(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弾性シール部材を保持する係合溝を、前記ノズル基底部または前記固定軸突出部に形成したことを特徴とする請求項1記載の二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した研削液の供給構造では、噴射駒の向きを調節することで研削液の噴射方向を変更可能となっている。しかしながら、この噴射方向を調整するにあたって、その構造上研削液の供給を一旦停止して調整しなければならない。そのため、研削液を供給中に噴射方向の調整を自由に行うことができない。
【0005】
そこで、本発明の出願時に未だ公知ではないが、
図5及び
図6に示すような本発明に関連する研削液の供給構造100が考えられる。ここで、
図5は本発明に関連する二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造を示す正面図である。また、
図6は
図5に示した二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造を一部拡大して説明する説明図である。この研削液の供給構造は、研削液を噴射するノズル150と、ノズル150を2軸方向に回転可能とし、供給された研削液をノズル150へ導くいわゆるオイルリード190と、研削液をオイルリード190へ供給する流路110aを備えたシャフト110と、3つのベベルギア131,132,133(130)と、第1乃至第3のベベルギア130を駆動する第1のモータ121(120)と第2のモータ122(120)と、各モータ120に備わる動力伝達ギア125と第1のベベルギア131及び第2のベベルギア132に一体に備わる動力伝達ギア126と、これらを支持するブラケット140を有している。
【0006】
研削液は、
図5に示すように、図示しない研削液供給ホースからシャフト内部の流路110aを通り、シャフト110の開口部111、オイルリード内部空間190a、連通孔190b(
図6参照)を介して、ノズル150に供給されるようになっている。
【0007】
そして、モータ120の駆動によって回転するベベルギア130の回転方向の組合せにより、ノズル150の先端は、
図5中左右方向に回転したり、上下方向に回転したりするようになっている。このような構成を備えた本発明に関連する研削液の供給構造は、研削液を供給中であってもノズルによる研削液の噴射方向を自由に調整できる。
【0008】
しかしながら、二方向動作を可能としながら研削液を供給するため、複雑な形状のノズル150とオイルリード190を必要とする。また、シール部材180を合計3箇所に介装させる必要があり、シール部材180の劣化に伴う交換作業が煩雑となる。また、部品点数が多くなるため、コスト低減が図れない。
【0009】
本発明の目的は、単純な構成で2方向(2軸方向)に研削液やクーラント液を供給可能でかつ廉価な二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造は、
工作機械のワークやツールに研削液やクーラント液を供給する二方向動作クーラントノズルにおいて、
研削液を供給する流路が内部形成された固定軸の一部に半球状または球状の固定軸突出部を設け、
前記固定軸突出部は、回動可能なノズル本体へ研削液を送給するための連通孔を備え、
前記ノズル本体の漏斗状に形成されたノズル基底部を前記固定軸突出部と対向して配置するとともに、前記固定軸突起部が固定された状態で、前記ノズル基底部がノズル軸線周りに回転可能であり、かつ前記固定軸突起部の周面に沿って移動可能となっており、
前記固定軸突出部と前記ノズル基底部の間が弾性シール部材によってシールされ、
前記固定軸突出部と前記ノズル基底部の相対位置の如何に関わらず前記固定軸からノズル先端まで前記シール部材を介して液密に研削液が送給され
る二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造
であって、
前記ノズル基底部に備わった弾性シール部材の移動軌跡が形成する仮想曲面が前記固定軸突出部の前記弾性シール部材が沿う前記固定軸突出部の表面の曲面に対応して形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項1に係る二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造がこのような構成を有することで、様々な形態を有するワークやツールに対してノズルの向きを常に最適な方向に変えながら研削液を安定した流量で供給し続けることができる。
【0012】
また、
図5及び
図6に示すような本発明に関連する二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造における複雑な形状のノズルやオイルリードを必要としない。また、この関連発明のようにシール部材を3箇所に備える必要もなく1箇所で足りるため、シール部材の劣化に伴う交換作業の手間が少なくて済む。そして、部品点数を減らすことができ、コスト低減に貢献する。また、関連発明と比較してノズル本体の回転軸周りの外径を小さくできる。そのため、ノズルを迅速に動かすための回転トルクが小さくて済み、モータの小型化を図ることができる。
また、請求項1に係る二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造がこのような構成、より具体的にはノズル基底部に備わった弾性シール部材の移動軌跡が形成する仮想曲面を弾性シール部材が沿う固定軸突出部の表面の曲面にそれらの曲率半径(1/曲率)がほぼ合致するように対応させていることで、ノズル先端の移動中、即ちノズル基底部が固定軸突出部の周面に沿って常に所定の隙間を保って動くため、弾性シール部材が極端に圧縮されて破断したり、ノズル基底部と固定軸突出部の隙間が大きくなって弾性シール部材のシール性が損なわれたりすることはない。また、ノズルが回転し易くなりノズルの回転速度を高めて所望の箇所に応答性良く研削液を供給できる。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造は、請求項1に記載の二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造において、
前記弾性シール部材を保持する係合溝を、前記ノズル基底部または前記固定軸突出部に形成したことを特徴としている。
【0014】
請求項2に係る二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造がこのような構成を有することで、弾性シール部材を取り付ける係合溝をノズル基底部若しくは固定軸突出部のいずれに取付けても、弾性シール部材をノズル基底部又は固定軸突出部の係合溝にしっかりと嵌合させることができる。その結果、二方向動作クーラントノズルを長期に亘って使用しても弾性シール部材がこれを嵌合させたノズル基底部や固定軸突出部に対してずれることはなく、弾性シール部材からの研削液の漏れを防止することができる。
【0015】
また、本発明の請求項3に係る二方向動作クーラントノズ
ルは、
請求項1又は請求項2に記載の二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造を有したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、単純な構成で2方向(2軸方向)に研削液やクーラント液を供給可能でかつ廉価な二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造
及びこの構造を有したクーラントノズルを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造について図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造を示す正面図である。
【0020】
本発明の一実施形態に係る二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造は、例えば工作機械の作動中にワークやツールに研削液やクーラント液(以下、「研削液」とする。)を供給するクーラントノズルの機構に用いられる構造であり、ブラケット40の内側に配置された第1乃至第3のベベルギア31,32,33(30)と、第1乃至第3のベベルギア30を保持するブラケット40と、第1のベベルギア31と第2のベベルギア32をこれらギアの共通する軸線方向に貫通して配置された固定軸10と、固定軸10を固定する固定軸支持フレーム70と、第3のベベルギア33の中心軸線方向に突出したノズル本体50と、第1乃至第3のベベルギア30をそれぞれ駆動する第1のモータ21(20)及び第2のモータ22(20)と、各モータ20に備わる動力伝達ギア25と、第1のベベルギア31及び第2のベベルギア32に一体に備わる動力伝達ギア26とを有している。
【0021】
固定軸10は、その固定軸長手方向中央部に球状の固定軸突出部11を有している。固定軸10は、一端(
図1中右側)にホース接続部60を有しており、図示しない研削液供給源から研削液を研削液供給路10aへ供給するためのホース(ここでは図示せず)がホース接続部60に接続されている。そして、固定軸10の両端は、固定軸自体が回転しないように固定軸支持フレーム70を介して支持されている。
【0022】
研削液供給路10aは、固定軸内部に形成され、固定軸10の一端(
図1中右側)から固定軸突出部11まで延在すると共に、この延在端部から直交して固定軸表面に形成された研削液供給用の突出部側開口部11aまで延在している。即ち、固定軸10の一端(
図1中右側)から固定軸突出部11の突出部側開口部11aまで研削液供給路が形成され、研削液をノズル基底部53に供給する連通孔となっている。
【0023】
ノズル本体50は、ノズル先端51とノズルシャフト52とノズル基底部53から形成されている。そして、ノズル本体内部には、研削液をノズル先端51に供給する研削液供給路50aを有している。ノズル基底部53は、漏斗状の形状からなりその拡径した開口部の縁部全周にフランジ53bが形成されている。
【0024】
フランジ53bは、固定軸突出部11の球面状をなす外周面に沿ってOリング(弾性シール部材)80(
図2及び
図3参照)を挟んだ状態で一定の僅かな間隔だけ隔てて移動すると共に、ノズルシャフト52の中心軸線回りに回転するようになっている。フランジ53bの形状は、固定軸突出部11の曲面形状に対応した形状になっている。即ち、ノズル基底部53に備わったOリング80の移動軌跡が形成する仮想曲面をOリング80が沿う固定軸突出部11の表面の曲面にそれらの曲率半径(1/曲率)がほぼ合致するように対応させている。また、そのフランジ53bには固定軸突出部11に対向する面側に係合溝53c(
図2参照)が全周に亘って形成されている。そして、固定軸突出部11の当接面に圧接するようにOリング80がこの係合溝53cに嵌合され、固定軸突出部11に形成された突出部側開口部11aからノズル基底部53に形成されたノズル側流入孔53aに流れる研削液が外部に漏れないようにOリング80を介してシールしている。
【0025】
本発明で使用されるシール手段としては、本実施形態のようなOリング80に限定されず、固定軸突出部11にしっかりと圧接する弾性シール部材であれば良い。即ち、例えば当接面がフィレット形状を有した弾性シール部材等であっても良い。
【0026】
続いて、ベベルギア30の構成について説明する。第1のベベルギア31と第2のベベルギア32は、同一のピッチと歯数を有し、互いの歯車が向かい合うように所定間隔を隔て、同一の回転軸線上に配置されている。そして、第1のベベルギア31及び第2のベベルギア32の双方に第3のベベルギア33が噛合している。第3のベベルギア33は、第1のベベルギア31及び第2のベベルギア32の間であってその軸線が第1のベベルギア31及び第2のベベルギア32の軸線と直交するように配置されている。本実施形態の場合、第3のべベルギア33の歯数とピッチは、第1及び第2のべベルギア31,32の歯数及びピッチと同一となっている。これによって、本実施形態の場合、第3のベベルギア33と第1のベベルギア31のギア比及び第3のべベルギア33と第2のベベルギア32のギア比は1となっている。
【0027】
なお、本実施形態では第1のモータ21(20)及び第2のモータ22(20)の出力軸先端にはそれぞれ動力伝達ギア25が固定され、このモータ20が駆動して動力伝達ギア25が回転し、これに対応して第1のベベルギア31及び第2のベベルギア32とそれぞれ一体化した動力回転ギア26を介して第1乃至第3のベベルギア30(31,32,33)が回転するようになっている。また、第1のモータ21及び第2のモータ22には、本実施形態の場合、ステッピングモータを用いている。なお、第1のモータ21と第2のモータ22には同一のステッピングモータが用いられる。
【0028】
ブラケット40は、本実施形態の場合、細長の金属の板体を
図1における正面視で角型U字状に折り曲げた形状を有している。ブラケット40の第1の折り曲げ部41及び第1のベベルギア31には、固定軸突出部11を挿通させるための挿通孔41a,31aが形成されている。
【0029】
同様にブラケット40の第2の折り曲げ部42及び第2のベベルギア32には、固定軸を挿通させるための挿通孔42a,32aが形成されている。また、ブラケット40の第1の折り曲げ部41と第2の折り曲げ部42に挟まれたノズル支持部43には円筒状突出部45がその上面に突出形成されている。そして、円筒状の突出部45の軸線は、ノズルシャフト52の軸線と一致している。また、円筒状の突出部45の軸線方向に形成されたノズルシャフト挿通孔45aは、ブラケット40の中央部をも貫通するように形成されている。そして、ノズルシャフト挿通孔45aの内径は、ノズルシャフト52の外径よりも僅かに大きく、ノズルシャフト52を突出部45によって回転可能に保持するようになっている。
【0030】
ブラケット40の突出部45は、ノズルシャフト52を支持すると共に、第1及び第2のベベルギア31,32の軸線回りのノズルシャフト52の動きに追従してブラケット40を第1及び第2のベベルギア31,32の軸線回りに円弧上の軌跡を伴って移動させるようになっている。これによって、ノズル基底部53が固定軸突出部11の球面状をなす外周面に沿ってOリング80を挟んだ状態で一定の僅かな間隔だけ隔てて移動するようになっている。
【0031】
固定軸10の外周面とブラケット40及び第1並びに第2のベベルギアの挿通孔41aの内周面との間にはある程度の隙間があり、本実施形態では軸受91,92によって互いに相対回転可能にすると共に、軸受91,92を介してブラケット40及び第1乃至第3のベベルギア30を固定軸10で支持している。なお、軸受91,92の代わりにこの部分の隙間にOリングを備えていても良い。
【0032】
第3のベベルギア33とブラケット40の中央部との間にはある程度の隙間があり、第3のベベルギア33と第1及び第2のベベルギア31,32との噛合を維持すると共に、第3のベベルギア33の歯車と反対側面がブラケット40のノズル支持部43に干渉することなく第3のベベルギア33が滑らかに回転できるようになっている。
【0033】
続いて、上述した二方向動作クーラントノズルにおける研削液の具体的な流れ方について説明する。研削液は、研削液供給源からホース(これらはここでは図示せず)へ流れ、ホースから固定軸内部の研削液供給路10aに流れる。そして、研削液供給路10aから固定軸突出部11の表面の突出部側開口部11aに流れる。次いで、突出部側開口部11aからノズル基底部内を経てノズル側流入孔53aに流れる。次いで、ノズル側流入孔53aからノズル本体内部の研削液供給路50aに流れ、ノズル先端51から噴射して、被研削対象物に供給される。
【0034】
続いて、本実施形態に係る二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造1の具体的な動作説明を行う。
図2は、
図1に示したクーラントノズル二方向動作構造の動作説明のための正面図であり、ノズル本体50を図中上側に位置させてノズル先端51を図中左斜め上方に向かせた状態を示す図(
図2(a))、及びノズル本体50を図中上側に位置させてノズル先端51を図中右斜め上方に向かせた状態を示す図(
図2(b))である。また、
図3は、
図1に示したクーラントノズル二方向動作構造の動作説明のための側面図であり、ノズル本体50を図中右斜め上側まで回転させてノズル先端51を図中上方に向かせた状態を示す図(
図3(a))、及びノズル本体50を図中左斜め上方まで回転させてノズル先端51を図中左側に向かせた状態を示す図(
図3(b))である。なお、
図2及び
図3においてはモータ20及び動力伝達ギア25の図示を省略する。
【0035】
例えば、
図2(a)の状態を基準として第1のベベルギア31が第1のベベルギア31の歯車側から見て時計回りに所定の角速度で180°だけ回転すると共に、第2のベベルギア32が第2のベベルギア32の歯車側から見て時計回りに第1のモータ21と同一の所定の角速度で180°だけ回転した場合、第3のベベルギア33は、第3のベベルギア33の歯車側から見て反時計回りに180°だけ回転する。このように、第3のベベルギア33が180°回転すると、ノズルシャフト52もそれに合わせて回転し、ノズル本体50は
図2(a)に示す状態から
図2(b)に示す状態までノズル先端51の向きを変える。このとき、ノズル基底部53も、固定軸突出部11の周面とOリング80を挟んだ状態で一定の間隔を保って回転する。ここで、ノズル基底部53の可動範囲は、ノズル基底部53に係合されたOリング80が可動しても固定軸突出部11の突出部側開口部11aを越えない範囲である。即ち、Oリング80を介してノズル基底部53と固定軸突出部11との間の液密状態を維持して研削液を固定軸突起部11の突出部側開口部11aからノズル本体50へ液漏れすることなく流すようになっている。このため、研削液は、ノズル先端51が移動中であっても液漏れすることなくノズル先端51に供給される。
【0036】
また、第1のベベルギア31がその歯車側から見て反時計回りに所定の角速度で90°だけ回転すると共に、第2のベベルギア32がその歯車側から見て時計回りに第1のモータ21と同一の所定の角速度で90°だけ回転する場合、即ち第1のベベルギア31と第2のベベルギア32とが
図3(a)の状態から見て反時計回りに90°だけ同一の角速度で回転した場合、第3のベベルギア33は、第1及び第2のベベルギア31,32と噛合した状態で回転しないまま固定軸10の軸線回りに第1のベベルギア31の歯車側から見て90°の角度だけ回転する。このように、第1のベベルギア31と第2のベベルギア32及びこれと一体になったノズルシャフト52が90°回転すると、ノズルシャフト52の動きに押されてブラケット40もこれに合わせて回転する。その結果、ノズル本体50は、ノズル先端51の向きを
図3(a)に示す状態から
図3(b)に示す状態まで変える。このとき、ノズル基底部53も、固定軸突出部11の周面に沿ってOリング80をしっかりと挟んだ状態で一定の間隔を保って回転する。ここで、ノズル基底部53の可動範囲は、ノズル基底部53に係合されたOリング80が可動しても固定軸突出部11の突出部側開口部11aを越えない範囲である。即ち、Oリング80を介してノズル基底部53と固定軸突出部11との間の液密状態を維持して研削液を固定軸突起部11の突出部側開口部11aからノズル本体50へ液漏れすることなく流すようになっている。このため、研削液は、ノズル先端51が移動中であっても液漏れすることなくノズル先端51に供給される。
【0037】
続いて、本発明の一実施形態に係る二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造の作用について説明する。本実施形態に係るクーラントノズル二方向動作構造が上述のような構成を有することで、様々な形態を有するワークやツールに対してノズルの向きを常に最適な方向に変えながら研削液を安定した流量で供給し続けることができる。また、固定軸10には研削液供給路10aが形成されているので、これに接続されるホースがノズル本体50の移動に伴って動くこともない。
【0038】
また、
図4及び
図5に示すような本発明の関連発明のように二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造における複雑な形状のノズルやオイルリードを必要としない。また、この関連発明のようにシール部材を3箇所に備える必要もなく1箇所で足りるため、シール部材180の劣化に伴う交換作業の手間が少なくて済む。そして、オイルリード190やシール部材180の部品点数を減らすことができ、コスト低減に貢献する。また、関連発明と比較してノズル本体50の回転軸周りの外径も小さくできるため、ノズル本体50を迅速に動かすための回転トルクが小さくて済み、モータ20の小型化を図ることができる。
【0039】
また、Oリング80をノズル基底部53の係合溝53cにしっかりと嵌合させているので、二方向動作クーラントノズルを長期に亘って使用してもOリング80がこれを嵌合させたノズル基底部53に対してずれることはなく、Oリング80からの研削液の漏れを確実に防止することができる。
【0040】
また、ノズル基底部53に備わったOリング80の移動軌跡が形成する仮想曲面をOリング80が沿う固定軸突出部11の表面の曲面にそれらの曲率半径(曲率)がほぼ合致するように対応させているので、ノズル先端51の移動中、即ちノズル基底部53が固定軸突出部11の周面に沿って常に所定の隙間を保って動くため、Oリング80が極端に圧縮されてOリング80が破断したり、ノズル基底部53と固定軸突出部11の隙間が大きくなってシール性が損なわれたりすることはない。また、ノズル本体50が回転し易くなり、ノズル本体50の回転速度を高めて研削液を所望の箇所に応答性良く供給できる。
【0041】
なお、上述の実施形態では、ノズル基底部側に係合溝53cを設けて、この係合溝にOリング80からなるシール部材を嵌合していたが、上述したようにこのような形態に限定されず固定軸突出部側に係合溝を設けて、この係合溝にOリングやフィレット形状のシール部材を嵌合しても良い。
【0042】
また、固定軸突出部11の形状は、ノズル基底部53が固定軸突出部11の表面上を動く部分だけ曲面形状であれば良い。従って、ここでは図示しないが、本実施形態と異なり固定軸突出部11の
図1中下側1/3が水平面をなすような形態であっても良く、
図1中、固定軸突出部11の軸線方向両側がノズル基底部53に係合されたOリング80の可動範囲外で垂直な平面をなすようないわゆる鼓状の形態であっても良い。これによって、部品の材料費を削減することができる。
【0043】
また、ノズル基底部53は、漏斗状の形状に限定されず、研削液が固定軸内に設けられた研削液供給路10aを通って固定軸突出部11の突出部側開口部11aからノズル基底部53のノズル側流入孔53aに抵抗なく流れれば、例えばカップ形状や断面放物線形状等どのような形状であっても良い。
【0044】
また、上述の実施形態では、固定軸突出11のOリング80が沿う面とノズル基底部のOリングが係合される係合溝53cの移動する仮想曲面は共に曲率のほぼ等しい球面であったが、本発明の作用を発揮し得る範囲であれば、必ずしもこのような球面ではなく両者の相対移動に伴って両者の曲率が互いに対応して(合致して)変化する曲面を両者が有していても良い。
【0045】
また、
図1乃至
図3に基づいて、第1及び第2のモータ20の出力軸回りに90°だけ回転することで、ノズル本体50がノズルシャフト回りに90°だけ回転することを説明したが、必ずしもこの角度範囲に限定されるものではない。
【0046】
また、本発明で使用されるモータは、上述の実施形態のようにステッピングモータに限定されるものではなく、(ブラシ、ブラシレス)DCモータ等、様々なモータを用いることができる。また、モータの配置は、本実施形態のような配置に限定されず、ノズル本体50の動作範囲に支障をきたさなければどのような配置でも良い。
【0047】
また、第1のベベルギア31及び第2のベベルギア32と、第3のベベルギア33のモジュール及び歯数は、モジュールが同一であれば上述の実施形態とは歯数が異なっていても良い。
【0048】
具体的には、歯車のモジュールが同一で、「第1及び第2のベベルギアの歯数>第3のベベルギアの歯数」の場合、第1及び第2のモータを一定の回転数で回転させても、「第1及び第2のモータの出力軸線周りのクーラントノズルの回転角速度<ノズルシャフト周りのクーラントノズルの回転角速度」となる。
【0049】
一方、歯車のモジュールが同一で、「第1及び第2のベベルギアの歯数<第3のベベルギアの歯数」の場合、第1及び第2のモータを一定の回転数で回転させても、「第1及び第2のモータの出力軸線周りのクーラントノズルの回転角速度>ノズルシャフト周りのクーラントノズルの回転角速度」となる。これによって、これら第1及び第2のベベルギアの歯数と、第3のベベルギアの歯数を変えることで、様々な研削液やクーラント液の供給スペックに対応できる。
【0050】
続いて、上述した実施形態に係る変形例について説明する。なお、本実施形態に係る変形例における固定軸の配置構造以外は、上述の実施形態と同様である。従って、この上述の実施形態との相違点である固定軸の配置構造について説明し、上述した実施形態と同等の構成に関しては、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
図4は、本実施形態に係る二方向動作クーラントノズルへの研削液供給構造2の変形例を示す正面図である。
【0051】
固定軸210は、その固定軸長手方向先端に球状の固定軸突出部211を有している。固定軸210は、一端(
図4中下側)にホース接続部260を有しており、図示しない研削液供給源から研削液を研削液供給路210aへ供給するためのホース(ここでは図示せず)がホース接続部260に接続されている。そして、固定軸210は、モータ220等が搭載された基台228に備わったここでは図示しない固定手段を介して固定軸自体が回転及び変位しないように支持されている。
【0052】
研削液供給路210aは、固定軸内部に形成され、固定軸210の一端(
図4中下側)から固定軸突出部211に形成された研削液供給用の突出部側開口部211aまで延在している。即ち、固定軸210の一端(
図1中下側)から研削液供給路210aを経て固定軸突出部211の突出部側開口部211aまで研削液供給路が形成され、研削液をノズル基底部253に供給する連通孔となっている。
【0053】
なお、本変形例では第1のモータ221及び第2のモータ222の出力軸225(226,227)の先端にはそれぞれ第1のベベルギア231及び第2のベベルギア232が軸支されており、モータ220の駆動により1乃至第3のベベルギア230(231,232,233)が回転するようになっている。また、第1のモータ221及び第2のモータ222には、本実施形態の場合、ステッピングモータを用いている。なお、第1のモータ221と第2のモータ222には同一のステッピングモータが用いられる。
【0054】
本変形例が、このような構成を有することで、上述の実施形態と同様の効果を発揮する。加えて、上記実施形態のよう余計な駆動ギア及び固体軸フレームを必要としないため部品数の削減ができ、コスト低減に貢献できる。また、上述の実施形態と異なり固定軸内部に形成された研削液供給路が屈曲していないため、研削液供給路250aを介してノズル先端251まで研削液を脈動等生じることなく安定して供給できる。
【0055】
なお、上述の実施形態で紹介した各構成要素の形状や寸法、数値、材質はあくまで例示的なもので、本発明の範囲を逸脱しない限り、様々な形状や寸法、数値、材質を適宜選択できることは言うまでもない。
【0056】
また、本実施形態においては、クーラントノズルのノズル先端から工作機械のワークやツールに研削液を供給したが、必ずしもこのような研削液に限定されることはなく、研削油や切削液、切削油、研磨液、冷却液(クーラント液)、冷却油(クーラント油)をクーラントノズルのノズル先端から工作機械のワークやツールに供給しても良い。