(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5816086
(24)【登録日】2015年10月2日
(45)【発行日】2015年11月17日
(54)【発明の名称】刺激細胞標準
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20151029BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20151029BHJP
【FI】
C12Q1/02
G01N33/50 F
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-517241(P2011-517241)
(86)(22)【出願日】2009年7月9日
(65)【公表番号】特表2011-527192(P2011-527192A)
(43)【公表日】2011年10月27日
(86)【国際出願番号】GB2009050815
(87)【国際公開番号】WO2010004336
(87)【国際公開日】20100114
【審査請求日】2012年5月21日
(31)【優先権主張番号】0812755.7
(32)【優先日】2008年7月11日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】0812757.3
(32)【優先日】2008年7月11日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511007989
【氏名又は名称】ヘルス プロテクション エージェンシー
【氏名又は名称原語表記】HEALTH PROTECTION AGENCY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【弁理士】
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ジョン ステッビングス
【審査官】
山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−133957(JP,A)
【文献】
特表平09−503051(JP,A)
【文献】
特表2007−503593(JP,A)
【文献】
特表2009−526991(JP,A)
【文献】
国際公開第03/020874(WO,A1)
【文献】
MAECKER HOLDEN et al,STANDARDIZATION OF CYTOKINE FLOW CYTOMETRY ASSAYS,BMC IMMUNOLOGY,英国,BIOMED CENTRAL,2005年 6月24日,Vol. 6, No. 13
【文献】
PINTO LIGIA A et al,CYTOMETRY. PART B. (CLINICAL CYTOMETRY),米国,WILEY-LISS,2005年,Vol. 63B,p. 47-55
【文献】
JANETZKI SYLVIA et al,STANDARDIZATION AND VALIDATION ISSUES OF THE ELISPOT ASSAY,METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,米国,HUMANA PRESS INC.,2005年,Vol. 302,p. 51, 56, 57, 63, 64
【文献】
SUNI MARIA A et al,PERFORMANCE OF PLATE-BASED CYTOKINE FLOW CYTOMETRY WITH AUTOMATED DATA ANALYSIS,BMC IMMUNOLOGY,英国,BIOMED CENTRAL,2003年,Vol. 4, No. 9,p. 1-10
【文献】
COX JOSEPHINE H et al,AIDS RESEARCH AND HUMAN RETROVIRUSES,米国,MARY ANN LIEBERT INC.,2005年,Vol. 21, No. 1,p. 68-81
【文献】
Nomura et al,Cytometry,2000年,Vol. 40,p. 60-68
【文献】
Coon et al,Cancer,1989年,Vol. 63,p. 1592-1599
【文献】
HOROHOV et al,Equine Veternary Journal,2008年 7月,Vol. 40, No. 5,p. 468-472
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00− 3/00
G01N 33/48− 33/98
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 細胞試料はヒトまたは動物の体から予め単離して得たものであり、該細胞試料が末梢血単核細胞、細胞系統、血小板からなる群から選択した細胞を含むステップと、
(b) 分裂促進因子の添加によって前記細胞を刺激してサイトカイン分泌阻害剤の存在下でサイトカインを作製するステップと、
(c) 前記刺激細胞を固定剤の添加によって固定するステップと、
(d) 前記固定した刺激細胞を凍結乾燥によって保存するステップとを備え、
前記分裂促進因子がPMA(ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート)を含む、
細胞参照材料を製造する方法。
【請求項2】
(i) 混合細胞集団はヒトまたは動物の体から予め単離して得たものであり、該混合細胞集団が末梢血単核細胞と血小板からなる群から選択した複数の細胞タイプを含むステップと、
(ii) 前記混合細胞集団を分画して、各画分内に細胞タイプの明確な集団を有する複数の画分を作製するステップと、
(iii) 前記一つ以上の画分内の細胞をサイトカイン分泌阻害剤の存在下で刺激してサイトカインを作製するステップと、
(iv) 前記各画分内の細胞を固定剤の添加によって固定するステップと、
(v) 前記複数の画分を再結合して特異的に刺激した細胞の混合物を作製するステップと、
(vi) 前記特異的に刺激した細胞の混合物を凍結乾燥または凍結貯蔵によって保存するステップとを備える細胞参照材料を製造する方法。
【請求項3】
前記細胞試料または前記混合細胞集団は哺乳類の体から単離されたものである請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記細胞試料または前記混合細胞集団は人体から単離されたものである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記分裂促進因子がイオノマイシンを含む請求項1、請求項1に従属する請求項3、請求項1に従属する請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記分裂促進因子がPMA(ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート)およびイオノマイシンの混合物を含む請求項1、請求項1に従属する請求項3〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記サイトカイン分泌阻害剤がBrefeldin Aを含む前記請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記固定剤がパラホルムアルデヒドを含む前記請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記固定剤がパラホルムアルデヒドおよび塩化クロムの混合物を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞の固定後で細胞の保存前に残留固定剤を除去するステップを更に備える前記請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記細胞の保存前に前記固定後の細胞を高張性条件下に暴露するステップを更に備える前記請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記細胞の保存前に凍結保護物質を前記固定後の細胞に添加するステップを更に備える前記請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
複数の細胞試料を複数の個体から予め単離して得るステップと、
前記各細胞試料に対し請求項1に従属する前記請求項3〜12のいずれかの方法を行うステップとを備え、
前記細胞の保存前に前記複数の試料に由来した固定細胞同士を混合するステップを更に含む細胞参照材料を製造する方法。
【請求項14】
複数の混合細胞集団を複数の個体から予め単離して得るステップと、
前記各混合細胞集団に対し請求項2に従属する前記請求項3〜12のいずれかの方法を行うステップとを備え、
前記細胞の保存前に前記複数の混合細胞集団に由来した固定細胞同士を混合するステップを更に含む細胞参照材料を製造する方法。
【請求項15】
刺激ステップ(b)または(iii)を省略し、および、保存ステップ(d)または(vi)を省略した前記請求項1〜14のいずれかに記載の方法ステップにより未刺激の固定細胞を調製するステップと、
前記未刺激の固定細胞を、保存ステップ(d)または(vi)を省略した前記請求項のいずれかに記載の方法ステップに従って調製する刺激した固定細胞と混合するステップと、
前記未刺激の固定細胞と前記刺激した固定細胞とを混合した細胞を凍結乾燥または凍結貯蔵によって保存するステップとを備える細胞参照材料を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイトカインおよび細胞増殖アッセイ用の標準コントロール参照材料に関する。本発明はまた、かかる材料を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ELISPOTアッセイによるサイトカイン放出の検出並びにフローサイトメトリーによる細胞内のサイトカインの定量および識別は、細胞媒介免疫応答の指標としてともに広く使用されている。所謂ELISPOTアッセイにおいて、固定化細胞から放出されたサイトカインは、通常ELISAアッセイのような免疫学的アッセイと相互作用して、アッセイ・プレート上に着色「点」を形成することにより、定性的(例えば免疫タンパク質のタイプ)および定量的(応答細胞の数または比率)情報の両方を提供する。これらアッセイの標準化は、試験試料における細胞内サイトカインレベルおよびサイトカイン放出を監視し、その結果異なる研究室およびアッセイ間での比較を可能にするため信頼性が高い参照基準の開発を要求する。
【0003】
刺激され(サイトカイン陽性)、固定され、低温貯蔵された細胞が細胞内フローサイトメトリー用に市販(英国のBecton Dickinson社)され、また凍結乾燥した未刺激細胞が表面染色用または血液学分析のためのいずれかのコントロールとして入手できる(英国のBeckman Coulter UK Ltd)。
【0004】
ELISPOTアッセイまたは細胞からのサイトカイン放出を監視する他のアッセイに関して、個々のドナーからの低温貯蔵された生細胞のみが現在入手可能である。
【0005】
標準化参照材料の提供に現在利用可能な方法は、多くの欠点がある。世界中の多数の研究室にわたる参照材料を標準化し、また長年にわたって使用し得る参照材料を提供するためには、大量の安定な材料が必要である。しかしながら、細胞死およびサイトカインの過剰発現をもたらす混合リンパ球反応のため、多重ドナーからの生細胞を貯蔵して大きな単一バッチを作ることはできない。
【0006】
低温貯蔵された細胞はまた、例えば液体窒素を用いる特殊な貯蔵およびドライアイス上での出荷を必要とし、従ってコストが増大する。また、出荷中の解凍および再冷凍のリスクがある、すなわち冷凍装置に対する停電の場合に材料の悪化をもたらし、これにより参照標準として使用することができなくなる。さらにまた、低温貯蔵された細胞を慎重に解凍して反応の一貫性を確実にしなければならない。この方法を用いる研究所の間で一貫した結果を得ることが難しいとわかった。
【0007】
哺乳動物細胞における細胞増殖の測定はまた、例えば細胞の分裂するための能力または傾向に対する外因性作用因子の影響の評価のために重要な技術である。例えば、かかるアッセイは、免疫応答後の免疫系の標識された細胞の増殖を検出するために使用されてもよい。細胞を細胞分裂後の娘細胞間で共有される検出可能なマーカーで標識付けする多くの技術が現在用いられている。
【0008】
かかる技術の一つでは、蛍光染料のカルボキシフルオレシンジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSEまたはCFDA、SE)を使用する。該技術が非特許文献1に記載され、その中で「該技術を生体外および生体内の両方で用いて、8〜10個の連続分裂をフローサイトメトリーによって解消することができる。さらに、所定の世代番号の生細胞を機能解析用のフローサイトメトリーによって分類することができる。」と報告されている。他の技術は、細胞へのブロモデオキシウリジンまたはトリチウム化チミジンの取込みを含む。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Lyons, B. in Immunol. Cell Biol 1999; 77(6): 509-515
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらアッセイが周知であるものの、該アッセイを異なる分析研究室にわたって用いるか、または例えば臨床的な継続研究中に連続して長い期間用いる場合に生じる問題点は、相互検定および品質管理用の参照標準の提供である。
【0011】
かかるサイトカインおよび細胞増殖アッセイ用に適した参照材料の欠如は、特に異なる研究室およびアッセイ間の比較可能性についてロバスト試験方法論を妨げる。これらの課題の解決を試みることが、本発明の目的のひとつである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明の第1の態様は、次のステップ、(a) ヒトまたは動物体から単離して細胞試料を得、該細胞試料が好塩基球、好中球、好酸球、単球、リンパ球(B-リンパ球およびT-リンパ球)、ナチュラルキラー細胞(全末梢血単核細胞、PBMC)、血小板および細胞株からなる群から選択した細胞を含み、(b)前記細胞をサイトカイン分泌阻害剤の存在下で刺激してサイトカインを生産し、(c) 前記刺激細胞を固定剤の添加により固定し、(d)前記固定した刺激細胞を凍結乾燥によって貯蔵することを備える細胞参照材料を製造する方法を提供する。
【0013】
細胞株によって、適当な新鮮培地およびスペースを付与する増殖可能な細胞培養を意味し、かかる細胞がもともとヒトまたは動物体から単離され、サイトカイン生産が可能である。かかる細胞は本質的にサイトカインを生産するか、または限定されないが、例えばTNF-α、IFN-γ、IL-1およびIL-6を含む一つ以上のサイトカインをコードし、またその合成を引き起こす外因性遺伝子物質を含むように修飾し得る。外来性DNAを感受性の真核生物細胞に、例えばミクロ注射、エレクトロポレーション、リン酸カルシウムの使用またはリポソームトランスフェクション試薬によって導入することができ、その後前記遺伝子物質を前記細胞の染色体DNAに組み込むか、または例えばプラスミドとして存在したままとすることができる。本質的にサイトカインを生産することができる細胞に関しては、かかる細胞を例えばプロモータ配列の導入により修飾してサイトカイン生産を上方制御することができる。所要に応じて、細胞を例えば分裂促進因子の使用により刺激してサイトカインを生産し、ここに記載した技術にしたがって保存することができる。
【0014】
腫瘍細胞へのサイトカイン遺伝子の形質導入が、強い炎症性のホスト反応を引き起こすことは既知である(例えば、「腫瘍関連抗原を発現する遺伝子組み替えの樹状細胞を用いる癌ワクチン治療に対するサイトカイン遺伝子での同時形質導入の促進効果」, International journal of oncology; OJIMA Toshiyasu et al : ISSN 1019-6439 2006, vol. 28, no4, pp. 947-953参照) 。生体内において、これは腫瘍の成長を減じる。生体外では、細胞内のサイトカインがここに記載した技術に従って保存され得る。
【0015】
かかる細胞株としては、好塩基球、好中球、好酸球、単球、リンパ球(Bリンパ球およびTリンパ球)、ナチュラルキラー細胞(全末梢血単核細胞、PBMC)および血小板に由来した細胞株、またはHeLa、HL-60、A-549、Jurkat、LNCapおよびCAPAN-I細胞のような細胞株を挙げることができる。
【0016】
好適な実施形態として、本発明は次のステップ、(a) 細胞試料をヒトまたは動物体から単離して得、該細胞試料が好塩基球、好中球、好酸球、単球、リンパ球(Bリンパ球およびT-リンパ球)、ナチュラルキラー細胞(全末梢血単核細胞、PBMC)および血小板からなる群から選択した細胞を含み、(b)前記細胞をサイトカイン分泌阻害剤の存在下で刺激してサイトカインを生産し、(c) 前記刺激された細胞を固定剤の添加によって固定し、(d)前記固定した刺激細胞を凍結乾燥によって保存することを備える細胞参照材料を製造する方法を提供する。
【0017】
本発明の第2の独立態様はまた、次のステップ、(i) 混合細胞集団をヒトまたは動物体から単離して得、該混合細胞集団が末梢血単核細胞、血小板からなる群から選択した複数の細胞タイプからなり、(ii) 前記混合細胞集団を分画して各画分内に細胞タイプの明白な集団を有する複数の画分を生産し、(iii) 前記一つ以上の画分内の細胞をサイトカイン分泌阻害剤の存在下で刺激してサイトカインを生産し、(iv) 前記各画分内の細胞を固定剤の添加により固定し、(v) 前記複数の画分を再結合して特異的に刺激した細胞の混合物を生産し、(vi) 前記特異的に刺激した細胞の混合物を凍結乾燥または凍結貯蔵によって保存することを備える細胞参照材料を製造する方法を提供する。
【0018】
このようにして、異なる細胞タイプにおけるサイトカイン発現の特定パターンを擬態する参照標準を作製し得る。かかるサイトカイン発現標準は、潜在的な疾病状態の診断/予後診断の両方での手助けによる臨床および調査の両状況、並びに調査研究室/実験的状況内での試料/実験結果の分析において利点を提供する。
【0019】
本発明のいずれの態様においても、前記細胞試料を哺乳類の体から単離するのが好ましく、人体から単離するのがより好ましい。
【0020】
また、本発明のあらゆる態様において、細胞を分裂促進因子の添加によって刺激するのが好ましい。特に細胞内のサイトカイン染色のためには、分裂促進因子がPMA(ホルボール12-ミリステート-13-アセテート)を含むのが好ましい。好ましくは、分裂促進因子がイオノマイシンを含む。より好ましくは、分裂促進因子がPMA(ホルボール12-ミリステート-13-アセテート)とイオノマイシンとの混合物を含む。また、特にELISPOTアッセイに用いるには、分裂促進因子がPHA(フィトヘマグルチニン)、IL-2(インターロイキン2)および共刺激抗ヒトCD28モノクローナル抗体の混合物を含むのが好ましい。
【0021】
また、本発明のあらゆる態様において、サイトカイン分泌阻害剤がBrefeldin Aを含むのが好ましい。
【0022】
また、本発明のあらゆる態様において、固定剤がパラホルムアルデヒドを含むのが好ましい。好適には、固定剤がパラホルムアルデヒドと塩化クロムとの混合物を含む。固定化はアポトーシスを含む細胞内および細胞外の生物活性を一時的に止めるという利点を有し、したがって凍結乾燥処理中に細胞の生物学的および構造的な整合性を改良する。
【0023】
また、本発明のあらゆる態様における方法は、前記細胞の固定後で細胞の保存前に残余の固定剤を除去するステップを更に備える。これは、固定剤を除去するための追加的な洗浄ステップなしに細胞を再構成により直ちに用いることを可能にする。このステップの一つ利点は、細胞数の容積変化を最小にすることである。過剰な固定剤は、非特異的な染色をひき起こし、ELISPOTアッセイにおけるサイトカインの放出を妨げ得る。
【0024】
また、本発明のあらゆる態様における方法は、前記細胞の保存前に前記固定細胞を高張性状況に暴露するステップを更に備える。細胞をその脱水状態に処理することによって、細胞が物理的により弾力的になり、その結果増強されて、参照材料の全収率を増大する。
【0025】
また、本発明のあらゆる態様における方法は、前記細胞の凍結乾燥前に凍結保護物質を前記固定細胞に添加するステップを更に備える。凍結保護物質の添加は、凍結乾燥処理中に細胞の構造的な整合性を改良する利点を有する。
【0026】
全体的に見て、本発明によって提供される利点は次の通りである:
(i) こうして作製された参照細胞が+4℃で最適に安定であるにもかかわらず、細胞を劣化なしに大気温度で出荷することができる;
(ii) 細胞を蒸留水で容易に再構成する;
(iii) 細胞がフローサイトメトリーアッセイおよびELISPOTアッセイの両方で機能し、特に37℃前後の高温度で維持する場合、細胞がサイトカインを周囲環境に放出する。
【0027】
また、複数の細胞試料を複数の個体から単離して得、各細胞試料に対して上述した方法を行い、更に前記細胞の保存前に前記複数の試料に由来した固定細胞同士を混合するステップを備える細胞参照材料を製造する方法が本発明の範囲内に含まれる。ここに記載した方法が貯留生細胞に起因するであろうあらゆる混合リンパ球反応を未然に防ぐことから、これは貯留ドナー由来の大きなバッチを調製および貯蔵でき得る追加利点を有する。したがって、これまでになかった大量の標準化参照材料を製造することができる。
【0028】
また、複数の混合細胞集団を複数の個体から単離して得、各混合細胞集団に対して本発明の第二態様に係る上述した方法を行い、更に前記細胞の保存前に前記複数の混合細胞集団に由来した固定細胞同士を混合するステップを備える細胞参照材料を製造する方法が本発明の範囲内に含まれる。これは、様々な疾病状態で見つかる混合リンパ球集団を定量的および定性的に擬態する混合リンパ球集団の合成/生産を可能にする追加の利点を有する。例えば、バセドウ病を発病すると、甲状腺細胞が通常発現しないTNF-α、IFN-γ、IL-1およびIL-6のようなサイトカインを発現する。
【0029】
また、刺激ステップ(b)または(iii)を省略したあらゆる前記態様の方法ステップに従って未刺激の固定細胞を調製し、前記未刺激の固定細胞をあらゆる前記態様の方法ステップに従って調製した刺激固定細胞と混合し、前記混合細胞を凍結乾燥または凍結貯蔵により保存するステップを備える細胞参照材料を製造する方法が本発明の範囲内に含まれる。これは、未疾病状態を疾病状態集団用のコンパラトールとして擬態する、すなわちネガティブコントロールとして作用する混合リンパ球集団を提供するという追加利点を有する。
【0030】
更なる独立態様において、本発明はまた、(i) 混合細胞集団をヒトまたは動物体から単離して得、該混合細胞集団が末梢血単核細胞と血小板からなる群から選択した複数の細胞タイプを含み、(ii) 前記混合細胞集団を分画して画分内に単一の細胞タイプを主に有する画分を作製し、(iii) 前記画分内の細胞を標識付けし、(iv) 前記画分内の標識付けした細胞を固定剤の添加により固定し、(v) 前記標識付けした細胞を凍結乾燥により保存するステップを備える細胞参照材料を製造する方法を提供する。
【0031】
例えば、CD4
+細胞をPBMCから免疫磁姓選別を用いて単離し、FITC(フルオレシンイソチオシアネート)で標識付けした抗CD4抗体で染色し、ここに記載したような固定後に冷凍乾燥することができる。かかる細胞を、例えばフローサイトメトリー装置の蛍光検定用の参照標準として用いてもよい。
【0032】
本発明の更なる態様は、(a) 増殖能力を有する哺乳動物細胞をヒトまたは動物体から単離して得、(b) 前記細胞を細胞増殖中に娘細胞へ分割するラベルで標識付けし、(c) 前記標識付け細胞を増殖のために刺激し、(d) 前記細胞を増殖し、(d) 前記増殖細胞を固定剤の添加により固定し、(e) 生成した細胞を凍結乾燥または凍結貯蔵により保存するステップを備える細胞参照材料を製造する方法を提供する。
【0033】
前記細胞を凍結乾燥によって保存するのが好ましい。有用ではあるが、低温貯蔵された細胞は、例えば液体窒素を用いる特殊な貯蔵と、ドライアイスでの出荷を必要とし、したがってコストが増大する。また、出荷中の解凍および再冷凍のリスクがある、すなわち冷凍装置に対する停電の場合に材料の悪化をもたらし、これを参照標準として不要にする。さらにまた、低温貯蔵された細胞を慎重に解凍して反応の一貫性を確実にしなければならない。凍結乾燥は、従って、著しくより安定な参照材料を提供する。細胞の固定は、細胞内および細胞外のアポトーシスを含む生物的活性を一時的に停止する利点を有し、従って凍結乾燥処理中に細胞の生物学的および構造的な整合性を改善する。
【0034】
前記細胞を哺乳類の体から単離するのが好ましく、また細胞を人体から単離するのがより好ましい。
【0035】
前記細胞が増殖能力を有する哺乳動物細胞を含む本発明のあらゆる態様において、細胞を分裂促進因子の添加によって刺激するのが好ましい。分裂促進因子は、PMA(ホルボールll-ミリステート-lS-アセテート)を含むのが好ましい。分裂促進因子はまた、イオノマイシンを含むのが好ましい。分裂促進因子は、PMA(ホルボール12-ミリステート-13-アセテート)とイオノマイシンとの混合物を含むのが好ましい。別の実施形態においては、増殖の刺激をUCHTlのような分裂促進モノクローナル抗体の添加によって行うことができる。
【0036】
また、前記細胞が増殖能力を有する哺乳動物細胞を含む本発明のあらゆる態様において、前記固定剤がパラホルムアルデヒドを含むのが好ましい。固定剤はパラホルムアルデヒドと塩化クロムの混合物を含むのがより好ましい。
【0037】
また、前記細胞が増殖能力を有する哺乳動物細胞を含む本発明のあらゆる態様において、前記方法が細胞の固定後で細胞の保存前に残余の固定剤を除去するステップをさらに備えるのが好ましい。これは、固定剤を除去するための追加的洗浄ステップなしで細胞を再構成または解凍により直ちに使用するのを可能にする。この段階の利点は、細胞数の容積変化がないことである。過剰な固定剤によって、細胞懸濁液の非特異的汚染が生じ得る。
【0038】
また、前記細胞が増殖能力を有する哺乳動物細胞を含む本発明のあらゆる態様において、前記方法が細胞の保存前に固定細胞を高張性状況に暴露するステップを更に備えるのが好ましい。細胞をその脱水状態に処理することによって、細胞が物理的により弾力的になり、その結果増強されて、参照材料の全収率を増大する。
【0039】
また、前記細胞が増殖能力を有する哺乳動物細胞を含む本発明のあらゆる態様において、前記方法が細胞の保存前に前記固定細胞に凍結保護物質を添加するステップを更に備えるのが好ましい。凍結保護物質の添加は、凍結乾燥または凍結貯蔵処理中に細胞の構造的整合性を向上させる利点を有する。
【0040】
また、前記細胞が増殖能力を有する哺乳動物細胞を含む本発明のあらゆる態様において、前記細胞を蛍光ラベルで標識付けするのが好ましい。蛍光ラベルは、CFSE(カルボキシフルオレシンスクシンイミジルエステル)を含むのがより好ましい。
【0041】
また、ここに記載したような実質的に細胞参照材料を製造する方法が本発明の範囲内に含まれる。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0042】
(刺激した細胞標準の製造)
本発明の一実施形態においては、「バフィーコート」を例えば瀉血されたドナーまたは全国血液採取エージェンシーから得る。血液のバフィーコート画分は、遠心後の白血球の大部分と、血小板とを含む血液の一部である。このようにして得たバフィーコートの全てを通常使用前に試験して、梅毒トレポネーマ・ヘム凝集検査(「TPHA」)、B型肝炎表面抗原(「HBsAg」)、抗ヒト免疫不全ウイルス1(「抗HIV 1」)、抗ヒト免疫不全ウイルス 2(「抗HIV 2」)および抗C型肝炎ウイルス(「抗HCV」)にネガティブであることを確認する。
【0043】
バフィーコートに含まれる残留赤血球を、Lymphoprepのような任意標準の市販のリンパ球密度勾配調合液の適用によって除去し、その後末梢血単核細胞(「PBMC」)を再びリンパ球密度勾配調合液の適用によって単離/収集する。次いで、PBMCをRPMI 1640培地のような哺乳類の細胞培養培地で洗浄する。
【0044】
刺激した参照標準(未刺激のネガティブな対照標準に対する)の作製のために、T細胞刺激分裂促進因子を用いて、PMBCが通常は4〜6%の二酸化炭素を含有する環境内で36〜38℃の温度で免疫刺激される。好ましい実施形態においては、免疫刺激剤の組合せを使用し、該刺激剤が通常ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)(1ml当たり0.01〜0.03μgの濃度で適用、例えば0.02μg/ml)およびイオノマイシン(1mg当たり0.125〜0.165μgの濃度で適用、例えば0.145μg/mg)を含む。刺激技術がサイトカインの生産に適し、4〜6時間免疫刺激する場合、細胞PMBC内でサイトカイン生産が検出可能である。
【0045】
PMBCをBrefeldin AまたはMonensinのような市販の細胞外タンパク質輸送阻害剤と同時に併用し、PMBC内にサイトカイン蓄積をもたらす。Brefeldin Aを用いる場合、これを通常9.0〜11.0μg/mlの濃度、例えば10μg/mlで適用する。
【0046】
刺激の後、PBMCをウシ胎仔血清(「FCS」)およびリン酸緩衝食塩水(「PBS」)を組み合わせで洗浄し、ここでFCSを通常9〜12%v/v、例えば10%の濃度で使用し、PBSの強さを通常2倍とする。
【0047】
次いで、洗浄PBMSを緩衝化培養培地(再び強さが2倍のPBSおよび9〜12%のFCSを含む)の中に再懸濁し、0.85%(w/v)PBS中にパラホルムアルデヒド(0.1〜0.2%w/v)および塩化クロム(0.5% w/v)の組み合わせを含有する市販の輸送固定剤の0.1〜20%(v/v)を添加する。かかる固定剤の例が、商品名「TransFix」として既知である。緩衝化培養培地および固定剤を前記PBMCに1ml当たり8×10
6のPBMCの割合で適用する
【0048】
未刺激のネガティブな対照細胞の作製のために、上述したようにPBMCを単離後すぐパラホルムアルデヒドおよび塩化クロム中に固定し、使用時まで+4℃で貯蔵する。
【0049】
刺激および固定(またはネガティブ対照標準用に単に固定)のあと、PBMCは冷却した(+4℃)凍結乾燥バッファ(凍結保護物質)で洗浄する。典型的なバッファは、強さが2倍のPBS中に10%のタンパク質、通常ウシ胎仔血清またはアルブミンの2倍容積を含む。凍結乾燥バッファの使用は、その後の凍結乾燥処理中のPBS安定性を向上させる。次いで、これら細胞を凍結乾燥の前に冷却温度(通常は+4℃)で貯蔵し得る。参照標準の品質および一貫性を最適化するために、凍結乾燥器の棚を予備冷却して、装填処理中+4℃の温度を維持するようにする。
【0050】
固定後、複数のドナーからの細胞を一緒に混合して、こうして作製された参照材料の総容積を増やすことができる。固定化方法は、種々のドナーからの細胞をリンパ球交差反応を起こすことなく一緒に混合するのを可能にする。さらにまた、サイトカイン刺激の典型レベルを実証する細胞集団を作製するかまたは最小限の有効性ポジティブコントロールのために固定した刺激細胞を固定した未刺激細胞(ネガティブコントロールとして用いることもできる)と混合することができる。
【0051】
刺激した(または未刺激の)固定細胞をアリコート/蓋のついたガラス瓶に装填する。商品名Paxalで販売されているような充填機が、大きな尺度のアリコートに適する。
【0052】
凍結乾燥器への装填後、PBMCを通常5日サイクル以上冷凍乾燥する。凍結乾燥後の残留含水量は、通常は0.35%である。
【0053】
固定剤を刺激細胞から一旦洗浄すると、PBMCがゆっくりとではあるが低温でサイトカインを漏らし始める。従って、PBMCのアリコートへの装填および凍結乾燥を固定剤除去の数時間以内に行う。
【0054】
凍結乾燥後、凍結乾燥された参照材料を劣化なしで長期間貯蔵し得る。凍結乾燥試料を開始体積の2倍の蒸留水で再構築し得る。これによって、通常単一強さのリン酸塩緩衝化食塩水中で細胞が得られる。
【0055】
本発明の更なる実施形態において、特定の細胞タイプが豊富な細胞の画分をPMBCの混合集団から単離し、固定した未刺激細胞との再混合前に上述した刺激および固定化レジームを施すことができる。
【0056】
このようにして、特異的な細胞タイプのサイトカインの異なるレベルを有する細胞集団を製造して特定の疾病状態を擬態することができる。特定の細胞タイプを、フローサイトメトリーおよび細胞選別のような多くの手段か、または市販の抗体結合磁気ビーズの使用によって単離し得る。かかる分離技術を用いて、例えばB細胞、単球、ナチュラルキラー細胞、好中球、血小板等並びにCD4およびCD8T細胞のような特定のサブセットを単離することができる。かかる特異的に刺激した細胞の集団を未刺激の固定細胞で希釈して、特定の疾病状態で見つかる物により近い擬態の細胞集団を作製することができる。
【0057】
本発明の方法に従って作製した細胞参照標準を、水の添加によって再構築し、サイトカインアッセイに用いることができる。該細胞は、表面抗原並びに細胞内サイトカインを保持する。従って、これらに当業界で用いる染色法を施して、例えばフローサイトメトリー用の参照標準として使用することができる。さらにまた、該細胞は、特にELISPOTアッセイで通常用いるような例えば37℃の高温で保持した場合、無傷のままで、その周辺の環境にサイトカインを放出し得る。そのため、これらをこのタイプのアッセイに参照標準として用いることができる。
【0058】
貯蔵実験では、凍結乾燥された細胞が5ヵ月間の貯蔵後にその特性を保持することが実証され、それらが長年の貯蔵寿命を有し、長期の研究および診断に反復可能な基準として用いるのを可能にすることが示された。
【0059】
参照標準として有用であると同時に、ここに記載した方法によって作製した冷凍乾燥細胞はまた、その細胞の表面抗原が固定および凍結乾燥処理により無損傷の状態で維持されるので、ワクチンとしての用途を見いだし得る。
【実施例2】
【0060】
(細胞増殖標準の作製)
一例として、ここに記載した方法を用いて、末梢血単核細胞(PBMC)の増殖アッセイ用の参照標準を作製することができる。本発明の一実施形態において、「バフィーコート」を、例えば瀉血されたドナーまたは全国血液採取エージェンシーから得た。該血液のバフィーコート画分は、遠心後の白血球の大部分と、血小板とを含む血液の一部分である。このようにして得たバフィーコート全てを通常使用前に試験して、これらが梅毒トレポネーマ・ヘム凝集検査(「TPHA」)、B型肝炎表面抗原(「HBsAg」)、抗ヒト免疫不全ウイルス1(「抗HIV1」)、抗ヒト免疫不全ウイルス2(「抗HIV2」)および抗C型肝炎ウイルス(「抗HCV」)にネガティブであることを確認する。
【0061】
バフィーコートに含まれる残留赤血球を、Lymphoprepのような任意標準の市販のリンパ球密度勾配調合液の適用によって除去し、その後末梢血単核細胞(「PBMC」)を再びリンパ球密度勾配調合液の適用によって単離/収集する。次いで、PBMCをRPMI 1640培地のような哺乳類の細胞培養培地で洗浄する。
【0062】
次いで、これらPBMCを、市販のカルボキシフルオレシンスクシンイミジルエステル(「CFSE」)またはカルボキシフルオレシンスクシンイミジルエステル(「CFDA-SE」)のような蛍光染料で標識付けする。かかる染料の例は、商品名CellTrace CFSE 細胞増殖キットによって既知である。次に、固定剤安定化し凍結乾燥または低温貯蔵する前に、標識細胞をモノクローナル抗体UCHTlで70〜74時間刺激して増殖を誘発する。刺激は、通常4〜6%の二酸化炭素を含有する含む環境中で36〜38℃の温度で行われる。この刺激は細胞増殖を誘発する。他の実施形態においては、免疫刺激剤の組合せを用い、該刺激剤が通常ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)(0.01〜0.03μg/mlの濃度で適用、例えば0.02μg/ml)およびイオノマイシン(0.125〜0.165μg/mgの濃度で適用、例えば0.145μg/mg)を含む。かかる刺激後、増殖が通常70-74時間以内で起こる。
【0063】
所要程度の増殖(作製すべき参照材料に応じて)後に、PBMCをウシ胎仔血清(「FCS」)およびリン酸塩緩衝化食塩水(「PBS」)の組み合わせで洗浄し、ここでFCSを通常9〜12%v/v、例えば10%の濃度で使用し、PBSの強さを通常2倍とする。
【0064】
次いで、洗浄PBMSを緩衝化培養培地(再び強さが2倍のPBSおよび9〜12%のFCSを含む)中で再懸濁し、0.85%(w/v)PBS中にパラホルムアルデヒド(0.1〜0.2%w/v)および塩化クロム(0.5% w/v)の組み合わせを含む市販の輸送固定剤の20%(v/v)を添加する。このような固定剤の一例は、商品名「TransFix」で既知である。緩衝化培養培地および固定剤を前記PBMCに8×10
6のPBMC/mlの割合で適用する。
【0065】
固定化後、PBMCを冷却した(+4℃)凍結乾燥バッファ(凍結保護物質)で洗浄する。典型的なバッファは、強さが2倍のPBS中に10%のタンパク質、通常ウシ胎仔血清またはアルブミンの2倍容積を含む。凍結乾燥バッファの使用は、その後の凍結乾燥処理中のPBMC安定性を向上させる。次いで、これら細胞を凍結乾燥の前に冷却温度(通常は+4℃)で貯蔵し得る。参照標準の品質および一貫性を最適化するために、凍結乾燥器の棚を予備冷却して、装填処理中+4℃の温度を維持するようにする。
【0066】
次いで、標識付けした増殖固定細胞をアリコート/蓋のついたガラス瓶に装填する。商品名Paxalで販売されるような充填機が、大きな尺度のアリコートに適する。
【0067】
凍結乾燥器への装填後、PBMCを通常5日サイクル以上冷凍乾燥させている。凍結乾燥後の残留含水量は、通常は0.35%である。
【0068】
凍結乾燥後、凍結乾燥させた参照材料を劣化なしに長期間貯蔵し得る。凍結乾燥試料を開始体積の2倍の蒸留水で再構築し得る。これによって、通常単一強さのリン酸塩緩衝化食塩水中で細胞が得られる。
【0069】
本発明の更なる実施形態において、特定の細胞タイプが豊富な細胞の画分をPMBCの混合集団から単離し、記載した標識付け、増殖および固定化を施すことができる。このようにして、特異的な細胞タイプの異なる程度の増殖を有する細胞集団を作製し得る。特定の細胞タイプを、フローサイトメトリーおよび細胞選別のような多くの手段によるか、または市販の抗体結合磁気ビーズの使用によって単離し得る。かかる分離技術を用いて、例えばB細胞、単球、ナチュラルキラー細胞、好中球、血小板等、並びにCD4およびCD8T細胞のような特定のサブセットを単離し得る。かかる特異的に増殖した細胞の集団を標識付けした「未増殖」の固定細胞で希釈して、特定の疾病状態で見つかるものにより近く擬態した細胞集団を作製し得る。
【0070】
本発明の方法に従って作製した細胞参照標準を、水の添加によって再構築し、細胞増殖アッセイ用参照標準として用い得る。該細胞は、サブセット分析に適した表面抗原を保持する。従って、これらに当業界で用いる染色技術を施し、例えばフローサイトメトリー用の参照標準として使用し得る。
【0071】
貯蔵実験では、凍結乾燥された細胞が5ヵ月間の貯蔵後にその特性を保持することが実証され、それらが長年の貯蔵寿命を有し、長期の研究および診断に反復可能な基準として用いるのを可能にすることが示された。