(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5816051
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月17日
(54)【発明の名称】アルミニウム製品のろう付け炉
(51)【国際特許分類】
B23K 1/008 20060101AFI20151029BHJP
B23K 1/19 20060101ALI20151029BHJP
B23K 3/04 20060101ALI20151029BHJP
F27B 9/30 20060101ALI20151029BHJP
B23K 103/10 20060101ALN20151029BHJP
【FI】
B23K1/008 C
B23K1/19 A
B23K3/04 Z
F27B9/30
B23K103:10
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-237021(P2011-237021)
(22)【出願日】2011年10月28日
(65)【公開番号】特開2013-94785(P2013-94785A)
(43)【公開日】2013年5月20日
【審査請求日】2014年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(73)【特許権者】
【識別番号】000157072
【氏名又は名称】関東冶金工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】小林 勇太
(72)【発明者】
【氏名】東田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】勝又 健次
【審査官】
山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−083332(JP,A)
【文献】
特開2011−038683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/008
B23K 1/19
B23K 3/04
F27B 9/30
B23K 103/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉本体(1)の入口から出口に被ろう付け品(2)の搬送路(3)が設けられ、その搬送路(3)の下方に互いに、搬送方向に離間し多数の棒状の電気ヒータ(4)が搬送路(3)に沿って配置されたアルミニウム製品のろう付け炉において、
前記各電気ヒータ(4)が炉内に露出して配置され、その電気ヒータ(4)の上方のみにろう受け(5)が設けられて、
前記ろう受け(5)として、搬送路(3)の下方で、各電気ヒータ(4)の真上のみに、各電気ヒータ(4)の長手方向に沿って、細長い電気ヒータカバーが配置され、
被ろう付け品(2)から溶融落下したろう材やフラックス等の不純物が前記電気ヒータ(4)の外周に付着することを防止すると共に、各電気ヒータの熱が各ろう受け(5)の間から、前記被ろう付品(2)に直接放射されるように構成したアルミニウム製品のろう付け炉アルミニウム製品のろう付け炉。
【請求項2】
炉本体(1)の入口から出口に被ろう付け品(2)の搬送路(3)が設けられ、その搬送路(3)の下方に互いに、搬送方向に離間し多数の棒状の電気ヒータ(4)が搬送路(3)に沿って配置されたアルミニウム製品のろう付け炉において、
前記各電気ヒータ(4)が炉内に露出して配置され、その電気ヒータ(4)の上方のみにろう受け(5)が設けられて、
前記ろう受け(5)として、被ろう付け品(2)を収納して、前記搬送路(3)上を移動する収納容器(6)の底に皿状プレート(5c)が着脱自在に取付られ、
被ろう付け品(2)から溶融落下したろう材やフラックス等の不純物が前記電気ヒータ(4)の外周に付着することを防止したアルミニウム製品のろう付け炉。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載のアルミニウム製品のろう付け炉において、
前記炉本体(1)の内壁の底に、底受け(14)が載置されて、それに溶融ろう材やフラックス等の不純物を収納できるようにされたアルミニウム製品のろう付け炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム製熱交換器等のアルミニウム製品のろう付け炉に関する。
【背景技術】
【0002】
下記各特許文献に記載されたアルミニウム製品のろう付け用連続炉は、加熱ゾーンと水冷冷却ゾーンと空冷冷却ゾーンとを直列に接続し、それらを搬送ローラ等の搬送路で連結している。加熱ゾーンの内壁は、カーボン材料で形成したマッフルが被着されている。そして、内部には多数の棒状の電気ヒータが並列され、その電気ヒータがセラミックのスリーブに挿通されて、そのヒータの外周が保護されている。
そして、炉の内部に不活性ガスを供給して酸素濃度を所定以下にし、各部品の表面に被覆されたろう材を溶融して、各部品間を一体的にろう付け固定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−83332号公報
【特許文献2】特開2008−105044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献におけるアルミニウム製品のろう付け炉は、棒状の電気ヒータの外周にセラミックのスリーブを被着し、溶融したろう材でヒータの外周が汚染されるのを防止していた。そのため、炉内はセラミックスリーブを介して間接加熱されることとなり、熱効率の悪い欠点があった。従って、被ろう付け品を急速にろう付け温度にすることができない欠点があった。さらには、制御の応答性に欠ける欠点があった。
そこで、本発明は電気ヒータの熱効率を最大限に高め、応答性を高めるとともに、溶融して落下するろう材やフラックス等の不純物が電気ヒータに付着しないように保護することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、炉本体(1)の入口から出口に被ろう付け品(2)の搬送路(3)が設けられ、その搬送路(3)の下方に互いに、搬送方向に離間し多数の棒状の電気ヒータ(4)が搬送路(3)に沿って配置されたアルミニウム製品のろう付け炉において、
前記各電気ヒータ(4)が炉内に露出して配置され、その電気ヒータ(4)の上方のみにろう受け(5)が設けられて、
前記ろう受け(5)として、搬送路(3)の下方で、各電気ヒータ(4)の真上のみに、各電気ヒータ(4)の長手方向に沿って、細長い電気ヒータカバーが配置され、
被ろう付け品(2)から溶融落下したろう材やフラックス等の不純物が前記電気ヒータ(4)の外周に付着することを防止
すると共に、各電気ヒータの熱が各ろう受け(5)の間から、前記被ろう付品(2)に直接放射されるように構成したアルミニウム製品のろう付け炉アルミニウム製品のろう付け炉である。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、
炉本体(1)の入口から出口に被ろう付け品(2)の搬送路(3)が設けられ、その搬送路(3)の下方に互いに、搬送方向に離間し多数の棒状の電気ヒータ(4)が搬送路(3)に沿って配置されたアルミニウム製品のろう付け炉において、
前記各電気ヒータ(4)が炉内に露出して配置され、その電気ヒータ(4)の上方のみにろう受け(5)が設けられて、
前記ろう受け(5)として、被ろう付け品(2)を収納して、前記搬送路(3)上を移動する収納容器(6)の底に皿状プレート(5c)が着脱自在に取付られ
、
被ろう付け品(2)から溶融落下したろう材やフラックス等の不純物が前記電気ヒータ(4)の外周に付着することを防止したアルミニウム製品のろう付け炉である。
請求項3に記載の本発明は、請求項1
又は請求項2のいずれかに記載のアルミニウム製品のろう付け炉において、
前記炉本体(1)の内壁の底に、底受け(14)が載置されて、それに溶融ろう材やフラックス等の不純物を収納できるようにされたアルミニウム製品のろう付け炉である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のろう付け炉は、棒状の電気ヒータ4が炉内に露出して配置され、その搬送炉の下側に配置される電気ヒータ4の上方のみにろう受け5が設けられて、その電気ヒータ4の外周にろう材やフラックス等の不純物が付着することを防止したから、加熱効率を向上し、且つその熱効率を永続的に維持することができる。
即ち、棒状の各電気ヒータ4は炉内に露出し、且つろう受け5は搬送炉の下側に配置された電気ヒータ4の上方のみに設けられているから、被ろう付け品2を効率よく加熱することができる。また、被ろう付け品2から落下する溶融ろう材やフラックス等の不純物はろう受け5によって、電気ヒータ4に付着することを防止できるので、その加熱効率を永続的に維持できる。
【0010】
さらに、そのろう受け5として電気ヒータ4の真上のみに細長い電気ヒータカバーを配置し、
各電気ヒータの熱が各ろう受け(5)の間から、前記被ろう付品(2)に直接放射されるように構成しているので、電気ヒータ4による加熱効率をさらに高め、且つ溶融ろう材やフラックス等の不純物が電気ヒータ4に付着することを確実に防止できる。
請求項2に記載のように、ろう受け5として被ろう付け品2を収納する収納容器6の底に皿状プレート5cを設けた場合には、構造が簡単で確実に被ろう付け品2からの溶融ろう材やフラックス等の不純物を受け止め、それが搬送ローラ7や電気ヒータ4に付着することを確実に防止することができる。
上記構成において、
請求項3に記載のように、炉本体1の内壁の底に、底受け14を載置して、それに溶融ろう材やフラックス等の不純物を収納できるようにした場合には、炉本体1の金属壁等の腐食を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のアルミニウム製品のろう付け炉の横断面略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1は本発明の第1実施例の横断面略図であり、
図2はその縦断面略図であって、
図1のII-II矢視断面略図である。
【0013】
(第1実施例)
本発明のろう付け炉は、その炉本体1が外側から外壁と、断熱材8と、内壁と、その内壁の内側に被着された炭素材からなる内張り9とを有し、炉本体1の外側両側に一対の気密ボックス13を有する。炉本体1の炉内にはこの例では、多数の搬送ローラ7がその入口12から図示しない出口に向かって、多数等間隔に並列されて搬送路3を構成している。各搬送ローラ7はチェーンやスプロケット等の駆動機構10により駆動される。そして、さらに炉内には天井部および底部に近接し、多数の棒状の電気ヒータ4が搬送路3の搬送方向に互いに離間して配置されている。
【0014】
この電気ヒータ4は炉内に露出して配置され、その外周にセラミックスリーブ等が被覆されることはない。加熱効率を高めるためである。そして、下側に位置する電気ヒータ4の真上には電気ヒータ4に沿って、電気ヒータカバーが電気ヒータ4の上方を被蔽する。この例では、電気ヒータカバーはその両端が支持材11を介し炉本体1に支持されている。なお、炉本体1外周の気密ボックス13には不活性ガスが供給され、搬送ローラ7等の軸受部から外部の酸素が炉内に侵入することを防止している。
【0015】
また、炉内には窒素等の不活性ガスが供給され、電気ヒータ4が通電される。そして炉の内部がろう付け温度に達したとき、各部品の組立て体からなる被ろう付け品2が搬送路3により入口12から炉本体1内に供給される。その際、電気ヒータ4の外周には従来のセラミックスリーブは被覆されていないので、それにより被ろう付け品は急速に昇温する。そして、被ろう付け品2の各部品の互いに接触する部分に被覆又は挟持されたろう材が炉内で溶融する。
【0016】
溶融したろう材やフラックスは、各部品の接触部間に供給されるとともに、一部が落下する。落下したろう材やフラックス等の不純物の大部分は、炉本体1の底面に配置された底受け14上に落下する。また、一部は、電気ヒータ4の上方に存在する電気ヒータカバーに落下し、一部がそこに保持されるとともに、さらに落下して底受け14に付着する。この時、電気ヒータカバーは電気ヒータ4の上方を完全に被蔽しているので、溶融ろう材やフラックス等の不純物が電気ヒータ4に付着することがない。そのため、電気ヒータの汚染が防止されて、熱効率を低下させるおそれがない。また、落下したフラックス等の不純物が底受け14上に落下するため、そのフラックスが内張り9、断熱材8を通過して炉本体1の金属製外壁を腐食させることを防止できる。
【0017】
(第2実施例)
次に、
図3は本発明の第2実施例の縦断面略図であり、この例が
図2のそれと異なる点は、搬送路3と電気ヒータ4との間に連続して配置されたプレート5bである。このプレート5bは、電気ヒータ4の上方を全面的に覆い、被ろう付け品2から溶融落下したろう材やフラックス等の不純物が電気ヒータ4に付着しないようにするものである。
被ろう付け品2からの落下ろう材やフラックス等の不純物は、プレート5b上に付着する。
【0018】
(第3実施例)
次に、
図4は本発明の第3実施例であり、この例は、被ろう付け品2が収納容器6に収納された状態で、搬送路3上を移動する。その収納容器6の底には皿状プレート5cが着脱自在に配置され、その皿状プレート5c上に被ろう付け品2が載置される。そして、被ろう付け品2から溶融落下するろう材やフラックス等の不純物は皿状プレート5c上に付着し、ろう受け5から外に流出することがない。
【0019】
いずれの実施例にしても、被ろう付け品2から溶融落下したろう材やフラックス等の不純物が電気ヒータ4に付着することを防止し、露出状態の電気ヒータ4を保護する。それによって、電気ヒータ4の熱効率を高めるとともに、被ろう付け品を急速に昇温することが可能となる。
なお、第2実施例、第3実施例においても、
図1の底面に載置される底受け14を、念のため、設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0020】
1 炉本体
2 被ろう付け品
3 搬送路
4 電気ヒータ
5 ろう受け
5b プレート
5c 皿状プレート
【0021】
6 収納容器
7 搬送ローラ
8 断熱材
9 内張り
10 駆動機構
11 支持材
12 入口
13 気密ボックス
14 底受け