特許第5816077号(P5816077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5816077
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月17日
(54)【発明の名称】液体食品もしくは飲料の調整方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/70 20060101AFI20151029BHJP
   C12H 1/04 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
   A23L2/00 K
   C12H1/04
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-289056(P2011-289056)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-135650(P2013-135650A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】大江 太郎
【審査官】 上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−069947(JP,A)
【文献】 特開昭61−293517(JP,A)
【文献】 国際公開第02/004593(WO,A1)
【文献】 特公平07−096082(JP,B2)
【文献】 特開平10−075752(JP,A)
【文献】 国際公開第94/018854(WO,A2)
【文献】 特開平10−042852(JP,A)
【文献】 特開2009−278966(JP,A)
【文献】 Dowex@ 50WX4 Product Specification,http://www.sigmaaldrich.com/Graphics/COfAInfo/SigmaSAPQM/SPEC/42/422096/422096-BULK_______SIAL_____.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/70
C12H 1/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状のイオン交換樹脂による液体食品もしくは飲料の調整方法において、
液体食品もしくは飲料に粉末状のイオン交換樹脂を添加して混合した後、液体食品もしくは飲料からろ過によりイオン交換樹脂を分離除去し、ろ液を調整処理された液体食品もしくは飲料として得る工程を有し、
ろ過処理される液体食品もしくは飲料のpHを5以下とし、
ろ過前に液体食品もしくは飲料に酸を添加し、ろ過後に液体食品もしくは飲料にアルカリを添加し、
イオン交換樹脂として、陽イオン交換樹脂を用いる
ことを特徴とする液体食品もしくは飲料の調整方法。
【請求項2】
イオン交換樹脂として、H形の陽イオン交換樹脂を用いることを特徴とする請求項1に記載の液体食品もしくは飲料の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体食品もしくは飲料の粉末状イオン交換樹脂による調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール飲料、清涼飲料、ジュースなどの飲料や液体調味料、液体サプリメントなどの液体食品の色度などの性状や品質を整えるために、飲料や液体食品、あるいはこれらの製造に用いる液体原料をイオン交換樹脂と接触させて所定の処理を行った後に、処理液とイオン交換樹脂を分離する方法が利用されている。
【0003】
特許文献1(国際公開WO03/004593号明細書)にはイオン交換樹脂を含む吸着剤を用いた麦芽アルコール飲料の製造方法が記載されている。この特許文献で記載されている実施例では市販の合成吸着剤もしくは市販のイオン交換樹脂を添加し、有機酸等の除去を実施している。
【0004】
特許文献2(特開平5−317029号公報)では、イオン交換樹脂を用いたアルコール発酵物の発酵臭の除去方法が記載されている。本特許文献では市販のイオン交換樹脂をカラムに充填し、そのカラムに対象物を通液し除去する方法が記載されている。
【0005】
特許文献3(特開平10−42852号公報)ではイオン交換樹脂を用いた飲料安定化(ヘイズ形成物質の除去)方法が記載されている。本特許公報では100μmのイオン交換体をカラムに充填し、そのカラムに対象物を通液し処理する方法が記載されている。
【0006】
特許文献4(特開昭52−5688号公報)には吸着剤を用いて、フェノール類、ポリフェノール類、たんぱく質などを含む食品や酒類などの液体から、変性三級アミン化ポリアミド樹脂を吸着剤として使用してこれらの物質を吸着分離する方法が記載されている。
【0007】
特許文献5(特開2010−51309号公報)には金属キレート系イオン交換樹脂等を用いて、発酵アルコール飲料から遷移金属を除去する方法が記載されている。本特許文献では金属キレート系イオン交換樹脂を充填したカラムに通液し処理する方法が記載されている。
【0008】
特許文献6(特開2009−278966号公報)には市販のK形もしくはH形のイオン交換樹脂を用いてワイン等からヘイズ形成タンパク質を除去する方法が記載されている。
【0009】
特許文献7(特許第4590145号公報)には市販のH形陽イオン交換樹脂とカルシウム化合物を用いジュースからカリウムを除去する方法が記載されている。H形陽イオン交換樹脂のみで酸味が強まるため、これを中和するためにカルシウム化合物を添加している。
【0010】
特許文献8(特許第4232131号明細書)には、繊維状濾材あるいは多孔質鉱石濾材に、50μm以下の微粒子状イオン交換樹脂を接触させて製作する微粒子状イオン交換樹脂含有濾過吸着体からなる濾過層を、フイルターエレメントとする濾過器が開示されている。
【0011】
特許文献9(特公平7−96082号公報)には、平均粒径1.5〜250μmの粉末陰イオン交換樹脂と粉末陽イオン交換樹脂、ケイソウ土、セルロース繊維の少なくとも1種とを混合することにより生成した凝集体にセラミックファイバーを加えてなる繊維状吸着体を、カラム充填して、あるいはクリストバライトやセラミックファイバーを用いた過床に配して、液体の清浄処理に利用することが開示されている。本特許文献では、上記の凝集体とセラミックファイバーとの組合せによって粉末状イオン交換樹脂の処理済液体側へのリークを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開WO03/004593号明細書
【特許文献2】特開平5−317029号公報
【特許文献3】特開平10−42852号公報
【特許文献4】特開昭52−5688号公報
【特許文献5】特開2010−51309号公報
【特許文献6】特開2009−278966号公報
【特許文献7】特許第4590145号公報
【特許文献8】特許第4232131号明細書
【特許文献9】特公平7−96082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
粉末状のイオン交換樹脂による液体食品もしくは飲料の調整方法としては、液体食品もしくは飲料に粉末状のイオン交換樹脂を添加して接触させた後に、液体食品もしくは飲料から粉末状のイオン交換樹脂をろ過により除去する方法が処理効率や処理設備の軽減等の面から有利である。このような粉末状のイオン交換樹脂による液体食品や飲料の調整処理では、処理効率などの点から250μm程度までの粒径の粉末状のイオン交換樹脂が利用されており、調整処理後における調整品側に粉末状のイオン交換樹脂がリークしないことが重要な課題となっている。
【0014】
しかしながら、イオン交換樹脂を粉砕機により粉末状にする場合、あらかじめリークし易いとされる微粉成分を分級して除去すると大幅なコストアップとなる。これに対して、粉砕機により粉砕した粉末状のイオン樹脂をそのまま、あるいは問題となるコストアップを生じない程度の分級を行ったものを利用できれば、コストダウンとなる。
【0015】
本発明の目的は、粉砕機による粉砕により得られた粉末状のイオン交換樹脂をそのまま利用した場合や、問題となるコストアップを生じない程度の分級を行った場合においても、粉末状のイオン交換樹脂の微粉成分がろ液へリークすることを効果的に防止可能である液体食品もしくは飲料の調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明にかかる液体食品もしくは飲料の調整方法は、粉末状のイオン交換樹脂による液体食品もしくは飲料の調整方法において、
液体食品もしくは飲料に粉末状のイオン交換樹脂を添加して混合した後、液体食品もしくは飲料からろ過によりイオン交換樹脂を分離除去し、ろ液を調整処理された液体食品もしくは飲料として得る工程を有し、
ろ過処理される液体食品もしくは飲料のpHを5以下とし、
ろ過前に液体食品もしくは飲料に酸を添加し、ろ過後に液体食品もしくは飲料にアルカリを添加し、
イオン交換樹脂として、陽イオン交換樹脂を用いる
ことを特徴とする液体食品もしくは飲料の調整方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、微粉を含む粉末状のイオン交換樹脂を用いた液体食品もしくは飲料の調整処理においても、ろ過処理される液体食品もしくは飲料のpHを5以下としておくことによって、ろ液中への粉末状のイオン交換樹脂のリークを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】イオン交換樹脂による液体食品もしくは飲料の処理フローを示す図である。(a)は基本フローによる一例を示す図であり、(b)は基本フローを用いた他の例を示す図である。
図2】実施例1における粉砕品(粉末状イオン交換樹脂)の粒度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明における処理対象は、目的とする品質の調整がイオン交換樹脂により可能であり、かつ、ろ過時におけるpHを5以下とすることが可能な液体食品もしくは飲料である。この品質の調整には、例えば、色度や味の調整、所望としない不要成分の除去、性状の調整などが含まれる。
【0020】
本発明における処理対象としての液体食品もしくは飲料としては、ビール、発泡酒、新ジャンルのビール(いわゆる第三のビール、発泡酒とは別の原料、製法で作られたビール風味の発泡アルコール飲料)、ワイン等のアルコール飲料、ノンアルコールビール、各種清涼飲料、ジュース(果汁含有有あるいは果汁含有無)などの飲料および糖液などの液体食品を挙げることができる。
【0021】
本発明においては、目的とする品質調整を達成しつつ、粉末状のイオン交換樹脂のろ過時におけるろ液側へのリークを効果的に防止するために、ろ過時の液体食品もしくは飲料のpHを5以下とする。
【0022】
イオン交換樹脂としては、液体食品もしくは飲料の調整処理の目的に応じて、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂から選択した1種以上を使用することができる。例えば、ビールからヘイズ等の原因となるタンパクを除去する場合は、陽イオン交換樹脂を用いることが好ましく、白ワインから脱色(色度の除去)には陰イオン交換樹脂を用いることが好ましい。
【0023】
陽イオン交換樹脂には強酸性陽イオン交換樹脂と弱酸性陽イオン交換樹脂がある。後者は通常、H形で販売されているため、塩形で使用する場合には使用前にNa形等の塩形に変形する必要がある。従って、弱酸性陽イオン交換樹脂についてはH形のものをそのまま用いることが望ましい。
【0024】
また、陰イオン交換樹脂には強塩基性陰イオン交換樹脂と弱塩基性陰イオン交換樹脂がある。後者は通常、遊離塩基形で販売されているため、塩形で使用する場合には使用前にCl形等の塩形に変形する必要がある。従って、弱塩基性陰イオン交換樹脂については遊離塩基形のものをそのまま用いることが望ましい。
【0025】
これらのイオン交換樹脂に関して、スチレンやアクリルといった母体構造は特に問わない。また物理構造としてポーラスタイプとノンポーラスタイプがある。どちらも使用できるがより表面積が高いポーラスタイプが好ましい。
【0026】
上述したとおり、陽イオン交換樹脂には塩形及びH形があり、陰イオン交換樹脂にはOH形及び遊離塩基形があり、各々、対象液体のpHへの影響がある。その影響を表1に示す。表1に示すpHへの影響を参考として用いるイオン交換樹脂の種類や添加量を設定することができる。本発明においては、イオン交換樹脂として陽イオン交換樹脂を用いる。
【0027】
【表1】
【0028】
図1に本発明の調整方法の一例を示す。図1(a)に連続処理の基本フローの一例を示す。この例では、液体食品もしくは飲料に、タンクに貯蔵してあるイオン交換樹脂を添加して混合し、混合液をフィルターまで送液してフィルターによってイオン交換樹脂を除去し、ろ過されたろ液を調整品として得る。この例においては、フィルター処理(ろ過処理)される液体食品もしくは飲料において測定されるpHを5以下とする。この段階でのpHが5以下であれば、フィルターからイオン交換樹脂のリークを防止することができる。
【0029】
図1(b)に基本フローのバリエーションの一例を示す。この例では、ろ過助剤、調整処理用のイオン交換樹脂、pH調整用の酸のそれぞれを別々のタンクに収納し、これらの量を個別に制御して、液体食品もしくは飲料に添加して混合し、珪藻土ろ過を介して安全フィルターまで混合液を送液してイオン交換樹脂及びろ過助剤を除去し、ろ液を調整品として得る。ろ過助剤はイオン交換樹脂のフィルターでの除去効率の向上を目的とするものであり、必要に応じて公知のろ過助剤から適宜選択して用いることができる。ろ過助剤としては、珪藻土、ベントナイト等を用いることができる。
【0030】
イオン交換樹脂の液体食品もしくは飲料への添加割合は、目的とする調整効果が得られる範囲で選択すればよく、例えば、1〜10,000ppm(重量基準)の範囲から選択することができる。
【0031】
酸は必要に応じて、例えば処理する液体食品もしくは飲料の種類、用いるイオン交換樹脂の種類等に応じて用いることができ、フィルター処理前の液体のpHを5以下に調整するために用いられる。また、図1(b)に示すように、珪藻土ろ過後の液体のpHを測定して、その値をフィードバックして酸の配合割合を調整しながら処理を行う構成としてもよい。
【0032】
本発明における液体食品もしくは飲料の調整用に陽イオン交換樹脂を用いる場合は再生形(H形)を用い、陰イオン交換樹脂を用いる場合は塩形(例えばクエン酸形、乳酸形、リン酸形)を用いることが好ましい。これらのイオン交換樹脂を用いることで、液体食品もしくは飲料のpHが低下する。これらのイオン交換樹脂によりpHが5以下になれば、ろ過性能が向上し、イオン交換樹脂をろ過により取り除くことができる。これらのイオン交換樹脂を用いてpHが5以下にならない場合は、別途、クエン酸、乳酸等もしくはリン酸等の酸を添加することができる。
【0033】
また、図1(b)に示すとおり、上記の方法でpHを低下させるイオン交換樹脂をろ過した後に、必要に応じて炭酸カリウムや炭酸ナトリウム等のアルカリ剤を添加することができる。この操作により、コストアップの要因となる粉砕イオン交換樹脂(粉末状イオン交換樹脂)の分級操作が不要となるとともに、ろ液中へのイオン交換樹脂のリークを抑制することができる。
【0034】
なお、図1に示した処理は、バッチ式や半連続式で行うこともできる。また、図1(a)の方法においても調製品のpHを測定してフィードバックをかけ、図1(b)と同じように、イオン交換樹脂の添加量等の処理条件等を調整してもよい。
【0035】
フィルターは、通液差圧等を考慮し、孔径が0.45μm以上で、かつ粉末状のイオン交換樹脂をろ過可能な孔径のものが好ましい。例えば、孔径0.45μmまたは孔径0.65μmのフィルターを用いることができる。
【0036】
図1(b)に示す例のように、粉末状のイオン交換樹脂の除去用フィルターとして安全フィルター用い、その安全フィルターの前段に珪藻土等を用いたプレコートフィルターがあってもよい。
【0037】
粉末状のイオン交換樹脂は、イオン交換樹脂を粉砕して粉末としたものを利用することができ、従来用いられている粒度分布のものを用いることができる。なかでも、粒径が0.45μm以下の微粉粒子成分を有するものを用いた場合においても、本発明ではろ液として取り出した調整品側への粉末状のイオン交換樹脂のリークを効果的に防止することができる。例えば、平均粒径70μm〜100μm程度に粉砕処理した粉末状イオン交換樹脂を分級をかけずに用いた場合でも、本発明の効果を得ることができる。更に、粒径が0.45μm以下の微粉粒子成分の粉末全体に対する割合が1容量%を超えない粒度分布であるものを用いるのが好ましい。
【0038】
中性もしくはアルカリ性の液体食品もしくは飲料の調整を行う場合、pH低下機能を有するH形の陽イオン交換樹脂及び塩形の陰イオン交換樹脂の少なくとも1つを使用することが好ましい。これにより、pHを低下させることができる。このようなpH低下機能を有するイオン交換樹脂が使えない場合や、これらのイオン交換樹脂のみではpH低下が不十分な場合は酸を添加する。使用する酸は食品添加物として認められている成分であれば特に制約はない。
【0039】
例えば、調整処理前の液体食品もしくは飲料のpHが5以下であり、pH低下機能を有するイオン交換樹脂を用いる場合は、pH低下の程度と調整効果を考慮してイオン交換樹脂の添加割合と処理時間を設定する。調整処理前の液体食品もしくは飲料のpHが5以下であり、pHを上昇させる機能を有するイオン交換樹脂を用いる場合は、pH上昇の程度と調整効果を考慮して、ろ過処理時のpHが5以下となるようにイオン交換樹脂の添加割合と処理時間を設定する。調整処理前の液体食品もしくは飲料のpHが5を超えており、pHを低下させる機能を有するイオン交換樹脂を用いる場合は、pH低下の程度と調整効果を考慮して、pHが5以下となるようにイオン交換樹脂の添加割合と処理時間を設定する。これらの場合のいずれにおいても、調整処理目的に基づいてイオン交換樹脂を選択した際にろ過処理時のpHが5以下とならない場合には、酸を用いてpHを5以下に調整することができる。
【0040】
一方、調整処理前の液体食品もしくは飲料のpHが5を超えており、pHを上昇させる機能を有するイオン交換樹脂を用いる場合は、pH上昇の程度と調整効果を考慮し、酸等によってpHが5以下となるようにイオン交換樹脂の添加割合と処理時間、酸の添加割合を設定する。
【0041】
pHを5以下とすることによりイオン交換樹脂のろ過時におけるろ液中へのリークが防止できる点については、pHが5以下であればイオン交換樹脂において何らかの状態変化が起き、粒子同士の相互作用によって凝集などが生じてろ過により除去され易くなるものと推定される。
【実施例】
【0042】
実施例1 陽イオン交換樹脂によるビールからのタンパク除去
強酸性陽イオン交換樹脂、アンバーライトFPX62を用いたビールからのタンパク除去を行った。アンバーライトFPX62はNa形とH形を用意し、各々粉砕機にて平均粒径70μmに粉砕した。この粉砕品には0.4μm以下の粒子が0.1vol.%含まれていた。この粉砕品を粉末状のイオン交換樹脂として用いた。その粒度分布を光散乱式の装置で測定した結果を図2に示す。この粉末状のイオン交換樹脂を水と混合してタンク内に水スラリーとして充填した。pH4.5のビールに対し1000mg/Lの割合で粉末状のイオン交換樹脂を混合し、孔径0.45μmのフィルターでろ過した。このプロセスで得られたろ液に粉末状のイオン交換樹脂が残留しているか否かを調べるため、このろ液を更に孔径0.1μmのフィルターでろ過し、そのフィルターに粉末状のイオン交換樹脂が付着しているか否かを蛍光X線により調べた。
【0043】
実施例2
純水に乳酸を添加し、pH5.2とした溶液にアンバーライトFPX62のH形の粉砕品を添加した。添加後のpHは、4.9となった。実施例1同様に操作を行い、プロセスろ液に粉末状のイオン交換樹脂が残留しているか否かを調査した。
【0044】
実施例3
純水に乳酸を添加し、pH4.5とした溶液に実施例1で用意したアンバーライトFPX62のNa形の粉砕品を添加したところ、pH4.9となった。プロセスろ液に粉末状のイオン交換樹脂が残留しているか否かを調査した。
【0045】
比較例1
実施例1で用意したアンバーライトFPX62のNa形の粉砕品を乳酸により調整したpH5.2の水に添加した。添加後のpHは5.5となった。実施例1同様操作を行い、プロセスろ液に粉末状のイオン交換樹脂が残留しているか否かを調査した。
【0046】
【表2】
【0047】
本発明の実施例1〜3と比較例1との結果から、ろ過処理される液体のpHを5以下とすることにより目的とする処理性能を得ることができる。
図1
図2