロール顔料、カーボンブラック顔料、その他多環式顔料等が使用可能である。
【0044】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物には、体質顔料として無機微粒子を用いてもよい。無機微粒子としては、酸化チタン、クラファイト、亜鉛華等の無機着色顔料;炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、クレー(ChinaClay)、シリカ粉、珪藻土、タルク、カオリン、アルミナホワイト、硫酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、バライト粉、砥の粉等の無機体質顔料; 等の無機顔料や、シリコーン、ガラスビーズなどがあげられる。これら無機微粒子は、インキ中に0.1〜20重量%の範囲で使用することにより、インキの流動性調整、ミスチング防止、紙等の印刷基材への浸透防止といった効果を得ることが可能である。
【0045】
本発明の活性エネルギー硬化型オフセットインキ組成物では、公知公用の各種バインダー樹脂を利用することができる。ここで述べるバインダー樹脂とは、適切な顔料親和性と分散性を有し、印刷インキに要求されるレオロジー特性を有する樹脂全般を示しており、例えば非反応性樹脂としては、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、石油樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、セルロース誘導体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブタジエン−アクリルニトリル共重合体等を挙げることができ、または樹脂分子中に少なくとも1つ以上の重合性基を有するエポキシアクリレート化合物、ウレタンアクリレート化合物、ポリエステルアクリレート化合物等を使用することもでき、これらバインダー樹脂化合物は、単独で使用しても、いずれか1種以上を組合せて使用してもよい。
【0046】
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物では、上記した各成分の他の配合物として、染料、有機溶剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、顔料分散剤等の添加剤を使用することができる。
【0047】
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物で使用する印刷基材としては特に限定は無く、例えばカタログ、ポスター、チラシ、CDジャケット、ダイレクトメール、パンフレット、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等のパッケージ等の印刷に用いられる上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、各種合成紙、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、ナイロン、ポリ乳酸、ポリカーボネート等のフィルム又はシート、セロファン、アルミニウムフォイル、その他従来から印刷基材として使用されている各種基材を挙げることが出来る。
【0048】
本発明で述べる活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物の製造は、従来の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物紫と同様に、前記着色顔料、重合性アクリレートモノマー、バインダー樹脂、光重合開始剤、増感剤、その他添加剤等を配合してミキサー等で撹拌混合し、三本ロールミル、ビーズミル等の分散機を用いて練肉することで製造される。
【実施例】
【0049】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
【0050】
〔活性エネルギー線硬化型オフセットインキの製造方法〕
表1及び表2の組成に従って、実施例1〜3及び比較例1〜4のインキを3本ロールミルにて練肉することによって、各種のインキ組成物を得た。尚、表1及び表2の数値は重量%である。 尚、全てのインキ組成物に対し着色成分として藍顔料DIC株式会社製FASTOGEN BLUE TGR−1(Pigment Blue15:3、フタロシアニンブルー)を使用した。
【0051】
〔展色物の製造方法〕
この様にして得られた活性エネルギー線硬化型インキ組成物を、簡易展色機(RIテスター、豊栄精工社製)を用い、インキ0.10mlを使用して、RIテスターのゴムロール及び金属ロール上に均一に引き伸ばし、コートボール紙(王子マテリア社製UFコート、米坪350g/m
2)の表面に、200cm
2の面積にわたって藍濃度1.6(X−Rite社製SpectroEye濃度計で計測)で均一に塗布されるように展色し、展色物を作製した。なおRIテスターとは、紙やフィルムにインキを展色する試験機であり、インキの転移量や印圧を調整することが可能である。
【0052】
〔UVランプ光源による硬化方法〕
インキ塗布後の展色物に活性エネルギー線である紫外線(UV)照射を行い、インキ皮膜を硬化させた。水冷メタルハライドランプ(出力100W/cm1灯)およびベルトコンベアを搭載したUV照射装置(アイグラフィックス社製、コールドミラー付属)を使用し、展色物をコンベア上に載せ、ランプ直下(照射距離11cm)を分速100メートルの速度で通過させることにより、インキ皮膜を硬化させた。各条件における紫外線照射量は紫外線積算光量計(ウシオ電機社製UNIMETER UIT−150−A/受光機UVD−C365)を用いて測定した。
【0053】
〔活性エネルギー線硬化型インキ組成物の評価方法1−1:硬化性〕
硬化性は、紫外線照射直後に爪スクラッチ法にて展色物表面の傷付きの有無を確認し次の3段階で評価した。爪で擦ってインキ硬化皮膜に傷が発生する組成では、印刷物の断裁や製函、輸送といった各工程において、印刷物が損傷し易くなる。
○:爪スクラッチで傷が発生せず、硬化性は良好である。
△:爪スクラッチで軽度の傷が発生し、硬化性は中位である。
×:爪スクラッチで傷が発生し、硬化性は不良である。
【0054】
〔活性エネルギー線硬化型インキ組成物の評価方法1−2:耐溶剤性〕
耐溶剤性の評価は、溶剤ラビング法にて実施した。溶剤としてMEK(メチルエチルケトン)を用い、綿棒にMEKを十分に浸し濡らした状態で、紫外線照射直後に展色物表面を30往復擦り、傷付きの有無を確認し次の3段階で評価した。インキ硬化皮膜に傷が発生する組成では、印刷物の断裁や製函、輸送といった各工程において、印刷物が損傷し易くなる。また、何らかの原因により薬品や洗剤、飲料等がインキ硬化皮膜に付着した場合、印刷物が損傷し易くなる。
○:溶剤ラビングで傷が発生せず、耐溶剤性は良好である。
△:溶剤ラビングで軽度の傷が発生し、耐溶剤性は中位である。
×:溶剤ラビングで傷が発生し、耐溶剤性は不良である。
【0055】
〔活性エネルギー線硬化型インキ組成物の評価方法2:硬化皮膜の柔軟性〕
前記展色物に前記UVランプ照射装置を用いて、コンベア速度20m/分で紫外線を照射し、インキ組成物を硬化させた。その後、インキ硬化皮膜を外側に向けた状態で展色物を角度180°で折り曲げた。本評価方法(180°曲げ試験)により、インキ硬化皮膜の折り曲げ箇所に物理的な負荷が生じることから、試験後の硬化皮膜の割れを観察することにより、柔軟性を次の3段階で評価した。
○:インキ硬化皮膜に割れは発生せず、柔軟性は良好である。
△:インキ硬化皮膜に微小な割れが発生しており、柔軟性は中位である。
×:インキ硬化皮膜に明確な割れが発生しており、柔軟性は不良である。
【0056】
〔活性エネルギー線硬化型インキ組成物のオフセット印刷方法〕
製造された実施例1〜3、比較例1〜4の活性エネルギー線硬化型インキについて、オフセット印刷適性を評価した。紫外線照射装置としてアイグラフィックス社製水冷メタルハライドランプ(出力160W/cm、3灯使用)を搭載したマンローランド社製オフセット印刷機(ローランドR700印刷機、幅40インチ機)を用いて、毎時9000枚の印刷速度にてオフセット印刷を実施した。印刷用紙には王子製紙社製OKトップコートプラス(57.5kg、A判)を使用した。版面に供給される湿し水は、水道水98重量%とエッチ液(FST−700、DIC社製)2重量%を混合した水溶液を用いた。
【0057】
〔活性エネルギー線硬化型インキ組成物の評価方法3:オフセット印刷適性〕
オフセットインキ印刷適性の評価方法としては、まず印刷機の水供給ダイヤルを40(標準水量)にセットし、印刷物濃度が標準プロセス藍濃度1.6(X−Rite社製SpectroEye濃度計で計測)となるようインキ供給キーを操作し、濃度が安定した時点でインキ供給キーを固定した。その後インキ供給キーを固定したままの条件で、水供給ダイヤルを40から55に変更し水供給量を増やした条件で300枚印刷し、300枚後の印刷物の藍濃度を測定した。水供給量を増やした状態においても印刷物の濃度低下が少ないほど、乳化適性に優れ、印刷適性に優れたインキと評価できる。下記の基準に従って活性エネルギー線硬化型インキの印刷適性を評価した。
○:印刷物の藍濃度が1.5以上であり、オフセット印刷適性は良好である。
△:印刷物の藍濃度が1.4以上〜1.5未満であり、オフセット印刷適性は中位である。
×:印刷物の藍濃度が1.4未満であり、オフセット印刷適性は不良である。
【0058】
(重量平均分子量の測定)
尚、本発明におけるGPCによる重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR−Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
表1、及び表2の数値は重量%である。
・TGR−1:FASTOGEN BLUE TGR−1、フタロシアニンブルー(銅フタロシアニン)藍顔料、DIC社製
・ハイフィラー#5000PJ:含水ケイ酸マグネシウムによるタルク、松村産業社製
・炭酸マグネシウムTT:塩基性炭酸マグネシウム、ナイカイ塩業社製
・S−381−N1:ポリオレフィンワックス、シャムロック社製
・ジアリルフタレート樹脂ワニス:重量比率でジアリルフタレート樹脂(ダイソーダップA、ダイソー社製)35%と、MIRAMER M410(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、粘度450〜750mPa・s、重量平均分子量467、MIWON社製)65%との混合物
・ウレタンアクリレート1:2,4−トルエンジイソシアナート(TDI)とペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物;TDI1モルにつきペンタエリスリトールトリアクリレート2モルをウレタン化反応
・ウレタンアクリレート2:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)とペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物;MDI1モルにつきペンタエリスリトールトリアクリレート2モルをウレタン化反応
・ウレタンアクリレート3:ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)とペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物;MDI1モルにつきペンタエリスリトールトリアクリレート2モルをウレタン化反応
・MIRAMER M600:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、粘度4000〜7000mPa・s、重量平均分子量578、MIWON社製
・PETA−K:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)、粘度800mPa・s、重量平均分子量352、ダイセル・オルネクス社製
・MIRAMER M410:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、粘度450〜750mPa・s、重量平均分子量467、MIWON社製
・MIRAMER M3130:エチレンオキサイド(平均3モル付加)変性トリメチロールプロパントリアクリレート(EO3TMPTA)、粘度50〜70mPa・s、重量平均分子量428、 MIWON社製
・Irgacure907:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノプロパン−1−オン、BASF社製
・EAB―SS:4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、大同化成工業社製
・ステアラーTBH:2−tert−ブチルハイドロキノン、精工化学社製
【0062】
(重量平均分子量の測定)
尚、本発明におけるGPCによる重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR−Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
【0063】
実施例に述べる紫外線硬化型オフセットインキ組成物では、良好な硬化性、基材を折り曲げた際の硬化皮膜の割れを克服する柔軟性、及び印刷適性においても良好な結果となった。
【0064】
比較例の結果においては、硬化性、硬化皮膜の割れを克服する柔軟性、印刷適性の全てを網羅するに至らなかった。
本発明の課題は、省エネルギー紫外線照射下でも良好な硬化性、皮膜柔軟性及び優れた印刷適性を兼備することを特徴とする活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物、及びその印刷物を提供することにある。
光重合開始剤組成物、全量の5〜60重量%である芳香環構造または脂環式構造を有する重量平均分子量140〜300の範囲にあるジイソシアナート化合物と水酸基を有する多官能アクリレートを反応させてなる重合性ウレタンアクリレート化合物(A)、及び前記以外の重合性アクリレートモノマー(B)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。