(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5816072
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月17日
(54)【発明の名称】バーチャルサラウンドレンダリングのためのスピーカアレイ
(51)【国際特許分類】
H04S 5/02 20060101AFI20151029BHJP
H04R 1/40 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
H04S5/02 D
H04R1/40 310
H04S5/02 P
【請求項の数】26
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-273501(P2011-273501)
(22)【出願日】2011年12月14日
(65)【公開番号】特開2012-130009(P2012-130009A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2014年12月10日
(31)【優先権主張番号】12/968,938
(32)【優先日】2010年12月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592051453
【氏名又は名称】ハーマン インターナショナル インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100062409
【弁理士】
【氏名又は名称】安村 高明
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ ホルバッハ
【審査官】
下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−510334(JP,A)
【文献】
特表2008−511254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04S 1/00 − 7/00
H04R 3/00 − 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイスであって、
該バーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイスは、
アップミキサーであって、該アップミキサーは、第一の複数のオーディオチャネル信号を受信し、アップミクシングされた出力信号および関連する出力サラウンド信号を生成する、アップミキサーと、
サラウンドレンダラーであって、該サラウンドレンダラーは、第二の複数のオーディオチャネル信号を受信し、該第二の複数のオーディオ信号は、それぞれ、関連する出力サラウンド信号に結合され、複数の変換器信号を生成し、該複数の変換器信号のうちの少なくとも一部分は、各々、関連するアップミクシングされた出力信号に結合される、サラウンドレンダラーと
を含む、バーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
【請求項2】
前記第一の複数のオーディオチャネル信号は、少なくとも左チャネル信号と、右チャネル信号と、中央チャネル信号とを含む、請求項1に記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
【請求項3】
前記中央チャネル信号は、前記右チャネル信号と前記左チャネル信号との両方に結合される、請求項2に記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
【請求項4】
前記アップミキサーは、ステレオ幅調節セクションおよび距離調節セクションを含む、請求項1に記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
【請求項5】
前記ステレオ幅調節セクションは、第一の負の交差係数パラメータを含む、請求項4に記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
【請求項6】
前記ステレオ幅調節セクションは、前記関連する出力サラウンド信号に関連付けられた第二の負の交差係数パラメータをさらに含む、請求項5に記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
【請求項7】
前記ステレオ幅調節セクションは、前記アップミキサーにおいて受信された前記複数のオーディオチャネル信号の各々に関連付けられたシェルフフィルタをさらに含む、請求項5に記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
【請求項8】
前記距離調節セクションは、前記出力信号および関連する出力サラウンド信号の各々に関連付けられた遅延パラメータを含む、請求項4に記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
【請求項9】
前記遅延パラメータの各々は、それぞれの振幅パラメータを有する、請求項8に記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
【請求項10】
前記サラウンドレンダラーは、分離され、かつ、低域フィルタおよび高域フィルタを通過した前記出力サラウンド信号の各々をさらに含む、請求項1に記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
【請求項11】
第一の複数のコンバイナをさらに含み、該第一の複数のコンバイナは、第一の低域フィルタの出力から、他の低域フィルタの各々からの遅延された出力を減算する、請求項10に記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
【請求項12】
第二の複数のコンバイナをさらに含み、該第二の複数のコンバイナは、第一の高域フィルタの出力から、第二の複数の低域フィルタの各々からの出力を減算する、請求項10に記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
【請求項13】
前記第二の複数の低域フィルタは、クロストークキャンセラーの一部であり、該クロストークキャンセラーのクロスオーバー周波数は、500Hzから2000Hzの範囲である、請求項12に記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
【請求項14】
バーチャルサラウンドレンダリングの方法であって、
該方法は、
第一の複数のオーディオチャネル信号をアップミキサーにおいて受信するステップと、
該第一の複数のオーディオチャネル信号の受信に応答して、アップミクシングされた出力信号および関連する出力サラウンド信号を生成するステップと、
第二の複数のオーディオチャネル信号をサラウンドレンダラーにおいて受信するステップと、
該サラウンドレンダラーにおける該第二の複数のオーディオチャネル信号の受信に応答して、該第二の複数のオーディオチャネル信号の各々を、関連する出力サラウンド信号に結合するステップと、
複数の変換器信号を生成するステップであって、該複数の変換器信号のうちの少なくとも一部分は、各々、関連するアップミクシングされた出力信号に結合される、ステップと
を含む、方法。
【請求項15】
前記第一の複数のオーディオチャネル信号の受信は、少なくとも左チャネル信号と、右チャネル信号と、中央チャネル信号とを受信することを含む、請求項14に記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
【請求項16】
前記中央チャネル信号を前記右チャネル信号と前記左チャネル信号との両方に結合することを含む、請求項15に記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
【請求項17】
前記アップミキサーは、ステレオ幅調節セクションおよび距離調節セクションを含む、請求項14に記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
【請求項18】
第一の負の交差係数パラメータを、前記ステレオ幅調節セクション内で前記第一の複数のオーディオチャネル信号に適用することを含む、請求項17に記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
【請求項19】
前記ステレオ幅調節セクションは、前記関連する出力サラウンド信号に関連付けられた第二の負の交差係数パラメータを適用することをさらに含む、請求項18に記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
【請求項20】
前記ステレオ幅調節セクションは、関連付けられたシェルフフィルタを用いて、前記アップミキサーにおいて受信された前記複数のオーディオチャネル信号の各々にフィルタをかけることをさらに含む、請求項18に記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
【請求項21】
前記距離調節セクションは、前記出力信号および関連する出力サラウンド信号の各々を遅延パラメータによって遅延させることを含む、請求項17に記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
【請求項22】
前記遅延パラメータの各々は、それぞれの振幅パラメータを有する、請求項21に記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
【請求項23】
前記サラウンドレンダラーは、低域フィルタおよび高域フィルタを通して分離された後の前記出力サラウンド信号の各々にフィルタをかけることをさらに含む、請求項14に記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
【請求項24】
第一の複数のコンバイナを用いて、第一の低域フィルタの出力から他の低域フィルタの各々からの遅延された出力を減算することをさらに含む、請求項23に記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
【請求項25】
第二の複数のコンバイナを用いて、第一の高域フィルタの出力から第二の複数の低域フィルタの各々からの出力を減算することをさらに含む、請求項23に記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
【請求項26】
前記第二の複数の低域フィルタは、クロストークキャンセラーの一部であり、該クロストークキャンセラーのクロスオーバー周波数は、500Hzから2000Hzの範囲である、請求項25に記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
(1.発明の分野)
本発明は、バーチャルスピーカサウンドシステムに関する。より具体的には、後部サラウンドチャネルをレンダリングする、デジタル信号処理およびスピーカアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
(2.関連技術)
一般的には、いくつかのスピーカのみによってサラウンドサウンドを再生することは、空間強調技術を採用している。聴取者の前に配列されたいくつかのラウドスピーカからサラウンドサウンドを再生することを可能にする空間強調技術は、現在多くの異なる納入業者から入手可能である。そのような用途の例は、マルチメディアモニターまたはラップトップの中へ一体化された小さな変換器を用いてレンダリングする、ホームシアターシステム(後部スピーカが設置される必要がない)、サラウンド映画およびコンピュータゲームにおける3Dサウンド再生を含む。通常、頭部を大きく動かすことすら許容しない非常に狭いスイートスポット、強力な画像化、軸外れの音調のひずみ、聴取者が頭部の向きを変えたときに感じられる位相性および耳の圧力のような明らかな問題が生じるので、傾聴体験は全く説得力がない。
【0003】
いくつかのスピーカのみによってサランドサウンドを提供する1つのアプローチは、空間強調中にマルチウェイクロストークキャンセラーを採用することである。しかし、このアプローチは、精密な頭部モデルに基づいた正確な耳信号を生成するために高次逆フィルタマトリックスを要求し、これは、聴取者の頭部が正確な意図された位置にない場合、軸外れの音質の低下という結果になる。
【0004】
従来のクロストークキャンセラー回路が二対の変換器に接続するクロスオーバーフィルタに先立って用いられる場合、信号処理アプローチが適用される。しかし、このアプローチは、成功を限定させる。なぜならば、クロストークキャンセラーフィルタは、変換器対のどちらに対しても最適化されないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、サラウンドサウンドの再生を改善するバーチャルサラウンドレンダリングを可能にするスピーカアレイに対する必要性が存在する。特に、バーチャルサラウンドサウンドのエラー強さおよび軸外れの音調の両方を改善することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(概要)
上記を考慮すると、デジタル信号プロセッサが提供されることによってステレオまたはサラウンドオーディオ信号を処理し、バーチャルサラウンドを聴取者の前に配列されたスピーカのみを用いてレンダリングし、頭部の動きにエラー強さがあり、先行アプローチよりも優れた低い軸外れの調子を有する、バーチャルサラウンドサウンドという結果になる。デジタル信号プロセッサは、スピーカアレイと、クロスオーバー回路一次頭部関連フィルタを採用することによって延長されたステレオ正面チャネルの幅および深さを有する後部サラウンドチャネルと、アップミクシングマトリックスと、遅延線のアレイとに対してレンダリングし、早期反射を生成する。上で言及された特徴および下で説明される特徴は、それぞれ示された組み合わせでのみ用いられ得るが、他の組み合わせまたは単独でも発明の範囲から逸脱せずに用いられ得ることは、理解されるべきである。
【0007】
本発明の他のデバイス、装置、システム、方法、特徴および利点は、以下の図および詳細な説明を精査すると、当業者には明らかであるか、または明らかとなる。全てのこのようなさらなるシステム、方法、特徴、利点は、説明内に含まれ、発明の範囲内であり、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【0008】
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
バーチャルサウンドレンダリングオーディオデバイスであって、
該バーチャルサウンドレンダリングオーディオデバイスは、
アップミキサーであって、該アップミキサーは、第一の複数のオーディオチャネル信号を受信し、アップミクシングされた出力信号および関連する出力サラウンド信号を生成する、アップミキサーと、
サラウンドレンダラーであって、該サラウンドレンダラーは、第二の複数のオーディオチャネル信号を受信し、該第二の複数のオーディオ信号は、それぞれ、関連する出力サラウンド信号に結合され、複数の変換器信号を生成し、該第二の複数の変換器信号のうちの少なくとも一部分は、各々、関連するアップミクシングされた出力信号に結合される、サラウンドレンダラーと
を含む、バーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
(項目2)
上記第一の複数のオーディオチャネル信号は、少なくとも左チャネル信号と、右チャネル信号と、中央チャネル信号とを含む、上記項目に記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
(項目3)
上記中央チャネル信号は、上記右チャネル信号と上記左チャネル信号との両方に結合される、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオシステム。
(項目4)
上記アップミキサーは、ステレオ幅調節セクションおよび距離調節セクションを含む、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
(項目5)
上記ステレオ幅調節セクションは、第一の負の交差係数パラメータを含む、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
(項目6)
上記ステレオ幅調節セクションは、上記関連する出力サラウンド信号に関連付けられた第二の負の交差係数パラメータをさらに含む、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
(項目7)
上記ステレオ幅調節セクションは、上記アップミキサーにおいて受信された上記複数のオーディオチャネル信号の各々に関連付けられたシェルフフィルタをさらに含む、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
(項目8)
上記距離調節セクションは、上記出力信号および関連する出力サラウンド信号の各々に関連付けられた遅延パラメータを含む、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
(項目9)
上記遅延の各々は、それぞれの振幅パラメータを有する、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
(項目10)
上記サラウンドレンダラーは、分離され、かつ、低域フィルタおよび高域フィルタを通過した上記出力サラウンド信号の各々をさらに含む、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
(項目11)
第一の複数のコンバイナをさらに含み、該第一の複数のコンバイナは、第一の低域フィルタの出力から、他の低域フィルタの各々からの遅延された出力を減算する、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
(項目12)
第二の複数のコンバイナをさらに含み、該第二の複数のコンバイナは、第一の高域フィルタの出力から、上記高域フィルタの各々からのクロストークキャンセラー出力を減算する、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
(項目13)
上記クロストークキャンセラーのクロスオーバー周波数は、500Hzから2000Hzの範囲である、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリングオーディオデバイス。
(項目14)
バーチャルサラウンドレンダリングの方法であって、
該方法は、
第一の複数のオーディオチャネル信号をアップミキサーにおいて受信するステップと、
該第一の複数のオーディオチャネル信号の受信に応答して、アップミクシングされた出力信号および関連する出力サラウンド信号を生成するステップと、
第二の複数のオーディオチャネル信号をサラウンドレンダラーにおいて受信するステップと、
該サラウンドレンダラーにおける該第二の複数のオーディオチャネル信号の受信に応答して、該第二の複数のオーディオチャネル信号の各々を、関連する出力サラウンド信号に結合するステップと、
複数の変換器信号を生成するステップであって、該複数の変換器信号のうちの少なくとも一部分は、各々、関連するアップミクシングされた出力信号に結合される、ステップと
を含む、方法。
(項目15)
上記第一の複数のオーディオチャネル信号の受信は、少なくとも左チャネル信号と、右チャネル信号と、中央チャネル信号とを受信することを含む、上記項目に記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
(項目16)
上記中央チャネル信号を上記右チャネル信号と上記左チャネル信号との両方に結合することを含む、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
(項目17)
上記アップミキサーは、ステレオ幅調節セクションおよび距離調節セクションを含む、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
(項目18)
第一の負の交差係数パラメータを、上記幅調節セクション内で上記第一の複数のオーディオチャネル信号に適用することを含む、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
(項目19)
上記ステレオ幅調節セクションは、上記関連する出力サラウンド信号に関連付けられた第二の負の交差係数パラメータを適用することをさらに含む、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
(項目20)
上記ステレオ幅調節セクションは、シェルフフィルタに関連付けられた上記アップミキサーにおいて受信された上記複数のオーディオチャネル信号の各々にフィルタをかけることをさらに含む、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
(項目21)
上記距離調節セクションは、上記出力信号および関連する出力サラウンド信号の各々を遅延パラメータによって遅延させることを含む、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
(項目22)
上記遅延の各々は、それぞれの振幅パラメータを有する、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
(項目23)
上記サラウンドレンダラーは、低域フィルタおよび高域フィルタを通して分離された後の上記出力サラウンド信号の各々をフィルタにかけることをさらに含む、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
(項目24)
第一の複数のコンバイナを用いて、第一の低域フィルタの出力から他の低域フィルタの各々からの遅延された出力を減算することをさらに含む、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリングの方法。
(項目25)
第二の複数のコンバイナを用いて、第一の高域フィルタの出力から上記高域フィルタの各々からのクロストークキャンセラー出力を減算することをさらに含む、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリング。
(項目26)
上記クロストークキャンセラーのクロスオーバー周波数は、500Hzから2000Hzの範囲である、上記項目のいずれかに記載のバーチャルサラウンドレンダリング。
【0009】
(摘要)
それぞれ周波数バンドにおいて両耳間時間差限局性および両耳間レベル差限局性刺激に類似し、ファントム画像化および過剰な調子を避ける、一次頭部関連モデルを採用する2方向アプローチによるバーチャルサラウンドサウンドの生成のためのアプローチおよびデバイスが用いられた。
【0010】
下の説明は、以下の図を参照することによってより理解され得る。図における構成要素は、必ずしも一定の縮小比ではなく、代わりに、発明の原理を例示することに強調が置かれている。図において、類似の参照数字は異なる図を通して対応する部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実装の一例に従ったスピーカアレイの図である。
【
図2】
図2は、本発明の実装の一例に従ったデジタル信号プロセッサの簡略化されたブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の実装の一例に従った
図1のスピーカアレイに連結された
図2のデジタル信号プロセッサに設けられた5チャネルサラウンドレンダラーのブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の実装の一例に従った
図3のサラウンドレンダラーのブロック図である。
【
図5】
図5は、本実装の一例に従った
図3の5チャネルサラウンドレンダラーの中央部分および12度軸外れにおける加算された応答のグラフである。
【
図6】
図6は、本発明の実装の一例に従った
図3の2イン4アウトアップミキサーのブロック図である。
【
図7】
図7は、本発明の実装の一例に従った早期反射に対する
図6のシェルビングフィルタの出力のグラフである。
【
図8】
図8は、本発明の実装の一例に従ったバーチャルサラウンドレンダリングするステップの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(詳細な説明)
以下の例示的実装の説明は、例示の目的のみのために与えられ、限定的意味において取られるべきではないことが理解されるべきである。図面において示される機能ブロック、モジュールまたはユニットの例の区分は、それらの機能ブロック、モジュールまたはユニットが必ず物理的に別個のユニットとして実装されることを示していると解釈されるべきでない。示されるか、または説明される機能的ブロック、モジュールまたはユニットは、別個のユニット、回路、チップ、関数、モジュールまたは回路要素として実装され得る。1つ以上の機能的ブロックまたはユニットは、また、共通の回路、チップ、回路要素またはユニットに実装され得る。
【0013】
図1において、発明の実装の一例に従ったスピーカアレイまたはサウンドバー102の
図100が描写される。スピーカアレイ102は、スピーカおよび関連する変換器104、106、108および110のような2つ以上のスピーカを有し得る。変換器は、2つの小さな内部変換器106および108ならびに2つの大きな外部変換器104および110であり得る。スピーカアレイ102は、一般的に聴取者の前に設置される。スピーカアレイを搭載する例は、フラットスクリーンテレビより上または下である。
【0014】
図2を参照すると、発明の実装の一例に従ったデジタル信号プロセッサ(DSP)202の簡略化されたブロック
図200が示される。デジタル信号プロセッサは、メモリ206のような1つ以上のメモリ、208のようなアナログ−デジタル(A/D)コンバーター、クロック210、個別部品212、デジタル−アナログ(D/A)コンバーター214に連結されたコントローラー204を有し得る。1つ以上のアナログ信号は、A/Dコンバーター208によって受信され得、コントローラー204、メモリ206および個別部品212によって処理されるデジタル信号に変換され得る。処理された信号は、D/Aコンバーター214を通して出力され、サウンドバー102のような他のデバイスにさらに増幅または渡され得る。
【0015】
図3において、発明の実装の一例に従った
図1のスピーカアレイ102に連結された
図2のDSP202に実装された4チャネルサラウンドレンダラー302を有するバーチャルサラウンドサウンドプロセッサ(VSSP)202のブロック
図300が描写される。VSSP202は、左チャネルL302、中央チャネルC304、右チャネルR306オーディオを容認するコネクタを有し得る。中央チャネルC304からのオーディオは左チャネルL302にコンバイナ308によって結合され、右チャネルR306にコンバイナ310によって結合される。コンバイナ308および310からの出力は、2イン4アウトアップミキサー312へ渡される。2イン4アウトアップミキサー312の出力は、4つの出力信号(Out_L314、Out_R316、Surr_out_L318およびSurr_Out_R320)である。Surr_out_L信号318は、左側信号322にコンバイナ324によって結合され、Surr_out_R信号320は、右側信号326にコンバイナ328によって結合される。コンバイナ324および328からの出力は、サラウンドレンダラー302へ渡される。出力は、サラウンドレンダラー302、A_L330、A_R332、B_L334およびB_R336から信号を送る。A_L信号330は、Out_L信号314にコンバイナ338によって結合され得、サウンドバー102におけるスピーカ104へ連結され得る。Out_R信号316は、A_R信号332にコンバイナ340によって結合され得、サウンドバー102におけるスピーカ110へ連結され得る。B_L信号334およびB_R信号336は、それぞれ、サウンドバー102におけるスピーカ106および108へ連結される。
【0016】
中央チャネルC304は、左入力チャネルL302および右入力チャネルR306へ、それぞれ、減衰率h
1を介して加えられる。一般的には、h1は、h
1=0.4として設定され得、現在の例においては約−8dBである。加算された信号は、2イン4アウトアップミキサー312(メインステレオ出力Out_L314、Out_R316およびサラウンド出力Surr_Out_L318、Surr_Out_R320を生成する)の入力IN_LおよびIN_R(コンバイナ308および310の出力)に接続される。メイン出力は、外部変換器対104および110を2つの加算ノードまたはコンバイナ338および340を介してフィードする信号に直接加えられる。2イン4アウトアップミキサー312のサラウンド出力は、それぞれ、率h
3によって積算され、コンバイナ324および328によってサラウンド入力チャネルLS322およびRS326(計数逓減率h
2によって積算される)へ加えられる。結果の加算された入力信号は、4つの信号(外部変換器対104および110へ加算ノード(コンバイナ338および340)を介して接続された第一の対A_L330およびA_R332ならびに内部変換器対106および108へ接続された第二の対B_L334およびB_R336)を生成するサラウンドレンダラー302の入力へ接続される。
【0017】
2イン4アウトミキサー312において採用される計数逓減率の一般的な値は、h
2=2.3、h
3=1.9であり得るが、他の値が用途およびユーザの嗜好に依り他の実装において用いられ得る。コンピュータモニター用途の場合において、外部変換器104および110は、(40〜50)cm離間され得、内部対106および108は、(6〜10)cm離間され得る。これは、傾聴距離80cmにおいて、外部対104および110に対して+/−(14〜17)°の聴取者の頭部への角度スパンに対応し、内部対106および108に対して+/−(2〜4)°に対応する。外部変換器104および110が大きなTVスクリーンの縁に、例えば約150cm離間して配置され、内部変換器106および108が30cm離間して配置されるホームシアターシステム実装においては、250〜300cmの傾聴距離における類似する角度スパンになる。設計パラメータは、主に角度スパンに依り、そのため、例示的用途の両方に対して同じであり得る。
【0018】
図4を参照すると、発明の実装の一例に従った
図3のサラウンドレンダラー302のブロック
図400が描写される。2チャネル(コンバイナ324からの)入力信号Surr_In_L、(コンバイナ328からの)Surr_In_Rは、まずスペクトルが、特定のクロスオーバー周波数f
c410でクロスオーバーネットワークによって2つの信号に分割され、低域フィルタLP402および404の対、高域フィルタHP406および408の対を含む。クロスオーバー周波数f
cは、単純な頭部モデルが有効であるように(一般的には、f
c=500Hz〜2000Hz)選ばれる。クロスオーバーフィルタは、低次再帰型フィルタ(例えば、二次バターワース(BW)フィルタまたは四次リンクウィッツライリー(LR)フィルタ)であり得る。低域セクションは、さらに率g
1412によって計数逓減される。
【0019】
次いで、低域フィルタをかけられた信号対は、非再帰型(一次)クロストークキャンセラーセクションを遅延セクションHD414および416によって形作られたクロスパスによって通過する。遅延セクションHD414および416は、それぞれ、d
1サンプルの純粋遅延を表し、利得g
2418が後続する。クロスパス出力は、それぞれダイレクトパスからコンバイナ420および422によって減算され、それによって、右変換器から左耳へ、左変換器から右耳へ到達する信号をキャンセルする。700Hzより下の低周波数において、両耳間時間差(ITD)は、際立った限局性刺激であり、700Hzより上の周波数範囲において、両耳間レベル差(ILD)は、より支配的となる。特定の傾聴角度において、クロストークパスにおけるパス差は、48kHzのサンプリング率においてd
1=(4...8)サンプルの遅延値に対応する。
【0020】
高域フィルタをかけられた信号対は、第二のクロストークキャンセラーによってクロスパスにおける一次低域フィルタHC424および426で処理され、クロスパスは、−3dBカットオフ周波数f
t428によって特徴付けられるのみである。HC424および426に対して実験的に決定された値は、現在の実装においてf
t=(3...4)kHzである。このセクションにおいて、さらなる遅延または利得パラメータは要求されない。HC424の出力は、HP408の出力からコンバイナ430によって減算され、出力信号B_Rという結果になる。同様に、HC426の出力は、HP406の出力からコンバイナ428によって減算され、出力信号B_Lという結果になる。
【0021】
説明された2方向アプローチによって、それぞれ周波数バンドにおいてITDおよびILD限局性刺激に類似する一次頭部関連モデルが用いられてきた。それによって、先行技術において教示される高次頭部関連フィルタは避けられており、より少ない軸外れの調子、位相性および耳圧力のより不快でない感覚という結果になる。
【0022】
クロスパス利得率に対して有用な範囲は、一般的にはg
2=(0.3...0.9)である。しかし、最大セパレーション(聴取者の耳をまたぐ軸に沿ったバーチャル画像)における1つの結果に近い値は、最大バスブーストを要求し、その量は、利得率g
1の選択によって設定され得る。コンピュータモニターシステムに対する一般的な設計例は:
LP,HP=二次BWセクション、f
c=800Hz
g
1=−3.0、
HD=遅延d
1の周波数応答=4サンプル、
g
2=0.7、
HC=一次低域、f
t=3.5kHzである。
【0023】
中央位置における周波数応答は、モノラル入力によって、
g
1・LP・(1−g
2・HD)+HP・(1−HC)である。
【0024】
軸外れ位置において、左外部変換器と右外部変換器との間のさらなるパス長さ差HD
1は、周波数応答式
g
1・LP・(1−g
2・HD)・(1+HD
1)/2+HP・(1−HC)につながる。
【0025】
図5において、
図3の5チャネルサラウンドレンダラー302の中央位置および12度軸外れにおける加算された応答のグラフ500が発明の実装の一例に従って示される。仮定の12°の軸外れの角度(左外部変換器と右外部変換器との間のパス長さ差HD
1=13サンプル遅延という結果になる)において、私たちは、有意に平坦であり、さらなる均等化を要求しない軸上の応答502を有し、一方で、軸外れの応答504は、1.5kHzの周りに干渉ディップを示すのみであるグラフ500において示される結果を得た。干渉ディップは、調子として強く知覚されず、メインステレオ信号L302、R306およびC304によってさらにマスクされる。
【0026】
図6を参照すると、発明の実装の一例に従った
図3の2イン4アウトアップミキサー312のブロック
図600が描写される。2イン4アウトアップミキサー312の目的は、延長されたステレオ幅および正面サウンドステージの調節可能な知覚された距離を提供することと、2チャネルのみの信号供給源(伝統的な信号供給源)の場合のために向上された空間経験を作ることとである。
【0027】
ステレオ幅調節は、ステレオ幅調節セクション601において、メインステレオ対Out_L314、Out_R316に対して負の交差係数b
1602およびバーチャルサラウンド対Surr_Out_L318、Surr_Out_R320に対してb
2604をそれぞれ有する2つの線形2×2マトリックスによって達成され得る。パラメータの有用な範囲は、1に近い値に対して最大セパレーションを有する区間[0...1]である。現在の例示的実装に対して選ばれた値は、b
1=0.04、b
2=0.33である。
【0028】
知覚されたサウンドステージの距離は、距離調節セクション605において個別の反射されたエネルギーの付加によってスピーカベースを超えて増やされ得る。反射の振幅が高くなり、反射が直接音(より小さい遅延値)に近付くにつれて、音が知覚され得る距離が増える。現在の例示的実装において、4つの反射(直接音の遅延されたレプリカ)が作られ、2イン4アウトアップミキサー312の4つの出力に加えられている。パラメータは、4つの遅延値(d
1606、d
2608、d
3610およびd
4612)およびそれらのそれぞれ振幅(c
1614、c
2616、c
3618およびc
4620)である。反射された信号間の十分な非相関性は、ランダムな値を割り当てることによって達成され得、それによって、フォントム画像化(2つ以上の反射を1つに併合)および過剰な調子を避ける。現在の実装に対する例示的パラメータ設定は、c
1=0.62、c
2=0.50、c
3=0.71、c
4=0.5(それぞれ、−4dB、−6dB、−3dBおよび−5dBに対応する)およびd
1=564、d
2=496、d
3=776、d
4917サンプルであり得る。
【0029】
さらに、一次ハイシェルビングフィルタ622および624の対は、自然な壁吸収を刺激し、刺激された周囲音場における非周期の一時的信号を減衰させるために反射パスの中へ挿入され得る。ハイシェルビングフィルタ622および624に対する一般的なパラメータは、
図7において描写される。
図7において、発明の例示的実装に従った早期反射に対する
図6のシェルビングフィルタ622および624の出力702のグラフ700が示される。
【0030】
図8を参照すると、発明の実装の一例に従ったバーチャルサウンドレンダリングするステップの流れ
図800が示される。IN_LおよびIN_Rのような複数のオーディオ信号は、2イン4アウトアップミキサー312(802)において受信される。2イン4アウトアップミキサー312は、Out_L314およびOut_R316のようなアップミクシングされた出力信号ならびにSurr_out_L318およびSurr_out_R320のような関連する出力サラウンド信号を第一の複数のオーディオチャネル信号(804)の受信に応答して生成する。LS322およびRS326のような第二の複数のオーディオチャネル信号は、サラウンドレンダラー302(806)において受信される。第二の複数のオーディオチャネル信号の各々は、第二の複数のオーディオチャネル信号をサラウンドレンダラー302においてコンバイナ324および328(808)によって受信されることに応答して関連する出力サラウンド信号に結合される。複数の変換器信号は、B_L334およびB_R336のようなサラウンドレンダラー302の出力として生成される。複数の変換器信号のうちの一部は、関連するアップミクシングされた出力信号にコンバイナによって結合され、コンバイナ338および340(810)によってOut_L314に結合されたA_L330およびOut_R316に結合されたA_R332のようなさらなる変換器信号を生成する。
【0031】
図8に関して説明される方法は、通常はデータをメモリ内で動かし、タイミング信号を生成するような信号処理中に実行されるさらなるステップまたはモジュールを含み得る。
図8の描写される図のステップは、また、さらなるステップまたは機能によってか、あるいは平行して実行され得る。
【0032】
1つ以上の処理、サブ処理あるいは
図8に関連して説明される処理ステップまたはモジュールは、ハードウェアおよび/またはソフトウェアによって実行され得ることが当業者によって理解され、認識される。処理がソフトウェアによって実行された場合、ソフトウェアは、
図1〜7において概略的に描写または識別される機能的構成要素またはモジュールのうちの1つ以上のような適切な電子処理構成要素またはシステムにおけるソフトウェアメモリ(示されていない)に常駐し得る。ソフトウェアメモリにおけるソフトウェアは、ロジック機能(つまり、デジタル回路またはソースコードのようなデジタル形式としても実装され得る「ロジック」)を実装する実行可能命令のオーダーされたリスト作成を含み得、命令実行システム、装置あるいはコンピュータベースシステム、プロセッサを含むシステムまたは命令実行システム、装置またはデバイスから命令を選択的に取り出し得、命令を実行し得る他のシステムのようなデバイスによってか、またはそれらに接続された使用のためのいずれかのコンピュータ読み取り可能媒体において選択的に具現化され得る。本開示の関係において、「コンピュータ読み取り可能媒体」は、命令実行システム、装置またはデバイスによってか、それらに接続された使用のためのプログラムを含み得るか、記憶し得るか、または通信し得るいずれかの有形の手段である。コンピュータ読み取り可能媒体は、例えば、選択的に電子、磁気、光学、電磁、赤外線または半導体システム、装置またはデバイスであり得るが、それらに限定されない。より具体的な例であるが、それでも全てを網羅しているわけではないコンピュータ読み取り可能媒体の一覧は、以下を含む:ポータブルコンピュータディスケット(磁気)、RAM(電子)、リードオンリーメモリ「ROM」(電子)、消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ「EPROMまたはフラッシュメモリ」(電子)およびポータブルコンパクトディスクリードオンリーメモリ「CDROM」(光学)。コンピュータ読み取り可能媒体は、プログラムがプリントされ、捕捉され、次いで、必要に応じて適切な態様でコンパイル、解釈または処理され、次いで、コンピュータメモリに記憶される紙または別の適切な媒体ですらあり得ることに注意されたい。
【0033】
上述の実装の説明は、例示および説明の目的のみのために示された。説明は網羅的ではなく、開示から正確に本発明を限定しない。上の説明に照らし、改変および変化形が可能であるか、または発明の例を実行することから獲得され得る。特許請求の範囲およびそれらに相当するものが発明の範囲を規定する。
【符号の説明】
【0034】
102 スピーカアレイまたはサウンドバー
202 デジタル信号プロセッサ(DSP)
206 メモリ
208 アナログ−デジタル(A/D)コンバーター
210 クロック
214 デジタル−アナログ(D/A)コンバーター